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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021306
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】水栓システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220126BHJP
   E03C 1/05 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
E03C1/042 F
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104527
(22)【出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020124626
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】谷 匠平
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩平
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BE07
2D060CA04
2D060CA11
(57)【要約】
【課題】吐水部に手を触れることなく吐水部を回動可能とすることで、各種不都合の発生をより確実に防止可能な水栓システムを提供する。
【解決手段】水栓システム1は、先端側に吐水口10aを有してなる水栓装置14を備える。水栓システム1には、通電により動作可能な通電動作部を有する回動装置と、使用者が手を触れることなく操作可能に構成された、前記通電動作部を動作させるための操作部8とが設けられる。そして、操作部8に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、吐水口10aが使用者から見て左右に回動するように水栓装置14が回動可能に構成される。これにより、水栓装置14や操作部8に手を触れることなく、吐水口10aを回動させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の取付対象部に取付けられ、槽体における貯水部に対し吐水する吐水口を有してなる水栓装置を備えた水栓システムであって、
通電により動作可能な通電動作部を有する回動装置と、
使用者が手を触れることなく操作可能に構成された、前記通電動作部を動作させるための操作部とを備え、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記吐水口が使用者から見て左右に回動するように前記水栓装置が回動可能に構成されていることを特徴とする水栓システム。
【請求項2】
前記取付対象部は、使用者が視認可能な表側空間、及び、使用者が視認不能又は困難な裏側空間を画するものであり、
前記回動装置は、少なくとも当該通電動作部が前記裏側空間に設置されるように構成されており、
前記水栓装置は、
少なくとも一部が前記表側空間に配置されるとともに、前記通電動作部の動作に伴い回動可能な水栓本体部と、
前記水栓本体部のうち前記表側空間に位置する部位から前記貯水部の上方位置に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部とを有し、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記水栓本体部が回動するとともに、当該水栓本体部の回動に伴い、前記吐水部及び前記吐水口が使用者から見て左右に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓システム。
【請求項3】
前記回動装置は、前記取付対象部に貫通形成された孔部を通り、前記通電動作部の動作による駆動力を前記裏側空間から前記表側空間へと伝達する縦貫伝達部を備え、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記縦貫伝達部を介して、前記水栓本体部のうち前記表側空間に位置する部位へと前記通電動作部の動作による駆動力が伝達されて、当該水栓本体部が回動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の水栓システム。
【請求項4】
前記水栓本体部は、前記取付対象部に貫通形成された取付孔を通った状態で設置されており、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記水栓本体部のうち前記裏側空間に位置する部位へと前記通電動作部の動作による駆動力が伝達されて、当該水栓本体部が回動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の水栓システム。
【請求項5】
前記操作部は、使用者における手以外の部位を用いて操作可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項6】
前記操作部は、接近した被検知物を非接触で検知可能であり、被検知物を検知したときに所定の検知信号を出力する非接触式センサを備え、
前記回動装置は、前記検知信号の出力に基づき、前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項7】
前記水栓装置は、平面視したときに前記取付対象部側から前記貯水部側に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部を有し、
前記非接触式センサとして、前記吐水部の両側方であって使用者から見て左右に配置され、それぞれ前記検知信号を出力可能な第一センサ及び第二センサが設けられることを特徴とする請求項6に記載の水栓システム。
【請求項8】
前記水栓装置は、平面視したときに前記取付対象部側から前記貯水部側に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部を有し、
前記非接触式センサとして、前記吐水部の先端部であって使用者から見て左右に配置されるとともに、被検知物の検知範囲がそれぞれ左右に離れ、かつ、それぞれ前記検知信号を出力可能な第一センサ及び第二センサが設けられることを特徴とする請求項6に記載の水栓システム。
【請求項9】
前記回動装置は、前記第一センサから前記検知信号が出力されたときには前記吐水口が所定方向に回動する一方、前記第二センサから前記検知信号が出力されたときには前記所定方向とは反対方向に前記吐水口が回動するように、前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の水栓システム。
【請求項10】
前記回動装置は、前記第一センサ及び前記第二センサのそれぞれから前記検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じた方向に前記吐水口が回動するように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の水栓システム。
【請求項11】
前記回動装置は、前記吐水口の回動中において、前記検知信号が出力されたときには、前記吐水口の回動を停止させるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項12】
前記回動装置は、前記非接触式センサによる被検知物の検知が予め設定した所定時間以上継続したときに、前記吐水口を回動させるための前記通電動作部の動作制御が可能な状態となるように構成されていることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項13】
前記吐水口における吐水又は止水を切換可能な電磁弁を備えるとともに、
前記回動装置は、前記検知信号が出力されたときに、前記通電動作部又は前記電磁弁の動作を制御可能に構成されており、
前記回動装置は、前記非接触式センサから前記検知信号が出力されたときに前記通電動作部の動作制御が可能な状態である回動制御モード、又は、前記非接触式センサから前記検知信号が出力されたときに前記電磁弁の動作制御が可能な状態である吐止水制御モードに切換可能な切換手段を有することを特徴とする請求項6乃至12のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項14】
前記回動装置は、前記操作部に対する操作が予め設定された所定時間以上継続して行われないときに、前記吐水口が所定の設定位置に配置されるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項15】
前記回動装置は、前記操作部に対する操作が予め設定された所定の態様で行われたときに、前記吐水口が所定の設定位置に配置されるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水栓システム。
【請求項16】
前記水栓装置を回動させるための、前記通電動作部から伝達される駆動力の伝達経路を構成する伝達部を備え、
前記伝達部は、前記通電動作部の動作中において、前記水栓装置が回動不能又は回動困難な状態となったときに、前記駆動力の伝達を遮断可能なクラッチ部を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の水栓システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体へと吐水可能な吐水部を有してなる水栓システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水栓システムは、槽体(例えば、流し台や洗面器等)に対応して設けられており、使用者が所定の操作対象(例えば、操作レバーなど)を操作することにより、吐水又は止水の切換えなどが可能なものである。
【0003】
水栓システムは、所定の取付対象部(例えば、キッチンの流し台や洗面化粧台の洗面器、槽体近傍のカウンタなど)に立設された水栓本体部と、当該水栓本体部から槽体の上方位置に向けて延び、先端側に吐水口が形成されてなる吐水部とを備えた水栓装置を有している。また、水栓システムにおいて、水栓本体部に対し吐水部を水平方向に相対回動可能とすることで、吐水部ひいては吐水口の位置を使用者から見て左右に変更可能とする技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-144559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記技術においては、吐水口(吐水部)の位置を調節する際に、吐水部の先端側側方を手で押したり引いたりする必要がある。しかしながら、手には、水、泡(例えば、手洗いや洗顔、皿洗いなどによる泡)、汚れ(例えば、手に元々付着した汚れや調理に伴う汚れなど)、細菌、ウイルス等が付着していることがあるところ、上記技術では、吐水口の位置調節を行う際に、これらが吐水部に付着し得る。そのため、見栄えの低下や余計な清掃の手間が生じたり、衛生性の低下を招いたりするなどの各種不都合が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓装置に手を触れることなく吐水口を回動可能とすることで、上記各種不都合の発生をより確実に防止可能な水栓システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0008】
手段1.所定の取付対象部に取付けられ、槽体における貯水部に対し吐水する吐水口を有してなる水栓装置を備えた水栓システムであって、
通電により動作可能な通電動作部を有する回動装置と、
使用者が手を触れることなく操作可能に構成された、前記通電動作部を動作させるための操作部とを備え、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記吐水口が使用者から見て左右に回動するように前記水栓装置が回動可能に構成されていることを特徴とする水栓システム。
【0009】
上記手段1によれば、水栓システムは、通電により動作可能な通電動作部(例えばモータ等)を有する回動装置と、使用者が手を触れることなく操作可能に構成された、通電動作部を動作させるための操作部とを備えており、操作部に対する操作により通電動作部を動作させることで、吐水口が使用者から見て左右に回動するように水栓装置が回動するようになっている。従って、水栓装置や操作部に手を触れることなく、吐水口を回動させることができる。これにより、水栓装置や操作部を汚れにくくすることができ、見栄えの低下や余計な清掃の手間が生じることをより確実に防止できる。また、水栓装置や操作部に汚れや細菌、ウイルスなどが付着することに伴う衛生性の低下についてもより確実に防止可能となる。
【0010】
手段2.前記取付対象部は、使用者が視認可能な表側空間、及び、使用者が視認不能又は困難な裏側空間を画するものであり、
前記回動装置は、少なくとも当該通電動作部が前記裏側空間に設置されるように構成されており、
前記水栓装置は、
少なくとも一部が前記表側空間に配置されるとともに、前記通電動作部の動作に伴い回動可能な水栓本体部と、
前記水栓本体部のうち前記表側空間に位置する部位から前記貯水部の上方位置に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部とを有し、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記水栓本体部が回動するとともに、当該水栓本体部の回動に伴い、前記吐水部及び前記吐水口が使用者から見て左右に回動可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の水栓システム。
【0011】
上記手段2によれば、水栓装置の根元側部分に当たる水栓本体部を回動させることで、吐水部及び吐水口を回動させることができる。従って、吐水口の回動に係る構造の複雑化を抑えることができる。
【0012】
また、上記手段2によれば、回動装置における少なくとも通電動作部は、使用者が視認不能又は困難な裏側空間に配置される。従って、使用者から見てすっきりとした外観がより確実に呈されることとなり、外観品質の向上を図ることができる。さらに、通電動作部が裏側空間に配置されることで、水による通電動作部への悪影響をより確実に防止することができる。
【0013】
手段3.前記回動装置は、前記取付対象部に貫通形成された孔部を通り、前記通電動作部の動作による駆動力を前記裏側空間から前記表側空間へと伝達する縦貫伝達部を備え、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記縦貫伝達部を介して、前記水栓本体部のうち前記表側空間に位置する部位へと前記通電動作部の動作による駆動力が伝達されて、当該水栓本体部が回動するように構成されていることを特徴とする手段2に記載の水栓システム。
【0014】
上記手段3によれば、縦貫伝達部を介して水栓本体部のうち表側空間に位置する部位へと駆動力が伝達されるため、水栓本体部として取付対象部を貫通するものを用いる必要はない。これにより、水栓本体部の小型化(軽量化)を図ることができ、水栓本体部ひいては吐水口の回動に係る円滑性の向上を図ることができる。また、水栓本体部の下方において、給水管や給湯管、導水管などの設置スペースをより広く確保することができる。その結果、水栓装置における所期の機能を無理なく発揮させることがより容易に可能になるとともに、装置(システム)の設置に係る容易性を高めることができる。
【0015】
手段4.前記水栓本体部は、前記取付対象部に貫通形成された取付孔を通った状態で設置されており、
前記操作部に対する操作により前記通電動作部を動作させることで、前記水栓本体部のうち前記裏側空間に位置する部位へと前記通電動作部の動作による駆動力が伝達されて、当該水栓本体部が回動するように構成されていることを特徴とする手段2に記載の水栓システム。
【0016】
上記手段4によれば、水栓本体部のうち通電動作部の動作による駆動力が伝達される部位は、裏側空間に位置している。従って、水栓システムのうち表側空間に位置する部位の構造をより簡素化することができる。その結果、外観品質の向上を一層図ることができる。
【0017】
手段5.前記操作部は、使用者における手以外の部位を用いて操作可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の水栓システム。
【0018】
上記手段5によれば、操作部は、例えばフットスイッチなど、使用者における手以外の部位により操作可能なものとされている。従って、手が自由に使える状態で吐水口を回動させることができ、使用者にとっての利便性を高めることができる。
【0019】
手段6.前記操作部は、接近した被検知物を非接触で検知可能であり、被検知物を検知したときに所定の検知信号を出力する非接触式センサを備え、
前記回動装置は、前記検知信号の出力に基づき、前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の水栓システム。
【0020】
上記手段6によれば、非接触式センサが用いられるため、操作部に何ら触れることなく、吐水口を回動させることができる。従って、見栄えの低下や余計な清掃の手間が生じることを一層確実に防止でき、また、衛生性をより高めることができる。
【0021】
手段7.前記水栓装置は、平面視したときに前記取付対象部側から前記貯水部側に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部を有し、
前記非接触式センサとして、前記吐水部の両側方であって使用者から見て左右に配置され、それぞれ前記検知信号を出力可能な第一センサ及び第二センサが設けられることを特徴とする手段6に記載の水栓システム。
【0022】
尚、上記手段2,7における「吐水部」は同じものを指し、上記手段2に対し上記手段7が従属する場合において「吐水部」が複数存在することを意図するものではない。また、上記手段2に対し上記手段7が従属する場合、「吐水部」とは、上記手段2,7のそれぞれにて特定される各技術的事項を備えるものをいう。一方、上記手段2に対し上記手段7が従属しない場合、「吐水部」とは上記手段7にて特定される技術的特徴を備えるものをいう。これらの点は、下記の手段8においても同様である。
【0023】
上記手段7によれば、第一センサ及び第二センサは、吐水部の両側方であって使用者から見て左右に設けられるため、一方のセンサを利用して吐水口を回動させる際に、誤って他方のセンサによって被検知物が検知されるといった事態が生じにくい。従って、良好な操作性を得ることができる。
【0024】
手段8.前記水栓装置は、平面視したときに前記取付対象部側から前記貯水部側に向けて延び、先端側に前記吐水口を有してなる吐水部を有し、
前記非接触式センサとして、前記吐水部の先端部であって使用者から見て左右に配置されるとともに、被検知物の検知範囲がそれぞれ左右に離れ、かつ、それぞれ前記検知信号を出力可能な第一センサ及び第二センサが設けられることを特徴とする手段6に記載の水栓システム。
【0025】
上記手段8によれば、第一センサ及び第二センサは吐水部の先端部に設けられているため、両センサの視認性が良くなり、使用者にとっての利便性を高めることができる。
【0026】
また、手動で吐水口を回動させる際には、通常、吐水部の先端側が操作対象となるところ、上記手段8によれば、吐水部の先端部に操作対象となる非接触式センサが設けられている。そのため、手動操作の場合と似た操作によって直感的に吐水口の回動操作を行うことが可能となり、利便性を一段と向上させることができる。
【0027】
手段9.前記回動装置は、前記第一センサから前記検知信号が出力されたときには前記吐水口が所定方向に回動する一方、前記第二センサから前記検知信号が出力されたときには前記所定方向とは反対方向に前記吐水口が回動するように、前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段7又は8に記載の水栓システム。
【0028】
