(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021102
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20220126BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220126BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220126BHJP
A61B 90/70 20160101ALN20220126BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20220126BHJP
【FI】
A61L2/18 100
B08B3/02 A
B08B3/08 Z
A61B90/70
A61L101:10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124494
(22)【出願日】2020-07-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度~平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構受託案件 医工連携事業化推進事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 純華
(72)【発明者】
【氏名】石井 正貴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 正年
(72)【発明者】
【氏名】松本 琢史
【テーマコード(参考)】
3B201
4C058
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201AB44
3B201BB22
3B201BB92
3B201BB98
3B201CD43
4C058AA12
4C058BB07
4C058DD03
4C058DD11
4C058EE26
4C058JJ14
4C058JJ22
(57)【要約】
【課題】滅菌処理に最適な粒径のOFB水を容易に得ることが可能であり、滅菌処理の効果を向上できるようにする。
【解決手段】酸素を取り込んで、所定の濃度のオゾンを発生するオゾン発生機101と、バブル水を生成するとともに、生成されたバブル水にオゾン発生機101で発生したオゾンを含有させて高濃度のOFB水を生成するオゾンファインバブル水生成装置108と、該オゾンファインバブル水生成装置108で生成されたOFB水を用いて医療器具象に滅菌処理を施す滅菌室30と、を具備した滅菌装置10であって、該オゾンファインバブル水生成装置108は、表面に放射状に配置された複数の羽根部を有する円盤型の回転羽根体110を所定の回転数で回転させることにより、粒径が120~170nmのナノバブル水を生成可能な構成とされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を取り込んで、所定の濃度のオゾンを発生するオゾン発生部と、
所定の粒径のバブル水を生成するとともに、生成された前記バブル水に前記オゾン発生部で発生したオゾンを含有させて所定のオゾン濃度のオゾンバブル水を生成する洗浄水生成部と、
前記洗浄水生成部で生成された前記オゾンバブル水を用いて、洗浄対象に滅菌処理を施す滅菌処理部と、
を具備し、
前記洗浄水生成部は、
円盤の表面に放射状に配置された複数の羽根部を有する円盤型の回転羽根体を備え、
前記回転羽根体を所定の回転数で回転させることにより、粒径が120~170nmのナノバブル水を生成することを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
前記滅菌処理部は、
前記洗浄対象を吊下げて保持するための治具と、
前記治具に保持された前記洗浄対象に対し、11L/minの流量の前記オゾンバブル水が瞬間的接触するように設けられた散水ノズルおよび噴流ノズルと
