IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイセルの特許一覧

<>
  • 特開-エアバッグ装置 図1
  • 特開-エアバッグ装置 図2
  • 特開-エアバッグ装置 図3
  • 特開-エアバッグ装置 図4
  • 特開-エアバッグ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020933
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20220126BHJP
   B60R 21/26 20110101ALI20220126BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20220126BHJP
   B63C 9/08 20060101ALI20220126BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/26
B60R21/00 310N
B63C9/08 Z
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124219
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浮田 信一朗
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054AA23
3D054CC16
3D054EE20
(57)【要約】
【課題】ガス発生器からのガスによって膨張したエアバッグをガス供給管から離脱させた後においてもエアバッグを展開状態に維持することが可能で、且つ、展開後におけるエアバッグが軽量で運搬が容易なエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置は、ガス発生器と、ガス導入口部を有しガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスをガス導入口部から内部に導入することによって膨張するエアバッグと、ガス発生器とガス導入口部を接続するガス供給管と、を備え、ガス供給管は、ガス導入口部に対して離脱可能に接続され、エアバッグは、ガス導入口部から内部へのガスの導入開始後、少なくともガス供給管がガス導入口部から離脱した際に当該ガス導入口部を閉塞することによって内部から外部へのガスの流出を抑制する遮断弁を、有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生器と、
ガス導入口部を有し、前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスを前記ガス導入口部から内部に導入することによって膨張するエアバッグと、
前記ガス発生器と前記ガス導入口部を接続するガス供給管と、
を備え、
前記ガス供給管は、前記ガス導入口部に対して離脱可能に接続され、
前記エアバッグは、前記ガス導入口部から内部へのガスの導入開始後、少なくとも前記ガス供給管が前記ガス導入口部から離脱した際に当該ガス導入口部を閉塞することによって内部から外部へのガスの流出を抑制する遮断弁を、有する、
エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガス導入口部は、一端側に前記ガス供給管と接続される第1接続口を有する供給管側接続部と、他端側に前記エアバッグのガス導入開口と接続される第2接続口を有するバッグ側接続部とを含む管状部材であり、
前記ガス導入口部は、前記供給管側接続部及び前記バッグ側接続部の間に脆弱部が形成されると共に当該脆弱部を境に前記バッグ側接続部から前記供給管側接続部が離脱可能であり、且つ、前記遮断弁が前記バッグ側接続部に配置されている、
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記遮断弁は、前記第2接続口に配置されている、請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ガス供給管は前記供給管側接続部に挿入されており、前記ガス供給管の先端が前記供給管側接続部の内部に位置している、請求項2又は3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグ装置は車両に搭載され、且つ、前記エアバッグは前記ガス発生器の作動時に車室内に向かって展開可能に設けられている、請求項1から4の何れか一項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
