(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021282
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】ろ過性能の予測方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20220126BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
B01D29/00 D
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020136855
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】520269776
【氏名又は名称】中根 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中根 圭介
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA09
4D116BA01
4D116BB01
4D116QA18C
4D116QA18D
4D116QA18F
4D116QC12A
4D116QC14A
4D116UU14
4D116VV08
4D116VV10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ろ過工程の管理は、遵法および品質維持のために必須であるが、JISの測定法は専門技術者や専用の分析機器が必要であるため、管理の労務的・時間的・経済的負担が大きい。現在ろ過工程を有さないがろ過処理の適用を検討する場合には、ろ過原水の水質変動等を考慮すると相当数の根拠データ収集が必要となり労務的・時間的・経済的負担が大きい。実際にろ過することなくろ過性能を予測することができる方法を提供する。
【解決手段】予め類似する液の透視度と懸濁性物質量の実測値と、その液を実際にろ過処理した際の水質、単位時間当たりのろ過処理水量減少の経時変化などのろ過性能をコンピューター等のデータベースに収集蓄積する。予測したい液の透視度の測定値を上記データに照合することで、実際にろ過を行うことなくろ過性能を予測する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸水や海水、河川水、池やプール、水槽等の貯留液(以下「ろ過原水」と呼ぶ)に懸濁している不溶解性物質を、ろ過体を用いて物理的に分離除去するろ過工程において、ろ過原水の透視度を測定することにより、予め収集蓄積してある透視度とろ過性能の相関関係から、当該ろ過原水をろ過した場合の性能を予測するシステム。
【請求項2】
請求項1のろ過原水の透視度の測定は日本工業規格(JIS K0101、K0102等)の方法に限らず、透明な管類や容器を用いる請求項1のシステム。
【請求項3】
請求項1、請求項2のろ過原水の透視度に替えて、ろ過原水の水面上から水深何センチメートルまで見通せるかを指標として用いる請求項1のシステム。
【請求項4】
請求項1のろ過性能とは、ろ過された水の濁度またはSS(浮遊物質または懸濁物質)の数値、またはろ過原水とろ過処理水の水質値の差から計算される除去率、またはろ過体が捕捉物質により徐々に閉塞することに起因する単位時間当たりのろ過処理水量の減少の経時変化、またはろ過に要する加圧エネルギーの上昇の経時変化、の1つ以上とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載した透明な管類や容器を用いて透視度を測る場合に、その透明な管類または容器で読み取れる液の深さが10センチメートルを超える器具を用いる請求項1のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸水や海水、河川水、池やプール、水槽等の貯留液を飲用、生活用、産業用、事業用等の用途に供するために、液中に懸濁している不溶解性物質をフィルターやメンブレンなどのろ過体を用いて物理的に分離除去するろ過処理の性能予測に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲用、生活用、産業用、事業用等の用途に供する水に対する水質管理項目の一部として、濁度およびSS(浮遊物質または懸濁物質)がある。
【0003】
例えば水道水質基準では「濁度2度以下」、公衆浴場における水質基準では原湯、原水、上り用湯及び上り用水「濁度2度以下」および浴槽水「濁度5度以下」、プール用水では「濁度2度以下」という基準値がある。
【0004】
また比較的懸濁性物質が多い排水処理の放流水に関しては、水質汚濁防止法の一律排水基準に「浮遊物質量(SS)200mg/l以下」という基準値がある。
【0005】
その他各種工場や施設でもそれぞれの用途に合わせて懸濁性物質除去に合致したろ過処理が行われている。
【0006】
ろ過処理は遵法および品質管理に重要であるので、日本工業規格(JIS K0101、K0102、以下「JIS法」と記す)に定められた測定が必要である。
【0007】
また、ろ過工程が未だ設置されていない検討・設計段階においては、ろ過処理方法の仕様を決めるために類似のろ過処理を行い、懸濁性物質の除去性能や連続運転性を推定することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ろ過工程の管理は遵法および品質維持のために必須であるが、JIS法に則ると専門技術者や専用の分析機器が必要であるため、管理のための労務的・時間的・経済的な負担が大きい。
【0009】
また、現在ろ過工程を設置していない場合においてろ過処理の適用を検討する場合には、ろ過原水の水質変動等を考慮すると相当数の根拠データ収集が必要となり、労務的・時間的・経済的な負担が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、透視度という簡易かつ安価な測定方法とデータベースに蓄積したろ過処理の実測データから、実際にろ過することなくろ過性能を予測する手法である。