を備えることを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記洗浄水生成部は、前記滅菌処理部において、11L/minの流量の前記オゾンバブル水の、前記洗浄対象との瞬間的接触を20分継続させた際に、1×105 CFU/Stripの芽胞菌を滅菌可能な、前記オゾン水濃度が1.35~3.6ppmのオゾンバブル水を生成することを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記洗浄水生成部は、前記所定の回転数として、前記回転羽根体を3500~5000rpmで回転制御することを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記回転羽根体は、強度と耐久性とを備えたエンジニアリング・プラスチックを用いて形成されることを特徴とする請求項1または4に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具などを滅菌処理するための滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術用メスなどの医療器具を洗浄する装置として、例えば、特許文献1に記載の医療器具洗浄装置が提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載された医療器具洗浄装置は、洗浄対象である医療器具を洗浄するための洗浄水として、オゾンナノバブルが含有されたバブルオゾン水を用いることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許(KR-A)第10-2011-0064331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の医療器具洗浄装置は、高い酸化還元力が知られているオゾンを医療器具の洗浄に用いることで、超音波振動を付与して洗浄する場合よりも、洗浄および滅菌効果の向上が可能であることを開示しているにすぎない。
【0006】
すなわち、医療器具を洗浄するための洗浄水として、オゾンナノバブルが含有されたバブルオゾン水を用いることを開示しているのみであって、滅菌に最適なバブルオゾン水を得る具体的な方法などについては記載していない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、滅菌処理に最適な粒径のオゾンバブル水を容易に得ることが可能であり、滅菌処理の効果を格段に向上できる滅菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の態様の滅菌装置は、酸素を取り込んで、所定の濃度のオゾンを発生するオゾン発生部と、所定の粒径のバブル水を生成するとともに、生成された前記バブル水に前記オゾン発生部で発生したオゾンを含有させて所定のオゾン濃度のオゾンバブル水を生成する洗浄水生成部と、前記洗浄水生成部で生成された前記オゾンバブル水を用いて、洗浄対象に滅菌処理を施す滅菌処理部とを具備し、前記洗浄水生成部は、円盤の表面に放射状に配置された複数の羽根部を有する円盤型の回転羽根体を備え、前記回転羽根体を所定の回転数で回転させることにより、粒径が120~170nmのナノバブル水を生成することを特徴とする。
【0009】
本発明の態様の滅菌装置によれば、既存の高圧蒸気滅菌装置や低温プラズマ滅菌装置と同程度の滅菌処理を、安全、簡便、かつ、低コストで行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、滅菌処理に最適な粒径のオゾンバブル水を容易に得ることが可能であり、滅菌処理の効果を格段に向上できる滅菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る滅菌装置の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す滅菌装置において、滅菌室の滅菌槽扉を開けた状態で示す概略斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る滅菌装置の構成を模式的に示す配管系統図である。
【
図4】一実施形態に係る滅菌装置の回転羽根体の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る滅菌装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る滅菌装置の、オゾンファインバブル水の粒度の計測値(a)とその平均値(b)とを例示するCapture1のグラフである。
【
図7】一実施形態に係る滅菌装置の、オゾンファインバブル水の粒度の計測値(a)とその平均値(b)とを例示するCapture2のグラフである。
【
図8】一実施形態に係る滅菌装置の、オゾンファインバブル水の粒度の計測値(a)とその平均値(b)とを例示するCapture3のグラフである。
【
図9】一実施形態に係る滅菌装置の、オゾンファインバブル水の粒度の計測値(a)とその平均値(b)とを例示するCapture4のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、図面は、構成の概略を模式的に示すものであって、実際のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