車両の衝突を検知して前記ガス発生器を作動させるための衝突センサーに加えて、乗員からの前記ガス発生器の作動要求を受け付ける作動スイッチ、及び、前記車両の水没を検知して前記ガス発生器を作動させるための水没センサーの少なくとも何れか一方を備える、
請求項5に記載のエアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員を保護する乗員保護装置としてエアバッグ装置が知られている。エアバッグ装置は、車両衝突時に瞬時にエアバッグを膨張、展開させることにより、車両衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するための装置である。
【0003】
エアバッグ装置には、作動時にエアバッグを膨張、展開させるためのガスを供給するためのガス発生器が備えられている。この種のガス発生器として、ハウジング内に点火器とガス発生剤とを配置し、点火器を作動させることでガス発生剤を燃焼させ、その燃焼ガスをハウジングに形成されたガス排出孔から外部へ放出するものや、点火器の作動によって容器の一部を破壊し、内部の加圧ガスを排出するものなどが広く用いられている。
【0004】
ここで、自動二輪車の走行方向における所定距離内に衝突対象物が検出された場合に、自動二輪車の走行方向にエアバッグを放出し、自動二輪車から離れた前方位置でエアバッグを展開させる自動二輪車用エアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載されている自動二輪車用エアバッグ装置は、インフレータ(ガス発生器)、エアバッグ、インフレータの点火回路を装着した基板等を含むエアバッグモジュール本体を備えている。そして、自動二輪車が前方の対象物(車両や壁等)に対して所定距離以内に接近したことが検知されると、車体前方にエアバッグモジュール本体が放出され、その後自動二輪車が衝突対象物に更に接近したタイミングで車体前方に放出されたエアバッグモジュール本体が自身のインフレータを作動させてエアバッグを展開することが特許文献1に記載されている。また、特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、車体からエアバッグモジュール本体を放出させるエネルギー源として、エアバッグモジュール本体が備えるインフレータとは別に車体側にもインフレータを設け、当該車体側に設けられたインフレータの作動によって発生した高圧ガスによってエアバッグモジュール本体を外部に向けて放出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-183913号公報
【特許文献2】特開平7-196272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、車体から離脱可能なエアバッグモジュール本体に、エアバッグを膨張させるためのインフレータが設けられているため、エアバッグモジュール本体が重くなる虞がある。また、展開したエアバッグを衝撃吸収用途ではなく、例えば水難時における人員救助のための浮力体として利用する場合には、エアバッグを展開した状態で維持する必要があるが、特許文献1には、エアバッグ装置を衝撃吸収用途で用いることに留まっており、エアバッグを展開した状態に維持することについては何ら開示されていない。
【0007】
本開示の技術は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス発生器からのガスによって膨張したエアバッグをガス供給管から離脱させた後においてもエアバッグを展開状態に維持することが可能で、且つ、展開後におけるエアバッグが軽量で運搬が
容易なエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術の一態様は、ガス発生器と、ガス導入口部を有し、前記ガス発生器の作動時に当該ガス発生器から供給されるガスを前記ガス導入口部から内部に導入することによって膨張するエアバッグと、前記ガス発生器と前記ガス導入口部を接続するガス供給管と、を備え、前記ガス供給管は、前記ガス導入口部に対して離脱可能に接続され、前記エアバッグは、前記ガス導入口部から内部へのガスの導入開始後、少なくとも前記ガス供給管が前記ガス導入口部から離脱した際に当該ガス導入口部を閉塞することによって内部から外部へのガスの流出を抑制する遮断弁を、有する、エアバッグ装置である。
【0009】
また、前記ガス導入口部は、一端側に前記ガス供給管と接続される第1接続口を有する供給管側接続部と、他端側に前記エアバッグのガス導入開口と接続される第2接続口を有するバッグ側接続部とを含む管状部材であり、前記ガス導入口部は、前記供給管側接続部及び前記バッグ側接続部の間に脆弱部が形成されると共に当該脆弱部を境に前記バッグ側接続部から前記供給管側接続部が離脱可能であり、且つ、前記遮断弁が前記バッグ側接続部に配置されていても良い。
