(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021030
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ヒューズ筒操作補助具
(51)【国際特許分類】
H01H 85/02 20060101AFI20220126BHJP
H01H 85/042 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H01H85/02 C
H01H85/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124375
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】樋本 海
(72)【発明者】
【氏名】常冨 博之
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502BD03
5G502CC13
5G502CC16
5G502CC20
5G502GG02
5G502HH01
(57)【要約】
【課題】円筒型カットアウトの開口の斜め下側からヒューズ筒を操作できるヒューズ筒操作補助具を提供する。
【解決手段】円筒型カットアウト操作具9を保持するスライド駒2と、スライド駒2をスライドさせるレール4と、レール4を支持する台座6と、レール4にスライド駒2をスライド可能に保持する係合構造2c,4cとを備え、スライド駒2は、角柱部2aと、ピニオン部2bと、円筒型カットアウト操作具9を保持する接続構造2dとを備え、レール4は、角柱部2aを挟持する挟持部4aを有し、スライド駒2の回動を規制しつつレール4上をスライドさせる単純スライド領域Pと、レール4を平面視した際に単純スライド領域Pに延設され、ラック部4bを有し、スライド駒2を回動させつつレール4上をスライドさせる回動スライド領域Qとを備えるヒューズ筒操作補助具1Aによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズ筒を保持する円筒型カットアウト操作具を操作するための補助具であって、
前記円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持するとともに、前記円筒型カットアウト操作具を操作するスライド駒と、
前記スライド駒を保持した状態でスライドさせるレールと、
前記レールと前記スライド駒の間に形成され、前記レールの長手方向に前記スライド駒をスライドさせる際に前記レールから前記スライド駒が離間するのを妨げる係合構造と、
前記レールと前記補助具を操作するための棒体との間に介設される台座と、を備え、
前記スライド駒は、
断面形状が2の倍数の正多角形である角柱部と、
周側面上に複数の鋸歯を備えたピニオン部と、
前記スライド駒の上方端部に設けられ前記円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持する接続構造と、を備え、
前記レールは、
前記角柱部を挟持する挟持部を有し、前記スライド駒をその中心軸を基軸にした回動を規制しながら前記レールの長手方向にスライドさせる単純スライド領域と、
前記レールを平面視した際に前記単純スライド領域に延設され、前記ピニオン部の前記鋸歯と噛合するラック部を有し、前記スライド駒をその中心軸を基軸に回動させながら前記レールの長手方向にスライドさせる回動スライド領域と、を備えていることを特徴とするヒューズ筒操作補助具。
【請求項2】
ヒューズ筒を操作するのに用いられる補助具であって、
前記ヒューズ筒を着脱可能に保持するとともに、前記ヒューズ筒を操作するスライド駒と、
前記スライド駒を保持した状態でスライドさせるレールと、
前記レールと前記スライド駒の間に形成され、前記レールの長手方向に前記スライド駒をスライドさせる際に前記レールから前記スライド駒が離間するのを妨げる係合構造と、
前記レールと前記補助具を操作するための棒体との間に介設される台座と、を備え、
前記スライド駒は、
断面形状が2の倍数の正多角形である角柱部と、
周側面上に複数の鋸歯を備えたピニオン部と、
前記スライド駒の上方端部側に設けられ前記ヒューズ筒を保持するソケットと、を備え、
前記レールは、
前記角柱部を挟持する挟持部を有し、前記スライド駒をその中心軸を基軸にした回動を規制しながら前記レールの長手方向にスライドさせる単純スライド領域と、
前記レールを平面視した際に前記単純スライド領域に延設され、前記ピニオン部の前記鋸歯と噛合するラック部を有し、前記スライド駒をその中心軸を基軸に回動させながら前記レールの長手方向にスライドさせる回動スライド領域とを備えていることを特徴とするヒューズ筒操作補助具。
【請求項3】
前記単純スライド領域と前記回動スライド領域の間に着脱可能に設けられるストッパー部材を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒューズ筒操作補助具。
【請求項4】
前記レールの長手方向に対する前記棒体の中心軸のなす角度θ1は89度以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のヒューズ筒操作補助具。
【請求項5】
前記棒体は共用操作棒であり、
前記台座と前記共用操作棒の接続部は、菊座型のアダプタを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のヒューズ筒操作補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型カットアウトの斜め下側からヒューズ筒を操作して着脱する際に用いられるヒューズ筒操作補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電柱などの高所には、商用電源から各家庭の負荷装置に電力供給するために、変圧器が設置されている。また、このような変圧器に変圧器容量を超える電流が流れ込むと変圧器が破損する。このため、変圧器はヒューズを内蔵したカットアウトを備えており、規定を超えた電流が流入するとカットアウトのヒューズが溶断されて回路が遮断されることで、変圧器が保護される仕組みになっている。
この種のカットアウトとしては、全体を概略円筒型に形成されているものがあり、円筒型の底側を閉止蓋で開閉する構造になっている。この円筒型カットアウトは、閉止蓋を外して開口させている底側からヒューズ筒を差し込むことにより、両端側の導通部に本体側の接続部が導通接触する構造になっており、ヒューズ筒は、導通部の間に設定容量の電流で溶断するヒューズ本体(溶断部)が介在するように組み立てられている。
【0003】
はじめに、
図11乃至
図14を参照しながら円筒型カットアウトへのヒューズ筒の従来の設置方法について説明する。
図11は円筒型カットアウトに対するヒューズ筒の設置作業時(従来法による)の様子を示すイメージ図である。
