IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 廣瀬 直樹の特許一覧 ▶ 田頭 徹也の特許一覧

特開2022-21268屋根の劣化診断方法および劣化診断システム
<>
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図1
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図2
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図3
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図4
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図5
  • 特開-屋根の劣化診断方法および劣化診断システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021268
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】屋根の劣化診断方法および劣化診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/00 20060101AFI20220126BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20220126BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220126BHJP
【FI】
G01N33/00 D
G01N17/00
G06N20/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124794
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】520270233
【氏名又は名称】廣瀬 直樹
(71)【出願人】
【識別番号】519117824
【氏名又は名称】田頭 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 直樹
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050BA05
2G050BA09
2G050EB07
2G050EC01
(57)【要約】
【課題】より精度の高い診断を行うことができる屋根の劣化診断方法および劣化診断システムを提供する。
【解決手段】建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断方法であって、インターネット20を経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程40と、第1の衛星画像から屋根の形状および素材を識別し、識別された素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程50と、劣化診断を行うための第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、学習データに基づいて、第2の衛星画像に撮影された屋根の劣化診断を行う診断工程60とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断方法であって、
インターネットを経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程と、
第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程と、
劣化診断を行うための第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行う診断工程と、
を有することを特徴とする屋根の劣化診断方法。
【請求項2】
前記学習データ作成工程は、前記屋根の割れ、前記屋根の光沢の減少をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定することを特徴とする請求項1に記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項3】
前記学習データ作成工程は、前記屋根に発生するカビ、錆び、および藻の有無をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項4】
前記学習データ作成工程は、前記素材の劣化具合から推定経時年数を特定し、前記診断工程は、前記学習データに基づいて前記屋根の推定経時年数を判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項5】
建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断システムであって、
劣化診断を行う第2の衛星画像の撮影範囲を特定するための範囲特定情報を入力する入力端末と、
インターネットを経由して或いは前記入力端末から第1の衛星画像を取得して、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成し格納するとともに、前記入力端末の前記範囲特定情報から第2の前記衛星画像を取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行うサーバと、
