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  • 特開-中間挿入式の蝶ナット用レンチ 図1
  • 特開-中間挿入式の蝶ナット用レンチ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021011
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】中間挿入式の蝶ナット用レンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/28 20060101AFI20220126BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20220126BHJP
   B25B 13/48 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B25B13/28 B
B25B21/00 R
B25B21/00 540D
B25B13/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124344
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】久保寺 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】加園 真之介
(57)【要約】
【課題】蝶ナットの螺合にも対応した中間挿入式のレンチを提供する。
【解決手段】ネジ棒Dに螺合してある蝶ナットEの螺合位置を調整可能な、中間挿入式の蝶ナットE用レンチAであって、ギヤ機構20を備える本体部Bと、ギヤ機構20によって回転可能に構成したソケットCと、を少なくとも具備する。ギヤ機構20は、ソケットCを取り付ける動歯車21と、動歯車21を回転可能な少なくとも一つの駆動歯車22と、を有しており、本体部B、動歯車21およびソケットCは、ネジ棒Dを当該ネジ棒Dの周面側から導入可能な導入部をそれぞれ有している。ソケットCは蝶ナットEの羽根部E1を係合可能な、少なくとも一つの係合部50を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ棒に螺合してある蝶ナットの螺合位置を調整可能な、中間挿入式の蝶ナット用レンチであって、
ギヤ機構を備える、本体部と、
前記ギヤ機構によって回転可能に構成した、ソケットと、を少なくとも具備し、
前記ギヤ機構は、
前記ソケットを取り付ける、動歯車と、
前記動歯車を回転可能な、少なくとも一つの駆動歯車と、を有し、
前記本体部、前記動歯車、および前記ソケットは、
前記ネジ棒を当該ネジ棒の周面側から導入可能な導入部をそれぞれ有し、
前記ソケットは、前記蝶ナットの羽根部を係合可能な、少なくとも一つの係合部を有していることを特徴とする、
中間挿入式の蝶ナット用レンチ。
【請求項2】
前記少なくとも一つの係合部が、前記ソケットの周壁を貫通し、前記羽根部を挿通可能なスリットを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の中間挿入式の蝶ナット用レンチ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの係合部が、前記ソケットの内周面に形成し、前記羽根部を当接可能な溝を含むことを特徴とする、
請求項1または2に記載の中間挿入式の蝶ナット用レンチ。
【請求項4】
前記ソケットの内周面が、羽根部を有さない通常のナットの嵌合部を構成してあることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の中間挿入式の蝶ナット用レンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ棒に螺合している蝶ナットに対し、ネジ棒の周面側から差し込みつつ、ネジ棒の軸方向にスライドさせることで、蝶ナットの係合および螺合動作を可能とした、中間挿入式の蝶ナット用レンチに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を構成する形鋼などの構造部材に吊り足場を係止して固定する構造として、図4に示すように、吊り足場aに設けてある長尺のネジ棒bに、形鋼cのフランジc1に係止可能なフックdを挿嵌しておき、前記ネジ棒bに設けた蝶ナットeを螺合して、前記フックdによる締付を行って吊り足場aを固定するものが知られている。
この蝶ナットeの螺合作業は、作業員の人力によって行っているため、ネジ棒bの全長が長くなると、作業員の負担が大きくなるという問題を有している。
【0003】
このような長尺のネジ棒に螺合するナットに対し、ネジ棒の中間部から差し込み、スクリュードライバなどを駆動源として螺合可能とするレンチとして、以下の特許文献1,2に記載のレンチが知られている。