従来、円筒型カットアウト18にヒューズ筒10を新設又は交換する場合は、本体部18aの下端側に設けられる開口18bを密封する閉止蓋(図示せず)を外した後、この開口18bに続く中空部18c内の破線で示す位置にヒューズ筒10を着脱する作業を行う必要がある。
より具体的には、円筒型カットアウト18の中空部18cにヒューズ筒10を挿設するには、例えばツイストロック構造9cを介して共用操作棒8を接続した円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにヒューズ筒10の下端10aを保持してから、共用操作棒8を真下から操作することで間接的にヒューズ筒10を操作していた。さらに、中空部18cからヒューズ筒10を取外す場合も、円筒型カットアウト18の開口18bの真下から共用操作棒8を操作して円筒型カットアウト操作具9のソケット9aを中空部18c内に挿入する必要があった。
つまり、円筒型カットアウト18の中空部18c内へのヒューズ筒10の挿脱作業は通常、
図11に示すように、円筒型カットアウト18の開口18bの真下から行う必要があった。
しかしながら、円筒型カットアウト18の開口18bの真下に円筒型カットアウト操作具9や共用操作棒8の操作の妨げになるような他の設備が存在している、あるいは円筒型カットアウト18の中心軸が鉛直方向と一致していない場合は、共用操作棒8の中心軸Sに対して例えば角度θ
2だけ共用操作棒8の中心軸S´を傾斜させた状態で円筒型カットアウト18へのヒューズ筒10の挿脱作業を行うことを余儀なくされていた。
そして、
図11中に示す角度θ
2の値が大きくなるほど、円筒型カットアウト18へのヒューズ筒10の挿脱作業が困難になる上、ヒューズ筒10および円筒型カットアウト18が破損するリスクが増えるという課題があった。
【0004】
次に、円筒型カットアウト操作具9おけるヒューズ筒10の固定構造について
図12乃至
図14を参照しながら説明する。
図12はヒューズ筒とそれを支持する円筒型カットアウト操作具の一部を欠いて示す側面図である。また、
図13はヒューズ筒の下端及び円筒型カットアウト操作具のソケットの開口部を拡大して示す斜視図である。さらに、
図14は円筒型カットアウト操作具のソケットにヒューズ筒を係合・固定した状態を示す斜視図である。なお、
図11に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにおいてヒューズ筒10を保持した状態でヒューズ筒10の操作を行う場合は、ソケット9aからヒューズ筒10が意図せず外れるのを防ぐ目的で、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aの内周面にヒューズ筒10を係合させて固定している。
【0005】
より具体的には
図12及び
図13に示すように、ヒューズ筒10は、このヒューズ筒10を円筒型カットアウト操作具9のソケット9aに挿設した際のソケット9aの開口に位置する部分に係合用突起10bを備えている。さらに、ソケット9aの開口の内側も、この係合用突起10bと係合する係合用突起9dを備えている。
そして、
図14に示すように、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにヒューズ筒10の下端10aを挿入した際に、ヒューズ筒10側の係合用突起10bとソケット9a側の係合用突起9dとを係合させることで、ソケット9a内にヒューズ筒10を一時的に固定することができる。
また、
図13に示すように、係合用突起9dは、ソケット9aの内側面の対向する位置に一対設けられている。
このため、ヒューズ筒10の下端10aを保持した状態でソケット9aをその中空部の中心軸を基軸に逆方向(
図14中の符号Wで示す方向)に回動して、ヒューズ筒10側の係合用突起10bとソケット9a側の係合用突起9dの係合関係を解除することで、ヒューズ筒10の下端10aからソケット9aを離間させることができる。さらに、ヒューズ筒10の下端10aにソケット9aを固定する場合は、上記動作の逆を、すなわちヒューズ筒10の下端10aを保持した状態でソケット9aをその中空部の中心軸を基軸に正方向(
図14中の符号Vで示す方向)に回動させる動作を行えばよい。
したがって、先の
図11に示すように、ヒューズ筒10を円筒型カットアウト18の中空部18c内の所望の位置(破線部分)に嵌設した後、共用操作棒8をその中心軸Sを基軸に逆方向(符号Wで示す方向)に所望量(より具体的には、中心軸Sを基軸に30~180度程度)だけ回動させることで、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aがその中心軸Sを基軸に逆方向(符号Wで示す方向)に回動し、これにより係合用突起10bと係合用突起9dの係合関係が解除されて、ヒューズ筒10の下端10aからソケット9aを離間させることができる。また、上記動作の逆を、すなわち円筒型カットアウト操作具9のソケット9aをその中心軸Sを基軸に正方向(符号Vで示す方向)に回動させることで、円筒型カットアウト操作具9にヒューズ筒10を固定することができる。
【0006】
このように、円筒型カットアウト18にヒューズ筒10を挿脱する際は、円筒型カットアウト18の真下からヒューズ筒10を出し入れする動作に加えて、ヒューズ筒10の下端10aを円筒型カットアウト操作具9のソケット9aで保持した状態で、ソケット9aをその中心軸を基軸に回動させる動作を行う必要があった。
したがって、円筒型カットアウト18の真下に何らかの障害物が存在している、あるいは円筒型カットアウト18の中心軸が鉛直方向に対して傾いている場合は、ヒューズ筒10の挿脱作業が困難になるという課題があった。
上記課題に対処するための先行技術としては、例えば以下に示すような特許文献が知られている。
【0007】
特許文献1には「円筒形カットアウト」という名称で、ヒューズ筒を内蔵する円筒形カットアウトであって、絶縁操作棒を用いて、円筒形カットアウトにヒューズ筒を着脱容易な円筒形カットアウトの構造に関するに関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される円筒形カットアウトは、底部に形成した開口部を着脱自在に閉止する閉止蓋を有する円筒状のカットアウト本体と、上記開口部から挿抜され、カットアウト本体の内部に装着されるヒューズ筒と、を備え、このヒューズ筒は、先端部側がカットアウト本体の奥部に装着される固定筒と、この固定筒の軸方向に移動自在に、当該固定筒を外装した可動筒と、ヒューズが作動すると可動筒から離反して上記開口部から突出できると共に、固定筒の基端部に固定された表示筒と、を有し、上記表示筒は、傾斜状態で保持された絶縁操作棒の先端部に設けた一対の把持腕で把持可能な一対の把持面を外周に形成していることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される円筒形カットアウトによれば、絶縁操作棒(絶縁ヤットコ)を用いて、円筒形カットアウトの開口部下の斜め方向からヒューズ筒を挿脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される発明の場合は、ヒューズ筒自体の形態を変更する必要がある。このため、本願の
