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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021288
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】車両用スペアタイヤカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 43/10 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
B62D43/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171694
(22)【出願日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020124481
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591243217
【氏名又は名称】丸満産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】原 聖二
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一知
(72)【発明者】
【氏名】中村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】川原田 真美
(57)【要約】
【課題】スペアタイヤを荷台の床面に載置した場合に、スペアタイヤを位置決め可能な車両用スペアタイヤカバーを提供する。
【解決手段】車両用スペアタイヤカバー1は、シート材により形成され、車両の荷台50の床面51に横置きされたスペアタイヤTの上面および外周面を被覆するカバー本体10と、カバー本体10の周面または上面に保持され、結合位置から少なくとも3方向に延在し、それぞれの外方端が荷台50の壁面52または床面51に係止されたベルト20とを備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、
前記カバー本体の周面または上面に保持され、結合位置から少なくとも3方向に延在し、それぞれの外方端が前記荷台の壁面または床面に係止されたベルトと、
を備える、車両用スペアタイヤカバー。
【請求項2】
前記ベルトは、前記カバー本体の周面の少なくとも一部に沿って保持され、
前記ベルトの前記外方端の一部は、前記スペアタイヤの前記外周面における主押付位置が前記荷台の主壁面に押し付けられた状態となるように前記荷台の前記主壁面に係止され、
前記ベルトは、前記スペアタイヤが前記荷台の前記主壁面から離間しようとする力を受ける、請求項1に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項3】
前記ベルトは、第一ベルト片と、第二ベルト片と、を備え、
前記第一ベルト片は、
前記カバー本体の前記周面に沿って保持される第一周面部と、
前記第一周面部に接続され、前記カバー本体の前記周面から離れる方向に延在し、前記荷台の前記主壁面に係止される第一係止延在部と、
を備え、
前記第二ベルト片は、
前記カバー本体の前記周面に沿って保持され、前記第一周面部に連結されまたは一体に形成される第二周面部と、
前記第二周面部に接続され、前記カバー本体の前記周面から離れる方向に延在し、前記荷台の前記主壁面に係止され、前記主壁面において前記スペアタイヤの前記主押付位置を基準として前記第一係止延在部の係止位置とは反対の位置に係止される第二係止延在部と、
を備える、請求項2に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項4】
前記第一係止延在部および前記第二係止延在部は、前記スペアタイヤの前記外周面の接線方向に延在する、請求項3に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項5】
前記第一係止延在部および前記第二係止延在部は、平行に対して±20°の範囲に配置されている、請求項4に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項6】
前記第一ベルト片と前記第二ベルト片とは、前記スペアタイヤの前記外周面の前記主押付位置の背面側において連結され、
前記ベルトは、さらに、第三ベルト片を備え、
前記第三ベルト片は、前記第一ベルト片および前記第二ベルト片の少なくとも一方に連結され、前記第一ベルト片と前記第二ベルト片との連結位置よりも前記スペアタイヤの前記背面から離れる方向に延在し、前記荷台において前記主壁面から離れた壁面または床面に係止される、請求項3-5の何れか1項に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項7】
前記第一ベルト片の前記第一周面部は、前記スペアタイヤの前記外周面における副押付位置が前記荷台の副壁面に押し付けられた状態において前記副壁面と前記スペアタイヤとの間に挟まれ、
前記第一ベルト片と前記第二ベルト片との連結位置において、前記第一ベルト片における前記第一周面部側の部位と前記第三ベルト片とのなす角度θは、前記第二ベルト片における前記第二周面部側の部位と前記第三ベルト片とのなす角度φよりも小さくなるように設定され、
前記なす角度θおよび前記なす角度φの設定により、前記スペアタイヤの前記副押付位置を前記荷台の前記副壁面に押し付ける力を発揮させる、請求項6に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項8】
前記第一ベルト片の外方端は、前記主壁面に係止され、
前記第二ベルト片の外方端は、前記主壁面に係止され、
前記第二ベルト片の内方端側は、環状部材を備え、前記第一ベルト片の内方端を前記環状部材に挿通させることで前記第一ベルト片における前記環状部材との連結位置を調整可能となるように前記第一ベルト片に連結され、
前記第三ベルト片の外方端は、前記荷台に係止され、
前記第三ベルト片の内方端は、前記第一ベルト片、前記第二ベルト片および前記第三ベルト片の張力を調整可能となるように前記第一ベルト片の前記内方端側に係止される連結部材を備える、請求項7に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項9】
前記車両用スペアタイヤカバーは、さらに、
前記カバー本体の前記周面に固定され、前記ベルトを挿通させるベルト挿通片を備える、請求項2-8の何れか1項に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項10】
前記ベルトは、前記カバー本体に縫製により固定される、請求項2-8の何れか1項に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項11】