上記手段9によれば、第一センサが被検知物(例えば使用者の手)を検知して当該第一センサが検知信号を出力したときには、吐水口(吐水部)が所定方向に回動し、第二センサが被検知物を検知して当該第二センサが検知信号を出力したときには、吐水口が前記所定方向とは反対方向に回動可能となっている。例えば、使用者から見て、第一センサが右側に、第二センサが左側に設けられている場合においては、第一センサが被検知物を検知したとき、被検知物から遠ざかるようにして吐水口を使用者から見て左方向に回動させ、一方、第二センサが被検知物を検知したとき、被検知物から遠ざかるようにして吐水口を使用者から見て右方向に回動させるといったことができる。勿論、センサが被検知物を検知したとき、被検知物に近づくようにして吐水口を回動させるといった構成も可能となる。
【0029】
このように上記手段9によれば、使用者から見て左右に配置された各センサの一方が被検知物を検知したときに、その被検知物の位置に応じた方向に吐水口を回動させることができる。そのため、使用者において吐水口の位置操作手法がより容易に理解しやすいものとなり、吐水口をより直感的に回動させることが可能となる。これにより、使用者にとっての利便性を一層高めることができる。
【0030】
手段10.前記回動装置は、前記第一センサ及び前記第二センサのそれぞれから前記検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じた方向に前記吐水口が回動するように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段7又は8に記載の水栓システム。
【0031】
上記手段10によれば、第一センサ及び第二センサのそれぞれから検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じた方向に吐水口(吐水部)を回動させることができる。例えば、使用者から見て、第一センサが右側に、第二センサが左側に設けられている場合において、第一センサ及び第二センサの順に検知信号が出力されたとき、つまり、被検知物が右から左に動いているようなときには、吐水口を左方向に回動させ、一方、第二センサ及び第一センサの順に検知信号が出力されたとき、つまり、被検知物が左から右に動いているようなときには、吐水口を右方向に回動させるといったことができる。
【0032】
従って、上記手段10によれば、使用者から見て左右に配置された各センサが、移動する被検知物(例えば使用者の手)を検知したときに、その被検知物の移動方向に応じた方向に吐水口を回動させることができる。そのため、使用者が吐水部を手で持って回動させる場合と同様の操作感で、吐水口を回動させることができる。これにより、使用者にとっての利便性を一層高めることができる。
【0033】
また、単に一方のセンサによる被検知物の検知のみ、又は、両センサによる被検知物の同時検知によっては吐水口が回動しないようにすることができる。従って、吐水口が意図せず回動してしまうといった事態をより生じにくくすることができ、この点も、使用者にとっての利便性の向上に寄与する。
【0034】
手段11.前記回動装置は、前記吐水口の回動中において、前記検知信号が出力されたときには、前記吐水口の回動を停止させるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段6乃至10のいずれかに記載の水栓システム。
【0035】
上記手段11によれば、吐水口が回動している最中に、非接触式センサに被検知物を接近させて新たな検知信号が出力されたときには、吐水口の回動を停止させることができる。従って、吐水口の回動に係る操作をより容易に行うことが可能となる。
【0036】
手段12.前記回動装置は、前記非接触式センサによる被検知物の検知が予め設定した所定時間以上継続したときに、前記吐水口を回動させるための前記通電動作部の動作制御が可能な状態となるように構成されていることを特徴とする手段6乃至11のいずれかに記載の水栓システム。
【0037】
上記手段12によれば、回動装置は、非接触式センサによる被検知物の検知が所定時間以上継続したとき、例えば、検知信号が所定時間以上継続して出力されたときに、吐水口を回動させるための通電動作部の動作制御が可能な状態となる。つまり、非接触式センサによる被検知物の検知が所定時間以上継続したときになって初めて、吐水口を回動させるための制御を行うことが可能な状態となる。従って、吐水口の意図しない回動を一層生じにくくすることができ、利便性の更なる向上を図ることができる。
【0038】
手段13.前記吐水口における吐水又は止水を切換可能な電磁弁を備えるとともに、
前記回動装置は、前記検知信号が出力されたときに、前記通電動作部又は前記電磁弁の動作を制御可能に構成されており、
前記回動装置は、前記非接触式センサから前記検知信号が出力されたときに前記通電動作部の動作制御が可能な状態である回動制御モード、又は、前記非接触式センサから前記検知信号が出力されたときに前記電磁弁の動作制御が可能な状態である吐止水制御モードに切換可能な切換手段を有することを特徴とする手段6乃至12のいずれかに記載の水栓システム。
【0039】
上記手段13によれば、切換手段によって、非接触式センサから検知信号が出力されたときに通電動作部の動作制御が可能な状態である回動制御モード、又は、非接触式センサから検知信号が出力されたときに電磁弁の動作制御が可能な状態である吐止水制御モードに切換えることができる。すなわち、検知信号の出力に伴い制御される対象を、通電動作部又は電磁弁に切換えることができる。従って、吐水口の回動に係る操作と、吐水口における吐止水に係る操作とを共通の非接触式センサを用いて行うことができる。これにより、非接触式センサとは別に、吐止水を行うためのセンサを設けずに済み、水栓システムの簡素化を図ることができる。その結果、水栓システムの製造やメンテナンスに係るコストの抑制を図ることが可能となる。
【0040】
手段14.前記吐止水制御モードにおいて、前記第一センサから前記検知信号が出力されたときには前記吐水口において吐水が行われるように前記電磁弁の動作が制御され、前記第二センサから前記検知信号が出力されたときには前記吐水口において止水が行われるように前記電磁弁の動作が制御されるように構成されていることを特徴とする手段7又は8に従属する手段13に記載の水栓システム。
【0041】
上記手段14によれば、吐止水制御モードにおいて、第一センサを吐水に用い、第二センサを止水に用いることができる。従って、吐止水制御モードにおける両センサの役割が明確に分けられるため、吐止水に係る操作をより容易かつ直感的に行うことができ、使用者にとっての利便性をさらに高めることができる。
【0042】
手段15.前記吐止水制御モードにおいて、前記第一センサ及び前記第二センサのそれぞれから前記検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じて前記吐水口における吐水又は止水が行われるように前記電磁弁の動作が制御されるように構成されていることを特徴とする手段7又は8に従属する手段13に記載の水栓システム。
【0043】
上記手段15によれば、吐止水制御モードにおいて、例えば、第一センサ及び第二センサの順に検知信号が出力されたときには吐水を行い、その逆に第二センサ及び第一センサの順に検知信号が出力されたときには止水を行うといったことができる。従って、単に一方のセンサによる被検知物の検知のみによって吐水又は止水が行われる場合と比べて、吐水や止水が意図せずに行われてしまうといった事態をより生じにくくすることができる。これにより、使用者にとっての利便性の向上をより効果的に図ることができる。
【0044】
手段16.前記回動装置は、前記操作部に対する操作が予め設定された所定時間以上継続して行われないときに、前記吐水口が所定の設定位置に配置されるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至15のいずれかに記載の水栓システム。
【0045】
尚、「設定位置」としては、例えば、吐水口の回動可能範囲における中心位置(センター位置)や前記回動可能範囲における端の位置(サイド位置)などを挙げることができる。勿論、これらは一例であって、「設定位置」は、吐水口の回動可能範囲内の一定位置であればよく、使用条件や使用環境などに応じて適宜設定することができる(下記の手段17においても同様)。
【0046】
上記手段16によれば、操作部に対する操作(例えば非接触式センサによる被検知物の検知)が所定時間以上継続して行われないときに、吐水口を自動的に回動させて所定の設定位置に配置させる(戻す)ことができる。従って、水栓装置に手を触れることなく、吐水口を設定位置に戻すことができ、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0047】
また、吐水口は基本的には(直近の時期に回動していない限り)前記設定位置に配置されることとなり、使用者にとっては、吐水口が設定位置に配置されている状態が通常状態となる。従って、吐水口を回動させた後、ある程度の時間が経過してから水栓システムを使用するときにおいて、(吐水口が自動的に設定位置に戻るから)吐水口の位置が通常状態と異なるといった事態が生じにくくなる。これにより、使用者にとっての利便性向上をより図ることができる。
【0048】
手段17.前記回動装置は、前記操作部に対する操作が予め設定された所定の態様で行われたときに、前記吐水口が所定の設定位置に配置されるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段1乃至16のいずれかに記載の水栓システム。
【0049】
上記手段17によれば、被検知物の検知が予め設定された所定の態様で行われたとき、例えば、非接触式センサによって、所定時間内に被検知物の検知が一定回数以上行われたり、被検知物の検知が一定時間以上継続して行われたりしたとき、吐水口を自動的に回動させて設定位置に配置させる(戻す)ことができる。これにより、水栓装置に手を触れることなく、吐水口を設定位置に戻すことができ、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0050】
また、吐水口が設定位置に配置される(戻る)まで時間経過を待つ必要はなく、使用者の都合に合わせて水栓装置に手を触れることなく吐水口を設定位置に配置させることができる。従って、この点においても使用者にとっての利便性を向上させることができる。
【0051】
手段18.前記水栓装置を回動させるための、前記通電動作部から伝達される駆動力の伝達経路を構成する伝達部を備え、
前記伝達部は、前記通電動作部の動作中において、前記水栓装置が回動不能又は回動困難な状態となったときに、前記駆動力の伝達を遮断可能なクラッチ部を有することを特徴とする手段1乃至17のいずれかに記載の水栓システム。
【0052】
上記手段18によれば、例えば、通電動作部の動作中において、水栓装置が周囲の人や物と接触すること等により、水栓装置が回動不能又は回動困難な状態となったときには、クラッチ部によって、通電動作部から伝達される駆動力の伝達を遮断することができる。従って、水栓装置が回動不能又は回動困難な状態であるにも関わらず、通電動作部からの駆動力が水栓装置側へと伝達され続けるといった事態をより確実に防止することができる。その結果、使用者における安全性の向上、水栓装置の周囲物の保護、水栓システムにおける故障や破損の防止などの各種メリットを得ることができる。
【0053】
手段19.前記クラッチ部は、
前記伝達経路における前記通電動作部側に位置する回動可能な第一クラッチギアと、
前記第一クラッチギアに対し噛合されて当該第一クラッチギアから前記駆動力が伝達される回動可能な第二クラッチギアとを備え、
前記水栓装置が回動不能又は回動困難な状態となったときに、前記第二クラッチギアが回動不能又は回動困難な状態となるように構成されており、
前記第二クラッチギアが回動不能又は回動困難な状態となったときには、前記駆動力が作用することで、前記第一クラッチギア及び前記第二クラッチギアのうちの少なくとも一方が前記第一クラッチギア及び前記第二クラッチギアの噛合を解除する方向に移動して、前記第一クラッチギアから前記第二クラッチギアに対する前記駆動力の伝達が遮断されるように構成されていることを特徴とする手段18に記載の水栓システム。
【0054】
上記手段19によれば、第二クラッチギアが回動不能又は回動困難な状態となったときには、通電動作部から伝わる駆動力が作用することで、両クラッチギアの少なくとも一方が両クラッチギアの噛合を解除する方向に移動し、その結果、駆動力の伝達が遮断される。従って、2つのクラッチギアを用いた比較的簡便な構造によって、クラッチ部を構成することができる。これにより、水栓システムの製造やメンテナンスに係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0055】
手段20.前記第一クラッチギア及び前記第二クラッチギアのうちの少なくとも一方が前記第一クラッチギア及び前記第二クラッチギアの噛合を解除する方向に移動したことを検知可能なクラッチ作動検知手段を備え、
前記回動装置は、前記クラッチ作動検知手段による検知に基づき、前記水栓装置の回動を停止させるように前記通電動作部の動作を制御可能に構成されていることを特徴とする手段19に記載の水栓システム。
【0056】
上記手段20によれば、クラッチ作動検知手段によって、両クラッチギアのうちの少なくとも一方が両クラッチギアの噛合を解除する方向に移動したこと、つまり、クラッチ部が機能したことを検知することができ、回動装置は、クラッチ作動検知手段による検知に基づき、水栓装置の回動を停止させるように通電動作部の動作を制御する(動作を停止させる)ことができる。従って、クラッチ部が機能したときには、水栓装置のそれ以上の回動を停止させることができ、使用者における安全性の向上や水栓装置の周囲物の保護をより効果的に図ることができる。
【0057】
さらに、上記手段20によれば、水栓装置が回動可能範囲の限界に至って、第二クラッチギアが回動不能又は回動困難な状態となったときに、通電動作部の動作を停止させることができる。従って、水栓装置が回動可能範囲の限界に至ったときに通電動作部の動作を停止させるための特別な機構を設けずに済む。そのため、水栓システムの製造等に係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。
【0058】
また、クラッチ部やクラッチ作動検知手段を利用することにより、回動装置の構成を特段変更することなく、単に水栓装置の回動を物理的に一定範囲に制限しさえすれば、水栓装置の回動範囲を設定(調節)することができる。これにより、例えば周囲物等との関係で好ましくない位置に水栓装置が至ることを防止すること等が容易に可能となり、使用者にとっての利便性を一層向上させることができる。
【0059】
手段21.前記回動装置は、
前記通電動作部の動作に伴い回動可能な駆動ギアと、
前記駆動ギアに噛合された被動ギアとを備え、
前記駆動ギアの回動に伴い前記被動ギアが回動することで、前記水栓装置が回動するように構成されており、
前記駆動ギア及び前記第二クラッチギアは、一部品により構成されていることを特徴とする手段19又は20に記載の水栓システム。
【0060】
上記手段21によれば、駆動ギア及び第二クラッチギアが一部品により構成されているため、水栓システムの簡素化を図ることができ、製造等に係るコストの抑制をより一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】右側から見たときの第1実施形態の水栓システム等を示す斜視図である。
図2】左側から見たときの第1実施形態の水栓システム等を示す斜視図である。
図3図1のJ-J線断面図である。
図4図1のK-K線断面図である。
図5】回動装置などの構成を示す部分拡大断面図である。
図6】回動装置等を示す拡大斜視図である。
図7】第一ケース構成部を外した状態における回動装置等を示す拡大斜視図である。
図8】第一ケース構成部及び第二中間伝達部等を外した状態における回動装置等を示す拡大斜視図である。
図9】第1実施形態における回動装置の電気的構成などを示すブロック図である。
図10】第1実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態において、第一センサに対し被検知物を接近させた場合における水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図12】第1実施形態において、第二センサに対し被検知物を接近させた場合における水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図13】第1実施形態において、水栓装置の回動中に第一センサへと被検知物を接近させた場合における水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図14】第1実施形態において、回動可能範囲の限界に至ったときの水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図15】第2実施形態における水栓システム等を示す斜視図である。
図16】第2実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態において、第一センサ及び第二センサの順に被検知物を接近させた場合における水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図18】第2実施形態において、第二センサ及び第一センサの順に被検知物を接近させた場合における水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図19】第3実施形態における回動装置の電気的構成などを示すブロック図である。
図20】第3実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図21】第3実施形態におけるロックオン状態時処理を示すフローチャートである。
図22】第3実施形態の非ロックオン状態時処理を示すフローチャートである。
図23】第3実施形態において、ロックオン状態であるときに第一センサ又は第二センサへと被検知物を接近させた場合の水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図24】第3実施形態において、非ロックオン状態であるときに第一センサ又は第二センサへと被検知物を接近させた場合の水栓装置の動作を示す平面模式図である。
図25】第3実施形態において、第一センサ又は第二センサに被検知物を所定時間以上接近させた場合に、ロックオン状態又は非ロックオン状態に切換わることを示す平面模式図である。
図26】第4実施形態における水栓システム等を示す斜視図である。
図27】第4実施形態における回動装置の電気的構成などを示すブロック図である。
図28】第4実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図29】第4実施形態における回動制御モード時処理を示すフローチャートである。
図30】第4実施形態の吐止水制御モード時処理を示すフローチャートである。
図31】吐止水制御モードにおいて、第一センサに被検知物を接近させたときの状態を示す正面模式図である。
図32】吐止水制御モードにおいて、第二センサに被検知物を接近させたときの状態を示す正面模式図である。
図33】第5実施形態における水栓システム等を示す斜視図である。
図34図33のL-L線断面図である。
図35】第6実施形態における水栓システム等の部分拡大断面模式図である。
図36】第7実施形態における回動装置の電気的構成などを示すブロック図である。
図37】第7実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図38】第7実施形態におけるカウント処理を示すフローチャートである。
図39】設定位置配置処理を示すフローチャートである。
図40】第8実施形態において、処理部で実行される通常動作を示すフローチャートである。
図41】第8実施形態における第一検知信号対応処理を示すフローチャートである。
