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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021272
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】姿勢制御装置及び姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/28 20060101AFI20220126BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20220126BHJP
   G01C 19/08 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B64G1/28 600
H02P5/46 A
G01C19/08
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020124798
(22)【出願日】2020-07-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】520272466
【氏名又は名称】小島 広久
(71)【出願人】
【識別番号】520272477
【氏名又は名称】ケシュトカー, サジャ
【氏名又は名称原語表記】Sajjad Keshtkar
【住所又は居所原語表記】Macedonia 68, Lomas Esrella, Mexico City 08980, Mexico
(71)【出願人】
【識別番号】520272488
【氏名又は名称】ポズニヤック, アレキサンダー
【氏名又は名称原語表記】Alexander Poznyak
【住所又は居所原語表記】Carrizo 338, Torres Lindavista, Mexico City 07708, Mexico
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(72)【発明者】
【氏名】小島 広久
(72)【発明者】
【氏名】ケシュトカー, サジャ
(72)【発明者】
【氏名】ポズニヤック, アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊夫
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572AA20
5H572DD01
5H572EE01
5H572EE04
5H572GG01
5H572LL01
5H572LL32
5H572LL33
5H572PP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープに基づいて、特異点および望ましくない交差ジャイロスコープ項を克服するとともにCMGの質量を削減するモデルを提供する。
【解決手段】本発明の姿勢制御装置は、シザード配置された2つのジャイロスコープ30,40を有するジャイロスコープフレーム10と、それを回転可能に枢支する2軸ジンバルベース5とを含む。各ジャイロスコープ30,40のロータは高速で回転しており、傾斜角度調整用回転軸n1,n2およびジンバル軸Ob1,Oyはサーボモータによって作動される。すべてのモータの回転は、制御ユニット60によって測定され制御される。ロータの同期回転と傾斜角度δspとジンバル角度δi, δoの調整により、全運動モーメントが球形領域を有する3次元のジャイロスコープトルクを生成できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロータと、該ロータをスピン軸周りに回転可能に枢支するロータハウジングフレームと、をそれぞれ含む一対のシングルジンバル・コントロールモーメント型のジャイロスコープと、
(b)前記一対のジャイロスコープの前記ロータハウジングフレームを、前記スピン軸に直交し互いに平行なそれぞれの回転軸(n、n)周りに回転可能に枢支することにより、該一対のジャイロスコープをはさみ型に配置して、反対方向に同じ傾斜角度(δsp)で調整可能に保持するジャイロスコープフレームと、
(c)前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を調整可能にするために、該ジャイロスコープフレームを、前記回転軸(n、n)に直交する第2軸(Oy)を中心に回転可能に枢支するとともに、自身のジンバル角度(δo)を調整可能にするために、自身は制御対象によって前記第2軸(Oy)に直交する第1軸(Ob)周りに回転可能に枢支されている、2軸ジンバルベースと、
(d)前記ロータハウジングフレームに取り付けられて前記ロータの角速度を測定する角速度センサーと、
(e)前記傾斜角度(δsp)および前記各ジンバル角度(δi,δo)を測定する角度センサーと、
(f)前記傾斜角度(δsp)、前記ジンバル角度(δi,δo)、および前記ロータの角速度を制御する制御ユニットと、を含む
ダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項2】
前記一対のジャイロスコープを傾けるためのレバーまたはベルトまたはギアをさらに含む、請求項1に記載のダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項3】
前記一対のジャイロスコープをそれぞれ傾けるための、電気モータをさらに含む、請求項1に記載のダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項4】
前記ロータをそれぞれ回転させるためのモータをさらに含む、請求項1に記載のダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項5】
前記ロータをそれぞれ直接回転駆動させるための誘導固定子をさらに含む、請求項1に記載のダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項6】
前記2軸ジンバルベース及び前記ジャイロスコープフレームをそれぞれ傾けるためのモータをさらに有する、請求項1に記載のダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムを使用する制御対象(1)の姿勢制御方法であって、
(a)外部センサーに基づいて制御対象の現在の姿勢(q)を把握することと、
(b)制御対象の目標姿勢(qt)と前記現在の姿勢(q)から姿勢誤差(^qe)を算出することと、
(c)制御対象の姿勢の変更と安定化のための外部センサーから、ロール、ピッチ、ヨーの各姿勢の信号(ω)を取得することと、
(d)ステップ(b)の信号とステップ(c)の信号を組み合わせてトルクコマンド(uc)を算出することと、
(e)前記ロータに、モータを使用してそれぞれの角運動量(Hw)を与えることと、
(f)センサーを使用して前記ロータの回転速度、傾斜角度(δsp)、およびジンバル角度(δi,δo)を測定することと、
(g)ステップ(f)の信号を使用して前記ロータの角運動量(h)を算出することと、
(h)ステップ(c)、(d)、(g)の信号を組み合わせて、運動量速度コマンド(τ)を計算することと、
(i)ジンバル駆動制御則にジンバル角度ベクトル(δ = [δsp δi δo]T)と運動量速度コマンド(τ)を提供して、ジンバル駆動速度コマンド(δc=[δcsp δci δco]T)を決定することと、
(j)ジンバル速度コマンド(δc)を前記制御ユニットに提供して、傾斜角度(δsp)とジンバル角度(δi,δo)を変更することと、
(k)ステップ(j)で決定された傾斜角速度コマンド(δco)に基づいて、前記制御ユニットにより、前記2軸ジンバルベースのジンバル角度(δo)を変更することと、
(l)ステップ(j)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δci)に基づいて、前記制御ユニットにより、2軸ジンバルベース(5)内の前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を変更することと、
(m)ステップ(j)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δcsp)に基づいて、前記制御ユニットにより、共通の前記ジャイロスコープフレームに取り付けられた各ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)を変更することと、
(n)システムによって生成された前記姿勢制御トルク(u)を適用して、前記制御対象の姿勢の変更および安定化を行うことと、を含む
姿勢制御方法。
【請求項8】
前記トルクコマンド(u)を前記コントロールモーメント・ジャイロスコープのトルク座標に変換して、外乱に対する安定モードを作成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジンバル駆動制御則のステップ(i)が、運動量速度コマンド(τ)の決定後に、システムが特異点に陥らない場合、ジンバル駆動速度コマンドδc(= [δcsp δci δco]T)を以下のように決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【数21】
ここで、δmaxはシステムが機械的に駆動されるときのジンバル駆動速度の最大値で、Aはシステムのヤコビ行列である。
【請求項10】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するためのジンバル駆動制御則が、傾斜角度δsp = 0のとき、ヌルモーションと呼ばれるジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する、請求項7に記載の方法。