前記車両用スペアタイヤカバーは、さらに、
前記カバー本体の前記周面に固定され、前記第一ベルト片の前記第一周面部を挿通させる保護用ベルト挿通片を備え、
前記保護用ベルト挿通片は、前記第一ベルト片と前記荷台の前記副壁面との間に挟まれる、請求項7または8に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項12】
前記車両用スペアタイヤカバーは、
前記保護用ベルト挿通片と、
前記カバー本体の前記周面に固定され、前記保護用ベルト挿通片よりも前記第一ベルト片と前記第二ベルト片との連結位置寄りに位置し、前記第一ベルト片の前記第一周面部を挿通させる第一位置決め用ベルト挿通片と、
前記カバー本体の前記周面に固定され、前記第二ベルト片の前記第二周面部を挿通させる第二位置決め用ベルト挿通片と、
を備える、請求項11に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項13】
前記ベルトは、前記結合位置が前記カバー本体の上面に位置するように前記カバー本体の上面に保持される、請求項1に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項14】
前記ベルトは、前記スペアタイヤを前記荷台の主壁面寄りの位置に保持し、
前記ベルトの少なくとも2つの前記外方端は、前記主壁面に係止され、
前記ベルトの残りの前記外方端は、前記主壁面から離れた壁面または床面に係止される、請求項13に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項15】
前記ベルトは、第一ベルト片と、第二ベルト片と、第三ベルト片と、を備え、
前記第一ベルト片は、V字状に形成され、前記V字状の折れ曲がり部を前記結合位置とし、前記V字状の両端が前記主壁面に係止され、
前記第二ベルト片の一端は、前記第一ベルト片の前記V字状の折れ曲がり部である前記結合位置に連結され、
前記第三ベルト片の一端は、前記荷台に係止され、
前記第三ベルト片の他端は、前記第二ベルト片および前記第三ベルト片の張力を調整可能となるとなるように前記第二ベルト片の他端に係止される、請求項13または14に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項16】
前記第一ベルト片は、前記カバー本体の上面に縫製により固定され、
前記車両用スペアタイヤカバーは、さらに、
前記カバー本体の上面に固定され、前記第二ベルト片を挿通させるベルト挿通片を備える、請求項15に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項17】
前記車両用スペアタイヤカバーは、前記ベルトとしての周面ベルトと、前記ベルトとしての上面ベルトと、を備え、
前記周面ベルトは、前記カバー本体の周面の少なくとも一部に沿って保持され、
前記周面ベルトの前記外方端の一部は、前記スペアタイヤの前記外周面における主押付位置が前記荷台の主壁面に押し付けられた状態となるように前記荷台の前記主壁面に係止され、
前記周面ベルトは、前記スペアタイヤが前記荷台の前記主壁面から離間しようとする力を受け、
前記上面ベルトは、前記結合位置が前記カバー本体の上面に位置するように前記カバー本体の上面に保持される、請求項1に記載の車両用スペアタイヤカバー。
【請求項18】
シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、
前記カバー本体の周面の少なくとも一部に沿って保持され、前記スペアタイヤの前記外周面における主押付位置が前記荷台の主壁面に押し付けられた状態となるように前記荷台の前記主壁面に係止され、前記スペアタイヤが前記荷台の前記主壁面から離間しようとする力を受けるベルトと、
を備える、車両用スペアタイヤカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スペアタイヤカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、スペアタイヤを固定する手法として、特許文献1-3に記載のように種々存在する。特許文献1には、荷室の床面に凹所を設け、凹所にスペアタイヤを収容することが記載されている。特許文献2には、車両の床裏面にスペアタイヤを固定することが記載されている。特許文献3には、車両のバックドアにスペアタイヤを固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-107660号公報
【特許文献2】特開2006-321254号公報
【特許文献3】実用新案登録第3187374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1-3に記載のように、車両がスペアタイヤを固定するための構造を有している場合は、スペアタイヤを車体ボディに位置決めすることができる。スペアタイヤを固定するための構造を有していない場合には、例えば、スペアタイヤを荷台の床面に載置することが考えられる。スペアタイヤを荷台の床面に載置するだけでは、走行中に、スペアタイヤが移動してしまう。そのため、スペアタイヤを荷台の床面に載置したとしても、スペアタイヤが移動しないようにすることが求められる。
【0005】
本発明は、スペアタイヤを荷台の床面に載置した場合に、スペアタイヤを位置決め可能な車両用スペアタイヤカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1.第一の車両用スペアタイヤカバー)
第一の車両用スペアタイヤカバーは、シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、前記カバー本体の周面または上面に保持され、結合位置から少なくとも3方向に延在し、それぞれの外方端が前記荷台の壁面または床面に係止されたベルトとを備える。
【0007】
第一の車両用スペアタイヤカバーによれば、ベルトが結合位置から少なくとも3方向に延在しており、外方端が荷台に係止されている。従って、ベルトによって、カバー本体に被覆されたスペアタイヤを荷台の床面にて位置決めすることができる。
【0008】
(2.第二の車両用スペアタイヤカバー)
第二の車両用スペアタイヤカバーは、シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、前記カバー本体の周面または上面に保持され、結合位置から少なくとも3方向に延在し、それぞれの外方端が前記荷台の壁面または床面に係止されたベルトとを備える。さらに、前記ベルトは、前記カバー本体の周面の少なくとも一部に沿って保持され、前記ベルトの前記外方端の一部は、前記スペアタイヤの前記外周面における主押付位置が前記荷台の主壁面に押し付けられた状態となるように前記荷台の前記主壁面に係止され、前記ベルトは、前記スペアタイヤが前記荷台の前記主壁面から離間しようとする力を受ける。
【0009】
