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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021319
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20220126BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220126BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116959
(22)【出願日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2020124284
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520270163
【氏名又は名称】株式会社バイタル
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】鯵坂 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
(72)【発明者】
【氏名】一関 政男
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA48
4D004AB05
4D004CA26
4D004CB32
4D004CB41
(57)【要約】
【課題】廃棄物全体の炭化処理が完了までの時間を短縮化する。
【解決手段】廃棄物処理装置1に、外気遮断空間内で廃棄物25aの少なくとも表面を炭化する電気ヒータ8と、電気ヒータ8によって少なくとも表面が炭化された廃棄物25aから当該表面の炭化物を除去する炭化物掻き取りプレート10と、炭化物5を電気ヒータ8の近傍に位置させる廃棄物蓄積部26と、を備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気遮断空間内で廃棄物の少なくとも表面を炭化する炭化手段と、
前記炭化手段によって少なくとも表面が炭化された廃棄物から当該表面の炭化部分を除去する除去手段と、
前記除去手段によって除去されてなる炭化物を前記炭化手段の近傍に位置させる移動手段と、
を備える、廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記炭化手段は、前記廃棄物を載置可能に配置されており、
前記除去手段は、前記炭化手段の上部近傍で前記廃棄物の載置面の炭化部分を除去する、
請求項1記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
処理すべき廃棄物を前記外気遮断空間内に投入する投入手段と、
前記外気遮断空間内で処理中の廃棄物の残量に応じて前記投入手段による廃棄物の投入時期を制御する制御手段と、
を備える、請求項1記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
外気遮断空間内で廃棄物の少なくとも表面を炭化するステップと、
少なくとも表面が炭化された廃棄物から当該表面の炭化部分を除去するステップと、
除去してなる炭化物を前記廃棄物の近傍に位置させるステップと、
を含む、廃棄物処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法に関し、特に、感染性医療廃棄物を熱分解炭化する廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感染性廃棄物を収納する処理室の外側に設置した加熱ヒータによって感染性廃棄物を加熱しながら、撹拌体によって感染性廃棄物を掻き混ぜながら炭化していく処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-96186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された処理装置は、撹拌体が感染性廃棄物を掻き混ぜながら処理するため、廃棄物全体の炭化処理が完了までには相対的に多くの時間を要する。
【0005】
この時間を短縮するためには、炭化手段である電気ヒータを大容量のものにすればよいということはいえるが、これでは装置を駆動する場合のランニングコストがかさむことになるし、過大な熱量の発生はエコロジーの観点からも好ましくないので採用しがたい。
【0006】
