(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021089
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】靴下およびインソール
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20220126BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20220126BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20220126BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A41B11/00 J
A43B17/00 E
A61F5/01 N
A41D13/06
A41B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124470
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】520271849
【氏名又は名称】株式会社ライフケア創合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】湯川 直紀
【テーマコード(参考)】
3B011
3B018
4C098
4F050
【Fターム(参考)】
3B011AA14
3B011AB00
3B011AC22
3B018AA00
3B018AB07
3B018AC00
3B018AC07
3B018AC13
3B018GA01
4C098AA02
4C098BC06
4C098BC37
4C098BC45
4F050EA05
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA70
(57)【要約】
【課題】動的な足部アライメントの矯正を促進可能な靴下およびインソールを提供する。
【解決手段】靴下1は、靴下本体10と、後側パッド11および前側パッド12と、を備える。靴下本体10は、編物により形成されており、使用者の踵部から足趾部までを包み込む。後側パッド11は、靴下本体10とは異なる材料により形成されるとともに、靴下本体10の外面部10eに着脱可能な状態で装着されている。使用者の足の長手方向(靴下本体10のフット部の長手方向)において、後側パッド11は、後端が、使用者が直立状態のときの当該使用者における脛骨の中心線と靴下本体10の外面部との交点よりも踵部の後端側に位置し、前端が、使用者における拇趾球と踵骨とを結ぶ内側縦アーチの中間点、または当該中間点よりも中心側に位置する、ように配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が装着する靴下であって、
使用者の踵部から足趾部までを包み込むように形成された靴下本体と、
前記靴下本体とは異なる材料により形成されるとともに、前記靴下を前記使用者が装着した際に、前記靴下本体における前記使用者の足が接するのとは反対側である外面部に設けられたパッド部と、
を備え、
前記靴下を前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、
前記パッド部の後端は、前記使用者が直立状態のときの当該使用者における脛骨の中心線と前記靴下本体の外面部との交点よりも前記踵部の後端側に位置し、
前記パッド部の前端は、前記使用者における拇趾球と踵骨とを結ぶ内側縦アーチの中間点、または当該中間点よりも前記交点側に位置する、
ように配設されている、
靴下。
【請求項2】
請求項1に記載の靴下において、
前記パッド部は、前記靴下本体に対して着脱可能に形成されている、
靴下。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の靴下において、
前記パッド部を第1パッド部とするとき、
前記靴下本体とは異なる材料により形成されるとともに、前記靴下本体の外面部の内の前記第1パッド部から離間した位置に設けられた第2パッド部を更に備え、
前記靴下を前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、
前記第2パッド部の後端は、前記内側縦アーチの前記中間点、または当該中間点と前記拇趾球との間に位置し、
前記第2パッド部の前端は、前記拇趾球が位置する箇所、または当該拇趾球が位置する箇所よりも爪先側に位置する、
ように配設されている、
靴下。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の靴下において、
前記靴下本体は、前記使用者の爪先側に設けられた足趾収容部を有し、
前記足趾収容部は、
拇趾を収容する第1袋部と、