第二の車両用スペアタイヤカバーによれば、カバー本体にベルトが保持されている。そして、ベルトが、車両の荷台の主壁面に係止されている。このとき、スペアタイヤの外周面における主押付位置が、荷台の主壁面に押し付けられた状態となる。従って、ベルトが荷台の主壁面に係止された状態において、スペアタイヤは荷台の主壁面に押し付けられているため、スペアタイヤは荷台に位置決めされた状態となる。
【0010】
さらに、ベルトは、スペアタイヤが荷台の主壁面から離間しようとする力を受けている。従って、走行中において、スペアタイヤが荷台の主壁面から離間しようとした場合に、ベルトの抗力によって、スペアタイヤが荷台の主壁面に押し付けられた状態を維持できる。さらに、カバー本体が、当該力を受ける必要がないため、カバー本体の引張強度を高くする必要がなく、ベルトのみが、十分な引張強度を有すれば良い。従って、カバー本体のコストを安価にすることができる。
【0011】
(3.第三の車両用スペアタイヤカバー)
第三の車両用スペアタイヤカバーは、シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、前記カバー本体の周面または上面に保持され、結合位置から少なくとも3方向に延在し、それぞれの外方端が前記荷台の壁面または床面に係止されたベルトとを備える。さらに、前記ベルトは、前記結合位置が前記カバー本体の上面に位置するように前記カバー本体の上面に保持される。
【0012】
第三の車両用スペアタイヤカバーによれば、ベルトが、スペアタイヤを荷台の床面に押し付ける力を発揮する。従って、車両上下方向の振動が生じたとしても、スペアタイヤを確実に位置決めすることができる。
【0013】
(4.第四の車両用スペアタイヤカバー)
第四の車両用スペアタイヤカバーは、シート材により形成され、車両の荷台の床面に横置きされたスペアタイヤの上面および外周面を被覆するカバー本体と、前記カバー本体の周面の少なくとも一部に沿って保持され、前記スペアタイヤの前記外周面における主押付位置が前記荷台の主壁面に押し付けられた状態となるように前記荷台の前記主壁面に係止され、前記スペアタイヤが前記荷台の前記主壁面から離間しようとする力を受けるベルトとを備える。第四の車両用スペアタイヤカバーは、上述した第二の車両用スペアタイヤカバーと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一例の車両用スペアタイヤカバーの斜視図である。
図2】第一例の車両用スペアタイヤカバーを構成するカバー本体の正面図である。
図3図2のIII方向から見た図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】第一例の車両用スペアタイヤカバーを構成する第一ベルト片を示す図である。
図6】第一例の車両用スペアタイヤカバーを構成する第二ベルト片を示す図である。
図7】第一例の車両用スペアタイヤカバーを構成する第三ベルト片を示す図である。
図8】第一例の車両用スペアタイヤカバーでスペアタイヤを被覆した状態の正面図である。
図9図8のIX方向から見た図である。
図10】車両の荷台の一部を示す斜視図である。
図11】第一例の車両用スペアタイヤカバーでスペアタイヤを被覆して、車両の荷台に載置した状態を示す上面図である。
図12】第二例の車両用スペアタイヤカバーの斜視図である。
図13】第三例の車両用スペアタイヤカバーの斜視図である。
図14】第四例の車両用スペアタイヤカバーでスペアタイヤを被覆して、車両の荷台に載置した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.車両用スペアタイヤカバー1の概要)
図1に示すように、車両用スペアタイヤカバー1(以下、「スペアタイヤカバー」と称する)は、車両の荷台の床面に横置きされた車両用のスペアタイヤTを被覆する。つまり、スペアタイヤTは、車両のバックドアに固定するタイプでもなく、車両の床裏面に固定するタイプでもない。
【0016】
さらに、荷台の床面は、スペアタイヤTよりも広く且つほぼ水平の面状に形成されている。つまり、荷台の床面に、スペアタイヤTを収容するための容器状の凹所が形成されている構造ではない。従って、スペアタイヤTは、荷台の床面に横置きされた状態において、車両の固定部位に係止されなければ、床面上を自由に移動できる状態となる。そこで、スペアタイヤカバー1は、スペアタイヤTを被覆すると共に、車両の荷台に係止する構造を有している。なお、横置きとは、スペアタイヤTの中心軸が鉛直方向に一致する状態の置き方を意味する。
【0017】
(2.第一例)
(2-1.第一例の車両用スペアタイヤカバー1の構成)
第一例のスペアタイヤカバー1の構成について、全体構成を示す図1、各構成部材を示す図2図7を参照して説明する。スペアタイヤカバー1は、図1に示すように、ベルト20が、結合位置Paから3方向に延在し、それぞれの外方端が荷台50(図10に示す)の壁面または床面に係止されている。ベルト20は、荷台50に対して係脱可能である。また、ベルト20の一部がカバー本体10の周面に保持されている。以下に、スペアタイヤカバー1について、詳細に説明する。
【0018】
スペアタイヤカバー1は、少なくとも、スペアタイヤTを被覆するカバー本体10と、カバー本体10に保持されるベルト20とを備える。スペアタイヤカバー1は、さらに、ベルト20をカバー本体10に位置決めするためにベルト挿通片31-33を備える。
【0019】
カバー本体10は、図1図4に示すように、軟質のシート材により形成されている。カバー本体10は、例えば、織布の表面に塩化ビニル等の合成樹脂材をコーティングした帆布であり、柔軟性を有している。
【0020】
カバー本体10は、スペアタイヤT(図8に示す)を被覆する形状を有している。詳細には、カバー本体10は、横置きされたスペアタイヤTの上面および外周面を被覆することが可能な袋状に形成されている。カバー本体10は、例えば、円筒袋状に形成されている。なお、カバー本体10は、横置きされたスペアタイヤTの下面を被覆する必要はないが、下面を被覆するようにしてもよい。
【0021】
本例においては、カバー本体10は、スペアタイヤTの上面を被覆する袋状の底面11と、スペアタイヤTの外周面を被覆する袋状の周面12とを備える。そして、カバー本体10は、図1の下方に、スペアタイヤTを挿入するための開口を有する。カバー本体10は、軟質のシート材により形成されているため、スペアタイヤTの外形に倣って容易に変形可能である。つまり、本例においては、カバー本体10は、スペアタイヤTの下面全てを被覆していない。ただし、カバー本体10は、カバー本体10の変形に伴って、スペアタイヤTの下面の一部を被覆する場合もある。
【0022】
また、カバー本体10の周面12は、周方向全周に亘って連続して形成されるようにしても良いし、1または複数箇所において断続するスリット(図示せず)等を備えるようにしても良い。また、カバー本体10の袋状の底面11(図1図4の上面)は、全面に亘って面状に形成されるようにしても良いし、スリットまたは貫通穴(図示せず)等を有するようにしても良い。
