(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021054
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】半導体レーザ素子
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20220126BHJP
H01S 5/40 20060101ALN20220126BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124411
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【氏名又は名称】山本 孝久
(74)【代理人】
【識別番号】100118290
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 正明
(72)【発明者】
【氏名】中島 博
(72)【発明者】
【氏名】濱口 達史
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅之
(72)【発明者】
【氏名】林 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】幸田 倫太郎
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC04
5F173AC14
5F173AC23
5F173AC26
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC52
5F173AC53
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP32
5F173AP33
5F173AR03
(57)【要約】
【課題】発振波長が動作温度や動作電流に対して安定である半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子は、第1化合物半導体層21、活性層23及び第2化合物半導体層22が積層されて成る積層構造体20を備えた共振器構造、並びに、共振器構造の共振方向に沿った両端に設けられた第1光反射層41及び第2光反射層42を有しており、発振波長をλとしたとき、第1光反射層41及び第2光反射層42のそれぞれは、光学的膜厚がk
0(λ/4)の薄膜が、複数、積層された屈折率周期構造を有し、第1光反射層41及び第2光反射層42の少なくともいずれか一方の光反射層の内部には、位相シフト層が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層されて成る積層構造体を備えた共振器構造、並びに、
共振器構造の共振方向に沿った両端に設けられた第1光反射層及び第2光反射層、
を有し、
発振波長をλ0としたとき、第1光反射層は、少なくとも、光学的膜厚がk11(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k11≦1.3]、及び、光学的膜厚がk12(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k12≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk10(λ0/2)[但し、0.9≦k10≦1.1]の周期を有する第1屈折率周期構造を有し、
第2光反射層は、少なくとも、光学的膜厚がk21(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k21≦1.3]、及び、光学的膜厚がk22(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k22≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk20(λ0/2)[但し、0.9≦k20≦1.1]の周期を有する第2屈折率周期構造を有し、
第1光反射層及び第2光反射層の少なくともいずれか一方の光反射層の内部には、位相シフト層が設けられている半導体レーザ素子。
【請求項2】
位相シフト層の数は、1以上、5以下である請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
位相シフト層と位相シフト層との間に、第1の薄膜、又は、第2の薄膜、又は、第1の薄膜及び第2の薄膜が配設されている請求項2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
位相シフト層は、屈折率周期構造の端部には設けられていない請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
位相シフト層の光学的膜厚は、λ0の0.1倍以上、50倍以下である請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じであり、又は、第2の薄膜を構成する材料と同じである請求項5に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
位相シフト層の光学的膜厚は、k3(λ0/4)(2r+1)[但し、rは100以下の整数であり、0.9≦k3≦1.1]を満足する請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
積層構造体は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層されて成り、
第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面の上に形成されており、
第2光反射層は、第2化合物半導体層の第2面側に形成されており、
面発光レーザ素子から成る請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
第1光反射層は、凹面鏡として機能し、
第2光反射層は、平坦な形状を有する請求項8に記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
共振器長は1×10-5m以上である請求項8に記載の半導体レーザ素子。
【請求項11】
積層構造体は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層されて成り、
積層構造体には、活性層で生成したレーザ光の一部を出射し、残部を反射する第1端面、及び、第1端面と対向し、活性層で生成したレーザ光を反射する第2端面が設けられており、
第1端面には第1光反射層が設けられており、
第2端面には第2光反射層が設けられている請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光レーザ素子(VCSEL)から成る発光素子においては、一般に、2つの光反射層(Distributed Bragg Reflector 層、DBR層)の間でレーザ光を共振させることによってレーザ発振が生じる。そして、n型化合物半導体層(第1化合物半導体層)、化合物半導体から成る活性層(発光層)及びp型化合物半導体層(第2化合物半導体層)が積層された積層構造体を有する面発光レーザ素子においては、一般に、p型化合物半導体層上に透明導電性材料から成る第2電極を形成し、第2電極の上に絶縁材料の積層構造から成る第2光反射層を形成する。また、n型化合物半導体層上に(導電性の基板上にn型化合物半導体層が形成されている場合には基板の露出面上に)、絶縁材料の積層構造から成る第1光反射層、及び、第1電極を形成する。
【0003】
第1光反射層が凹面鏡としても機能する構造が、例えば、WO2018/083877A1に開示されている。ここで、この国際公開公報に開示された技術にあっては、活性層を基準として、例えば、n型化合物半導体層に凸部が形成されており、凸部上に第1光反射層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、面発光レーザ素子において、共振器長が1μm程度である場合、縦モードの間隔は10nm以上になる。従って、このような共振器長を有する面発光レーザ素子の発振波長は、動作温度や動作電流に対して安定しており、縦モードも単一となる。そして、面発光レーザ素子において、共振器長が長くなると、縦モードの間隔は短くなる。従って、長い共振器長を有する面発光レーザ素子の発振波長は、動作温度や動作電流に対して不安定となり、縦モードもマルチモードになり易い。また、一般に、端面発光半導体レーザ素子では共振器長が1mm程度となるため、縦モードの間隔は0.1nmオーダーとなる。一方、一般的な半導体材料の利得は数nm程度の帯域を有し、且つ、利得ピーク波長は温度に依存する。そのため、例えば、端面出射半導体レーザ素子では、動作温度や動作電流によって縦モードがホップするように変化する。
【0006】
従って、本開示の目的は、発振波長が動作温度や動作電流に対して安定である構成、構造を有する半導体レーザ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の半導体レーザ素子は、
第1化合物半導体層、活性層及び第2化合物半導体層が積層されて成る積層構造体を備えた共振器構造、並びに、
共振器構造の共振方向に沿った両端に設けられた第1光反射層及び第2光反射層、
を有し、
発振波長をλ0としたとき、第1光反射層は、少なくとも、光学的膜厚がk11(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k11≦1.3]、及び、光学的膜厚がk12(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k12≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk10(λ0/2)[但し、0.9≦k10≦1.1]の周期を有する第1屈折率周期構造を有し、
第2光反射層は、少なくとも、光学的膜厚がk21(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k21≦1.3]、及び、光学的膜厚がk22(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k22≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk20(λ0/2)[但し、0.9≦k20≦1.1]の周期を有する第2屈折率周期構造を有し、
第1光反射層及び第2光反射層の少なくともいずれか一方の光反射層の内部には、位相シフト層が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の発光素子の変形例(変形例-1)の模式的な一部端面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の発光素子の変形例(変形例-2)の模式的な一部端面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図9】
図9は、実施例1の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図10】
図10は、実施例1の発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図11】
図11A及び
図11Bは、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図12】
図12は、
図11Bに引き続き、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図13】
図13は、
図12に引き続き、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための積層構造体等の模式的な一部端面図である。
【
図14】
図14A及び
図14Bは、
図13に引き続き、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための第1化合物半導体層等の模式的な一部端面図である。
【
図17】
図17は、実施例2の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図18】
図18は、実施例2の発光素子アレイの模式的な一部端面図である。
【
図19】
図19は、実施例2の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図20】
図20は、実施例2の発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図21】
図21は、実施例2の発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を示す模式的な平面図である。
【
図22】
図22は、実施例2の発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を示す模式的な平面図である。
【
図23】
図23A及び
図23Bは、実施例2の発光素子アレイの製造方法を説明するための第1化合物半導体層等の模式的な一部端面図である。
【
図26】
図26は、実施例3の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図27】
図27は、実施例4の発光素子の模式的な一部端面図である。
【
図28】
図28は、実施例4の発光素子の変形例の模式的な一部端面図である。
【
図30】
図30は、実施例6の発光素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【
図32】
図32は、実施例8の発光素子の模式的な一部断面図である。
【
図33】
図33は、実施例9の端面出射半導体レーザ素子の模式的な断面図である。
【
図34】
図34は、実施例9の端面出射半導体レーザ素子の模式的な断面図である。
【
図35】
図35は、第2の部分が平坦な実施例1の発光素子の変形例の模式的な一部端面図である。
【
図36】
図36Aは、実施例1の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値を示す図であり、
図36Bは、
図36Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長445nm付近の拡大図であり、