そこで、本発明は、廃棄物の処理手法を工夫するといったアプローチで、廃棄物全体の炭化処理が完了までの時間を短縮化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の廃棄物処理装置は、
外気遮断空間内で廃棄物の少なくとも表面を炭化する炭化手段と、
前記炭化手段によって少なくとも表面が炭化された廃棄物から当該表面の炭化部分を除去する除去手段と、
前記除去手段によって除去されてなる炭化物を前記炭化手段の近傍に位置させる移動手段と、
を備える。
【0008】
なお、前記炭化手段は、前記廃棄物を載置可能に配置し、前記除去手段は、前記炭化手段の上部近傍で前記廃棄物の載置面の炭化部分を除去するようにしてもよい。
【0009】
さらに、処理すべき廃棄物を前記外気遮断空間内に投入する投入手段と、前記外気遮断空間内で処理中の廃棄物の残量に応じて前記投入手段による廃棄物の投入時期を制御する制御手段と、を備えることもできる。
【0010】
また、本発明の廃棄物処理方法は、
外気遮断空間内で廃棄物の少なくとも表面を炭化するステップと、
少なくとも表面が炭化された廃棄物から当該表面の炭化部分を除去するステップと、
除去してなる炭化物を前記廃棄物の近傍に位置させるステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、炭化物を炭化手段の近傍に位置させることで、炭化物の蓄熱を廃棄物の炭化の熱源として利用するので、廃棄物全体の炭化処理が完了までの時間を短縮化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の廃棄物処理装置1の模式的な正面図である。図2は、図1に示す廃棄物処理装置1の側面図である。図1及び図2に示す廃棄物処理装置1は、下部ケーシング2と上部ケーシング3とを備え、これらはいずれも例えば同径の円筒状をしている。廃棄物処理装置1は、これに限定されるものではないが、高さが概ね80cm~120cm、直径(内径)が例えば30cm~120cmとすることができる。
【0014】
下部ケーシング2と上部ケーシング3とは、それぞれフランジ2aとフランジ3aとが設けられていて、図示しないネジによる締結又は溶接による接続などによって密閉結合されている。また、下部ケーシング2と上部ケーシング3とには、熱分解炭化室4内に位置する廃棄物処理確認アーム16(図3及び図4)に付帯する、ハンドル16aとハンドルストッパー16bとが設けられている。なお、後述するように、ハンドル16aを介して行う手動の作業は、電動モータ及び所望のセンサなどを用いて実現してもよい。
【0015】
なお、図1には、ハンドル16aが開状態の位置にある例を示している。ハンドル16aは、図2に示す支点軸16cを中心として図面時計回りに回動させることで閉状態となる。
【0016】
また、下部ケーシング2と上部ケーシング3との少なくとも一方には、側面などに図示しない内部点検口を設けることもできる。これにより、内部部品の修理、交換、清掃などの目安となる時期を確認することが可能となる。
【0017】
上部ケーシング3の側部には、処理対象の廃棄物が収納される廃棄物収納室6が取り付けられている。廃棄物収納室6には、廃棄物入口扉12が設けられており、これを閉状態とすることによって、廃棄物収納室6を外気とほぼ遮断することができる。本実施形態では、廃棄物入口扉12の開閉は、電動モータ12aにより行うが、手動で行うようにしてもよい。
【0018】
なお、廃棄物入口扉12の近傍には、後述する廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14(いずれも図3)の駆動源となる電動モータ13a及び電動モータ14aが設けられている。
【0019】
電動モータ12a~14aは、それぞれ、出力軸に取り付けたスプロケット及びこれに連結されたチェーンを介して、廃棄物入口扉12、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14に接続されている。したがって、電動モータ12a~14aの動力が、廃棄物入口扉12、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14にそれぞれ伝達される。
【0020】
なお、電動モータ12a~14aによるチェーンの回転量は、図示しないリミットスイッチなどを用いて制御すればよい。
【0021】
上部ケーシング3の上部には、廃棄物を熱分解処理する際に、熱分解炭化室4内で発生する熱分解ガスを処理するガス処理部7が取り付けられている。ガス処理部7は、廃棄物処理装置1から無害状態のガスが排出されるように、熱分解ガスを燃焼処理するものである。
