(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021286
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】自動駆血システム及びBFR自動設定システム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220126BHJP
A61B 17/135 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A61H1/02 G
A61B17/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148453
(22)【出願日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2020124792
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510132842
【氏名又は名称】山崎 由久
(71)【出願人】
【識別番号】516309327
【氏名又は名称】株式会社アクアデザイン
(71)【出願人】
【識別番号】520272455
【氏名又は名称】株式会社CHARITES JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】100145425
【弁理士】
【氏名又は名称】大平 和由
(72)【発明者】
【氏名】山崎 由久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森 陽子
【テーマコード(参考)】
4C046
4C160
【Fターム(参考)】
4C046AA07
4C046AA25
4C046AA45
4C046AA47
4C046AA48
4C046BB02
4C046BB04
4C046BB05
4C046BB08
4C046CC04
4C046CC11
4C046DD02
4C046DD03
4C046DD37
4C046DD38
4C046DD39
4C046DD41
4C046EE17
4C046EE32
4C160DD43
4C160DD46
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】駆血を施術するに際しカフ装着及び設定を簡便に行える装置を提供すること、及び現状全て手動設定で実施されているBFR(血流制限下トレーニング)の血流制限用カフ圧を自動で設定する装置を提供することを課題とする。
【解決手段】駆血用カフ4と、空気タンク3と、マイクロコンピュータ6を有する制御装置1とを具備し、制御装置1は、駆血用カフ4で発生する脈動に基づく振動を電気信号に変換する脈動検知器2と、駆血用カフ4の圧力を電気信号に変換して出力する圧力計5と、各電磁弁を制御するマイクロコンピュータ6を備え、駆血用カフ4を加圧し、脈動が最大振幅になる所定圧に対し、更に駆血用カフ4を加圧して脈動振幅が低下する圧力値を検出し、駆血点の駆血カフ圧力として採用する。また、BFRでは不図示の腕用二連カフ等の血流制限用カフの圧力値を、脈動検知器の脈動が最大振幅になる圧力を検知してBFR自動設定圧として採用する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四肢の患部より心臓に近い側に巻き付けて駆血する駆血用カフと、
空気タンクと、マイクロコンピュータを有する制御装置とを具備し、
上記制御装置は、上記空気タンクより一定圧力に調圧された空気を上記駆血用カフに送る通気用電磁弁および上記駆血用カフの空気を排気する排気用電磁弁と、
上記駆血用カフで発生する脈動に基づく振動を電気信号に変換する脈動検知器と、
上記駆血用カフの圧力を電気信号に変換して出力する圧力計測手段と、
上記脈動検知器の出力および上記圧力計測手段の出力が印加され、上記各電磁弁を制御するマイクロコンピュータと、を備える、
ことを特徴とする自動駆血システム。
【請求項2】
上記通気用電磁弁を開いて上記駆血用カフを加圧していき、上記脈動検知器、上記圧力計測手段の測定値に基づき、上記脈動が最大振幅になる所定圧に対し、更に上記駆血カフを加圧して脈動振幅が低下する圧力値を検出し、駆血点の駆血カフ圧力として採用する、ことを特徴とする請求項1に記載の自動駆血システム。
【請求項3】
上記駆血点の駆血カフ圧力にさらに10mmHgを加えた圧力を駆血点の駆血カフ圧力として採用することを特徴とする請求項2に記載の自動駆血システム。
【請求項4】