を備えたことを特徴とする屋根の劣化診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の劣化を調査または診断するための劣化調査方法および劣化診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根の劣化を診断する方法としては、屋根面の画像を撮影した後に、その画像の色彩値の最大値と最小値の差分、或いは標準偏差に基づいて屋根の劣化を診断する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-218681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の技術では、色彩に基づいて劣化診断をするものであり、その診断の精度が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、より精度の高い診断を行うことができる屋根の劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明は、建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断方法であって、インターネットを経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程と、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程と、劣化診断を行うための第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行う診断工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記学習データ作成工程は、前記屋根の割れ、前記屋根の光沢の減少をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定するようにしてもよい。
【0008】
さらに、前記学習データ作成工程は、前記屋根に発生するカビ、錆び、および藻の有無をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定することもできる。
【0009】
さらにまた、前記学習データ作成工程は、前記素材の劣化具合から推定経時年数を特定し、前記診断工程は、前記学習データに基づいて前記屋根の推定経時年数を判断することもできる。
【0010】
一方、本発明は、建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断システムであって、劣化診断を行う第2の衛星画像の撮影範囲を特定するための範囲特定情報を入力する入力端末と、インターネットを経由して或いは前記入力端末から第1の衛星画像を取得して、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成し格納するとともに、前記入力端末の前記範囲特定情報から第2の前記衛星画像を取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行うサーバと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る屋根の劣化診断方法は、インターネットを経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程と、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程と、劣化診断を行うための第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行う診断工程と、を有しているので、ノウハウ等によって数値化し易い屋根の形状や素材に着目することで、精度の高い機械学習を行うことができる。また、屋根の形状などの物理的形状は画像から識別がし易いので、機械学習および劣化診断の判断処理を速く行うことができる。そのため、広範囲な領域に点在する複数の屋根の診断を容易に行うことができ、例えば、特定の範囲(区画、番地など)に建てられた複数の家屋の劣化状態の傾向を、範囲毎に把握するようなこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る屋根の劣化診断システムの構成例を示す図である。
図2図1の入力端末の構成例を示す図である。
図3図1のサーバの構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る屋根の診断方法の一例を示すフローチャートである。
図5図4における学習データ作成工程の一例を説明する図である。
図6図4における診断工程の一例を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る屋根の劣化診断システムおよび方法について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る屋根の劣化診断システム1の構成例を示す図である。図1に示す構成では、屋根の劣化診断システム1は、入力端末10、インターネット20、および、サーバ30を有している。
【0014】
入力端末10は、システムの管理者が有するパーソナルコンピュータによって構成される。管理者は、入力端末10を操作することで、サーバ30に対して範囲特定情報(都市名、地域名、番地、などの地理的範囲)を送信し、サーバ30に対して後述する処理を実行させる。また、インターネット20と接続され、第1の衛星画像(詳細は後述する)などの情報を収集する。さらに、出力端末として、サーバ30からの診断結果を受信し、結果を表示させるようにしてもよい。
【0015】
インターネット20は、共通の通信仕様を用いて全世界のコンピュータや通信機器を相互に繋いだグローバルなコンピュータネットワークである。なお、当該ネットワークには有線ネットワークだけでなく、無線ネットワークも含まれる。
【0016】
サーバ30は、入力端末10からの範囲特定情報に基づいてインターネット20から第2の衛星画像(詳細は後述する)などの情報を収集するとともに、劣化診断した結果を格納し、入力端末10の要求に応じて該当する劣化診断の結果を供給するためのソフトウエアを有するサーバコンピュータである。
【0017】
図2に示すように、入力端末10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、GPU(Graphical Processing Unit)15、I/F(Interface)16、バス17、および、表示装置18を有している。なお、HDD14の代わりに、または、HDD14に加えてSSD(Solid State Drive)を備えるようにしてもよい。