【数22】
ここで、knはヌルモーションのジンバル駆動制御則のゲインであり、^δiと^δoは内側と外側のジンバルの目標ジンバル角度である。
【請求項11】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するために、目標ジンバル角度(δi,δo)を以下のように決定する、請求項10に記載の方法。
【数23】
【数24】
ここで、ec = [ec1 ec2 ec3]Tは、前記制御対象の目標姿勢(qt)から決定される目標の回転軸に対応する単位ベクトルで、sgnは、以下の符号関数を示す。
【数25】
【請求項12】
請求項10に記載の傾斜角度δsp =0の場合のヌルモーションから回復するために、ジンバル角度(δi,δo)が目標ジンバル角度(^δi,^δo)に到達したとき、ジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する請求項7に記載の方法。
【数26】
ここで、以下のように定義される。
【数27】
【請求項13】
前記ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)の駆動は、運動量速度コマンド(τ)の方向が前記ジャイロスコープの角運動量(h)と同じである場合、δsp =±π/2の近くで停止され、前記運動量速度コマンド(τ)の方向が前記ジャイロスコープの角運動量(h)の方向と反対の場合、外部特異点(δsp=±π/2)から回復するために、以下のジンバル駆動速度コマンドδcspに基づいて再開される、請求項7に記載の方法。
【数28】
ここで、krは傾斜角度(δsp)の駆動を再開するための制御ゲインである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御モーメント機器の分野に関し、慣性場におけるデバイスの三軸安定化、方向制御、および姿勢制御のための慣性システムの開発に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
コントロールモーメント・ジャイロスコープ(CMG)のいくつかのアーキテクチャがよく知られている。シングルジンバルジャイロスコープは、制御対象のハウジングに固定的に接続されたシングルステージジンバルに配置された電気モータ駆動のフライホイールを備え、1次元の姿勢制御を提供するものであり、最も一般的な物の範疇である。オブジェクトを完全に3次元で制御するには、少なくとも3つのシングルジンバルCMGが必要である。3軸安定化と姿勢制御を提供するための広範でさまざまなアーキテクチャが、いくつかの文献で提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
いくつかのシングルジンバルCMGをピラミッドアレイまたはルーフアレイ配置に構成した組み合わせは、三次元制御モーメントを作り出すことができる(特許文献1)。 シングルジンバルシザードタイプのCMGを備えた構造もよく知られており、トルク対質量比が比較的高い強力な1次元モーメントを作成できる(特許文献3、特許文献4)。
【0004】
単一の回転子を備えたダブルジンバルCMG機構もよく知られており、これは三次元トルクを提供する。各デバイスの特異点(singularity)の問題を個別に解決するには、2つ以上のデバイスの組み合わせが必要である。
【特許文献1】米国特許第6,917,862号
【特許文献2】米国特許第 8,210,062号
【特許文献3】米国特許第9,649,242号
【特許文献4】米国特許第 7,152,495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元姿勢制御のための既知の古典的なCMGの制御方法および構造は、コントロールモーメントジャイロスコープシステムの能力および精度を低下させる可能性がある特異点および交差ジャイロスコープ項に関連する欠点と、比較的大きな重量という問題点を有する。
(発明の目的)
【0006】
本発明の目的は、2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープに基づいて、特異点および望ましくない交差ジャイロスコープ項を克服するとともにCMGの質量を削減するモデルを提案することである。提案されたシステムの本開示の発明は、2軸周りのみに角運動量の方向を変えることが可能な2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメントジャイロスコープに基づいている。
【0007】
本発明のさらに他の目的および利点は、一部は明白であり、一部は明細書および図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本システムは、シザード配置された2つのロータを有するフレームと、それを懸架する2軸ジンバルベースとを含む。ロータは高速で回転しており、ジンバル軸はサーボモータによって作動される。すべてのモータの回転は、制御ユニットによって測定され制御される。ロータの同期回転とジンバル懸架軸の角度調整により、全角運動量の幾何形状が球形領域を有する3次元のジャイロスコープトルクを生成できる。提案された構造は、慣性システムの姿勢制御の精度を向上させるとともに、特異点の領域が非常に僅かで対処しやすい。
【0009】
特異点および望ましくない交差ジャイロスコープを解決するために、制御対象のハウジングに固定的に接続された2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメントジャイロスコープを提案する。この構成のシステムでは、3次元のトルクを生成でき、特異点が少なくかつ対処しやすく、交差したジャイロスコープ項の数が少ないため、制御設計に非常に適している。アクチュエータ、センサー、回転オブジェクトの数を減らすことで、既存の構造を圧縮して、内部スペースを節約し、軽量の構造を提供できる。
【0010】
したがって、本発明は、いくつかのステップと、1つ以上のそのようなステップと他のステップのそれぞれとの関係およびそのようなステップを実行するように適合された構成の特徴、要素の組み合わせおよび部品の配置を具体化するシステムを含む。それらすべて、以下の詳細な開示において例示されるとおりであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲に示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明をより完全に理解するために、以下の説明および添付の図面を参照する。
【0012】
図1】ダブルジンバル・シザードペアCMGの概略図。
【0013】
図2】ジャイロスコープフレームの概略図。
【0014】
図3】2軸ジンバルベースの概略図。
【0015】
図4】座標系とジンバル角度の回転を示す図。
【0016】
図5】CMGベースの姿勢制御システムのブロック線図。
【0017】
図6】ジンバル駆動制御則(gimbal steering control law)のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、2つの主要部分、すなわち、2つの同一のシングル・ジンバルコントロールモーメント型のジャイロスコープ30、40を含むジャイロスコープフレーム10と、内側ジンバル軸が支持ベアリング6を介して前記ジャイロスコープフレーム10を保持する2軸ジンバルベース5と、から構成される。 2軸ジンバルベース5は、支持軸受2を介して制御対象1に取り付けられている。
(ジャイロスコープフレーム)
【0019】
各ジャイロスコープ30、40は、ロータ11、12、ロータハウジングフレーム13、14、ロータ駆動用モータ23、24、および増幅器25、26からなる。
【0020】
ジャイロスコープフレーム10内のジャイロスコープ30、40は、それらの懸架軸nおよびnが互いに平行であるシザードタイプの様式で機械的または論理的に接続されている。 機械的な接続は、ベルト、ギア、またはカウンターレバーによって行うことができ、追加のコントローラを必要とせずに、正確で等しい傾斜角度δspを保証できる。 論理的な接続は、同期制御されたモータ19、20によって行われ、機械部品が少なく、組み立てが簡単で、冗長性があるなどの利点がある。この機械的または論理的接続により、ジャイロスコープ30、40は反対方向に同じ傾斜角度δspで傾く。 初期(基準)位置では、ジャイロスコープの主軸は、それぞれ角運動量h1とh2を有し、平行であり、ベクトルh1とh2は反対方向を向いている。 角運動量の絶対値は一定で、理想的な場合は互いに等しい。
【数1】
【0021】
ジャイロスコープ30、40の懸架軸n、nは、ジンバルシステム内側リングOx軸と平行であり、初期位置のロータのスピン軸は、Oy軸と平行である。 この位置から、理想的な状態では互いに等しい、各ジャイロスコープの傾斜角度δspがカウントされる。
【0022】
ある1つの構成では、各ジャイロスコープの懸架軸は別個のモータ19、20を備えており、提案されたシステムにおいて互いに等しいと考えられるトルクmおよびmを生成する。 2つの軸n、nが運動学的に接続され、反対方向に等しく回転するという条件で、1つのモータが軸n、nのいずれかに設置されている場合、ジャイロスコープの特性は変化しない。
【0023】
それぞれのスピン軸に対するロータ11、12の慣性モーメントが等しく、それらに接続された残りの可動部品(プーリーまたはリンク、ギア、センサーなど)は、角度的力積においてバランスがとれているので、つまり、・δsp=0のとき内側ジンバル軸Oyに対して角運動量がゼロ、または、この角運動量がほぼゼロなので、内側リングOxyzの軸上へのジャイロスコープフレーム10の角運動量の射影は、以下の式で与えられる。