筋力増強又は筋肥大を図る部位に巻き付けて装着する血流制限用カフと、
空気タンクと、マイクロコンピュータを有する制御装置とを具備し、
上記制御装置は、上記空気タンクより一定圧力に調圧された空気を上記血流制限用カフに送る通気用電磁弁および上記血流制限用カフの空気を排気する排気用電磁弁と、
上記血流制限用カフで発生する脈動に基づく振動を電気信号に変換する脈動検知器と、
上記血流制限用カフの圧力を電気信号に変換して出力する圧力計測手段と、
上記脈動検知器の出力および上記圧力計測手段の出力が印加され、上記各電磁弁を制御するマイクロコンピュータと、を備える、
ことを特徴とするBFR自動設定システム。
【請求項5】
上記通気用電磁弁を開いて上記血流制限用カフを加圧していき、上記脈動検知器、上記圧力計測手段の測定値に基づき、上記脈動が最大振幅になる所定圧をBFR値とし、該BFR値を上記血流制限用カフのBFR自動設定圧として採用する、ことを特徴とする請求項4に記載のBFR自動設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療施設でのリハビリテーション、接骨院等での筋肉減弱症(サルコペーニア)、筋骨格損傷の治療等に使用されている自動VRC装置を用いて駆血を自動的に設定する自動駆血システム及びBFR(Blood Flow Restriction)即ち血流制限下トレーニングで各種カフを用いてトレーニングを実施するためのBFR自動設定システムに関する。
【0002】
上記装置を用いて患者等に駆血を施術する場合、現状は駆血用のカフ及び駆血設定用のセンサーカフ2種類を使用する方法が用いられているが、カフ装着及び設定に時間を要し、また複雑な操作を要する等の問題があった。この発明はこのカフ装着及び設定を簡便に行える装置を提供することを課題とする。さらに、この発明は現状ではBFR自動設定する方法がなく、BFRトレーニングは全て手動設定で実施されている状況のBFRを自動で設定する装置を提供することを課題とする。
【0003】
駆血とは駆血帯(又はカフ)によって動脈を圧迫することで、圧迫部位の下部(心臓から遠位の部位)の血流を止めて、約2分間以内に駆血帯の空気を開放して、血流を再開させる方法を繰り返し5回以上実施することにより毛細血管の拡張をはかり、抹消部まで血流が再開されることにより、各種疾患等の治療効果を向上させ、更にBFRトレーニングにより血液循環をよりよくし、筋力増強を向上させる。
【0004】
駆血(血流停止)は10秒以内に実施しないと、整形外科的施術後等の駆血治療で出血や浮腫が大きくなり、逆効果になることが、研究の結果証明されている。
【0005】
駆血前後の毛細血管の血流再開状況を毛細血管血流スコープ(GokoBecanZ)を用いて計測したデータを
図4に示す。高齢者の抹消の血管に血流が届いていないのが駆血後は血流再開しており、駆血施術が歩行困難な高齢者が歩行できるようになった症例が多数ある。
【0006】
筋力増強および筋肥大のためのトレーニングについては、ACSM(American
College of Sports Medicine)学会の指針があり、この指針は世界で広く用いられている。これによれば、1RM(Repeat Maximum)の80%の負荷で、8~10回、週2~3回のトレーニングが必要としている。このトレーニングの負荷量が大きく、筋力の弱い人や中、高年者では障害が発生する危険性があるために、BFRトレーニングではこの負荷量を20%~30%RMで、負荷量が小さくても、通常のトレーニングとほぼ同じ効果があることが証明されている。このために世界で広くBFRトレーニングが実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
駆血点を自動的に設定するための生体データとして血流制限時の脈動がカフ内袋の空気振動を検知することである。駆血カフを装着する部位は上肢駆血の場合は上腕の基部2か所、下肢の場合は大腿部の基部2か所であるが、これらの部位は動脈が皮膚表面の近位にあり、血流が停止していても心臓の収縮、拡張時に動脈内の血液にその脈動の振動が伝わるために駆血点を設定することが困難である。
【0009】
このため圧を300mmHg(血流停止限界)に上げても駆血用カフの脈動の振動がカフ内に存在し、血流が停止しているかどうかを判断できない。
【0010】
この問題を解決するために特許文献1の
図1に示す4のように夫々の基部から離れ、動脈振動が伝達されない部位に脈動検知用のセンサーカフを巻き、その部位の動脈の脈動を検知し、脈動が検知できなくなった圧力を駆血圧として設定し、現状の自動VRC装置及び駆血治療装置で使用されている。
