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特開2022-21023レーザー加工方法及びレーザー加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021023
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】レーザー加工方法及びレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/388 20140101AFI20220126BHJP
【FI】
B23K26/388
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124361
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】303003225
【氏名又は名称】UHT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福島 正人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健之
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD15
4E168CB04
4E168DA34
4E168EA15
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたって円形状にすることができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】レーザー加工方法は、ワークWの加工面12に対してレーザービームLBを照射してレーザービームLBの照射位置を加工面12において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔13を形成する方法であり、レーザービームLBにおける加工面12の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔13の形状が円形状になる軌道K1で加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの加工面に対してレーザービームを照射して前記レーザービームの照射位置を前記加工面において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔を形成するレーザー加工方法であって、
前記レーザービームにおける前記加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける前記孔の形状が円形状になる軌道で前記加工面における前記レーザービームの照射位置を変化させることを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項2】
前記軌道は、単一の円軌道または楕円軌道、互いに大きさの異なる複数の円軌道または楕円軌道、及び円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記レーザービームの照射位置は、円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道で変化させた場合、その後に単一の円軌道または楕円軌道で変化させることを特徴とする請求項2に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
ワークの加工面に対してレーザービームを照射して前記レーザービームの照射位置を前記加工面において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔を形成するレーザー加工装置であって、
前記レーザービームを前記ワークの前記加工面に対して発振するレーザー発振器と、
前記レーザー発振器から発振される前記レーザービームの照射方向を前記加工面において変化させる照射方向変化部と、
前記照射方向変化部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記レーザービームにおける前記加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける前記孔の形状が円形状になる軌道で前記加工面における前記レーザービームの照射位置が変化するように、前記照射方向変化部を制御することを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームによるトレパニング加工によってワークに孔を形成するレーザー加工方法及びレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーザー加工方法として、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうしたレーザー加工方法では、レーザービームにおける円形状の断面となる位置を加工対象物の上面の位置に合わせた状態でレーザービームを当該上面上の円形状の軌道に沿って周回させることで、加工対象物に円形状の孔を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-38287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザービームは、非点隔差を持つため、ビーム幅の最小となる位置が光軸に沿って縦方向と横方向とで互いに異なっている。このため、上述のようなレーザー加工方法におけるレーザービームの断面形状は、加工対象物の上面では円形状になっているが、加工対象物の下面では楕円形状になっている。したがって、上述のようなレーザー加工方法によって加工対象物に形成される孔の形状は、加工対象物の上面では円形状になるが、加工対象物の下面では円形状にならずに楕円形状になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされた。その目的は、ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたって円形状にすることができるレーザー加工方法及びレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するレーザー加工方法は、ワークの加工面に対してレーザービームを照射して前記レーザービームの照射位置を前記加工面において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔を形成するレーザー加工方法であって、前記レーザービームにおける前記加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける前記孔の形状が円形状になる軌道で前記加工面における前記レーザービームの照射位置を変化させることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、レーザービームにおけるワークの加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔の形状が円形状になる軌道で当該加工面におけるレーザービームの照射位置を変化させることで、ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたって円形状にすることができる。
【0008】
上記レーザー加工方法において、前記軌道は、単一の円軌道または楕円軌道、互いに大きさの異なる複数の円軌道または楕円軌道、及び円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたってより確実に円形状にすることができる。
上記レーザー加工方法において、前記レーザービームの照射位置は、円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道で変化させた場合、その後に単一の円軌道または楕円軌道で変化させることが好ましい。
【0010】
通常、レーザービームの照射位置を、円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道で変化させた場合、ワークに形成される孔の内面に段差ができることがある。この点、この構成によれば、レーザービームの照射位置は、円弧または楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道で変化させた場合、その後に単一の円軌道または楕円軌道で変化されるため、ワークに形成される孔の内面の段差をなくすことができる。
【0011】
上記課題を解決するレーザー加工装置は、ワークの加工面に対してレーザービームを照射して前記レーザービームの照射位置を前記加工面において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔を形成するレーザー加工装置であって、前記レーザービームを前記ワークの前記加工面に対して発振するレーザー発振器と、前記レーザー発振器から発振される前記レーザービームの照射方向を前記加工面において変化させる照射方向変化部と、前記照射方向変化部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記レーザービームにおける前記加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける前記孔の形状が円形状になる軌道で前記加工面における前記レーザービームの照射位置が変化するように、前記照射方向変化部を制御することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、レーザービームにおけるワークの加工面の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔の形状が円形状になる軌道で当該加工面におけるレーザービームの照射位置を変化させることで、ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたって円形状にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワークに形成する孔の形状を当該孔の軸方向全体にわたって円形状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態のレーザー加工装置の概略構成図。
図2】レーザービームの断面形状の変化を示す模式斜視図。
図3図2のレーザービームの各位置でのXY断面形状を示す模式図。
図4】(a)はレーザービームによってワークの上部の加工面を加工するときの状態を示す側断面図、(b)は(a)のときのレーザービームのビームスポットの形状と軌道を示す平面図。
図5】(a)はレーザービームによってワークの鉛直方向の中央部の加工面を加工するときの状態を示す側断面図、(b)は(a)のときのレーザービームのビームスポットの形状と軌道を示す平面図。
図6】(a)はレーザービームによってワークの下部の加工面を加工するときの状態を示す側断面図、(b)は(a)のときのレーザービームのビームスポットの形状と軌道を示す平面図。
図7】レーザービームのビームスポットが楕円形状のときのビームスポットとその楕円軌道との位置関係を示す平面図。
図8】変更例において、(a)はビームスポットが円形のときの複数円の軌道を示す平面図、(b)はビームスポットが円形のときの渦巻き軌道を示す平面図。
図9】変更例において、(a)はビームスポットが楕円形のときの複数円の軌道を示す平面図、(b)はビームスポットが楕円形のときの渦巻き軌道を示す平面図。