【0010】
また、前記遮断弁は、前記第2接続口に配置されていても良い。
【0011】
また、前記ガス供給管は前記供給管側接続部に挿入されており、前記ガス供給管の先端が前記供給管側接続部の内部に位置していても良い。
【0012】
また、前記エアバッグ装置は車両に搭載され、且つ、前記エアバッグは前記ガス発生器の作動時に車室内に向かって展開可能に設けられていても良い。
【0013】
また、本開示に係るエアバッグ装置は、車両の衝突を検知して前記ガス発生器を作動させるための衝突センサーに加えて、乗員からの前記ガス発生器の作動要求を受け付ける作動スイッチ、及び、前記車両の水没を検知して前記ガス発生器を作動させるための水没センサーの少なくとも何れか一方を備えていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術によれば、ガス発生器からのガスによって膨張したエアバッグをガス供給管から離脱させた後においてもエアバッグを展開状態に維持することが可能で、且つ、展開後におけるエアバッグが軽量で運搬が容易なエアバッグ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置が備えられた車両用シートの外観斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るガス供給管及びエアバッグの接続態様を説明する模式図である。
図3図3は、実施形態1に係るガス供給管及びエアバッグの接続部における内部構造を説明する図である。
図4図4は、実施形態1に係る遮断弁がガス導入口部の第2接続口を開放している状態を説明する図である。
図5図5は、実施形態1に係るガス供給管13展開後のエアバッグ本体を取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0017】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置10が備えられた車両用シート1の外観斜視図である。なお、本明細書において、車両用シート1の前後方向(奥行方向)、左右方向(幅方向)、上下方向(高さ方向)の各方向は、車両用シート1に着座した乗員(着座者)から見た、前後、左右、上下の各方向を基準として説明する。また、図1には、車両用シート1が備えるエアバッグ装置10が作動する前の状態が示されている。
【0018】
車両用シート1は、車両の乗員が着座するシートである。車両用シート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション2と(座面)、乗員の背部を支持するシートバック3(背もたれ)とを備えている。シートバック3は、シートクッション2に対して傾倒可能にシートクッション2に接続されている。また、車両用シート1は、シートバック3の上端部に取り付けられ、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4を備える。なお、ヘッドレスト4は、シートバック3と一体的に形成されていてもよいし、シートバック3に固定されていてもよいし、シートバック3から取り外し可能であってもよい。
【0019】
また、車両用シート1は、乗員を車両用シート1に対して拘束するシートベルト5を備える。シートベルト5は、乗員の右肩から左下腹部腹に延伸して当該乗員の上半身を拘束するショルダーベルト5Aと、乗員の右下腹部から左下腹部に延伸して当該乗員の下腹部を拘束するラップベルト5Bとを有する。
【0020】
本実施形態に係るエアバッグ装置10は、車両衝突の衝撃から車両用シート1に着座する乗員を保護するために車両用シート1に搭載されている。エアバッグ装置10は、エアバッグ11、ガス発生器12、ガス供給管13等を備えている。
【0021】
図1に示すエアバッグ11は、例えば車両の側面方向からの衝撃に対応して設置されたサイドエアバッグであり、例えば、シートバック3のニアサイド(乗員からみてドアトリム側)に格納されている。エアバッグ11は、例えばシートバック3内に折り畳まれた状態で収容されており、ガス発生器12からガスが供給されることによって膨張し、展開する。ガス発生器12の作動時に当該ガス発生器12から供給されるガスによってエアバッグ11が膨張すると、エアバッグ11がシートバック3から飛び出し、車室内(前方)に向かって展開する。但し、エアバッグ11は、シートバック3のファーサイド(ニアサイドの反対側)に設けられていても良いし、乗員の頭部を保護するためにシートバック3の上端側に設けられていても良い。本実施形態におけるエアバッグ11は、膨張時に車室内に向かって展開するエアバッグであれば良く、エアバッグ11が設置される位置(シート以外の設置場所も含む)、大きさ、範囲等は特に限定されない。