図36Cは、比較例1において第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値を示す図である。
【
図37】
図37Aは、
図36Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長445nm付近の拡大図であり、
図37Bは、実施例1の半導体レーザ素子において、第1電極と第2電極との間に電流を流したときの発振波長の変化を示す図であり、
図37Cは、比較例1の半導体レーザ素子において、第1電極と第2電極との間に電流を流したときの発振波長の変化を示す図である。
【
図38】
図38は、第1電極と第2電極との間に流した電流(動作電流と、発振波長の変化量を示す図である。
【
図39】
図39Aは、共振器長L
ORと、縦モードの間隔Δλの関係を示す図であり、
図39B及び
図39Cは、第1電極と第2電極との間に電流を流し、活性層の温度が上昇したときの活性層利得の変化の概念図である。
【
図40】
図40A及び
図40Bは、半導体レーザ素子において、活性層の温度の変化によって波長に対する活性層利得に変化が生じる状態を示す概念図である。
【
図41】
図41A及び
図41Bは、それぞれ、実施例1の変形例-3の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値を示すグラフ、及び、
図41Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長430nm乃至460nm付近の拡大図である。
【
図42】
図42A及び
図42Bは、それぞれ、実施例1の変形例-4の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値を示すグラフ、及び、
図42Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長450nm付近の拡大図である。
【
図43】
図43A及び
図43Bは、それぞれ、実施例1の変形例-6の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値を示すグラフ、及び、
図43Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長450nm付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の半導体レーザ素子、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の半導体レーザ素子、面発光レーザ素子、第1構成の発光素子、第1-A構成の発光素子、第2構成の発光素子)
3.実施例2(実施例1の変形、第1-B構成の発光素子)
4.実施例3(実施例1~実施例2の変形、第3構成の発光素子)
5.実施例4(実施例1~実施例2の変形、第4構成の発光素子)
6.実施例5(実施例4の変形)
7.実施例6(実施例1~実施例5の変形)
8.実施例7(本開示の発光素子の別の製造方法)
9.実施例8(実施例1~実施例6の変形)
10.実施例9(本開示の半導体レーザ素子、端面出射半導体レーザ素子)
11.その他
【0010】
[本開示の半導体レーザ素子、全般に関する説明]
本開示の半導体レーザ素子において、位相シフト層の数は、1以上、5以下である形態とすることができる。そして、位相シフト層の数が2以上の場合、位相シフト層と位相シフト層との間に、第1の薄膜、又は、第2の薄膜、又は、第1の薄膜及び第2の薄膜が配設されている形態とすることができる。
【0011】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の半導体レーザ素子において、位相シフト層は、屈折率周期構造の端部には設けられていない形態とすることができる。
【0012】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の半導体レーザ素子において、位相シフト層の光学的膜厚は、λ0の0.1倍以上、50倍以下である形態とすることができる。そして、この場合、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じであり、又は、第2の薄膜を構成する材料と同じである形態とすることができる。但し、これに限定するものではなく、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と異なり、且つ、第2の薄膜を構成する材料と異なる形態とすることもできる。
【0013】
屈折率周期構造は、2種類の薄膜が積層された構造を有していてもよいし、3種類以上の薄膜が積層された構造を有していてもよい。
【0014】
第1の薄膜を構成する材料は、第2の薄膜を構成する材料と異なる。また、第1光反射層における第1の薄膜を構成する材料は、第2光反射層における第1の薄膜あるいは第2の薄膜を構成する材料と、同じであってもよいし、異なっていてもよく、第1光反射層における第2の薄膜を構成する材料は、第2光反射層における第1の薄膜あるいは第2の薄膜を構成する材料と、同じであってもよいし、異なっていてもよい。即ち、
第1光反射層
第1の薄膜を構成する材料:MT1-1
第2の薄膜を構成する材料:MT1-2
第2光反射層
第1の薄膜を構成する材料:MT2-1
第2の薄膜を構成する材料:MT2-2
位相シフト層を構成する材料 :MT3
としたとき、大前提として、
(A)MT1-1≠MT1-2、且つ、MT2-1≠MT2-2
の関係にあるし、MT1-1に関しては、
(B-1)MT1-1=MT2-1、又は、
(B-2)MT1-1≠MT2-1、又は、
(B-3)MT1-1=MT2-2、又は、
(B-4)MT1-1≠MT2-2
の関係にあるし、MT1-2に関しては、
(C-1)MT1-2=MT2-1、又は、
(C-2)MT1-2≠MT2-1、又は、
(C-3)MT1-2=MT2-2、又は、
(C-4)MT1-2≠MT2-2
の関係にある。また、位相シフト層が第1光反射層の内部に設けられている場合、MT3に関しては、
(D-1)MT3=MT1-1、又は、
(D-2)MT3=MT1-2、又は、
(D-3)MT3≠MT1-1、且つ、MT3≠MT1-2
の関係にあるし、位相シフト層が第2光反射層の内部に設けられている場合、MT3に関しては、
(E-1)MT3=MT2-1、又は、
(E-2)MT3=MT2-2、又は、
(E-3)MT3≠MT2-1、且つ、MT3≠MT2-2
の関係にある。
【0015】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の半導体レーザ素子において、位相シフト層の光学的膜厚は、k3(λ0/4)(2r+1)[但し、rは100以下の整数であり、0.9≦k3≦1.1]を満足する形態とすることができる。但し、これに限定するものではなく、広くは、位相シフト層の光学的膜厚は、k3’(λ0/4)(2r’)[但し、r’は100以下の整数であり、0.9≦k3’≦1.1]以外の光学的膜厚である形態とすることもできる。
【0016】
位相シフト層とは、上記のとおり、第1光反射層あるいは第2光反射層の屈折率周期構造(分布ブラッグ反射条件、DBR条件を満足する膜構造)における周期構造を乱す(擾乱する)層であり、「周期構造擾乱層」と呼ぶこともできるし、「非周期層」と呼ぶこともできる。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の半導体レーザ素子において、積層構造体は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層されて成り、
第1光反射層は、第1化合物半導体層の第1面側に位置する基部面の上に形成されており、
第2光反射層は、第2化合物半導体層の第2面側に形成されており、
面発光レーザ素子から成る構成とすることができる。尚、このような構成の半導体レーザ素子を、便宜上、『本開示における面発光レーザ素子』と呼ぶ場合がある。そして、この場合、
第1光反射層は、凹面鏡として機能し、
第2光反射層は、平坦な形状を有する構成とすることができ、これらの本開示における面発光レーザ素子において、共振器長LORは1×10-5m以上である構成とすることができる。共振器長LORの上限値として、限定するものではないが、1×10-3mを挙げることができる。
【0018】
ここで、「共振器長」とは、積層構造体と対向する第1光反射層の面と、積層構造体と対向する第2光反射層の面との間の距離であると定義する。また、共振器構造、第1光反射層及び第2光反射層によって、共振器が構成される。
【0019】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の半導体レーザ素子において、積層構造体は、
第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第1化合物半導体層、
第1化合物半導体層の第2面と面する活性層、並びに、
活性層と面する第1面、及び、第1面と対向する第2面を有する第2化合物半導体層、
が積層されて成り、
積層構造体には、活性層で生成したレーザ光の一部を出射し、残部を反射する第1端面、及び、第1端面と対向し、活性層で生成したレーザ光を反射する第2端面が設けられており、
第1端面には第1光反射層が設けられており、
第2端面には第2光反射層が設けられている構成とすることができる。尚、このような構成の半導体レーザ素子を、便宜上、『本開示における端面出射半導体レーザ素子』と呼ぶ場合がある。共振器構造、第1光反射層及び第2光反射層によって、共振器が構成される。
【0020】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の半導体レーザ素子(以下、これらを総称して、『本開示の半導体レーザ素子等』と呼ぶ場合がある)において、位相シフト層が設けられている光反射層はエタロン構造を有する形態とすることができる。ここで、エタロン構造とは、一定の距離を隔てた2つの反射面を持つ干渉系を指し、透過光の波長スペクトルは共振波長あるいはその近傍において大きな光透過率ピークを示す。
【0021】
本開示の半導体レーザ素子等は、単一の縦モードで発振することが好ましいが、これに限定するものではない。縦モードでの発振波長におけるレーザ光の強度と、この発振波長に隣接した近接モードでの発振波長におけるレーザ光の強度との比(強度比、SMSR:Side Mode Suppression Ratio)が30dB以上であるとき、単一の縦モードで発振しているとする。
【0022】
また、本開示の半導体レーザ素子等において、半導体レーザ素子の発振波長の近傍の波長における光反射率Ref2は、半導体レーザ素子の発振波長における光反射率Ref1よりも低い。半導体レーザ素子の発振波長と、半導体レーザ素子の発振波長の近傍の波長との差は、±5nm以内である。また、Ref2/Ref1≦0.999を満足することが好ましい。
【0023】
更には、本開示の半導体レーザ素子等にあっては、動作温度によって発振波長が殆ど変化しない。ここで、「発振波長が殆ど変化しない」とは、波長変化が±1nm以下であることを意味する。動作温度の下限値及び上限値として、限定するものではないが、0゜C及び80゜Cを挙げることができ、この動作温度の範囲内において波長変化が±1nm以下であるとき、「発振波長が殆ど変化しない」とする。
【0024】
また、本開示の半導体レーザ素子等にあっては、動作電流によって発振波長が殆ど変化しない。ここで、「動作電流によって発振波長が殆ど変化しない」とは、波長変化が±1nm以下であることを意味する。動作電流の下限値及び上限値として、限定するものではないが、1ミリアンペア及び20ミリアンペアを挙げることができ、この動作電流の範囲内において波長変化が±1nm以下であるとき、「動作電流によって発振波長が殆ど変化しない」とする。
【0025】
更には、本開示の半導体レーザ素子等にあっては、活性層利得が波長に対して変動しても発振波長は一定に保たれる。ここで、「活性層利得が波長に対して変動しても発振波長は一定に保たれる」とは、波長変化が±1nm以下であることを意味する。
【0026】
本開示の半導体レーザ素子等において、屈折率周期構造を構成する第1の薄膜及び第2の薄膜を、それぞれ、便宜上、「膜A」及び「膜B」と呼び、位相シフト層を、便宜上、「膜C」と呼ぶとき、屈折率周期構造は、
膜A,膜B,膜A,膜B,膜A,膜B,・・・,膜A,膜B,膜A,膜B
といった積層構造を有し、膜Cは、これらの積層構造の端部を除く、いずれかの部位に挿入されている。即ち、例えば、
膜A,膜B,膜A,膜B,膜C,膜A,膜B,・・・,膜A,膜B,膜A,膜B
といった構造とすることもできるし、
膜A,膜B,膜A,膜B,膜A,膜C,膜B,・・・,膜A,膜B,膜A,膜B
といった構造とすることもできる。尚、第1の薄膜(膜A)と第2の薄膜(膜B)の積層ユニット、あるいは又、第1の薄膜(膜B)と第2の薄膜(膜A)の積層ユニットを、便宜上、『光反射積層膜』と呼ぶ場合がある。
【0027】
本開示における面発光レーザ素子において、第1光反射層が形成されている基部面の部分(『第1の部分』と呼ぶ場合がある)には、第1化合物半導体層の第2面を基準として凸部が形成されている形態とすることができる。また、本開示における面発光レーザ素子において、第1光反射層が形成されていない基部面の部分(『第2の部分』と呼ぶ場合があり、第1の部分を囲んでいる)には、第1化合物半導体層の第2面を基準として凹部が形成されている形態とすることができ、このような形態を、便宜上、『第1構成の発光素子』と呼ぶ。但し、このような形態に限定するものではなく、第2の部分は平坦である形態とすることもできる。第2の部分は、第1の部分から延在し、第2の部分に第1光反射層の延在部が形成されている場合もあるし、第2の部分に第1光反射層の延在部が形成されていない場合もある。
【0028】
第1構成の発光素子において、基部面は微分可能であることが好ましい。即ち、基部面は滑らかである形態とすることができる。ここで、「滑らかである」とは、解析学上の用語である。例えば、実変数関数f(x)がa<x<bにおいて微分可能で、且つ、f’(x)が連続ならば、標語的に連続的微分可能であると云えるし、滑らかであるとも表現される。
【0029】
ここで、基部面をz=f(x,y)で表すとき、基部面における微分値は、
∂z/∂x=[∂f(x,y)/∂x]y
∂z/∂y=[∂f(x,y)/∂y]x
