(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021162
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】自動拡管装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/20 20060101AFI20220126BHJP
B21D 39/06 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B21D39/20 Z
B21D39/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124610
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤崎 憲二
(72)【発明者】
【氏名】杉森 正
(57)【要約】
【課題】拡管作業の効率を向上させることができる自動拡管装置を提供する。
【解決手段】チューブの拡管加工を行う拡管装置を支持して移動させるロボット2とを備える自動拡管装置である。拡管装置は、先端側が小径となるテーパ部411が外周面に形成されたマンドレル41、マンドレル41にスライド自在かつ回転自在に外嵌された筒状のフレーム部材に回転自在に保持され、軸方向に対して傾斜して配置された複数のローラを有するエキスパンダ4と、マンドレル41を回転駆動する回転駆動機6と、エキスパンダ4のフレーム部材をクランプするクランプ装置7と、クランプ装置7をエキスパンダ4の軸方向に移動させる移動装置8と、移動装置8の先端に設けられた支持部材73の位置を検出する位置センサ200とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの拡管加工を行う拡管装置と、
前記拡管装置を支持して移動させるロボットと、
前記拡管装置および前記ロボットを制御する制御装置と、
を備える自動拡管装置であって、
前記拡管装置は、
先端側が小径となるテーパ部が外周面に形成されたマンドレル、前記マンドレルにスライド自在かつ回転自在に外嵌された筒状のフレーム部材、および前記フレーム部材に回転自在に保持され前記フレーム部材の軸方向に対して傾斜して配置された複数のローラを有するエキスパンダと、
前記エキスパンダの前記マンドレルを回転駆動する回転駆動機と、
前記エキスパンダの前記フレーム部材をクランプするクランプ装置と、
前記クランプ装置を前記エキスパンダの軸方向に移動させる移動装置と、
前記移動装置における移動部の位置を検出する検出装置とを備えたこと
を特徴とする、自動拡管装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ロボットにより前記エキスパンダが前記チューブ内に挿入される際に、前記移動部の位置を前記検出装置で検出した結果に基づいて、異常を判定することを特徴とする、請求項1に記載の自動拡管装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記拡管装置に備えた前記エキスパンダの先端が管板またはチューブ端面に衝突したことを、前記拡管装置を支持するロボットのトルク変動により検出して異常を判定するトルク変動検出部を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の自動拡管装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記エキスパンダを挿入する際、前記ローラまたは前記フレーム部材が前記チューブに引っかかったことを、前記移動部の位置の検出に基づいて検出するストローク位置検出部を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動拡管装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記移動装置による前記エキスパンダの拡管に要するストローク量の変化を前記検出装置で検出するストローク変化判定部を有することを特徴とする、請求項2に記載の自動拡管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動拡管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブの拡管加工を行う拡管装置と、この拡管装置を支持して移動させるロボットとを備える自動拡管装置が提案されている(例えば、特許文献1:実公平7-31853号公報参照)。