図42】第8実施形態における第二検知信号対応処理を示すフローチャートである。
図43】別の実施形態における水栓システム等を示す斜視図である。
図44】別の実施形態における回動範囲設定部を示す一部破断斜視模式図である。
図45】別の実施形態において、ウエストスイッチを備えた水栓システム等を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
図1~4に示すように、水栓システム1は、キッチンの流し台100(以下、単に「流し台100」という)に取付けられている。まず、水栓システム1の説明に先立って、流し台100について説明する。
【0063】
流し台100は、シンク101と、当該シンク101が上部に固定されるとともに内側に空間を有してなる基台102と、当該基台102の手前側開口を開閉するための2枚の扉部103とを備えている。シンク101は、水を貯留可能な貯水部101aと、当該貯水部101aの上部から外側に突出する平板状の天板部101bとを備えている。本実施形態では、シンク101が「槽体」に相当し、天板部101bが「取付対象部」に相当する。
【0064】
シンク101は、使用者が視認可能な表側空間104と、使用者が視認不能又は困難な裏側空間105とを画している。本実施形態において、裏側空間105とは、前記基台102の内側の空間をいう。また、天板部101bのうち使用者から見て貯水部101aよりも奥に位置する部分には、上下方向に貫通する取付孔101c(図3等参照)が貫通形成されている。
【0065】
次に、水栓システム1について説明する。水栓システム1は、主としてシンク101(特に貯水部101a)に対する水の供給及び供給停止を切換えるために利用される。水栓システム1は、保持筒部2、外側構成部3、内側構成部4、吐止水センサ5、電磁弁6、回動装置7及び操作部8を備えている。
【0066】
保持筒部2は、外側構成部3等の取付基部として機能する部品である。保持筒部2は、全体として円筒状をなしており、図5に示すように、上部外周に形成された鍔状部21と、当該鍔状部21よりも下方の外周に形成された雄ねじ部22を備えている。保持筒部2は、取付孔101cに挿通されつつ、雄ねじ部22が所定のナット部材11aに螺合されて、鍔状部21及びナット部材11aにより天板部101bを挟み込んだ状態とすることで、天板部101bに対し回動不能な状態で取付けられている。
【0067】
図3に戻り、外側構成部3は、内側構成部4を覆って保護するとともに、内側構成部4との間で信号を送受信するためのケーブル(リード線)等の配置空間を形成し、また、水栓システム1において良好な外観品質を得るためなどに用いられる。外側構成部3は、中間部がほぼ直角に湾曲した円筒状をなしており、鉛直方向に延びる外側第一筒部31と、水平方向に延びる外側第二筒部32と、両筒部31,32を連結する湾曲形状の外側湾曲筒部33とを備えている。
【0068】
外側第一筒部31は、外周に形成された段部31a(図5参照)が保持筒部2の上端面に載置された状態で、当該保持筒部2の内周に挿通されている。これにより、外側第一筒部31ひいては外側構成部3は、前記取付孔101cの中心を通り、鉛直方向に延びる回動軸Ar(図5参照)にて回動可能となっている。また、外側第二筒部32は、その先端側下部であって貯水部101aの鉛直上方に当たる位置に、上下方向に貫通する開口32aを具備している。
【0069】
内側構成部4は、シンク101(貯水部101a)に供給される水の流路として機能する。内側構成部4は、中間部がほぼ直角に湾曲した円筒状をなしており、鉛直方向に延びる内側第一筒部41と、全体として水平方向に延びる内側第二筒部42と、両筒部41,42を連結する湾曲形状の内側湾曲筒部43とを備えている。
【0070】
内側第二筒部42の先端部には、鉛直下向きに開口した吐水口10aが設けられている。そして、内側第二筒部42の先端部が前記開口32aを通って外側構成部3の外に配置されることで、吐水口10aがシンク101における貯水部101aの鉛直上方に配置された状態となっている。
【0071】
さらに、内側構成部4は、外側構成部3により保持された状態となっている。これにより、外側構成部3の回動時には、外側構成部3とともに内側構成部4も回動するようになっている。
【0072】
本実施形態では、外側第一筒部31及び内側第一筒部41によって、シンク101(天板部101b)側から上方に向けて突出する水栓本体部9が構成されている。尚、本実施形態における水栓本体部9は、取付孔101cを通った状態でシンク101(天板部101b)に取付けられている。
【0073】
また、本実施形態では、外側第二筒部32、外側湾曲筒部33、内側第二筒部42及び内側湾曲筒部43によって、水栓本体部9のうち表側空間104に位置する部位からシンク101における貯水部101aの上方位置に向けて延び、つまり、平面視したときに天板部101b側から貯水部101a側に向けて延び、先端側に吐水口10aを有してなる吐水部10が構成されている。そして、本実施形態では、水栓本体部9及び吐水部10によって、天板部101bに取付けられた水栓装置14が構成されている。
【0074】
吐止水センサ5は、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換える際の操作対象であり、本実施形態では、水栓本体部9(外側第一筒部31)の前面に設けられている。吐止水センサ5は、例えば赤外線センサなどによって構成されており、水栓本体部9(外側第一筒部31)の前方における所定範囲に対し所定波長の光を照射する照射部と、被検知物(例えば手や物)により反射された当該光を検知するための受光部(受光素子)と、当該受光部によって光が検知されたときに所定の吐止水信号を出力する信号出力部とを備えている(それぞれ不図示)。そして、前記受光部によって光が検知されたときには、所定のケーブル(不図示)を介して、前記信号出力部から後述する電磁弁制御装置12に対し吐止水信号が出力されるようになっている。尚、吐止水センサ5の配置位置については適宜変更してもよい。
【0075】
電磁弁6は、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるための装置である。電磁弁6は、内側構成部4と所定の給水手段(不図示)との間に介在されている。そして、電磁弁6は、前記給水手段から内側構成部4内に対する水の供給又は供給停止を切換えることで、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるようになっている。尚、本実施形態における電磁弁6は、内側構成部4に対し相対回動可能となっており、水栓本体部9(外側構成部3や内側構成部4)が回動したときであっても、その回動に合わせた回動が生じないように構成されている。
【0076】
また、電磁弁6は、電磁弁制御装置12(図9参照)によってその動作が制御される。本実施形態において、電磁弁制御装置12は、吐止水センサ5から吐止水信号が出力される度に、吐水口10aにおける吐水又は止水が交互に切換えられるように電磁弁6の動作を制御する。従って、本実施形態では、吐止水センサ5により被検知物が検知される度に、吐水口10aにおける吐水又は止水が交互に切換えられることとなる。尚、電磁弁制御装置12は、例えば吐止水センサ5又は電磁弁6と一体的に構成することができる。
【0077】
回動装置7は、水栓本体部9を回動させることで、水栓装置14ひいては吐水口10aを回動させるための装置である。回動装置7は、少なくともモータ72が前記裏側空間105に配置されるものであり、特に本実施形態における回動装置7は、その構成部品の全体(それぞれ次述するケース71、モータ72、伝達部73、押圧部品74、クラッチ作動検知スイッチ75及び制御装置76)が前記裏側空間105に配置されている。これにより、回動装置7は、外部(使用者)から視認不能又は視認困難となっている。
【0078】
回動装置7は、図5~9に示すように、ケース71、モータ72、伝達部73、押圧部品74、クラッチ作動検知スイッチ75及び制御装置76を備えている。本実施形態では、モータ72が「通電動作部」を構成し、クラッチ作動検知スイッチ75が「クラッチ作動検知手段」を構成する。尚、説明の便宜上、制御装置76の構成については、操作部8の説明を行った後に説明する。
【0079】
ケース71は、モータ72や伝達部73などを内部に収めつつ、保持筒部2に対する回動装置7の取付部として機能する。本実施形態におけるケース71は、第一ケース構成部711、第二ケース構成部712及び第三ケース構成部713を備えており、これらケース構成部711~713がスナップフィット係合等を用いて組み立てられることで構成されている。尚、本実施形態では、複数のシール部材77を設けることによって、ケース71のうちの少なくともモータ72の収容される空間に対する浸水防止が図られている。
【0080】
第一ケース構成部711は、第二ケース構成部712における一端側開口(上側開口)を閉塞しつつ、回動装置7を保持筒部2へと取付けるためのものである。第一ケース構成部711は、平面視、半円状部分と、当該半円状部分における円弧の中心側から突出した半長円形状部分とを備えた形状をなしている。そして、第一ケース構成部711における前記半長円形状部分には、雌ねじを有するねじ孔部711a(図5参照)が形成されており、当該ねじ孔部711aに保持筒部2の雄ねじ部22が螺合されることで、ケース71ひいては回動装置7が保持筒部2に対し取付けられている。これにより、回動装置7は、天板部101bに対し回動不能な状態で設置された状態となっている。尚、回動装置7の取付対象は必ずしも保持筒部2に限定されず、例えば、基台102などを取付対象としてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、ナット部材11aの下方にて雄ねじ部22の螺合されたナット部材11bの端面と第一ケース構成部711とが面接触した状態となっている。回動装置7の向きを所望の角度に調整した上で、ナット部材11bの端面と第一ケース構成部711とを面接触させつつ、さらに当該ナット部材11bに締付トルクを加えた状態とすることにより、回動装置7の向きをより確実に一定状態で維持することができるようになっている。
【0082】
第二ケース構成部712は、伝達部73等を支持しつつ、モータ72や伝達部73などの主たる収容部として機能する。
【0083】
第三ケース構成部713は、伝達部73等を支持しつつ、第二ケース構成部712における他端側開口(下側開口)を閉塞するために用いられる。
【0084】
モータ72は、水栓本体部9や吐水部10(すなわち水栓装置14)を回動させるための動力源である。モータ72は、図示はしていないがケース71内に収容されており、通電により双方向に回転可能なモータ軸(不図示)を備えている。そして、モータ72に対する通電に伴い、前記モータ軸の回転による駆動力が伝達部73へと伝わるようになっている。
【0085】
伝達部73は、モータ72から水栓本体部9(本実施形態では、外側構成部3)に対する駆動力の伝達経路を構成する。伝達部73は、モータ側伝達部731、第一中間伝達部732、第二中間伝達部733及び吐水口側伝達部734を備えており、この順序で、水栓装置14を回動させるための駆動力がモータ72から水栓本体部9へと伝達されるようになっている。
【0086】
モータ側伝達部731は、モータ72からの駆動力が直接伝わる部分であり、回転可能な減速歯車や軸部品などが連動可能に連結されることで構成されている。モータ側伝達部731は、モータ72から伝わる駆動力を受けて、当該駆動力を第一中間伝達部732へと伝達する。
【0087】
第一中間伝達部732は、モータ側伝達部731からの伝達された駆動力により、前記回動軸Arと平行な回動軸にて回動する円板状部品である。第一中間伝達部732における端面には、複数の歯が円形状に配列されてなる第一クラッチギア732aが形成されている(図8等参照)。第一クラッチギア732aは、モータ72からの駆動力の伝達経路において(後述する第二クラッチギア733aよりも)モータ72側に位置しており、第一中間伝達部732とともに回動する。
【0088】
第二中間伝達部733は、第一中間伝達部732から伝達された駆動力により、前記第一中間伝達部732の回動軸と同一の回動軸にて回動する部品であって、平面視、円形状部分と、当該円形状部分から突出する扇形状部分とを組み合わせた形状をなしている。第二中間伝達部733における前記円形状部分であって、第一クラッチギア732aと相対向する位置には、複数の歯が円形状に配列されてなる第二クラッチギア733aが形成されている(図7参照)。第二クラッチギア733aは、駆動力の伝達経路において第一クラッチギア732aよりも水栓本体部9側に位置しており、通常、第一クラッチギア732aに噛合されて当該第一クラッチギア732aから駆動力が伝達されることで回動する。
【0089】
また、第二中間伝達部733における前記扇形状部分の外周部分には、複数の歯が円弧状に配列されてなる駆動ギア733bが形成されている(図7参照)。駆動ギア733bは、モータ72の動作に伴い第二中間伝達部733が回動したときに、前記回動軸Arと平行な回動軸にて回動する。
【0090】
尚、上記の通り、第二クラッチギア733a及び駆動ギア733bは、第二中間伝達部733に設けられている。すなわち、本実施形態において、第二クラッチギア733a及び駆動ギア733bは、一部品(第二中間伝達部733)により構成されている。
【0091】
さらに、第二中間伝達部733は、第一ケース構成部711及び第二ケース構成部712間に配置されているが、押圧部品74から加わる押圧力によって、通常、第二ケース構成部712(第一中間伝達部732)側に位置し、第一ケース構成部711に対し所定の隙間をあけた状態で配置されるようになっている。そして、第二中間伝達部733は、この隙間側に向けて移動可能とされており、第二中間伝達部733が当該隙間側へと移動することで、両クラッチギア732a,733aの噛合が解除されるようになっている。
【0092】
吐水口側伝達部734は、第二中間伝達部733から伝達された駆動力により、前記回動軸Arと同一の回動軸にて回動する部品である。吐水口側伝達部734は、外側構成部3(水栓本体部9)の外周に固定されており、吐水口側伝達部734の回動に伴い外側構成部3(水栓本体部9)が回動するようになっている。
【0093】
また、吐水口側伝達部734の外周における所定範囲には、複数の歯が円周方向に配列されてなる被動ギア734aが形成されており、当該被動ギア734aが駆動ギア733bに噛合されている。これにより、モータ72を動作させて駆動ギア733bが回動したときには、当該駆動ギア733bの回動に伴い被動ギア734aが回動する。その結果、水栓本体部9のうち前記裏側空間105に位置する部位へとモータ72の動作による駆動力が伝達されて、水栓装置14ひいては吐水口10aが回動するようになっている。
【0094】
尚、本実施形態では、吐水部10が手や物などの何らかの障害物と接触すること等により、水栓装置14が回動不能又は回動困難な状態となったときには、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が回動不能又は回動困難な状態となるように構成されている。また、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)は、回動可能範囲の限界に至ってケース71と接触したときにも、回動不能な状態となる。ここで、第二中間伝達部733が回動可能範囲の限界に至ったときには、水栓装置14も回動可能範囲の限界に至った状態となる。尚、本実施形態において、水栓装置14(吐水部10)の回動可能範囲は180°未満の所定角度(例えば120°)に設定されており、本実施形態において、水栓装置14(吐水部10)は、使用者から見て左右に所定角度(例えば60°)ずつ回動可能となっている。但し、水栓装置14(吐水部10)の回動可能範囲については上記に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0095】
押圧部品74は、第一中間伝達部732側に対し第二中間伝達部733を押し付けるための部品である。本実施形態において、押圧部品74は、所定のコイルばねによって構成されており、第一ケース構成部711及び第二中間伝達部733間において圧縮状態で設けられている。これにより、通常、第二中間伝達部733は、上述した第一ケース構成部711側の隙間の方へと移動することなく第一中間伝達部732へと押し付けられて、第二クラッチギア733aが第一クラッチギア732aに噛合された状態で維持されるようになっている。
【0096】
上記のように構成された伝達部73や押圧部品74を備えることで、モータ72の動作中において、水栓装置14が回動不能又は回動困難な状態となり、第二クラッチギア733aが回動不能又は回動困難な状態となったときには、モータ72からの駆動力が作用することで、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が前記隙間側へと移動する。すなわち、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が、両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動する。これにより、第一クラッチギア732aから第二クラッチギア733aに対する駆動力の伝達が遮断され、モータ72から水栓本体部9に対する駆動力の伝達が遮断される。そのため、水栓装置14が回動不能又は回動困難な状態となったときには、水栓装置14のそれ以上の回動が停止されることになる。本実施形態では、第一クラッチギア732a、第二クラッチギア733a及び押圧部品74によって、モータ72の動作中において、吐水部10が回動不能又は回動困難な状態となったときに、駆動力の伝達を遮断可能なクラッチ部78が構成されている(図5参照)。
【0097】
また、本実施形態では、クラッチ部78が設けられることで、モータ72の動作に伴い水栓装置14が回動可能範囲の限界に至ったときにも、クラッチ部78が作動して、吐水部10の回動が停止される。
【0098】
さらに、クラッチ部78が設けられることで、例えば停電時などにおいては、モータ72を動作させることなく、外力を加える(例えば、使用者が吐水部10を押したり引いたりする)ことで、水栓装置14(吐水部10)を回動させることも可能となっている。
【0099】
クラッチ作動検知スイッチ75は、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が前記隙間側に移動したこと、すなわち、両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動したことを検知するために用いられる。
【0100】
クラッチ作動検知スイッチ75は、ケース71のうち第二中間伝達部733の収容空間に向けて出没可能な突起を備えている(図8参照。図5では不図示)。そして、クラッチ作動検知スイッチ75は、前記収容空間に向けて前記突起が突出した状態となったとき(より詳しくは、没入状態から突出状態に変化したとき)に、所定の強制停止信号を制御装置76へと出力する。すなわち、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が、押圧部品74から加わる押圧力に抗して前記隙間側に移動したときには、クラッチ作動検知スイッチ75から制御装置76へと強制停止信号が出力される。
【0101】
次いで、操作部8について説明する。操作部8は、使用者が手を触れることなく、モータ72を動作させて水栓装置14を回動させる際に用いられる。操作部8は、例えば赤外線センサ等の非接触式センサを備えており、非接触式センサとして第一センサ81及び第二センサ82が設けられている。
【0102】
図1,2に示すように、第一センサ81は、吐水部10の両側方のうちの一方であって、使用者から見て右側に位置している。これに対し、第二センサ82は、吐水部10の両側方のうちの他方であって、使用者から見て左側に位置している。
【0103】