示趾を収容する第2袋部と、
中趾と環趾と小趾を纏めて収容する第3袋部と、
を有し、
前記第2袋部は、前記靴下本体における前記第2袋部を除く部分よりも高い伸縮強度を有するように形成されている、
靴下。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の靴下において、
前記パッド部の最大厚みは、前記靴下本体の厚みよりも厚い、
靴下。
【請求項6】
履物に用いられるインソールであって、
使用者の踵部から足趾部までの領域が載置されるインソール本体と、
前記インソールを前記使用者が装着した際に、前記インソール本体における前記使用者の足が接するのとは反対側である外面部に設けられたパッド部と、
を備え、
前記インソールを前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、
前記パッド部の後端は、前記使用者が直立状態のときの当該使用者における脛骨の中心線と前記インソール本体の外面部との交点よりも前記踵部の後端側に位置し、
前記パッドの前端は、前記使用者における拇趾球と踵骨とを結ぶ内側縦アーチの中間点、または当該中間点よりも前記交点側に位置する、
ように配設されている、
インソール。
【請求項7】
請求項6に記載のインソールにおいて、
前記パッド部は、前記インソール本体における前記外面部側に配されるとともに、前記インソール本体に対して着脱可能に形成されている、
インソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下およびインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、2本の足で立って歩行している。つまり、地面との接地部位である足には、全体重がかかる。このため、足に異常を生じてしまった場合には、体全体のバランスが崩れ、ひざ痛や腰痛、さらには肩こりや自律神経失調などをきたすことにもなる。
【0003】
人間の歩行は、踵部で着地して、前足部(足指の付け根あたり)に体重移動し、その後に爪先で蹴り出すという一連の動作を左右交互に行うことによりなされる。歩行時における踵部から前足部への体重移動に際しては、通常は内側縦アーチ(踵骨と拇趾球とを結ぶアーチ)の撓みが有効に活用される。
【0004】
ところが、上記のような歩行時における一連の動作においては、踵部が地面に着地した時点や、前足部に体重が移動した時点などに、靴底や床面に対して足が前方にずれてしまう場合がある。このように前方への足のずれは、歩行時における内側縦アーチの撓みの有効な活用が図れないばかりではなく、内側縦アーチの崩れの原因となり、体全体のバランスの崩れに繋がる。
【0005】
特許文献1には、足裏における内側縦アーチの部分に沿い、当該内側縦アーチを下方から支持する中間層部材を備えたインソールの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示のインソールでは、当該インソールを装着した使用者が歩行の際に内側縦アーチの撓みを有効に活用することを促すことは困難である。即ち、上記特許文献1に開示のインソールでは、内側縦アーチに沿うように設けられた中間層部材を備えるので、内側縦アーチが崩れようとしても中間層部材で足側に向けて押圧力が加わることとなり、当該インソールを着用した使用者が静止状態で立っている状態での内側縦アーチの形状を矯正することはできると考えられる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示のインソールでは、使用者が当該インソールを装着して歩行した際の内側縦アーチの撓みについては、何ら考慮されていない。よって、上記特許文献1に開示のインソールでは、使用者の歩行に際して内側縦アーチの撓みの有効な活用促進を図ることはできず、使用者の歩行時における足骨などのアライメント(動的な足部アライメント)の矯正を促進することは困難である。
【0009】
本発明は、動的な足部アライメントの矯正を促進可能な靴下およびインソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る靴下は、使用者が装着する靴下であって、使用者の踵部から足趾部までを包み込むように形成された靴下本体と、前記靴下本体とは異なる材料により形成されるとともに、前記靴下を前記使用者が装着した際に、前記靴下本体における前記使用者の足とは反対側である外面部に設けられたパッド部と、を備え、前記靴下を前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、前記パッド部の後端は、前記使用者が直立状態のときの当該使用者における脛骨の中心線と前記靴下本体の外面部との交点よりも前記踵部の後端側に位置し、前記パッド部の前端は、前記使用者における拇趾球と踵骨とを結ぶ内側縦アーチの中間点、または当該中間点よりも前記交点側に位置する、ように配設されている。