図10】変更例において、(a)はビームスポットが楕円形のときの複数円の軌道を示す平面図、(b)はビームスポットが楕円形のときの渦巻き軌道を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、レーザー加工装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、レーザー加工装置11は、ワークWの加工面12に対してレーザービームLBを照射してレーザービームLBの照射位置を加工面12において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔13(図6(a)参照)を形成する装置である。
【0016】
レーザー加工装置11は、加工面12を有した板状のワークWを支持する支持台14と、支持台14の真上に配置されたテレセントリック系のfθレンズ15と、fθレンズ15の真上に配置された照射方向変化部の一例としてのガルバノスキャナー16と、ガルバノスキャナー16の側方に配置されたレーザー発振器17と、制御部18とを備えている。
【0017】
レーザー発振器17は、レーザービームLBを、ガルバノスキャナー16及びfθレンズ15を介して支持台14上に配置されたワークWの上面の水平な加工面12に対して発振する。ガルバノスキャナー16は、二枚の回動可能な反射鏡(図示略)を含んで構成され、当該二枚の反射鏡(図示略)の回動動作を組み合わせることで、レーザー発振器17から発振されるレーザービームLBのワークWの加工面12に対する照射位置をワークWの加工面12上において二次元的に変化させる。
【0018】
fθレンズ15は、ガルバノスキャナー16で反射されたレーザービームLBの方向をワークWの加工面12に垂直な方向に矯正する。なお、ワークWは、例えば合成樹脂製の基板によって構成される。
【0019】
図2及び図3に示すように、レーザー発振器17から発振されるレーザービームLBは、光軸方向をZ方向とし、Z方向と直交し且つ互いに直交する二つの方向をX方向及びY方向とした場合、X方向及びY方向の二つの方向で発散角が異なるため、非点隔差を持つ。このため、レーザービームLBは、断面形状が楕円形状の部分と断面形状が円形状の部分とを有する。なお、図3は、図2のレーザービームLBの位置A~位置EにおけるXY断面形状を示している。
【0020】
本実施形態におけるレーザービームLBのXY断面形状は、位置BでY方向の幅が最小の楕円形状となり、位置DでX方向の幅が最小の楕円形状となり、位置Bと位置Dとの間の中間の位置Cで円形状となる。そして、本実施形態のレーザー加工装置11では、ワークWの上面の加工面12がレーザービームLBにおける断面形状が円形状となる位置Cに対応するように設定されている。
【0021】
したがって、レーザービームLBは、ワークWの上面からZ方向に沿ってワークWの下面側に進むにつれて徐々に扁平率が大きくなる楕円形状となる。つまり、本実施形態のレーザー加工装置11では、一例として、レーザービームLBの位置Cから位置Dにかけての位置でワークWに孔13(図6(a)参照)を形成する加工を行う。
【0022】
次に、レーザー加工装置11の電気的構成について説明する。
図1に示すように、制御部18は、例えばマイクロコンピュータ及び各種の情報を記憶するメモリなどを含んで構成され、レーザー加工装置11を統括的に制御する。制御部18は、レーザー発振器17及びガルバノスキャナー16とそれぞれ電気的に接続され、レーザー発振器17及びガルバノスキャナー16をそれぞれ制御する。
【0023】
図1及び図4図6に示すように、本実施形態における制御部18は、レーザービームLBによってワークWの加工面12に孔13を形成する際に、レーザービームLBにおけるワークWの加工面12の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔13の形状が円形状になる単一の円軌道K1または単一の楕円軌道K2,K3で加工面12におけるレーザービームLBの照射位置が変化するように、ガルバノスキャナー16を制御する。
【0024】
この場合、制御部18は、レーザービームLBのビームスポットBSが単一の円軌道K1または単一の楕円軌道K2,K3を複数回周回するように、ガルバノスキャナー16を制御する。単一の円軌道K1の情報及び単一の楕円軌道K2,K3の情報は、予め制御部18に記憶されている。
【0025】
制御部18は、ワークWの加工面12におけるビームスポットBSの単一の円軌道K1または単一の楕円軌道K2,K3の周回回数に基づいてワークWの上面からの加工面12の深さを把握する。ワークWの加工面12におけるビームスポットBSの単一の円軌道K1及び単一の楕円軌道K2,K3の周回回数とワークWの上面からの加工面12の深さとの関係は、予め実験やシミュレーションなどによって求められて制御部18に記憶されている。
【0026】
本実施形態において、制御部18は、加工面12がワークWの上部WAに位置するとき、加工面12がワークWの中部WBに位置するとき、及び加工面12がワークWの下部WCに位置するときの3段階でレーザービームLBのビームスポットBSが周回する軌道を円軌道K1及び楕円軌道K2,K3の間で切り替える。ワークWにおける上部WA、中部WB、及び下部WCは、全て同じ厚さになっている。
【0027】
すなわち、制御部18は、加工面12がワークWの上部WAに位置する場合、加工面12におけるビームスポットBSが円形状であるため、加工面12に円形の孔13が形成されるように単一の円軌道K1でビームスポットBSを周回させる。また、制御部18は、加工面12がワークWの中部WBに位置する場合、加工面12におけるビームスポットBSが楕円形状になるため、加工面12に円形の孔13が形成されるように当該楕円形状に応じた単一の楕円軌道K2でビームスポットBSを周回させる。
【0028】
さらに、制御部18は、加工面12がワークWの下部WCに位置する場合、ビームスポットBSが、加工面12がワークWの中部WBに位置するときよりも扁平率の大きい楕円形状になるため、加工面12に円形の孔13が形成されるように当該楕円形状に応じた単一の楕円軌道K3でビームスポットBSを周回させる。
【0029】