【数2】
【0024】
Ox軸およびOy軸上への角運動量の射影の合計はゼロに等しいので、章動を無視すると、本システムは、余分な交差ジャイロスコープ力を排除して、Oz軸の周りに1つのモーメントのみを生成すると考えることができる。
【0025】
ベクトルhzの変動の領域Sは、Oz軸に平行な直線セグメントであり、その長さは2Hw sin δspに等しい。 δsp=π/ 2の場合、この領域の最大寸法は2Hwに等しくなる。
【0026】
ロータ10、11の回転速度は一定であり、アプリケーション、寸法、利用可能なオンボード電源、および必要な敏捷性に依存するが、基準は250~3000 rpmの間とすることができる。 電力および信号は、電源および制御ユニット60から集電環21,22を介して送信され、それにより、n軸およびn軸の周りのジャイロスコープの完全な回転が可能になっている。
(2軸ジンバルベース)
【0027】
支持軸受2および6に沿って設置されたトルクモータ3および7の作用によって角運動量ベクトルを回転させると、これから生じるジャイロスコープモーメントにより、OxおよびOy軸に沿って制御モーメントの方向づけができる。
【0028】
したがって、角運動量hの変動の3次元領域Sを得るために、それは2軸ジンバルベース5上に設置される。外側ジンバル軸周りの第1の回転は、制御対象1に固定されたモータ3によって生成される。 内側のジンバル軸は、第2の回転として、モータ7とベルト8により、ジャイロスコープフレーム10をOy軸周りに傾ける。 この構成は、角運動量hの変化の球形領域Sを作成し、したがって3次元の制御モーメントシステムを作成する。
【0029】
制御対象1の、Ob、ObおよびOb軸に対する姿勢の方向付けは、以下のように行われる。 Ob3軸周りの回転のために、ジャイロスコープ30、40の傾斜角度δspを操作することが必要であり、これは、Ob軸周りの単純なフライホイールのように反作用トルクをもたらす。 ObおよびOb軸周りに回転させるには、モータ7および3により、ジンバル軸周りのトルクを対応させて発生する必要がある。 これらのモーメントは、ジャイロスコープの歳差運動を引き起こし、制御対象1の本体に対して、等しく反対方向の制御モーメントを生成する。
【0030】
ジャイロスコープ30、40の角運動量hの最終領域Sは、物理的な特異点または制御モーメントを生成することが不可能な領域のない中実球である。この領域の体積は、ジャイロスコープ30、40の最大角運動量によって制限される。
(対象の回転)
【0031】
本システムは、支持軸受2を介して制御対象1の本体に設置される必要がある。制御ユニット60は、増幅器25および26を介してモータ23および24に電流を送り、ロータ11および12を同じ方向に同じ速度で回転させることにより、互いに反対方向の角運動量hとhを生成し、本システムを使用可能にする。
【0032】
制御対象1の回転のために、いくつかの外部姿勢センサ(図示省略)によって把握される制御対象1の実際の向きを、所定の基準座標系と比較する。実際の姿勢と所望の姿勢との差を制御ユニット60で計算し、ジンバル駆動制御則によって決定される制御信号をサーボモータ3、7、19、20に送信し、所望の制御トルクuを生成する。
【0033】
制御トルクは、支持軸受2を介して制御対象1の本体に作用する。モータm19およびm20による傾斜角度δspの変化、およびモータmおよびm19によるジンバル角度δおよびδの変化により、制御トルクuの方向および大きさが変化する。
【0034】
角運動量hの主ベクトルを有するジャイロスコープフレーム主軸Ozは、開始(基準)位置では、制御対象1のOb軸に平行である。この位置から、ジンバル角度δiおよびδoがカウントされる。制御対象1の軸上への主角運動量の射影は次式で表すことができる。
【数3】
【0035】
本システムによって作成された制御モーメントの、制御対象1の軸上への射影の式は、式(3)の両辺を、時間で微分することによって得ることができ、次の式が得られる。
【数4】
【0036】
数学的特異点は、本ジャイロスコープシステムのヤコビ行列A∈R3x3が階数を失うとき、つまり、階数(A)<3のとき発生する。
【数5】
【0037】
式(5)を満足する任意のジンバル角度ベクトルδは、システムの特異点角度と考えられ、δsp=±π/ 2、0、πまたはδi=±π/ 2である。従来のシングルジンバル・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステムの内部特異点は、双曲線または楕円の特異点として分類される。 δsp= 0、π、またはδi=±π/ 2であるが、δsp≠±π/ 2である場合、特異点は内部的であり、ヌルモーションによって回避できる双曲線型のみである。外部特異点については、δsp=±π/ 2の場合、特異点は外部楕円型であり、ジャイロスコープ30および40の傾斜角度δspを変更することにより、簡単かつ迅速に回避できる。
(姿勢制御則)
【0038】
CMGベースの姿勢制御システムは、姿勢制御則(四元数フィードバックタイプ)、提案されたジャイロスコープシステムを使用するジンバル駆動制御則、および制御対象の力学からなる。駆動速度コマンド(steering rate command)は、ジンバル駆動制御則を使用して決定され、姿勢制御トルクを生成するために、ジャイロスコープシステムに制御動作を与える。制御戦略としては、次の姿勢制御則が使用される。
【数6】
ここで、Jは制御対象1の慣性モーメント、i = 1、2、3はそれぞれ制御対象固定座標フレームのOb1、Ob、およびOb軸に対応し、 cとkは制御ゲインであり、^qe = [qe1 qe2 qe3]T である。ここで、姿勢誤差の四元数qe(= [qe1 qe2 qe3 qe4]T)のベクトル部分は、目標姿勢の四元数qt(= [qt1 qt2 qt3 qt4]T)と現在の姿勢の四元数q(= [q1 q2 q3 q4]T)を用いて以下のように表され:
【数7】
そして、飽和関数satLi(^qe)(i = 1、2、3)は次のように定義される。
【数8】
さらに、Liはジャイロスコープシステムへのトルクコマンドを制限し、トルクは過剰反応を回避するために変化させる:
【数9】
ここで、aiはi番目の制御軸周りの最大制御加速度であり、生成可能な最大トルクに応じて適切な値に設定され、|ωi| maxは各軸周りの指定された最大角速度である。
(ジンバル駆動制御則)
【0039】
トルクコマンドucの決定後のジンバル駆動制御則については、ジャイロスコープシステムの角運動量の変化hが、ジンバル駆動制御則への運動量速度コマンドτとして取得される。 ジンバル駆動速度コマンドδは、次のように決定される。
【数10】
ここで、δmaxはジャイロスコープシステムが機械的に駆動されるときのジンバル駆動速度の最大値である。このようにリミッターを設定することにより、ジンバル駆動制御則は、より現実的な操作を考慮したものとなる。ジンバル駆動速度δに関する運動量速度コマンドτを解く場合、通常、3より多くのジンバルを有するジャイロスコープシステムに対しては疑似逆行列を使用する必要がある。本ジャイロスコープシステムのヤコビ行列Aは正方であるため、ジンバル駆動速度コマンドδは、Aの逆行列を計算することによって得られる。
【0040】
ヌルモーション、すなわち、ジャイロスコープシステムによる正味トルクが生成されないようにするジンバルの駆動であって、トルクを生成せずにジンバル角度を変更することにより生成される動作は、特異点回避および回復の方法として使用される。ここで、ジャイロスコープシステムによって生成された角運動量の変化hは、ジャイロスコープシステムへの運動量速度コマンドτに対応し、ジャイロスコープシステムの慣性によって生成されたトルクを含まない。したがって、ヌルモーションの場合、次の等式が成り立つ。
【数11】
ここで、nは、ジャイロスコープシステムの角運動量が変化しないようなジンバル駆動速度の組み合わせであり、n = null(A)の関係が成立する。
【0041】
ヌルモーションを使用する方法は、ジンバル角度を駆動するnの値を見つけ、それにより、特異点に陥るジンバル角度の組み合わせを回避またはそこから回復する。
【0042】
δsp = 0の場合のヌルモーション、およびこのタイプの特異点から回復するために使用される方法について述べる。δsp= 0の場合、角運動量の変化hは次のように表される。
【数12】
【0043】
δsp=0の場合の式(12)は、内側および外側のジンバル角度δiおよびδoを、トルクを生成せずに変更できることを示している。 条件|sinδsp| <ε1(ε1 ≒0)は、δsp= 0の場合の特異点を決定するために使用される。ヌルモーションを使用して特異点から回復する方法では、本ジャイロスコープシステムの出力を、目標姿勢の四元数で示される回転軸方向に向けるようにし、次にδspを変更する。まず、四元数から回転軸方向を求める。目標の軸方向がec = [ec1 ec2 ec3]Tで、回転角度がθcの場合、[qc1 qc2 qc3 qc4]が与えられる。ecと本ジャイロスコープシステムの出力トルク方向の関係は、次のように評価される。
【数13】
ここでsngは、以下の符号関数を示す。
【数14】
【0044】
シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの出力トルクのz成分は、|δi| ≦π/ 2および|δo| ≦π/ 2であっても、傾斜角速度 δspの符号に従って正または負になる可能性がある。絶対値が小さい目標の内部および外部ジンバル角度を選択するために、|δi|≦π/ 2および|δo| ≦π/ 2を前提とする。この前提の下で、sgn(ec3)= -sgn(δsp)およびec1 = sgn(ec3)sinδiが成立する。 ジンバルペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの出力方向を目標軸方向ecに一致させるには、式 (13)をδiとδoについて解き、それらの解を^δiおよび^δoと呼ぶ。これらの解は、以下のようになる。