【0018】
ここで、CPU11は、ROM12およびHDD14に格納されているプログラムに基づいて処理を実行し、例えば、ブラウザソフトによってサーバ30にアクセスし、サーバ30に格納されている劣化診断の結果の情報を検索し、検索結果を表示する等の動作を行う。
【0019】
ROM12は、CPU11が実行する基本的なプログラムやデータを格納する半導体記憶装置である。RAM13は、CPU11が実行するプログラムや演算途中のデータを一時的に格納するための半導体記憶装置である。HDD14は、CPU11が実行するプログラムやデータを格納する磁気記憶装置である。GPU15は、CPU11から供給される描画命令に応じて描画処理を実行し、得られた画像等を表示装置18に供給して表示させる。なお、GPU15は、並列性が高い演算処理を実行するようにしてもよい。もちろん、GPU15以外の演算処理プロセッサを搭載するようにしてもよい。
【0020】
I/F16は、例えば、図示しないキーボードおよびマウス等の入力デバイスからの情報を入力するとともに、インターネット20との間で情報を授受するインターフェースである。バス17は、CPU11、ROM12、RAM13、HDD14、および、I/F16を相互に接続し、これらの間で情報の授受を可能にするための信号線群である。表示装置18は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等によって構成され、GPU15から供給される画像等を表示部に表示する。
【0021】
図3は、図1に示すサーバ30の構成例を示す図である。図3に示すように、サーバ30は、CPU31、ROM32、RAM33、HDD34、GPU35、I/F36、および、バス37を有している。なお、図3に示すCPU31、ROM32、RAM33、HDD34、GPU35、I/F36、および、バス37は、図2に示すCPU11、ROM12、RAM13、HDD14、GPU15、I/F16、および、バス17と機能は同様であるのでその説明は省略する。図3では、HDD34は、種々のデータを格納するDB(Data Base)34aを有している。なお、図3の構成例では、GPU35は、例えば、描画処理や並列性が高い処理を実行する。また、HDD34の代わりに、または、HDD34に加えてSSDを備えるようにしてもよい。
【0022】
次に、本発明の実施形態の動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る屋根の診断方法の一例を示すフローチャートである。また、図5は、図4における学習データ作成工程の一例を説明する図、図6は、図4における診断工程の一例を説明する図である。図4図6で示す各工程は、図3に示すハードウエア資源と、HDD34およびROM32等に格納されているソフトウエア資源とが協働することによって実現される。
【0023】
本実施形態の屋根の診断方法は、図4に示すように、画像取得工程40、学習データ作成工程50、および診断工程60によって構成されている。
【0024】
画像取得工程40は、インターネット20を経由して、入力端末10、或いは入力端末10からの入力情報に基づいてサーバ30が衛星画像を取得するものである。また、画像取得工程40では、インターネット20を経由して取得された画像のみならず、他の画像データ、例えば、ドローンなどによって空撮された画像を取り込んで使用することもできる。
【0025】
学習データ作成工程50では、図5に示すように、第1の衛星画像を取得(符号51)した後に、劣化表情の学習処理(符号52)が行われる。
【0026】
ここで、「劣化表情」とは、発明者の造語であり、素材の表面に表れる素材本体の劣化の状態をいう(詳細は後述する)。すなわち、屋根の素材は、紫外線などに長時間さらされることによって表面だけでなく内部の性能や品質が低下するものであり、それが素材の表面に表れた状態を総称するものである。この劣化表情は、物理的形状として或いは色彩として衛星画像で認識される。
【0027】
第1の衛星画像を取得51では、画像取得工程40によって取り込まれた画像のうち、学習に最適な画像が作業者等によって取捨選択され、学習対象となる「第1の衛星画像」が格納される。
【0028】
劣化表情の学習処理52では、第1の衛星画像と、複数の特徴量との対応関係を機械学習させるものである。より詳細には、学習対象となる第1の衛星画像から建築物の屋根を特定し、この特定した屋根から複数の特徴量(例えば、材質、形状など)を抽出する。なお、ディープニューラルネットワークによって生成された特徴量を用いるようにしてもよい。
【0029】
基本情報の数値化52aでは、屋根の形状および材料(素材、材質)の情報を特徴量として数値化して機械学習する。この屋根の形状や材料は、年代ごとの流行や建築技術の進化によって変化しており、これらを建築関係者の経験やノウハウで特定することで、概ねの築年数や劣化状態を推定することができる。また、屋根の材質についても、素材の技術の進化によって変化しており、これらを特定することで概ねの築年数や劣化状態を推定することができる。
【0030】
屋根の形状および素材としては、例えば、屋根に設置されたソーラーパネル(太陽光パネル)の形状および素材も含まれる。このソーラーパネルについても、技術の進歩によって年代ごとに形状や素材が変化しており、ソーラーパネルの設置された屋根を抽出して形状、素材を特定することで概ねの築年数や劣化状態を推定することができる。また、ビルの屋上部分に設置される機器(空調用室外機、ボイラー、防水設備など)も屋根の形状に含まれ、その形状や材質を特定することで、劣化状態を推定することができる。
【0031】
第1付加情報の数値化52bでは、基本情報の数値化52aでの劣化診断の精度が低い場合に、それに付加して、屋根の割れおよび光沢の減少の情報を数値化して学習する。これらの基本情報の数値化52aおよび第1付加情報の数値化52bでは、主に画像に表れる屋根の物理的形状に着目することで数値化が行われている。また、これらの現象は、建築関係者の経験やノウハウで経時年数(使用年数)を概ね推定することができ、これを数値化して学習させている。