【0011】
上記特徴を有する靴下では、使用者が当該靴下を装着して歩行する場合において、足を前に出して踵部から着地した際に靴下本体の踵収容部と同時または踵収容部よりも先にパッド部の下面(靴下本体とは反対側の面)に体重がかかることになる。これは、パッド部の後端が上記交点よりも踵収容部の後端側に位置することにより、靴下本体における踵収容部の外面部よりもパッド部の下面の一部が下方に位置するためである。そして、このように足の着地時にパッド部が着地する構成とすることで、当該パッド部が前方への足のずれを抑制する部位となり、歩行時における前方への足のずれ(前方への足のすべり)を抑制することができる。
【0012】
また、上記特徴を有する靴下では、使用者が当該靴下を装着して歩行する場合に、パッド部が接地することにより、当該パッド部により前向きの力が上向きの力に変換される。このため、使用者の内側縦アーチの踵部寄りの部分を支点として足が縦方向に回転する。よって、内側縦アーチの撓みを活用した歩行を使用者に促すことができる。
【0013】
さらに、パッド部を備える靴下では、当該靴下を装着した使用者が立ったり歩いたりすることで、足裏へのマッサージ効果も奏することができる。
【0014】
従って、上記特徴を有する靴下を用いれば、使用者が当該靴下を装着して歩行することにより、内側縦アーチの撓みを適切に活用した歩行を促進することができ、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに効果を有する。
【0015】
上記態様に係る靴下において、前記パッド部は、前記靴下本体に対して着脱可能に形成されている、ことにしてもよい。
【0016】
上記のように、靴下本体に対してパッド部を着脱可能な構成を採用する場合には、靴下本体に対するパッド部の相対的な位置を調整することができる。よって、個々の使用者の足のサイズや形状に応じて、動的な足部アライメントの矯正の促進を図るのに有効な位置にパッド部を配置することが可能となる。
【0017】
上記態様に係る靴下において、前記パッド部を第1パッド部とするとき、前記靴下本体とは異なる材料により形成されるとともに、前記靴下本体の外面部の内の前記第1パッド部から離間した位置に設けられた第2パッド部を更に備え、前記靴下を前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、前記第2パッド部の後端は、前記内側縦アーチの前記中間点、または当該中間点と前記拇趾球との間に位置し、前記第2パッド部の前端は、前記拇趾球が位置する箇所、または当該拇趾球が位置する箇所よりも爪先側に位置する、ように配設されている、ことにしてもよい。
【0018】
上記のように、靴下本体の踵収容部に設ける第1パッド部に加えて、内側縦アーチの前方部分に設ける第2パッド部を更に備える構成を採用すれば、足の前方部分が着地する際に第2パッド部が最初に着地することになる。これは、第2パッド部の前端を拇趾球が位置する箇所、または当該拇趾球が位置する箇所よりも爪先側に位置するようにしているためである。このような位置に配置した第2パッド部を備えることで、足の前方部分が着地した際にも足の前ずれ(前方への足のすべり)を抑制することができる。
【0019】
従って、上記構成を採用する場合には、使用者が当該靴下を装着して歩行することにより、内側縦アーチの撓みを適切に活用した歩行を促進するのにより好適であり、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに更に効果を有する。
【0020】
上記態様に係る靴下において、前記靴下本体は、前記使用者の爪先側に設けられた足趾収容部を有し、前記足趾収容部は、拇趾を収容する第1袋部と、示趾を収容する第2袋部と、中趾と環趾と小趾を纏めて収容する第3袋部と、を有し、前記第2袋部は、前記靴下本体における前記第2袋部を除く部分よりも高い伸縮強度を有するように形成されている、ことにしてもよい。
【0021】
上記のように、靴下本体として上記のような3本指形状の靴下本体を採用することにより、歩行時における示趾(第2趾)の方向性の決定が確実になされ、使用者の歩き方の改善が促進される。即ち、拇趾と、示趾と、中趾と環趾と小趾とを分けて袋部に収容することで、示趾を他の趾から独立させることができ、歩行時における方向性の決定を確実になすことが可能となる。
【0022】
また、上記のように、第2袋部を、その他の袋部(第1袋部、第3袋部)よりも高い伸縮強度を有するように形成することで、使用者が当該靴下を装着した際に、使用者の示趾に対して上方へ引き上げる力を作用させることができる。これより、歩行時において、示趾による方向性の決定をより確実になすことが可能となる。
【0023】