図11乃至
図14に示すような既存のヒューズ筒10をそのまま使用することができないという課題があった。
【0010】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、既存のヒューズ筒をそのまま用いることができ、円筒型カットアウトの下部に形成される開口の斜め下側からヒューズ筒を挿脱することができるヒューズ筒操作補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1の発明であるヒューズ筒操作補助具は、ヒューズ筒を保持する円筒型カットアウト操作具を操作するための補助具であって、円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持するとともに、この円筒型カットアウト操作具を操作するスライド駒と、このスライド駒を保持した状態でスライドさせるレールと、このレールとスライド駒の間に形成され、レールの長手方向にスライド駒をスライドさせる際にレールからスライド駒が離間するのを妨げる係合構造と、レールと第1の発明である補助具を操作するための棒体との間に介設される台座と、を備え、スライド駒は、断面形状が2の倍数の正多角形である角柱部と、周側面上に複数の鋸歯を備えたピニオン部と、スライド駒の上方端部に設けられ円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持する接続構造と、を備え、レールは、スライド駒の角柱部を挟持する挟持部を有し、スライド駒をその中心軸を基軸にした回動を規制しながらレールの長手方向にスライドさせる単純スライド領域と、レールを平面視した際に単純スライド領域に延設され、スライド駒のピニオン部の鋸歯と噛合するラック部を有し、スライド駒をその中心軸を基軸に回動させながらレールの長手方向にスライドさせる回動スライド領域と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、レールは、スライド駒をレールの長手方向にスライドさせるという作用を有する。また、スライド駒は、その上方端部に接続構造を備えていることで、この接続構造を介して円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持するという作用を有する。さらに、レールとスライド駒の間に形成される係合構造は、スライド駒がレール上をスライドする際に、レールからスライド駒が離間するのを妨げるという作用を有する。
また、レールの単純スライド領域では、レールに設けられる挟持部の空隙にスライド駒の角柱部が配置される。このとき、レールの挟持部と、スライド駒の角柱部との間には、実質的にクリアランス以外の隙間を有しない。これにより、レールの単純スライド領域において、スライド駒をその中心軸(角柱部の中心軸と同じ)を基軸にした回動を規制しながらレールの長手方向にスライドさせることが可能になる。
他方、レールの回動スライド領域では、レール側の挟持部とスライド駒側の角柱部の係合関係が解除される一方で、レール側のラック部とスライド駒側のピニオン部とが噛合する。これにより、レールのラック部においてスライド駒のピニオン部が回動することで、スライド駒がその中心軸(角柱部及びピニオン部の中心軸と共通)を基軸に回動する。つまり、レールの回動スライド領域では、ラックとピニオンによりスライド駒がその中心軸を基軸に回動しながらレールの長手方向にスライドすることになる。
なお、レールとスライド駒の間に形成される係合構造は、レールにおける単純スライド領域及び回動スライド領域と重複して形成されている。さらに、第1の発明では、レールとスライド駒の間に形成される係合構造は、スライド駒の中心軸を基軸にした回動動作を規制しない。
したがって、レールの単純スライド領域では、挟持部によりスライド駒の中心軸を基軸にした回動動作が規制されるため、スライド駒はその中心軸を基軸に回動することなくレール上をスライドする。
これに対して、レールの回動スライド領域では、レール側の挟持部とスライド駒側の角柱部との係合関係が解除されるため、スライド駒はその中心軸を基軸に回動しながらレール上をスライドする。
また、レールに設けられる台座は、第1の発明である補助具とこの補助具を操作するための棒体を連結して、棒体の動力をレール及びスライド駒に伝達するという作用を有する。
【0012】
第2の発明であるヒューズ筒操作補助具は、ヒューズ筒を操作するのに用いられる補助具であって、ヒューズ筒を着脱可能に保持するとともに、このヒューズ筒を操作するスライド駒と、このスライド駒を保持した状態でスライドさせるレールと、このレールとスライド駒の間に形成され、レールの長手方向にスライド駒をスライドさせる際にレールからスライド駒が離間するのを妨げる係合構造と、このレールと第2の発明である補助具を操作するための棒体との間に介設される台座と、を備え、スライド駒は、断面形状が2の倍数の正多角形である角柱部と、周側面上に複数の鋸歯を備えたピニオン部と、スライド駒の上方端部側に設けられヒューズ筒を保持するソケットと、を備え、レールは、スライド駒の角柱部を挟持する挟持部を有し、スライド駒をその中心軸を基軸にした回動を規制しながらレールの長手方向にスライドさせる単純スライド領域と、レールを平面視した際に単純スライド領域に延設され、スライド駒のピニオン部の鋸歯と噛合するラック部を有し、スライド駒をその中心軸を基軸に回動させながらレールの長手方向にスライドさせる回動スライド領域と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明において、ヒューズ筒を保持する円筒型カットアウト操作具をスライド駒に着脱可能に保持させるための接続構造に代えて、ヒューズ筒を保持するためのソケットを備えたものであり、それ以外の構成要素はすべて第1の発明におけるそれぞれの構成要素と同じである。
よって、第2の発明は、第1の発明における接続構造以外の構成要素が奏する作用と同じ作用を有する。
また、第2の発明は、スライド駒にヒューズ筒が保持されることで、第2の発明により直接ヒューズ筒を操作可能にするという作用を有する。
【0013】
第3の発明であるヒューズ筒操作補助具は、上述の第1又は第2の発明であって、平面視した際の単純スライド領域と回動スライド領域の間に着脱可能に設けられるストッパー部材を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用に加えて、ストッパー部材をセットした際に、単純スライド領域から回動スライド領域へのスライド駒の進入を規制するという作用を有する。
これにより、第3の発明を用いて円筒型カットアウトへのヒューズ筒の取付け作業を行う際に、スライド駒が意図せず単純スライド領域から回動スライド領域に進入して、スライド駒をその中心軸を基軸に回動してしまうのを防ぐという作用を有する。