しかし、これらの特許文献はいずれも蝶ナットの螺合に対応していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3750114号公報
【特許文献2】実用新案登録第3205689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明は、蝶ナットの螺合にも対応した中間挿入式のレンチを提供することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、ネジ棒に螺合してある蝶ナットの螺合位置を調整可能な、中間挿入式の蝶ナット用レンチであって、ギヤ機構を備える、本体部と、前記ギヤ機構によって回転可能に構成した、ソケットと、を少なくとも具備し、前記ギヤ機構は、前記ソケットを取り付ける、動歯車と、前記動歯車を回転可能な、少なくとも一つの駆動歯車と、を有し、前記本体部、前記動歯車、および前記ソケットは、前記ネジ棒を当該ネジ棒の周面側から導入可能な導入部をそれぞれ有し、前記ソケットは、前記蝶ナットの羽根部を係合可能な、少なくとも一つの係合部を有していることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記少なくとも一つの係合部が、前記ソケットの周壁を貫通し、前記羽根部を挿通可能なスリットを含むことを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明または第2発明において、前記少なくとも一つの係合部が、前記ソケットの内周面に形成し、前記羽根部を当接可能な溝を含むことを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れか1つの発明において、前記ソケットの内周面が、羽根部を有さない通常のナットの嵌合部を構成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくともいずれか1つの効果を得ることができる。
(1)レンチをネジ棒の中間部の周面側から差し込むことができるため、長尺のネジ棒に螺合してある蝶ナットに対する螺合作業の効率性が向上する。
(2)ソケットの周壁を貫通して形成したスリットに、蝶ナットの羽根部を挿通して係合することで、より大きな羽根部を有する蝶ナットの螺合にも対応でき、汎用性が向上する。
(3)ソケットの内周面に形成した溝に、蝶ナットの羽根部を当接して係合することで、より小さな羽根部を有する蝶ナットの螺合にも対応でき、汎用性が向上する。
(4)ソケットの内周面を、羽根部を有さない通常のナット向けの嵌合部とすることで、汎用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るレンチの全体構成を示す概略図。
図2】実施例1に係るレンチの使用イメージを示す概略図。
図3】実施例2に係るレンチのソケットを示す概略図。
図4】吊り足場の固定方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
<1>全体構成(図1
図1に、本発明の実施例1に係る中間挿入式の蝶ナット用レンチA(以下、単に「レンチA」ともいう。)の全体構成を示す。
本発明に係るレンチAは、本体部Bと、本体部Bに固定したソケットCとを少なくとも具備している。
【0011】
<2>本体部(図1
本体部Bは、レンチAの基部を構成する部材である。
本実施例では、本体部Bは、略羽子板形状を呈しており、長手方向の一端側に、使用者が把持する把持部B1を設けている。
【0012】
<2.1>第1の導入部(図1
本体部Bには、さらに、ネジ棒Dを当該ネジ棒Dの側方から導入するための第1の導入部10を設けておく。
本実施例では、本体部Bの長手方向の他端側において、当該他端の一部を切り欠いて、第1の導入部10を形成している。
この第1の導入部10の幅は、差し込むネジ棒Dの直径よりも大きい長さとする。
【0013】
<3>ギヤ機構(図1
本体部Bの内部には、さらに、ギヤ機構20を備えている。
ギヤ機構20は、後述するソケットCを固定する動歯車21と、動歯車21に回転を伝達する、少なくとも1つの駆動歯車22からなる。
【0014】
<3.1>動歯車21・第2の導入部211(図1
動歯車21は、後述するソケットCを取り付けて回転させるための部材である。
動歯車21は、外縁の一部から歯車の回転軸に向かって切り欠いて形成した第2の導入部211を設けている。
本実施例では、第2の導入部211を、動歯車21の厚さ方向と平行するように外縁を切り欠いて形成しているが、先行技術文献の欄の特許文献1で開示するように、動歯車21の厚さ方向に対し斜めに外縁を切り欠いて形成してもよい。
動歯車21とソケットCとの間の取り付け機構は、溶接などの脱着不能な構成に限定されず、嵌合にように脱着自在な構成であってもよい。
この第2の導入部211の幅は、第1の導入部10と同様、差し込むネジ棒Dの直径よりも大きい長さとする。