以上より、上記構成を採用する場合には、、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに更に効果を有する。
【0024】
上記態様に係る靴下において、前記パッド部の最大厚みは、前記靴下本体厚みよりも厚い、ことにしてもよい。
【0025】
上記のように、パッド部の最大厚みを靴下本体における踵収容部の厚みよりも厚くしておくことで、歩行時に踵部を着地しようとした際に確実にパッド部が先に着地するようにできる。また、使用者がパッド部の存在を意識するのに効果的であって、正しい歩き方を習得するための意識付けをなすのに有効である。なお、靴下本体の厚みが部分ごとに異なる場合には、使用者の踵部を収容する踵収容部の厚みよりもパッド部の最大厚みを厚くしておけばよい。
【0026】
本発明の一態様に係るインソールは、履物に用いられるインソールであって、使用者の踵部から足趾部まで領域が載置されるインソール本体と、前記インソールを前記使用者が装着した際に、前記インソール本体における前記使用者の足が接するのとは反対側である外面部に設けられたパッド部と、を備え、前記インソールを前記使用者が装着した際の当該使用者の足の長手方向において、前記パッド部の後端は、前記使用者が直立状態のときの当該使用者における脛骨の中心線と前記インソールの外面部との交点よりも前記踵部の後端側に位置し、前記パッド部の前端は、前記使用者における拇趾球と踵骨とを結ぶ内側縦アーチの中間点、または当該中間点よりも前記交点側に位置する、ように配設されている。
【0027】
上記特徴を有するインソールでは、使用者が当該インソール上に足を載置した状態で歩行する場合において、足を前に出して踵部から着地した際にインソール本体の踵載置部と同時または踵載置部よりも先にパッド部の下面(インソール本体とは反対側の面)に体重がかかることになる。これは、パッド部の後端が上記交点よりも踵部の後端側に位置することにより、インソール本体における踵載置部の外面部よりもパッド部の下面の一部が下方に位置するためである。そして、このように足の着地時にパッド部が最初に着地する構成とすることで、歩行時における足の前ずれ(前方への足のすべり)を抑制することができる。
【0028】
さらに、パッド部を備えるインソールでは、当該インソールを靴の中敷きとして用いた使用者が立ったり歩いたりすることで、足裏へのマッサージ効果も奏することができる。
【0029】
従って、上記特徴を有するインソールを用いれば、使用者が当該インソール上に足を載置した状態で歩行することにより、内側縦アーチの撓みを適切に活用した歩行を促進することができる。よって、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに効果を有する。
【0030】
上記態様に係るインソールにおいて、前記パッド部は、前記インソール本体における前記外面部側に配されるとともに、前記インソール本体に対して着脱可能に形成されている、ことにしてもよい。
【0031】
上記のように、インソール本体に対してパッド部を着脱可能な構成を採用する場合には、インソール本体に対するパッド部の相対的な位置を調整することができる。よって、個々の使用者の足のサイズや形状に応じて、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに有効な位置にパッド部を配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
上記の各態様では、動的な足部アライメントの矯正を促進可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態に係る靴下の構成を示す側面図である。
【
図2】後側パッドの構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】前側パッドの構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図4】足骨と靴下本体の足趾収容部との位置関係、並びに足骨とパッドとの位置関係を示す模式図である。
【
図5】後側パッドの装着位置を説明するための模式図である。
【
図6】前後パッドが果たす役割を説明するための模式図であって、(a)は踵部が着地した時点の状態、(b)は足趾部も着地した時点の状態を表す。
【
図7】第2実施形態に係るインソールの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0035】
また、以下の説明で用いる図では、使用者を基準に上下方向を規定する。即ち、使用者の頭部側を上方とし、地面側を下方としている。
【0036】
[第1実施形態]
1.靴下1の構成