【0011】
予めろ過対象となる井戸水や海水、河川水、池やプール、水槽等の貯留液の透視度と懸濁性物質量(濁度、SS等)の実測値をコンピューター等のデータベースに収集蓄積する。集積したデータをグラフ化した一例が
図1、
図2である。
【0012】
前項の収集蓄積するデータは、ろ過工程が専ら常時同一の水源の水を処理する場合は、その水源の実測値がよい。
【0013】
一方、今回の発明の予測値を新たなろ過工程の設計等の参考にする場合は、様々な地域、季節、降雨の多少など収集条件を広げた方がよい。
【0014】
前3項の要領で収集したろ過原水に対して、実際にろ過処理した際の水質、単位時間当たりのろ過処理水量減少の経時変化、ろ過に要する加圧エネルギー上昇の経時変化、の全部または一部をデータベース化する。データをグラフ化した一例が
図3、
図4、
図5である。
【0015】
ろ過性能を予測したい液の透視度を測定する。測定方法は日本工業規格(JIS K0101、K0102)に定める方法でもよいし、透明な管類や容器を用いた簡易法でもよい。簡易法の場合は、10センチメートル以上の水深を確保できる透明な管類(例えばメスシリンダー様)や容器(たとえばペットボトル)が望ましい。用いる器具の例を
図6に示す。
【0016】
また透視度測定に器具を用いずとも、ろ過原水の水面上から水深何センチメートルまで見通せるかを指標としてもよい。
【0017】
前記のようにJIS法で測定した透視度、または簡易法で測定した透視度相当値を、
図3、
図4、
図5のデータに照合して、ろ過性能を予測する。
【発明の効果】
【0018】
すでに稼働しているろ過工程の場合、ろ過原水の透視度を測定することで、ろ過処理水の濁度または浮遊物質量(SS)の数値、単位時間当たりのろ過処理水量の減少の経時変化、ろ過に要する加圧エネルギーの上昇の経時変化を予測することができる。
この予測方法により現場での労務的・時間的・経済的な負担が削減でき、より迅速かつ頻度の高い水質管理が可能となり、遵法および品質向上、コスト削減に貢献する。
【0019】
現在ろ過工程を設置していないがろ過工程を設置することを想定し、そのろ過性能を予測する場合には、ろ過原水の透視度を測定し類似するろ過原水のろ過性能データと照合することで、ろ過処理水の濁度または浮遊物質量(SS)の数値、単位時間当たりのろ過処理水量の減少の経時変化、ろ過に要する加圧エネルギーの上昇の経時変化を予測することができる。
この予測方法により適切な規模や仕様のろ過工程が選定でき、計画作業の労務的・時間的・経済的な負担が削減でき、ろ過工程の最適化、コスト削減に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ろ過原水の透視度と濁度の実測値を蓄積しグラフ化した例である。
【
図2】ろ過原水の透視度とSSの実測値を蓄積しグラフ化した例である。
【
図3】一定の条件でろ過した場合のろ過原水の透視度とろ過処理水の濁度の関係を蓄積しグラフ化した例である。
【
図4】ろ過原水の透視度ごとに一定の条件におけるろ過処理水量の経時変化の関係を蓄積しグラフ化した例である。
【
図5】ろ過原水の透視度ごとに一定の条件におけるろ過に要する圧力の経時変化の関係を蓄積しグラフ化した例である。
【
図6】JIS法で用いる透視度計と、簡易法で使用可能な透視度相当値を測定する器具の例である。
【
図7】ろ過原水の透視度の測定値を用いて、ろ過処理水の濁度を予測する方法の例である。
【
図8】ろ過原水の透視度の測定値を用いて、ろ過処理水量の経時変化を予測する方法の例である。
【
図9】ろ過原水の透視度の測定値を用いて、ろ過に要する圧力の経時変化を予測する方法の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
【0022】
ろ過した水の濁度を予想する場合、例えば
図7においてろ過原水の透視度が60センチメートルであった場合(
図7[1])、横軸のろ過原水の透視度60センチメートルの位置から上方に線を延ばし性能曲線と交わる点(
図7[2])から、縦軸に向けて水平な線を延ばすと交点は約1度となり(
図7[3])、予測されるろ過処理水の濁度は約1度となる。
【0023】
要求されるろ過処理水量が5リットル毎分以上であり、ろ過体の詰まりを考慮してろ過の継続時間を予測する場合、例えば
図8においてろ過原水の透視度60センチメートルが当てはまる性能曲線はB(
図8[4])であるので、縦軸のろ過処理水量5.0リットル毎分(
図8[5])から水平に右に線を延ばし、性能曲線Bとの交点(
図8[6])から下にたどり横軸との交点である約1.8時間が予測値となる(
図8[7])。
【0024】
ろ過圧力を0.25メガパスカル以下で運転したく、ろ過体の詰まりによるろ過圧力の上昇を考慮してろ過の継続時間を予測する場合、例えば
図9において原水の透視度60センチメートルが当てはまる性能曲線はB(
図9[8])であるので、縦軸のろ過圧力0.25メガパスカル(
図9[9])から水平に右に線を延ばし、性能曲線Bとの交点(
図9[10]から下にたどり横軸との交点である約1.4時間が予測値となる(
図9[11])。
【符号の説明】
【0025】
1 (
図7)予測したい液の透視度実測値60センチメートルに合致する点
2 (
図7)符号1から上方に線を延ばし性能曲線と交わる点
3 (
図7)符号2から水平に延ばし縦軸と交わる点
4 (
図8)ろ過原水の透視度の区分
5 (
図8)要求されるろ過処理水量に合致する点
6 (
図8)符号5から水平に右に線を延ばし性能曲線Bと交わる点
7 (
図8)符号6から下方の横軸と交わる点
8 (
図9)ろ過原水の透視度の区分
9 (
図9)ろ過圧力の設定上限に合致する点
10 (
図9)符号9から水平に右に線を延ばし性能曲線Bと交わる点
11 (
図9)符号10から下方の横軸と交わる点