なお、図7に示すように、ビームスポットBSが楕円形状であって且つ単一の楕円軌道K2,K3でビームスポットBSが加工面12において周回する場合には、楕円形状のビームスポットBSの長軸J1と、当該ビームスポットBSが周回する単一の楕円軌道K2,K3の長軸J2とが常に互いに直交する。
【0030】
次に、レーザー加工装置11によってワークWに孔13を形成するときの作用について説明する。
図1及び図4に示すように、レーザー加工装置11によってワークWに孔13を形成する場合には、まず、ワークWの上面の加工面12にレーザービームLBを照射する。このとき、加工面12でのレーザービームLBのビームスポットBSの形状は、円形状になっている。
【0031】
続いて、図4(a)及び図4(b)に示すように、加工面12においてビームスポットBSを単一の円軌道K1で周回させると、ワークWの上部WAにおいて加工面12がレーザービームLBによって徐々に円形に掘られるので、加工面12が徐々に下がり、ワークWの上部WAに円形の孔13が形成され始める。
【0032】
引き続き、加工面12においてビームスポットBSを単一の円軌道K1で繰り返し周回させると、加工面12が円形に掘られながら下がってワークWの中部WBに達し、ワークWの加工面12における上部WAの厚さ分に円形の孔13が形成される。このとき、加工面12でのレーザービームLBのビームスポットBSの形状は、楕円形状になっている。
【0033】
続いて、図5(a)及び図5(b)に示すように、加工面12においてビームスポットBSを単一の楕円軌道K2で周回させると、ワークWの中部WBにおいて加工面12がレーザービームLBによって徐々に円形に掘られるので、加工面12が徐々に下がり、ワークWの中部WBに円形の孔13が形成され始める。
【0034】
引き続き、加工面12においてビームスポットBSを単一の楕円軌道K2で繰り返し周回させると、加工面12が円形に掘られながら下がってワークWの下部WCに達し、ワークWの加工面12における中部WBの厚さ分に円形の孔13が形成される。このとき、加工面12でのレーザービームLBのビームスポットBSの形状は、中部WBに位置するときよりも扁平率の大きい楕円形状になっている。
【0035】
続いて、図6(a)及び図6(b)に示すように、加工面12においてビームスポットBSを単一の楕円軌道K3で周回させると、ワークWの下部WCにおいて加工面12がレーザービームLBによって徐々に円形に掘られるので、加工面12が徐々に下がり、ワークWの下部WCに円形の孔13が形成され始める。
【0036】
引き続き、加工面12においてビームスポットBSを単一の楕円軌道K3で繰り返し周回させると、加工面12が円形に掘られながら下がってワークWの下面に達し、ワークWの加工面12における下部WCの厚さ分に円形の孔13が形成される。これにより、ワークWの加工面12にワークW全体を貫通する円形の孔13が形成される。この孔13は、ワークWの上面から下面にわたって円形状をなしている。
【0037】
なお、ワークWに貫通するように形成された孔13は、ワークWの上面から下面に向かって徐々に径が小さくなっている。これは、レーザービームLBによって例えばワークWの下部WCに孔13を形成する際に、下部WCよりも上側に位置する上部WA及び中部WBに対して既に形成した分の孔13の形状がレーザービームLBによって楕円形状にならないようにするためである。
【0038】
このように、レーザー加工装置11では、断面形状が楕円形状の部分と断面形状が円形状の部分とが混在するレーザービームLBをそのまま用いて一定の厚さを有したワークWに貫通する孔13を形成するトレパニング加工を行っても、ワークWに形成される孔13の形状を孔13の軸方向全体にわたって円形状にすることができる。
【0039】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)レーザー加工装置11は、ワークWの加工面12に対してレーザービームLBを照射してレーザービームLBの照射位置を加工面12において変化させながら加工を行うトレパニング加工により孔13を形成する。レーザー加工装置11は、レーザービームLBをワークWの加工面12に対して発振するレーザー発振器17と、レーザー発振器17から発振されるレーザービームLBの照射方向を加工面12において変化させるガルバノスキャナー16と、ガルバノスキャナー16を制御する制御部18と、を備える。制御部18は、レーザービームLBにおける加工面12の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔13の形状が円形状になる円軌道K1及び楕円軌道K2,K3で加工面12におけるレーザービームLBの照射位置が変化するように、ガルバノスキャナー16を制御する。この構成によれば、レーザービームLBにおけるワークWの加工面12の深さに応じた断面形状に基づき当該深さにおける孔13の形状が円形状になる円軌道K1及び楕円軌道K2,K3で当該加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させることで、ワークWに形成する孔13の形状を当該孔13の軸方向全体にわたって円形状にすることができる。
【0040】
(2)レーザー加工装置11において、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させる軌道は、単一の円軌道K1または単一の楕円軌道K2,K3である。この構成によれば、ワークWに形成する孔13の形状を当該孔13の軸方向全体にわたって容易且つ迅速に円形状にすることができる。
【0041】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・円軌道K1は、図8(a)に示すように互いに大きさの異なる複数(本例では3つ)の円軌道K4に変更してもよいし、図8(b)に示すように円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道K5に変更してもよい。
【0043】