拡管装置は、例えば熱交換機を構成するチューブと該チューブを取付ける管板との接合を、エキスパンダによってチューブの外径を広げて管板に形成された取付け孔の内面に圧接固定することで行う。
特許文献1に記載の自動拡管装置では、拡管装置は、拡管対象であるチューブの位置までロボットによって移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チューブの内径とエキスパンダの外径との間の隙間が小さい。たとえば小さいものになると0.2mm程度しかない。また、チューブ自体の垂れ下がり、ツールのたわみ、チューブ端面の状態による画像処理結果の変動など、正常な挿入を妨げる要因が多々あるため、挿入出来ないという問題が発生する。さらに、挿入ミスによるツールの損傷を発生させるほか、摩耗したツールで拡管を続けると品質不良を発生させる虞れがある。
このため、エキスパンダの挿入時の管板との衝突、及びチューブとローラのひっかかりを検知し、挿入ミスを防ぐためには、さらなる改善の余地があった。
本発明は、これらの問題を鑑み、拡管作業の効率を向上させることができる自動拡管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自動拡管装置は、チューブの拡管加工を行う拡管装置と、拡管装置を支持して移動させるロボットと、前記拡管装置および前記ロボットを制御する制御装置と、備える自動拡管装置であって、拡管装置は、先端側が小径となるテーパ部が外周面に形成されたマンドレル、マンドレルにスライド自在かつ回転自在に外嵌された筒状のフレーム部材、およびフレーム部材に回転自在に保持されフレーム部材の軸方向に対して傾斜して配置された複数のローラを有するエキスパンダと、エキスパンダのマンドレルを回転駆動する回転駆動機と、エキスパンダのフレーム部材をクランプするクランプ装置と、クランプ装置をエキスパンダの軸方向に移動させる移動装置と、移動装置における移動部の位置を検出する検出装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、拡管作業の効率を向上させた自動拡管装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動拡管装置の概略側面図である。
【
図2】実施形態の自動拡管装置の要部の構成を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の自動拡管装置の操作部を示す正面図である。
【
図4】実施形態の自動拡管装置で、管板もしくはチューブ端面とエキスパンダ先端とが衝突する様子を示す模式図である。
【
図5】実施形態の自動拡管装置で、エキスパンダとチューブとが傾くことで生じる干渉の様子を示す模式図である。
【
図6】実施形態の自動拡管装置で、チューブ端面とローラ端面との干渉の様子を示す模式図である。
【
図7】実施形態の自動拡管装置に用いる自動拡管方法で、事前検査工程の順序を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の自動拡管装置に用いる自動拡管方法で、
図7の事前検査工程に続く拡管工程の順序を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る自動拡管装置1について、
図1~
図8を適宜参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動拡管装置1の概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態の自動拡管装置1は、ロボット2と、拡管装置3と、制御装置10と、少なくとも一つのエキスパンダ4を保管するツールストッカ11とを備えている。本実施形態のロボット2としては多関節ロボットが使用されている。ロボット2は、拡管装置3を支持して移動させる。
なお、
図1においては、ロボット2によって拡管装置3が移動させられて拡管装置3の位置および姿勢が3通りに変化させられた状態を同時に示している。
【0009】
拡管装置3は、チューブTの拡管加工を行う。拡管装置3は、熱交換機を構成するチューブTとこのチューブTを取付ける管板TBとの接合を、エキスパンダ4によってチューブTの外径を広げて管板TBに形成された取付け孔TBaの内面に圧接固定することで行う。
図2に示すように、拡管装置3は、ロボット2のアーム21の先端部21aに固定されている。拡管装置3には、ビジョンセンサ5が固定されている。
拡管装置3は、エキスパンダ4と、回転駆動機6と、移動装置8と、カップリング9とを有している。