第一センサ81及び第二センサ82は、それぞれ、吐水部10の側方における所定範囲に対し所定波長の光を一定の短時間毎に照射する照射部と、被検知物(例えば手など)により反射された当該光を検知するための受光部(受光素子)と、当該受光部によって光が検知されたときに所定の検知信号を出力する信号出力部とを備えている(それぞれ不図示)。両センサ81,82は、反射された光が前記受光部へと入射されることで接近した被検知物を検知可能であり、被検知物を検知したときには、前記信号出力部から検知信号を出力する。出力された検知信号は、所定の信号線(不図示)を介して制御装置76へと入力される。本実施形態において、第一センサ81は、被検知物を検知すると、つまり、反射された光が受光部へと入力されると、検知信号としての第一検知信号を出力する。一方、第二センサ82は、被検知物を検知すると、検知信号としての第二検知信号を出力する。
【0104】
次いで、制御装置76について説明する。制御装置76は、例えばCPUやRAM、入出力端子などを備えたマイコン等により構成されており、処理部761及びモータ制御部762を備えている。
【0105】
処理部761は、入力された信号に基づき演算を行い、演算結果に応じた命令を生成する。詳述すると、処理部761は、モータ72の非動作時において、第一センサ81から第一検知信号が出力されると(つまり、第一検知信号が制御装置76に入力されると)、水栓装置14ひいては吐水口10aを所定方向(本実施形態では、使用者から見て右から左に向けた方向)に回動させるための命令として第一回動命令を生成する。一方、処理部761は、モータ72の非動作時において、第二センサ82から第二検知信号が出力されると(つまり、第二検知信号が制御装置76に入力されると)、水栓装置14ひいては吐水口10aを前記所定方向とは反対方向(本実施形態では、使用者から見て左から右に向けた方向)に回動させるための命令として第二回動命令を生成する。尚、処理部761は、モータ制御部762を介してモータ72が動作中であるか否かを把握可能となっている。
【0106】
また、処理部761は、モータ72の動作時において、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されると、モータ72の動作ひいては水栓装置14の回動を停止させるための命令として回動停止命令を生成する。
【0107】
さらに、処理部761は、クラッチ作動検知スイッチ75から強制停止信号が入力されたとき、モータ72の強制停止を行うための命令として強制停止命令を生成する。
【0108】
モータ制御部762は、処理部761により生成された命令に基づき、モータ72の動作を制御する。詳述すると、モータ制御部762は、第一回動命令が生成されると、前記モータ軸が特定方向に回動するようにモータ72への通電を制御する。これにより、水栓装置14(吐水部10や吐水口10a)は、回動不能又は困難な状態でない限り、所定方向(本実施形態では、使用者から見て右から左に向けた方向)に回動していく。一方、モータ制御部762は、第二回動命令が生成されると、前記モータ軸が前記特定方向とは反対方向に回動するようにモータ72への通電を制御する。これにより、水栓装置14は、回動不能又は困難な状態でない限り、前記所定方向とは反対方向(本実施形態では、使用者から見て左から右に向けた方向)に回動していく。
【0109】
また、モータ制御部762は、回動停止命令又は強制停止命令が生成されると、通電を遮断してモータ72の動作を停止させる。これにより、水栓装置14の回動が停止される。
【0110】
尚、モータ制御部762については、強制停止命令が生成されたときに、水栓装置14をその直前の回動方向とは反対方向に僅かに回動させた上で停止させるように、モータ72の動作を制御するものであってもよい。この場合には、吐水部10などが障害物などから離れた状態で停止するため、障害物や吐水部10、伝達部73等に加わる負荷の低減を図ることができる。また、両クラッチギア732a,733aを噛合した状態へとより確実に戻すことができ、次に水栓装置14を回動させる際に、水栓装置14のより円滑な回動を担保することができる。
【0111】
次いで、本実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る処理部761の通常動作について、図10のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、処理部761の通常動作は一定の短時間毎に繰り返し行われる。
【0112】
まず、ステップS11において、モータ72が動作中であるか否かを確認する。モータ72が動作中である(すなわち、水栓装置14が回動中である)場合(ステップS11:Yes)、ステップS12に移行する。一方、モータ72が動作中でない(すなわち水栓装置14が停止している)場合(ステップS11:No)、ステップS14に移行する。
【0113】
ステップS12では、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたか否か(つまり制御装置76に第一検知信号又は第二検知信号が入力されたか否か)を確認する。第一検知信号又は第二検知信号が出力された場合(ステップS12:Yes)、ステップS13にて回動停止命令を生成して、ステップS11に戻る。回動停止命令の生成により、モータ制御部762がモータ72への通電を遮断して、モータ72の動作が停止される。その結果、水栓装置14(吐水口10a)の回動が停止される。一方、モータ72の動作中において、第一検知信号及び第二検知信号のいずれも出力されなかった場合(ステップS12:No)、ステップS13をスキップして、ステップS11に戻る。
【0114】
ステップS14では、第一センサ81から第一検知信号が出力されたか否か(つまり制御装置76に第一検知信号が入力されたか否か)を確認する。第一検知信号が出力された場合(ステップS14:Yes)、ステップS15にて第一回動命令を生成して、ステップS11に戻る。第一回動命令の生成により、水栓装置14(吐水口10a)は所定方向に回動していく。一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS14:No)、ステップS16に移行する。
【0115】
ステップS16では、第二センサ82から第二検知信号が出力されたか否か(つまり制御装置76に第二検知信号が入力されたか否か)を確認する。第二検知信号が出力された場合(ステップS16:Yes)、ステップS17にて第二回動命令を生成して、ステップS11に戻る。第二回動命令の生成により、水栓装置14(吐水口10a)は前記所定方向とは反対方向に回動していく。一方、第二検知信号が出力されていない場合(ステップS16:No)、命令を生成することなく、ステップS11に戻る。
【0116】
尚、クラッチ作動検知スイッチ75から強制停止信号が出力されると(つまり制御装置76に強制停止信号が入力されると)、処理部761は、上記の通常動作に割り込んで、緊急停止命令を生成する。これにより、モータ72への通電中である場合にはモータ72への通電が遮断され、モータ72の動作ひいては水栓装置14の回動が強制停止される。
【0117】
以上のように構成された本実施形態に係る水栓システム1は、使用者の操作によって次のように動作する。すなわち、図11に示すように、水栓装置14の停止中に、使用者が手などの被検知物Doを第一センサ81に接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向(本実施形態では、使用者から見て右から左に向けた方向であって、被検知物Doから離れる方向)に回動していく。
【0118】
一方、図12に示すように、水栓装置14の停止中に、使用者が被検知物Doを第二センサ82に接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記所定方向とは反対方向(本実施形態では、使用者から見て左から右に向けた方向であって、被検知物Doから離れる方向)に回動していく。
【0119】
また、図13に示すように、水栓装置14の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを再度接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動が停止される。このとき、吐水部10の回動方向前方側に手などの被検知物Doを配置することで、水栓装置14の回動を停止させることができる。つまり、水栓装置14の回動を停止させる際に行われやすいと考えられる自然な動作によって、水栓装置14の回動を停止させることが可能である。
【0120】
さらに、図14に示すように、水栓装置14が回動可能範囲の限界に至ると、クラッチ作動検知スイッチ75が動作して、水栓装置14の回動が停止される。尚、吐水部10などが障害物等と接触して回動不能又は回動困難となった場合にも、クラッチ作動検知スイッチ75が動作して、水栓装置14の回動が停止される。
【0121】
以上詳述したように、本実施形態によれば、水栓装置14や操作部8(センサ81,82)に手を触れることなく、吐水口10aを回動させることができる。これにより、水栓装置14や操作部8を汚れにくくすることができ、見栄えの低下や余計な清掃の手間が生じることをより確実に防止できる。また、水栓装置14や操作部8に汚れや細菌、ウイルスなどが付着することに伴う衛生性の低下についてもより確実に防止可能となる。
【0122】
また、回動装置7の全体は、使用者が視認不能又は困難な裏側空間105に配置される。従って、使用者から見てすっきりとした外観が呈されることとなり、外観品質の向上を図ることができる。
【0123】
さらに、操作部8は、非接触式センサ(第一センサ81及び第二センサ82)からなるため、操作部8に何ら触れることなく、吐水口10aを回動させることができる。従って、見栄えの低下や余計な清掃の手間が生じることを一層確実に防止でき、また、衛生性をより高めることができる。
【0124】
併せて、水栓本体部9のうちモータ72の動作による動力が伝達される部位は、裏側空間105に位置している。従って、水栓システム1のうち表側空間104に位置する部位の構造をより簡素化することができる。その結果、外観品質の向上を一層図ることができる。
【0125】
加えて、第一センサ81及び第二センサ82は、吐水部10の両側方であって使用者から見て左右に設けられるため、一方のセンサ81(82)を利用して吐水口10aを回動させる際に、誤って他方のセンサ82(81)によって被検知物Doが検知されるといった事態が生じにくい。従って、良好な操作性を得ることができる。
【0126】
併せて、使用者から見て左右に配置された各センサ81,82の一方が被検知物Doを検知したときに、その被検知物Doの位置に応じた方向に吐水口10aを回動させることができる。そのため、使用者において吐水口10aの位置操作手法がより容易に理解しやすいものとなり、吐水口10aをより直感的に回動させることが可能となる。これにより、使用者にとっての利便性を一層高めることができる。
【0127】
また、吐水口10aが回動している最中に、非接触式センサ(センサ81,82)に被検知物Doを接近させて新たな第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときには、吐水口10aの回動を停止させることができる。従って、吐水口10aの回動に係る操作をより容易に行うことが可能となる。
【0128】
さらに、モータ72の動作中において、吐水部10が周囲の人や物などの障害物と接触すること等により、水栓装置14(吐水口10a)が回動不能又は回動困難な状態となったときには、クラッチ部78によって、モータ72から水栓本体部9に対する駆動力の伝達を遮断することができる。従って、水栓装置14が回動不能又は回動困難な状態であるにも関わらず、モータ72からの駆動力が水栓装置14側へと伝達され続けるといった事態をより確実に防止することができる。その結果、使用者における安全性の向上、水栓装置14の周囲物の保護、水栓システム1における故障や破損の防止などの各種メリットを得ることができる。
【0129】
加えて、クラッチ部78が設けられることにより、外力を加えることで、部品の破損防止等を図りつつ、水栓装置14ひいては吐水口10aを回動させることができる。従って、使用者にとっての利便性をより高めることができる。
【0130】
併せて、本実施形態のクラッチ部78は、第二クラッチギア733aが回動不能又は回動困難な状態となったときに、モータ72から伝わる駆動力が作用することで第二クラッチギア733aが両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動し、その結果、駆動力の伝達が遮断されるように構成されている。従って、2つのクラッチギア732a,733aを用いた比較的簡便な構造によって、クラッチ部78を構成することができる。これにより、水栓システム1の製造やメンテナンスに係るコストの抑制を効果的に図ることができる。
【0131】
また、クラッチ作動検知スイッチ75によって、第二クラッチギア733aが両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動したこと、つまり、クラッチ部78が機能したことを検知することができ、回動装置7は、クラッチ作動検知スイッチ75による検知に基づき、水栓装置14の回動を停止させるようにモータ72の動作を制御することができる。従って、クラッチ部78が機能したときには、水栓装置14のそれ以上の回動を停止させることができ、使用者における安全性の向上や水栓装置14の周囲物の保護をより効果的に図ることができる。
【0132】
さらに、クラッチ作動検知スイッチ75を設けることで、水栓装置14が回動可能範囲の限界に至って、第二クラッチギア733aが回動不能又は回動困難な状態となったときに、モータ72の動作を停止させることができる。従って、水栓装置14が回動可能範囲の限界に至ったときにモータ72の動作を停止させるための特別な機構を設けずに済む。そのため、水栓システム1の製造等に係るコストの抑制をより効果的に図ることができる。
【0133】
加えて、第二中間伝達部733は、第二クラッチギア733a及び駆動ギア733bを備えており、第二クラッチギア733a及び駆動ギア733bが一部品(第二中間伝達部733)により構成されている。そのため、水栓システム1の簡素化を図ることができ、製造等に係るコストの抑制をより一層図ることができる。
〔第2実施形態〕
次いで、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、第一センサ81及び第二センサ82は、吐水部10(外側第二筒部32)の両側方に設けられている。これに対し、本第2実施形態では、図15に示すように、第一センサ81及び第二センサ82は、吐水部10(外側第二筒部32)の先端面であって使用者から見て左右に設けられている。本第2実施形態において、第一センサ81は使用者から見て右側に、第二センサ82は使用者から見て左側に位置している。
【0134】
第一センサ81及び第二センサ82は、上記第1実施形態と同様に、所定波長の光を照射する照射部(不図示)を備えている。但し、両センサ81,82における光の照射範囲、つまり被検知物の検知範囲は重なることなく、使用者から見て左右離れた位置に設定されている。そして、上記第1実施形態と同様に、被検知物を検知したとき、第一センサ81は第一検知信号を出力し、第二センサ82は第二検知信号を出力するようになっている。
【0135】
さらに、上記第1実施形態において、処理部761は、モータ72の非動作時において、第一センサ81から第一検知信号が出力されたときには水栓装置14ひいては吐水口10aを所定方向に回動させ、一方、第二センサ82から第二検知信号が出力されたときには水栓装置14ひいては吐水口10aを前記所定方向とは反対側に回動させるように、モータ制御部762を制御する。つまり、モータ72の非動作時には、両センサ81,82のうちの一方から検知信号が出力されれば、水栓装置14が回動不能又は回動困難でない限り、水栓装置14の回動が行われるように構成されている。
【0136】
これに対し、本第2実施形態において、処理部761は、モータ72の非動作時において、第一センサ81及び第二センサ82のそれぞれから検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じた方向に水栓装置14ひいては吐水口10aが回動するように、モータ72の動作を制御する。つまり、本第2実施形態では、両センサ81,82のうちの一方から検知信号が出力されただけでは、水栓装置14の回動が行われないようになっている。
【0137】
ここで、本第2実施形態における処理部761の動作についてより詳しく説明する。処理部761は、モータ72の非動作時において、初めに第一センサ81から第一検知信号が出力され、その出力から予め設定した一定期間(例えば、0.5秒間)内に第二センサ82から第二検知信号が出力されたとき、水栓装置14を所定方向(本実施形態では、使用者から見て右から左に向けた方向)に回動させるための命令として第一回動命令を生成する。第一回動命令が生成されると、モータ制御部762は、前記モータ軸が特定方向に回動するようにモータ72への通電を制御する。これにより、水栓装置14は、回動不能又は困難な状態でない限り、所定方向に回動していく。
【0138】
また、処理部761は、モータ72の非動作時において、初めに第二センサ82から第二検知信号が出力され、その出力から予め設定した一定期間内に第一センサ81から第一検知信号が出力されたとき、水栓装置14を前記所定方向とは反対方向(本実施形態では、使用者から見て左から右に向けた方向)に回動させるための命令として第二回動命令を生成する。第二回動命令が生成されると、モータ制御部762は、前記モータ軸が前記特定方向とは反対方向に回動するようにモータ72への通電を制御する。これにより、水栓装置14は、回動不能又は困難な状態でない限り、前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0139】
一方、上記第1実施形態と同様に、処理部761は、モータ72の動作時において、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されると、水栓装置14の回動を停止させるための命令として回動停止命令を生成する。また、処理部761は、クラッチ作動検知スイッチ75から強制停止信号が入力されたとき、モータ72の強制停止を行うための命令として強制停止命令を生成する。
【0140】
次いで、本第2実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る処理部761の通常動作について、図16のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0141】
まず、ステップS21において、モータ72が動作中であるか否かを確認する。モータ72が動作中である場合(ステップS21:Yes)、ステップS22に移行し、モータ72が動作中でない場合(ステップS21:No)、ステップS24に移行する。尚、ステップS22,23の処理は、上記第1実施形態におけるステップS12,13の処理とほぼ同様であるため、これらの説明を省略する。
【0142】
ステップS24においては、第一センサ81から第一検知信号が出力されたか否かを確認する。第一検知信号が出力された場合(ステップS24:Yes)、ステップS25に移行する。一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS24:No)、ステップS28に移行する。
【0143】
ステップS25では、第二センサ82から第二検知信号が出力されたか否かを確認し、第二検知信号が出力された場合(ステップS25:Yes)、ステップS27に移行する。ステップS27では、第一回動命令を生成して、ステップS21に戻る。第一回動命令の生成により、水栓装置14(吐水口10a)は前記所定方向に回動していく。
【0144】