【0022】
熱分解炭化室4内は、廃棄物の熱分解中には、外気遮断空間となることから空気がほぼ存在しないので、熱分解炭化室4内での廃棄物の熱分解炭化処理は不活性雰囲気下で行われ、全体的に灰となることはない。熱分解炭化室4内には、ガス漏洩防止扉14を開状態とした際に、廃棄物収納室6内にある僅かな量の空気が入り込むだけである。
【0023】
下部ケーシング2の側面には、筒状をしていて先端が熱分解炭化室4内まで延びていて、その軸心から放射状に放熱する電気ヒータ8が複数装着されている。各電気ヒータ8は、600℃程度まで昇温可能なものを用いており、廃棄物25a(図4)に対して熱分解炭化処理を行う際の熱源となる。電気ヒータ8は、廃棄物25aの少なくとも表面を炭化するものであり、本実施形態では廃棄物25aの載置面付近を炭化する。
【0024】
電気ヒータ8の温度制御は、電気ヒータ8内部に熱電対をセットして、発熱体の温度測定を行うことによって実現すればよい。このため、本実施形態では、電気ヒータ8の構造を、耐熱性の金属製筒状内に発熱体が挿入されたカートリッジ式ヒータとし、その金属製筒状表面にも熱電対をセットして、外面温度も同時に測定するようにしている。なお、この場合、電気ヒータ8外部の金属製筒状外面温度は、電気ヒータ8内部の発熱体温度よりも、約30℃~80℃程度低い。
【0025】
また、下部ケーシング2の底部には、炭化処理された廃棄物を廃棄物処理装置1から排出する炭化物排出部15が取り付けられている。炭化物排出部15の具体的構成については図7図9を用いて後述する。
【0026】
図3は、図1のA-A断面図である。図4は、図2のB-B断面図である。図3及び図4には、下部ケーシング2内の熱分解炭化室4に投入された処理中の廃棄物25aを示している。このように、図1に示す構造の廃棄物処理装置1の場合には、廃棄物25aは、処理中には複数の電気ヒータ8上に位置することになる。
【0027】
廃棄物25aが高分子樹脂類などの有機性廃棄物を含むことも考えられるが、この場合には、電気ヒータ8の温度が上昇して廃棄物25a周囲の温度が概ね300℃になると、軟化溶融して熱分解反応によってガスが発生する。
【0028】
そのガスは、廃棄物25aを構成する材料や種類によっても異なるが、20%程度が可燃ガスのメタン(CH)、エテン(C)、プロペン(C)等の低分子炭化水素となって揮発していき、廃棄物は重量減少していき、電気ヒータ8の温度が更に上昇して廃棄物25a周囲の温度が概ね450℃以上になると、そのガス類の発生が次第に終息して、最終的には、廃棄物25aは全て炭化物5となる。
【0029】
また、図4には熱分解炭化室4に投入される前の廃棄物25bが廃棄物収納室6に収納されている状態も示している。廃棄物25bは、廃棄物25aの処理がある程度進行してから、熱分解炭化室4に投入される。
【0030】
図4に示すように、廃棄物収納室6には、廃棄物25bが載置される廃棄物投入台13が設けられている。廃棄物投入台13は、既述のように、電動モータ13aによって駆動され、支点軸13bを中心に図4に示す状態から図面反時計回り回動する。
【0031】
ガス漏洩防止扉14は、図4に示すように閉状態とすることによって、廃棄物収納室6と熱分解炭化室4とを分離するものである。ガス漏洩防止扉14を設けることによって、熱分解炭化室4内で発生したガスが廃棄物収納室6に向かうことが防止される。
【0032】
なお、熱分解炭化室4内で発生したガスは、廃棄物25aが高分子樹脂類などの有機性である場合には比重が軽く、しかも、電気ヒータ8によって高温とされているために体積が膨張している。
【0033】
したがって、図4に示すように、熱分解炭化室4とガス処理部7との間に設けられた熱分解ガス出口蓋18を廃棄物処理装置1の稼働運転中に開状態とすることで、熱分解ガス出口17を通り、ガス処理部7に向かう。加えて、後述するように、ガス吸引ファン19によって引かれることも、当該ガスがガス処理部7に向かう要因となる。
【0034】
熱分解ガス出口蓋18は、ボス18cを介して接続されている支点軸18aを中心に回転することで開閉状態の切り替えが可能となる。支点軸18aは、図3に示すように、ガス処理部7の両側板をそれぞれ貫通して両外側まで伸びている。
【0035】
支点軸18aの両端部は、軸受18bによって受けられており、一方の端部にはレバー18dが取付けられている。レバー18dを通じて支点軸18aを回転させることで、熱分解ガス出口蓋18は開閉される。
【0036】
支点軸18aの回転動作は、廃棄物処理装置1の管理者の手によって行うこともできるが、本実施形態では、後述する利点を考慮して、レバー18dの先端に取り付ける図示しないソレノイドを通電することによって実現している。