図4に示すように、エキスパンダ4は、マンドレル41、筒状のフレーム部材42、および複数のローラ43を有している。マンドレル41には、先端側が小径となるテーパ部411が外周面に形成されている。フレーム部材42は、マンドレル41にスライド自在かつ回転自在に外嵌されている。複数のローラ43は、フレーム部材42に回転自在に保持されている。
【0010】
マンドレル41は、このマンドレル41の先端側(以下、「前側」ともいう)に位置するテーパ部411と、テーパ部411の基端側(以下、「後側」ともいう)に位置する円柱形状の円柱部412とを有している。マンドレル41の先端部には、キャップナット413がねじ締結によって固定されている。また、マンドレル41の後端部には、角型シャンク(図示せず)が設けられていて、カップリング9を介して、回転駆動機6の回転軸と接続されている。
【0011】
図6に示すように、フレーム部材42は、ローラ43を保持する円筒状のフレーム44と、フレーム44の外周面に取り付けられた環状のカラー45とを有している。カラー45は、フレーム44の外周面に固定されたカラー後輪451と、カラー後輪451に対して前側(エキスパンダ4の先端側)にボールリテーナ450を介して回転自在に配置されるカラー前輪453とを有する。
【0012】
フレーム44の中空部の内径はマンドレル41の円柱部412の外径より僅かに大きくなっている。マンドレル41は、円筒状のフレーム44の中空部を貫通して挿入されている。フレーム44の先端側には例えば120度の間隔で周方向均等に長溝であるローラ溝421が複数形成されている。各ローラ溝421はフレーム44の長手方向に関し同一位置に配置されている。ローラ溝421には裁頭円錐形状の複数のローラ43が係止されて保持されている。ローラ43は、ローラ溝421から、フレーム44の径方向の外側および内側に一部露出している。
【0013】
ローラ43は、フレーム44の径方向内側において、マンドレル41のテーパ部411の外周面に、その長手方向中心軸まわりに回転しながら、その側面が接触する。一方、ローラ43は、フレーム44の径方向外側において、拡管加工時に、拡管されるチューブTの内周面に、その長手方向中心軸まわりに回転しながら、マンドレル41との接触部とはほぼ反対側の側面が接触する。
【0014】
ローラ43は、その中心軸がフレーム部材42の軸方向(マンドレル41の軸方向と同じ)に対して所定角度θだけ傾斜しているフィードアングルが与えられて配置されている。ローラ43は、マンドレル41のテーパ部411のテーパとは方向が逆で傾きが半分のテーパをカラー45側の本体部に有する裁頭円錐形状である。
【0015】
フレーム44のカラー45は、一段外径を小さくして内周面に雌ねじが形成されたカラー後輪451と、ボールリテーナ450と、カラー前輪453と、を有している。
このうち、カラー後輪451の雌ねじは、フレーム部材42後部の外周面に形成された雄ねじ452に螺合されている。カラー後輪451は、止めナット部材によってフレーム44に固定されている。なお、カラー後輪451のフレーム44への固定方法は、止めナット部材を用いた方法以外に、例えば六角穴付止めねじ451a等を用いた方法であってもよい。
また、カラー45は、カラー後輪451の前面にボールリテーナ450を配置する。ボールリテーナ450の前面には、さらに、カラー前輪453が配置されている。そして、カラー45は、カラー後輪451と、カラー前輪453との間にボールリテーナ450を介装した状態で、リング部材等を用いて一体となるように固定されている。
【0016】
本実施形態の回転駆動機6は、エキスパンダ4のマンドレル41をカップリング9(
図2参照)を介して回転駆動する。回転駆動機6として、ここではサーボモータが使用されている。サーボモータは、制御装置10(
図1参照)に接続されていて、回転数を制御可能である。また、制御装置10は、回転駆動の際に生じる駆動電流を測定することにより表示面部101(
図3参照)によって回転トルクをモニタリングできるように構成されている。さらに、制御装置10は、ロボット2のアーム21の駆動電流を測定することにより負荷トルクをモニタリングできるように構成されている。
【0017】
クランプ装置7(
図2参照)は、一対のクランパおよび、エアチャックを有して、支持部材73によって支持されている。クランパは、エキスパンダ4のカラー45のうち、カラー前輪453(
図6参照)をクランプまたは開放する。クランパは、エキスパンダ4をクランプして支持部材73に装着した状態で、エキスパンダ4の先端4aから支持部材73までの寸法を所定の寸法に規制する。
【0018】