【数15】
【数16】
iおよび^δoは、それぞれ内部および外部ジンバルの目標角度であるため、δsp= 0の場合、内部および外部ジンバル角度δiおよびδoを目標ジンバル角度^δiおよび^δo に変更するためのジンバル駆動制御則は、以下のように実施される。
【数17】
ここで、knは、ヌルモーションのジンバル駆動制御則の制御ゲインである。
【0045】
本ジャイロスコープシステムは、式(17)に従って駆動され、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの駆動は、δcノルムが0に近づくと再開される。実際の実施では、|δc | <ε3が満たされている場合、式(17)によるヌルモーションから次のような部分的逆関数の駆動制御則に切り替えられる。
【数18】
ここで、以下のように定義される。
【数19】
このようにして、本ジャイロスコープシステムはヌルモーションから回復し、式(10)のジンバル駆動制御則へのスムーズな切り替えを可能にする。
【0046】
この段落では、δsp =±π/2のときの特異点を処理する方法を説明する。上記のように、δsp =±π/2のときの特異点は外部特異点である。したがって、ヌルモーションを使用してこの特異点から回復することはできない。δsp=±π/2特異点を回避するために、いくつかの方法が検討されている。しかし、そのような方法では、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロの大きな角運動量をシステム内で十分に活用することができないため、現在のジャイロシステムの目標である高速姿勢変更を実現することはできない。外部特異点から回復するための傾斜角度δspには、回転方向の曖昧さが存在する。この回転の曖昧さを排除するために、傾斜角度δspの回転範囲に対する|δsp|≦π/2の制約を考える。これは、集電環の必要性を排除するのに役立ち、それにより、電気配線ハーネスを簡素化することができる。 |δsp|≦π/ 2の条件下でのδspの任意の値に対する角運動量の大きさはπ-δspの場合のものと同じであるため、この制約の設定は問題にならない。これらの条件を満たすために、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度の駆動をδsp=±π/2付近で停止する方法を紹介する。以下に手順を示す。
【0047】
シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープがδsp=±π/2での特異点に近づく場合、つまりcosδspが正の閾値ε2(ε2 ≒0)より小さい場合、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度の駆動を停止する。すると、制御対象は、回転運動を慣性的に継続して、目標の姿勢に近づく。 制御対象が目標姿勢に近づくと、sinδspを減少させる方向にジンバル駆動速度コマンドδcspが入力される。したがって、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度を再度駆動することにより、制御対象の角速度を低下させ、その姿勢を目標姿勢で安定させることができる。|δsp|≦π/2の制約を適用するには、δsp=±π/2で駆動を再開するために次の制御則が使用される。
【数20】
このようにして、|δsp|≦π/2の範囲内の駆動条件が達成される。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020-09-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御モーメント機器の分野に関し、慣性場におけるデバイスの三軸安定化、方向制御、および姿勢制御のための慣性システムの開発に用いることができる。
尚、本明細書及び特許請求の範囲の本文中では、使用できる文字の制限のため、変数を表す文字(例えばδ)で上に黒丸や逆V記号がついたものは、黒丸や逆V記号を左に付けて「・δ」「^δ」などと表示している。
【背景技術】
【0002】
コントロールモーメント・ジャイロスコープ(CMG)のいくつかのアーキテクチャがよく知られている。シングルジンバルジャイロスコープは、制御対象のハウジングに固定的に接続されたシングルステージジンバルに配置された電気モータ駆動のフライホイールを備え、1次元の姿勢制御を提供するものであり、最も一般的な物の範疇である。オブジェクトを完全に3次元で制御するには、少なくとも3つのシングルジンバルCMGが必要である。3軸安定化と姿勢制御を提供するための広範でさまざまなアーキテクチャが、いくつかの文献で提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
いくつかのシングルジンバルCMGをピラミッドアレイまたはルーフアレイ配置に構成した組み合わせは、三次元制御モーメントを作り出すことができる(特許文献1)。 シングルジンバルシザードタイプのCMGを備えた構造もよく知られており、トルク対質量比が比較的高い強力な1次元モーメントを作成できる(特許文献3、特許文献4)。
【0004】
単一の回転子を備えたダブルジンバルCMG機構もよく知られており、これは三次元トルクを提供する。各デバイスの特異点(singularity)の問題を個別に解決するには、2つ以上のデバイスの組み合わせが必要である。
【特許文献1】米国特許第6,917,862号
【特許文献2】米国特許第 8,210,062号
【特許文献3】米国特許第9,649,242号
【特許文献4】米国特許第 7,152,495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元姿勢制御のための既知の古典的なCMGの制御方法および構造は、コントロールモーメントジャイロスコープシステムの能力および精度を低下させる可能性がある特異点および交差ジャイロスコープ項に関連する欠点と、比較的大きな重量という問題点を有する。
(発明の目的)
【0006】
本発明の目的は、2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープに基づいて、特異点および望ましくない交差ジャイロスコープ項を克服するとともにCMGの質量を削減するモデルを提案することである。提案されたシステムの本開示の発明は、2軸周りのみに角運動量の方向を変えることが可能な2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメントジャイロスコープに基づいている。
【0007】
本発明のさらに他の目的および利点は、一部は明白であり、一部は明細書および図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本システムは、シザード配置された2つのジャイロスコープを有するジャイロスコープフレームと、それを回転可能に枢支する2軸ジンバルベースとを含む。各ジャイロスコープのロータは高速で回転しており、傾斜角度調整用回転軸およびジンバル軸はサーボモータによって作動される。すべてのモータの回転は、制御ユニットによって測定され制御される。ロータの同期回転と傾斜角度およびジンバル角度調整により、全角運動量の幾何形状が球形領域を有する3次元のジャイロスコープトルクを生成できる。提案された構造は、慣性システムの姿勢制御の精度を向上させるとともに、特異点の領域が非常に僅かで対処しやすい。
【0009】
特異点および望ましくない交差ジャイロスコープを解決するために、制御対象のハウジングに回転可能に枢支された2軸ジンバルベースに取り付けられたシザードペア・コントロールモーメントジャイロスコープを提案する。この構成のシステムでは、3次元のトルクを生成でき、特異点が少なくかつ対処しやすく、交差したジャイロスコープ項の数が少ないため、制御設計に非常に適している。アクチュエータ、センサー、回転オブジェクトの数を減らすことで、既存の構造を圧縮して、内部スペースを節約し、軽量の構造を提供できる。
【0010】
したがって、本発明は、いくつかのステップと、1つ以上のそのようなステップと他のステップのそれぞれとの関係およびそのようなステップを実行するように適合された構成の特徴、要素の組み合わせおよび部品の配置を具体化するシステムを含む。それらすべて、以下の詳細な開示において例示されるとおりであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲に示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明をより完全に理解するために、以下の説明および添付の図面を参照する。
【0012】
図1本発明のダブルジンバル・シザードペアCMGの概略図。
【0013】
図2図1の装置のジャイロスコープフレームの概略図。
【0014】
図3図1の装置の2軸ジンバルベースの概略図。
【0015】
図4】座標系とジンバル角度の回転を示す図。
【0016】
図5本発明のCMGベースの姿勢制御システムのブロック線図。
【0017】