【0022】
エアバッグ装置10におけるガス発生器12はシートバック3の内部に配置されており、作動時にエアバッグ11に供給するためのガスを発生させる。ガス発生器12は、例えば、両端が閉塞した円筒状(シリンダー状)の金属製ハウジングを有し、ハウジング内に点火器、ガス発生剤等を収容している。ガス発生器は公知のものを適宜使用することができる。本実施形態におけるガス発生器12は、固形のガス発生剤を燃焼させることでガスを発生させるパイロ方式を例示的に採用しているが、加圧ガスを使用するストアードガス方式、パイロ方式とストアードガス方式とを組み合わせたハイブリッド方式等のガス発生器であっても良い。特に、ストアード方式のガス発生器は、作動時に比較的低温のガスを
放出するため、エアバッグ11への導入後における体積収縮がより一層起こりにくい。そのため、ガス発生器12をストアード方式とした場合には、展開後におけるエアバッグ11の膨張圧を維持しやすいという利点がある。
【0023】
また、エアバッグ装置10のガス発生器12は、車両に搭載されたエアバッグECU20によって制御されるようになっている。ガス発生器12はエアバッグECU20から作動電流がガス発生器12に供給されることで点火器が作動する。そして、ガス発生器12がパイロ方式の場合、ガス発生器12の点火器が作動することでガス発生剤に着火し、ガス発生剤が燃焼することで生成されたガスがハウジングに形成されたガス排出孔(図示せず)からハウジングの外部に排出される。なお、ガス発生器12は、シートバック3の内部に配置された適宜のフレーム部材に取り付けられた状態で配置することができる。また、別の一態様において、ガス発生器12は、シートクッション2の内部に配置されていても良い。
【0024】
エアバッグ装置10は、車両に搭載された衝突センサー210、水没検知センサー220、作動スイッチ230を更に備えており、これらは有線又は無線によってエアバッグECU20と接続されている。エアバッグECU20は、衝突センサー210、水没検知センサー220、作動スイッチ230の検知結果に応じて、エアバッグ装置10のガス発生器12を作動させる。衝突センサー210は、車両の衝突を検知してガス発生器12を作動させるためのセンサーである。水没検知センサー220は、車両の水没を検知してガス発生器12を作動させるためのセンサーである。作動スイッチ230は、乗員からの作動要求を受け付けるスイッチである。なお、衝突センサー210及び水没検知センサー220は車両の複数箇所に設けられていても良く、また、その設置個所は特に限定されない。また、作動スイッチ230は、乗員からの手動による作動要求を受け付けても良いし、音声による作動要求を受け付けても良い。
【0025】
エアバッグ装置10におけるガス発生器12及びエアバッグ11は、ガス供給管13によって接続されている。作動時にガス発生器12が発生させたガスは、ガス供給管13を通じてエアバッグ11に供給される。ガス供給管13は、例えば、金属製や樹脂製のパイプ部材で形成されているが、その材料については特に限定されない。なお、図1に示す符号13Aは、ガス供給管13のうち、エアバッグ11に接続される方の端部側に形成された接続部である。本実施形態においては、ガス供給管13の接続部13Aが、エアバッグ11におけるガス導入口部に接続されており、ガス供給管13から供給されるガスは、ガス供給管13からガス導入口部を通じてエアバッグ11へと供給される。なお、本実施形態において、エアバッグ11とガス供給管13が一体に形成されていても良い。以下、ガス供給管13及びエアバッグ11の接続態様の詳細について説明する。
【0026】
図2は、実施形態1に係るガス供給管13及びエアバッグ11の接続態様を説明する模式図である。図3は、実施形態1に係るガス供給管13及びエアバッグ11の接続部における内部構造を説明する図である。エアバッグ11は、エアバッグ本体30及びガス導入口部40を備えている。エアバッグ本体30は、ガス供給管13を通じて供給されるガスによって膨張、展開する袋体である。図2及び図3には、エアバッグ本体30及びガス供給管13の一部のみを模式的に示している。図3に示すように、エアバッグ本体30は、ガス導入開口30Aを有しており、このガス導入開口30Aにガス導入口部40が気密に取り付けられている。また、図3に示す符号30Bは、エアバッグ本体30の内部空間である。
【0027】