本実施形態に係る靴下1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る靴下1は、靴下本体10とパッド11,12とを備える。靴下本体10は、脚収容部10aと、踵収容部10bと、中足収容部10cと、足趾収容部10dとを有する。靴下本体10は、表糸(例えば、綿、麻、絹、毛)に裏糸(例えば、ナイロン・ポリウレタン)を一緒に編み込むことで形成された編物である。なお、踵収容部10bと中足収容部10cと足趾収容部10dとによりフット部が形成されている。
【0038】
パッド(後側パッド)11は、「第1パッド部」に該当し、靴下本体10の外面部10eに対して、当該靴下本体10の後側部分(踵収容部10bから中足収容部10cにかけての部分)に装着されている。パッド(前側パッド)12は、「第2パッド部」に該当し、靴下本体10の外面部10eに対して、当該靴下本体10の前側部分(足趾収容部10dと中足収容部10cとの境界部分から中足収容部10cにかけての部分)に装着されている。
【0039】
パッド11,12は、ともに上面部(装着面部)11a,12aが略平面形状を有する。そして、パッド11,12は、装着面部11a,12aに貼り付けられた面ファスナーをそれぞれ有する。このため、パッド11,12は、編物で形成された靴下本体10の外面部10eに対して着脱可能となっている。
【0040】
ここで、使用者が靴下1を装着した状態で靴下本体10の外面部10eに対して下方に仮想接線TLを引くとき、パッド11,12の少なくとも一部は仮想接線TLよりも下方に突出した状態となるよう、パッド11,12の形状が規定されている。パッド11,12の詳しい形状については、後述する。
【0041】
2.後側パッド11の形状
後側パッド11の形状について、
図2を用いて説明する。なお、
図2(a)は、下方側から後側パッド11を平面視した図であり、
図2(b)は、
図1とは上下逆に示す後側パッド11を側面視した図である。
【0042】
図2(a)に示すように、後側パッド11を下方側から平面視する場合に、当該後側パッド11は、略半円形状を有する。
図2(b)に示すように、後側パッド11においては、境界部11fを境とする曲面部11bと車面部11cとにより下面部が構成されている。上面部である装着面部11aは、上述の通り、略平面で構成されている。後側パッド11は、前端11dが靴下本体10の中足収容部10c側となり、後端11eが靴下本体10の踵収容部10bとなるように、靴下本体10の外面部10に貼り付けられる。
【0043】
ここで、後側パッド11における各寸法は、例えば、W1が40~90mm(一例として、80mm)、L1が20~60mm(一例として、40mm)、L2が5~20mm(一例として、10mm)、T1が5~15mm(一例として、10mm)である。
【0044】
また、後側パッド11の材料は、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン系エラストマー、EVA(エチレン酢酸ビニル)などの中から選択可能である。ただし、後側パッド11に用いる材料については、これに限らず、種々の材料(金属なども含む)から選択することが可能である。
【0045】
さらに、後側パッド11の硬度については、例えば、ショアA30からショアA95までの範囲、より望ましくはショアA50からショアA70までの範囲とすることができる。
【0046】
3.前側パッド12の形状
前側パッド12の形状について、
図3を用いて説明する。なお、
図3((a)は、下方側から前側パッド12を平面視した図であり、
図3(b)は、
図1とは上下逆に示す前側パッド12を側面視した図である。
【0047】
図3(a)に示すように、前側パッド12を下方側から平面視する場合に、当該前側パッド12は、ティアドロップ型形状を有する。
図3(b)に示すように、前側パッド12においては、曲面部12bにより下面部が構成されている。前側パッド12において、厚みが最も厚い箇所は、当該前側パッド12の長手方向の中央よりも後端12e側である。
【0048】
上面部である装着面部12aは、上述の通り、略平面で構成されている。前側パッド12は、前端12cが靴下本体10の足趾収容部10d側となり、後端12eが靴下本体10の中足収容部10c側となるように、靴下本体10の外面部10に貼り付けられる。
【0049】
ここで、前側パッド12における各寸法は、例えば、W2が10~50mm(一例として、30mm)、L3が20~60mm(一例として、45mm)、L4が5~20mm(一例として、10mm)、T2が5~15mm(一例として、10mm)である。
【0050】
前側パッド12の材料についても、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン系エラストマー、EVA(エチレン酢酸ビニル)、ネオプレンゴム、シリコーンゴム、シリコーンゲルなど種々の材料から選択可能である。前側パッド12に用いる材料についても、これに限らず、種々の材料(金属なども含む)から選択することが可能である。