【0037】
ガス処理部7は、ガスの上流側にガス燃焼室23が配置され、ガスの下流側に酸化触媒室24が配置されている。ガス処理部7は、例えば耐熱鋼材製とすることができる。また、少なくともガス燃焼室23の内壁は、相対的に高温のガスに接するので、耐熱塗料などを用いて耐熱加工を施すとよい。
【0038】
ガス燃焼室23には、熱分解ガス出口17を通ったガスを燃焼させる幾つかのガス燃焼用ヒータ22が設けられている。ガス燃焼用ヒータ22は、図3に示すように、その両端部がガス処理部7の両側板をそれぞれ貫通して両外側に位置する。
【0039】
ガス燃焼用ヒータ22の両端部は、固定金具22aでガス処理部7に固定され、端子金具22bから通電することによって加熱している。また、ガス燃焼用ヒータ22は、例えば炭化ケイ素製の丸筒型発熱材によって構成している。
【0040】
また、ガス燃焼用ヒータ22間に熱電対を取り付けることによって、ガス燃焼室23の温度測定を行うことで、ガス燃焼用ヒータ22の温度制御をすることもできる。ガス燃焼用ヒータ22は、ガス燃焼室23が例えば800℃~900℃という相対的に高温となるように昇温させる。
【0041】
さらに、ガス燃焼室23には、ガス燃焼用ヒータ22の上流に、ガスの燃焼に必要な空気を取り込むガス燃焼用空気供給ファン21が設けられている。ガス燃焼用空気供給ファン21は、ガス燃焼用ヒータ22の上方に空気の取り込み口が設けられている例を示しているが、下方に設けることもできる。
【0042】
酸化触媒室24は、ガス燃焼室23において燃焼し切れなかったガスがあった場合に、その未燃ガスを酸化反応によって触媒燃焼させるものである。酸化触媒室24は、ガス燃焼室23の余熱によって、250℃~300℃の温度は維持され、触媒による完全酸化が可能となり、未燃ガスの無害化処理ができる。酸化触媒室24は、粒状セラミック担体に白金を担持させた触媒及び/又はウォールフロー型ハニカム白金触媒などが収納されている。
【0043】
なお、医療現場で用いられる注射器、点滴薬と注射針とを繋ぐチューブは、塩化ビニルを材料とするものが少なくない。塩化ビニルなどは焼却の際に有毒ガスが相対的に多く発生し得るので、それを中和処理するためのスクラバーを酸化触媒室24の入口付近に設けて、触媒燃焼に先立って中和処理をすることも一法である。
【0044】
ガス処理部7の下流にはガス処理部7内のガスを吸引するガス吸引ファン19が設けられ、ガス吸引ファン19の下流にはガス排出口20が設けられている。したがって、ガス処理部7に向かったガスは、ガス処理部7内で燃焼することによって無害化処理を施してから、廃棄物処理装置1の外部に排出される。
【0045】
既述のように、レバー18dの先端に図示しないソレノイドを取り付けて支点軸18aの回転動作を実現しているので、万が一、廃棄物処理装置1の使用施設等で停電が発生した場合には、熱分解ガス出口17が瞬時に密閉され、外気がガス排出口20を通じて熱分解炭化室4内に逆流することが防止され、ひいては、ガス燃焼用空気供給ファン21の空気取入口を通じてガス燃焼室23内のガスが大量に排出されることも防止される。
【0046】
図6図4とともに参照されたい。図6は、図4のC-C断面図である。図6には説明の都合上、廃棄物25aは図示していないが、複数の電気ヒータ8上には廃棄物25aが載置される。
【0047】
また、各電気ヒータ8は、それぞれの先端部がヒータ受け8aによって受けられている。各電気ヒータ8の上部であって廃棄物25aの下部には、熱分解炭化処理によって生じる廃棄物25aの炭化部分を掻き取る長細い炭化物掻き取りプレート10が位置している。炭化物掻き取りプレート10は、電気ヒータ8による炭化部分を、廃棄物25aから除去するものである。
【0048】
ここで、廃棄物25aは、電気ヒータ8によって加熱されると、電気ヒータ8の載置面を中心に炭化していくことになるが、炭化部分が断熱層となって廃棄物25aの内側まで熱が効率よく伝わらない。したがって、このままでは廃棄物25a全体が炭化するまでには時間を要することになる。
【0049】
炭化物掻き取りプレート10は、電気ヒータ8の載置面に生じる廃棄物25aの高温で脆い状態の炭化部分を剥ぎ取るものであり、廃棄物25aの電気ヒータ8に対する載置面を非炭化部分として、廃棄物25a全体の炭化時間を短くする。
【0050】
炭化物掻き取りプレート10の基端は、熱分解炭化室4の軸心に設けられた回転軸10fの上端に取り付けられている。したがって、炭化物掻き取りプレート10は、回転軸10fを中心に回転可能である。