図2に示すように、移動装置8は、支持部材73に設けられたクランプ装置7をエキスパンダ4の軸方向に沿わせて移動させる。移動装置8は、回転駆動機6のケーシングに図示しない取付部材を介して固定されている。
本実施形態の移動装置8としては、電動シリンダ装置が使用されている。電動シリンダ装置は、制御装置10に接続されていて、エキスパンダ4を軸方向に沿わせて移動させる制御が行われる。なお、移動装置8として電動シリンダ装置を使用した場合、流体圧シリンダと比べて、精度よく自由な位置に止めることができるメリットがある。
移動装置8としては、電動シリンダ装置に限らず、流体圧を用いる流体圧シリンダ装置が使用されてもよい。特に精度を要求しない場合は、移動装置8として流体圧シリンダ装置を使用することもできる。これによりコストを抑えることができる。移動装置8は、駆動力を発生させる本体部81と、本体部81によって進退移動させられる上下一対のロッド82とを有している。ロッド82の先端は、移動部としての支持部材73に固定されている。
【0019】
また、支持部材73のうち、ロッド82の先端が固定される同じ取付面には、位置センサ200から延出された検知ロッド200bの先端200aが固定されている。
ここで、駆動源に電動シリンダのサーボモータを使用する場合は、位置センサ200としてサーボモータのエンコーダを使用することで位置を検出することが可能となる。また、駆動源に汎用モータを使用する場合は、汎用の位置センサ200を使用することができる。さらに、駆動源として流体圧シリンダを使用する場合は、上記の汎用の位置センサと同じものが使用される。汎用の位置センサ200としては、レーザセンサ、磁気センサ等を用いてもよい。
検知ロッド200bの先端200aがロッド82の先端を固定する同じ取付面に固定されることにより、検知ロッド200bの先端200aから支持部材73に装着されているエキスパンダ4の先端4aまでの寸法はほぼ一定となる。このため、移動装置8による支持部材73のストローク量Lは、先端4aのストローク量とほぼ同一となる。
したがって、位置センサ200は、検知ロッド200bの延出量によって、先端200aから所定の距離に存在するエキスパンダ4の先端4aの位置情報を検知することができる。
【0020】
一方、
図1に示す制御装置10は、記憶手段に予め記憶されたプログラムをCPUが実行することで、自動拡管装置1の各部の動作を制御するコンピュータである。
制御装置10には、表示面部101が設けられている。
図3に示すように表示面部101は、ユーザとのインターフェースとなるタッチパネル102を有している。
タッチパネル102は、設定トルク設定部103、ストローク表示部104、X,Y座標表示部105、NO.が個別に振られたチューブごとに表示するX,Y座標部106、検出トルク表示部107、検出ストローク表示部108、動作状態を示すインジケータ表示ランプ部109、および操作ボタン部110等を有している。
なお、本実施形態では、表示面部101に設けられたタッチパネル102を使用するものを示して説明している。しかしながら、特にこれに限らず、たとえば、操作用のペンダント等、他のインターフェース機器を使用してもよい。
【0021】
このうち、検出トルク表示部107は、回転駆動の際に生じる回転トルクを表示する。そして、個別に振られたチューブごとにX,Y座標部106によって、検出された回転トルクがモニタリングされる。
制御装置10には、位置センサ200が接続されている。そして、移動装置8によって移動した支持部材73の位置を位置センサ200は検出して、制御装置10に位置信号として送信する。
検出ストローク表示部108は、位置センサ200により検出されたストロークLを表示する。そして、個別に振られたチューブごとにX,Y座標部106によって、検出されたストロークLがモニタリングされる。
【0022】
制御装置10には、トルク変動検出部10a、ストローク位置検出部10b、ストローク変化判定部10cが設けられている。制御装置10は、ロボット2によりエキスパンダ4がチューブT内に挿入された際に、移動装置8の支持部材73のストローク位置を位置センサ200によって検出することに基づいて、異常を判定する。
このように支持部材73の位置を用いて、エキスパンダ4がチューブT内に挿入された際に挿入ストロークを監視する。これにより、拡管トルクを検出するタイミングを正確なものとして、異常を判定できる。
また、拡径工程に移行する前の事前検査工程で異常を発見できる。このため、拡管ミスを防止して、歩留まりを向上させることができる。
【0023】