図6】ジンバル駆動制御則(gimbal steering control law)のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の姿勢制御装置(「ダブルジンバル・シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープ」又は「ジャイロスコープシステム」ともいう)は、図1に示すように2つの主要部分、すなわち、2つの同一のシングル・ジンバルコントロールモーメント型のジャイロスコープ30、40を含むジャイロスコープフレーム10と、内側ジンバル軸が支持ベアリング6を介して前記ジャイロスコープフレーム10を保持する2軸ジンバルベース5と、から構成される。 2軸ジンバルベース5は、支持軸受2を介して制御対象1に取り付けられている。
(ジャイロスコープフレーム)
【0019】
図2に示すように、各ジャイロスコープ30、40は、ロータ11、12、ロータハウジングフレーム13、14、ロータ駆動用モータ23、24、および増幅器25、26からなる。
【0020】
ジャイロスコープフレーム10内のジャイロスコープ30、40は、それらの回転軸(「傾斜角度調整用回転軸」ともいう)およびnが互いに平行であるシザードタイプの様式で機械的または論理的に接続されている。 機械的な接続は、ベルト、ギア、またはカウンターレバーによって行うことができ、追加のコントローラを必要とせずに、正確で等しい傾斜角度δspを保証できる。 論理的な接続は、同期制御されたモータ19、20によって行われ、機械部品が少なく、組み立てが簡単で、冗長性があるなどの利点がある。この機械的または論理的接続により、ジャイロスコープ30、40は反対方向に同じ傾斜角度δspで傾く。 初期(基準)位置では、ジャイロスコープの主軸は、それぞれロータ11、12の角運動量ベクトルh1とh2を有し、平行であり、ベクトルh1とh2は反対方向を向いている。 角運動量の絶対値は一定で、理想的な場合は互いに等しい。
【数1】
【0021】
ジャイロスコープ30、40の傾斜角度調整用回転軸、nは、ジャイロスコープフレーム10のOx軸と平行であり、初期位置のロータのスピン軸は、Oy軸(第2軸ともいう)と平行である。 この位置から、理想的な状態では互いに等しい、各ジャイロスコープの傾斜角度δspがカウントされる。
【0022】
ある1つの構成では、各ジャイロスコープの傾斜角度調整用回転軸n 、n は別個のモータ19、20を備えており、提案されたシステムにおいて互いに等しいと考えられるトルクmおよびmを生成する。 2つの軸n、nが運動学的に接続され、反対方向に等しく回転するという条件で、1つのモータが軸n、nのいずれかに設置されている場合、ジャイロスコープの特性は変化しない。
【0023】
ここで、ロータ11,12の合計の角運動量ベクトル(角運動量ベクトルh ,h のベクトル和で「ジャイロスコープシステムの角運動量ベクトル」ともいう)をhとする。それぞれのスピン軸に対するロータ11、12の慣性モーメントが等しく、それらに接続された残りの可動部品(プーリーまたはリンク、ギア、センサーなど)は、角度的力積においてバランスがとれているので、つまり、δsp=0のとき内側ジンバル軸Oyに対して角運動量がゼロ、または、この角運動量がほぼゼロなので、ジャイロスコープフレーム10の座標軸Oxyz図2の右上図参照)の軸上への角運動量ベクトルhの射影は、以下の式で与えられる。
【数2】
【0024】
Ox軸およびOy軸上への角運動量の射影の合計はゼロに等しいので、章動を無視すると、本システムは、余分な交差ジャイロスコープ力を排除して、Oz軸の周りに1つのモーメントのみを生成すると考えることができる。
【0025】
ベクトルhzの変動の領域Sは、Oz軸に平行な直線セグメントであり、その長さは2Hw sin δspに等しい。 δsp=π/ 2の場合、この領域の最大寸法は2Hwに等しくなる。
【0026】
ロータ11,12の回転速度は一定であり、アプリケーション、寸法、利用可能なオンボード電源、および必要な敏捷性に依存するが、基準は250~3000 rpmの間とすることができる。 電力および信号は、電源および制御ユニット60から集電環21,22を介して送信され、それにより、n軸およびn軸の周りのジャイロスコープの完全な回転が可能になっている。
(2軸ジンバルベース)
【0027】
図3は、2軸ジンバルベース5の概略図を示す。支持軸受2および6に沿って設置されたトルクモータ3および7の作用によって角運動量ベクトルを回転させると、これから生じるジャイロスコープモーメントにより、OxおよびOy軸に沿って制御モーメントの方向づけができる。
【0028】
したがって、角運動量ベクトルhの変動の3次元領域Sを得るために、ジャイロスコープフレーム10は2軸ジンバルベース5上に設置される。外側ジンバル軸Ob (第1軸ともいう)周りの第1の回転は、制御対象1に固定されたモータ3によって生成される。 内側のジンバル軸は、第2の回転として、モータ7とベルト8により、ジャイロスコープフレーム10をOy軸(第2軸ともいう)周りに傾ける。 この構成は、角運動量ベクトルhの変化の球形領域Sを作成し、したがって3次元の制御モーメントシステムを作成する。
【0029】
制御対象1の、Ob、ObおよびOb図4参照)に対する姿勢の方向付けは、以下のように行われる。 Ob軸周りの回転のために、ジャイロスコープ30、40の傾斜角度δspを操作することが必要であり、これは、Ob軸周りの単純なフライホイールのように反作用トルクをもたらす。 ObおよびOb軸周りに回転させるには、モータ7および3により、ジンバル軸周りのトルクを対応させて発生する必要がある。 これらのモーメントは、ジャイロスコープの歳差運動を引き起こし、制御対象1の本体に対して、等しく反対方向の制御モーメントを生成する。
【0030】
ジャイロスコープ30、40のロータ11,12の合計の角運動量ベクトルhの最終領域Sは、物理的な特異点または制御モーメントを生成することが不可能な領域のない中実球である。この領域の体積は、ジャイロスコープ30、40のロータ11,12の最大角運動量によって制限される。
(姿勢制御方法の概要)
上記のように構成された本発明の姿勢制御装置を使用した制御対象(1)の姿勢制御方法について、図5を参照して説明する。本姿勢制御方法は、以下のステップ(a)~(m)を含む(なお、図5の符号7(a)~7(m)は、ステップ(a)~(m)に対応する)。
(a)外部センサーに基づいて制御対象の現在の姿勢(q)を把握することと、
(b)制御対象の目標姿勢(q t )と前記現在の姿勢(q)から姿勢誤差(^q e )を算出することと、
(c)制御対象の姿勢の変更と安定化のための外部センサーから、ロール、ピッチ、ヨーの各姿勢の信号(ω)を取得することと、
(d)ステップ(b)の信号とステップ(c)の信号を組み合わせてトルクコマンド(u c )を算出することと、
(e)前記ロータ11,12に、モータを使用してそれぞれの角運動量(H w )を与えることと、
(f)センサーを使用して前記ロータの回転速度、傾斜角度(δ sp )、およびジンバル角度(δ i ,δ o )を測定することと、
(g)ステップ(f)の信号を使用して前記ロータ11,12の合計の角運動量ベクトル(h)を算出することと、
(h)ステップ(c)、(d)、(g)の信号を組み合わせて、運動量速度コマンド(τ)を計算することと、
(i)ジンバル駆動制御則にジンバル角度ベクトル(δ = [δ sp δ i δ o ] T )と運動量速度コマンド(τ)を提供して、ジンバル駆動速度コマンド( δ c =[ δ csp δ ci δ co ] T )を決定することと、
(j)ジンバル駆動速度コマンド( δ c )を前記制御ユニットに提供して、傾斜角度(δ sp )とジンバル角度(δ i ,δ o )を変更することと、
(k)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド( δ co )に基づいて、前記制御ユニットにより、前記2軸ジンバルベースのジンバル角度(δ o )を変更することと、
(l)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド( δ ci )に基づいて、前記制御ユニットにより、2軸ジンバルベース(5)内の前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δ i )を変更することと、
(m)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド( δ csp )に基づいて、前記制御ユニットにより、共通の前記ジャイロスコープフレームに取り付けられた各ジャイロスコープの傾斜角度(δ sp )を変更することと、
(n)システムによって生成された姿勢制御トルク(u)を適用して、前記制御対象の姿勢の変更および安定化を行うこと。
以下、この姿勢制御方法について具体的に説明する。
(対象の回転)
【0031】
本システムは、支持軸受2を介して制御対象1の本体に設置される必要がある。制御ユニット60は、増幅器25および26を介してモータ23および24図2参照)に電流を送り、ロータ11および12を同じ方向に同じ速度で回転させることにより、互いに反対方向の角運動量ベクトルとhを生成し、本システムを使用可能にする。
【0032】
制御対象1の回転のために、いくつかの外部姿勢センサ(図示省略)によって把握される制御対象1の実際の向きを、所定の基準座標系と比較する。実際の姿勢と所望の姿勢との差を制御ユニット60で計算し、ジンバル駆動制御則によって決定される制御信号をサーボモータ3、7、19、20図1,2参照)に送信し、所望の姿勢制御トルクuを生成する。
【0033】
姿勢制御トルクは、支持軸受2を介して制御対象1の本体に作用する。モータm19およびm20による傾斜角度δspの変化、およびモータmおよびm19によるジンバル角度δおよびδの変化により、姿勢制御トルクの方向および大きさが変化する。
【0034】