また、以下では、洗浄対象(被滅菌物)として外科手術用メスなどの医療器具に滅菌処理を施す滅菌装置を例示して説明するが、野菜などを洗浄(消毒)するための、各種の洗浄装置や消毒装置などとしても適用可能である。
【0014】
なお、ここでいう滅菌とは、増殖性がある微生物(主に、細菌類)や各種のウイルスなどを完全に殺滅した状態を指す。
【0015】
<一実施形態>
図1は、本実施形態に係る滅菌装置10の外観を示す斜視図であり、
図2は、消毒槽となる滅菌室(滅菌処理部)30の滅菌槽扉16を開けた状態で示す滅菌装置10の斜視図である。
【0016】
滅菌装置10は、例えば
図1に示すように、ほぼ直方体の縦長形状を有した本体(筐体)12と、その本体12の前面部に配置された表示操作部14、滅菌槽扉16、および、収納庫扉18を備えている。
【0017】
表示操作部14は、例えば、本体12の上面部と前面部との境界部分に所定の角度を有して配置されている。表示操作部14は、当該滅菌装置10によって滅菌処理による洗浄を行う際に操作者が操作するもので、液晶パネル装置(タッチパネル)14aや各種の操作スイッチ14bなどを有している。
【0018】
収納庫扉18は、例えば、本体12の下方部に対応して設けられた観音開き式の扉であって、内部に収納された各部(後述する)のメンテナンス時や消耗品の交換時などに開閉される。
【0019】
滅菌槽扉16は、本体12の上方部に開閉可能に取り付けられている。滅菌槽扉16は、下部よりも上部が本体12の後方側に位置するように、所定の角度を有して取り付けられている。滅菌槽扉16は、例えば
図2に示すように、下部を軸にして、上部が本体12の前方側に引き倒されることにより、ほぼ水平状態となるように開動作される。
【0020】
滅菌槽扉16は、その中央部付近に監視窓部21を有し、本体12の内部である滅菌室30の状態(状況)を目視により監視できるようになっている。
【0021】
すなわち、滅菌槽扉16に対しては、本体12の開口部12aを介して滅菌室30が配置されている。滅菌室30は、着脱式の滅菌ラック30a上に治具であるBI(Biological Indicator)設置用ジグ32を介して保持された外科手術用メスなどの医療器具(図示省略)に対して、所定の滅菌処理を施すものである。BI設置用ジグ32は、例えば、滅菌ラック30aに対して着脱式に設けられるとともに、当該滅菌装置10による滅菌処理が可能な各種の医療器具を吊下げて保持するための複数のフック32aを有している。
【0022】
そして、滅菌室30の天井部分には、BI設置用ジグ32を介して保持された医療器具に洗浄水としてのオゾンバブル水(オゾンナノバブル水)を散水するための散水ノズル34と、オゾンナノバブル水を噴流するための噴流ノズル36とが配設されている。
【0023】
なお、散水ノズル34および噴流ノズル36としては、例えば、プロペラ散水パターンと噴流パターンとを切換え可能な1つのノズルにより構成するようにしても良い。特に、洗浄対象となる医療器具の種類や形状などに応じて使い分けたり、組み合わせたりして使用することもできる。
【0024】
滅菌槽扉16の内面である監視窓部21の周辺部には、閉時に、開口部12aに密着し、滅菌室30をほぼ完全な密閉状態にさせるためのパッキン部材23が設けられている。
【0025】
また、本体12の右側面部の下方には、後述するオゾン発生機(オゾン発生部)101に供給される酸素を取り込むための酸素供給口13が設けられている。そして、本体12の上面部には、図示省略のプリンタ装置が配置されている。
【0026】
なお、酸素供給口13によらず、酸素ボンベを用いて、強制的に酸素が供給されるようにしても良い。
【0027】
ここで、当該滅菌装置10による滅菌処理が可能な各種の医療器具としては、例えば、外科手術や治療用のメス、鉗子、ハサミ、および、ピンセットなどの鋼製の各種の器具類、または、内視鏡(腹腔鏡)などがあげられる。
【0028】
また、洗浄水としてのオゾンナノバブル水には、例えば、オゾン注入濃度が約150g/m3のオゾンガスを含有した、バブルの粒径が約120~170nmで、濃度が約1.36~3.6ppmのオゾンファインバブル水が用いられる。
【0029】
なお、ファインバブル(FB)とは、例えば国際標準化機構(ISO)によって定義された、粒径が約1~100μmのマイクロバブル(MB)と、粒径が約1μm以下のナノバブル(NB)と、の総称である。ナノバブルをウルトラファインバブル(UFB)とも呼称し、本実施形態においては、滅菌処理に滅菌剤として用いる洗浄水をオゾンファインバブル水(OFB水)ともいう。
【0030】
一方、滅菌装置10の本体12内には、例えば