なお、本体部Bに対して動歯車21は回転するため、第2の導入部211は、動歯車21の回転角度に応じて、第1の導入部10との間での連通が切り替わる。
【0015】
<3.2>駆動歯車(図1
駆動歯車22は、動歯車21を回転させるための部材である。
駆動歯車22は、回転軸となる位置に差込口221を設けておき、この差込口221にスクリュードライバの先端ビットなどを挿入し、スクリュードライバの回転駆動を受けて、動歯車21に回転を伝達する。
また、駆動歯車22に設けた差込口221に取り付け可能な連結部と、六角形状を呈する頭部からなる仲介部材を別に用意しておき(図示せず)、この仲介部材の頭部に対応したソケットレンチAなどによって、駆動歯車22を間接的に回転させてもよい。
【0016】
<4>ソケット(図1
ソケットCは、蝶ナットEを収容するための部材である。
ソケットCは、両端が開口してある筒状部材からなる。
筒状部材の一端には、動歯車21の前面で第1の導入部10から露出する露出面212に取り付け可能な取付部30を設けている。
【0017】
<4.1>第3の導入部(図1
ソケットCには、さらに、前記ネジ棒Dを当該ネジ棒Dの側方から導入可能とするため第3の導入部40を設けておく。
本実施例では、ソケットCの側周の一部を切り欠いて、第3の導入部40を形成している。
この第3の導入部40の幅は、第1の導入部10と同様、差し込むネジ棒Dの直径よりも大きい長さとする。
なお、ソケットCは、動歯車21に固定されるため、第3の導入部40は、第2の導入部211と常に連通する状態が維持されつつ、動歯車21の回転角度に応じて、第1の導入部10との間での連通が切り替わることになる。
【0018】
<4.2>係合部50(図1
ソケットCには、さらに、前記蝶ナットEの羽根部E1を係合可能な係合部50を設けておく。
本実施例では、ソケットCの側周においてソケットCの軸心に対し対称となる位置を切り欠いて、蝶ナットEの羽根部E1を差し込み可能なスリット状の係合部50を設けている。
【0019】
<5>使用方法(図2
図2を参照しながら、本発明に係るレンチAを使用手順の一例について説明する。
まず、第1の導入部10に、第2の導入部211および第3の導入部40が連通するように、ソケットCの位置を調整した状態で、蝶ナットEの近傍のネジ棒Dの側方から治具を差し込んで、各導入部にネジ棒Dを導入する(図2(a))。
ネジ棒Dの導入後は、動歯車21やソケットCを手で回転させることができることとなる。
そして、蝶ナットEの羽根部E1と係合部50との位置を合わせてから、レンチAをネジ棒Dの軸方向にスライドさせて、ソケットCに設けた係合部50に蝶ナットEの羽根部E1を係合させる(図2(b))。
この状態で、駆動歯車22にスクリュードライバFの先端ビットを挿入し、スクリュードライバを駆動させると、駆動歯車22を通じて、動歯車21およびソケットCを回転し、ソケットCに係合した蝶ナットEの、ネジ棒Dに対する螺合位置を変えることができる(図2(c))。
【実施例0020】
図3に、本発明に係るレンチAにおけるソケットCの変形例を示す。
【0021】
<1>溝式の係合部(図3(a))
図3(a)は、係合部50をソケットCの内周面を外周側に凹ませて形成した溝で構成し、この溝に蝶ナットEの羽根部E1を当接させて係合可能に構成している。
本変形例によれば、より小さな羽根部E1を有する蝶ナットEの螺合にも対応でき、汎用性が向上する。
【0022】
<2>スリット式と溝式の併用(図3(b))
図3(b)は、図1に示したスリットからなる係合部50と、図3(a)に示した溝からなる係合部50とを組み合わせた構成である。
本変形例によれば、より小さな羽根部E1およびより大きな羽根部E1を有する蝶ナットEの螺合にも対応でき、汎用性が向上する。
【0023】
<3>通常のナットとの併用型(図3(c))
図3(c)は、ソケットCの内周面を、通常の六角ナットなどを嵌合可能な形状とした嵌合部60としつつ、さらに第3の導入部40と、スリットからなる係合部50とを設けた構成である。
本変形例によれば、蝶ナットEだけでなく、羽根部E1を有さない通常の六角ナットの螺合にも対応出来る点で汎用性が向上する。
なお、嵌合部60は、図3(c)で示す形状に限られず、レンチソケットなどに用いる公知の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0024】
A :レンチ
B :本体部
B1 :把持部
10 :第1の導入部
20 :ギヤ機構
21 :動歯車
211:第2の導入部
212:露出面
22 :駆動歯車
221:差込口
C :ソケット
30 :取付部
40 :第3の導入部
50 :係合部
60 :嵌合部
D :ネジ棒
E :蝶ナット
E1 :羽根部
F :スクリュードライバ
a :吊り足場
b :ネジ棒
c :形鋼
c1 :フランジ
d :フック
e :蝶ナット
図1
図2
図3
図4