で得ることができる。
【0030】
第1構成の発光素子において、第1の部分と第2の部分との境界は、
(1)第2の部分に第1光反射層が延在していない場合、第1光反射層の外周部
(2)第2の部分に第1光反射層が延在している場合、第1の部分から第2の部分に亙る基部面における変曲点が存在する部分
であると規定することができる。
【0031】
第1構成の発光素子において、上述したとおり、第1化合物半導体層の第2面を基準として、第2の部分は凹部である構成(第1化合物半導体層の第2面を基準として、第2の部分は下に凸の形状を有する構成)とすることができる。係る構成の第1構成の発光素子を、『第1-A構成の発光素子』と呼ぶ。そして、第1-A構成の発光素子において、第1の部分の中心部は、正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができるし、あるいは又、正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。前者の場合、第2の部分の中心部は正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができ、後者の場合、第2の部分の中心部は正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。第1-A構成の発光素子においては、基部面の第1の部分から第2の部分に亙り微分可能であることが好ましい。
【0032】
第1-A構成の発光素子において、[第1の部分/第2の部分の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状]
(B)[上に凸の形状/下に凸の形状から線分へと続く]
(C)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状へと続く]
(D)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、線分へと続く]
(E)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状へと続く]
(F)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、線分へと続く]
といったケースがある。尚、発光素子においては、第2の部分の中心部で基部面が終端している場合もある。
【0033】
あるいは又、第1化合物半導体層の第2面を基準として、第2の部分は、第2の部分の中心部に向かって、下に凸の形状、及び、下に凸の形状から延びる上に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の第1構成の発光素子を、『第1-B構成の発光素子』と呼ぶ。そして、第1-B構成の発光素子において、第1化合物半導体層の第2面から第1の部分の中心部までの距離をL1、第1化合物半導体層の第2面から第2の部分の中心部までの距離をL2ndとしたとき、
L2nd>L1
を満足する構成とすることができ、また、第1の部分の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)をR1、第2の部分の中心部の曲率半径をR2ndとしたとき、
R1>R2nd
を満足する構成とすることができる。尚、L2nd/L1の値として、限定するものではないが、
1<L2nd/L1≦100
を挙げることができるし、R1/R2ndの値として、限定するものではないが、
1<R1/R2nd≦100
を挙げることができる。
【0034】
上記の好ましい構成を含む第1-B構成の発光素子において、第1の部分の中心部は正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができ、この場合、第2の部分の中心部は正方形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。あるいは又、第1の部分の中心部は正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができ、この場合、第2の部分の中心部は正三角形の格子の頂点上に位置する構成とすることができる。
【0035】
第1-B構成の発光素子において、[第1の部分/第2の部分の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状へと続く]
(B)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状へと続く]
(C)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状へと続く]
といったケースがある。
【0036】
あるいは又、第1化合物半導体層の第2面を基準として、第2の部分は、第1の部分を取り囲む環状の凸の形状、及び、環状の凸の形状から第1の部分に向かって延びる下に凸の形状を有する構成とすることができる。係る構成の第1構成の発光素子を、『第1-C構成の発光素子』と呼ぶ。
【0037】
第1-C構成の発光素子において、第1化合物半導体層の第2面から第1の部分の中心部までの距離をL1、第1化合物半導体層の第2面から第2の部分の環状の凸の形状の頂部までの距離をL2nd’としたとき、
L2nd’>L1
を満足する構成とすることができ、また、第1の部分の中心部の曲率半径(即ち、第1光反射層の曲率半径)をR1、第2の部分の環状の凸の形状の頂部の曲率半径をR2nd’としたとき、
R1>R2nd’
を満足する構成とすることができる。尚、L2nd’/L1の値として、限定するものではないが、
1<L2nd’/L1≦100
を挙げることができるし、R1/R2nd’の値として、限定するものではないが、
1<R1/R2nd’≦100
を挙げることができる。第2の部分の中心部の曲率半径R2ndは、1×10-6m以上、好ましくは3×10-6m以上、より好ましくは5×10-6m以上であることが望ましいし、第2の部分の環状の凸の形状の頂部の曲率半径R2nd’は、1×10-6m以上、好ましくは3×10-6m以上、より好ましくは5×10-6m以上であることが望ましい。
【0038】
第1-C構成の発光素子において、[第1の部分/第2の部分の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(B)[上に凸の形状/下に凸の形状から上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
(C)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(D)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
(E)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状へと続く]
(F)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、上に凸の形状、下に凸の形状、線分へと続く]
といったケースがある。尚、発光素子においては、第2の部分の中心部で基部面が終端している場合もある。
【0039】
以上に説明した好ましい構成を含む第1-B構成の発光素子あるいは第1-C構成の発光素子において、第2の部分における凸の形状の部分に対向した第2化合物半導体層の第2面側の部分には、バンプが配設されている構成とすることができる。あるいは又、以上に説明した好ましい構成を含む第1-A構成の発光素子において、第1の部分の中心部に対向した第2化合物半導体層の第2面側の部分には、バンプが配設されている構成とすることができる。バンプとして、金(Au)バンプ、半田バンプ、インジウム(In)バンプを例示することができるし、バンプの配設方法は周知の方法とすることができる。バンプは、具体的には、第2電極上に設けられた第2パッド電極(後述する)の上に設けられており、あるいは又、第2パッド電極の延在部上に設けられている。
【0040】
あるいは又、バンプの代わりにロウ材を用いることもできる。ロウ材として、例えば、In(インジウム:融点157゜C);インジウム-金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220~370゜C)、Sn95Cu5(融点227~370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304~365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300~314゜C)、Sn2Pb98(融点316~322゜C)等の錫-鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
【0041】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、第1化合物半導体層の第1面が基部面を構成する形態とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第2構成の発光素子』と呼ぶ。あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板が配されており、基部面は化合物半導体基板の表面から構成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第3構成の発光素子』と呼ぶ。この場合、例えば、化合物半導体基板はGaN基板から成る構成とすることができる。GaN基板として、極性基板、半極性基板、無極性基板のいずれを用いてもよい。化合物半導体基板の厚さとして、5×10-5m乃至1×10-4mを例示することができるが、このような値に限定するものではない。あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には基材が配されており、あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には化合物半導体基板及び基材が配されており、基部面は基材の表面から構成されている構成とすることができる。このような構成の発光素子を、便宜上、『第4構成の発光素子』と呼ぶ。基材を構成する材料として、TiO2、Ta2O5、SiO2等の透明な誘電体材料、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂を例示することができる。尚、第2構成の発光素子と第1構成の発光素子とを、適宜、組み合わせてもよいし、第3構成の発光素子と第1構成の発光素子とを、適宜、組み合わせてもよいし、第4構成の発光素子と第1構成の発光素子とを、適宜、組み合わせてもよい。あるいは又、第1化合物半導体層の第1面と第1光反射層との間には、第1面及び第1面と対向する第2面を有する第2基板と、第1面及び第1面と対向する第2面を有する第1基板とが貼り合わされた構造が配されており、基部面は第1基板の第1面から構成されている構成とすることができる。ここで、第1基板の第2面と第2基板の第1面とが貼り合わされており、第1基板の第1面上に第1光反射層が形成されており、第2基板の第2面上に積層構造体が形成されている。このような構成の発光素子を、便宜上、『第5構成の発光素子』と呼ぶ。第2基板として、InP基板あるいはGaAs基板を挙げることができるし、第1基板として、Si基板、SiC基板、AlN基板、GaN基板を挙げることができる。
【0042】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、積層構造体の積層方向を含む仮想平面で基部面を切断したときの第1の部分が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部である構成とすることができる。図形は、厳密には円の一部ではない場合もあるし、厳密には放物線の一部ではない場合もあるし、厳密にはサイン曲線の一部ではない場合もあるし、厳密には楕円の一部ではない場合もあるし、厳密にはカテナリー曲線の一部ではない場合もある。即ち、概ね円の一部である場合、概ね放物線の一部である場合、概ねサイン曲線の一部である場合、概ね楕円の一部である場合、概ねカテナリー曲線の一部である場合も、「図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、概ね楕円の一部である、概ねカテナリー曲線の一部である」ことに包含される。これらの曲線の一部が線分で置き変えられていてもよい。即ち、第1の部分の頂部が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部であり、第1の部分の裾の部分が描く図形は線分である構成とすることもできる。基部面が描く図形は、基部面の形状を計測器で計測し、得られたデータを最小自乗法に基づき解析することで求めることができる。
【0043】
基部面の第1の部分及び第2の部分を形成するための犠牲層の形成方法として、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、メタルマスク印刷法を含む各種印刷法;スピンコート法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法;3Dプリンティング技術(例えば、光造形3Dプリンタあるいは2光子吸収マイクロ3Dプリンタを用いた3Dプリンティング技術);物理的気相成長法(例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法を含むPVD法);各種化学的気相成長法(CVD法);リフトオフ法;パルスレーザによる微細加工技術等を挙げることができるし、これらの方法とエッチング法との組合せを挙げることもできる。
【0044】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、第1の部分の中心部の曲率半径R1は、1×10-5m以上、好ましくは3×10-5m以上であることが望ましい。更には、3×10-4m以上であってもよい。但し、いずれの場合も、R1の値は共振器長LORの値以上の値である。即ち、R1≧LORである。
【0045】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、あるいは又、本開示における端面出射半導体レーザ素子において、積層構造体は、GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る構成とすることができる。具体的には、積層構造体は、