ガス導入口部40は、一端側にガス供給管13と接続される第1接続口41を有する供給管側接続部42と、他端側にエアバッグ11におけるエアバッグ本体30のガス導入開口30Aと接続される第2接続口43を有するバッグ側接続部44と、を含む管状部材と
して構成されている。ガス導入口部40の第2接続口43がエアバッグ本体30のガス導入開口30Aに接続されることで、ガス導入口部40の内側に形成されるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが連通している。本実施形態において、ガス導入口部40は、例えばプラスチック等の樹脂成形によって形成されているが、ガス導入口部40を形成する材料については特に限定されない。
【0028】
また、ガス導入口部40は、供給管側接続部42及びバッグ側接続部44の間、すなわち境界部分に脆弱部45が形成されている。脆弱部45は、他の部位(供給管側接続部42及び前記バッグ側接続部44)に比べて脆弱に形成された部位である。本実施形態においては、脆弱部45は、供給管側接続部42及び前記バッグ側接続部44に比べて部材厚さが薄い薄肉部として形成されている。但し、脆弱部45は、他の部に比べて脆弱に形成されていれば良く、例えば、供給管側接続部42及びバッグ側接続部44に比べて強度が低い低強度部(切断や切り離しが容易な部分)として脆弱部45が形成されていても良い。
【0029】
本実施形態におけるガス導入口部40は脆弱部45を有しているため、ガス導入口部40に対してガス供給管14を離脱可能に接続することが可能となる。より具体的には、脆弱部45に外力が作用した際に、当該脆弱部45を境に供給管側接続部42からバッグ側接続部44を離脱させることができる。言い換えると、供給管側接続部42に接続されているガス供給管13に対して、バッグ側接続部44と接続されているエアバッグ本体30を離脱させることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、ガス導入口部40の周方向に沿って脆弱部45を延在している。これにより、例えば乗員が、膨張、展開後におけるエアバッグ本体30を引っ張る等してガス導入口部40の脆弱部45に外力を加えることで、ガス供給管13から展開後のエアバッグ本体30を容易に取り外すことができる。ここで、脆弱部45は、ガス導入口部40の周方向に沿って断続的に設けられていても良い。また、より好ましい態様として、脆弱部45は、ガス導入口部40の全周に亘って環状に延在させる態様が挙げられる。このようにすることで、車両の乗員は、ガス供給管13から展開後のエアバッグ本体30をより一層容易に取り外すことができる。
【0031】
また、図2及び図3に示すように、ガス供給管13の接続部13Aは、ガス導入口部40の供給管側接続部42に対して接続されている。本実施形態においては、ガス導入口部40における供給管側接続部42の内径が、ガス供給管13における接続部13Aの外径よりも僅かに大きな寸法を有している。ガス供給管13の接続部13Aは、ガス導入口部40における供給管側接続部42の第1接続口41から内挿されている。
【0032】
また、図2及び図3に示す符号14は、ガス導入口部40の供給管側接続部42に取り付けられた固定具であり、固定具14によってガス供給管13の接続部13Aが供給管側接続部42に対して固定されている。固定具14は、例えば結束バンド等であっても良い。また、図2及び図3に示す符号13Bは、ガス供給管13における接続部13Aの先端である。図2から明らかなように、接続部13Aにおける先端13Bは、ガス導入口部40の供給管側接続部42の内部に位置付けられている。つまり、本実施形態においては、ガス供給管13の接続部13Aは、ガス導入口部40におけるバッグ側接続部44まで先端13Bが挿入されないように供給管側接続部42に接続されている。なお、ガス供給管13の接続部13Aは、ガス供給管13を流れてきたガスが供給管側接続部42との隙間から漏れ出さないようにすれば、ガス導入口部40における供給管側接続部42に対して外挿されていても良い。
【0033】
図3に示す符号46は、エアバッグ本体30の内部に配設された遮断弁である。遮断弁
46は、ガス導入口部40におけるバッグ側接続部44の第2接続口43に配置されており、第2接続口43の開放および閉塞を遮断弁46によって切り替えることができる。言い換えると、遮断弁46は、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bとの連通及び遮断を切り替えることができる。
【0034】