この点をより詳細に説明すると、円筒型カットアウトにヒューズ筒を挿入固定する場合は、ソケットの係合用突起にヒューズ筒の係合用突起を係合させなくともよい。この場合、第3の発明を用いてヒューズ筒を円筒型カットアウトに挿入固定する際の動作は下記のようになる。
まず、ソケットの係合用突起上にヒューズ筒の係合用突起を載置した状態でソケットごとヒューズ筒を単純スライドさせて、ヒューズ筒を円筒型カットアウト内に挿入する。この後、ヒューズ筒が円筒型カットアウト内に固定された状態で、ヒューズ筒を保持するソケットを回動させることなく鉛直下方側に引下げる。
そして、上述の一連の動作の最後にソケットを鉛直下方側に引下げる際に、ソケットを保持するスライド駒がその中心軸を基軸に回動してしまうと、ソケットに保持されているヒューズ筒に、このヒューズ筒を鉛直下方側に引下げるような力が作用して、円筒型カットアウトに挿入固定されたヒューズ筒が接触不良になってしまう場合がある。
これに対して、第3の発明がストッパー部材を備えていることで、上述の一連の動作の最後にソケットを鉛直下方側に引下げる際に、スライド駒が単純スライド領域から意図せず回動スライド領域に進入して、その中心軸を基軸に回動するのを防ぐという作用を有する。
この結果、第3の発明を用いてヒューズ筒を円筒型カットアウトに挿入固定する際に、円筒型カットアウト内においてヒューズ筒が接触不良になるのを防ぐという作用を有する。
【0014】
第4の発明であるヒューズ筒操作補助具は、上述の第1乃至第3のいずれかの発明であって、レールの長手方向に対する棒体の中心軸のなす角度θ1(取付角度θ1)は89度以下であることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、レールの長手方向に対する棒体の取付角度θ1を89度以下に設定することで、棒体の操作によりレールをその長手方向にスライドさせる作業を容易にするという作用を有する。
また、第4の発明において取付角度θ1の大きさが0に近いほど、第4の発明の鉛直方向における占有領域が狭くなる。
つまり、レールの長手方向に対する棒体の取付角度θ1が0に近いほど、円筒型カットアウト直下の何もない空間が狭くとも、第4の発明を用いてヒューズ筒の着脱できる可能性が高くなる。
【0015】
第5の発明であるヒューズ筒操作補助具は、上述の第1乃至第4のいずれかの発明であるヒューズ筒操作補助具であって、棒体は共用操作棒であり、台座と共用操作棒の接続部は、菊座型のアダプタを備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、台座が菊座型のアダプタを備えていることで、第5の発明を操作するための棒体として、従来公知の共用操作棒を使用可能にするという作用を有する。
また、台座が菊座型のアダプタを備えている場合は、レールの長手方向に対する共用操作棒の取付け角度を自在に変更可能にするという作用も有する。
【発明の効果】
【0016】
上述のような第1の発明によれば、円筒型カットアウトに設置されるヒューズ筒に円筒型カットアウト操作具を装着して、この円筒型カットアウト操作具にスライド駒を接続した状態でレールをその長手方向にスライドさせた際に、スライド駒が単純スライド領域に存在している場合はその中心軸を基軸にした回動を規制することができる。その一方で、スライド駒が回動スライド領域に存在している場合は、スライド駒をその中心軸を基軸に回動させることができる。
つまり、第1の発明によれば、レール上におけるスライド駒の位置を変えることで、スライド駒の中心軸を基軸にした回動動作を規制したり、許容したりすることができる。
この結果、第1の発明によれば、レールをその長手方向にスライドさせるだけで、スライド駒に接続される円筒型カットアウト操作具を、必要に応じてその中心軸を基軸に回動させることができる。そして、これによりヒューズ筒を円筒型カットアウト操作具に固定したり、あるいはこの固定状態を解除したりすることができる。
このことは、円筒型カットアウトにヒューズ筒を着脱する際に、円筒型カットアウトの直下に共用操作棒を配置して、この共用操作棒をその中心軸を基軸に正方向又は逆方向に回動させる動作を行う必要がないことを意味している。
この場合、円筒型カットアウトの直下に共用操作棒の配設の妨げになるような障害物が存在している場合や、円筒型カットアウトの中心軸が鉛直方向に対して傾斜している場合でも、第1の発明を用いてヒューズ筒の着脱作業を容易に行うことができる。
よって、第1の発明によれば、従来公知のヒューズ筒をそのまま用いながら、その挿脱作業を円筒型カットアウトの斜め下側から行うことができる。
【0017】
第2の発明は、上述の第1の発明においてスライド駒に装着される円筒型カットアウト操作具のソケットを、スライド駒に直接設けたものである。
したがって、第2の発明によれば、上述の第1の発明が奏する効果を、円筒型カットアウト操作具を用いることなく発揮させることができる。
【0018】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。
さらに、第3の発明ではレールがストッパー部材を備えていることで、円筒型カットアウトに上述の別形態のヒューズ筒の取付け作業を行う際に、レールの単純スライド領域にのみスライド駒を配置しておくことができる。
この場合、第3の発明の使用中にレール上におけるスライド駒の存在位置を作業者が目視により確認することができない場合でも、スライド駒を確実に単純スライド領域に配置しておくことができる。
このため、作業者はレールをその長手方向にスライドさせることで、スライド駒の回動動作を規制しながらヒューズ筒を間接的に操作して円筒型カットアウトに挿入固定することができる。
この場合、ヒューズ筒を保持するソケットをその中心軸を基軸に回動させることなくヒューズ筒の下端から離間させることができる。これにより、ヒューズ筒の下端からソケットを離間させる際に、ヒューズ筒を鉛直下方側に引下げるような力が作用するのを好適に防止できる。
この結果、第3の発明を用いてヒューズ筒を円筒型カットアウトに挿入固定する際に、ヒューズ筒が接触不良になるのを防止できる。
したがって、第3の発明によれば、特に円筒型カットアウトにヒューズ筒を取り付ける際の作業信頼性を向上させることができる。
【0019】
第4の発明は、上述の第1乃至第3のそれぞれの発明による効果を有する。
また、第4の発明では、台座の直下でかつ鉛直方向に、第4の発明を操作するための棒体を配置する必要ない。
よって、第4の発明によれば、円筒型カットアウトにヒューズ筒を着脱する際の、円筒型カットアウトの直下の作業環境に関する制約を軽減することができる。
したがって、第4の発明によれば、円筒型カットアウトへのヒューズ筒の着脱作業を容易かつ確実にしてその作業性を向上させることができる。
【0020】
第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。
さらに、第5の発明では、既存の共用操作棒を用いて第5の発明である補助具を操作することができる。