一方、第二検知信号が出力されていない場合(ステップS25:No)、ステップS26にて第一検知信号の出力から一定時間が経過したか否かを確認する。一定時間が経過したか否かの確認は、所定のタイマを用いて行うことができる。一定時間が経過していない場合(ステップS26:No)、ステップS25に戻る。これにより、第一検知信号が出力されてからの一定時間内において、第二検知信号が出力されたか否かの確認(つまり、ステップS25の処理)が繰り返し行われることになる。一方、一定時間が経過した場合(ステップS26:Yes)、つまり、第一検知信号の出力から一定時間内における第二検知信号の出力がなかった場合には、ステップS21に戻る。
【0145】
ステップS24で否定判定された場合、つまり、モータ72の非動作時において第一検知信号が出力されていない場合、ステップS28にて、第二センサ82から第二検知信号が出力されたか否かを確認する。第二検知信号が出力された場合(ステップS28:Yes)、ステップS29に移行する。一方、第二検知信号が出力されていない場合(ステップS28:No)、ステップS21に戻る。
【0146】
ステップS29では、第一センサ81から第一検知信号が出力されたか否かを確認し、第一検知信号が出力された場合(ステップS29:Yes)、ステップS31に移行する。ステップS31では、第二回動命令を生成して、ステップS21に戻る。第二回動命令の生成により、水栓装置14(吐水口10a)は前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0147】
一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS29:No)、ステップS30にて第二検知信号の出力から一定時間が経過したか否かを確認する。一定時間が経過していない場合(ステップS30:No)、ステップS29に戻る。これにより、第二検知信号が出力されてからの一定時間内において、第一検知信号が出力されたか否かの確認が繰り返し行われることになる。一方、一定時間が経過した場合(ステップS30:Yes)、つまり、第二検知信号の出力から一定時間内における第一検知信号の出力がなかった場合には、ステップS21に戻る。
【0148】
尚、上記第1実施形態と同様に、クラッチ作動検知スイッチ75から強制停止信号が出力されると、処理部761は、上記の通常動作に割り込んで、緊急停止命令を生成する。これにより、モータ72への通電中である場合にはモータ72への通電が遮断され、モータ72の動作が強制停止される。
【0149】
以上のように構成された本第2実施形態に係る水栓システム1は、使用者の操作によって次のように動作する。すなわち、図17に示すように、水栓装置14の停止中に、使用者が手などの被検知物Doを右から左に移動させて、被検知物Doを第一センサ81及び第二センサ82の順に接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向(本第2実施形態では、使用者から見て右から左に向けた方向)に回動していく。一方、図18に示すように、水栓装置14の停止中に、使用者が被検知物Doを左から右に移動させて、被検知物Doを第二センサ82及び第一センサ81の順に接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記所定方向とは反対方向(本第2実施形態では、使用者から見て左から右に向けた方向)に回動していく。つまり、本第2実施形態では、被検知物Doの移動方向と同じ方向に水栓装置14(吐水口10a)が回動するようになっている。
【0150】
尚、上記第1実施形態と同様に、水栓装置14の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを再度接近させると、水栓装置14(吐水口10a)の回動が停止される。また、水栓装置14が回動可能範囲の限界に至れば、クラッチ作動検知スイッチ75が動作して、水栓装置14の回動が停止される。
【0151】
以上、本第2実施形態によれば、第一センサ81及び第二センサ82は吐水部10の先端部に設けられているため、両センサ81,82の視認性が良くなり、使用者にとっての利便性を高めることができる。
【0152】
また、手動で吐水口を回動させる際には、通常、吐水部の先端側が操作対象となるところ、本第2実施形態によれば、吐水部10の先端部に操作対象となる非接触式センサ(センサ81,82)が設けられている。そのため、手動操作の場合と似た操作によって直感的に吐水口10aの回動操作を行うことが可能となり、利便性を一段と向上させることができる。
【0153】
加えて、使用者から見て左右に配置された各センサ81,82が、移動する被検知物Doを検知したときに、その被検知物Doの移動方向に応じた方向に吐水口10aを回動させることができる。そのため、使用者が吐水部10を手で持って回動させる場合と同様の操作感で、吐水口10aを回動させることができる。これにより、使用者にとっての利便性を一層高めることができる。
【0154】
また、単に両センサ81,82のうちの一方によって被検知物Doが検知されただけでは吐水口10aが回動しないこととなる。さらに、両センサ81,82による被検知物Doの同時検知によっても吐水口10aが回動しないこととなる。従って、吐水口10aが意図せず回動してしまうといった事態をより生じにくくすることができ、この点も、使用者にとっての利便性の向上に寄与する。
〔第3実施形態〕
次いで、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、回動装置7は、モータ72の非動作時において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を接近させることで、水栓装置14(吐水口10a)が回動不能又は回動困難でない限り、モータ72の動作が制御されて、水栓装置14(吐水口10a)が回動するように構成されている。つまり、モータ72が非動作時において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物が接近すれば、通常、水栓装置14(吐水口10a)が回動するように構成されている。
【0155】
これに対し、本第3実施形態において、回動装置7は、第一センサ81又は第二センサ82(つまり非接触式センサ)による被検知物の検知が予め設定した所定時間以上継続したときに、モータ72の動作を制御して、水栓装置14ひいては吐水口10aを回動させることが可能な状態となるように構成されている。つまり、単に第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を接近させても、水栓装置14(吐水口10a)を回動させることができないことがあり、この場合、水栓装置14(吐水口10a)を回動させるためには、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を所定時間以上接近させ続けることが必要となっている。本第3実施形態においては、センサ81,82による被検知物の検知によって水栓装置14(吐水口10a)を回動させることが可能な状態(「ロックオン状態」と称す)とセンサ81,82による被検知物の検知によっては水栓装置14(吐水口10a)を回動させることができない状態(「非ロックオン状態」と称す)とを切換えたり、これら状態を記憶したり、これら状態に応じた制御を行ったりするために、制御装置76は次のように構成されている。
【0156】
すなわち、図19に示すように、制御装置76は、ロックオン状態記憶部763及びロックオン判定部764を備えている。
【0157】
ロックオン状態記憶部763は、例えばRAM等により構成されており、ロックオン状態である旨の情報又は非ロックオン状態である旨の情報を記憶する。
【0158】
ロックオン判定部764は、処理部761の一部を構成しており(勿論、処理部761とは別であってもよい)、センサ81,82から出力された第一検知信号又は第二検知信号、及び、ロックオン状態記憶部763に記憶された情報に基づき、ロックオン状態又は非ロックオン状態の切換を行う。より詳しくは、ロックオン判定部764は、モータ72の非動作時において、センサ81,82からの第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間(例えば1秒間)以上継続されているか否か(つまり、第一検知信号又は第二検知信号が制御装置76に対し所定時間以上入力され続けているか否か)を判定する。そして、ロックオン判定部764は、第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間以上継続されている場合、ロックオン状態記憶部763にロックオン状態である旨の情報が記憶されていれば、ロックオン状態記憶部763に記憶される情報を非ロックオン状態である旨の情報に切換える(更新する)。一方、ロックオン判定部764は、ロックオン状態記憶部763に非ロックオン状態である旨の情報が記憶されていれば、ロックオン状態記憶部763に記憶される情報をロックオン状態である旨の情報に切換える。
【0159】
また、処理部761は、ロックオン状態記憶部763に記憶された情報に応じて、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときの動作が変更されるように構成されている。詳述すると、処理部761は、モータ72の非動作時において、ロックオン状態記憶部763においてロックオン状態である旨が記憶されている場合(つまり、ロックオン状態である場合)、第一センサ81から第一検知信号が出力されると、水栓装置14ひいては吐水口10aを所定方向に回動させるための命令として第一回動命令を生成する。これにより、吐水口10aは、回動可能な状態であれば、前記所定方向に回動していく。
【0160】
また、処理部761は、モータ72の非動作時において、ロックオン状態である場合、第二センサ82から第二検知信号が出力されると、水栓装置14ひいては吐水口10aを前記所定方向とは反対方向に回動させるための命令として第二回動命令を生成する。これにより、吐水口10aは、回動可能な状態であれば、前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0161】
これに対し、処理部761は、モータ72の非動作時において、ロックオン状態記憶部763において非ロックオン状態である旨の情報が記憶されている場合(つまり、非ロックオン状態である場合)、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたとしても、特段命令を生成しないようになっている。そのため、非ロックオン状態では、センサ81,82に被検知物を接近させたとしても、吐水口10aの回動は生じない。つまり、本第3実施形態では、ロックオン状態である場合にのみ、センサ81,82を利用した吐水口10aの回動が可能となっている。
【0162】
尚、本第3実施形態において、処理部761は、上記第1実施形態と同様、モータ72の動作中において、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときには、回動停止命令を生成する。
【0163】
次いで、本第3実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る処理部761の通常動作について、図20等のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0164】
まず、ステップS41において、モータ72が動作中であるか否かを確認する。モータ72が動作中である場合(ステップS41:Yes)、ステップS42に移行し、モータ72が動作中でない場合(ステップS41:No)、ステップS44に移行する。尚、ステップS42,43の処理は、上記第1実施形態におけるステップS12,13の処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0165】
モータ72が動作中でない場合には、ステップS44において、ロックオン状態記憶部763において、ロックオン状態である旨の情報が記憶されているか否か(つまり、ロックオン状態であるか否か)を判定する。ロックオン状態である場合(ステップS44:Yes)、ステップS45に移行してロックオン状態時処理を実行し、ステップS41に戻る。一方、ロックオン状態でない(非ロックオン状態である)場合(ステップS44:No)、ステップS46に移行して非ロックオン状態時処理を実行し、ステップS41に戻る。
【0166】
次に、ロックオン状態時処理について、図21を参照して説明する。まず、ステップS51において、第一センサ81から第一検知信号が出力されたか否かを確認する。第一検知信号が出力された場合(ステップS51:Yes)、ステップS52に移行する。一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS51:No)、ステップS57に移行する。
【0167】
ステップS52では、第一短入力フラグがオフであるか否かを判定する。第一短入力フラグは、第一センサ81に対し被検知物が一瞬接近した場合など、第一センサ81による被検知物の検知が前記所定時間未満だけ続いたことを示す情報である。第一短入力フラグがオフである場合(ステップS52:Yes)、ステップS53にて第一短入力フラグをオンに設定し、ステップS54に移行する。一方、第一短入力フラグが既にオンに設定されている場合(ステップS52:No)、ステップS53をスキップして、ステップS54に移行する。
【0168】
ステップS54では、第一短入力フラグがオンに設定されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(ステップS54:No)、ステップS51に戻る。ステップS51、S54の処理によって、第一短入力フラグが設定されてから所定時間内において、第一検知信号が出力され続けているか否かが確認される。一方、所定時間が経過した場合(ステップS54:Yes)、つまり、第一短入力フラグがオンに設定されてから所定時間以上に亘って第一検知信号が出力され続けている場合、ステップS55にて、第一長入力フラグがオンに設定される。第一長入力フラグは、第一センサ81に対し被検知物が比較的長時間に亘って接近し続けていた場合など、第一センサ81による被検知物の検知が前記所定時間以上に亘って続いたことを示す情報である。ステップS55の後には、ステップS56にて第一短入力フラグをオフにリセットし、ステップS63に移行する。
【0169】
一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS51:No)、ステップS57において、第二センサ82から第二検知信号が出力されたか否かを確認する。第二検知信号が出力された場合(ステップS57:Yes)、ステップS58に移行する。一方、第二検知信号が出力されていない場合(ステップS57:No)、ステップS63に移行する。
【0170】
ステップS58では、第二短入力フラグがオフであるか否かを判定する。第二短入力フラグは、第二センサ82による被検知物の検知が前記所定時間未満だけ続いたことを示す情報である。第二短入力フラグがオフである場合(ステップS58:Yes)、ステップS59にて第二短入力フラグをオンに設定し、ステップS60に移行する。一方、第二短入力フラグが既にオンに設定されている場合(ステップS58:No)、ステップS59をスキップして、ステップS60に移行する。
【0171】
ステップS60では、第二短入力フラグがオンに設定されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(ステップS60:No)、ステップS57に戻る。ステップS57、S60の処理によって、第二短入力フラグが設定されてから所定時間内において、第二検知信号が出力され続けているか否かが確認される。一方、所定時間が経過した場合(ステップS60:Yes)、つまり、第二短入力フラグがオンに設定されてから所定時間以上に亘って第二検知信号が出力され続けている場合、ステップS61にて、第二長入力フラグがオンに設定される。第二長入力フラグは、第二センサ82による被検知物の検知が前記所定時間以上に亘って続いたことを示す情報である。ステップS61の後には、ステップS62にて第二短入力フラグをオフにリセットし、ステップS63に移行する。
【0172】
ステップS63では、第一短入力フラグがオンであるか否かを判定する。第一短入力フラグがオンである場合(ステップS63:Yes)、ステップS64にて第一回動命令を生成して、ステップS69に移行する。第一回動命令の生成により、水栓装置14ひいては吐水口10aは所定方向に回動していく。
【0173】
一方、第一短入力フラグがオフである場合(ステップS63:No)、ステップS65において、第二短入力フラグがオンであるか否かを判定する。第二短入力フラグがオンである場合(ステップS65:Yes)、ステップS66にて第二回動命令を生成して、ステップS69に移行する。第二回動命令の生成により、水栓装置14ひいては吐水口10aは前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0174】
さらに、第二短入力フラグがオフである場合(ステップS65:No)、ステップS67において、第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンであるか否かを判定する。第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンである場合(ステップS67:Yes)、ステップS68にて、ロックオン状態記憶部763に記憶される情報を非ロックオン状態である旨の情報に切換えて、ステップS69に移行する。一方、両長入力フラグがオフである場合(ステップS67:No)、情報の切換えを行うことなく、ロックオン状態時処理を終了する。
【0175】
そして、ステップS69において、ロックオン状態時処理にて設定された各フラグ(第一短入力フラグなど)をオフとして、ロックオン状態時処理を終了する。
【0176】
次いで、非ロックオン状態時処理について、図22を参照して説明する。まず、ステップS71において、第一センサ81から第一検知信号が出力されたか否かを確認する。第一検知信号が出力された場合(ステップS71:Yes)、ステップS72に移行する。一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS71:No)、ステップS74に移行する。
【0177】
ステップS72では、この非ロックオン状態時処理における初めの第一検知信号が出力されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(ステップS72:No)、ステップS71に戻る。ステップS71、S72の処理によって、初めの第一検知信号が出力されてから所定時間内において、第一検知信号が出力され続けているか否かが確認される。そして、所定時間が経過した場合(ステップS72:Yes)、つまり、所定時間以上に亘って第一検知信号が出力され続けている場合、ステップS73にて、第一長入力フラグをオンに設定して、ステップS77に移行する。
【0178】
一方、第一検知信号が出力されていない場合(ステップS71:No)、ステップS74において、第二センサ82から第二検知信号が出力されたか否かを確認する。第二検知信号が出力された場合(ステップS74:Yes)、ステップS75に移行する。一方、第二検知信号が出力されていない場合(ステップS74:No)、ステップS77に移行する。
【0179】
ステップS75では、この非ロックオン状態時処理における初めの第二検知信号が出力されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合(ステップS75:No)、ステップS74に戻る。ステップS74、S75の処理によって、初めの第二検知信号が出力されてから所定時間内において、第二検知信号が出力され続けているか否かが確認される。そして、所定時間が経過した場合(ステップS75:Yes)、つまり、所定時間以上に亘って第二検知信号が出力され続けている場合、ステップS76にて、第二長入力フラグをオンに設定して、ステップS77に移行する。
【0180】