【0023】
図1図3に示すように、カバー本体10の周面12には、ベルト挿通片31-33が固定されている。ベルト挿通片31-33は、カバー本体10と同種のシート材により形成されている。ベルト挿通片31-33は、カバー本体10の周方向に挿通するように、カバー本体10に固定されている。本例では、ベルト挿通片31-33は、カバー本体10に縫製により固定されており、カバー本体10の開口側の辺とカバー本体10の底面11側の辺が縫製されている。
【0024】
ベルト挿通片31(保護用ベルト挿通片)は、図1図3において最も左側に位置し、ベルト挿通片32(第一位置決め用ベルト挿通片)は、図1図3において中央付近であってベルト挿通片31に僅かに近接した位置に位置し、ベルト挿通片33(第二位置決め用ベルト挿通片)は、図1図3において最も右側に位置する。つまり、図3に示すように、周方向間隔は、大きい順に、保護用ベルト挿通片31と第二位置決め用ベルト挿通片33との間、第一位置決め用ベルト挿通片32と第二位置決め用ベルト挿通片33との間、保護用ベルト挿通片31と第一位置決め用ベルト挿通片32との間となる。
【0025】
なお、本例では、3つのベルト挿通片31-33を備えることとしたが、3以外としても良い。例えば、ベルト挿通片31,32を1つのベルト挿通片としても良い。また、ベルト挿通片31とベルト挿通片33との間であって、ベルト挿通片33寄りの位置にベルト挿通片を追加しても良い。
【0026】
また、スペアタイヤカバー1は、カバー本体10の開口を収縮するための紐部材40を備える。紐部材40は、図4に示すように、カバー本体10の開口付近に周方向に全周に亘って配置されている。従って、紐部材の長さによって、カバー本体10の開口の大きさを変更することができる。紐部材40は、伸縮可能な材料を用いても良いし、伸縮不能な材料を用いても良い。伸縮可能な材料としての紐部材40は、例えば、ゴム紐である。
【0027】
ベルト20は、カバー本体10に比べて引張強度の高い材質により形成されている。ベルト20は、例えば、織布により形成される。また、ベルト20は、撓み変形可能である。図1に示すように、ベルト20は、結合位置Paから3方向に延在するように構成されている。そして、ベルト20は、カバー本体10の周面12の少なくとも一部に沿って保持される。
【0028】
本例においては、ベルト20は、図1に示すように、第一ベルト片21、第二ベルト片22、第三ベルト片23を備えて構成される。
【0029】
第一ベルト片21は、図5に示すように、第一ベルト本体21aと、第一係止部材21bとを備える。第一ベルト本体21aは、織布等により形成される。第一ベルト本体21aは、第一周面部21a1、第一係止延在部21a2、第一連結延在部21a3、第一連結側端21a4を備える。
【0030】
第一周面部21a1は、カバー本体10の周面12に沿って保持される。本例では、第一周面部21a1は、ベルト挿通片31,32に挿通されることで、カバー本体10の周面12に沿って保持される。第一係止延在部21a2は、第一周面部21a1の一端に接続され、カバー本体10の周面12から離れる方向に延在する。第一係止延在部21a2の自由端側が、荷台50(図10に示す)に係止される。第一連結延在部21a3は、第一周面部21a1の他端に接続され、カバー本体10の周面12から離れる方向に延在する。第一連結延在部21a3の自由端が、第一連結側端21a4となる。
【0031】
第一係止部材21bは、第一ベルト本体21aの第一係止延在部21a2の自由端に固定されている。つまり、第一係止部材21bは、結合位置Paから3方向に延在するベルト20の外方端の一つを構成する。第一係止部材21bは、例えば、係脱可能なフックにより構成されており、車両の荷台50に係止される。第一係止部材21bは、係脱可能であれば、フック以外の構成を採用することができる。また、第一係止部材21bは、金属製でも、樹脂製でも良い。
【0032】
第二ベルト片22は、図6に示すように、第二ベルト本体22aと、第二係止部材22bと、環状部材22cとを備える。第二ベルト本体22aは、第一ベルト本体21aと同様に、織布等により形成される。第二ベルト本体22aは、第二周面部22a1、第二係止延在部22a2、第二連結延在部22a3を備える。
【0033】
第二周面部22a1は、カバー本体10の周面12に沿って保持される。本例では、第二周面部22a1は、ベルト挿通片33に挿通されることで、カバー本体10の周面12に沿って保持される。第二係止延在部22a2は、第二周面部22a1の一端に接続され、カバー本体10の周面12から離れる方向に延在する。第二係止延在部22a2の自由端側が、荷台50(図10に示す)に係止される。第二連結延在部22a3は、第二周面部22a1の他端に接続され、カバー本体10の周面12から離れる方向に延在する。
【0034】
第二係止部材22bは、第二ベルト本体22aの第二係止延在部22a2の自由端に固定されている。つまり、第二係止部材22bは、結合位置Paから3方向に延在するベルト20の外方端の一つを構成する。第二係止部材22bは、第一係止部材21bと同様に、例えば、係脱可能なフックにより構成されており、車両の荷台50に係止される。第二係止部材22bは、係脱可能であれば、フック以外の構成を採用することができる。また、第二係止部材22bは、金属製でも、樹脂製でも良い。
【0035】
環状部材22cは、第二ベルト本体22aの第二連結延在部22a3の自由端に固定されている。つまり、環状部材22cは、結合位置Paから3方向に延在するベルト20の内方端を構成する。環状部材22cは、金属製でも、樹脂製でも良い。環状部材22cの位置が、結合位置Paを構成する。
【0036】
第三ベルト片23は、図7に示すように、第三ベルト本体23aと、第三係止部材23bと、連結部材23cとを備える。第三ベルト本体23aは、第一ベルト本体21aと同様に、織布等により形成される。第三係止部材23bは、第三ベルト本体23aの一端に固定されている。つまり、第三係止部材23bは、結合位置Paから3方向に延在するベルト20の外方端の一つを構成する。第三係止部材23bは、第一係止部材21bと同様に、例えば、係脱可能なフックにより構成されており、車両の荷台50に係止される。第三係止部材23bは、係脱可能であれば、フック以外の構成を採用することができる。連結部材23cは、第三ベルト本体23aの他端に固定されている。連結部材23cは、例えば、バックルにより構成されている。連結部材23cは、第一ベルト本体21aを挿通させた状態で位置決めすることができる。
【0037】
第一ベルト片21、第二ベルト片22および第三ベルト片23は、図1に示すように、相互に接続されている。第一ベルト片21の第一ベルト本体21aが、保護用ベルト挿通片31および第一位置決め用ベルト挿通片32に挿通されている。第二ベルト片22の第二ベルト本体22aが、第二位置決め用ベルト挿通片33に挿通されている。