本実施形態における遮断弁46は、例えば逆止弁(逆流防止弁)によって構成されている。逆止弁は、流体の背圧によって弁体が逆流を防止するように作動する弁構造を有している。図3には、遮断弁46がガス導入口部40の第2接続口43を閉塞している状態を示している。図3に示すように、遮断弁46は、弁体46A及びヒンジ部46Bを有している。遮断弁46のヒンジ部46Bは、例えば、ガス導入口部40における第2接続口43に取り付けられており、弁体46Aを開閉自在に保持している。ここで、ガス導入口部40におけるガス流路40Aの圧力(1次側圧力)がエアバッグ本体30の内部空間30Bの圧力(2次側圧力)よりも低いあるいは同等である場合には、図3に示すように遮断弁46の弁体46Aがガス導入口部40の第2接続口43(エアバッグ本体30のガス導入開口30A)を閉塞する。この状態では、遮断弁46の弁体46Aによって、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが遮断された状態となる。
【0035】
図4は、実施形態1に係る遮断弁46がガス導入口部40の第2接続口43を開放している状態を説明する図である。ガス導入口部40におけるガス流路40Aの圧力(1次側圧力)がエアバッグ本体30の内部空間30Bの圧力(2次側圧力)よりも高い状態では、図3に示す状態から弁体46Aがヒンジ部46Bを支点として回転し、図4に示すように弁体46Aが開く。すなわち、ガス導入口部40の第2接続口43(エアバッグ本体30のガス導入開口30A)が開放され、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが連通した状態となる。
【0036】
以上のように構成されるエアバッグ装置10は、例えば衝突センサー210によって車両の衝突が検知された場合に、エアバッグECU20がガス発生器12を作動させる。ガス発生器12が作動することでガス発生器12から排出されるガスは、ガス供給管13を通じてエアバッグ11へと供給される。すなわち、ガス供給管13を流れるガスは、接続部13Aが接続されているエアバッグ11のガス導入口部40に供給される。その結果、ガス導入口部40におけるガス流路40Aの圧力(1次側圧力)がエアバッグ本体30の内部空間30Bの圧力(2次側圧力)よりも高くなり、図4に示したように遮断弁46の弁体46Aが開く。これにより、ガス導入口部40の第2接続口43が開放され、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが連通することで、エアバッグ本体30の内部空間30Bへとガスが導入される。エアバッグ本体30は、ガス供給管13及びガス導入口部40を通じて供給されるガスによって膨張し、車室内に向かって迅速に展開する。これにより、車両の乗員の保護を図ることができる。
【0037】
上記のように本実施形態におけるエアバッグ11は、遮断弁46を備えている。そのため、ガス供給管13を通じたエアバッグ11へのガスの供給が停止するあるいは弱まると、ガス導入口部40におけるガス流路40Aの圧力(1次側圧力)がエアバッグ本体30の内部空間30Bの圧力(2次側圧力)よりも低くなる。その結果、遮断弁46の弁体46Aがガス導入口部40の第2接続口43を閉塞することで、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが遮断された状態に維持される。
【0038】
ところで、本実施形態におけるエアバッグ装置10によれば、上記のようにガス供給管40における供給管側接続部42及びバッグ側接続部44の境界部に脆弱部45を備えている。そのため、車両の乗員は、車室内で展開した後のエアバッグ本体30を引っ張る等してエアバッグ本体30に接続されるガス導入口部40の脆弱部45に外力を加えること
で、脆弱部45を境に供給管側接続部42からバッグ側接続部44を分離することができる。つまり、車両の乗員は、ガス供給管13から展開後のエアバッグ本体30を容易に取り外すことができる。図5は、実施形態1に係るガス供給管13から展開後のエアバッグ本体30を取り外した状態を示す図である。
【0039】
その際、図5に示すように、エアバッグ11における遮断弁46は、弁体46Aによってガス導入口部40の第2接続口43を閉塞しており、ガス導入口部40におけるガス流路40Aとエアバッグ本体30の内部空間30Bが遮断された状態に維持されている。そのため、ガス発生器12によって生成されたガスによって膨張されたエアバッグ本体30を展開した状態でガス供給管13から切り離した際、エアバッグ本体30の内部空間30Bからガスが外部に逆流して漏れ出すことを抑制できる。
【0040】
その結果、ガス供給管13から切り離したエアバッグ本体30を、膨張及び展開状態に維持しつつ単体で使用することができる。従って、本実施形態におけるエアバッグ装置10によれば、例えばガス供給管13から切り離した後のエアバッグ本体30を、水難時における人員救助のための浮力体として利用することができる。