【0051】
また、前側パッド12の硬度についても、例えば、ショアA30からショアA95までの範囲、より望ましくはショアA50からショアA70までの範囲とすることができる。
【0052】
4.靴下本体10の足趾収容部10dの構成
靴下本体10の足趾収容部10dの構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、使用者の足骨500と靴下本体10の一部とを下方側から平面視した図である。
【0053】
図4に示すように、靴下本体10の足趾収容部10dは、3つの袋部10f~10gより構成されている。第1袋部10fは、末節骨501aと基節骨501cとを有する拇趾501を収容する。第2袋部10gは、末節骨502aと中節骨502bと基節骨502cとを有する示趾502を収容する。第3袋部10hは、末節骨503aと中節骨503bと基節骨503cとを有する中趾503、末節骨504aと中節骨504bと基節骨504cとを有する環趾504、および末節骨505aと中節骨505bと基節骨505cとを有する小趾505を纏めて収容する。
【0054】
ここで、第2袋部10gは、靴下本体10における当該第2袋部10gを除く部分よりも高い伸縮強度を有する。本実施形態に係る靴下本体10では、強伸縮のゴム糸を挿入して編成することにより高い伸縮強度を有する第2袋部10gを形成している。ただし、第2袋部10gの編成については、使用する素材を靴下本体10の他の場所と別にすることにしてもよいし、編み方を靴下本体10の他の場所と別にすることにしてもよい。
【0055】
5.パッド11,12の貼り付け位置
パッド11,12の貼り付け位置について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0056】
図4に示すように、後側パッド11は、人の踵骨506の前部から、種子骨501d,502d,503d,504d,505dの後方側部分にかけての領域に貼り付けられる。より具体的には、
図5に示すように、靴下10の装着者が直立している状態で、踵骨506の上に距骨507を介して設けられた脛骨508の中心線Ax508を引く。なお、中心線Ax508は、脛骨508の長手方向における各断面中心を結ぶ線を直線で近似した線である。
【0057】
後側パッド11の後端11eは、中心線Ax508と靴下本体10の外面部10eとの交点P2よりも踵収容部10bの後端10i側に位置する。なお、中心線Ax508と後側パッド11の後端11eとの間隔L5については特に限定はないが、例えば、L5≒L2とすることや、L5>L2とすることができる。
【0058】
次に、内側縦アーチ(踵骨506と拇趾球501eとを結ぶアーチであって、所謂、土踏まず)の長手方向中央の箇所P1を通り、中心線Ax508に平行な仮想線Lpを引く。この場合に、後側パッド11の前端11dは、仮想線Lpと合致する位置、または、仮想線Lpよりも中心線Ax508側の箇所に位置する。
【0059】
本実施形態に係る靴下1では、靴下本体10の外面部10eに対して、上記のような位置関係をもって後側パッド11が貼り付けられる。ただし、後側パッド11の装着面部11aは面ファスナーを有するので、破線で示すように、個々の使用者の足のサイズ(長さ、幅)や形状に応じて、動的な足部アライメントの矯正を促進するのに有効な位置に後側パッド11を配置することが可能である。
【0060】
図5に示すように、靴下本体10の外面部10eに対しては、略平面である装着面部11aを貼り付けている。これは、使用者が靴下1を装着して歩行した際に、略平面である装着面部11aが足裏面に沿うように弾性変形する際に作用する反力により、後側パッド11の存在を意識させ、正しい姿勢での歩行を促進するためである。
【0061】
図4に戻って、前側パッド12は、靴下本体10に対して、後側パッド11に対して足の長手方向の前方側に離間した位置に貼り付けられる。具体的に、前側パッド12の後端12eは、足の長手方向(
図4の左右方向)において、内側縦アーチの中間点(
図5の箇所P1)、または当該箇所P1と拇趾球501eとの間に位置する。前側パッド12の前端12cは、足の長手方向(
図4の左右方向)において、拇趾球501eが位置する箇所、または当該拇趾球501eが位置する箇所よりも爪先側に位置する。
【0062】
本実施形態に係る靴下1では、靴下本体10の外面部10eに対して、上記のような位置関係をもって前側パッド12が貼り付けられる。なお、
図4に示すように、靴下本体10の外面部10eに対する前側パッド12の貼り付け形態については、後端12eから前端12cに向けての指向方向がAx12a~Ax12cのように変化するように変えることが可能である。このように前側パッド12の貼り付け形態を変化させることで、歩行時に足趾部に体重がかかった場合に足の姿勢を正しい姿勢へと矯正するのに有効となる。