トルク変動検出部10aは、拡管装置3に備えたエキスパンダ4の先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突する(
図4参照)と、拡管装置3を支持するロボット2のトルク変動により衝突したことが検出される。
このように、トルク変動検出部10aは、エキスパンダ4の先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突すると、拡管装置3を支持するロボット2のトルク変動を検出して衝突であるか否か判定する。このため、エキスパンダ4の先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突するストロークでトルク変動を判定することにより挿入異常であると正確に判定することができる。
【0024】
ストローク位置検出部10bは、エキスパンダ4を挿入する際、ローラ43またはフレーム44がチューブTに引っかかったこと(
図5参照)を、移動装置8の支持部材73のストローク位置に基づいて検出して、異常を判定する。
このため、ストローク位置検出部10bは、
図1に示すストロークLの途中であっても、エキスパンダ4を挿入する際に引っかかった位置がローラ43またはフレーム44がチューブTに引っかかった場合に予め想定された位置であると、ローラ43またはフレーム44がチューブに引っかかった挿入異常であると正確に判定することができる。
【0025】
ストローク変化判定部10cは、移動装置8によるエキスパンダ4の拡管に要するストローク量の変化を位置センサ200で検出した位置の変化に基づいて判定を行う。
エキスパンダ4は使用により摩耗すると、チューブTの管径に比して外形寸法を減少させる。このため、ストローク変化判定部10cは、ストローク量の変化が大きくなるとエキスパンダ4が寿命を迎えていると判定できる。したがって、規定回数でエキスパンダ4を交換する管理方法と比較して、正確にエキスパンダ4の劣化の管理を行うことが出来、耐用性を向上させることができる。
【0026】
次に、本実施形態の自動拡管装置1の動作について説明する。自動拡管装置1の動作は、制御装置10によって制御される。
まず、
図7,
図8に示すフローチャートに沿って、本実施形態の自動拡管装置1を用いる自動拡管作業について説明する。自動拡管作業では、事前検査工程と拡管工程とが連続して行われる。
図7は、自動拡管作業のうち、拡管工程に先立って事前に行われる、事前検査工程の順序を示すフローチャートである。また、
図8は、事前検査工程に続いて行われる拡管工程の順序を示すフローチャートである。
【0027】
図7に示すように、まず、自動拡管作業をスタートすると、ステップS1では、クランプ装置7がエアチャックをアンクランプ状態とする。
次に、ステップS2ではツール径を最小(Min)とする。このとき、移動装置8は、クランプ装置7をフレーム部材42のカラー前輪453に当接させた状態で、フレーム部材42をマンドレル41の先端側に移動させる。これにより、ローラ43は、マンドレル41のテーパ部411の小径側に位置して、各ローラ43の径方向外側への突出量が最も小さくなる。つまり、ツール径が最小となる。
【0028】
ステップS3でクランプ装置7は、カラー前輪453をクランプする。ここから移動装置8の電動シリンダ装置は、フリー状態となる。
すなわち、クランプ装置7がフレーム部材42のカラー前輪453をクランプすると、移動装置8によるクランプ装置7の軸方向位置の保持力が解除される。このため、移動装置8はブレーキ解除状態、つまり外力に倣って動くフローティング状態となる。
そして、この際、位置センサ200により、検出された電動シリンダの位置が記憶され、記憶された位置がシリンダの原点となる。また、クランプによりエキスパンダ4のストロークと支持部材73のストロークLとは、ほぼ同じとなる。このため、位置センサ200により検出された電動シリンダの位置を用いて、エキスパンダ4の先端の位置が精度よく測定可能となる。
さらにフローティング状態では、カラー45がチューブTや管板TBによって押されるとシリンダの位置との間隔を縮ませることができる。
【0029】
ステップS4でロボット2を起動する。
ステップS5で拡管装置3のエキスパンダ4を送出し、拡管対象となるチューブTの端面teに対向する位置に移動させる。拡管対象となるチューブTの位置は、管板TBの取付け孔TBaの位置データ(設計データ)を取り込むことや、管板TBの取付け孔TBaの画像をビジョンセンサ5から取込んで画像処理することによって特定できる。