この結果、第5の発明を共用操作棒から分離して持ち運んだり、収納保管したりすることができるので、第5の発明の取り扱いを一層容易にできる。
また、第5の発明では、菊座型のアダプタを介して共用操作棒を取設可能とすることで、レールの長手方向に対する共用操作棒の取付け角度が変更できる。
この場合、第5の発明の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の側面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の使用方法を説明するための側面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の使用方法を説明するための側面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の使用方法を説明するための側面図である。
【
図6】本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の使用方法を説明するための側面図である。
【
図7】本発明の実施例2に係るヒューズ筒操作補助具の斜視図である。
【
図8】本発明の実施例3に係るヒューズ筒操作補助具の側面図である。
【
図9】本発明の実施例4に係るヒューズ筒操作補助具を分解して示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施例4に係るヒューズ筒操作補助具の斜視図である。
【
図11】円筒型カットアウトに対するヒューズ筒の設置作業時(従来法による)の様子を示すイメージ図である。
【
図12】ヒューズ筒とそれを支持する円筒型カットアウト操作具の一部を欠いて示す側面図である。
【
図13】ヒューズ筒の下端及び円筒型カットアウト操作具のソケットの開口部を拡大して示す斜視図である。
【
図14】円筒型カットアウト操作具のソケットにヒューズ筒を係合・固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るヒューズ筒操作補助具について実施例1乃至実施例4を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0023】
はじめに、本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の概要について
図1,2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の側面図であり、
図2は同ヒューズ筒操作補助具の斜視図である。なお、
図11乃至
図14に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aは、先の
図11乃至
図14に示すような円筒型のヒューズ筒10を保持する円筒型カットアウト操作具9を操作するための補助具である。
このような実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aは、
図1,2に示すように、円筒型カットアウト操作具を着脱可能に保持するとともに、先の
図11乃至
図14に示すような従来公知の円筒型カットアウト操作具9を操作するスライド駒2と、このスライド駒2を保持した状態でスライドさせるレール4と、このレール4とスライド駒2の間に形成され、レール4の長手方向にスライド駒2をスライドさせる際にレール4からスライド駒2が離間するのを妨げる係合構造と、このレール4と実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを操作するための棒体(例えば共用操作棒8)の間に介設される台座6を備えてなるものである。
なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aにおいて、レール4の長手方向にスライド駒2をスライドさせる際にレール4からスライド駒2が離間するのを妨げる係合構造は、例えば以下に示すようなスライド駒2に形成される係合用溝部2cとレール4に形成される係合用突条部4cにより構成されている。
【0024】
そして、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aにおけるスライド駒2は、
図1,2に示すように、その中心軸に対する垂直断面形状が2の倍数の正多角形である角柱部2aと、周側面上に複数の鋸歯3を備えたピニオン部2bと、角柱部2aとピニオン部2bの間に周設される凹溝状の係合用溝部2cと、スライド駒2の上方端部に設けられる、例えば先の
図11乃至
図14に示すような円筒型カットアウト操作具9を着脱可能に保持する接続構造(例えばツイストロック構造2d及びツイストロック構造9c等)と、を備えている。
なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのスライド駒2に接続される円筒型カットアウト操作具9は、先の
図11乃至
図14に示すような円筒型カットアウト操作具9に特定される必要はなく、他の形態の円筒型カットアウト操作具でもよい。
【0025】
さらに、上述のようなスライド駒2をスライドさせるレール4は、
図1,2に示すように、スライド駒2の角柱部2aを挟持する挟持部4aを有する単純スライド領域Pと、レール4を平面視した際にこの単純スライド領域Pに延設され、スライド駒2のピニオン部2bに形成される鋸歯3と噛合するラック部4bを有する回動スライド領域Qと、上記単純スライド領域P及び回動スライド領域Qと重複して設けられ、スライド駒2の係合用溝部2cと常時係合する係合用突条部4cとを備えている。
さらに、レール4において単純スライド領域P、回動スライド領域Q及び係合用突条部4cのそれぞれは、
図1,2に示すように、スライド駒2の中心軸方向(
図1,2では鉛直方向)を基準とした際に、鉛直上方側から下方側に向かって層をなすように配置してもよい。
つまり、単純スライド領域Pと回動スライド領域Qの間に係合用突条部4cを介設してもよい。より詳細には、単純スライド領域Pと回動スライド領域Qは、レール4を平面視した際には一直線上に配置されているが、三次元的には単純スライド領域Pの延長線上に回動スライド領域Qが存在しているのではなく、これらは鉛直方向に並設されている(
図1,2を参照)。
【0026】
上述のような実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4にスライド駒2を設置した際に、スライド駒2に形成される係合用溝部2cにレール4の係合用突条部4cが常時係合して係合構造を形成することで、スライド駒2がスライドする際にレール4からスライド駒2が離間するのを防止している。
【0027】
さらに、レール4の単純スライド領域Pでは、スライド駒2を設置した際に、挟持部4a,4aの空隙にスライド駒2の角柱部2aが配置される。そして、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、挟持部4a,4a間の距離が、角柱部2aを構成する一対の対辺間の距離と略同一に設定されることで、挟持部4a,4aを構成する一対の面と、角柱部2aを構成する一対の対辺が互に略平行に配設される。
なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4の挟持部4a,4aとスライド駒2の角柱部2aの間には、スライド駒2をスライドさせるのに必要な隙間(クリアランス)を有しているため、スライド駒2を挟持部4a,4a同士の隙間において支障なくスライドさせることができる。
このように、レール4の単純スライド領域Pでは、レール4の長手方向T(係合用突条部4cの形成方向と同じ;
図2を参照)へのスライド駒2のスライドが許容される一方で、スライド駒2の中心軸(角柱部2aの中心軸と同じ)を基軸にしたスライド駒2の回動動作が規制される。
より詳細には、レール4の単純スライド領域Pにおいて挟持部4a,4a間の距離が、スライド駒2の角柱部2aを構成する一対の対辺間の距離よりも大きく、かつ角柱部2aを構成する一対の対角間の距離以下である場合に、スライド駒2の中心軸(角柱部2aの中心軸と同じ)を基軸にしたスライド駒2の回動動作を確実に規制することができる。
また、レール4の単純スライド領域Pでは、スライド駒2のピニオン部2bは、レール4の中空部を構成する各面に接触しないかあるいは、単に接触するだけで係合構造等は形成されない。このため、ピニオン部2bはレール4の中空部内をレール4の長手方向Tにスライドするだけである。
【0028】
加えて、レール4の回動スライド領域Qでは、
図2に示すように、挟持部4a,4aを形成している一対の面間の距離が広がることで、挟持部4a,4aとスライド駒2の角柱部2aとの係合関係が解除される。
その一方で、レール4の回動スライド領域Qでは、スライド駒2のピニオン部2bを収容する中空部の一方の側面側にのみラック部4bを備えており、このラック部4bとスライド駒2側のピニオン部2bが噛合することでスライド駒2は、その中心軸(角柱部2a及びピニオン部2bの中心軸と同じ)を基軸に
図2中の符号Uで示す方向に回動する。
つまり、レール4の回動スライド領域Qでは、スライド駒2がその中心軸を基軸に回動しながら、レール4の長手方向T(
図2中の符号Tで示す方向)にスライドする。
なお、特に図示しないが本実施形態では、スライド駒2のピニオン部2bを収容する中空部の両側面にラック部4bを設けてもよい。この場合、一対のラック部4bの間でピニオン部2bが確実に回転するよう、ラック部4bの鋸歯5の配置を適宜調整しておく必要がある。
【0029】
したがって、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、スライド駒2がレール4の単純スライド領域Pを移動する場合は、スライド駒2の中心軸を基軸にした回動動作が規制される一方で、スライド駒2が回動スライド領域Qを移動する場合は、スライド駒2はその中心軸を基軸に回動する。
つまり、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのスライド駒2に円筒型カットアウト操作具9を装着した場合は、
図1に示すように、レール4の単純スライド領域Pでは、円筒型カットアウト操作具9がその中心軸を基軸に回動せずにレール4上をスライドする一方で、回動スライド領域Qでは円筒型カットアウト操作具9がその中心軸を基軸に回動しながらレール4上をスライドする。
【0030】
なお、本実施形態ではスライド駒2の鉛直上方側に角柱部2aを、鉛直下方側にピニオン部2bを設け、これらに対応するようにレール4に挟持部4a及びラック部4bをそれぞれ設ける場合を例に挙げて説明しているが、スライド駒2における角柱部2aとピニオン部2bの位置関係を入れ替えても同様の作用効果を発揮させることができる。
【0031】
また、スライド駒2の角柱部2aの中心軸に対する垂直断面形状(正多角形)の角部の数は、4以上の2の倍数であればよくその上限値は特に規定されない。しかしながら、この角部の数が12を超えるとレール4における挟持部4a,4aを構成する一対の面間の距離の設定が難しくなることから、角部の数は4~12の範囲内にするのが好適である。
また、本実施形態では特にスライド駒2の角柱部2aの中心軸に対する垂直断面形状が正十二角形である場合を例に挙げて説明している。
【0032】
上述の通り、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aが、スライド駒2側に形成される係合用溝部2cと、レール4側に形成される係合用突条部4c,4cからなる係合構造を備えていることで、スライド駒2はその中心軸を基軸にした回動が可能な状態で、レール4の長手方向Tにスライド可能である。
その一方で、レール4における単純スライド領域Pでは、上記係合構造とは別にスライド駒2側の角柱部2aとレール4側の挟持部4a,4aからなる係合構造が形成されることで、スライド駒2の中心軸を基軸にした回動動作が規制され、この結果、スライド駒2は回動することなくレール4の長手方向Tにスライドする。
他方、レール4における回動スライド領域Qでは、スライド駒2側の角柱部2aとレール4側の挟持部4a,4aからなる係合関係が解除されるため、スライド駒2はその中心軸を基軸に回動可能な状態になる。さらに、レール4の回動スライド領域Qでは、レール4側のラック部4bとスライド駒2側のピニオン部2bが噛合することで、ラック部4b上をピニオン部2bが回動する。この結果、スライド駒2は、その中心軸を基軸に回動しながらレール4の長手方向Tにスライドする。
【0033】
さらに、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aは、
図1,2に示すように、例えばレール4の底面に、側面視で略三角形状をなす台座6を備え、さらにこの台座6のレール4に連結されない側の頂部に、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを間接的に操作可能にするための棒体を接続可能に構成されている。
そして、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aの台座6と、操作用の棒体との連結構造としては、例えば
図1,2に示すような菊座型のアダプタ7を用いることができる(任意選択構成要素)。
この場合、従来公知の共用操作棒8を実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aに連結してその操作を行うことができる。この場合、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを操作するための専用の棒体を別途準備する必要がなくなるので、その取扱いが容易になる。
【0034】
次に、
図1及び
図3乃至
図6を参照しながら実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて円筒型カットアウトにヒューズ筒を設置する際の作業手順を説明する。