図3に示すように、滅菌室30の他、オゾン発生機101、インバータチラー(冷却水循環装置)103、および、洗浄水生成部としてのオゾンファインバブル水生成装置108などが設けられている。また、滅菌装置10は、オゾン濃度モニタ105、流量計(SF1)107、循環ポンプ112、流量センサ114、活性炭フィルタ116、吸引(脱気)ポンプ118、および、ストレーナ41などを有している。
【0031】
ここで、
図3は、滅菌装置10の配管系統を模式的に示すものである。
【0032】
すなわち、オゾン発生機101には、本体12の酸素供給口13とインバータチラー103とが接続されている。
【0033】
オゾン発生機101としては、酸素を取り込んで所定の濃度(例えば、150g/m3)のオゾンガスを発生することが可能な、株式会社冨喜製作所製のオゾン発生装置が用いられている。
【0034】
インバータチラー103は、オゾン発生機101で発生されるオゾンガスの濃度を安定させるために用いられる。
【0035】
また、オゾン発生機101は、配管を介して、オゾン濃度モニタ105が接続されるとともに、流量計107、および、電磁弁などを介して、オゾンファインバブル水生成装置108に接続されている。
【0036】
オゾンファインバブル水生成装置108は、例えば、株式会社冨喜製作所製の気液せん断方式のファインバブル発生装置であるミクロスター(登録商標)と、15L(リットル)程度の水位ラインを有するポリ塩化ビニル製のOFB水槽(塩ビ水槽)と、から構成される。
【0037】
OFB水槽には、例えば、図示せぬタンクより純水(または、イオン交換水)が注水されるとともに、上記ミクロスターの攪拌羽根部分が液中に浸水されるようにしてセットされる。
【0038】
上記ミクロスターは、気体を液中に溶解させる攪拌混合装置であって、攪拌羽根部分に、粒径が約120~170nmのファインバブル水を生成可能な、例えば、円盤型の回転羽根体110を備えている。
【0039】
回転羽根体110は、例えば
図4に示すように、直径Rが約46.2mmの円盤110aの中心部分に取付け孔110cが設けられるとともに、該円盤110aの表面に、複数(本例では、8個)の羽根部110bが放射状に配置されている。円盤110aは、厚さHが約5.0mmとされている。
【0040】
各羽根部110bは、高さDが約4.3mmで、長さ(対角上の最長部分)Sが約18.6mmとされている。また、各羽根部110bは、円盤110aの外周側で太く(内周側で細く)、しかも、一方向に少しだけ湾曲したような形状とされている。
【0041】
なお、円盤110aの表面を傾斜させて、各羽根部110bの外周側が内周側よりも厚くなるような形状としても良い。
【0042】
また、回転羽根体110は、その材質として、オゾンによる劣化を抑えるために、高耐食性ステンレス鋼(例えば、SUS316)やエンジニアリング・プラスチックであるPOM(ポリアセタール)などを用いることが望ましい。
【0043】
図3に示すように、回転羽根体110は、例えば上記ミクロスターの回転軸に、水位ラインに対して、所定の角度を有して取り付けられる。そして、該回転羽根体110が、例えば3500rpmの回転数で回転制御されることにより、粒径が約120~170nmのナノバブル(ファインバブル)を含むファインバブル水の生成が可能とされている。
【0044】
なお、回転羽根体110の取り付けの角度や取付けの位置(深度)などは、発生させるバブルの粒径または量などに応じて調整可能である。
【0045】
そして、オゾンファインバブル水生成装置108に対し、オゾン発生機101で発生されたオゾンガスの、ガス濃度をオゾン濃度モニタ105によってモニタしながら、ガス流量がフロート式の流量計107を用いて調整される。
【0046】
本実施形態の場合、オゾンファインバブル水生成装置108において、オゾン濃度が約1.0ppmのファインバブルを含有したOFB水が生成されるように、オゾンガスのガス濃度やガス流量が調整される。生成されるOFB水は、粒径が約120~170nmとされることにより、バブルを比較的に長い時間にわたって存続させることが可能となる。
【0047】
一方、オゾンファインバブル水生成装置108のOFB水槽の深部には、配管を介して、電磁弁および循環ポンプ112が接続されている。循環ポンプ112は、配管上に設けられた流量センサ114を介して、滅菌室30内の散水ノズル34および噴流ノズル36に接続されている。すなわち、オゾンファインバブル水生成装置108で生成されたOFB水は循環ポンプ112によって汲み上げられた後、BI設置用ジグ32に保持された医療器具(図示省略)に対し、散水ノズル34および噴流ノズル36から散水および噴流される。
【0048】
その際、散水ノズル34および噴流ノズル36から散水および噴流されるOFB水の流量が、流量センサ114によってセンシングされて、例えば、11L/minの流量となるように調整される。