(a)GaN系化合物半導体から成る構成
(b)InP系化合物半導体から成る構成
(c)GaAs系化合物半導体から成る構成
(d)GaN系化合物半導体及びInP系化合物半導体から成る構成
(e)GaN系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
(f)InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
(g)GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る構成
を挙げることができる。あるいは又、V族元素がN(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)の内の少なくとも1種類を含むIII-V族化合物半導体を挙げることができる。
【0046】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子をアレイ状に配する場合、面発光レーザ素子の形成ピッチは、3μm以上、50μm以下、好ましくは5μm以上、30μm以下、より好ましくは8μm以上、25μm以下であることが望ましい。
【0047】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、積層構造体の熱伝導率の値は、第1光反射層の熱伝導率の値よりも高い構成とすることができる。第1光反射層を構成する誘電体材料の熱伝導率の値は、一般に、10ワット/(m・K)程度あるいはそれ以下である。一方、積層構造体を構成するGaN系化合物半導体の熱伝導率の値は、50ワット/(m・K)程度乃至100ワット/(m・K)程度である。
【0048】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子において、活性層と第1光反射層との間に位置する各種の化合物半導体層(化合物半導体基板を含む)を構成する材料にあっては、10%以上の屈折率の変調が無いこと(積層構造体の平均屈折率を基準として、10%以上の屈折率差が無いこと)が好ましく、これによって、共振器内の光場の乱れ発生を抑制することができる。
【0049】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における面発光レーザ素子によって、第1光反射層を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子(垂直共振器レーザ、VCSEL)を構成することができるし、あるいは又、第2光反射層を介してレーザ光を出射する面発光レーザ素子を構成することもできる。場合によっては、半導体レーザ素子製造用基板(後述する)を除去してもよい。
【0050】
本開示における面発光レーザ素子において、積層構造体は、具体的には、前述したとおり、例えば、AlInGaN系化合物半導体から成る構成とすることができる。ここで、AlInGaN系化合物半導体として、より具体的には、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaNを挙げることができる。更には、これらの化合物半導体に、所望に応じて、ホウ素(B)原子やタリウム(Tl)原子、ヒ素(As)原子、リン(P)原子、アンチモン(Sb)原子が含まれていてもよい。活性層は、量子井戸構造を有することが望ましい。具体的には、単一量子井戸構造(SQW構造)を有していてもよいし、多重量子井戸構造(MQW構造)を有していてもよい。量子井戸構造を有する活性層は、井戸層及び障壁層が、少なくとも1層、積層された構造を有するが、(井戸層を構成する化合物半導体,障壁層を構成する化合物半導体)の組合せとして、(InyGa(1-y)N,GaN)、(InyGa(1-y)N,InzGa(1-z)N)[但し、y>z]、(InyGa(1-y)N,AlGaN)を例示することができる。第1化合物半導体層を第1導電型(例えば、n型)の化合物半導体から構成し、第2化合物半導体層を第1導電型とは異なる第2導電型(例えば、p型)の化合物半導体から構成することができる。第1化合物半導体層、第2化合物半導体層は、第1クラッド層、第2クラッド層とも呼ばれる。第1化合物半導体層、第2化合物半導体層は、単一構造の層であってもよいし、多層構造の層であってもよいし、超格子構造の層であってもよい。更には、組成傾斜層、濃度傾斜層を備えた層とすることもできる。
【0051】
あるいは又、積層構造体を構成するIII族原子として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)を挙げることができるし、積層構造体を構成するV族原子として、ヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)、窒素(N)を挙げることができる。具体的には、AlAs、GaAs、AlGaAs、AlP、GaP、GaInP、AlInP、AlGaInP、AlAsP、GaAsP、AlGaAsP、AlInAsP、GaInAsP、AlInAs、GaInAs、AlGaInAs、AlAsSb、GaAsSb、AlGaAsSb、AlN、GaN、InN、AlGaN、GaNAs、GaInNAsを挙げることができるし、活性層を構成する化合物半導体として、GaAs、AlGaAs、GaInAs、GaInAsP、GaInP、GaSb、GaAsSb、GaN、InN、GaInN、GaInNAs、GaInNAsSbを挙げることができる。
【0052】
量子井戸構造として、2次元量子井戸構造、1次元量子井戸構造(量子細線)、0次元量子井戸構造(量子ドット)を挙げることができる。量子井戸を構成する材料として、例えば、Si;Se;カルコパイライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2;ペロブスカイト系材料;III-V族化合物であるGaAs、GaP、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、GaN、InAs、InGaAs、GaInNAs、GaSb、GaAsSb;CdSe、CdSeS、CdS、CdTe、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnTe、ZnS、HgTe、HgS、PbSe、PbS、TiO2等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0053】
積層構造体は、半導体レーザ素子製造用基板の第2面上に形成され、あるいは又、化合物半導体基板の第2面上に形成され、あるいは又、第2基板の第2面上に形成される。尚、半導体レーザ素子製造用基板の第2面は第1化合物半導体層の第1面と対向しており、半導体レーザ素子製造用基板の第1面は半導体レーザ素子製造用基板の第2面と対向している。また、化合物半導体基板の第2面は第1化合物半導体層の第1面と対向しており、化合物半導体基板の第1面は化合物半導体基板の第2面と対向している。また、第2基板の第2面は第1化合物半導体層の第1面と対向しており、第2基板の第1面は第1基板の第2面と対向している。半導体レーザ素子製造用基板あるいは第1基板として、GaN基板、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnS基板、ZnO基板、AlN基板、LiMgO基板、LiGaO2基板、MgAl2O4基板、InP基板、Si基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができるが、GaN基板の使用が欠陥密度の少ないことから好ましい。また、化合物半導体基板あるいは第2基板として、GaN基板、InP基板、GaAs基板を挙げることができる。GaN基板は成長面によって、極性/無極性/半極性と特性が変わることが知られているが、GaN基板のいずれの主面(第2面)も化合物半導体層の形成に使用することができる。また、GaN基板の主面に関して、結晶構造(例えば、立方晶型や六方晶型等)によっては、所謂A面、B面、C面、R面、M面、N面、S面等の名称で呼ばれる結晶面方位、あるいは、これらを特定方向にオフさせた面等を用いることもできる。発光素子を構成する各種の化合物半導体層の形成方法として、例えば、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法,Metal Organic-Chemical Vapor Deposition 法、MOVPE法,Metal Organic-Vapor Phase Epitaxy 法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法(HVPE法)、原子層堆積法(ALD法, Atomic Layer Deposition 法)、マイグレーション・エンハンスト・エピタキシー法(MEE法, Migration-Enhanced Epitaxy 法)、プラズマアシステッド物理的気相成長法(PPD法)等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0054】
GaAs、InP材料は同じく閃亜鉛鉱構造である。これらの材料から構成された化合物半導体基板や第2基板の主面として、(100)、(111)AB、(211)AB、(311)AB等の面に加え、特定方向にオフさせた面を挙げることができる。尚、「AB」は90°オフ方向が異なることを意味しており、このオフ方向により面の主材料がIII族になるかV族になるかが決まる。これらの結晶面方位及び成膜条件を制御することにより、組成ムラやドット形状を制御することが可能となる。成膜方法として、GaN系化合物半導体と同じく、MBE法、MOCVD法、MEE法、ALD法等の成膜方法が一般に用いられるが、これらの方法に限定するものではない。
【0055】
ここで、MOCVD法における有機ガリウム源ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)ガスやトリエチルガリウム(TEG)ガスを挙げることができるし、窒素源ガスとして、アンモニアガスやヒドラジンガスを挙げることができる。n型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、n型不純物(n型ドーパント)としてケイ素(Si)を添加すればよいし、p型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、p型不純物(p型ドーパント)としてマグネシウム(Mg)を添加すればよい。GaN系化合物半導体層の構成原子としてアルミニウム(Al)あるいはインジウム(In)が含まれる場合、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いればよいし、In源としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用いればよい。更には、Si源としてモノシランガス(SiH4ガス)を用いればよいし、Mg源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウムガスやメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いればよい。尚、n型不純物(n型ドーパント)として、Si以外に、Ge、Se、Sn、C、Te、S、O、Pd、Poを挙げることができるし、p型不純物(p型ドーパント)として、Mg以外に、Zn、Cd、Be、Ca、Ba、C、Hg、Srを挙げることができる。
【0056】
積層構造体をInP系化合物半導体あるいはGaAs系化合物半導体から構成する場合、III族原料に関しては、有機金属原料であるTMGa、TEGa、TMIn、TMAl等が一般的に用いられる。また、V族原料に関しては、アルシンガス(AsH3ガス)、ホスフィンガス(PH3ガス)、アンモニア(NH3)等が用いられる。尚、V族原料に関しては有機金属原料が用いられる場合もあり、例えば、ターシャリーブチルアルシン(TBAs)、ターシャリーブチルホスフィン(TBP)、ジメチルヒドラジン(DMHy)、トリメチルアンチモン(TMSb)等を挙げることができる。これらの材料は低温で分解するため、低温成長において有効である。n型ドーパントとして、Si源としてモノシラン(SiH4)、Se源としてセレン化水素(H2Se)等が用いられる。また、p型ドーパントとして、ジメチル亜鉛(DMZn)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)等が用いられる。ドーパント材料としては、GaN系化合物半導体から構成する場合と同様の材料が候補となる。
【0057】
第2光反射層を固定するための支持基板は、例えば、半導体レーザ素子製造用基板として例示した各種の基板から構成すればよいし、あるいは又、AlN等から成る絶縁性基板、Si、SiC、Ge等から成る半導体基板、金属製基板や合金製基板から構成することもできるが、導電性を有する基板を用いることが好ましく、あるいは又、機械的特性、弾性変形、塑性変形性、放熱性等の観点から金属製基板や合金製基板を用いることが好ましい。支持基板の厚さとして、例えば、0.05mm乃至1mmを例示することができる。第2光反射層の支持基板への固定方法として、半田接合法、常温接合法、粘着テープを用いた接合法、ワックス接合を用いた接合法、接着剤を用いた方法等、既知の方法を用いることができるが、導電性の確保という観点からは半田接合法あるいは常温接合法を採用することが望ましい。例えば導電性基板であるシリコン半導体基板を支持基板として使用する場合、熱膨張係数の違いによる反りを抑制するために、400゜C以下の低温で接合可能な方法を採用することが望ましい。支持基板としてGaN基板を使用する場合、接合温度が400゜C以上であってもよい。
【0058】