ステップS6では、エキスパンダ4の先端がチューブTの端面に対向する位置まで所定の速度で移送される(早送り制御)。ロボット2は、エキスパンダ4がチューブTの端面の手前数mmに到達すると減速を開始する。ビジョンセンサ5から取込まれた画像は、制御装置10で画像処理される。これにより拡管対象となるチューブTの位置、管板TBの取付け孔TBaの位置データ(設計データ)等が取り込まれる。
ステップS7では、エキスパンダ4が減速状態を維持しながらチューブTの内部に挿入される。
【0030】
ステップS8では、ロボット2を駆動している駆動電流の電流変化から、エキスパンダ4の先端4aがチューブTの内部に挿入される際に抵抗が生じたか否かを判定する。
ステップS8でロボット2が抵抗を検出する(ステップS8でYES)と、ステップS10に処理が進み、ロボット2を停止させる。
たとえば、
図4に示すように、エキスパンダ4の先端4aがチューブTの端面teに衝突すると、挿入の際にロボット2が抵抗を検出する。このため、チューブTの端面teの位置で駆動電流の電流変化を検出すると、エキスパンダ4の先端4aがチューブTの端面teに衝突したとみなして、制御装置10はロボット2を即座に停止させる(ステップS10参照)。
ステップS8で抵抗が検出されない(ステップS8でNO)と、制御装置10は、ステップS9に処理を進める。ステップS9では、ローラ43端面をチューブTの端面teから1mm、チューブT内部に挿入するようにロボット2を動作させる。
【0031】
本実施形態のステップS9では、たとえば、
図6に示すように。ローラ43端面とチューブT端面とが引っ掛かると原点からシリンダ位置までの距離が1mm縮む。このため、移動装置8は、この距離の短縮が移動により位置センサ200にて検出されると(ステップS9にてYES)、ステップS10に処理を進め、ロボット2を停止させることができる。
また、ステップS9にて距離の短縮が検出されないと(ステップS10にてNO)、正常にローラ43先端がチューブ内に挿入されているため、ステップS11に処理を進める。
【0032】
ステップS11では、ロボット2の動作によりフレーム44全体をチューブT内に収まる位置まで移動させる。
ステップS12では、
図5に示すようにチューブTとフレーム44とが干渉しているか否かが判定される。
このため、ステップS13で移動装置8により検出されたシリンダ位置が原点に位置しているか否かが判定される。シリンダ位置が原点に位置していない場合(ステップS13でNO)は、ステップS10へ進み、挿入が異常であると判定して、ステップS10にてロボット2を停止させる。
ステップS13でシリンダ位置が原点に位置している場合(ステップS13でYES)は、挿入は正常であるとしてステップS14へ進み、事前検査工程を終えて、次の拡管工程(ステップS20~S32)へ進む(ステップS15)。
【0033】
図8は、
図7の事前検査工程に続いて行われる拡管工程の順序を示すフローチャートである。
ステップS20で拡管工程をスタートすると、ステップS21で回転駆動機6が回転動作を開始する。サーボドライブを正回転させ、ロボット2でマンドレル41が送られる。
ステップS22で送り方向に負荷がかかるとステップS23で拡管を開始する。
ステップS23では、拡管加工中、カラー45のカラー前輪453がチューブTの端面teに接触し、回転も軸方向の位置移動もしない。
しかし、マンドレル41は、回転駆動機6により回転駆動される。このため、マンドレル41の回転により、ローラ43はチューブTの内周面上を自転しながらフレーム44とともに公転するが軸方向には移動しない。フレーム44はローラ43の自転により自己の中心軸線まわりを公転するのみであり、軸方向には移動しない。
【0034】
一方、マンドレル41の中心軸とローラ43の中心軸とにはフィードアングルが設けられている。
このため、マンドレル41は回転させられると自然と軸方向に送られる作用が働く。このため、マンドレル41は、回転しながら、ローラ43のフィードアングルの作用によって先端側に移動、すなわち自己推進する。マンドレル41の前方移動によってローラ43のマンドレル41との接触位置がテーパ部の大径側に移動する。したがって、ツール径が増大し、チューブTは拡管加工を受ける。
【0035】
ステップS24でエキスパンダ4は自己推進し、ロボット2はエキスパンダ4の自己推進速度に自動追従する。エキスパンダ4が自己推進させられる軸方向外力を受けている間、エキスパンダ4を軸方向外力の方向に移動させるようにロボット2が動作させられる。これにより、ロボット2による拡管装置3の支持位置がエキスパンダ4のマンドレル41の軸方向の動きに追従させられる。
ステップS25でサーボドライブが設定したトルクを検出すると回転を停止し、逆回転を開始する。