【0049】
これにより、BI設置用ジグ32に保持された医療器具は、散水ノズル34および噴流ノズル36から散水および噴流されるOFB水との瞬間的接触により洗浄されて、滅菌処理される。OFB水は、ファインバブルの衝撃圧力作用および酸素力維持作用とオゾンの酸化還元力などにより、医療器具のすみずみにおいて、高い滅菌力を示す。
【0050】
滅菌ラック30aの液溜まりには、ストレーナ41が設けられている。ストレーナ41は、配管を介して、オゾンファインバブル水生成装置108のOFB水槽に接続されている。これにより、滅菌処理後のOFB水は、オゾンファインバブル水生成装置108のOFB水槽で回収される。
【0051】
なお、循環ポンプ112の手前の配管には排水用の排水路が設けられ、例えば、OFB水槽の水位ラインを超えた分のOFB水などを排水することが可能とされている。OFB水は、時間の経過とともに、水と空気(酸素)とに変化する。特に、常温において、滅菌処理後のOFB水は水と空気とに容易に変化するため、安全に排水できる。
【0052】
さらに、オゾンファインバブル水生成装置108のOFB水槽において、水位ラインよりも上方には、配管を介して、活性炭フィルタ116および排気用のダクト(図示省略)につながる吸引ポンプ118が接続されている。滅菌処理後のOFB水は水と空気とに容易に変化するため、安全に排気できる。また、活性炭フィルタ116の作用により、OFB水槽内に漏れたオゾンガスも、安全に排気できる。
【0053】
本実施形態の滅菌装置10においては、活性炭フィルタ116の手前の配管が流量計107につながる電磁弁に接続されており、排気するガスの流量に応じて、オゾンファインバブル水生成装置108に供給されるオゾンガスの流量を制御する構成とされている。
【0054】
図5は、本実施形態に係る滅菌装置10の動作を説明するフローチャートである。
【0055】
本実施形態に係る滅菌装置10を用いて、医療器具に滅菌処理を施す場合、まずは、操作者によって滅菌装置10の電源が投入される(ステップS1)。
【0056】
これにより、インバータチラー103の電源がオンされて、例えば冷却水温度が10℃に設定された状態で運転が開始される。また、オゾン濃度モニタ105および吸引ポンプ118の電源がオンされる。そして、所定のカウントダウンの終了後に、オゾン濃度モニタ105の表示が“0”になっているかが確認され、“0”になっていない場合にはリセットされる。また、オゾン発生機101の電源がオンされて準備状態に設定されるとともに、流量計107につながる電磁弁が開かれる。
【0057】
なお、本実施形態に係る滅菌装置10において、オゾン濃度モニタ105は必須の構成ではなく、省略することもできる。
【0058】
その後、操作者により滅菌槽扉16が開けられて、滅菌室30内に滅菌ラック30aが設置される(ステップS2)。
【0059】
そして、BI設置用ジグ32の各フック32aに被滅菌物である医療器具が、操作者によって吊り下げられる(ステップS3)。なお、吊下げにくい医療器具は、直接的または間接的に、滅菌ラック30aのトレイ部上に設置するようにしても良い。
【0060】
BI設置用ジグ32が滅菌ラック30aにセットされた後、滅菌槽扉16が閉じられ、例えば、表示操作部14の液晶パネル装置14aの画面上に表示される開始ボタンを操作者がタッチすることにより、洗浄(消毒)運転が開始される(ステップS4)。
【0061】
すなわち、オゾンファインバブル水生成装置108において、純水を貯留するタンク(図示省略)より純水が採水され(ステップS5)、25分程度でOFB水槽内が約15Lの純水によって満たされる。
【0062】
この後、OFB水槽の蓋部分に上記ミクロスターやポータブルメータ(図示省略)がセットされることにより、円盤型の回転羽根体110が純水中に沈められる。そして、循環ポンプ112の電源がオンされることにより、OFB水槽内の純水を滅菌室30などに循環させながら、OFB水槽内の純水の貯水量が水位ラインに沿うように調整される。また、その際に循環する純水の流量が、流量センサ114によってセンシングされて、11L/min前後の流量となるように調整される。
【0063】
一方、吸引ポンプ118がオンされていて脱気状態であるのを確認後、オゾン発生機101が準備状態からオゾン発生の状態に切り換えられる。これにより、濃度が約150g/m3のオゾンガスが発生されるように、オゾン発生機101が制御される。すなわち、オゾン発生機101は、例えば、流量が0.8L/min程度、圧力が0.10MPa程度、出力が45~50程度、OFB水槽への注入量が0.5L/min程度となるように調整される。
【0064】