【0032】
また、第2付加情報の数値化52cでは、さらに屋根の表面に表れるカビ、錆び、藻の発生具合の情報を数値化して学習する。さらに、その他の付加情報の数値化52dでは、例えば、屋根の色褪せ、色とび、汚れなど、或いはこれらが複合して発生した状態の情報を数値化して学習する。これらの第2付加情報の数値化52cおよびその他の付加情報の数値化52dでは、主に画像の色彩から特定される。詳細には、これらは、複合的に見て、均一した色やパターンから、不統一な斑(地と柄)として屋根の表面に表れるため、この斑を特定して数値化を行っている。また、これらの現象は、建築関係者の経験やノウハウで経時年数を概ね推定することができ、これを数値化して学習させている。
【0033】
上述した基本情報の数値化52a、第1付加情報の数値化52b、第2付加情報の数値化52c、およびその他の付加情報の数値化52dの順位は、建築関係者の経験やノウハウに基づいて、学習のし易さ、劣化および経時年数の推定のし易さ、推定の正確さなどの観点を総合的に判断して順位付けしたものである。
【0034】
経時年数の情報の数値化52eは、上述した基本情報、第1付加情報、第2付加情報、その他の付加情報のいずれか1つ或いは2つ以上の情報に基づいて経時年数が数値化されたものである。
【0035】
診断工程60は、図6に示すように、範囲特定情報の入力処理が行われ(符号61)た後、サーバ30で第2の衛星画像が取得され(符号62)、劣化診断処理63がされた後に、診断結果の出力64が行われる。
【0036】
範囲特定情報の入力処理61では、入力端末10を介して範囲特定情報が入力される。例えば、行政都市名、丁目、番地までを特定することで、広範囲なエリアの衛星画像を特定することができる。
【0037】
第2の衛生画像の取得62では、上述した範囲特定情報に基づいて、インターネット20を経由して、診断を行う対象の「第2の衛生画像」が取得される。ここで、「第2の衛星画像」とは、診断を行う範囲を網羅した衛星写真であり、学習を行うための「第1の衛星画像」とは異なる。なお、この第2の衛生画像で診断した結果を反映させ、さらに精度の高い機械学習をさせるようにしてもよい。
【0038】
第2の衛生画像の尺度は、入力端末10を介して特定してもよく、予め設定したプログラムによって特定の尺度の画像を取得するようにしてもよい。また、機械学習の精度や診断スピードに基づいて、任意の尺度に固定することもできる。
【0039】
劣化診断処理63では、学習データ作成工程50で数値化された特徴量に基づいて、第2の衛生画像から屋根と判断された部分の劣化診断が行われる。ここでは、劣化表情の学習処理52の項目に対応する診断(形状、材質の学習データに基づく診断63a、割れ、光沢の学習データに基づく診断63b、カビ、錆び、藻の学習データに基づく診断63c、その他の学習データに基づく診断63d、経時年数の学習データに基づく診断63e)が順番に行われる。
【0040】
また、診断処理のスピードの観点から、簡易診断(基本情報のみ)、通常診断(基本情報+第1付加情報)、詳細診断(全ての情報)などに区分けして、診断結果と処理スピードの兼ね合いをみて階層に分けて処理することもできる。
【0041】
診断結果の出力64は、劣化診断処理63の診断結果を、入力端末10或いはプリンター(図示せず)に出力・表示するものである。診断結果は、例えば、劣化の具合を診断処理の項目に合わせて表示することができる。また、屋根の経時年数(使用年数)で表現される。
【0042】
本発明の実施の形態に係る屋根の劣化診断方法によれば、第1の衛星画像から屋根の形状および素材を識別し、識別された素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程50と、劣化診断を行うための第2の衛星画像をインターネット20を経由して取得し、学習データに基づいて、第2の衛星画像に撮影された屋根の劣化診断を行う診断工程60とを有しているので、ノウハウ等によって数値化し易い屋根の形状や素材に着目することで、精度の高い機械学習を行うことができる。また、屋根の形状などの物理的形状は画像から識別がし易いので、機械学習および劣化診断の判断処理を速く行うことができる。そのため、広範囲な領域に点在する複数の屋根の診断を容易に行うことができ、例えば、特定の範囲(区画、番地など)に建てられた複数の家屋の劣化状態の傾向を、範囲毎に把握するようなこともできる。
【0043】
また、学習データ作成工程50は、屋根の割れ、屋根の光沢の減少をさらに識別し、素材の劣化具合を特定しているので、屋根の物理的形状であるこれらの項目を追加することで、さらに精度の高い機械学習、および判断処理の速い劣化診断を行うことができる。
【0044】
さらに、学習データ作成工程50は、屋根に発生するカビ、錆び、および藻の有無をさらに識別し、素材の劣化具合を特定しているので、屋根の物理的形状のみならず色彩にも着目することで、さらに精度の高い機械学習を行うことができる。
【0045】
さらにまた、学習データ作成工程50は、素材の劣化具合から推定経時年数を特定し、診断工程は、学習データに基づいて屋根の推定経時年数を判断するようにしているので、劣化診断の結果を推定経時年数として出力することができる。そのため、例えば、出力結果から推定経時年数が20年以上の物件のみをソートするなどのデータ処理が容易に行えるようになる。
【0046】
一方、本発明の実施の形態に係る屋根の劣化診断システム1では、劣化診断を行う第2の衛星画像の撮影範囲を特定するための範囲特定情報を入力する入力端末10と、インターネット20を経由して或いは入力端末から第1の衛星画像を取得して、第1の衛星画像から屋根の形状および素材を識別し、識別された素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成し格納するとともに、入力端末の範囲特定情報から第2の衛星画像を取得し、学習データに基づいて、第2の衛星画像に撮影された屋根の劣化診断を行うサーバ30とを備えているので、簡単なシステム構成で屋根の劣化診断を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態に係る屋根の劣化診断方法および劣化診断システムについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0048】