【0038】
第二ベルト片22の環状部材22cに、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aの第一連結延在部21a3が挿通されている。そして、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aの第一連結延在部21a3における環状部材22cに挿通される位置、および、第二ベルト片22における環状部材22cの位置が、第一ベルト片21と第二ベルト片との連結位置となる。ここで、環状部材22cを用いることにより、第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置を調整可能とすることができる。本例では、第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置は、カバー本体10の周面12から離れた位置に位置する。
【0039】
また、第三ベルト片23の連結部材23cは、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aの第一連結延在部21a3が挿通されている。そして、連結部材23cは、第一連結延在部21a3に対して位置決め可能となる。連結部材23cは、第二ベルト片22の環状部材22cと第三ベルト片23の第三係止部材23bとの間に位置する。
【0040】
連結部材23cは、第一ベルト片21において第一係止部材21bと連結部材23cに位置決めされる第一ベルト本体21aとの長さを調整することができる。そして、第一係止部材21b、第二係止部材22bおよび第三係止部材23bが車両の荷台50に係止された状態において、第一ベルト片21、第二ベルト片22および第三ベルト片23の張力を調整可能に作用する。
【0041】
(2-2.スペアタイヤ被覆状態の車両用スペアタイヤカバー1)
次に、スペアタイヤTをスペアタイヤカバー1により被覆した状態について、図8および図9を参照して説明する。スペアタイヤTを、スペアタイヤカバー1のカバー本体10により被覆する。つまり、スペアタイヤTを横置きした状態において、カバー本体10の袋状の底面11がスペアタイヤTの上面を被覆し、カバー本体10の袋状の周面12がスペアタイヤTの外周面を被覆する。カバー本体10の開口に設けられた紐部材40により、カバー本体10の開口が収縮されている。
【0042】
第一ベルト片21の第一係止延在部21a2と第二ベルト片22の第二係止延在部22a2は、同様の方向に延在している。そして、スペアタイヤTにおいて、位置P1は、カバー本体10の周面12において、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aにおける第一周面部21a1と第一係止延在部21a2との接続位置と、第二ベルト片22の第二ベルト本体22aにおける第二周面部22a1と第二係止延在部22a2との接続位置との間に位置する。スペアタイヤTの位置P1は、カバー本体10の周面12において、第一周面部21a1と第一係止延在部21a2との接続位置と、第二周面部22a1と第二係止延在部22a2との接続位置との、中央付近に位置する。
【0043】
また、スペアタイヤTにおいて、位置P2は、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aの第一周面部21a1の範囲に位置する。本例では、位置P2は、保護用ベルト挿通片31の位置に位置する。
【0044】
(2-3.車両の荷台50の構成)
スペアタイヤTを載置する車両の荷台50の構成について、図10および図11を参照して説明する。荷台50は、車両において荷物を載置する台である。車両が、車室内の後方に荷室(ラゲッジ、トランクとも称する)を有する場合において、荷台50は、荷室の一部を構成する。また、荷台50は、車室外における荷台を構成する場合を含む。つまり、荷台50は、SUV(Sport Utility Vehicle)等のハッチバック車の後方荷室、ノッチバックセダンのトランク等を含む。
【0045】
荷台50は、床面51と、壁面52とを備える。床面51は、ほぼ全面に亘って水平な平面を有する。少なくとも、床面51の面積は、スペアタイヤTを横置きした場合に、スペアタイヤTよりも広い面積を有する。床面51は、車両左側にスペアタイヤTを載置する領域51a、車両右側にスペアタイヤTを載置しない領域51bを備える。
【0046】
荷台50の壁面52は、一対の側壁、後壁を備える。本例において、壁面52は、主壁面52a、副壁面52b、背壁面52cを区画して備える。主壁面52aは、車両の一方の側壁(例えば、左側壁)を主として含み、本例では後壁の左側の一部を含む。主壁面52aは、スペアタイヤTの位置P1を押し付けるための壁面を構成する。
【0047】
副壁面52bは、車両の後壁の一部を含む。副壁面52bは、後壁のうち、主壁面52a寄りの壁面である。副壁面52bは、スペアタイヤTの位置P2を押し付けるための壁面を構成する。背壁面52cは、主壁面52aから離れた壁面、本例では、他方の側壁を主として含み、本例では後壁の右側の一部を含む。
【0048】
荷台50は、複数の被係止部材53-56を備える。被係止部材53は、主壁面52aのうち車両後寄りに位置する。被係止部材54は、主壁面52aのうち車両前寄りに位置する。被係止部材55は、背壁面52cのうち車両後寄りに位置する。被係止部材56は、背壁面52cのうち車両前寄りに位置する。被係止部材53-56は、例えば、金属製または樹脂製の環状部材である。
【0049】
(2-4.スペアタイヤTを載置した状態)
スペアタイヤカバー1に被覆されたスペアタイヤTを荷台50に載置した状態について、図11を参照して説明する。スペアタイヤカバー1に被覆されたスペアタイヤTを、荷台50の床面51の載置領域51a(図10に示す)に載置する。
【0050】
第一ベルト片21の第一係止部材21bが、主壁面52aに位置する被係止部材53に係止される。第二ベルト片22の第二係止部材22bが、主壁面52aに位置する被係止部材54に係止される。第三ベルト片23の第三係止部材23bが、背壁面52cに位置する被係止部材55に係止される。そして、第三ベルト片23の連結部材23cにおいて、第一ベルト片21の第一ベルト本体21aの第一連結延在部21a3の位置を調整することにより、第一ベルト片21、第二ベルト片22および第三ベルト片23が所定張力を有する状態とされる。
【0051】
従って、第一ベルト片21の第一周面部21a1と第二ベルト片22の第二周面部22a1とは、第一連結延在部21a3、第二連結延在部22a3および環状部材22cを介して連結されている。つまり、第一ベルト片21と第二ベルト片22とが、U字状をなしており、U字状の両端が荷台50の主壁面52aに係止されている。
【0052】