【0063】
また、
図1を用いて説明したように、前側パッド12についても、靴下本体10の外面部10eに対して略平面である装着面部12aを貼り付けている。この理由も、後側パッド11と同様である。
【0064】
6.パッド11,12が果たす役割
靴下1においてパッド11,12が果たす役割について、
図6を用いて説明する。
【0065】
図6(a)に示すように、本実施形態に係る靴下1では、使用者が当該靴下1を装着して歩行する場合において、足を前に出して踵部510bから着地した際に靴下本体10の踵収容部10bと同時または先に後側パッド11の下面(
図6(a)では、最も厚みが厚い境界部11f)に体重がかかることになる。これは、後側パッド11の後端11eが上記交点よりも踵部510bの後端側に位置することにより、
図1を用いて説明したように、靴下本体10における踵収容部10bの外面部10eよりも後側パッド11の下面の一部(
図6(a)では、最も厚みが厚い境界部11f)が下方に位置するためである。そして、このように足の着地時に後側パッド11が接地する構成とすることで、足に対して前向きにかかる力を矢印Aで示すように、上向きの力へと変換でき、歩行時における足の前ずれ(前方への足のすべり)を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る靴下1では、使用者が当該靴下1を装着して歩行する場合に、後側パッド11に体重がかかることにより、当該後側パッド11により前向きの力が上向きの力に変換されため、使用者の内側縦アーチの踵部510b寄りの部分を支点として爪先が縦方向に回転する。よって、前方への足のずれを抑制できるとともに、内側縦アーチの撓みを活用した歩行を使用者に促すことができる。
【0067】
図6(b)に示すように、本実施形態に係る靴下1では、内側縦アーチの前方部分に前側パッド12を設けているので、足の趾部が矢印Bのように降下してきて、足の前方部分が着地する際に前側パッド12が先に着地することになる。靴下1では、靴下本体10の外面部10eに前側パッド12を貼り付けることで、足の前方部分が着地した際に、前側パッド12が矢印Cで示すように床面FLに対して鉛直方向の力を作用させ、足の前ずれ(前方への足のすべり)を抑制することができる。
【0068】
[第2実施形態]
本実施形態に係るインソール2の構成について、
図7を用いて説明する。なお、
図7では、上記第1実施形態と同一構成を有するパッドについては同一の符号を付している。
【0069】
図7に示すように、本実施形態に係るインソール2は、インソール本体20とパッド11,12とを備える。インソール本体20は、板形状の部材であって、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン系エラストマー、EVAの中から選択される材料、またはこれらの材料を複合的に用いて形成されている。インソール本体20に対しては、上面部20a側に使用者の足が載置される。そして、インソール本体20は、使用者の足趾部が載置される足趾載置部20d、中足部が載置される中足載置部20c、および踵部が載置される踵載置部20eを有する。
【0070】
なお、
図7では、インソール本体20を平板形状で図示しているが、足裏の凹凸に合わせた形状のものを採用することも可能である。
【0071】
後側パッド11は、「パッド部」に該当し、上記第1実施形態の後側パッド11と同一の構成を有する。後側パッド11は、インソール本体20の外面部20bに対して、当該インソール本体20における踵載置部20eの前方側部分から中足載置部20cの後方側部分にかけての部分に装着されている。本実施形態に係るインソール2においても、後側パッド11はインソール本体20の外面部20bに対して着脱可能となっている。
【0072】
前側パッド12も、上記第1実施形態の前側パッド12と同一の構成を有する。前側パッド12は、インソール本体20の外面部20bに対して、当該インソール本体20における中足載置部20cの前方側部分から足趾載置部20dの後方側部分にかけての部分に装着される。前側パッド12についても、上記第1実施形態の前側パッド12と同様に、インソール本体20の外面部20bに対して着脱可能となっている。
【0073】
インソール本体20の外面部20bに対するパッド11,12の装着姿勢についても、上記第1実施形態と同様に、略平面形状を有する装着面部11a,12aがインソール本体20の外面部20bに当接する姿勢である。
【0074】
なお、インソール本体20に対するパッド11,12の詳細な装着位置については、
図4を用いて説明したように、使用者の足骨500との相対的な関係で規定される。
【0075】