この状態において、オゾンのガス濃度が150g/m3になったことがオゾン濃度モニタ105によって検出されると、上記ミクロスターの円盤型の回転羽根体110が、例えば3500rpmの回転数で回転制御される。これにより、オゾン発生機101からのオゾンガスの供給に伴って、15分程度で、粒径が約120~170nmのファインバブルを含むOFB水が生成される(ステップS6)。こうして、オゾンファインバブル水生成装置108において、粒径が約120~170nmのファインバブルを含む、オゾン濃度が約1.0ppmのOFB水が生成される。
【0065】
OFB水の生成時には、例えば、流量計107のロガーやポータブルメータによる記録を取るようにしても良い。なお、流量計107のロガーは10msecで、ポータブルメータは1minの、オートロギングとするのが好ましい。
【0066】
オゾン発生機101の停止後、このオゾンファインバブル水生成装置108で生成されたOFB水が循環ポンプ112によって汲み上げられて、11L/minの流量で滅菌室30へと送られる。これにより、滅菌室30において、BI設置用ジグ32に保持された医療器具に対する、散水ノズル34および噴流ノズル36からのOFB水の散水および噴流が開始される。
【0067】
このようにして、OFB水による医療器具の洗浄が開始され、20分程度、OFB水の医療器具との瞬間的接触による滅菌処理が行われる(ステップS7)。これにより、各種の医療器具のすみずみまで常に新鮮な状態のOFB水がいきわたり、まんべんなく洗浄されて、付着する微生物などをより確実に殺滅または除去できる。
【0068】
なお、散水および噴流の直前(例えば、30sec前)の滅菌室30内でのOFB水のオゾン濃度を測定し、1.0ppmのオゾン濃度が確認できた場合に、実際にOFB水による医療器具の滅菌処理が開始されるようにしても良い。また、洗浄の途中において、逐次、OFB水のオゾン濃度をチェックし、オゾン濃度が低下している場合には、上述したステップS6でのOFB水生成の処理を繰り返し行うようにしても良い。
【0069】
ここで、OFB水を用いた滅菌処理においては、洗浄に用いられることによってOFB水のオゾン成分が水と空気(酸素)とに分解される(ステップS8)。よって、ストレーナ41によりOFB水槽へと回収される際にも、人体への影響がほとんどない、安全性の高いものとすることができる。
【0070】
また、活性炭フィルタ116および吸引ポンプ118によって、滅菌装置10内のオゾンガスの濃度が十分に低下された後、常時、ダクトより外部へと安全に排気(排出)される(ステップS9)。
【0071】
こうして、滅菌処理が終了すると、OFB水槽内のOFB水は、オゾン成分がある程度まで分解された後、滅菌装置10の外部へと安全に排水される(ステップS10)。
【0072】
すなわち、約20分後にOFB水の循環が停止され、滅菌室30内のオゾンガスの濃度が十分に低下するまで、5分程度、そのままの状態で放置される。そして、OFB水槽内のオゾン濃度が十分に低下されたFB水がすべて排水されることにより、医療器具の洗浄のための滅菌装置10の運転が終了される(ステップS11)。
【0073】
その後、滅菌処理された医療器具が操作者によって滅菌室30から取り出されて(ステップS12)、ほぼ無菌の状態で保管されることにより、一連の処理は終了される。
【0074】
本実施形態に係る滅菌装置10によれば、オゾン濃度および粒径が最適なOFB水を用いて医療器具を洗浄できるようになるため、滅菌処理の効果を格段に向上できる。
【0075】
次に、上記した滅菌装置10を用いて行った全殺滅確認試験の結果について報告する。
【0076】
ここでは、全殺滅確認試験として、滅菌時間を規定するSMCP(The Stumbo-Murphy-Cochran-Procedure)法により算出した仮D値(1/10値)と結果のばらつきとを考慮して決定した仮滅菌時間で、全殺滅が達成可能か否かを確認する実験を行った。すなわち、後述するBIサンプルを用いて、SMCP法により算出した仮D値の、例えば12倍のD値が滅菌時間(約20分)として適切かどうかを検証しようとするものである。
【0077】
表1は、第1回から第4回までの各実験回において、試験ごとにOFB水槽内と滅菌ラック30aの液溜まりとで、OFB水のオゾン濃度と水温と流量との関係について調査した結果(検出値)を示すものである。なお、第1回では3度の試験を、第2回および第3回では6度の試験を、第4回では2度の試験を行った。
【0078】
【0079】
表2は、第1回から第4回までの各実験回において、試験ごとの滅菌処理の結果(培養結果)を示すものである。
【0080】
ここでは、試験ごとに3個のBIサンプルを用意し、該BIサンプルをBI設置用ジグ32にセットした状態で上述の滅菌処理を施した後、60℃に設定された恒温器を用いて7日間培養した際の、培地の色調変化によって滅菌処理の合否を確認することとした。