【0011】
上述のように、従来は駆血施術、治療時に駆血設定用のセンサーカフを装着し、駆血設定後にセンサーカフを取り除く等の煩雑な作業をする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
駆血カフの脈動信号のみで駆血点を設定するために、駆血カフの脈動信号と超音波双方向血流計、Smartdop45(Hadeco社製)を用いて、駆血カフ内の圧を上昇させながら、手及び足の甲の部位での血流信号をオシロスコープで同時記録し、夫々の甲の血流が消失した点を駆血圧とし、その時の駆血カフの脈動信号の振幅(
図3参照)の大きさを駆血点とした。
【0013】
血流制限時のカフ内の脈動振幅は個人差があるので、10数名の被験者を用いてデータを収集した。駆血カフ内の圧を上げていくと、各々ある圧で脈動は最大振幅になり、更に圧を上げると脈動振幅が低下する。被験者ごとにこのパターンを各部位の駆血カフの信号と血流計の信号を同時記録した。その結果、血流計の振幅がゼロになる点(駆血点)は全被験者において上記脈動が最大振幅となって更に圧を上げて脈動振幅が低下した時点で発現し、その際駆血カフ内の脈動振幅の低下は、全被験者において低下後の脈動振幅(幅寸法)の分布の範囲が上記脈動の最大振幅の10%以内にすべて収まった。この結果から駆血カフの圧力として、上記脈動の最大振幅の値から脈動振幅低下点を求め、この点に対応する駆血カフ内の圧力を決定し、これにさらにより確実な駆血点になるようにプラス10mmHg圧を駆血圧とした。
【0014】
筋力増強及び筋肥大の目的のトレーニングでは、トレーニング部位の筋肉に血液、体液(以下「血液等」と記す)がPooling(貯留)すると効果が高いとされており、このPoolingを指標としトレーニングが実施されている。しかしBFRトレーニングでは各種の血流制限用のカフが用いられており、カフの形状、カフの締め付け力を手動で判定することは、トレーニング実施者の知識、経験、及びカフ装着技術がまちまちで、例えばカフを締め付け過ぎて、BFRでなく、駆血状態でのトレーニングを実施すると筋肉の障害が発生したり、失神したりする事故が発生している。このためにBFRトレーニングでは豊富な経験、及び高度な知識が要求されており、現状では定量的にBFRを実施する指標がない。
【0015】
BFRトレーニングで使用されている血流制限用カフには腕用の駆血カフ、腕用の二連カフ、脚用の駆血カフ、脚用二連カフ、脚用三連カフ等があり、夫々のカフの形状、皮膚面の圧迫する幅が異なり、またカフ装着時の内袋の圧力によるBFRの程度を判定することは困難である。適切なBFRを行うための指標として、最もPoolingを発生させる各種カフ装着時の内袋の圧力とその中の空気の脈動の振幅の大きさとの相関を調査することにより後述する定量的なBFRトレーニングを可能とする関係を把握したのである。
【0016】
この発明の自動駆血システム及びBFR自動設定システムは、新たに製作された「MCT装置」に搭載され、上肢基部、下肢基部に巻きつけられた駆血カフ(通称RIPカフ)の脈動のみで駆血点を設定し、各種カフ別によるBFRトレーニング時の自動設定が可能になった。
【発明の効果】
【0017】
この発明の自動駆血システムを用いることで、リハビリテーション、筋肉減弱症治療、打撲、捻挫、骨折の治療時に駆血装置の操作が簡単なり、また、脈動検知用のセンサーカフを使用する必要がなく、更に本体装置の制御が簡単になり、本体内の部品も従来の特許文献装置より削減でき、より経済的な装置にすることが可能になる。
【0018】
この発明のBFR自動設定システムにより、従来行われていたBFRのトレーナーが手動で実施していたことを、定量的に安全なBFR自動設定ができ、従来のBFRトレーナーの豊富な経験や高度な知識なしでBFRトレーニングが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の自動駆血システムの使用状態を示す概要図である。
【
図2】この発明の自動駆血システムで使用する制御装置を示す実施形態のブロック図である。
【
図3】この発明の自動駆血システムの駆血カフの圧力に対する駆血カフ内袋の脈動振幅および血流計波形の関係を示す脈動パターン図である。
【
図4】この発明の自動駆血システムによる治療前後の毛細血管の様子を比較するための模式図であり、(a)は治療前、(b)は治療後の様子を示す。
【
図5】この発明のBFR自動設定システムの血流制限用カフの圧力に対する血流制限用カフ内袋の脈動振幅の関係を示す脈動パターン図であり、(a)は腕用二連カフ、(b)は脚用三連カフの脈動パターンを示す。