【0051】
炭化物掻き取りプレート10が回転されると、少なくとも電気ヒータ8に対する載置面が炭化された廃棄物25aから当該載置面の炭化部分が炭化物掻き取りプレート10の角面との接触によって除去される。除去されてなる炭化物5は、電気ヒータ8間を抜けて落下し、熱分解炭化室4における電気ヒータ8の下側部分で構成される廃棄物蓄積部26に蓄積されていく。
【0052】
また、ヒータ受け8aからその延在方向に対して直交方向に水平に延びるせん断部材を、相互に隣接する電気ヒータ8間に幾つか設けてもよい。当該せん断部材は、回転される炭化物掻き取りプレート10とともに廃棄物25aの炭化部分をせん断する。
【0053】
図3及び図4には、炭化物5が複数の電気ヒータ8の設置面まで蓄積されている状態を示している。なお、廃棄物処理装置1の使用開始直後、メンテナンス直後、清掃直後には、炭化物5の蓄積量が少ないので、炭くず、粒状活性炭等で嵩増ししてもよい。
【0054】
炭化物5は、電気ヒータ8の放熱を吸収して蓄熱材として機能し得る。換言すると、炭化物5は、電気ヒータ8とともに廃棄物25aに対する熱源となり、廃棄物25aの熱分解炭化促進に寄与する。
【0055】
つまり、廃棄物25aから炭化部分を除去しているが、これを除去せずにいると、その炭化部分が廃棄物25aの電気ヒータ8から相対的に離れた箇所への熱伝導を阻害することになる一方で、これを除去すると、炭化物5が電気ヒータ8近くに配置されていれば電気ヒータ8からの放射熱を吸収して廃棄物25aの次なる炭化に寄与するからである。
【0056】
換言すると、炭化物5を廃棄物25aの熱源として利用すると、電気ヒータ8の本数を増やすことなく、廃棄物25aの熱分解炭化を図ることもできる。
【0057】
また、回転軸10fの中ほどには、炭化物掻き取りプレート10と平行に長細い炭化物撹拌プレート11が取り付けられている。炭化物撹拌プレート11の長さは、炭化物掻き取りプレート10の長さと略同じであり、回転軸10fを中心として炭化物掻き取りプレート10と連動して回転する。
【0058】
炭化物撹拌プレート11は、図1に示す構造の廃棄物処理装置1の場合には、炭化物5を電気ヒータ8の近傍に位置させる移動手段として機能する。なお、炭化物掻き取りプレート10及び/又は炭化物撹拌プレート11の数は2以上であってもよい。
【0059】
また、炭化物撹拌プレート11を設けることによって、電気ヒータ8から相対的に離れている炭化物5が冷却して固形化することも防止される。このため、炭化物5が問題なく廃棄物処理装置1の外部に排出されるようにしている。
【0060】
さらに、回転軸10fの下端部は、回転軸10fの直径よりも一回り大きな直径の軸受10gによって保持されている。回転軸10fの下端には、傘歯車10eが取り付けられている。
【0061】
一方、炭化物掻き取りプレート10等を回転させる駆動源として、下部ケーシング2の下側に駆動モータ10aが設けられている。駆動モータ10aのモータ軸の先端部は、カップリング10bの一端側に連結される。
【0062】
カップリング10bの他端側には、駆動モータ10aのモータ軸の回転運動が伝達される軸10hの一端側が連結されている。軸10hは、中ほどで軸受10cによって受けられ、他端には傘歯車10eと噛合せがされる傘歯車10dが位置している。
【0063】
また、熱分解炭化室4内には、既述のハンドル16aが取り付けられた廃棄物処理確認アーム16が設けられている。廃棄物処理確認アーム16は、廃棄物25a上面に接触するハンドル16aの位置で廃棄物25aの残量の確認を行うものである。
【0064】
ハンドル16aがハンドルストッパー16bに接触直前の位置となれば、廃棄物25aの残量がほぼゼロであるということになる。したがって、例えば、作業者が適当なタイミングでハンドル16aを操作して、ハンドル16aの回動量が電気ヒータ8の上面からの高さが20cm以下に対応するようになったら、廃棄物25aの炭化処理が十分に進行したとして、廃棄物25bを熱分解炭化室4へ投入することができる。
【0065】
もっとも、廃棄物収納室6内にある廃棄物25bを熱分解炭化室4へ投入するタイミングを手動でハンドル16aを操作して決定するのではなく、例えば、電気ヒータ8に係る応力を計測するセンサを設け、或いは、熱分解炭化室4内を撮影する撮像素子を含むセンサを備え、このようなセンサによる計測結果に基づいて決定するようにしてもよい。
【0066】
図5は、図4に示す廃棄物収納室6付近の拡大図である。廃棄物入口扉12、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14の動作について説明する。