第一ベルト片21の第一係止延在部21a2の自由端は、第一係止部材21bおよび被係止部材53を介して、荷台50の主壁面52aに係止されている。また、第二ベルト片22の第二係止延在部22a2の自由端は、第二係止部材22bおよび被係止部材54を介して、荷台50の主壁面52aに係止されている。そして、第一係止延在部21a2の係止位置と第二係止延在部22a2の係止位置とは、主壁面52aにおいてスペアタイヤTの位置P1(主押付位置)を基準として、反対の位置に位置する。換言すると、主壁面52aにおいて、第一係止延在部21a2の係止位置と第二係止延在部22a2の係止位置との間に、スペアタイヤTの位置P1(主押付位置)が位置する。
【0053】
従って、第一ベルト片21と第二ベルト片22とによってU字状をなし、U字状の両端が主壁面52aに係止されることによって、スペアタイヤTの位置P1(主押付位置)が主壁面52aに押し付けられた状態となる。従って、第一ベルト片21および第二ベルト片22が主壁面52aに係止された状態において、スペアタイヤTは主壁面52aに押し付けられた状態となるため、スペアタイヤTは荷台50に位置決めされた状態となる。
【0054】
さらに、第一ベルト片21と第二ベルト片22とがU字状を形成することによって、第一ベルト片21と第二ベルト片22とが、スペアタイヤTが主壁面52aから離間しようとする力を受ける。従って、走行中において、スペアタイヤTが主壁面52aから離間しようとした場合に、第一ベルト片21および第二ベルト片22の抗力によって、スペアタイヤTが主壁面52aに押し付けられた状態を維持できる。さらに、カバー本体10が、当該力を受ける必要がないため、カバー本体10の引張強度を高くする必要がなく、ベルト20のみが、十分な引張強度を有すれば良い。従って、カバー本体10のコストを安価にすることができる。
【0055】
第一ベルト片21と第二ベルト片22とがU字状をなしている点において、より詳細には、第一係止延在部21a2および第二係止延在部22a2のそれぞれが、スペアタイヤTの外周面の接線方向に延在する。従って、スペアタイヤTが主壁面52aから離間しようとした場合に、第一係止延在部21a2および第二係止延在部22a2は、第一周面部21a1および第二周面部22a1に当該力を効率的に伝達することができる。つまり、第一周面部21a1および第二周面部22a1が、当該力を面で受けることになる。このことから、第一ベルト片21と第二ベルト片22とによって、スペアタイヤTの位置P1(主押付位置)を主壁面52aに押し付けた状態をより効果的に維持することができる。
【0056】
さらに、第一係止延在部21a2および第二係止延在部22a2は、平行に近い状態で配置されている。より詳細には、第一係止延在部21a2および第二係止延在部22a2は、平行に対してプラスマイナス20°の範囲に配置されている。このことにより、スペアタイヤTを車両前後方向に移動することを抑制することができる。
【0057】
特に、本例では、第三ベルト片23を使用して、スペアタイヤTをより強固に固定している。つまり、第三ベルト片23は、第一ベルト片21に連結され、第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置(環状部材22cの位置)よりも、スペアタイヤTの外周面の位置P1(主押付位置)の背面から離れる方向に延在する。そして、第三ベルト片23は、荷台50において主壁面52aから離れた背壁面52cに係止される。より詳細には、第三ベルト片23の第三係止部材23bは、背壁面52cに設けられた被係止部材55に係止される。
【0058】
なお、ここでは、第三ベルト片23は、第一ベルト片21に連結することとしたが、第二ベルト片22に連結するようにしても良い。また、第三ベルト片23は、背壁面52cに係止したが、荷台50の床面51のうち、主壁面52aから離れた面51bに連結するようにしても良い。
【0059】
第三ベルト片23によって、第一ベルト片21および第二ベルト片22の姿勢を維持することができる。従って、第三ベルト片23によって、スペアタイヤTの位置を維持する力がより高くなる。
【0060】
ここで、第三ベルト片23は、被係止部材56ではなく、被係止部材55に係止している。つまり、第三ベルト片23は、荷台50において、スペアタイヤTの中心位置P0よりも車両後方の位置に係止している。第三ベルト片23の係止位置をこのような位置とすることで、スペアタイヤTに対して、車両後方へ向かう力を付与することができる。つまり、図11に示すように、スペアタイヤTの中心位置P0が受ける力Fが、車両左方向の成分と車両後方の成分とを合成した方向となる。
【0061】
このように、スペアタイヤTに対して車両後方への力を付与することによって、スペアタイヤTの位置P2(副押付位置)を、荷台50の副壁面52bに押し付けた状態とすることができる。つまり、スペアタイヤTは、位置P1(主押付位置)が主壁面52aに押し付けられ、位置P2が(副押付位置)が副壁面52bに押し付けられている。主壁面52aのうちスペアタイヤTの位置P1が押し付けられる位置の面接線と、副壁面52bのうちスペアタイヤTの位置P2が押し付けられる位置の面接線とは、角度を有している。
【0062】
従って、スペアタイヤTが位置P1および位置P2の2か所で荷台の50の壁面52に押し付けられた状態が維持されることによって、スペアタイヤTがより水平の全方向に対して位置決めすることができる。
【0063】
さらに、図11に示すように、第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置において、第一ベルト片21の第一連結延在部21a3における第一周面部21a1側の部位と、第三ベルト片23とのなす角度をθとする。ここで、第三ベルト片23は、第一連結延在部21a3において、環状部材22cと連結部材23cとの間の部位と、同一方向に延在している。従って、なす角度θは、第一連結延在部21a3における第一周面部21a1側の部位と、第一連結延在部21a3において環状部材22cよりも第三ベルト片23側の部位とのなす角度に等しい。
【0064】
第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置において、第二ベルト片22の第二連結延在部22a3における第二周面部22a1側の部位と、第三ベルト片23とのなす角度をφとする。そして、なす角度θは、なす角度φよりも小さくなるように設定されている。換言すると、第三ベルト片23の第三係止部材23bとスペアタイヤTの中心位置P0とを結ぶ直線に対して、第一ベルト片21と第二ベルト片22との連結位置が、車両前方に位置する。このように、なす角度θをなす角度φより小さく設定することにより、スペアタイヤTの位置P2(副押付位置)を荷台50の副壁面52bに押し付ける力を確実に発揮させることができる。
【0065】
さらに、第一ベルト片21の第一連結延在部21a3が、第二ベルト片22の環状部材22cを挿通して、第三ベルト片23の連結部材23cに連結されている。このことにより、環状部材22cが、スペアタイヤTに近づく方向に力が発生する。従って、第一周面部21a1の周長および第二周面部22a1の周長を長くすることができる。つまり、第一周面部21a1および第二周面部22a1により、スペアタイヤTの位置決め効果を高めることができる。