【
図6】この発明のBFR自動設定システムにおける血流制限用カフの配置説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、この発明の自動駆血システムの実施形態について説明する。
この発明の駆血治療装置は、
図1に患者に治療中の状態を示すように、四肢の患部より心臓に近い側に巻き付けて、駆血する駆血用カフ4と、この駆血用カフ4に連結されて駆血状態を検知する脈動検知器2及び圧力計5と、空気タンク3と制御装置1とにより構成される。
【0021】
図1に示す駆血用カフ4は、空気圧作動により締付状態を調節するものであって、ベルト状の緊締具の内側にゴム製チューブを設けた構造であり、緊締具を患部より心臓に近い側に巻き付けて、マジックテープ(登録商標)などの固定手段によって固定してループを形成した後、ゴム製チューブに空気を送り込んで加圧することにより四肢に締付力を作用させて患部の血流を駆血状態とするものである。
【0022】
図2に示す脈動検出器2は、駆血用カフ4の脈動を検知して、駆血状態を把握するものであり、圧力計5は、駆血カフ内の圧力を測定するものである。
【0023】
さらに、
図2に示すように、モータ7により駆動される空気圧縮機8と、圧縮された空気を貯える空気タンク3とを備えている。
【0024】
空気タンク3には、流量調整弁9および通気用電磁弁10が結合され ており、この通気用電磁弁10は、チューブ12を介して駆血用カフ4に接続される。さらに、駆血用カフ4へ通じるチューブから分岐して排気用電磁弁11が結合されている。
脈動検出器2は、チューブ12を介して伝わる駆血用カフ4内の血管の脈動を検出する。
【0025】
図2に示す制御装置1には、マイクロコンピュータ6が備えられており、このマイクロコンピュータ6には、脈動検知器2から出力される脈動の電気信号と、圧力計6の電気信号とともに印加され、マイクロコンピュータ6はこれらの電気信号に基づいて駆血用カフ4に連通する通気用電磁弁10を制御する。
【0026】
次に、マイクロコンピュータ6によって、通気用電磁弁10および排気用電磁弁11を制御して行う駆血治療行為の態様を説明する。
【0027】
以下に、駆血治療の手順を述べる。
まず、
図1に示すように駆血用カフ4を患部よりも心臓に近い側に巻き付ける。
次に、マイクロコンピュータ6によって通気用電磁弁10を開いて、駆血用カフ4に空気を送り、加圧を開始する。
すると、脈動検知器2が脈動の振動を検知してパルス状の電気信号を発生し始める。
この駆血用カフ4の加圧により四肢が締め付けられて血流が止まる(
図3の駆血点)のだが、
図3に示すように、さらに高い圧力が加わっても駆血用カフ4の脈動はゼロにはならずに残っている。実際に血流が止まって駆血状態になってもなお脈動信号が消えないため、
簡易な方法で駆血状態を検知し、駆血圧を決定することが困難だった。
【0028】
この発明においては後述する簡易な方法でこの駆血状態を検知し、駆血圧力を決定することを可能にしたのである。駆血治療の手順としては、
図3において駆血用カフ4の加圧を続けると、脈動検知器2が検出するパルス状の脈動が最大振幅となる状況が訪れる。しかし、この時点では別の試験で得た
図3の血流計のデータからも判るように、まだ血流は止まっていない。実際に血流の停止(駆血状態)はさらに駆血用カフ4を加圧して脈動検知器2の脈動振幅が低下した状態で起こる。この駆血状態(駆血点)の決定方法がこの発明の眼目である。手順としては決定された駆血点に対応する圧力計5の値にさらに10mmHGを加えた圧力を、その患者における駆血用カフ4の駆血圧として決定する。
【0029】
この駆血圧p(空気圧)で締め付けた駆血状態を維持する。
そして、この駆血状態が一定時間T1(2分以内)経過すると、排気用電磁弁11を定時間開いて、駆血用カフ4の空気を排気して休息時間T2(30秒~2分間)となる。
【0030】
この休息時間T2が終わると、通気用電磁弁10を開いて再び駆血を行うが、この2回目以降の駆血用カフ4の加圧においては1回目の駆血状態で得られた駆血圧pを利用して駆血を行い、複数回(例えば、5回)駆血時間T1、休息時間T2を繰り返す。
【0031】
このような駆血時間T1、休息時間T2および繰り返し行う治療の回数は、被施術者の容態に 応じて適宜設定されるものである。
【0032】
以下に、この発明において駆血状態を検知する方法についてさらに詳しく説明する。
本実施形態においては、上記駆血用空気圧pを得る際に、駆血用カフ4に通じるチューブ12から通気用電磁弁10を開いて駆血用カフ4に空気を送って圧力を上昇させ、脈動検知器2のデータが最大振幅を検出した後にさらに圧力を上昇させ続け、脈動検知器2の振幅が最大振幅から低下して安定した時点の圧力計5の圧力データ(