【0081】
なお、BIサンプルは、凝集塊の影響を考慮し、自家製とした。キャリア(指標菌)には、1.0×105 CFU(Colony Forming Unit)/Stripの芽胞菌(例えば、Geobacillus Stearothermophilus/ATCC7953)を用いた。芽胞菌の菌数は、1.0×105CFU以上で、D値は、1.5min以上である。
【0082】
【0083】
表2に“-”で示すように、すべての実験回において、いずれの試験のBIサンプルからも培地の色調変化(菌の増殖)は見られなかった。
【0084】
この結果から、すべてのBIサンプルについて、20分程度の滅菌処理によって全殺滅が可能であることが確認できた。
【0085】
すなわち、本実施形態に係る滅菌装置10においては、表1および表2に示したような結果が実験により確認されたことで、医療器具を洗浄する際の滅菌時間としては20分程度で十分であり、滅菌処理の効果の向上を図る上でも適切であることが検証できた。
【0086】
図6から
図9は、本実施形態に係る滅菌装置10によって生成されたOFB水のOFB粒度を、例えば、光散乱による粒径の計測を行うナノ粒子解析システムを用いて算出した結果(Capture1-4)を例示するものである。各図において、(a)は、粒径(Size)と濃度(FTLA Concentration)との関係を示す計測値であり、(b)は、その平均値である。
【0087】
図6乃至
図9からも明らかなように、本実施形態に係る滅菌装置10によれば、オゾンガスを1.0ppmの高濃度で含有した、粒径が約120~170nmのOFB水を確実に生成することが可能となる。
【0088】
上記したように、本実施形態によれば、滅菌処理に最適な粒径のOFB水を容易に得ることが可能であり、滅菌処理の効果を格段に向上できる滅菌装置10を提供できる。
【0089】
すなわち、オゾンファインバブル水生成装置108において、表面に放射状に配置された複数の羽根部を有する円盤型の回転羽根体110を3500~5000rpm程度の回転数で回転させて、粒径が約120~170nmのファインバブル水を生成できるようにしている。これにより、医療器具の滅菌処理に用いて好適な洗浄水として、オゾンガスを1.0ppmの高濃度で含有した、粒径が約120~170nmのOFB水を簡単に、かつ、確実に生成することが可能となる。したがって、20分程度の滅菌処理により指標菌の全殺滅が容易に可能となるなど、医療器具に錆を生じさせることもなく、高い滅菌効果が期待できる。
【0090】
特に、エンベロープを持たないウイルスの滅菌にも有効であり、細菌類といった増殖性がある微生物に限らず、例えば、新型コロナウイルスなどの各種のウイルスの滅菌にも適用可能である。
【0091】
また、滅菌処理にOFB水を使用することにより、例えばエチレン酸化ガス(EOG)滅菌装置などの有害物質を用いた洗浄に比べ、専従者や看護師などの操作者への影響もほとんどなく、安全に医療器具の滅菌処理を行うことが可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る滅菌装置10は常温で使用できるため、高温下で滅菌処理を行う高圧蒸気滅菌装置のような、耐熱性のない器具は滅菌できないし、耐熱性の医療器具の滅菌でも降温させるのに時間を要し、効率が悪いといった問題も解消できる。
【0093】
また、低温プラズマ滅菌装置は、耐熱性のない器具の滅菌が可能であり、安全性にも優れるが、非常に高価であるのに対し、本実施形態に係る滅菌装置10は、主に、滅菌室30とオゾン発生機101とオゾンファインバブル水生成装置108とで構成される。
【0094】
しかも、電源の容量を小さくできるとともに、設備費や工事費などの初期コストを抑えることが可能であり、また、市販の滅菌キットなども必要としないために、低ランニングコストにより運転可能である。
【0095】
したがって、操作性にも優れ、安全で、かつ、安価であるとともに、高圧蒸気滅菌装置や低温プラズマ滅菌装置と同程度の滅菌効果を簡単に得ることが可能な、滅菌処理に最適な粒径のOFB水を容易に生成でき、高い洗浄力を達成可能となる。
【0096】
以上、実施形態を例示して本発明の態様について説明したが、一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0097】
10 滅菌装置
12 本体
12a 開口部
13 酸素供給口
16 滅菌槽扉
21 監視窓部
30 滅菌室(滅菌処理部)
30a 滅菌ラック
32 BI設置用ジグ(治具)
32a フック
34 散水ノズル
36 噴流ノズル
101 オゾン発生機(オゾン発生部)
108 オゾンファインバブル水生成装置(洗浄水生成部)
110 円盤型の回転羽根体