本実施形態に係るインソール2は、上記構成を有することにより、上記第1実施形態に係る靴下1と同様の効果を有する。即ち、本実施形態に係るインソール2は、当該インソール2を靴の中敷きとして用いることにより、使用者の動的な足部アライメントの矯正を促進することができる。
【0076】
[変形例]
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、後側パッド11および前側パッド12を備える構成を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。靴下本体やインソール本体に対して、少なくとも後側パッドが設けられていればよい。
【0077】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、靴下本体10やインソール本体20に対してパッド11,12を着脱可能な構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、靴下本体における外面部の後方側部分や前方側部分に袋部を設けておき、パッドを袋部に収容してなる構造を採用することもできる。また、インソール本体とパッドを一体成型することも可能である。なお、インソール本体とパッドとを一体成型する場合には、インソール本体を構成する材料とパッドを構成する材料とを同一材料とすることもできるし、互いに異なる材料とすることもできる。互いに異なる材料からなるインソール本体とパッドとを一体成型する場合には、所謂、2色成型によりインソールを形成することが可能である。
【0078】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、後側パッド11と前側パッド12とが互いに離間した別々の部材を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、後側パッドと前側パッドとが繋がった構成とすることもできる。この場合には、後側パッドと前側パッドとの間の連絡部が使用者の内側縦アーチに対して上向きの力を作用させないようにして、歩行時における内側縦アーチの撓みを防がないようにすることが望ましい。
【0079】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、靴下本体10の外面部10eやインソール本体20の外面部20bに対して、各パッド11,12の略平面形状を有する装着面部11a,12aを貼り付けることとしたが、本発明は、各パッドにおける曲面で構成された側を貼り付けることとしてもよい。
【0080】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、靴下本体10の外面部10eやインソール本体20の外面部20bに対してパッド11,12を貼り付けることとしたが、本発明は、靴下本体の上面部やインソール本体の上面部に対してパッドを貼り付けることとしてもよい。
【0081】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、パッド11,12の装着面部11a,12aの面ファスナーにより、靴下本体10の外面部10eやインソール本体20の外面部20bに対してパッド11,12を貼り付けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、接着剤などを用いて靴下本体やインソール本体に対してパッドを貼り付けることとしてもよい。
【0082】
上記第1実施形態に係る靴下1では、靴下本体10として3本指構造の靴下を採用することとしたが、本発明は、足趾部が1つの袋部で構成された一般的な靴下を靴下本体として採用することも可能である。
【0083】
上記第1実施形態に係る靴下1および上記第2実施形態に係るインソール2では、上記のような形状・サイズ・構成材料のパッド11,12を採用することとしたが、本発明は、パッドの形状・サイズ・構成材料について、何らこれに限定を受けるものではない。例えば、後側パッドの形状については、踵部の前方側部分を囲繞するような形状であればよく、サイズについては、使用者の足のサイズ(長さ、幅)に応じて種々変更することが可能である。また、構成材料については、使用者の体重や歩き方などに応じて硬度の異なる材料に適宜変更することが可能である。
【0084】
上記第1実施形態では、パッド11,12の硬度指標の一例としてショアA硬度を採用したが、アスカーF硬度などを適宜採用することもできる。
【符号の説明】
【0085】
1 靴下
2 インソール
10 靴下本体
10b 踵収容部
10c 中足収容部
10d 足趾収容部
10f 第1袋部
10g 第2袋部
10h 第3袋部
11 後側パッド(第1パッド部)
11a 装着面部
11d 前端
11e 後端
12 前側パッド(第2パッド部)
12a 装着面部
12c 前端
12e 後端
20 インソール本体