例えば、本実施の形態では、入力端末10をパーソナルコンピュータとして説明しているが、範囲特定情報を入力し、診断結果が出力されるものであれば、スマートフォン或いはタブレット端末であってもよい。また、これらのスマートフォン或いはタブレット端末がインターネット20を経由して複数接続され、スマートフォンなどの一般利用者に対してサーバ30へアクセスする権限を有料で認可することで、一般利用者が劣化診断結果を容易かつ迅速に得られるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 屋根の劣化診断システム
10 入力端末
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 HDD
16 I/F
17 バス
18 表示装置
20 インターネット
30 サーバ
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 HDD
34a DB
35 GPU
36 I/F
37 バス
40 画像取得工程
50 学習データ作成工程
52 劣化表情の学習処理
52a 基本情報の数値化
52b 第1付加情報の数値化
52c 第2付加情報の数値化
52d その他の付加情報の数値化
52e 経時年数の情報の数値化
60 診断工程
61 範囲特定情報の入力処理
62 第2の衛星画像を取得
63 劣化診断処理
63a 形状、材質の学習データに基づく診断
63b 割れ、光沢の学習データに基づく診断
63c カビ、錆び、藻の学習データに基づく診断
63d その他の学習データに基づく診断
63e 経時年数の学習データに基づく診断
64 診断結果の出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断方法であって、
インターネットを経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程と、
第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程と、
劣化診断を行うために特定の範囲に点在する複数の屋根を含む第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行う診断工程と、
を有し
前記診断工程には、特定の範囲に点在する複数の屋根の劣化状態の傾向を範囲毎に診断することを含むことを特徴とする屋根の劣化診断方法。
【請求項2】
前記学習データ作成工程は、前記屋根の割れ、前記屋根の光沢の減少をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定することを特徴とする請求項1に記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項3】
前記学習データ作成工程は、前記屋根に発生するカビ、錆び、および藻の有無をさらに識別し、前記素材の劣化具合を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項4】
前記学習データ作成工程は、前記素材の劣化具合から推定経時年数を特定し、前記診断工程は、前記学習データに基づいて前記屋根の推定経時年数を判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の屋根の劣化診断方法。
【請求項5】
建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断システムであって、
劣化診断を行う第2の衛星画像の撮影範囲を特定するための範囲特定情報を入力する入力端末と、
インターネットを経由して或いは前記入力端末から第1の衛星画像を取得して、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成し格納するとともに、前記入力端末の前記範囲特定情報から特定の範囲に点在する複数の屋根を含む第2の前記衛星画像を取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行なうとともに、特定の範囲に点在する複数の屋根の劣化状態の傾向を範囲毎に診断するサーバと、
を備えたことを特徴とする屋根の劣化診断システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明は、建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断方法であって、インターネットを経由して第1の衛星画像を取得する画像取得工程と、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成する学習データ作成工程と、劣化診断を行うために特定の範囲に点在する複数の屋根を含む第2の衛星画像をインターネットを経由して取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行う診断工程とを有し、前記診断工程には、特定の範囲に点在する複数の屋根の劣化状態の傾向を範囲毎に診断することを含むことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
一方、本発明は、建築物の屋根の劣化状態を特定するための屋根の劣化診断システムであって、劣化診断を行う第2の衛星画像の撮影範囲を特定するための範囲特定情報を入力する入力端末と、インターネットを経由して或いは前記入力端末から第1の衛星画像を取得して、第1の前記衛星画像から前記屋根の形状および素材を識別し、識別された前記素材の表面に表れる素材の劣化具合を特定するための学習データを作成し格納するとともに、前記入力端末の前記範囲特定情報から特定の範囲に点在する複数の屋根を含む第2の前記衛星画像を取得し、前記学習データに基づいて、前記第2の衛星画像に撮影された前記屋根の劣化診断を行なうとともに、特定の範囲に点在する複数の屋根の劣化状態の傾向を範囲毎に診断するサーバと、を備えたことを特徴とする。