本開示における面発光レーザ素子の製造においては、半導体レーザ素子製造用基板を残したままとしてもよいし、第1化合物半導体層上に活性層、第2化合物半導体層、第2電極、第2光反射層を、順次、形成した後、半導体レーザ素子製造用基板を除去してもよい。具体的には、第1化合物半導体層上に活性層、第2化合物半導体層、第2電極、第2光反射層を、順次、形成し、次いで、第2光反射層を支持基板に固定した後、半導体レーザ素子製造用基板を除去して、第1化合物半導体層(第1化合物半導体層の第1面)を露出させればよい。半導体レーザ素子製造用基板の除去は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液、アンモニア溶液+過酸化水素水、硫酸溶液+過酸化水素水、塩酸溶液+過酸化水素水、リン酸溶液+過酸化水素水等を用いたウェットエッチング法や、ケミカル・メカニカル・ポリッシング法(CMP法)、機械研磨法、反応性イオンエッチング(RIE)法等のドライエッチング法、レーザを用いたリフトオフ法等によって、あるいは、これらの組合せによって、半導体レーザ素子製造用基板の除去を行うことができる。半導体レーザ素子製造用基板を残したままとする場合、半導体レーザ素子製造用基板に第1基板を貼り合わせることで、半導体レーザ素子製造用基板から成る第2基板と第1基板の貼り合わせ構造を得ることもできる。
【0059】
本開示における面発光レーザ素子をアレイ状に配する場合、第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極は、複数の面発光レーザ素子において共通であり、第2化合物半導体層に電気的に接続された第2電極は、複数の面発光レーザ素子において共通であり、あるいは又、複数の面発光レーザ素子において個別に設けられている形態とすることができるが、これに限定するものではない。
【0060】
第1電極は、半導体レーザ素子製造用基板が残されている場合、半導体レーザ素子製造用基板の第2面と対向する第1面上に形成すればよいし、あるいは又、化合物半導体基板の第2面と対向する第1面上に形成すればよい。また、半導体レーザ素子製造用基板が残されていない場合、積層構造体を構成する第1化合物半導体層の第1面上に形成すればよい。尚、この場合、第1化合物半導体層の第1面には第1光反射層が形成されるので、例えば、第1光反射層を取り囲むように第1電極を形成すればよい。第1電極は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、Ti(チタン)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、錫(Sn)及びインジウム(In)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましく、具体的には、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pdを例示することができる。尚、多層構成における「/」の前の層ほど、より活性層側に位置する。以下の説明においても同様である。第1電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。
【0061】
第1光反射層を取り囲むように第1電極を形成する場合、第1光反射層と第1電極とは接している構成とすることができる。あるいは又、第1光反射層と第1電極とは離間している構成とすることができる。場合によっては、第1光反射層の縁部の上にまで第1電極が形成されている状態、第1電極の縁部の上にまで第1光反射層が形成されている状態を挙げることもできる。
【0062】
第2電極は透明導電性材料から成る構成とすることができる。第2電極を構成する透明導電性材料として、インジウム系透明導電性材料[具体的には、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、インジウム-ガリウム酸化物(IGO)、インジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)、IFO(FドープのIn2O3)、ITiO(TiドープのIn2O3)、InSn、InSnZnO]、錫系透明導電性材料[具体的には、例えば、酸化錫(SnOX)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)]、亜鉛系透明導電性材料[具体的には、例えば、酸化亜鉛(ZnO、AlドープのZnO(AZO)やBドープのZnOを含む)、ガリウム・ドープの酸化亜鉛(GZO)、AlMgZnO(酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム・ドープの酸化亜鉛)]、NiO、TiOX、グラフェンを例示することができる。あるいは又、第2電極として、ガリウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、アンチモン酸化物、ニッケル酸化物等を母層とする透明導電膜を挙げることができるし、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物といった透明導電性材料を挙げることもできる。但し、第2電極を構成する材料として、第2光反射層と第2電極との配置状態に依存するが、透明導電性材料に限定するものではなく、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、金(Au)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)等の金属を用いることもできる。第2電極は、これらの材料の少なくとも1種類から構成すればよい。第2電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。あるいは又、透明電極層として低抵抗な半導体層を用いることもでき、この場合、具体的には、n型のGaN系化合物半導体層を用いることもできる。更には、n型GaN系化合物半導体層と隣接する層がp型である場合、両者をトンネルジャンクションを介して接合することで、界面の電気抵抗を下げることもできる。第2電極を透明導電性材料から構成することで、電流を横方向(第2化合物半導体層の面内方向)に広げることができ、効率良く、電流注入領域(後述する)に電流を供給することができる。
【0063】
第1電極及び第2電極上に、外部の電極あるいは回路(以下、『外部の回路等』と呼ぶ場合がある)と電気的に接続するために、第1パッド電極及び第2パッド電極を設けてもよい。パッド電極は、Ti(チタン)、アルミニウム(Al)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましい。あるいは又、パッド電極を、Ti/Pt/Auの多層構成、Ti/Auの多層構成、Ti/Pd/Auの多層構成、Ti/Pd/Auの多層構成、Ti/Ni/Auの多層構成、Ti/Ni/Au/Cr/Auの多層構成に例示される多層構成とすることもできる。第1電極をAg層あるいはAg/Pd層から構成する場合、第1電極の表面に、例えば、Ni/TiW/Pd/TiW/Niから成るカバーメタル層を形成し、カバーメタル層の上に、例えば、Ti/Ni/Auの多層構成あるいはTi/Ni/Au/Cr/Auの多層構成から成るパッド電極を形成することが好ましい。
【0064】
第1光反射層及び第2光反射層を構成する屈折率周期構造(分布ブラッグ反射構造、Distributed Bragg Reflector 層、DBR層)は、例えば、半導体多層膜や誘電体多層膜から構成される。誘電体材料としては、例えば、Si、Mg、Al、Hf、Nb、Zr、Sc、Ta、Ga、Zn、Y、B、Ti等の酸化物、窒化物(例えば、SiNX、AlNX、AlGaNX、GaNX、BNX等)、又は、フッ化物等を挙げることができる。具体的には、SiOX、TiOX、NbOX、ZrOX、TaOX、ZnOX、AlOX、HfOX、SiNX、AlNX等を例示することができる。そして、これらの誘電体材料の内、屈折率が異なる誘電体材料から成る2種類以上の誘電体膜を交互に積層することにより、光反射積層膜(第1の薄膜と第2の薄膜の積層構造を有する)が、複数、積層された光反射層を得ることができる。光反射積層膜として、例えば、SiOX/SiNY、SiOX/TaOX、SiOX/NbOY、SiOX/ZrOY、SiOX/AlNY等の多層膜を挙げることができる。所望の光反射率を得るために、各誘電体膜(第1の薄膜及び第2の薄膜)を構成する材料、膜厚、積層数等を、適宜、選択すればよい。各誘電体膜(第1の薄膜及び第2の薄膜)の厚さは、用いる材料等により、適宜、調整することができ、発振波長(発光波長)λ0、用いる材料の発振波長λ0での屈折率nによって決定される。具体的には、各誘電体膜の光学的膜厚は、例えば、(λ0/4)である。例えば、発振波長λ0が410nmの面発光レーザ素子において、光反射積層膜をSiOX/NbOYから構成する場合、40nm乃至70nm程度を例示することができる。積層数は、2以上、好ましくは5乃至20程度を例示することができる。光反射層全体の厚さとして、例えば、0.6μm乃至1.7μm程度を例示することができる。また、光反射層の光反射率は99%以上であることが望ましい。位相シフト層を構成する材料も、例えば、上記の材料から適宜選択すればよい。尚、第1の薄膜を構成する材料の屈折率と第2の薄膜を構成する材料の屈折率との差が大きいほど、光反射率が高くなり、望ましい。
【0065】
光反射層や位相シフト層は、周知の方法に基づき形成することができ、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、ECRプラズマスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法等のPVD法;各種CVD法;スプレー法、スピンコート法、ディップ法等の塗布法;これらの方法の2種類以上を組み合わせる方法;これらの方法と、全体又は部分的な前処理、不活性ガス(Ar、He、Xe等)又はプラズマの照射、酸素ガスやオゾンガス、プラズマの照射、酸化処理(熱処理)、露光処理のいずれか1種類以上とを組み合わせる方法等を挙げることができる。
【0066】
位相シフト層を含む光反射層は、電流注入領域あるいは素子領域(これらに関しては後述する)を覆う限り、大きさ及び形状は特に限定されない。第1光反射層の平面形状として、限定するものではないが、具体的には、円形、楕円形、矩形、正多角形を含む多角形(三角形、四角形、六角形等)を挙げることができる。また、第1の部分の平面形状として、第1光反射層の平面形状と相似形あるいは近似形の平面形状を挙げることができる。電流注入領域と電流非注入との境界の形状、素子領域や電流狭窄領域に設けられた開口部の平面形状として、具体的には、円形、楕円形、矩形、正多角形を含む多角形(三角形、四角形、六角形等)を挙げることができる。電流注入領域と電流非注入との境界の形状は、相似形であることが望ましい。ここで、「素子領域」とは、狭窄された電流が注入される領域、あるいは又、屈折率差等により光が閉じ込められる領域、あるいは又、第1光反射層と第2光反射層で挟まれた領域の内、レーザ発振が生じる領域、あるいは又、第1光反射層と第2光反射層で挟まれた領域の内、実際にレーザ発振に寄与する領域を指す。
【0067】
積層構造体の側面や露出面を被覆層(絶縁膜)で被覆してもよい。被覆層(絶縁膜)の形成は、周知の方法に基づき行うことができる。被覆層(絶縁膜)を構成する材料の屈折率は、積層構造体を構成する材料の屈折率よりも小さいことが好ましい。被覆層(絶縁膜)を構成する材料として、SiO2を含むSiOX系材料、SiNX系材料、SiOYNZ系材料、TaOX、ZrOX、AlNX、AlOX、GaOXを例示することができるし、あるいは又、ポリイミド樹脂等の有機材料を挙げることもできる。被覆層(絶縁膜)の形成方法として、例えば真空蒸着法やスパッタリング法といったPVD法、あるいは、CVD法を挙げることができるし、塗布法に基づき形成することもできる。
【実施例0068】
実施例1は、本開示の半導体レーザ素子、具体的には、本開示における面発光レーザ素子、更には、第1構成、第1-A構成の発光素子、第2構成の発光素子に関する。以下の説明において、特に断りの無い限り、面発光レーザ素子から構成された半導体レーザ素子を「発光素子」と呼ぶ。
【0069】
実施例1の発光素子10Aの模式的な一部端面図を
図1、
図2(変形例-1)及び
図3(変形例-2)に示し、実施例1の複数の発光素子によって発光素子アレイを構成する場合の発光素子アレイの模式的な一部端面図を
図4、
図5及び
図6に示し、発光素子アレイにおける基部面の第1の部分及び第2の部分の配置を模式的な平面図である
図7及び
図9に示し、発光素子アレイにおける第1光反射層及び第1電極の配置を模式的な平面図である
図8及び
図10に示す。更には、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための第1化合物半導体層等の模式的な一部端面図を
図11A、
図11B、
図12、
図13、
図14A、
図14B、
図15A、
図15B、
図15C、
図16A及び
図16Bに示す。
【0070】
【0071】
実施例1の半導体レーザ素子(面発光レーザ素子、発光素子10A)は、
第1化合物半導体層21、活性層23及び第2化合物半導体層22が積層されて成る積層構造体20を備えた共振器構造、並びに、
共振器構造の共振方向に沿った両端に設けられた第1光反射層41及び第2光反射層42、
を有する。そして、発振波長をλ0としたとき、
第1光反射層41は、少なくとも、光学的膜厚がk11(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k11≦1.3]、及び、光学的膜厚がk12(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k12≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk10(λ0/2)[但し、0.9≦k10≦1.1]の周期を有する第1屈折率周期構造を有し、
第2光反射層42は、少なくとも、光学的膜厚がk21(λ0/4)の第1の薄膜[但し、0.7≦k21≦1.3]、及び、光学的膜厚がk22(λ0/4)の第2の薄膜[但し、0.7≦k22≦1.3]が、複数、積層された、光学的膜厚がk20(λ0/2)[但し、0.9≦k20≦1.1]の周期を有する第2屈折率周期構造を有し、
第1光反射層41及び第2光反射層42の少なくともいずれか一方の光反射層の内部には、位相シフト層が設けられている。
【0072】
ここで、共振器構造、第1光反射層41及び第2光反射層42によって、共振器が構成される。また、第1光反射層41及び第2光反射層42は、分布ブラッグ反射構造を有する。
【0073】
具体的には、実施例1にあっては、第2光反射層42の内部に、位相シフト層が設けられている。第2光反射層42にあっては、12層の光反射積層膜が積層された第2屈折率周期構造を有する。ここで、積層構造体側から、第1層目の光反射積層膜、第2層目の光反射積層膜、第3層目の光反射積層膜・・・と呼ぶとすると、第6層目の光反射積層膜と第7層目の光反射積層膜との間に位相シフト層が設けられている。このように、位相シフト層は、第2屈折率周期構造の端部には設けられていない。