【0067】
まず、図5(a)に示すように、電動モータ12aを駆動して、支点軸12bを中心として廃棄物入口扉12を開けて、処理すべき廃棄物25bを廃棄物収納室6内の廃棄物投入台13に載置する。この際、電動モータ13a,14aについては駆動しない。
【0068】
つぎに、図5(b)に示すように、電動モータ12aを駆動して廃棄物入口扉12を閉じてから、図1に示す電動モータ13a及び電動モータ14aを駆動して、支点軸13b及び支点軸14bを中心として、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14を図面矢印方向に回転させる。この結果、廃棄物25bは、熱分解炭化室4内に投入される。
【0069】
この際、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14を同時に回転させているので、熱分解炭化室4から廃棄物収納室6に多少ガスが向かう可能性はあるが、廃棄物入口扉12は閉状態とされていて、かつ、熱分解炭化室4内のガスは熱分解ガス出口17に向かうので、そのガス量は非常に少ない。
【0070】
また、廃棄物収納室6に向かったガスは、廃棄物収納室6が熱源である電気ヒータ8から離れており、廃棄物収納室6内にも熱源がないことから冷却されていく。それにつれて、ガスはタール状になり、分離した水滴を発生する。これらは廃棄物収納室6の内壁に付着するため、廃棄物収納室6内の空気が汚染されたままとなることはほぼない。
【0071】
つまり、ここで重要なことは、廃棄物入口扉12、廃棄物投入台13及びガス漏洩防止扉14の開閉時期をうまく制御することであり、外気と熱分解炭化室4内とが連通状態となることを回避することはもとより、廃棄物収納室6に向かったガスが廃棄物入口扉12を通過しないように、図5(a)~図5(d)の1サイクルの時間を制御している。
【0072】
なお、より確実な処理を行うためには、図4に示すガス処理部7の底面と廃棄物収納室6の上面とにそれぞれ開口部を設け、開口部間をダクトなどでつなぎ、かつ、必要に応じて廃棄物収納室6内に向かったガスをガス処理部7に送るファンを設ければ、このガスについてもガス処理部7で処理できる。
【0073】
つぎに、図5(c)に示すように、図1に示す電動モータ14aを駆動して、支点軸14bを中心として、ガス漏洩防止扉14を図面矢印方向に回転させる。この際、電動モータ12a,13aについては駆動しない。
【0074】
最後に、図5(d)に示すように、図1に示す電動モータ13aを駆動して、支点軸13bを中心として、廃棄物投入台13を図面矢印方向に回転させる。この際、電動モータ12a,14aについては駆動しない。
【0075】
なお、廃棄物25bが相対的に大型を有する場合には、廃棄物25bが炭化物掻き取りプレート10に到達する前に廃棄物25bを裁断して小型化するとよい。その場合、廃棄物25bは、廃棄物収納室6に収納される前、廃棄物収納室6に収納中、又は、熱分解炭化室4に投入されてから炭化物掻き取りプレート10に到達する前に裁断すればよい。一例としては、廃棄物収納室6内に裁断機を設け、図5(a)の状態から図5(b)の状態に移行する前に廃棄物25bを裁断するようにすることができる。
【0076】
図7図9は、図1に示した炭化物排出部15の具体的な構成の説明図である。図7には下部ケーシング2の底板の上面図を示している。図8には図7のE-E断面図を示している。図9(a)及び図9(b)には図8のF-F断面図を示している。
【0077】
図7に示すように、下部ケーシング2の底板には、炭化物排出口15aが設けられている。炭化物排出口15aの大きさ及び形状は、これに限定されるものではないが、下部ケーシング2の半径の70%~80%程度の長手方向と、その1/2~1/3ほどの長さの短手方向によって形成される長方形状の開口である。
【0078】
また、炭化物排出口15aの向き及び位置は、これに限定されるものではないが、図3等に示した回転軸10fの邪魔とならないように、熱分解炭化室4の軸心から放射状に延びる向き及び位置とはしていない。
【0079】
図8に示すように、炭化物排出口15aの下側には、開淡可能な円筒ドラム状の炭化物収納ケーシング15bが、その軸心が水平方向に伸びる態様で位置している。炭化物収納ケーシング15bの円筒面には、炭化物排出口15aよりもやや大きなサイズの炭化物受入口15cが形成されている。なお、図7には、炭化物排出口15aと炭化物受入口15cとが位置合わせされた状態を示している。
【0080】