角運動量hの主ベクトルを有するジャイロスコープフレーム主軸Ozは、開始(基準)位置では、制御対象1のOb軸に平行である。この位置から、ジンバル角度δiおよびδoがカウントされる。制御対象1の軸上への主角運動量の射影は次式で表すことができる。
【数3】
【0035】
本システムによって作成された制御モーメントの、制御対象1の軸上への射影の式は、式(3)の両辺を、時間で微分することによって得ることができ、次の式が得られる。
【数4】
【0036】
数学的特異点は、本ジャイロスコープシステムのヤコビ行列A∈R3x3が階数を失うとき、つまり、階数(A)<3のとき発生する。
【数5】
【0037】
式(5)を満足する任意のジンバル角度ベクトルδは、システムの特異点角度と考えられ、δsp=±π/ 2、0、πまたはδi=±π/ 2である。従来のシングルジンバル・コントロールモーメント・ジャイロスコープシステムの内部特異点は、双曲線または楕円の特異点として分類される。 δsp= 0、π、またはδi=±π/ 2であるが、δsp≠±π/ 2である場合、特異点は内部的であり、ヌルモーションによって回避できる双曲線型のみである。外部特異点については、δsp=±π/ 2の場合、特異点は外部楕円型であり、ジャイロスコープ30および40の傾斜角度δspを変更することにより、簡単かつ迅速に回避できる。
(姿勢制御則)
【0038】
ジンバル駆動制御則のフローチャートを図6に示す。
CMGベースの姿勢制御システムは、姿勢制御則(四元数フィードバックタイプ)、提案されたジャイロスコープシステムを使用するジンバル駆動制御則、および制御対象の力学からなる。駆動速度コマンド(steering rate command)は、ジンバル駆動制御則を使用して決定され、姿勢制御トルクを生成するために、ジャイロスコープシステムに制御動作を与える。制御戦略としては、次の姿勢制御則が使用される。
【数6】
ここで、Jは制御対象1の慣性モーメント、i = 1、2、3はそれぞれ制御対象固定座標フレームのOb、Ob、およびOb軸に対応し、 cとkは制御ゲインであり、^qe = [qe1 qe2 qe3]T である。ここで、姿勢誤差の四元数qe(= [qe1 qe2 qe3 qe4]T)のベクトル部分は、目標姿勢の四元数qt(= [qt1 qt2 qt3 qt4]T)と現在の姿勢の四元数q(= [q1 q2 q3 q4]T)を用いて以下のように表され:
【数7】
そして、飽和関数satLi(^qe)(i = 1、2、3)は次のように定義される。
【数8】
さらに、Liはジャイロスコープシステムへのトルクコマンドを制限し、トルクは過剰反応を回避するために変化させる:
【数9】
ここで、aiはi番目の制御軸周りの最大制御加速度であり、生成可能な最大トルクに応じて適切な値に設定され、|ωi| maxは各軸周りの指定された最大角速度である。
(ジンバル駆動制御則)
【0039】
トルクコマンドucの決定後のジンバル駆動制御則については、ジャイロスコープシステムの角運動量ベクトルの変化hが、ジンバル駆動制御則への運動量速度コマンドτとして取得される。 ジンバル駆動速度コマンドδは、次のように決定される。
【数10】
ここで、δmaxはジャイロスコープシステムが機械的に駆動されるときのジンバル駆動速度の最大値である。このようにリミッターを設定することにより、ジンバル駆動制御則は、より現実的な操作を考慮したものとなる。ジンバル駆動速度δに関する運動量速度コマンドτを解く場合、通常、3より多くのジンバルを有するジャイロスコープシステムに対しては疑似逆行列を使用する必要がある。本ジャイロスコープシステムのヤコビ行列Aは正方であるため、ジンバル駆動速度コマンドδは、Aの逆行列を計算することによって得られる。
【0040】
ヌルモーション、すなわち、ジャイロスコープシステムによる正味トルクが生成されないようにするジンバルの駆動であって、トルクを生成せずにジンバル角度を変更することにより生成される動作は、特異点回避および回復の方法として使用される。ここで、ジャイロスコープシステムによって生成された角運動量ベクトルの変化hは、ジャイロスコープシステムへの運動量速度コマンドτに対応し、ジャイロスコープシステムの慣性によって生成されたトルクを含まない。したがって、ヌルモーションの場合、次の等式が成り立つ。
【数11】
ここで、nは、ジャイロスコープシステムの角運動量ベクトルが変化しないようなジンバル駆動速度の組み合わせであり、n = null(A)の関係が成立する。
【0041】
ヌルモーションを使用する方法は、ジンバル角度を駆動するnの値を見つけ、それにより、特異点に陥るジンバル角度の組み合わせを回避またはそこから回復する。
【0042】
δsp = 0の場合のヌルモーション、およびこのタイプの特異点から回復するために使用される方法について述べる。δsp= 0の場合、角運動量ベクトルの変化hは次のように表される。
【数12】
【0043】
δsp=0の場合の式(12)は、内側および外側のジンバル角度δiおよびδoを、トルクを生成せずに変更できることを示している。 条件|sinδsp| <ε1(ε1 ≒0)は、δsp= 0の場合の特異点を決定するために使用される。ヌルモーションを使用して特異点から回復する方法では、本ジャイロスコープシステムの出力を、目標姿勢の四元数で示される回転軸方向に向けるようにし、次にδspを変更する。まず、四元数から回転軸方向を求める。目標の軸方向がec = [ec1 ec2 ec3]Tで、回転角度がθcの場合、[qc1 qc2 qc3 qc4]が与えられる。ecと本ジャイロスコープシステムの出力トルク方向の関係は、次のように評価される。
【数13】
ここでsngは、以下の符号関数を示す。
【数14】
【0044】
シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの出力トルクのz成分は、|δi| ≦π/ 2および|δo| ≦π/ 2であっても、傾斜角速度 δspの符号に従って正または負になる可能性がある。絶対値が小さい目標の内部および外部ジンバル角度を選択するために、|δi|≦π/ 2および|δo| ≦π/ 2を前提とする。この前提の下で、sgn(ec3)= -sgn(δsp)およびec1 = sgn(ec3)sinδiが成立する。 ジンバルペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの出力方向を目標軸方向ecに一致させるには、式 (13)をδiとδoについて解き、それらの解を^δiおよび^δoと呼ぶ。これらの解は、以下のようになる。
【数15】
【数16】
iおよび^δoは、それぞれ内部および外部ジンバルの目標角度であるため、δsp= 0の場合、内部および外部ジンバル角度δiおよびδoを目標ジンバル角度^δiおよび^δo に変更するためのジンバル駆動制御則は、以下のように実施される。
【数17】
ここで、knは、ヌルモーションのジンバル駆動制御則の制御ゲインである。
【0045】
本ジャイロスコープシステムは、式(17)に従って駆動され、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの駆動は、δcノルムが0に近づくと再開される。実際の実施では、|δc | <ε3が満たされている場合、式(17)によるヌルモーションから次のような部分的逆関数のジンバル駆動制御則に切り替えられる。
【数18】
ここで、以下のように定義される。
【数19】
このようにして、本ジャイロスコープシステムはヌルモーションから回復し、式(10)のジンバル駆動制御則へのスムーズな切り替えを可能にする。
【0046】
この段落では、δsp =±π/2のときの特異点を処理する方法を説明する。上記のように、δsp =±π/2のときの特異点は外部特異点である。したがって、ヌルモーションを使用してこの特異点から回復することはできない。δsp=±π/2特異点を回避するために、いくつかの方法が検討されている。しかし、そのような方法では、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロの大きな角運動量をシステム内で十分に活用することができないため、現在のジャイロシステムの目標である高速姿勢変更を実現することはできない。外部特異点から回復するための傾斜角度δspには、回転方向の曖昧さが存在する。この回転の曖昧さを排除するために、傾斜角度δspの回転範囲に対する|δsp|≦π/2の制約を考える。これは、集電環の必要性を排除するのに役立ち、それにより、電気配線ハーネスを簡素化することができる。 |δsp|≦π/ 2の条件下でのδspの任意の値に対する角運動量の大きさはπ-δspの場合のものと同じであるため、この制約の設定は問題にならない。これらの条件を満たすために、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度の駆動をδsp=±π/2付近で停止する方法を紹介する。以下に手順を示す。
【0047】
シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープがδsp=±π/2での特異点に近づく場合、つまりcosδspが正の閾値ε2(ε2 ≒0)より小さい場合、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度の駆動を停止する。すると、制御対象は、回転運動を慣性的に継続して、目標の姿勢に近づく。 制御対象が目標姿勢に近づくと、sinδspを減少させる方向にジンバル駆動速度コマンドδcspが入力される。したがって、シザードペア・コントロールモーメント・ジャイロスコープの傾斜角度を再度駆動することにより、制御対象の角速度を低下させ、その姿勢を目標姿勢で安定させることができる。|δsp|≦π/2の制約を適用するには、δsp=±π/2で駆動を再開するために次のジンバル駆動制御則が使用される。