ステップS77では、第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンであるか否かを判定する。第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンである場合(ステップS77:Yes)、ステップS78にて、ロックオン状態記憶部763に記憶される情報をロックオン状態である旨の情報に切換えて、ステップS79に移行する。一方、両長入力フラグがオフである場合(ステップS77:No)、情報の切換えを行うことなく、非ロックオン状態時処理を終了する。
【0181】
そして、ステップS79において、非ロックオン状態時処理にて設定された各フラグ(第一長入力フラグなど)をオフとすることで、非ロックオン状態時処理を終了する。
【0182】
以上のように構成された本第3実施形態に係る水栓システム1は、使用者の操作によって次のように動作する。すなわち、ロックオン状態である場合には、上記第1実施形態と同様に、図23に示すように、水栓装置14の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを所定時間未満だけ接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向又は当該所定方向とは反対方向に回動していく。また、水栓装置14の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを再度接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動が停止される。
【0183】
一方、本第3実施形態においては、図24に示すように、非ロックオン状態である場合、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを所定時間未満だけ接近させても、水栓装置14(吐水口10a)は回動しないようになっている。
【0184】
また、図25に示すように、水栓装置14の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doが所定時間以上に亘って接近し続けると、ロックオン状態は非ロックオン状態に、非ロックオン状態はロックオン状態に切換えられることとなる。
【0185】
以上、本第3実施形態によれば、回動装置7は、非接触式センサ(センサ81,82)による被検知物Doの検知が所定時間以上継続したときに、水栓装置14(吐水口10a)を回動させるためのモータ72の動作制御が可能な状態(ロックオン状態)となる。つまり、非接触式センサ(センサ81,82)による被検知物Doの検知が所定時間以上継続したときになって初めて、水栓装置14(吐水口10a)を回動させるための制御を行うことが可能な状態となる。従って、吐水口10aの意図しない回動を一層生じにくくすることができ、利便性の更なる向上を図ることができる。
〔第4実施形態〕
次いで、第4実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるための吐止水センサ5が設けられている。これに対し、本第4実施形態では、図26に示すように、吐止水センサ5が設けられておらず、第一センサ81及び第二センサ82が吐止水センサ5を兼ねるように構成されている。
【0186】
本第4実施形態では、センサ81,82が吐止水センサ5を兼ねるように構成すべく、回動装置7は、第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときに、モータ72又は電磁弁6を選択的に動作制御可能に構成されている。詳述すると、本第4実施形態における制御装置76は、図27に示すように、モード記憶部765、モード切換部766及び電磁弁制御部767を備えている。本実施形態では、モード切換部766が「切換手段」に相当する。
【0187】
モード記憶部765は、第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときにおける、動作制御の対象を示す情報を記憶する。モード記憶部765は、例えばRAM等により構成されており、回動制御モードである旨の情報、又は、吐止水制御モードである旨の情報を記憶する。回動制御モードとは、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときに、モータ72の動作制御が可能な状態(つまり、モータ72を動作制御の対象とする状態)である。一方、吐止水制御モードとは、センサ81,82から第一検知信号又は第二検知信号が出力されたときに、電磁弁6の動作制御が可能な状態(つまり、電磁弁6を動作制御の対象とする状態)である。
【0188】
モード切換部766は、処理部761の一部を構成しており(勿論、処理部761とは別であってもよい)、センサ81,82から出力された第一検知信号又は第二検知信号、及び、モード記憶部765に記憶された情報に基づき、回動制御モード又は吐止水制御モードの切換を行う。より詳しくは、モード切換部766は、モータ72の非動作時において、センサ81,82からの第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間(例えば1秒間)以上継続されているか否かを判定する。そして、モード切換部766は、第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間以上継続されている場合、モード記憶部765に回動制御モードである旨の情報が記憶されていれば、モード記憶部765に記憶される情報を吐止水制御モードである旨の情報に切換える(更新する)。一方、モード切換部766は、モード記憶部765に吐止水制御モードである旨の情報が記憶されている場合、モード記憶部765に記憶される情報を回動制御モードである旨の情報に切換える。
【0189】
次に、電磁弁制御部767の説明に先立って、本第4実施形態における処理部761について説明する。処理部761は、上記第1実施形態と同様に、入力された信号に基づき演算を行い、演算結果に応じた命令を生成するが、本第4実施形態では、モード記憶部765に記憶されたモードに係る情報によって、生成する命令を変更する。
【0190】
詳述すると、処理部761は、モータ72の非動作時において、モード記憶部765に回動制御モードである旨の情報が記憶されている場合(回動制御モードである場合)には、第一センサ81から所定時間未満だけ第一検知信号が出力されると、第一回動命令を生成する。また、処理部761は、モータ72の非動作時において、回動制御モードである場合には、第二センサ82から所定時間未満だけ第二検知信号が出力されると、第二回動命令を生成する。第一回動命令や第二回動命令が生成されると、モータ制御部762によってモータ72の動作が制御されて、水栓装置14ひいては吐水口10aが回動する。従って、回動制御モードにおいて、第一センサ81,82は、水栓装置14(吐水口10a)の回動を操作するために用いられる。
【0191】
一方、処理部761は、モータ72の非動作時において、モード記憶部765に吐止水制御モードである旨の情報が記憶されている場合(つまり、吐止水制御モードである場合)には、第一センサ81から所定時間未満だけ第一検知信号が出力されると、吐水口10aから吐水を行うための命令として吐水命令を生成する。また、処理部761は、モータ72の非動作時において、吐止水制御モードである場合には、第二センサ82から所定時間未満だけ第二検知信号が出力されると、吐水口10aにおける止水を行うための命令として止水命令を生成する。
【0192】
電磁弁制御部767は、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるように電磁弁6の動作を制御する。詳述すると、電磁弁制御部767は、処理部761によって吐水命令が生成されると(つまり、吐止水制御モードにおいて第一センサ81から第一検知信号が出力されると)、吐水口10aにおいて吐水が行われるように電磁弁6の動作を制御する。一方、電磁弁制御部767は、処理部761により止水命令が生成されると(つまり、吐止水制御モードにおいて第二センサ82から第二検知信号が出力されると)、吐水口10aにおいて止水が行われるように電磁弁6の動作を制御する。尚、吐水口10aにおいて既に吐水が行われているときに吐水命令が生成された場合、又は、吐水口10aにおいて既に止水が行われているときに止水命令が生成された場合、電磁弁制御部767は、電磁弁6をそのままの状態で維持する。
【0193】
上記のように、本第4実施形態では、吐止水制御モードにおいて、センサ81,82は、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるために用いられる。また、上記第1実施形態において、吐止水センサ5は、吐水口10aにおける吐水又は止水を行う場合の双方で共通の操作対象となるが、本第4実施形態において、第一センサ81は、吐水口10aにおける吐水を行うための専用の操作対象となり、第二センサ82は、吐水口10aにおける止水を行うための専用の操作対象となる。
【0194】
次いで、本第4実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動や、吐水口10aにおける吐水又は止水に係る処理部761の通常動作について、図28等のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0195】
まず、ステップS81において、モータ72が動作中であるか否かを確認する。モータ72が動作中である場合(ステップS81:Yes)、ステップS82に移行し、モータ72が動作中でない場合(ステップS81:No)、ステップS84に移行する。尚、ステップS82,83の処理については、上記第1実施形態におけるステップS12,13の処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0196】
モータ72が動作中でない場合には、ステップS84にて、モード記憶部765において、回動制御モードである旨の情報が記憶されているか否か(つまり、回動制御モードであるか否か)を判定する。回動制御モードである場合(ステップS84:Yes)、ステップS85に移行して回動制御モード時処理を実行し、ステップS81に戻る。一方、回動制御モードでない(つまり、吐止水制御モードである)場合(ステップS84:No)、ステップS86に移行して吐止水制御モード時処理を実行し、ステップS81に戻る。
【0197】
回動制御モード時処理では、図29にて示す処理が行われる。回動制御モード時処理において行われるステップS91~107,109の各処理については、上記第3実施形態のロックオン状態時処理におけるステップS51~67,69の各処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0198】
また、回動制御モード時処理では、第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンである場合(ステップS107:Yes)、ステップS108において、モード記憶部765に記憶される情報を吐止水制御モードである旨の情報に切換える。この処理により、回動制御モードにおいて、センサ81,82からの第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間以上継続されている場合には、回動制御モードから吐止水制御モードへと切換えられることになる。
【0199】
次いで、吐止水制御モード時処理について説明する。吐止水制御モード時処理では、図30にて示す処理が行われる。回動制御モード時処理において行われるステップS111~123,125,127,129の各処理については、回動制御モード時処理理におけるステップS91~103,105,107,109の各処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0200】
また、吐止水制御モード時処理では、第一短入力フラグがオンである場合(ステップS123:Yes)、ステップS124にて吐水命令を生成する。吐水命令の生成により、吐水口10aにおける吐水が行われる。
【0201】
さらに、吐止水制御モード時処理では、第二短入力フラグがオンである場合(ステップS125:Yes)、ステップS126にて止水命令を生成する。止水命令の生成により、吐水口10aにおける止水が行われる。
【0202】
加えて、吐止水制御モード時処理では、第一長入力フラグ又は第二長入力フラグがオンである場合(ステップS127:Yes)、ステップS128において、モード記憶部765に記憶される情報を回動制御モードである旨の情報に切換える。この処理により、吐止水制御モードにおいて、センサ81,82からの第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間以上継続されている場合には、吐止水制御モードから回動制御モードへと切換えられることになる。
【0203】
以上のように構成された本第4実施形態に係る水栓システム1は、使用者の操作によって次のように動作する。すなわち、回動制御モードである場合には、上記第1実施形態と同様に、水栓装置14(吐水口10a)の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doが所定時間未満だけ接近すると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向又は当該所定方向とは反対方向に回動していく。また、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doを再度接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動が停止される。
【0204】
一方、本第4実施形態においては、吐止水制御モードである場合、図31,32に示すように、第一センサ81に被検知物Doを所定時間未満だけ接近させると、吐水口10aにおける吐水が行われ、第二センサ82に被検知物Doを所定時間未満だけ接近させると、吐水口10aにおける止水が行われる。
【0205】
また、水栓装置14(吐水口10a)の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物Doが所定時間以上に亘って接近し続けると、回動制御モードは吐止水制御モードに、吐止水制御モードは回動制御モードに切換えられることとなる。
【0206】
以上、本第4実施形態によれば、モード切換部766によって回動制御モード又は吐止水制御モードに切換えることができ、第一検知信号又は第二検知信号の出力に伴い制御される対象を、モータ72又は電磁弁6に切換えることができる。従って、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る操作と、吐水口10aにおける吐止水に係る操作とを共通の非接触式センサ(センサ81,82)を用いて行うことができる。これにより、非接触式センサとは別に、吐止水を行うための吐止水センサ5を設けずに済み、水栓システム1の簡素化を図ることができる。その結果、水栓システム1の製造やメンテナンスに係るコストの抑制を図ることが可能となる。
【0207】
さらに、本第4実施形態では、吐止水制御モードにおいて、第一センサ81が吐水に用いられ、第二センサ82が止水に用いられる。従って、吐止水制御モードにおける両センサ81,82の役割が明確に分けられるため、吐止水に係る操作をより容易かつ直感的に行うことができ、使用者にとっての利便性をさらに高めることができる。
〔第5実施形態〕
次いで、第5実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、操作部8は非接触式センサ(第一センサ81及び第二センサ82)により構成されている。これに対し、本第5実施形態においては、図33,34に示すように、操作部としての第一フットスイッチ15及び第二フットスイッチ16が設けられており、これらフットスイッチ15,16によって、使用者における手以外の部位(基本的には足)を用いて、モータ72ひいては吐水口10aを操作可能とされている。
【0208】
各フットスイッチ15,16は、例えば基台102の脚部における前面において、使用者から見て左右に配置されている。各フットスイッチ15,16は、押圧操作の対象となる被押圧部と、当該被押圧部に対する押圧操作があった際に所定の検知信号を出力する信号出力部(不図示)とをそれぞれ備えている。各フットスイッチ15,16は、前記被押圧部が押圧されたときに、前記信号出力部から検知信号を出力する。出力された検知信号は、所定の信号線(不図示)を介して制御装置76へと入力される。本第5実施形態において、第一フットスイッチ15は、上記第1実施形態における第一センサ81に相当するものであって、検知信号としての第一検知信号を出力可能とされている。一方、第二フットスイッチ16は、上記第1実施形態における第二センサ82に相当するものであって、検知信号としての第二検知信号を出力可能とされている。
【0209】
以上のように構成された第5実施形態に係る水栓システム1は、使用者の操作によって次のように動作する。すなわち、水栓装置14(吐水口10a)の停止中に、使用者が第一フットスイッチ15を操作すると(前記被押圧部を押圧すると)、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向に回動していく。一方、水栓装置14(吐水口10a)の停止中に、使用者が第二フットスイッチ16を操作すると、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0210】
そして、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に、第一フットスイッチ15又は第二フットスイッチ16を再度操作すると、水栓装置14(吐水口10a)の回動が停止される。尚、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に第一フットスイッチ15又は第二フットスイッチ16に対する操作がない場合であっても、水栓装置14が回動可能範囲の限界に至れば、クラッチ作動検知スイッチ75が動作して、水栓装置14(吐水口10a)の回動が停止される。
【0211】
以上、本第5実施形態によれば、操作部は、使用者における手以外の部位により操作可能なフットスイッチ15,16により構成されている。従って、手が自由に使える状態で水栓装置14ひいては吐水口10aを回動させることができ、使用者にとっての利便性を高めることができる。
〔第6実施形態〕
次いで、第6実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、水栓本体部9(外側第一筒部31及び内側第一筒部41)は、取付孔101cを通って天板部101bを貫通した状態で設けられている。これに対し、本第6実施形態では、図35に示すように、水栓本体部9が天板部101bを貫通せず、水栓本体部9の全体が表側空間104に配置されるように構成されている。
【0212】
尚、図35では、水栓本体部9を簡略化して示しているが、本第6実施形態における水栓本体部9は、上記第1実施形態と同様に、外側第一筒部31及び内側第一筒部41を備えている。また、本第6実施形態では、水栓本体部9の下方又は内部に、給水管w、給湯管h、導水管c、ケーブルk(リード線)など(図35ではそれぞれ簡略化して示す)が設けられている。各管w,hから供給された水や湯は導水管cへと流入可能に構成されており、導水管cには電磁弁6が介在されている。そして、導水管cにおける電磁弁6よりも下流部分が内側構成部4(図35では不図示)を構成しており、当該部分(内側構成部4)の先端側に位置する吐水口10a(図35では不図示)から吐水がなされるようになっている。尚、ケーブルkとしては、センサ81,82からの出力信号を制御装置76へと伝達するものや、吐止水センサ5からの出力信号を電磁弁6へと伝達するものなどが設けられている。
【0213】