ステップS26では、正常な位置までエキスパンダ4が挿入されているかストローク判定を行うため、位置センサ200によってストロークが検出される。ここでは、シリンダ位置が原点から縮んで位置がずれているか否かを監視する。たとえば、拡管チューブが細い時など設定トルクが微小で検出不安定な場合は、トルクではなく、位置センサ200で検出されるストロークをしきい値として用いる。これにより、正確にエキスパンダ4のチューブT内への挿入状態を判定することができる。
【0036】
ステップS27でトルク到達の際のストロークが所定範囲に入っているか否かが確認される。この際、トルク到達の際のストロークが所定範囲に入っているか否かを確認することで、トルクとストロークとによるダブルチェックが行える。
ステップS27でトルク到達を示す予め設定された設定トルクでストロークが所定範囲から外れている(ステップS27でNO)と、ステップS25に戻り、設定トルクでストロークが所定範囲内に入っている(ステップS27でYES)と、ステップS28に処理を進める。
【0037】
ステップS28では、ストロークが所定量に到達すると回転を停止し、逆回転を開始する。
ステップS29でエキスパンダ4は逆回転により自己後退する。このため、ロボット2はエキスパンダ4の逆回転による自己後退の速度に自動追従して後退する。
ステップS30で逆回転による負荷が無くなると、ロボット2はエキスパンダ4をチューブTから抜去る。
【0038】
ステップS31で拡管工程終了後の後工程が行われる。
後工程では、拡管に要したストロークLの推移がチェックされる。
たとえば、ローラ43もしくはマンドレル41が消耗してくると同じ拡管トルク(拡管径)を得るのにも、必要とされるストロークは増加する。したがって、位置センサ200にて得られるストロークを管理し、しきい値を超えたら寿命と判断して新しいエキスパンダ4に交換する。これにより、回数管理よりも確実な消耗具合の判断が行える。
【0039】
本実施形態では、エキスパンダ4は、拡管加工時に自ら前進(自己推進)する方向に軸方向外力がかかり、拡管後に抜き出す際にも自ら抜き出る(自己後退)方向に軸方向外力がかかる。この軸方向外力とロボット2の動力とが互いに押し付け合わないように、ロボット2は、軸方向外力である負荷に合わせて、ロボット2に備わる駆動用モータのトルク制御を行う。具体的には、ロボット2の動作がエキスパンダ4の自己推進および自己後退に追従させられるよう、モータ電流の制御によって制限をかけ、ロボット2に外力が印加されると、ロボット2はこの外力に従って動作する。
【0040】
なお、ステップS10で、ロボット2を停止させる際、あるいは回転駆動機6は、予め設定された負荷トルクが検出された場合等、回転を停止し逆回転する。負荷トルクは、回転駆動機6に流れる電流値に基づいて得られる。
そして、ロボット2は、回転駆動機6によって逆回転させられるマンドレル41をエキスパンダ4の基端側に送る。マンドレル41は、逆回転しながら、ローラ43のフィードアングルの作用によって基端側に移動、すなわち自己後退する。このマンドレル41の後方移動によってローラ43のマンドレル41との接触位置がテーパ部411の小径側に移動するので、ツール径が減少する。
【0041】
エキスパンダ4が自己後退させられる軸方向外力を受けている間、エキスパンダ4を軸方向外力の方向に移動させるようにロボット2が動作させられる。これにより、ロボット2による拡管装置3の支持位置がエキスパンダ4のマンドレル41の軸方向の動きに追従させられる。続いて、ロボット2は、拡管装置3のエキスパンダ4をチューブTから抜き去り、回転駆動機6による回転駆動を停止させる。
【0042】
上述してきたように、本実施形態の自動拡管装置1では、拡管作業の効率を向上させることができる。
具体的には、自動拡管装置1がエキスパンダ4を軸方向に移動させる移動装置8における支持部材73の位置を検出する位置センサ200を備える。
これにより、エキスパンダ4のフレーム部材42もしくはローラ43がチューブTに引っ掛かって正常に入らなかったことをエキスパンダ4の軸方向の移動または、位置の変化により検出して、異常と判断することができる。したがって、拡管ミスを防止して拡管作業の効率を向上させることができる。
【0043】
このように、回転駆動機6によって検知される拡管トルクとは別に、位置センサ200によって挿入ストロークを監視することで、拡管ミスを防止して、拡管作業の効率を向上させることができる。
また、位置センサ200により検出されたマンドレル41の位置によって拡管完了とするストローク制御が可能となった。このため、寸法公差を減少させることができる。