図3の駆血点に対応)に対し、さらにより確実な駆血点になるように10mmHgの加圧を行って駆血用空気圧pとする。これにより簡易に駆血圧力を把握することが可能となる。これは前述のように、多くのデータから
図3に示す血流計波形による駆血状態と駆血カフの脈動波形の関係から導き出された駆血圧力の決定手法である。
【0033】
脈動検知器2の振幅が最大振幅から更なる駆血用カフ4の加圧により脈動振幅が低下して駆血状態に至るのだが、その脈動振幅の低下現象が、全被験者において低下後の脈動振幅(幅寸法)の分布の範囲が上記脈動の最大振幅の10%以内にすべて収まるという試験結果を見出し、駆血圧を測定により簡易に決定する手法として上記の脈動振幅の所定の低下率を採用し、最大振幅との関係で駆血圧を容易に決定することを可能としたものである。
【0034】
この発明の自動駆血システムは、多くの駆血治療の実施におけるデータを活用し、従来複数の装置を装着して手間のかかる駆血圧の決定方法を使用していた駆血治療を誰でも安全かつ容易に行える装置として提供するものである。
【0035】
次に、この発明のBFR自動設定システムの実施形態について説明する。基本的構成は上記の自動駆血システムと同様であるため、BFR自動設定システムの制御装置1を示す実施形態のブロック図については
図2で説明する。本BFR自動設定システムでは自動駆血システムにおける駆血用カフ4が血流制限用カフ13、14に置き換わっている。
筋力増強又は筋肥大を図る部位に巻き付けて装着する血流制限用カフである腕用の二連カフ13及び脚用三連カフ14と、空気タンク3と、マイクロコンピュータ6を有する制御装置1とを具備し、制御装置1は、空気タンク3より一定圧力に調圧された空気を血流制限用カフ13、14に送る通気用電磁弁10および血流制限用カフ13、14の空気を排気する排気用電磁弁11と、血流制限用カフ13、14で発生する脈動に基づく振動を電気信号に変換する脈動検知器2と、血流制限用カフ13、14の圧力を電気信号に変換して出力する圧力計5と、脈動検知器2の出力および圧力計5の出力が印加され、各電磁弁10、11を制御するマイクロコンピュータ6を備えている。
【0036】
BFRトレーニングで使用されている血流制限用カフには
図6に示す腕用の二連カフ13、脚用三連カフ14の他に、図示の腕用の駆血カフ、脚用の駆血カフ、脚用二連カフ等があり、前述のように夫々皮膚面の圧迫する幅が異なり、またカフ装着時の内袋の圧力によるBFRの程度を判定することは困難であった。そのため、適切なBFRを行うための指標として、最もPoolingを発生させる各種カフ装着時の内袋の圧力とその中の空気の脈動の振幅の大きさとの相関を以下のような方式で把握することとした。
【0037】
カフの種類により脈動の振幅の幅は異なる。代表的なカフである腕用二連カフ13、脚用三連カフ14の脈動振幅の形状を
図5(a)(b)に示す。夫々のカフにおいて、いくつかの脈動振幅の値に対し、その状態を2分間維持し、カフを取り除いて上腕部及び大腿部の周囲計を計測した。その結果、夫々のカフによる脈動振幅の最高値で2分間維持した場合に夫々の部位の周囲計が最も大きくなり、最も筋肉内がPoolingしていることを見出した。
【0038】
この結果から、各カフの脈動振幅の最高値をBFR設定値とし、BFR設定値に対応する内袋の圧をBFR自動設定圧と定めた。これにより、この発明のBFR自動設定システムは、多くの駆血治療の実施におけるデータを活用し、従来定量的なトレーニング負荷の決定がなされていなかった筋力増強又は筋肥大の分野において、対象とされる部分ごとに、各使用者に対して最適のトレーニング負荷を自動的に提供することを可能としたのである。
【0039】
この発明の自動駆血システム及びBFR自動設定システムは、上述のように、新たに製作された「MCT装置」に搭載され、上肢基部、下肢基部に巻きつけられた駆血カフ(通称RIPカフ)の脈動のみで駆血点を設定することを可能にし、BFRトレーニングで使用される各血流制限用カフのBFR自動設定圧が容易に得られることで、安全で最適なBFRトレーニングを可能とするものである。
【符号の説明】
【0040】
1 制御装置
2 脈動検知器
3 空気タンク
4 駆血用カフ
5 圧力計
6 マイクロコンピュータ
7 モータ
8 空気圧縮機
9 流量調整弁
10 通気用電磁弁
11 排気用電磁弁
12 チューブ
13 血流制限用カフ(腕用二連カフ)
14 血流制限用カフ(脚用三連カフ)