さて、本第6実施形態における水栓システム1についてより詳しく説明すると、当該水栓システム1は、保持筒部2及び水栓本体部9間に介在設置されたベース部20を備えている。図35では、ベース部20を簡略化して示している。ベース部20は、下方に向けて突出する装置連結部20aを備えており、天板部101bに貫通形成された孔部101dに当該装置連結部20aが挿通された状態で、保持筒部2に対し固定されている。これにより、ベース部20は、シンク101(天板部101b)に対し相対回動不能な状態で設置されている。
【0214】
尚、本第6実施形態における保持筒部2は、回動装置7などが直接取付けられるものではなく、雄ねじ部22を具備しないものであり、図示しない取付構造によってシンク101(天板部101)に固定されている。また、本第6実施形態では、保持筒部2内に、上述した給水管wや給湯管h、導水管c、ケーブルkなどが挿通設置されるようになっている。
【0215】
また、ベース部20は、保持筒部2に固定された状態において、保持筒部2の内部空間に連通し鉛直方向に延びる本体部挿通孔20bと、装置連結部20a内を貫通する伝達部挿通孔20cとを備えている。そして、水栓本体部9は、本体部挿通孔20bにおける上側部分に挿通設置されることで、天板部101bを貫通せず、その全体が表側空間104に配置されるようになっている。尚、ベース部20及び水栓本体部9間には、例えばXリング等の所定のパッキン(不図示)が配置されており、両者間への水の浸入防止が図られている。
【0216】
加えて、本第6実施形態では、吐止水センサ5(図35では不図示)に加えてレバー部13がベース部20における貯水部101a側の上部に設けられている。当該レバー部13を操作することで、吐水口10aにおける吐水可能状態又は吐水不能状態を切換えたり、吐水口10aからの吐水量や水温を調節したりすることが可能となっている。尚、本第6実施形態では、レバー部13を操作して前記吐水可能状態とした場合に、吐止水センサ5を利用した吐水口10aからの吐水が可能となる。
【0217】
また、本第6実施形態においても、回動装置7の伝達部73は、第一中間伝達部732、第二中間伝達部733及び吐水口側伝達部734を備えるところ、水栓本体部9が表側空間104に配置されていることに対応して、吐水口側伝達部734が表側空間104に配置された状態となっている。そして、本第6実施形態における伝達部73は、裏側空間105に位置する第二中間伝達部733から表側空間104に位置する吐水口側伝達部734へと駆動力を伝達するための第三中間伝達部735を備えている。第三中間伝達部735は、棒状をなす縦貫伝達部735aと、当該縦貫伝達部735aの一端部に設けられた一端側伝達部735bと、縦貫伝達部735aの他端部に設けられた他端側伝達部735cとを有している。
【0218】
縦貫伝達部735aは、伝達部挿通孔20cに回転可能な状態で挿通されており、孔部101dを通って、モータ72の動作による駆動力を裏側空間105から表側空間104へと伝達する。一端側伝達部735bは、縦貫伝達部735aとともに回動可能であり、その外周に設けられた歯車が吐水口側伝達部734(被動ギア734a)に噛合されている。他端側伝達部735cは、縦貫伝達部735aとともに回動可能であり、その外周に設けられた歯車が第二中間伝達部733(駆動ギア733b)に噛合されている。
【0219】
尚、本第6実施形態では、モータ側伝達部731が第一中間伝達部732と一体化されている。また、第一中間伝達部732に雄ねじ714が固定されており、当該雄ねじ714の頭部分と第二中間伝達部733とで押圧部品74が挟み込まれることにより、第一中間伝達部732に対し第二中間伝達部733が押し付けられた状態となっている。
【0220】
上記のように構成された本第6実施形態における水栓システム1では、操作部8(センサ81,82)に対する操作によりモータ72を動作させることで、第三中間伝達部735(縦貫伝達部735aなど)を介して、水栓本体部9のうち表側空間104に位置する部位へのモータ72の動作による駆動力が伝達される。その結果、上記第1実施形態と同様に、水栓装置14ひいては吐水口10aが回動する。
【0221】
以上、本第6実施形態によれば、基本的には、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる
また、縦貫伝達部735aを介して水栓本体部9のうち表側空間104に位置する部位へと駆動力が伝達されるため、水栓本体部9としてシンク101(天板部101b)を貫通するものを用いる必要はない。これにより、水栓本体部9の小型化(軽量化)を図ることができ、水栓本体部9ひいては吐水口10aの回動に係る円滑性の向上を図ることができる。また、水栓本体部9の下方において、給水管wや給湯管h、導水管cなどの設置スペースをより広く確保することができる。その結果、水栓装置14における所期の機能を無理なく発揮させることがより容易に可能になるとともに、水栓装置14(水栓システム1)の設置に係る容易性を高めることができる。
〔第7実施形態〕
次いで、第7実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態において、回動装置7は、吐水口10aの回動方向における位置を時間経過によって自動的に変化させる機能は特に有しておらず、水栓装置14(吐水口10a)の回動後、吐水口10aの位置はそのまま維持されるように構成されている。これに対し、本第7実施形態において、回動装置7は、センサ81,82による被検知物の検知が予め設定された所定時間以上継続して行われないときに、吐水口10aが所定の設定位置に戻るようにモータ72の動作を制御可能に構成されている。
【0222】
詳述すると、本第7実施形態において、回動装置7は、図36に示すように、位置検出装置79を備えている。位置検出装置79は、水栓本体部9や伝達部73のうち吐水口10aの回動に伴い(必ず)回動する部位(例えば、第二中間伝達部733等)に設けられ、水栓本体部9や当該部位における回動角度を検出可能なエンコーダ(不図示)などによって構成されている。位置検出装置79は、吐水口10aが前記設定位置に配置されているか否か、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側又は右側のどちらに位置しているか、及び、吐水口10aの回動が生じたか否かについての判定を行うために利用される。位置検出装置79は、吐水口10aの回動角度に関する信号(情報)をモータ制御部762に出力可能である。
【0223】
また、モータ制御部762は、位置検出装置79からの出力信号に基づき、吐水口10aの回動角度に関する情報を処理部761に送る。これにより、処理部761は、吐水口10aの回動方向における位置を把握することが可能となっている。
【0224】
さらに、処理部761は、位置検出装置79からの出力信号に基づき吐水口10aが回動したことを把握すると、時間計測を開始する。時間計測は、所定のタイマを用いて行うことができる。そして、処理部761は、吐水口10aが前記設定位置以外の位置に配置された状態のまま、計測時間が予め設定された所定時間(例えば30分間など)を超えると、吐水口10aを前記設定位置に戻すための処理を行う。
【0225】
すなわち、処理部761は、位置検出装置79からの出力信号に基づき、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側又は右側のどちらに位置しているかを検出する。そして、処理部761は、検出した吐水口10aの位置に基づき、第一回動命令又は第二回動命令を生成する。つまり、処理部761は、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側に位置している場合、第一回動命令を生成する。一方、処理部761は、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも右側に位置している場合、第二回動命令を生成する。第一回動命令又は第二回動命令が生成されることで、モータ制御部762によってモータ72の通電が制御され、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記設定位置に戻るようにして回動していく。
【0226】
さらに、処理部761は、第一回動命令又は第二回動命令の生成後、位置検出装置79からの出力信号に基づき、吐水口10aが前記設定位置に配置されたことを把握すると、回動停止命令を生成する。回動停止命令の生成に伴い、モータ制御部762によってモータ72への通電が停止される。その結果、吐水口10aは前記設定位置に配置された(戻った)状態となる。
【0227】
尚、吐水口10aの「設定位置」は、例えば、吐水口10aの回動可能範囲の中心に当たる位置や回動可能範囲の端に当たる位置とされるが、これらに限定される訳ではなく、吐水口10aの回動可能範囲内における予め設定された一定位置であればよい。
【0228】
次いで、本第7実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る処理部761の通常動作について、図37のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、ステップS11~S17の処理は上記第1実施形態と基本的に同様であるため、これら処理についての説明は省略する。
【0229】
本第7実施形態では、モータ72が動作中ではなく、また、第一検知信号及び第二検知信号の双方が出力されていない場合、つまり、ステップS16にて否定判定された場合、ステップS18,S19に移行し、カウント処理及び設定位置配置処理を行う。
【0230】
カウント処理は、水栓装置14(吐水口10a)における直近の回動からの経過時間を計測する処理である。カウント処理では、図38に示すように、まず、ステップS18-1にて、位置検出装置79からの出力信号を利用して、水栓装置14(吐水口10a)の回動が生じたか否かを判定する。この判定は、前回のステップS18-1において位置検出装置79からの出力により把握された回動角度と、今回のステップS18-1において同様に把握された回動角度とを比較することで行われ、これらに相違がある場合に、水栓装置14(吐水口10a)の回動が生じたものと判定される。水栓装置14(吐水口10a)の回動が生じた場合(ステップS18-1:Yes)、ステップS18-2に移行し、水栓装置14(吐水口10a)の回動が生じていない場合(ステップS18-1:No)、カウント処理を終了し、ステップS19の設定位置配置処理に移行する。
【0231】
ステップS18-2では、時間計測リセット処理を行う。すなわち、時間計測の停止処理を行うとともに、計測時間を初期値(例えば0)にリセットする。この処理は、時間計測中において再度の水栓装置14(吐水口10a)の回動があったときに、その回動を契機とした時間の再計測を行うためになされる。ステップS18-2に続くステップS18-3では、時間計測開始処理を行う。時間計測開始処理では、時間計測が開始される。ステップS18-3の後、ステップS19の設定位置配置処理を行う。
【0232】
設定位置配置処理は、吐水口10aを前記設定位置に配置するための処理である。設定位置配置処理では、図39に示すように、まず、ステップS19-1にて、設定位置配置処理におけるステップS19-2以降の処理を行う条件を満たしているか否かを判定する。本第7実施形態では、ステップS19-1にて、カウント処理における計測時間が予め設定された所定時間を超えたか否かを判定する。計測時間が所定時間を超えていない場合(ステップS19-1:No)、設定位置配置処理を終了し、ステップS11に戻る。一方、計測時間が所定時間を超えた場合(ステップS19-1:Yes)、ステップS19-2に移行する。尚、時間計測が行われていない場合、計測時間は初期値となるため、ステップS19-1では否定判定がなされる。
【0233】
ステップS19-2では、位置検出装置79からの出力信号を利用して、吐水口10aが前記設定位置に配置されているか否かを判定する。吐水口10aが前記設定位置に配置されている場合(ステップS19-2:Yes)、水栓装置14(吐水口10a)を回動させる必要はないため、ステップS19-3~S19-7をスキップして、ステップS19-8に移行する。一方、吐水口10aが前記設定位置に配置されていない場合(ステップS19-2:No)、ステップS19-3にて、位置検出装置79からの出力信号を利用して、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側に配置されているのか否かを判定する。
【0234】
吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側に配置されている場合(ステップS19-3:Yes)、ステップS19-4にて第一回動命令を生成する。一方、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも右側に配置されている場合(ステップS19-3:No)、ステップS19-5にて第二回動命令を生成する。第一回動命令又は第二回動命令の生成により、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記設定位置に向けて回動していく。
【0235】
ステップS19-4,S19-5の後には、ステップS19-6にて、位置検出装置79からの出力信号を利用して、吐水口10aが前記設定位置に配置されるまで、吐水口10aが前記設定位置に配置されたか否かの判定を繰り返し行う。そして、吐水口10aが前記設定位置に配置された場合(ステップS19-6:Yes)、ステップS19-7にて回動停止命令を生成する。これにより、吐水口10aは前記設定位置にて停止される。
【0236】
ステップS19-7に続くステップS19-8では、ステップS19-2以降の処理を行うか否かの判定材料となった情報のリセット処理を実行する。本第7実施形態では、リセット処理において、ステップS18-2と同様の時間計測リセット処理を行い、計測時間を初期値(例えば0)にリセットする。ステップS18-7の後、ステップS11に戻る。
【0237】
以上のように構成された本第7実施形態に係る水栓システム1は、次のように動作する。すなわち、上記第1実施形態と同様に、水栓装置14(吐水口10a)の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向又は当該所定方向とは反対方向に回動していく。また、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を再度接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動が停止される。
【0238】
一方、水栓装置14(吐水口10a)が回動して前記設定位置以外の位置に配置されている場合、水栓装置14(吐水口10a)の直近の回動から所定時間(例えば30分間)が経過したとき、吐水口10aは自動的に回動して前記設定位置に配置されることとなる。
【0239】
以上、本第7実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0240】
加えて、本第7実施形態によれば、操作部8に対する操作(センサ81,82による被検知物の検知)が所定時間以上継続して行われないときに、吐水口10aを自動的に回動させて所定の設定位置に配置させる(戻す)ことができる。従って、水栓装置14に手を触れることなく、吐水口10aを設定位置に戻すことができ、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0241】
また、吐水口10aは基本的には(直近の時期に回動していない限り)前記設定位置に配置されることとなり、使用者にとっては、吐水口10aが設定位置に配置されている状態が通常状態となる。従って、吐水口10aを回動させた後、ある程度の時間が経過してから水栓システム1を使用するときにおいて、(吐水口10aが自動的に設定位置に戻るから)吐水口10aの位置が通常状態と異なるといった事態が生じにくくなる。これにより、使用者にとっての利便性向上をより図ることができる。
〔第8実施形態〕
次いで、第8実施形態について、上記第7実施形態との相違点を中心に説明する。上記第7実施形態において、回動装置7は、センサ81,82による被検知物の検知が予め設定された所定時間以上継続して行われないときに、吐水口10aが所定の設定位置に戻るようにモータ72の動作を制御可能に構成されている。これに対し、本第8実施形態において、センサ81,82による被検知物の検知が予め設定された所定の態様で行われたときに、吐水口10aが所定の設定位置に戻るようにモータ72の動作を制御可能に構成されている。
【0242】
詳述すると、上記第7実施形態と同様、処理部761は、位置検出装置79からの出力信号に基づき、吐水口10aが前記設定位置に配置されているか否か、また、吐水口10aが使用者から見て前記設定位置よりも左側又は右側のどちらに位置しているかなどについて把握可能とされている。
【0243】
そして、処理部761は、基本的に、モータ72の非動作時において、第一センサ81から第一検知信号が出力されると第一回動命令を生成し、第二センサ82から第二検知信号が出力されると第二回動命令を生成する。但し、処理部761は、第一検知信号又は第二検知信号の出力が所定時間以上継続されている場合、吐水口10aを前記設定位置に戻すための処理を実行する。すなわち、本第8実施形態においては、「第一センサ81又は第二センサ82による被検知物の検知が所定時間以上継続して行われているとき」が「センサ81,82による被検知物の検知が予め設定された所定の態様で行われたとき」に相当する。尚「所定の態様」については適宜変更可能である。例えば、「第一センサ81又は第二センサ82による被検知物の検知が所定時間内に所定回数以上行われたとき」や「第一センサ81及び第二センサ82に対し一定の手順で被検知物を検知させること」などが、「センサ81,82による被検知物の検知が予め設定された所定の態様で行われたとき」に相当するものとしてもよい。
【0244】
次いで、本第8実施形態における、水栓装置14(吐水口10a)の回動に係る処理部761の通常動作について、図40のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、ステップS11~S14,S16の各処理は上記第1実施形態と基本的に同様であるため、これら処理についての説明は省略する。
【0245】
本第8実施形態では、図40に示すように、モータ72が動作中ではない状態において、第一検知信号が出力された場合、すなわちステップS14にて肯定判定された場合、ステップS150にて第一検知信号対応処理を行う。一方、モータ72が動作中ではない状態において、第二検知信号が出力された場合、すなわちステップS16にて肯定判定された場合、ステップS160にて第二検知信号対応処理を行う。
【0246】
第一検知信号対応処理では、図41に示すように、まず、ステップS150-1にて、第一短入力フラグをオンに設定する。第一短入力フラグは、上記第3実施形態と同様、第一センサ81に対し被検知物が一瞬接近した場合など、第一センサ81による被検知物の検知が前記所定時間未満だけ続いたことを示す情報である。
【0247】
ステップS150-1に続くステップS150-2,S150-3の処理では、第一検知信号の出力が所定時間以上継続して行われたか否かを判定する。第一検知信号の出力が所定時間以上継続して行われた場合(ステップS150-2:Yes)、ステップS150-4,S150-5にて、第一長入力フラグをオフからオンに変更するとともに、第一短入力フラグをオフとする。第一長入力フラグは、上記第3実施形態と同様に、第一センサ81に対し被検知物が比較的長時間に亘って接近し続けていた場合など、第一センサ81による被検知物の検知が前記所定時間以上に亘って続いたことを示す情報である。ステップS150-5の処理の後、ステップS150-6に移行する。
【0248】
一方、第一検知信号の出力が所定時間以上継続して行われなかった場合、すなわち、第一センサ81による被検知物の検知が比較的短時間しか行われなかった場合(ステップS150-3:No)、第一長入力フラグがオフとされ、第一短入力フラグがオンとされた状態で、ステップS150-6に移行する。