・円軌道K1、円軌道K4、及び渦巻き軌道K5は、2つ以上組み合わせてもよい。このようにすれば、ワークWに形成する孔13の形状を当該孔13の軸方向全体にわたってより確実に円形状にすることができる。また、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させる軌道として渦巻き軌道K5を含む選択をした場合には、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を渦巻き軌道K5で変化させた後に円軌道K1でワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させることが好ましい。通常、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K5で変化させた場合、ワークWに形成される孔13の内面に段差19(図8(b)参照)ができることがある。この点、この構成によれば、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K5で変化させた後に円軌道K1で変化させることで、ワークWに形成される孔13の内面の段差19をなくすことができる。
【0044】
・楕円軌道K2は、図9(a)に示すように互いに大きさの異なる複数(本例では3つ)の楕円軌道K6に変更してもよいし、図9(b)に示すように楕円弧を連続的に繋げてなる渦巻き軌道K7に変更してもよい。
【0045】
・楕円軌道K2、楕円軌道K6、及び渦巻き軌道K7は、2つ以上組み合わせてもよい。このようにすれば、ワークWに形成する孔13の形状を当該孔13の軸方向全体にわたってより確実に円形状にすることができる。また、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させる軌道として渦巻き軌道K7を含む選択をした場合には、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を渦巻き軌道K7で変化させた後に楕円軌道K2でワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させることが好ましい。通常、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K7で変化させた場合、ワークWに形成される孔13の内面に段差20(図9(b)参照)ができることがある。この点、この構成によれば、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K7で変化させた後に楕円軌道K2で変化させることで、ワークWに形成される孔13の内面の段差20をなくすことができる。
【0046】
・楕円軌道K3は、図10(a)に示すように互いに大きさの異なる複数(本例では3つ)の楕円軌道K8(図9(a)の楕円軌道K6よりも扁平率が大きい)に変更してもよいし、図10(b)に示すように楕円弧(図9(b)の楕円弧よりも扁平率が大きい)を連続的に繋げてなる渦巻き軌道K9に変更してもよい。
【0047】
・楕円軌道K3、楕円軌道K8、及び渦巻き軌道K9は、2つ以上組み合わせてもよい。このようにすれば、ワークWに形成する孔13の形状を当該孔13の軸方向全体にわたってより確実に円形状にすることができる。また、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させる軌道として渦巻き軌道K9を含む選択をした場合には、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を渦巻き軌道K9で変化させた後に楕円軌道K3でワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を変化させることが好ましい。通常、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K9で変化させた場合、ワークWに形成される孔13の内面に段差21(図10(b)参照)ができることがある。この点、この構成によれば、ワークWの加工面12におけるレーザービームLBの照射位置を、渦巻き軌道K9で変化させた後に楕円軌道K3で変化させることで、ワークWに形成される孔13の内面の段差21をなくすことができる。
【0048】
・上記実施形態では、ワークWに孔13を形成する際に、ワークWの上部WA、中部WB、及び下部WCの3段階でレーザービームLBのビームスポットBSが周回する軌道を円軌道K1及び楕円軌道K2,K3の間で切り替えていたが、これを2段階あるいは4段階以上で切り替えるようにしてもよい。
【0049】
・ワークWの上部WAの加工面12に孔13を形成する場合に、当該加工面12でのビームスポットBSの形状が楕円形状になるようにしてもよい。この場合、孔13が円形状になるように、ビームスポットBSが楕円軌道で周回される。
【0050】
・ワークWの中部WBまたは下部WCの加工面12に孔13を形成する場合に、当該加工面12でのビームスポットBSの形状が円形状になるようにしてもよい。この場合、孔13が円形状になるように、ビームスポットBSが円軌道で周回される。
【0051】
・ワークWの上面からの加工面12の深さを、距離センサーによって検出するようにしてもよい。
・ワークWは、金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
11…レーザー加工装置
12…加工面
13…孔
14…支持台
15…fθレンズ
16…ガルバノスキャナー
17…レーザー発振器
18…制御部
19,20,21…段差
A,B,C,D,E…位置
BS…ビームスポット
J1,J2…長軸
K1,K4…円軌道
K2,K3,K6,K8…楕円軌道
K5,K7,K9…渦巻き軌道
LB…レーザービーム
W…ワーク
WA…上部
WB…中部
WC…下部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10