【0041】
なお、本実施形態におけるエアバッグ装置10においては、ガス導入口部40からエアバッグ11(エアバッグ本体30)内部へのガスの導入開始後、少なくともガス供給管13がガス導入口部40から離脱した際に、遮断弁46が当該ガス導入口部40を閉塞することによってエアバッグ11(エアバッグ本体30)内部から外部へのガスの流出を抑制するように構成されていれば良い。
【0042】
更に、本実施形態のエアバッグ装置10によれば、ガス発生器12やガス供給管13を車両側に残した状態で、展開後のエアバッグ11をガス供給管13から離脱させることができる。そのため、ガス供給管13から離脱後におけるエアバッグ11が軽量であり、人手による運搬も容易になる。
【0043】
なお、本実施形態におけるエアバッグ装置10において、エアバッグ11をサイドエアバッグに適用する場合を例に説明したが、乗員の頭部を保護用のエアバッグやその他のエアバッグに適用しても良い。勿論、エアバッグ装置10は、複数のエアバッグ11を備えていても良く、複数のエアバッグ11の各々をガス供給管13から離脱可能に構成しても良い。
【0044】
更に、本実施形態におけるエアバッグ装置10は、衝突センサー210に加えて、水没検知センサー220及び作動スイッチ230を備えている。従って、水没検知センサー220によって車両の水没が検知された際、或いは、作動スイッチ230が乗員からのエアバッグの作動要求を受け付けた際には、それをトリガーとして、たとえ車両が障害物と衝突していなくてもガス発生器12を作動させ、エアバッグ本体30を膨張、展開させることができる。これによれば、車両が衝撃を伴わずに水没した際においても、迅速にエアバッグ本体30を膨張、展開させ、人員救助のための浮力体として利用することができる。
【0045】
なお、エアバッグ装置10が、ガス供給管13から離脱可能な複数のエアバッグ11を備えている場合、水没検知センサー220によって車両の水没が検知された際、或いは、作動スイッチ230が乗員からのエアバッグの作動要求を受け付けた際に、全てのエアバッグ11を展開させても良い。なお、水没検知センサー220を用いて車両の水没を検知するためのアルゴリズムは特に限定されない。水没検知センサー220は、例えば車内への浸水を検知するセンサーであっても良いし、車両のエンジンルーム内への浸水を検知するセンサーであっても良い。また、水没検知センサー220は、車両外部の所定領域の全体に亘って一定以上の水圧が作用したことを検知するセンサーであっても良い。また、作
動スイッチ230については、乗員の意図しないエアバッグ11の誤作動を抑制する観点から、乗員が複数のスイッチを同時に操作した場合や、乗員がスイッチを一定時間以上継続して操作した場合(例えば、スイッチの長押し等)に限り、乗員による作動要求を受け付け、エアバッグECU20がエアバッグ11を展開させるようにしても良い。或いは、水没検知センサー220が車両の水没を検知し、且つ、作動スイッチ230が乗員からのエアバッグの作動要求を受け付けたことをトリガーとしてエアバッグECU20がエアバッグ11を展開させても良い。
【0046】
なお、本実施形態におけるエアバッグ装置10は車両に搭載されているが、ここでいう車両とは、車両のボディ(シャーシ)に限らず、ボディに付属する構成物(シート、ダッシュボード等)も含まれることは言うまでも無い。また、本実施形態においては、本開示に係るエアバッグ装置10を車両に搭載する形態を例に説明したが、適用対象はこれには限られない。勿論、エアバッグ装置10は乗用車に限られず、自動2輪車に適用することもできる。また、本実施形態におけるエアバッグ装置10は、車両衝突時における乗員保護機能を備えているが、これには限られず、水難時等における人員救助用のエアバッグ装置として提供されても良い。
【0047】
以上、本開示に係るエアバッグ装置の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・車両用シート
2・・・シートクッション
3・・・シートバック
4・・・ヘッドレスト
10・・・エアバッグ装置
11・・・エアバッグ
12・・・ガス発生器
13・・・ガス供給管
20・・・エアバッグECU
30・・・エアバッグ本体
40・・・ガス導入口部
41・・・第1接続口
42・・・供給管側接続部
43・・・第2接続口
44・・・バッグ側接続部
45・・・脆弱部
46・・・遮断弁
210・・・衝突センサー
220・・・水没検知センサー
230・・・作動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5