【0066】
上述したように、スペアタイヤTの位置P2(副押付位置)が、荷台50の副壁面52bに押し付けられた状態となる。ここで、スペアタイヤTの位置P2(副押付位置)と副壁面52bとの間には、保護用ベルト挿通片31が挟まれた状態で位置する。つまり、当該位置において、第一ベルト片21が荷台50の副壁面52bに直接接触しない。従って、保護用ベルト挿通片31が、第一ベルト片21の保護作用を有する。その結果、第一ベルト片21の寿命を長くすることができる。
【0067】
また、ベルト挿通片31,32は、第一周面部21a1の周長よりも短く、ベルト挿通片33は、第二周面部22a1の周長よりも短い。第一ベルト片21および第二ベルト片22は、ベルト挿通片31,32,33を挿通しなければならないが、ベルト挿通片31,32,33の周長が短いことにより、挿通しやすくなる。
【0068】
(3.第二例)
第二例のスペアタイヤカバー2の構成について図12を参照して説明する。第二例のスペアタイヤカバー2は、第一例のスペアタイヤカバー1を構成するベルト挿通片31,32,33を備えない。つまり、第二例のスペアタイヤカバー2は、ベルト20が、結合位置Paから3方向に延在し、それぞれの外方端が荷台50の壁面52または床面51に係止されている。また、ベルト20の一部がカバー本体10の周面に保持されている。
【0069】
さらに、スペアタイヤカバー2は、第一ベルト片21がカバー本体10の周面12に縫製により固定される。第一ベルト片21の固定箇所31a,32aは、第一例におけるベルト挿通片31,32と同一位置である。また、スペアタイヤカバー2は、第二ベルト片22がカバー本体10の周面12に縫製により固定される。第二ベルト片22の固定箇所33aは、第一例におけるベルト挿通片33と同一位置である。この場合、第一ベルト片21および第二ベルト片22が、カバー本体10と一体であるため、ベルト片を挿通する作業が不要となる。
【0070】
(4.第三例)
第三例のスペアタイヤカバー3の構成について図13を参照して説明する。第三例のスペアタイヤカバー3は、第一例のスペアタイヤカバー1を構成する第三ベルト片23を備えない。つまり、第三例のスペアタイヤカバー3は、ベルト20が、結合位置Paから2方向に延在し、それぞれの外方端が荷台50の壁面52または床面51に係止されている。また、ベルト20の一部がカバー本体10の周面に保持されている。
【0071】
第一ベルト片24は、第一ベルト本体24a、第一係止部材24b、連結部材24cを備える。第一ベルト本体24aは、ベルト挿通片31,32,33に挿通される。第一係止部材24bは、第一ベルト本体24aの一端に固定されており、荷台50の主壁面52aに設けられる被係止部材53に係止される。連結部材24cは、第一ベルト本体24aの他端に固定されている。連結部材24cは、例えば、バックルにより構成される。
【0072】
第二ベルト片25は、第二ベルト本体25a、第二係止部材25bを備える。第二ベルト本体25aは、第一ベルト片24の連結部材24cに、連結位置を調整可能に連結される。第二係止部材25bは、第二ベルト本体25aの一端に固定されており、荷台50の主壁面52aに設けられる被係止部材54に係止される。第二ベルト本体25aの他端25cは、自由端を構成する。
【0073】
この場合、第一例における第一ベルト片21と第二ベルト片22による効果と同様の効果を奏する。なお、ベルト挿通片31,32,33に代えて、第二例のように縫製に置換することもできる。
【0074】
(5.第四例)
第四例のスペアタイヤカバー4の構成について、図14を参照して説明する。第四例のスペアタイヤカバー4は、第一例のスペアタイヤカバー1に対して、ベルト120が異なる。第四例のスペアタイヤカバー4は、ベルト120がカバー本体10の上面に位置する結合位置Paから3方向に延在し、それぞれの外方端が荷台50の壁面52または床面51に係止されている。また、ベルト120の一部が、カバー本体10の上面に保持されている。以下に、スペアタイヤカバー4について、詳細に説明する。
【0075】
スペアタイヤカバー4は、カバー本体10と、ベルト120と、ベルト挿通片131と、紐部材40とを備える。カバー本体10は、上述した第一例のスペアタイヤカバー1を構成するカバー本体10と同一である。ベルト挿通片131は、カバー本体10の上面に固定されている。ベルト挿通片131は、カバー本体10の上面において、中心に位置する結合位置Paから径方向に向かう方向に挿通されている。ベルト挿通片131は、カバー本体10に縫製により固定されている。
【0076】
ベルト120は、カバー本体10に比べて引張強度の高い材質により形成されている。ベルト120は、例えば、織布により形成され、撓み変形可能である。ベルト120は、カバー本体10の上面に保持されており、カバー本体10の上面に位置する結合位置Paから3方向に延在するように構成される。ベルト120は、第一ベルト片121、第二ベルト片122、第三ベルト片123を備えて構成される。
【0077】
第一ベルト片121は、V字状に折り曲げられた第一ベルト本体121aと、第一係止部材121bと、第二係止部材121cとを備える。第一ベルト本体121aは、織布等により形成される。第一ベルト本体121aにおけるV字状の折れ曲がり部が、結合位置Paに一致する。詳細には、第一ベルト本体121aにおけるV字状の折れ曲がり部(結合位置Pa)が、カバー本体10の中心に位置する。
【0078】
第一ベルト本体121aのV字状の一方の辺は、折れ曲がり部(結合位置Pa)から、荷台50の主壁面52aに設けられた被係止部材53に向かって直線状に延在する。第一ベルト本体121aのV字状の他方の辺は、折れ曲がり部(結合位置Pa)から、主壁面52aに設けられた被係止部材54に向かって直線状に延在する。
【0079】
さらに、第一ベルト本体121aのV字状の一方の辺のうち一部分132は、カバー本体10の上面に縫製により固定される。また、第一ベルト本体121aのV字状の他方の辺のうち一部分133は、カバー本体10の上面に縫製により固定される。第一ベルト本体121aにおいて、V字状の折れ曲がり部の内角(小さい方の角度)は、例えば、50°-100°の範囲に形成されている。
【0080】
第一係止部材121bは、第一ベルト本体121aのV字状の一方の辺の自由端に固定されている。つまり、第一係止部材121bは、結合位置Paから3方向に延在するベルト120の外方端の一つを構成する。第一係止部材121bは、例えば、フックにより構成されており、車両の荷台50の主壁面52aに設けられた被係止部材53に係止される。
【0081】