【数20】
ここでk r は、傾斜角度δ sp の駆動再開のための制御ゲインである。
このようにして、|δsp|≦π/2の範囲内の駆動条件が達成される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロータと、該ロータをスピン軸周りに回転可能に枢支するロータハウジングフレームと、をそれぞれ含む一対のシングルジンバル・コントロールモーメント型のジャイロスコープと、
(b)前記一対のジャイロスコープの前記ロータハウジングフレームを、前記スピン軸に直交し互いに平行なそれぞれの回転軸(n、n)周りに回転可能に枢支することにより、該一対のジャイロスコープをはさみ型に配置して、反対方向に同じ傾斜角度(δsp)で調整可能に保持するジャイロスコープフレームと、
(c)前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を調整可能にするために、該ジャイロスコープフレームを、前記回転軸(n、n)に直交する第2軸(Oy)を中心に回転可能に枢支するとともに、自身のジンバル角度(δo)を調整可能にするために、自身は制御対象によって前記第2軸(Oy)に直交する第1軸(Ob)周りに回転可能に枢支されている、2軸ジンバルベースと、
(d)前記ロータハウジングフレームに取り付けられて前記ロータの角速度を測定する角速度センサーと、
(e)前記傾斜角度(δsp)および前記各ジンバル角度(δi,δo)を測定する角度センサーと、
(f)前記傾斜角度(δsp)、前記ジンバル角度(δi,δo)、および前記ロータの角速度を制御する制御ユニットと、を含む
姿勢制御装置
【請求項2】
前記一対のジャイロスコープを傾けるためのレバーまたはベルトまたはギアをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置
【請求項3】
前記一対のジャイロスコープをそれぞれ傾けるための、電気モータをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置
【請求項4】
前記ロータをそれぞれ回転させるためのモータをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置
【請求項5】
前記ロータをそれぞれ直接回転駆動させるための誘導固定子をさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置
【請求項6】
前記2軸ジンバルベース及び前記ジャイロスコープフレームをそれぞれ傾けるためのモータをさらに有する、請求項1に記載の姿勢制御装置
【請求項7】
請求項1に記載の姿勢制御装置を使用する制御対象(1)の姿勢制御方法であって、
(a)外部センサーに基づいて制御対象の現在の姿勢(q)を把握することと、
(b)制御対象の目標姿勢(qt)と前記現在の姿勢(q)から姿勢誤差(^qe)を算出することと、
(c)制御対象の姿勢の変更と安定化のための外部センサーから、ロール、ピッチ、ヨーの各姿勢の信号(ω)を取得することと、
(d)ステップ(b)の信号とステップ(c)の信号を組み合わせてトルクコマンド(uc)を算出することと、
(e)前記2つのロータに、モータを使用してそれぞれの角運動量(Hw)を与えることと、
(f)センサーを使用して前記ロータの回転速度、傾斜角度(δsp)、およびジンバル角度(δi,δo)を測定することと、
(g)ステップ(f)の信号を使用して前記2つのロータの合計の角運動量ベクトル(h)を算出することと、
(h)ステップ(c)、(d)、(g)の信号を組み合わせて、運動量速度コマンド(τ)を計算することと、
(i)ジンバル駆動制御則にジンバル角度ベクトル(δ = [δsp δi δo]T)と運動量速度コマンド(τ)を提供して、ジンバル駆動速度コマンド(δc=[δcsp δci δco]T)を決定することと、
(j)ジンバル駆動速度コマンドδc)を前記制御ユニットに提供して、傾斜角度(δsp)とジンバル角度(δi,δo)を変更することと、
(k)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δco)に基づいて、前記制御ユニットにより、前記2軸ジンバルベースのジンバル角度(δo)を変更することと、
(l)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δci)に基づいて、前記制御ユニットにより、2軸ジンバルベース(5)内の前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を変更することと、
(m)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δcsp)に基づいて、前記制御ユニットにより、共通の前記ジャイロスコープフレームに取り付けられた各ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)を変更することと、
(n)システムによって生成された前記姿勢制御トルク(u)を適用して、前記制御対象の姿勢の変更および安定化を行うことと、を含む
姿勢制御方法。
【請求項8】
前記トルクコマンド(u)を前記コントロールモーメント・ジャイロスコープのトルク座標に変換して、外乱に対する安定モードを作成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジンバル駆動制御則のステップ(i)が、運動量速度コマンド(τ)の決定後に、システムが特異点に陥らない場合、ジンバル駆動速度コマンドδc(= [δcsp δci δco]T)を以下のように決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【数21】
ここで、δmaxはシステムが機械的に駆動されるときのジンバル駆動速度の最大値で、Aはシステムのヤコビ行列である。
【請求項10】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するためのジンバル駆動制御則が、傾斜角度δsp = 0のとき、ヌルモーションと呼ばれるジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する、請求項7に記載の方法。
【数22】
ここで、knはヌルモーションのジンバル駆動制御則のゲインであり、^δiと^δoは内側と外側のジンバルの目標ジンバル角度である。
【請求項11】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するために、目標ジンバル角度( i o )を以下のように決定する、請求項10に記載の方法。
【数23】
【数24】
ここで、ec = [ec1 ec2 ec3]Tは、前記制御対象の目標姿勢(qt)から決定される目標の回転軸に対応する単位ベクトルで、sgnは、以下の符号関数を示す。
【数25】
【請求項12】
請求項10に記載の傾斜角度δsp =0の場合のヌルモーションから回復するために、ジンバル角度(δi,δo)が目標ジンバル角度(^δi,^δo)に到達したとき、ジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する請求項7に記載の方法。
【数26】
ここで、以下のように定義される。
【数27】
【請求項13】
前記ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)の駆動は、運動量速度コマンド(τ)の方向が前記角運動量ベクトル(h)と同じである場合、δsp =±π/2の近くで停止され、前記運動量速度コマンド(τ)の方向が前記角運動量ベクトル(h)の方向と反対の場合、外部特異点(δsp=±π/2)から回復するために、以下のジンバル駆動速度コマンドδcspに基づいて再開される、請求項7に記載の方法。
【数28】
ここで、krは傾斜角度(δsp)の駆動を再開するための制御ゲインである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-01-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロータと、該ロータをスピン軸周りに回転可能に枢支するロータハウジングフレームと、をそれぞれ含む一対のシングルジンバル・コントロールモーメント型のジャイロスコープと、
(b)前記一対のジャイロスコープの前記ロータハウジングフレームを、前記スピン軸に直交し互いに平行なそれぞれの回転軸(n、n)周りに回転可能に枢支することにより、該一対のジャイロスコープをはさみ型に配置して、反対方向に同じ傾斜角度(δsp)で調整可能に保持するジャイロスコープフレームと、
(c)前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を調整可能にするために、該ジャイロスコープフレームを、前記回転軸(n、n)に直交する第2軸(Oy)を中心に回転可能に枢支するとともに、自身のジンバル角度(δo)を調整可能にするために、自身は制御対象によって前記第2軸(Oy)に直交する第1軸(Ob)周りに回転可能に枢支されている、2軸ジンバルベースと、
(d)前記ロータハウジングフレームに取り付けられて前記ロータの角速度を測定する角速度センサーと、
(e)前記傾斜角度(δsp)および前記各ジンバル角度(δi,δo)を測定する角度センサーと、
(f)前記傾斜角度(δsp)、前記ジンバル角度(δi,δo)、および前記ロータの角速度を制御する制御ユニットと、を含む
姿勢制御装置。
【請求項2】