【0074】
そして、位相シフト層の光学的膜厚は、λ0の0.1倍以上、50倍以下である。尚、実施例1において、あるいは又、後述する実施例2~実施例9において、設計上の値として、k10=k11=k12=k20=k21=k22=1.0、k3=k3’=1.0とした。
【0075】
第2光反射層42において、第1の薄膜をSiO2から構成し、第2の薄膜をTa2O5から構成した。更には、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じ、SiO2とした。また、位相シフト層の光学的膜厚を2.25λ0とした。第1光反射層41を構成する光反射積層膜において、第2光反射層42と同様に、第1の薄膜をSiO2から構成し、第2の薄膜をTa2O5から構成した。そして、第1光反射層41にあっては、14層の光反射積層膜が積層された第1屈折率周期構造を有する。
【0076】
面発光レーザ素子を構成する積層構造体20は、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層(発光層)23、並びに、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層されて成り、
第1光反射層41は、第1化合物半導体層21の第1面側に位置する基部面90の上に形成されており、
第2光反射層42は、第2化合物半導体層22の第2面側に形成されている。ここで、第1光反射層41は、凹面鏡として機能し、第2光反射層42は、平坦な形状を有する。また、共振器長LORは1×10-5m以上である。
【0077】
実施例1の発光素子において、第1光反射層41が形成されている基部面90の部分である第1の部分91には、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準として凸部が形成されている。また、第1光反射層41が形成されていない基部面90の部分である第2の部分92には、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準として凹部が形成されている。即ち、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準として、第2の部分92は下に凸の形状を有する。実施例1の複数の発光素子によって発光素子アレイを構成する場合、基部面90の第1の部分91の中心部91
cは、正方形の格子の頂点上に位置し(
図7参照)、あるいは又、正三角形の格子の頂点上に位置する(
図9参照)。
【0078】
そして、基部面90は、凹凸状であり、且つ、微分可能である。即ち、基部面90は解析学的に滑らかである。第2の部分92は、第1の部分91から延在し、第2の部分92に第1光反射層41の延在部が形成されている場合もあるし、第2の部分92に第1光反射層41の延在部が形成されていない場合もあるが、図示した例では、第2の部分92に第1光反射層41の延在部は形成されていない。第1の部分91、第2の部分92、及び、第1の部分と第2の部分92の境界(連結部分)90bdも、微分可能である。
【0079】
実施例1~実施例9において、第1化合物半導体層21は第1導電型(具体的には、n型)を有し、第2化合物半導体層22は第1導電型とは異なる第2導電型(具体的には、p型)を有する。
【0080】
実施例1の発光素子10Aにおいて、第1の部分91と第2の部分92との境界90bdは、
(1)第2の部分92に第1光反射層41が延在していない場合、第1光反射層41の外周部
(2)第2の部分92に第1光反射層41が延在している場合、第1の部分91から第2の部分92に亙る基部面90における変曲点が存在する部分
であると規定することができる。ここで、実施例1の発光素子10Aは、具体的には、(1)のケースに該当する。
【0081】
また、実施例1の発光素子10Aにおいて、[第1の部分91/第2の部分92の周辺部から中心部まで]の形状は、
(A)[上に凸の形状/下に凸の形状]
(B)[上に凸の形状/下に凸の形状から線分へと続く]
(C)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸形状へと続く]
(D)[上に凸の形状/上に凸の形状から下に凸の形状、線分へと続く]
(E)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状へと続く]
(F)[上に凸の形状/線分から下に凸の形状、線分へと続く]
といったケースがあるが、実施例1の発光素子10Aは、具体的には(A)のケースに該当する。
【0082】
実施例1の発光素子10Aにおいては、第1化合物半導体層21の第1面21aが基部面90を構成する。積層構造体20の積層方向を含む仮想平面で基部面90を切断したときの基部面90の第1の部分91が描く図形は、微分可能であり、より具体的には、円の一部、放物線の一部、サイン曲線、楕円の一部、又は、カテナリー曲線の一部、あるいはこれらの曲線の組合せとすることができるし、これらの曲線の一部が線分で置き換えられていてもよい。第2の部分92が描く図形も、微分可能であり、より具体的には、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、又は、カテナリー曲線の一部、あるいはこれらの曲線の組合せとすることができるし、これらの曲線の一部が線分で置き換えられていてもよい。即ち、基部面90の第1の部分91の頂部が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部であり、基部面90の第1の部分91の裾の部分が描く図形は線分である構成とすることもできる。また、基部面90の第2の部分92の最底部が描く図形は、円の一部、放物線の一部、サイン曲線の一部、楕円の一部、カテナリー曲線の一部であり、基部面90の第2の部分92の最底部よりも上方の部分が描く図形は線分である構成とすることもできる。更には、基部面90の第1の部分91と第2の部分92との境界90bdも微分可能である。
【0083】
実施例1の複数の発光素子によって発光素子アレイを構成する場合、発光素子アレイにおいて、発光素子の形成ピッチは、3μm以上、50μm以下、好ましくは5μm以上、30μm以下、より好ましくは8μm以上、25μm以下であることが望ましい。また、基部面90の第1の部分91の中心部91cの曲率半径R1は、1×10-5m以上であることが望ましい。共振器長LORは、1×10-5m≦LORを満足することが好ましい。発光素子10Aのパラメータは以下の表1のとおりである。尚、第1光反射層41の直径をD1で示し、基部面90の第1の部分91の高さをH1で示し、基部面90の第2の部分92の中心部92cの曲率半径をR2で示す。ここで、第1の部分91の高さH1は、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91の中心部91cまでの距離をL1、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第2の部分92の中心部92cまでの距離をL2としたとき、
H1=L1-L2
で表される。
【0084】
積層構造体20は、GaN系化合物半導体、InP系化合物半導体及びGaAs系化合物半導体から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る構成とすることができる。実施例1にあっては、具体的には、積層構造体20はGaN系化合物半導体から成る。
【0085】
第1化合物半導体層21はn-GaN層から成り、活性層23はIn
0.04Ga
0.96N層(障壁層)とIn
0.16Ga
0.84N層(井戸層)とが積層された3重の多重量子井戸構造から成り、第2化合物半導体層22はp-GaN層から成る。Ti/Pt/Auから成る第1電極31は、例えばTi/Pt/Au又はV/Pt/Auから成る第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等と電気的に接続されている。一方、第2電極32は、第2化合物半導体層22の上に形成されており、第2光反射層42は第2電極32上に形成されている。第2電極32の上の第2光反射層42は平坦な形状を有する。第2電極32は、透明導電性材料、具体的には、ITOから成る。第2電極32の縁部の上には、外部の回路等と電気的に接続するための、例えば、Pd/Ti/Pt/AuやTi/Pd/Au、Ti/Ni/Auから成る第2パッド電極33が形成あるいは接続されていてもよい(
図2、
図3参照)。第1光反射層41及び第2光反射層42は、例えば、Ta
2O
5層とSiO
2層との積層構造や、SiN層とSiO
2層との積層構造から成る。第1光反射層41及び第2光反射層42はこのように多層構造を有するが、図面の簡素化のため、1層で表している。第1電極31、第1光反射層41、第2光反射層42、絶縁層(電流狭窄層)34に設けられた開口部34Aのそれぞれの平面形状は円形である。
【0086】
図4に示すように、実施例1の複数の発光素子によって発光素子アレイを構成する場合、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第2電極は第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。第1電極31も、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。
図1及び
図4に示す発光素子10Aにあっては、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。尚、発光素子10Aによって発光素子アレイを構成しない場合、第1電極31、第2電極32は、発光素子10Aに設ければよい。以下の説明においても同様である。
【0087】
あるいは又、
図5に示すように、実施例1の変形例-1にあっては、第2電極32は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて個別に形成されており、第2パッド電極33を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。
図2及び
図5に示す発光素子10Aにあっては、第1光反射層41を介して光が外部に出射されてもよいし、第2光反射層42を介して光が外部に出射されてもよい。
【0088】
あるいは又、
図6に示すように、実施例1の変形例-2にあっては、第2電極32は、発光素子アレイとする場合、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて個別に形成されており、第2電極32の上に形成された第2パッド電極33の上にはバンプ35が形成されており、バンプ35を介して外部の回路等に接続される。第1電極31は、発光素子アレイを構成する発光素子10Aにおいて共通であり、第1パッド電極(図示せず)を介して外部の回路等に接続される。バンプ35は、基部面90の第1の部分91の中心部91
cに対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分に配設されており、第2光反射層42を覆っている。バンプ35として、金(Au)バンプ、半田バンプ、インジウム(In)バンプを例示することができるし、バンプ35の配設方法は周知の方法とすることができる。
図3及び
図6に示す発光素子10Aにあっては、第1光反射層41を介して光が外部に出射される。尚、
図1に示した発光素子10Aにおいてバンプ35を設けてもよい。バンプ35の形状として、円柱形、環状、半球形を例示することができる。
【0089】
積層構造体20の熱伝導率の値は、第1光反射層41の熱伝導率の値よりも高い。第1光反射層41を構成する誘電体材料の熱伝導率の値は、10ワット/(m・K)程度あるいはそれ以下である。一方、積層構造体20を構成するGaN系化合物半導体の熱伝導率の値は、50ワット/(m・K)程度乃至100ワット/(m・K)程度である。
【0090】
〈表1〉
曲率半径R1 100μm
直径D1 20μm
高さH1 2μm
曲率半径R2 2μm
第2光反射層42 SiO2/Ta2O5(12ペア)
位相シフト層 SiO2(光学的膜厚2.25λ0)
第2電極32 ITO(厚さ:22nm)
第2化合物半導体層22 p-GaN
活性層23 InGaN(多重量子井戸構造)
第1化合物半導体層21 n-GaN
第1光反射層41 SiO2/Ta2O5(14ペア)
共振器長LOR 25μm
発振波長(発光波長)λ0 440.2nm
波長λ’ 446.5nm
【0091】
図36Aに、位相シフト層を含む第2光反射層(実施例1の第2光反射層)の光反射率の実測値(実線で示す)及び計算値(点線で示す)を示し、
図36B及び
図37Aに、波長445nm付近の拡大図を示し、
図36Cに、比較例1として、位相シフト層を設けていない第2光反射層の光反射率の実測値(実線で示す)及び計算値(点線で示す)を示す。
図36A、
図36Bに示すように、実施例1の発光素子における位相シフト層を含む第2光反射層は、上記の表1における波長λ’において、光反射率が最低になる。即ち、位相シフト層が設けられている第2光反射層42はエタロン構造を有する。また、
図36B及び
図37Aに示す例におけるΔλの値は1.6nmである。
【0092】
また、実施例1及び比較例1において、第1電極31と第2電極32との間に電流を流したときの発振波長の変化を、それぞれ、
図37B及び
図37Cに示す。尚、2ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「A」で示す。また、3ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「B」で示す。更には、4ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「C」で示す。また、5ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「D」で示す。更には、6ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「E」で示す。また、7ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「F」で示す。更には、8ミリアンペアの電流を流したとき発振波長の変化を、