【0249】
ステップS150-6~S150-9では、第一短入力フラグ及び第一長入力フラグの各状態(オン又はオフの相違)に応じた処理を行う。すなわち、第一短入力フラグがオンである場合(ステップS150-6:Yes)、ステップS150―7にて第一回動命令を生成するとともに、ステップS150-8にて第一短入力フラグをオフとし、第一検知信号対応処理を終了する。第一回動命令の生成により、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向に回動していく。
【0250】
一方、第一短入力フラグがオフである場合(ステップS150-6)、つまり、第一長入力フラグがオンである場合、ステップS150-9にて設定位置配置処理を行い、第一検知信号対応処理を終了する。この設定位置配置処理は、上記第7実施形態における設定位置配置処理と基本的には同様である。但し、本第8実施形態において、ステップS19-1では、ステップS19-2以降の処理を行う条件を満たしているか否かの判定として、第一長入力フラグがオンであるか否かについての判定が行われ、第一長入力フラグがオンである場合、ステップS19-2に移行する。また、ステップS19-8のリセット処理では、第一長入力フラグをオフとする処理が行われる。
【0251】
次いで、第二検知信号対応処理について説明する。当該処理では、図42に示すように、まず、ステップS160-1にて、第二短入力フラグをオンに設定する。第二短入力フラグは、上記第3実施形態と同様、第二センサ82に対し被検知物が一瞬接近した場合など、第二センサ82による被検知物の検知が前記所定時間未満だけ続いたことを示す情報である。
【0252】
ステップS160-1に続くステップS160-2,S160-3では、第二検知信号の出力が所定時間以上継続して行われたか否かを判定する。第二検知信号の出力が所定時間以上継続して行われた場合(ステップS160-2:Yes)、ステップS160-4,S160-5にて、第二長入力フラグをオフからオンに変更するとともに、第二短入力フラグをオフとする。第二長入力フラグは、上記第3実施形態と同様に、第二センサ82に対し被検知物が比較的長時間に亘って接近し続けていた場合など、第二センサ82による被検知物の検知が前記所定時間以上に亘って続いたことを示す情報である。ステップS160-5の処理の後、ステップS160-6に移行する。
【0253】
一方、第二検知信号の出力が所定時間以上継続して行われなかった場合、すなわち、第二センサ82による被検知物の検知が比較的短時間しか行われなかった場合(ステップS160-3:No)、第二長入力フラグがオフとされ、第二短入力フラグがオンとされた状態で、ステップS160-6に移行する。
【0254】
ステップS160-6~S160-9では、第二短入力フラグ及び第二長入力フラグの各状態(オン又はオフの相違)に応じた処理が行われる。すなわち、第二短入力フラグがオンである場合(ステップS160-6:Yes)、ステップS160―7にて第二回動命令を生成するとともに、ステップS160-8にて第二短入力フラグをオフとし、第二検知信号対応処理を終了する。第二回動命令の生成により、水栓装置14ひいては吐水口10aが前記所定方向とは反対方向に回動していく。
【0255】
一方、第二短入力フラグがオフである場合(ステップS160-6:No)、すなわち、第二長入力フラグがオンである場合、ステップS160-9にて設定位置配置処理を行い、第二検知信号対応処理を終了する。この設定位置配置処理は、上記第7実施形態における設定位置配置処理と基本的には同様である。但し、この設定位置配置処理では、ステップS19-1にて、ステップS19-2以降の処理を行う条件を満たしているか否かの判定として、第二長入力フラグがオンであるか否かについての判定が行われ、第二長入力フラグがオンである場合、ステップS19-2に移行する。また、ステップS19-8のリセット処理では、第二長入力フラグをオフとする処理が行われる。
【0256】
以上のように構成された本第8実施形態に係る水栓システム1は、次のように動作する。すなわち、上記第1実施形態と同様に、水栓装置14(吐水口10a)の停止中において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を比較的短時間だけ接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aが所定方向又は当該所定方向とは反対方向に回動していく。また、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を再度接近させると、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動が停止される。
【0257】
一方、水栓装置14(吐水口10a)の停止中であって吐水口10aが前記設定位置以外の位置に配置されている状態において、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物が所定時間以上に亘って接近し続けると、吐水口10aが回動して前記設定位置に配置されることとなる。
【0258】
以上、本第8実施形態によれば、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0259】
加えて、本第8実施形態によれば、操作部8(センサ81,82)による被検知物の検知が予め設定された所定の態様で行われたとき、吐水口10aを自動的に回動させて前記設定位置に配置させる(戻す)ことができる。これにより、水栓装置14に手を触れることなく、吐水口10aを前記設定位置に戻すことができ、利便性の一層の向上を図ることができる。
【0260】
また、上記第7実施形態と異なり、吐水口10aが設定位置に配置される(戻る)まで時間経過を待つ必要はなく、使用者の都合に合わせて水栓装置14に手を触れることなく吐水口10aを前記設定位置に配置させることができる。従って、この点においても使用者にとっての利便性を向上させることができる。
【0261】
尚、上記第1~8実施形態における各技術思想を適宜組合わせることとしてもよい。また、上記各実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0262】
(a)上記第2実施形態などにおいては、吐水部10の先端面にセンサ81,82が設けられているが、図43に示すように、吐水部10の先端部側面(上面)にセンサ81,82を設けることとしてもよい。
【0263】
また、上記第1実施形態等において、センサ81,82は使用者から見て左右に配置されているが、センサ81,82を使用者から見て上下又は前後に配置することとしてもよい。
【0264】
(b)上記実施形態では特に記載していないが、水栓装置14ひいては吐水口10aの回動範囲を複数段階で設定可能とするための回動範囲設定部を設けてもよい。例えば、図44に示すように、回動範囲設定部17は、水栓本体部9(外側構成部3)の外周から突出する回動規制突起171と、保持筒部2の上端面に形成された複数の被挿通孔172と、上部が保持筒部2の上端面から突出した状態で前記被挿通孔172に挿通可能な棒状部173とによって構成することができる。この構成においては、回動規制突起171が棒状部173と接触するまでの範囲内において水栓装置14及び吐水口10aを回動可能とすることができ、棒状部173の設置位置を調節することで、水栓装置14及び吐水口10aの回動範囲を複数段階で設定することができる。従って、例えば周囲物等との関係で好ましくない位置に水栓装置14(吐水口10a)が至ることを防止すること等が容易に可能となり、使用者にとっての利便性を一層向上させることができる。
【0265】
尚、回動範囲設定部17は、クラッチ部78やクラッチ作動検知スイッチ75の存在を前提として成り立つものである。つまり、クラッチ部78やクラッチ作動検知スイッチ75を設けることによって、回動装置7の構成を特段変更することなく、単に水栓装置14や吐水部10aの回動を物理的に一定範囲に制限しさえすれば、水栓装置14及び吐水口10aの回動範囲を設定(調節)することが可能となる。
【0266】
(c)上記第1実施形態において、吐水口10aは、被検知物Doから離れる方向に回動するように構成されているが、被検知物Doへと接近する方向に回動するものであってもよい。
【0267】
(d)上記第1実施形態において、第一センサ81又は第二センサ82により被検知物が検知されると、回動停止命令が生成される等の回動停止条件を満たさない限り、水栓装置14(吐水口10a)が回動し続けるように構成されている。これに対し、第一センサ81又は第二センサ82により被検知物が検知されたときに、一定角度だけ水栓装置14(吐水口10a)が回動する、つまり、一定角度の回動後に水栓装置14ひいては吐水口10aが自動的に停止するように構成してもよい。
【0268】
また、第一センサ81及び第二センサ82により被検知物の検知が継続されている間、吐水口10aの回動が継続されるように構成し、被検知物が検知されなくなったときに、吐水口10aの回動が停止されるように構成してもよい。このように構成した場合には、吐水口10aの回動に合わせて被検知物を移動させて、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を接近させ続けることで、いわば被検知物に引っ張られる又は押されるようにして、吐水口10aが回動していくことになる。
【0269】
また、上記第1実施形態等では、水栓装置14(吐水口10a)の回動中に、第一センサ81又は第二センサ82により被検知物が検知されると、水栓装置14(吐水口10a)の回動が停止されるように構成されている。つまり、吐水口10aの回動停止に係る操作は、両センサ81,82を対象として行うことができるように構成されている。これに対し、吐水口10aが所定方向に回動している場合には、両センサ81,82のうちの一方が吐水口10aの回動停止に係る操作対象となり、吐水口10aが前記所定方向とは反対方向に回動している場合には、両センサ81,82のうちの他方が吐水口10aの回動停止に係る操作対象となるように構成してもよい。例えば、上記第1実施形態の構成においては、吐水口10aが所定方向に回動している場合、第一センサ81が吐水口10aの回動停止に係る操作対象となり、吐水口10aが前記所定方向とは反対方向に回動している場合、第二センサ82が吐水口10aの回動停止に係る操作対象となるようにしてもよい。
【0270】
(e)上記第2実施形態では、被検知物Doの移動方向と同じ方向に水栓装置14(吐水口10a)が回動するように構成されているが、被検知物Doの移動方向とは反対方向に水栓装置14(吐水口10a)が回動するように構成してもよい。
【0271】
また、上記第2実施形態のようにセンサ81,82を配置した構成において、両センサ81,82のうちの一方が被検知物Doを検知したときに、水栓装置14(吐水口10a)が回動するように構成してもよい。つまり、上記第2実施形態の構成に対し、上記第1実施形態における吐水部10の操作に係る手法を適用してもよい。
【0272】
(f)上記第3実施形態では、ロックオン状態である場合、切換えのための操作が行われない限り、ロックオン状態で維持されるように構成されている。これに対し、ロックオン状態に切換えられてから所定時間の経過後に、ロックオン状態から非ロックオン状態へと自動的に切換わるように構成してもよい。
【0273】
(g)上記第3実施形態におけるロックオン状態又は非ロックオン状態の切換え、及び、上記第4実施形態における回動制御モード又は吐止水制御モードの切換えは、制御装置76(特にロックオン判定部764やモード切換部766)を用いて、センサ81,82に対し被検知物を所定時間以上に亘って接近させ続けることで行われるように構成されている。これに対し、例えば、センサ81,82に対し被検知物を所定の下限時間(例えば3秒間)以上かつ所定の上限時間(例えば4秒間)以下の時間に亘って接近させ続けることで、上記の切換えが行われるように構成してもよい。また、センサ81,82に対し一定の手順で被検知物を接近させる(例えば、第一センサ81、第二センサ82及び第一センサ81に対しこの順序で被検知物を接近させる)ことで、上記の切換えが行われるように構成してもよい。
【0274】
加えて、ロックオン状態又は非ロックオン状態の切換えや、回動制御モード又は吐止水制御モードの切換えを、手動スイッチを用いて行うこととしてもよい。例えば、手動スイッチをオンとすることで、ロックオン状態又は回動制御モードとなり、一方、手動スイッチをオフとすることで、非ロックオン状態又は吐止水制御モードとなるように構成してもよい。
【0275】
(h)上記第4実施形態では、吐止水制御モードにおいて、第一センサ81又は第二センサ82に被検知物を接近させることで、吐水口10aにおける吐水又は止水が切換わるように構成されている。これに対し、吐止水制御モードにおいて、第一センサ81及び第二センサ82のそれぞれから検知信号が出力されたときに、これら検知信号の出力順に応じて吐水口10aにおける吐水又は止水が行われるように、電磁弁6の動作を制御する構成としてもよい。すなわち、上記第2実施形態における吐水口10aを回動させる際の操作手法を、吐水又は止水を切換える際の操作手法として利用した構成としてもよい。
【0276】
この構成によれば、吐止水制御モードにおいて、例えば、第一センサ81及び第二センサ82の順に検知信号が出力されたときには吐水及び止水のうちの一方を行い、その逆に第二センサ82及び第一センサ81の順に検知信号が出力されたときには吐水及び止水のうちの他方を行うといったことができる。従って、単に両センサ81,82のうちの一方による被検知物Doの検知のみによって吐水又は止水が行われる場合と比べて、吐水や止水が意図せずに行われてしまうといった事態をより生じにくくすることができる。これにより、使用者にとっての利便性の向上をより効果的に図ることができる。
【0277】
(i)上記実施形態では記載していないが、上記第3実施形態や上記第4実施形態において、ロックオン状態若しくは非ロックオン状態である旨、又は、回動制御モード若しくは吐止水制御モードである旨を外部に表示するための表示手段(例えば、2色で発光可能なランプなど)を設けてもよい。
【0278】
(j)上記第5実施形態では、フットスイッチ15,16によって吐水口10aの回動に係る操作が行われるように構成されているが、フットスイッチ15,16を用いて吐水口10aにおける吐水又は止水の切換えに係る操作をも実行可能に構成してもよい。この構成においては、例えば手動スイッチやセンサ等によって、フットスイッチ15,16による操作対象が回動装置7(モータ72)又は電磁弁6に切換可能に構成してもよい。
【0279】
(k)上記第5実施形態では、使用者における手以外の部位を用いて操作可能な操作部としてフットスイッチ15,16を挙げているが、このような操作部はフットスイッチに限定されるものではない。従って、例えば、図45に示すように、使用者における腰やその周辺部を用いて、吐水口10aの回動を操作可能な第一ウエストスイッチ18及び第二ウエストスイッチ19を利用してもよい。この場合においても、上記第5実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。尚、ウエストスイッチ18,19の構成は、フットスイッチ15,16の構成と同様であり、第一ウエストスイッチ18を押圧操作することで第一検知信号が出力され、第二ウエストスイッチ19を押圧操作することで第二検知信号が出力される。
【0280】
(l)上記実施形態では特に記載していないが、貯水部100aの外へと水が流れ出すことを防止するという観点では、吐水口10aが貯水部101aの鉛直上方に常に位置するように水栓装置14(吐水口10a)の回動可能範囲を設定することが好ましい。
【0281】
一方、水栓装置14(吐水口10a)の回動可能範囲をより大きなものとして利便性の更なる向上を図るという観点では、吐水口10aが貯水部101aの鉛直上方から外れた位置に配置可能となるように水栓装置14(吐水口10a)の回動可能範囲を設定してもよい。このように設定した場合には、吐水口10aが貯水部101aの鉛直上方から外れた位置に配置されているときに、吐水口10aからの吐水が不能となったり、吐水が停止されたりするように構成してもよい。
【0282】
(m)上記実施形態のクラッチ部78においては、第二中間伝達部733(第二クラッチギア733a)が、両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動可能に構成されているが、第一中間伝達部732(第一クラッチギア732a)が、両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に移動可能であってもよい。勿論、両クラッチギア732a,733aの噛合を解除する方向に両中間伝達部732,733(両クラッチギア732a,733a)が移動可能であってもよい。
【0283】
(n)上記実施形態では、通電動作部としてモータ72を挙げているが、モータ以外の通電により動作するアクチュエータ(例えばソレノイドなど)を通電動作部として用いてもよい。
【0284】
(o)上記第1実施形態などでは、吐止水センサ5により被検知物が検知される度に、吐水口10aにおける吐水又は止水が切換えられるように構成されており、吐止水センサ5により被検知物が検知されない限り、吐水口10aにおける吐水が継続されるように構成されている。これに対し、吐水口10aにおける吐水が一定時間だけ継続されるように構成してもよい。尚、このような構成を、上記第4実施形態に係る構成、つまり、センサ81,82を用いて吐水口10aにおける吐水又は止水を切換える構成に対し適用してもよい。
【0285】
(p)上記実施形態における吐水部10の形状は一例であり、適宜変更してもよい。従って、上記実施形態における外側第二筒部32や内側第二筒部42は水平方向に延びているが、例えば、外側第二筒部32等を外側第一筒部31側から斜め上向きに延びるように構成してもよい。
【0286】
(q)上記実施形態では、槽体としてシンク101を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体はシンクに限定されるものではない。従って、例えば、浴槽や洗面器などのシンク以外の槽体に対し本発明の技術思想を適用してもよい。
【0287】
(r)上記実施形態では、取付対象部としてシンク101の天板部101bを挙げているが、取付対象部はシンク101の天板部101bに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、キッチンにおけるカウンタなどを取付対象部としてもよい。
【0288】
(s)水栓システム1は、吐水口10aにおける吐水又は止水を切換えるための操作レバーを有するものであってもよい。この場合、吐止水センサ5を設けなくてもよい。
【0289】
また、水栓システム1は、吐水口10aから湯を供給可能なものであってもよい。
【0290】
(t)回動装置7の配置位置については上記実施形態に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、回動装置7は、その全体が表側空間105に配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0291】
1…水栓システム、6…電磁弁、7…回動装置、8…操作部、9…水栓本体部、10…吐水部、10a…吐水口、14…水栓装置、15…第一フットスイッチ(操作部)、16…第二フットスイッチ(操作部)、72…モータ(通電動作部)、73…伝達部、75…クラッチ作動検知スイッチ(クラッチ作動検知手段)、78…クラッチ部、81…第一センサ(非接触式センサ)、82…第二センサ(非接触式センサ)、101…シンク(槽体)、101a…貯水部、101b…天板部(取付対象部)、101c…取付孔、101d…孔部、104…表側空間、105…裏側空間、732a…第一クラッチギア、733a…第二クラッチギア、733b…駆動ギア、734a…被動ギア、735a…縦貫伝達部。
図1
図2
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