第二係止部材121cは、第一ベルト本体121aのV字状の他方の辺の自由端に固定されている。つまり、第二係止部材121cは、結合位置Paから3方向に延在するベルト120の外方端の一つを構成する。第二係止部材121cは、例えば、フックにより構成されており、車両の荷台50の主壁面52aに設けられた被係止部材54に係止される。なお、第一係止部材121bおよび第二係止部材121cは、係脱可能であれば、フック以外の構成を採用することができる。また、第一係止部材121bおよび第二係止部材121cは、金属製でも、樹脂製でも良い。
【0082】
第二ベルト片122は、第二ベルト本体122a、環状部材122b、連結部材122cを備えて構成される。第二ベルト本体122aは、第一ベルト本体121aと同様に、織布等により形成される。第二ベルト本体122aは、第一ベルト本体121aのV字状の外角(大きい方の角度)の範囲のほぼ中央付近の方向に延在する。第二ベルト本体122aは、ベルト挿通片131を挿通する。
【0083】
環状部材122bは、第二ベルト本体122aの一端に連結されている。環状部材122bは、さらに、第一ベルト本体121aのV字状の折れ曲がり部(結合位置Pa)に連結されている。つまり、環状部材122bは、結合位置Paを位置する。そして、第二ベルト本体122aは、結合位置Paから延在し、且つ、ベルト挿通片131を挿通する。本例では、環状部材122bは、第一ベルト本体121aおよび第二ベルト本体122aに取外し不能に固定されている。ただし、環状部材122bは、第一ベルト本体121aおよび第二ベルト本体122aに対して、離脱可能に係止されるようにしても良い。連結部材122cは、第二ベルト本体122aの他端に連結されている。連結部材122cは、例えば、バックルにより構成されている。
【0084】
第三ベルト片123は、第三ベルト本体123aと、第三係止部材123bとを備える。第三ベルト本体123aは、第一ベルト本体121aと同様に、織布等により形成される。第三ベルト本体123aの一端は、第二ベルト片122の連結部材122cに挿通した状態で位置決めされる。第三係止部材123bは、第三ベルト本体123aの他端に固定されている。第三係止部材123bは、荷台50の背壁面52cに設けられた被係止部材55に係止される。
【0085】
ここでは、第三ベルト片123は、背壁面52cに係止したが、荷台50の床面51のうち、主壁面52aから離れた面51b(図10に示す)に連結するようにしても良い。
【0086】
第二ベルト片122の連結部材122cにおいて、第三ベルト本体123aの位置を調整することにより、第二ベルト片122および第三ベルト片123が所定張力を有する状態とされる。この状態において、第二ベルト片122及び第三ベルト片123の張力を高くすることにより、第一ベルト片121の張力も高くなる。なお、連結部材122cは、第二ベルト片122に設けたが、第三ベルト片123に設けても良い。
【0087】
そして、第二ベルト片122および第三ベルト片123が、結合位置Paから延在する3方向の1つを構成する。そして、第三ベルト片123の第三係止部材123bは、結合位置Paから3方向に延在するベルト120の外方端の一つを構成する。第三係止部材123bは、例えば、フックにより構成されており、車両の荷台50の背壁面52cに設けられた被係止部材55に係止される。なお、第三係止部材123bは、係脱可能であれば、フック以外の構成を採用することができる。また、第三係止部材123bは、金属製でも、樹脂製でも良い。
【0088】
ここで、被係止部材53,54,55は、荷台50に載置されたスペアタイヤTの上面よりも下方に位置する。従って、スペアタイヤカバー4のベルト120が、スペアタイヤTを荷台50の床面51に押し付ける力を発揮する。従って、車両上下方向の振動が生じたとしても、スペアタイヤTを確実に位置決めすることができる。
【0089】
さらに、第一ベルト片121の長さを調整することにより、スペアタイヤTを主壁面52a寄りの位置に位置決めすることができる。特に、スペアタイヤTを主壁面52aに押し付けた状態とすることもできる。この状態であれば、スペアタイヤTは、車両上下方向に振動する場合に加えて、車両前後方向または車両左右方向へ移動する力が生じる場合であっても、荷台50に位置決めされる。
【0090】
(6.第五例)
第五例のスペアタイヤカバーは、第一例のスペアタイヤカバー1において、さらに、第四例のスペアタイヤカバー4におけるベルト120を備える構成である。つまり、第五例のスペアタイヤカバーは、カバー本体10と、第一例のベルト20である周面ベルトと、第四例のベルト120である上面ベルトとを備える。
【0091】
このように、周面ベルトおよび上面ベルトを備えることにより、周面ベルト(20)による効果、および、上面ベルト(120)による効果を奏することができる。つまり、当該スペアタイヤカバーによって、スペアタイヤTはより確実に荷台50に位置決めできる。
【0092】
なお、第二例のスペアタイヤカバー2と第四例のスペアタイヤカバー4との組み合わせとしても良いし、第三例のスペアタイヤカバー3と第四例のスペアタイヤカバー4との組み合わせとしても良い。
【0093】
(7.その他)
第一例、第二例および第四例のスペアタイヤカバー1,2,4においては、ベルト20,120が結合位置Paから3方向に延在するようにした。この他に、ベルト20,120は、結合位置Paから、4方向以上に延在するようにしても良い。
【符号の説明】
【0094】
1,2,3,4:車両用スペアタイヤカバー、 10:カバー本体、 11:底面、 12:周面、 20:ベルト、 21:第一ベルト片、 21a:第一ベルト本体、 21a1:第一周面部、 21a2:第一係止延在部、 21a3:第一連結延在部、 21a4:第一連結側端、 21b:第一係止部材、 22:第二ベルト片、 22a:第二ベルト本体、 22a1:第二周面部、 22a2:第二係止延在部、 22a3:第二連結延在部、 22b:第二係止部材、 22c:環状部材、 23:第三ベルト片、 23a:第三ベルト本体、 23b:第三係止部材、 23c:連結部材、 24:第一ベルト片、 24a:第一ベルト本体、 24b:第一係止部材、 24c:連結部材、 25:第二ベルト片、 25a:第二ベルト本体、 25b:第二係止部材、 31:保護用ベルト挿通片、 31a,32a,33a:固定箇所、 32:第一位置決め用ベルト挿通片、 33:第二位置決め用ベルト挿通片、 40:紐部材、 50:荷台、 51:床面、 52:壁面、 52a:主壁面、 52b:副壁面、 52c:背壁面、 53-56:被係止部材、 120:ベルト、 121:第一ベルト片、 121a:第一ベルト本体、 121b:第一係止部材、 121c:第二係止部材、 122:第二ベルト片、 122a:第二ベルト本体、 122b:環状部材、 122c:連結部材、 123:第三ベルト片、 123a:第三ベルト本体、 123b:第三係止部材、 P0:中心位置、 P1:主押付位置、 P2:副押付位置、 Pa:結合位置、 T:スペアタイヤ
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