図3乃至
図6はいずれも本発明の実施例1に係るヒューズ筒操作補助具の使用方法を説明するための側面図である。なお、
図1,2及び
図11乃至
図14に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先の
図11に示す円筒型カットアウト18に、先の
図11乃至
図14に示すヒューズ筒10を設置する場合、その準備作業として、先の
図1に示すように、まず実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのスライド駒2の上端側に、例えばツイストロック構造2d,9c(接続構造)を介して円筒型カットアウト操作具9を装着する。
さらに、この円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにヒューズ筒10を係合・固定させる。なお、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aへのヒューズ筒10の固定構造、並びにこれらの固定及び解除方法については、本明細書の冒頭で
図12乃至
図14を参照しながら説明した通りである。
【0035】
さらに、ヒューズ筒10の取設対象である円筒型カットアウト18に対する準備作業としては、本体部18aの下部の開口18bを閉止している閉止蓋(図示せず)を取外しておく必要がある。
なお、円筒型カットアウト18に新たにヒューズ筒10を挿設する場合は、中空部18cから使用済のヒューズ筒10を予め取り外しておく必要がある。なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて円筒型カットアウト18からヒューズ筒10を取外す際の具体的な作業手順については後段において詳細に説明する。
【0036】
上述のような準備作業を完了した後、ヒューズ筒10を備えた円筒型カットアウト操作具9をスライド駒2に接続してなる実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを共用操作棒8により操作して、
図3に示すように、円筒型カットアウト18の開口18bの直下にヒューズ筒10を配置する。
【0037】
この後、さらに共用操作棒8を操作して、ヒューズ筒10を備えたヒューズ筒操作補助具1Aを鉛直上方側(
図3中の符号Aで示す方向に)に押し上げて、ヒューズ筒10の先端を円筒型カットアウト18の中空部18c内の細くなった部分に達するまで挿入する。そして、さらに共用操作棒8を操作して、ヒューズ筒操作補助具1Aを
図4中の符号Bで示す方向に押し上げて、
図3中の破線で示す位置にヒューズ筒10を押し込んで固定する。なお、
図3中の破線で示す位置にヒューズ筒10がしっかりと挿設された状態を示したものが
図4である。
【0038】
この後、さらに共用操作棒8を操作して、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのレール4をその長手方向にスライドさせて、つまり実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを
図4中の符号Bで示す方向にスライドさせることで、レール4の単純スライド領域Pに位置するスライド駒2を、
図5に示すように回動スライド領域Qに移動させる。
先にも述べたように、スライド駒2がレール4の単純スライド領域Pにある間は、レール4上をスライドしてもスライド駒2はその中心軸を基軸に回動することはない。
このため、スライド駒2がレール4の単純スライド領域Pに存在している間は、ヒューズ筒10の下端10a側に形成される係合用突起10bと、ソケット9aの中空部内に形成される係合用突起9dとの係合関係(固定構造;
図14を参照)が解除されることはない。
【0039】
その一方で、スライド駒2がレール4の回動スライド領域Qに位置する場合は、スライド駒2側のピニオン部2bとレール4側のラック部4bが噛合するため、スライド駒2がその中心軸を基軸に回動する。つまり、スライド駒2に接続されている円筒型カットアウト操作具9が、ソケット9a共々その中心軸を基軸に回動する。
より具体的には、例えば
図2に示すレール4の回動スライド領域Qにおいてスライド駒2が、回動スライド領域Qの端縁Xに向かってスライドする場合、スライド駒2は
図2中の符号Wで示す方向(時計回り方向)に回動する。
また、例えば
図2に示すレール4の回動スライド領域Qにおいてスライド駒2が、回動スライド領域Qの端縁Xから単純スライド領域Pに向かってスライドする場合、スライド駒2は
図2中の符号Vで示す方向(反時計回り方向)に回動する。
よって、レール4の回動スライド領域Qにおいてスライド駒2を端縁Xに向かってスライドさせることで、スライド駒2が
図2中の符号Wで示す方向に回動し、これによりヒューズ筒10側の係合用突起10bと、ソケット9a側の係合用突起9dの係合関係(ロック状態)が解除される(
図13を参照)。
【0040】
そして、
図5に示す状態において共用操作棒8をさらに操作して実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを鉛直下方側(
図5中の符号Cで示す方向)に引下げることで、
図6に示すように、ヒューズ筒10の下端10aから円筒型カットアウト操作具9のソケット9aを離間させることができる。
【0041】
つまり、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4が回動スライド領域Qを備えていることで、レール4をその長手方向Tにスライドさせる動作を、スライド駒2をその中心軸を基軸に回動させる動作に変換することができる。
したがって、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aによれば、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aをその中心軸を基軸に回動させるために、円筒型カットアウト操作具9の直下に共用操作棒8等の棒体を連結しておく必要がない。
この結果、円筒型カットアウト18の開口18bの直下に、共用操作棒8等の棒体を鉛直方向に配設することを妨げるような障害物が存在する場合でも、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて円筒型カットアウト18にヒューズ筒10を設置することができる。
さらに、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いる場合は、先の特許文献1に示す場合のように、ヒューズ筒の形態を特殊な形態に変更する必要もない。このため、従来公知のヒューズ筒10をそのまま使用できるというメリットも有する。
【0042】
なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、
図1,2に示すように、レール4の長手方向Tに対する操作用の棒体(例えば、共用操作棒8等)の中心軸Sの成す角度θ