前記一対のジャイロスコープを傾けるためのレバーまたはベルトまたはギアをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記一対のジャイロスコープをそれぞれ傾けるための、電気モータをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記ロータをそれぞれ回転させるためのモータをさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記ロータをそれぞれ直接回転駆動させるための誘導固定子をさらに含む、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記2軸ジンバルベース及び前記ジャイロスコープフレームをそれぞれ傾けるためのモータをさらに有する、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の姿勢制御装置を使用する制御対象(1)の姿勢制御方法であって、
(a)外部センサーに基づいて制御対象の現在の姿勢(q)を把握することと、
(b)制御対象の目標姿勢(qt)と前記現在の姿勢(q)から姿勢誤差(^qe)を算出することと、
(c)制御対象の姿勢の変更と安定化のための外部センサーから、ロール、ピッチ、ヨーの各姿勢の信号(ω)を取得することと、
(d)ステップ(b)の信号とステップ(c)の信号を組み合わせてトルクコマンド(uc)を算出することと、
(e)前記2つのロータに、モータを使用してそれぞれの角運動量(Hw)を与えることと、
(f)センサーを使用して前記ロータの回転速度、傾斜角度(δsp)、およびジンバル角度(δi,δo)を測定することと、
(g)ステップ(f)の信号を使用して前記2つのロータの合計の角運動量ベクトル(h)を算出することと、
(h)ステップ(c)、(d)、(g)の信号を組み合わせて、運動量速度コマンド(τ)を計算することと、
(i)ジンバル駆動制御則にジンバル角度ベクトル(δ = [δsp δi δo]T)と運動量速度コマンド(τ)を提供して、ジンバル駆動速度コマンド(δc=[δcsp δci δco]T)を決定することと、
(j)ジンバル駆動速度コマンド(δc)を前記制御ユニットに提供して、傾斜角度(δsp)とジンバル角度(δi,δo)を変更することと、
(k)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δco)に基づいて、前記制御ユニットにより、前記2軸ジンバルベースのジンバル角度(δo)を変更することと、
(l)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δci)に基づいて、前記制御ユニットにより、2軸ジンバルベース(5)内の前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を変更することと、
(m)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δcsp)に基づいて、前記制御ユニットにより、共通の前記ジャイロスコープフレームに取り付けられた各ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)を変更することと、
(n)前記姿勢制御装置によって生成された姿勢制御トルク(u)を適用して、前記制御対象の姿勢の変更および安定化を行うことと、を含む
姿勢制御方法。
【請求項8】
ジンバル駆動制御則のステップ(i)が、運動量速度コマンド(τ)の決定後に、前記姿勢制御装置が特異点に陥らない場合、ジンバル駆動速度コマンドδc(= [δcsp δci δco]T)を以下のように決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【数21】
ここで、δmaxは前記姿勢制御装置が機械的に駆動されるときのジンバル駆動速度の最大値で、Aはシステムのヤコビ行列である。
【請求項9】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するためのジンバル駆動制御則が、傾斜角度δsp = 0のとき、ヌルモーションと呼ばれるジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する、請求項7に記載の方法。
【数22】
ここで、knはヌルモーションのジンバル駆動制御則のゲインであり、^δiと^δoは内側と外側のジンバルの目標ジンバル角度である。
【請求項10】
ジンバル角度(δi,δo)を目標ジンバル角度に変更するために、目標ジンバル角度(^δi,^δo)を以下のように決定する、請求項に記載の方法。
【数23】
【数24】
ここで、ec = [ec1 ec2 ec3]Tは、前記制御対象の目標姿勢(qt)から決定される目標の回転軸に対応する単位ベクトルで、sgnは、以下の符号関数を示す。
【数25】
【請求項11】
請求項に記載の傾斜角度δsp =0の場合のヌルモーションから回復するために、ジンバル角度(δi,δo)が目標ジンバル角度(^δi,^δo)に到達したとき、ジンバル駆動速度コマンド(δc)を以下のように決定する請求項7に記載の方法。
【数26】
ここで、以下のように定義される。
【数27】
【請求項12】
前記ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)の駆動は、運動量速度コマンド(τ)の方向が前記角運動量ベクトル(h)と同じである場合、δsp =±π/2の近くで停止され、前記運動量速度コマンド(τ)の方向が前記角運動量ベクトル(h)の方向と反対の場合、外部特異点(δsp=±π/2)から回復するために、以下のジンバル駆動速度コマンドδcspに基づいて再開される、請求項7に記載の方法。
【数28】
ここで、krは傾斜角度(δsp)の駆動を再開するための制御ゲインである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
ジャイロスコープ30、40のロータ11,12の合計の角運動量ベクトルhの最終領域Sは、物理的な特異点または制御モーメントを生成することが不可能な領域のない中実球である。この領域の体積は、ジャイロスコープ30、40のロータ11,12の最大角運動量によって制限される。
(姿勢制御方法の概要)
上記のように構成された本発明の姿勢制御装置を使用した制御対象(1)の姿勢制御方法について、図5を参照して説明する。本姿勢制御方法は、以下のステップ(a)~()を含む(なお、図5の符号7(a)~7()は、ステップ(a)~()に対応する)。
(a)外部センサーに基づいて制御対象の現在の姿勢(q)を把握することと、
(b)制御対象の目標姿勢(qt)と前記現在の姿勢(q)から姿勢誤差(^qe)を算出することと、
(c)制御対象の姿勢の変更と安定化のための外部センサーから、ロール、ピッチ、ヨーの各姿勢の信号(ω)を取得することと、
(d)ステップ(b)の信号とステップ(c)の信号を組み合わせてトルクコマンド(uc)を算出することと、
(e)前記ロータ11,12に、モータを使用してそれぞれの角運動量(Hw)を与えることと、
(f)センサーを使用して前記ロータの回転速度、傾斜角度(δsp)、およびジンバル角度(δi,δo)を測定することと、
(g)ステップ(f)の信号を使用して前記ロータ11,12の合計の角運動量ベクトル(h)を算出することと、
(h)ステップ(c)、(d)、(g)の信号を組み合わせて、運動量速度コマンド(τ)を計算することと、
(i)ジンバル駆動制御則にジンバル角度ベクトル(δ = [δsp δi δo]T)と運動量速度コマンド(τ)を提供して、ジンバル駆動速度コマンド(δc=[δcsp δci δco]T)を決定することと、
(j)ジンバル駆動速度コマンド(δc)を前記制御ユニットに提供して、傾斜角度(δsp)とジンバル角度(δi,δo)を変更することと、
(k)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δco)に基づいて、前記制御ユニットにより、前記2軸ジンバルベースのジンバル角度(δo)を変更することと、
(l)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δci)に基づいて、前記制御ユニットにより、2軸ジンバルベース(5)内の前記ジャイロスコープフレームのジンバル角度(δi)を変更することと、
(m)ステップ(i)で決定されたジンバル駆動速度コマンド(δcsp)に基づいて、前記制御ユニットにより、共通の前記ジャイロスコープフレームに取り付けられた各ジャイロスコープの傾斜角度(δsp)を変更することと、
(n)前記姿勢制御装置によって生成された姿勢制御トルク(u)を適用して、前記制御対象の姿勢の変更および安定化を行うこと。
以下、この姿勢制御方法について具体的に説明する。
(対象の回転)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
姿勢制御トルクuは、支持軸受2を介して制御対象1の本体に作用する。モータm19およびm20による傾斜角度δspの変化、およびモータmおよび によるジンバル角度δおよびδの変化により、姿勢制御トルクuの方向および大きさが変化する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
本システムによって作成された制御モーメントの、制御対象1の軸上への射影の式は、式(3)の両辺を、時間で微分することによって得ることができ、次の式が得られる。
【数4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
数学的特異点は、本ジャイロスコープシステムのヤコビ行列A∈R3x3が階数を失うとき、つまり、階数(A)<3のとき発生する。
【数5】

【外国語明細書】