また、炭化物収納ケーシング15bには、その軸心に回転軸15gの一端が取り付けられており、回転軸15gの他端はカップリング15eに連結されている。さらに、カップリング15eには駆動モータ15fのモータ軸15hが連結されている。
【0081】
なお、駆動モータ15fには図示しないリミットスイッチが取り付けられており、駆動モータ15fの駆動を制御している。駆動モータ15fが駆動すると、その回転がカップリング15eを通じて炭化物収納ケーシング15bを回転させる。
【0082】
図9(a)には通常時の炭化物収納ケーシング15bの回転位置、図9(b)には炭化物5の排出時の炭化物収納ケーシング15bの回転位置、をそれぞれ示している。図9(a)に示す通常時から図9(b)に示す炭化物5の排出時に移行する際には、図面矢印方向に半回転させる。なお、炭化物5の排出時を除き、熱分解炭化室4内に外気が入らないように、密閉カバー15dを設けている。
【0083】
図9(a)に示す通常時には、熱分解炭化処理によって生じた炭化物5は、一部は直接炭化物収納ケーシング15bに落下し、残りは下部ケーシング2の底板に落下した後に炭化物撹拌プレート11を回転させることによって炭化物収納ケーシング15bに落下する。したがって、炭化物収納ケーシング15b内は、炭化物5で満たされ、かつ、外気が流入しない。
【実施例0084】
本発明の実施例では、熱分解炭化室4は、円筒内径φを100cm、高さを100cmとし、廃棄物搭載高さは500mm程度で処理するようにし、廃棄物収納最大容積400L、炭化物収納容積150Lとした。
【0085】
一回当たりの廃棄物25bの投入量とその形態は、例えば40Lポリ袋入り又は50L段ボールケース入りを、そのまま廃棄物収納室6に入れて、各種の廃棄物25a,25bを処理することができる。
【0086】
実際に、感染性医療廃棄物のダイアライザー30本を、50L段ボールケースに入れたものを処理対象の廃棄物25bとして、本実施例の廃棄物処理装置1を用いて実験を行った。
【0087】
熱分解炭化に使用した電気ヒータ8の総容量は9kWに設定し、温度設定は500℃~550℃の温度域で維持するように制御とした。その結果、廃棄物25aとなったダイアライザー30本は、処理時間は3時間程度で炭化物5となった。
【0088】
実験中には、廃棄物処理装置1の任意の部位の温度測定も実施したが、問題ないことも確認し、また、ガス排出口20から排出されるガスのCO濃度を連続測定したところ、焼却基準である100ppm以下であることが確認された。
【0089】
以上、本明細書においては、図1等に示した構造の廃棄物処理装置1を例に、その構成、動作等を説明したが、廃棄物処理装置1の構造は図1等に示したものに限定されない。例えば、熱分解炭化室4内に例えば上下可動する電気ヒータユニットを設けて、廃棄物25aに対して下側から電気ヒータ8で、上側から電気ヒータユニットで熱分解炭化処理を施すことも可能である。
【0090】
この場合には、廃棄物25aは、電気ヒータユニット側の表面も炭化するので、炭化物掻き取りプレート10と同様に機能する廃棄物25aからその炭化物を除去する除去手段を設けるとよい。さらに、移動手段は炭化物5を電気ヒータ8の近傍に位置させる
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本発明の実施形態の廃棄物処理装置1の模式的な正面図である。
図2図1に示す廃棄物処理装置1の側面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図2のB-B断面図である。
図5図4に示す廃棄物収納室6付近の拡大図である。
図6図4のC-C断面図である。
図7】下部ケーシング2の底板の上面図である。
図8図7のE―E断面図である。
図9図8のF-F断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 熱分解炭化装置
2 下部ケーシング
3 上部ケーシング
4 熱分解炭化室
5 炭化物
6 廃棄物収納室
7 ガス処理部
8 電気ヒータ
10 炭化物掻き取りプレート
11 炭化物撹拌プレート
12 廃棄物入口扉
13 廃棄物投入台
14 ガス漏洩防止扉
15 炭化物排出部
16 廃棄物処理確認アーム
17 熱分解ガス出口
18 熱分解ガス出口蓋
19 ガス吸引ファン
20 ガス排出口
21 ガス燃焼用空気供給ファン
22 ガス燃焼用ヒータ
23 ガス燃焼室
24 酸化触媒室
25a,25b 廃棄物
26 廃棄物蓄積部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9