1を89度以下に設定してもよい(任意選択構成要素)。
つまり、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4の長手方向Tに対する操作用の棒体(例えば、共用操作棒8)の取付け角度θ
1を89度以下に設定してもよい(任意選択構成要素)。
この場合、ヒューズ筒10を保持する円筒型カットアウト操作具9を、その下端の斜め下側から操作して、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aをその中心軸を基軸に正方向又は逆方向に回動させることができる。
この場合、円筒型カットアウト18の開口18bの直下の何もない空間が狭い、あるいは円筒型カットアウト18の中心軸方向が鉛直方向に対して傾斜しているなどの理由により、円筒型カットアウト18の開口18bの直下に操作用棒体を鉛直方向に配置することが困難な場合に、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて円筒型カットアウト18にヒューズ筒10を設置することができる。
【0043】
さらに、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて、円筒型カットアウト18からヒューズ筒10を取外すこともできる。
この場合は、先に
図3乃至
図6を用いて説明した円筒型カットアウト18にヒューズ筒10を設置する作業手順の逆を行えばよい。
【0044】
より具体的には、先の
図6に示すように、操作用の棒体(例えば、共用操作棒8等)を操作して、図示しない閉止蓋が外された円筒型カットアウト18の開口18bの斜め下方側から、円筒型カットアウト操作具9を備えた実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを押し上げて、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aの開口を円筒型カットアウト18の開口18bの直下に配置する。
次いで、この状態でさらに操作用の棒体(例えば、共用操作棒8等)を操作して実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを鉛直上方側に持ち上げて、ソケット9aの先端側を円筒型カットアウト18の開口18bからその内部に挿入して、ヒューズ筒10の下端10aにソケット9aを接触させる。この時、スライド駒2は、レール4における回動スライド領域Qの端縁X(
図5,6中の符号Xで示す位置を参照)に配置しておく。
この後、再び操作用の棒体(例えば、共用操作棒8等)を操作して、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのレール4をその長手方向(
図5中の符号Dで示す方向)に所望量だけスライドさせることで、ソケット9aの開口にヒューズ筒10の下端10aを収容して固定することができる(
図5を参照)。
【0045】
つまり、上記動作によりソケット9aの開口にヒューズ筒10の下端10aを収容して固定するには、すなわち実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aのスライド駒2をその中心軸を基軸に回動させるには、スライド駒2がレール4の回動スライド領域Qに位置している必要がある。
この場合、上述のようなレール4のスライド動作に連動してスライド駒2に接続される円筒型カットアウト操作具9がソケット9a共々その中心軸を基軸に正方向(
図14中の符号Vで示す方向)に回動する。
この結果、ソケット9aの中空部内に突設される係合用突起9dと、このソケット9aに保持されるヒューズ筒10の係合用突起10bが係合した場合は、ソケット9a内にヒューズ筒10が固定された状態になる。
このとき、実際には作業者は、ソケット9a側の係合用突起9dとヒューズ筒10側の係合用突起10bとがしっかりと係合しているか否かを目視により確認することができない。しかしながら、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを
図5中の符号B´で示す方向にスライドさせた際に、つまり、円筒型カットアウト操作具9を斜め下方側に引下げた際に、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにヒューズ筒10が保持されていれば、ソケット9a側の係合用突起9dとヒューズ筒10側の係合用突起10bが係合したことになる。
他方、上記操作を行った場合でも、円筒型カットアウト操作具9のソケット9aにヒューズ筒10が保持されていなかった場合は、ソケット9a側の係合用突起9dとヒューズ筒10側の係合用突起10bが係合していなかったことになる。この場合は、これらが係合するまでレール4の回動スライド領域Qにおいて、スライド駒2をレール4の縁端X(
図5,6を参照)に移動させた状態から実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを
図4中の符号Dで示す方向にスライドさせる動作を繰り返せばよい。
【0046】
なお、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いる場合は、スライド駒2がレール4の単純スライド領域Pに位置しているのか、あるいは回動スライド領域Qに位置しているのかを目視により確認できないことが想定される。
この場合、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを用いて円筒型カットアウト18からヒューズ筒10を取外す際に、スライド駒2がレール4の単純スライド領域Pに位置している場合は、レール4をその長手方向にスライドさせても円筒型カットアウト操作具9のソケット9aをその中心軸を基軸に回動させることはできない。
このため、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4の側面に単純スライド領域Pと回動スライド領域Qの境界を示す線を付しておいてもよい(図示せず;任意選択構成要素)。あるいは、レール4の側面に単純スライド領域Pと回動スライド領域Qとを色分けにより表示しておいてもよい(図示せず;任意選択構成要素)。
この場合、作業者はレール4の側面側を目視により確認するだけで、スライド駒2が単純スライド領域Pに位置しているのか回動スライド領域Qに位置しているのかを容易に判別することができる。
【0047】
さらに、実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aでは、レール4にスライド駒2を装着した際にレール4から裸出するスライド駒2の周側面を所望間隔毎に区切って色分け表示しておいてもよい(図示せず;任意選択構成要素)。
この場合、作業者が実施例1に係るヒューズ筒操作補助具1Aを操作した際に、スライド駒2がその中心軸を基軸にどの程度回動したかを目視により確認することができる。