図37B及び
図37Cの「G」で示す。また、第1電極31と第2電極32との間に流した電流(動作電流であり、単位はミリアンペア)と、発振波長の変化量(単位:nm)を
図38に示す。尚、
図38において、「A」は実施例1のデータであり、「B」は比較例1のデータである。
【0093】
一般に、発光素子に電流を流すと、発光素子は発熱し、活性層の温度が上昇する結果、発光波長は長波長側に移動する。このような現象は、
図37Cに示す比較例1の発光素子においては、位相シフト層が設けられていないが故に、顕著に認められる。一方、
図37Bに示すように、実施例1にあっては、このような現象は、位相シフト層が設けられているが故に、認められない。即ち、実施例1の発光素子にあっては、
図38に示すように、動作温度によって発振波長が殆ど変化しないし、動作電流によって発振波長が殆ど変化しないし、活性層利得が波長に対して変動しても発振波長は一定に保たれる。尚、発光素子は、その外面が50゜Cの保持されるように、シートシンクによって温度が制御されている。
【0094】
縦モードの間隔Δλは、共振器を構成する化合物半導体層の平均屈折率をn
aveとしたとき、
Δλ={λ
0
2/(2L
OR×n
ave)}[1-(λ
0/n
ave)(dn
ave/dλ
0)]
-1
で表すことができる。共振器を構成する層をGaN系化合物半導体(n
ave=2.45)とし、(dn
ave/dλ
0)=-0.01、λ
0=450nmとしたときの、共振器長L
OR(単位:μm)と、縦モードの間隔(Δλ、単位nm)の関係を
図39Aに示す。この条件では、
Δλ=41.1/L
OR(nm)
となる。
図36B及び
図37Aに示す例におけるΔλの値は、1.6nmである。
【0095】
また、第1電極と第2電極との間に電流を流し、活性層の温度が上昇したときの活性層利得の変化の概念図を、それぞれ、
図39B及び
図39Cに示す。尚、
図39Bは、L
OR≒30μmの場合であり、
図39Cは、L
OR≒2μmの場合である。
図39Bに示す例では、Δλ≒1nmである一方、
図39Cに示す例では、Δλ≒20nmである。即ち、共振器長L
ORが長くなるほど、縦モードの間隔Δλは拡がる。このように、共振器長L
ORが短い場合、縦モードの間隔Δλの値は大きい。従って、面発光レーザ素子の発振波長は、動作温度や動作電流に対して安定しており、縦モードも単一となる。一方、共振器長L
ORが長くなると、縦モードの間隔Δλは狭くなる。このように、共振器長L
ORが長い場合、縦モードの間隔Δλの値は小さい。従って、面発光レーザ素子の発振波長は、動作温度や動作電流に対して不安定となり、縦モードもマルチモードとなり易い。
【0096】
図40Aに概念図を示すように、一般に、発光素子は、活性層の温度の変化によって、波長に対する活性層利得に変化が生じる。ここで、活性層利得が最大値となる波長が発光素子の発振波長である。従って、活性層の温度が上昇すると、「a」で示す活性層利得が「b」で示す活性層利得へと変化し、その結果、発振波長にも変化が生じる。
【0097】
一方、
図40Bに概念図を示すように、実施例1の発光素子にあっては、活性層の温度が上昇すると、「a」で示す活性層利得が「b」で示す活性層利得へと変化するが、活性層利得が「b」で示す活性層利得にあっては、位相シフト層が存在し、発振波長λ
1から長波長側にずれた波長λ
1’が、位相シフト層を含む第2光反射層における低光反射波長領域に入ってしまい、係る波長λ
1’では発光素子は発振しなくなる。そして、その代わりに、波長λ
1’に隣接し、波長λ
1’よりも短波長側に位置する発振波長λ
2において発光素子が発振するようになる。この発振波長λ
2の値は、発振波長λ
1の値に近い値あるいはほぼ等しい値である。
【0098】
以上のとおり、実施例1の発光素子(半導体レーザ素子)にあっては、光反射層の内部に位相シフト層が設けられているので、発振波長が動作温度や動作電流に対して安定であるし、単一縦モードを得ることができる。また、積層構造体の厚さ方向と直交する仮想平面内において、積層構造体を構成する化合物半導体材料の結晶性にバラツキが存在したとしても、均一な発振波長を得ることができる。
【0099】
以下、実施例1の各種の変形例を説明する。
【0100】
実施例1の変形例-3にあっても、第2光反射層42の内部に、位相シフト層が設けられている。第2光反射層42にあっては、8層の光反射積層膜が積層された第2屈折率周期構造を有する。そして、第2層目の光反射積層膜と第3層目の光反射積層膜との間に位相シフト層が設けられている。位相シフト層は、第2屈折率周期構造の端部には設けられていない。実施例1の光反射積層膜と同様に、第1の薄膜をSiO2から構成し、第2の薄膜をTa2O5から構成した。更には、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じ、SiO2とした。また、位相シフト層の光学的膜厚は、10λ0である。第1光反射層41の構成、構造は、実施例1における第1光反射層41の構成、構造と同様とした。
【0101】
図41Aに、実施例1の変形例-3の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値(実線で示す)及び計算値(点線で示す)を示すグラフを示し、
図41Bに、
図41Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長430nm乃至460nm付近の拡大図を示す。
図41A、
図41Bに示すように、実施例1の発光素子の変形例-3における位相シフト層を含む第2光反射層は、6箇所の波長領域において、光反射率が低くなる。
【0102】
実施例1の変形例-4にあっては、第2光反射層42の内部に、2箇所、位相シフト層が設けられている。第2光反射層42にあっては、18層の光反射積層膜が積層された第2屈折率周期構造を有する。そして、第4層目の光反射積層膜と第5層目の光反射積層膜との間に第1の位相シフト層が設けられているし、第8層目の光反射積層膜と第9層目の光反射積層膜との間に第2の位相シフト層が設けられている。第1の位相シフト層及び第2の位相シフト層は、第2屈折率周期構造の端部には設けられていない。位相シフト層と位相シフト層との間に4層の光反射積層膜が配設されている。実施例1の光反射積層膜と同様に、第1の薄膜をSiO2から構成し、第2の薄膜をTa2O5から構成した。更には、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じ、SiO2とした。また、第1の位相シフト層及び第2の位相シフト層の光学的膜厚は、2.25λ0である。第1光反射層41の構成、構造は、実施例1における第1光反射層41の構成、構造と同様とした。
【0103】
図42Aに、実施例1の変形例-4の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値(実線で示す)及び計算値(点線で示す)を示すグラフを示し、
図42Bに、
図42Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長450nm付近の拡大図を示す。
図42A、
図42Bに示すように、実施例1の発光素子の変形例-4における位相シフト層を含む第2光反射層は、2箇所の波長領域において、光反射率が低くなる。
【0104】
実施例1の変形例-5にあっては、第1光反射層41の内部に、位相シフト層が設けられている。第1光反射層41にあっては、14層の光反射積層膜が積層された第1屈折率周期構造を有する。そして、第7層目の光反射積層膜と第8層目の光反射積層膜との間に位相シフト層が設けられている。位相シフト層は、第1屈折率周期構造の端部には設けられていない。実施例1の光反射積層膜と同様に、第1の薄膜をSiO2から構成し、第2の薄膜をTa2O5から構成した。更には、位相シフト層を構成する材料は、第1の薄膜を構成する材料と同じ、SiO2とした。また、位相シフト層の光学的膜厚は、2.25λ0である。平坦な形状を有する第2光反射層42を構成する光反射積層膜は、第1光反射層41と同様の第1の薄膜(SiO2から成る)と第2の薄膜(Ta2O5とが積層された構造を有する。そして、第2光反射層42にあっては、9層の光反射積層膜が積層された第2屈折率周期構造を有する。
【0105】
実施例1の変形例-5の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第1光反射層の光反射率の実測値及び計算値は、
図36Aと同様であった。
【0106】
実施例1の変形例-6において、第1光反射層41は、実施例1の変形例-5の第1光反射層41同様の構成、構造を有する。また、第2光反射層42は、実施例1の第2光反射層42同様の構成、構造を有する。
【0107】
図43Aに、実施例1の変形例-6の半導体レーザ素子において、位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値(実線で示す)及び計算値(点線で示す)を示すグラフを示し、
図43Bに、
図43Aに示した位相シフト層を含む第2光反射層の光反射率の実測値及び計算値の波長450nm付近の拡大図を示す。
図43A、
図43Bに示すように、実施例1の発光素子の変形例-6における位相シフト層を含む第1光反射層と第2光反射層とは、全体として、2箇所の波長領域において、光反射率が低くなる。
【0108】
ところで、実施例1、実施例1の変形例-3、実施例1の変形例-4、実施例1の変形例-5、後述する実施例9において、位相シフト層の光学的膜厚は、λ0の0.1倍以上、50倍以下である。また、実施例1、実施例1の変形例-4、実施例1の変形例-5、後述する実施例9において、位相シフト層の光学的膜厚は、k3(λ0/4)(2r+1)[但し、rは100以下の整数であり、0.9≦k3≦1.1]を満足する。但し、これに限定するものでなく、広くは、位相シフト層の光学的膜厚は、k3’(λ0/4)(2r’)[但し、r’は100以下の整数であり、0.9≦k3’≦1.1]以外の光学的膜厚である形態とすることもでできる。
【0109】
以下、光反射層における第1の薄膜及び第2の薄膜並びに位相シフト層の配列順、第1の薄膜、第2の薄膜及び位相シフト層を構成する材料を、種々、変えたシミュレーションを行い、位相シフト層の効果について考察した。尚、第1の薄膜を構成する材料の屈折率をn1、第2の薄膜を構成する材料の屈折率をn2、位相シフト層を構成する材料の屈折率をn3とする。
【0110】
膜A,膜B,膜A,膜B,膜C,膜A,膜B,・・・,膜A,膜B,膜A,膜Bといった構造(以下、便宜上、『第1構造』と呼ぶ)において、
膜A:屈折率n1を有する第1の材料から成る第1の薄膜
膜B:屈折率n2(<n1)を有する第2の材料から成る第2の薄膜
とする。
【0111】
そして、
膜C:屈折率n1を有する第1の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n2を有する第2の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n3<n2)を有する第3の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n2<n3<n1)を有する第3の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n1<n3)を有する第3の材料から成る位相シフト層
とした場合のいずれの場合にあっても、膜Cの光学的膜厚を(λ0/4)としたとき、光反射層の光反射率が低下する波長の存在が認めらるといったシミュレーション結果が得られた。一方、膜Cの光学的膜厚を(λ0/2)としたとき、光反射層の光反射率が低下する波長の存在は認めらないといったシミュレーション結果が得られた。
【0112】
また、膜A,膜B,膜A,膜B,膜A,膜C,膜B,・・・,膜A,膜B,膜A,膜Bといった構造(以下、便宜上、『第2構造』と呼ぶ)において、
膜A:屈折率n1を有する第1の材料から成る第1の薄膜
膜B:屈折率n2(<n1)を有する第2の材料から成る第2の薄膜
とする。
【0113】
そして、
膜C:屈折率n1を有する第1の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n2を有する第2の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n3<n2)を有する第3の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n2<n3<n1)を有する第3の材料から成る位相シフト層
膜C:屈折率n3(但し、n1<n3)を有する第3の材料から成る位相シフト層
とした場合のいずれの場合にあっても、膜Cの光学的膜厚を(λ0/4)としたとき、光反射層の光反射率が低下する波長の存在が認めらるといったシミュレーション結果が得られた。一方、膜Cの光学的膜厚を(λ0/2)としたとき、光反射層の光反射率が低下する波長の存在は認めらないといったシミュレーション結果が得られた。
【0114】
【0115】
ここで、実施例1の発光素子の製造方法は、
積層構造体を形成した後、第2化合物半導体層の第2面側に第2光反射層を形成し、次いで、
第1光反射層を形成すべき基部面の第1の部分の上に第1犠牲層を形成した後、第1犠牲層の表面を凸状とし、その後、
第1犠牲層と第1犠牲層との間に露出した基部面の第2の部分の上及び第1犠牲層の上に第2犠牲層を形成して第2犠牲層の表面を凹凸状とし、次いで、
第2犠牲層及び第1犠牲層をエッチバックし、更に、基部面から内部に向けてエッチバックすることで、第1化合物半導体層の第2面を基準として、基部面の第1の部分に凸部を形成し、基部面の第2の部分に少なくとも凹部を形成した後、
基部面の第1の部分の上に第1光反射層を形成する、
各工程を備えている。
【0116】
先ず、積層構造体20を形成した後、第2化合物半導体層22の第2面側に第2光反射層42を形成する。
【0117】
[工程-100]
具体的には、厚さ0.4mm程度の化合物半導体基板11の第2面11b上に、
第1面21a、及び、第1面21aと対向する第2面21bを有する第1化合物半導体層21、
第1化合物半導体層21の第2面21bと面する活性層(発光層)23、並びに、
活性層23と面する第1面22a、及び、第1面22aと対向する第2面22bを有する第2化合物半導体層22、