【0044】
さらに、位置センサ200により検出された支持部材73の位置情報から得られるストロークに基づいて、ロボット2によりエキスパンダ4がチューブT内に挿入された際に、異常を判定することができる。
このように、支持部材73の位置を用いて、エキスパンダ4がチューブT内に挿入された際に挿入ストロークを監視する。これにより、拡管トルクを検出するタイミングを正確なものとして、異常を判定できる。
また、拡径工程に移行する前の事前検査工程で異常を発見できる。このため、拡管ミスを防止して、歩留まりを向上させることができる。
【0045】
さらに、制御装置10は、トルク変動検出部10aを有している。トルク変動検出部10aは、拡管装置3に備えたエキスパンダ4の先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突したことを、拡管装置3を支持するロボット2のトルク変動により検出して異常を判定する。
すなわち、位置センサ200は、制御装置10へ支持部材73の位置情報を、支持部材73の位置情報から得られる、支持部材73から設定された距離に存在するエキスパンダ4の先端4aの位置情報として送る。
制御装置10に設けられたトルク変動検出部10aは、
図4に示すように、先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突したことを、拡管装置3を支持するロボット2のトルク変動により検出することができる。
このように、エキスパンダ4の先端4aが管板TBまたはチューブTの端面teに衝突すると、トルク変動検出部10aは、拡管装置3を支持するロボット2のトルク変動として異常を検出することができる。
このため、トルク変動検出部10aは、エキスパンダ4の先端4aがチューブT内に挿入される前に、このまま挿入動作および拡径工程を強行しても挿入異常を生じさせる可能性が高い状態であることを正確に判定することができる。
【0046】
また、制御装置10は、ストローク位置検出部10bを有している。ストローク位置検出部10bは、エキスパンダ4を挿入する際、ローラ43またはフレーム44がチューブTに引っかかったことを支持部材73の位置を位置センサ200の検出に基づいて判定する。
本実施形態では、位置センサ200による支持部材73の位置の検出によって、支持部材73から設定された距離に存在するエキスパンダ4の先端4aの位置情報を得ることができる。
そして、エキスパンダ4を挿入する際に引っかかった位置がローラ43またはフレーム部材42がチューブTに引っかかった場合に予め想定された位置であると、ローラ43またはフレーム部材42がチューブTに引っかかった挿入異常であると正確に判定することができる。
【0047】
また、制御装置10は、ストローク変化判定部10cを有する。ストローク変化判定部10cは、移動装置8によるエキスパンダ4の拡管に要するストローク量の変化を位置センサ200で検出する。
このため、ストローク変化判定部10cは、ストローク量の変化が大きくなるとエキスパンダ4が摩耗等により寿命を迎えていると判定できる。したがって、正確にエキスパンダの劣化の管理を行うことが出来、耐用性を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではない。本発明は、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0049】
例えば、前記した実施形態では、ロボット2として、多関節ロボットが使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば直交座標型ロボット等の各種ロボットが使用されてもよい。
【0050】
また、実施形態では、移動装置8として電動シリンダ装置を使用する場合を示して説明してきたが、特にこれに限らない。例えば、駆動源にサーボモータからなる電動シリンダ装置を用いてエンコーダで位置を検出するように構成してもよい。
さらに、移動装置8の駆動源として汎用モータを使用したり、あるいは、駆動源として流体圧シリンダを使用してもよい。これらの場合は、レーザセンサまたは磁気センサ等の汎用の位置センサを使用出来るため、さらにコストの上昇を抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
1 自動拡管装置
2 ロボット
3 拡管装置
4 エキスパンダ
6 回転駆動機
7 クランプ装置
8 移動装置
41 マンドレル
42 フレーム部材
43 ローラ
73 支持部材(移動部)
200 位置センサ(検出装置)