が積層された、GaN系化合物半導体から成る積層構造体20を形成する。より具体的には、周知のMOCVD法によるエピタキシャル成長法に基づき、第1化合物半導体層21、活性層23及び第2化合物半導体層22を、化合物半導体基板11の第2面11b上に、順次、形成することで、積層構造体20を得ることができる(
図11A参照)。尚、参照番号11aは、化合物半導体基板11の第2面11bに対向する化合物半導体基板11の第1面である。
【0118】
[工程-110]
次いで、第2化合物半導体層22の第2面22b上に、CVD法やスパッタリング法、真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法との組合せに基づき、開口部34Aを有し、SiO
2から成る絶縁層(電流狭窄層)34を形成する(
図11B参照)。開口部34Aを有する絶縁層34によって、電流狭窄領域(電流注入領域61A及び電流非注入領域61B)が規定される。即ち、開口部34Aによって電流注入領域61Aが規定される。
【0119】
電流狭窄領域を得るためには、第2電極32と第2化合物半導体層22との間に絶縁材料(例えば、SiOXやSiNX、AlOX)から成る絶縁層(電流狭窄層)を形成してもよいし、あるいは又、第2化合物半導体層22をRIE法等によりエッチングしてメサ構造を形成してもよいし、あるいは又、積層された第2化合物半導体層22の一部の層を横方向から部分的に酸化して電流狭窄領域を形成してもよいし、第2化合物半導体層22に不純物をイオン注入して導電性が低下した領域を形成してもよいし、あるいは、これらを、適宜、組み合わせてもよい。但し、第2電極32は、電流狭窄により電流が流れる第2化合物半導体層22の部分と電気的に接続されている必要がある。
【0120】
[工程-120]
その後、第2化合物半導体層22上に第2電極32及び第2光反射層42を形成する。具体的には、開口部34A(電流注入領域61A)の底面に露出した第2化合物半導体層22の第2面22bから絶縁層34の上に亙り、例えば、リフトオフ法に基づき第2電極32を形成し、更に、所望に応じて、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法といったパターニング法との組合せに基づき第2パッド電極33を形成する。次いで、第2電極32の上から第2パッド電極33の上に亙り、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法とウェットエッチング法やドライエッチング法といったパターニング法との組合せに基づき第2光反射層42を形成する。第2電極32の上の第2光反射層42は平坦な形状を有する。こうして、
図12に示す構造を得ることができる。その後、所望に応じて、基部面90の第1の部分91の中心部91
cに対向した第2化合物半導体層22の第2面側の部分にバンプ35を配設してもよい。具体的には、第2電極32の上に形成された第2パッド電極33(
図2、
図3参照)の上に、第2光反射層42を覆うようにバンプ35を形成してもよく、バンプ35を介して第2電極32は外部の回路等に接続される。
【0121】
[工程-130]
次いで、第2光反射層42を、接合層48を介して支持基板49に固定する(
図13参照)。具体的には、第2光反射層42(あるいはバンプ35)を、接着剤から成る接合層48を用いて、サファイア基板から構成された支持基板49に固定する。
【0122】
[工程-140]
次いで、化合物半導体基板11を、機械研磨法やCMP法に基づき薄くし、更に、エッチングを行うことで、化合物半導体基板11を除去する。
【0123】
[工程-150]
その後、第1光反射層41を形成すべき基部面90(具体的には、第1化合物半導体層21の第1面21a)の第1の部分91の上に第1犠牲層81を形成した後、第1犠牲層の表面を凸状とする。具体的には、第1のレジスト材料層を第1化合物半導体層21の第1面21aの上に形成し、第1の部分91の上に第1のレジスト材料層を残すように第1のレジスト材料層をパターニングすることで、
図14Aに示す第1犠牲層81を得た後、第1犠牲層81に加熱処理を施すことで、
図14Bに示す構造を得ることができる。次いで、第1犠牲層81’の表面にアッシング処理を施し(プラズマ照射処理を施し)、第1犠牲層81’の表面を変質させ、次の工程で第2犠牲層82を形成したとき、第1犠牲層81’に損傷や変形等が発生することを防止する。
【0124】
[工程-160]
次いで、第1犠牲層81’と第1犠牲層81’との間に露出した基部面90の第2の部分92の上及び第1犠牲層81’の上に第2犠牲層82を形成して第2犠牲層82の表面を凹凸状とする(
図15A参照)。具体的には、全面に適切な厚さを有する第2のレジスト材料層から成る第2犠牲層82を成膜する。尚、
図7に示した例では、第2犠牲層82の平均膜厚は2μmであり、
図9に示した例では、第2犠牲層82の平均膜厚は5μmである。
【0125】
基部面90の第1の部分91の曲率半径R1を一層大きくする必要がある場合、[工程-150]及び[工程-160]を繰り返せばよい。
【0126】
第1犠牲層81、第2犠牲層82を構成する材料は、レジスト材料に限定されず、酸化物材料(例えば、SiO2、SiN、TiO2等)、半導体材料(例えば、Si、GaN、InP、GaAs等)、金属材料(例えば、Ni、Au、Pt、Sn、Ga、In、Al等)等、第1化合物半導体層21に対して適切な材料を選択すればよい。また、第1犠牲層81、第2犠牲層82を構成するレジスト材料として適切な粘度を有するレジスト材料を用いることで、また、第1犠牲層81の厚さ、第2犠牲層82の厚さ、第1犠牲層81’の直径等を適切に設定、選択することで、基部面90の曲率半径の値や基部面90の凹凸の形状(例えば、直径D1や高さH1)を、所望の値、形状とすることができる。
【0127】
[工程-170]
その後、第2犠牲層82及び第1犠牲層81’をエッチバックし、更に、基部面90から内部(即ち、第1化合物半導体層21の第1面21aから第1化合物半導体層21の内部)に向けてエッチバックすることで、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準として、基部面90の第1の部分91に凸部91Aを形成し、基部面90の第2の部分92に少なくとも凹部(実施例1にあっては、凹部92A)を形成する。こうして、
図15Bに示す構造を得ることができる。エッチバックは、RIE法等のドライエッチング法に基づき行うこともできるし、塩酸、硝酸、フッ酸、リン酸やこれらの混合物等を用いてウェットエッチング法に基づき行うこともできる。
【0128】
[工程-180]
次に、基部面90の第1の部分91の上に第1光反射層41を形成する。具体的には、基部面90の全面に、スパッタリング法や真空蒸着法といった成膜法に基づき第1光反射層41を成膜した後(
図15C参照)、第1光反射層41をパターニングすることで、基部面90の第1の部分91の上に第1光反射層41を得ることができる(
図16A参照)。その後、基部面90の第2の部分92の上に、各発光素子に共通な第1電極31を形成する(
図16B参照)。以上によって、実施例1の発光素子10Aを得ることができる。第1電極31を第1光反射層41よりも突出させることで、第1光反射層41を保護することができる。
【0129】
[工程-190]
その後、支持基板49を剥離し、発光素子を個別に分離する。そして、外部の電極あるいは回路(発光素子を駆動する回路)と電気的に接続すればよい。具体的には、第1電極31及び図示しない第1パッド電極を介して第1化合物半導体層21を外部の回路等に接続し、また、第2パッド電極33あるいはバンプ35を介して第2化合物半導体層22を外部の回路等に接続すればよい。次いで、パッケージや封止することで、実施例1の半導体レーザ素子(あるいは、発光素子アレイ)を完成させる。
【0130】
実施例1の発光素子において、基部面は、凹凸状であり、且つ、微分可能であるが故に、何らかの原因によって発光素子に外力が加わった場合、凸部の立ち上がり部分に応力が集中するといった可能性を確実に回避することができ、第1化合物半導体層等に損傷が発生する虞がない。特に、発光素子にあっては、バンプを用いて外部の回路等と接続・接合するが、接合時、発光素子に大きな荷重(例えば、50MPa程度)を加える必要がある。実施例1の発光素子にあっては、このような大きな荷重が加わっても、発光素子に損傷が生じる虞がない。また、基部面が凹凸状であるが故に、迷光の発生が抑制され、発光素子間における光クロストークの発生を防止することができる。
【0131】
発光素子アレイにおいて発光素子を狭いピッチで配設した場合、そのピッチは、第1犠牲層のフットプリント径を超えることができない。従って、発光素子アレイの狭ピッチ化を図るためには、フットプリント径を縮小させる必要がある。ところで、基部面の第1の部分の中心部の曲率半径R1は、フットプリント径とは正の相関がある。つまり、狭ピッチ化に伴いフットプリント径が小さくなると、その結果、曲率半径R1が小さくなる傾向がある。例えば、フットプリント径24μmに対して、30μm程度の曲率半径R1が報告されている。また、発光素子から出射される光の放射角は、フットプリント径とは負の相関がある。つまり、狭ピッチ化に伴いフットプリント径が小さくなると、その結果、曲率半径R1が小さくなり、FFP(Far Field Pattern)が拡大する傾向がある。30μm未満の曲率半径R1では、放射角は数度以上となる場合がある。発光素子アレイの応用分野によっては、発光素子から出射される光には2乃至3度以下の狭い放射角を求められることがある。
【0132】
実施例1にあっては、第1犠牲層及び第2犠牲層に基づき基部面に第1の部分を形成するので、発光素子を狭いピッチで配設した場合であっても、歪みの無い、大きな曲率半径R1を有する第1光反射層を得ることができる。それ故、発光素子から出射される光の放射角を2乃至3度以下の狭い放射角、あるいは、出来る限り狭い放射角とすることが可能となり、狭いFFPを有する発光素子、高い配向性を有する発光素子、高ビーム品質を有する発光素子を提供することができる。更には、広い光出射領域を得ることができるので、発光素子の光出力の増加及び発光効率の改善を図ることができるし、発光素子の光出力の増加及び効率の改善を図ることができる。
【0133】
しかも、第1の部分の高さ(厚さ)を低く(薄く)することができるので、発光素子においてバンプを用いて外部の回路等と接続・接合するとき、バンプに空洞(ボイド)が発生し難くなり、熱伝導性の向上を図ることができるし、実装が容易となる。
【0134】
また、実施例1の発光素子において、第1光反射層は凹面鏡としても機能するので、活性層を起点に回折して広がり、そして、第1光反射層に入射した光を活性層に向かって確実に反射し、活性層に集光することができる。従って、回折損失が増加することを回避することができ、確実にレーザ発振を行うことができるし、長い共振器を有することから熱飽和の問題を回避することが可能となる。しかも、共振器長を長くすることができるが故に、発光素子の製造プロセスの許容度が高くなる結果、歩留りの向上を図ることができる。尚、「回折損失」とは、一般に、光は回折効果に起因して広がろうとするため、共振器を往復するレーザ光は、次第に、共振器外へと散逸してしまう現象を指す。加えて、迷光を抑制することができるし、発光素子間の光クロストークを抑制することができる。ここで、或る発光素子において発光した光が、隣接する発光素子に飛来し、隣接発光素子の活性層に吸収され、あるいは又、共振モードにカップリングすると、隣接発光素子の発光動作に影響を与えるし、ノイズ発生の原因になる。このような現象を、光クロストークと呼ぶ。しかも、第1の部分の頂部は、例えば、球面であるので、横方向光閉じ込めの効果を確実に発揮する。
【0135】
また、後述する実施例5を除き、発光素子の製造プロセスにあっては、GaN基板を用いるが、ELO法等の横方向にエピタキシャル成長させる方法に基づきGaN系化合物半導体を形成してはいない。従って、GaN基板として、極性GaN基板だけでなく、半極性GaN基板や無極性GaN基板を用いることができる。極性GaN基板を使用すると、活性層におけるピエゾ電界の効果のために発光効率が低下する傾向があるが、無極性GaN基板や半極性GaN基板を用いれば、このような問題を解決したり、緩和することが可能である。
実施例2の発光素子10Bにおいて、第1化合物半導体層21の第2面21bを基準として、基部面90の第2の部分92は、第2の部分92の中心部に向かって、下に凸の形状、及び、下に凸の形状から延びる上に凸の形状を有する。そして、第1化合物半導体層21の第2面21bから基部面90の第1の部分91の中心部91cまでの距離をL1、第1化合物半導体層21の第2面21bから第2の部分92の中心部92cまでの距離をL2ndとしたとき、
L2nd>L1
を満足する。また、第1の部分91の中心部91cの曲率半径(即ち、第1光反射層41の曲率半径)をR1、第2の部分92の中心部92cの曲率半径をR2ndとしたとき、
R1>R2nd
を満足する。尚、L2nd/L1の値として、限定するものではないが、
1<L2nd/L1≦100
を挙げることができるし、R1/R2ndの値として、限定するものではないが、
1<R1/R2nd≦100
を挙げることができ、具体的には、例えば、
L2nd/L1=1.05
R1/R2nd=10
である。
発光素子10Bのパラメータは以下の表2のとおりであるし、位相シフト層を除く実施例2の発光素子10Bの仕様を、以下の表3に示す。ここで、第1の部分91の高さH1は、第1化合物半導体層21の第2面21bから第1の部分91の中心部91cまでの距離をL1、第1化合物半導体層21の第2面21bから第2の部分92における最も深い凹部の部分92bまでの距離をL2nd”としたとき、
H1=L1-L2nd”
で表され、第2の部分92の中心部92cの高さH2は、
H2=L2nd-L2nd”
で表される。尚、第1光反射層41、第2光反射層42、位相シフト層は、実施例1あるいは実施例1の各種変形例と同様とすることができる。以下の実施例においても同様である。
実施例2の発光素子にあっても、バンプ35を用いて外部の回路等と接続・接合する場合、接合時、発光素子に大きな荷重(例えば、50MPa程度)を加える必要がある。実施例2の発光素子にあっては、このような大きな荷重が加わっても、バンプ35と、第2の部分92における凸の形状の部分92cとは、垂直方向に一直線上に配列されているので、発光素子に損傷が生じることを確実に防止することができる。