IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2022-21320予備的保護のための油圧システムおよび作業機械
<>
  • -予備的保護のための油圧システムおよび作業機械 図1
  • -予備的保護のための油圧システムおよび作業機械 図2
  • -予備的保護のための油圧システムおよび作業機械 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021320
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】予備的保護のための油圧システムおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20220126BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220126BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20220126BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20220126BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220126BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
F15B11/08 B
F15B11/02 V
F15B11/16 Z
F15B11/02 Z
F15B11/028 G
E02F9/22 E
B66C23/88 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021117041
(22)【出願日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20 2020 104 190.8
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501190549
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク ネンツィング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フークサ マーティン
【テーマコード(参考)】
2D003
3F205
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA05
2D003CA02
2D003DA04
3F205AA05
3H089AA02
3H089AA12
3H089AA20
3H089AA59
3H089AA73
3H089BB01
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA03
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB43
3H089DC02
3H089FF07
3H089GG02
3H089JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】予備的保護機能に供給するエネルギーの必要量を低減し、作業機械のブームの最小動作におけるエネルギーの効率的なバランスを確保する。
【解決手段】作業機械のブームの動作を追跡および制限する、少なくとも1つの油圧の予備的保護シリンダ12と、予備的保護シリンダに用いられる油圧ポンプ14と、少なくとも1つの作動油の供給が可能な油圧溜め20と、を備えた作業機械の油圧の予備的保護を制御する油圧システムに関し、閉止位置および通過位置を有する閉止弁16が、油圧ポンプと予備的保護シリンダの間に接続されている。閉止弁により、予備的保護シリンダの耐荷重シリンダスペース18が閉止可能であり、耐荷重シリンダスペースに接続された油圧溜めが、閉止弁と予備的保護シリンダの間に備えられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械(1)のブーム(4)の動作を追跡して制限する、少なくとも1つの油圧の予備的保護シリンダ(12)と、
前記予備的保護シリンダ(12)、および、少なくとも1つの油圧消費物(50)に圧油を供給する油圧ポンプ(14)と、
を備えた、作業機械(1)の油圧の予備的保護を操作する油圧システム(10)であって、
閉止位置および通過位置を有する閉止弁(16)が、前記油圧ポンプ(14)と前記予備的保護シリンダ(12)の間に接続され、
前記閉止弁(16)により、予備的保護シリンダ(12)の耐荷重シリンダスペース(18)が閉止可能であり、
前記耐荷重シリンダスペース(18)に接続された油圧溜め(20)が、前記閉止弁(16)と予備的保護シリンダ(12)の間に備えられている油圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧システムにおいて、
各々が、前記油圧ポンプ(14)によって作動油が共に供給され得るチェックバルブ(16)と前記油圧溜め(20)とを有する、少なくとも2つの前記予備的保護シリンダ(12)が備えられている油圧システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧システムにおいて、
圧力開放弁(22)が、前記閉止弁(16)と前記予備的保護シリンダ(12)との間に備えられている油圧システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記油圧ポンプ(14)の方向において、前記閉止弁(16)によって閉止可能な前記油圧システム(10)の領域を閉止するチェックバルブ(24)が備えられ、
前記チェックバルブ(24)が、前記閉止弁(16)と並列に接続されるか、前記閉止弁(16)の閉止領域においてのみ作動する油圧システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記閉止弁(16)と前記油圧ポンプ(14)との間に、更なるバルブ(26)、特に、好ましくは電気的に切替可能な方向弁が、配置されている油圧システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記予備的保護シリンダ(12)の荷重が、荷重計測装置、好ましくは、前記閉止弁(16)と前記予備的保護シリンダ(12)との間に配置された圧力センサ(28)、によって計測可能な油圧システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
圧力、および、前記予備的保護シリンダ(12)へ、または前記予備的保護シリンダ(12)からの移送量、の設定を可能にするために用いられ、可能であれば、前記予備的保護シリンダ(12)の計測された荷重に基づいて調節可能な、圧力調整装置を備える油圧システム。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧システムにおいて、
前記圧力調整装置が、
前記予備的保護シリンダ(12)に配置された回復デバイスと、
前記閉止弁(16)と前記油圧ポンプ(14)の間に配置された、少なくとも1つの圧力開放弁(30)と、
荷重を検知する構成、および/または、請求項5に記載したバルブ(26)を制御するための手段と、
を有している油圧システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記閉止弁(16)が、特に電気的に制御可能なスイッチングバルブ(32)によって油圧制御可能である油圧システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記閉止弁(16)は、油圧制御可能であるとともに、油圧往復バルブ(34)の出口に接続される制御の接続を有し、
前記油圧往復バルブ(34)の出口は、可能であれば、前記予備的保護シリンダ(12)の非耐荷重シリンダスペース(19)に接続されるとともに、他方の入口は、特に電気的に制御可能なスイッチングバルブ(32)に接続される油圧システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の油圧システムにおいて、
前記油圧溜め(20)が、前記閉止弁(16)が作動油を除去または抜き出すことよって閉止された耐荷重シリンダスペース(18)を有する前記予備的保護シリンダ(12)の微小動作を補償するように構成されている油圧システム。
【請求項12】
特にモービルクレーンまたはケーブル掘削機からなる、作業機械(1)であって、
旋回可能なブーム(4)と、
前記ブーム(4)を調整するための調整装置(6)と、
前記ブームに接続されてその動作に従う、少なくとも1つの予備的保護シリンダ(12)と、
請求項1~11のいずれかに記載されている油圧システム(10)と、
を備えた作業機械。
【請求項13】
請求項12に記載の作業機械において、
前記調整装置(6)によって前記ブーム(4)が動作不能な時に、前記閉止弁(16)が閉止位置に位置する作業機械。
【請求項14】
請求項12または13に記載の作業機械において、
前記閉止弁(16)と、好ましくは前記調整装置(6)とを、間接的または直接的に制御可能にする制御を備えるとともに、前記調整装置(6)の作動時に前記閉止弁(16)を通過位置に切り替える作業機械。
【請求項15】
請求項14に記載の作業機械において、
請求項5に記載されているバルブ(26)と、予備的保護シリンダの1つ当たりが有する、請求項4に記載されている1つのチェックバルブ(24)とを備え、
前記ブーム(4)の動作のために、前記調整装置(6)を作動させる信号を入力装置から受信するように構成されるとともに、前記バルブ(26)を通過位置に切り換えて前記閉止弁(16)を閉止位置に保持し、前記チェックバルブ(24)が開いた後に、前記閉止弁(16)を通過位置に切り替え、その後に、前記調整装置(6)を作動させるように構成されている制御を有する作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に従う、作業機械の油圧の予備的保護を操作するための油圧システム、および、作業機械、特に、そのような油圧システムを有するモービルクレーンまたはケーブル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
難しい気象条件の下で操作上の安全を増大させるため、クローラークレーンまたはケーブル掘削機のような、多くの作業機械に、いわゆる予備的保護を用いることが知られている。予備的保護の原理を説明するために、図1に、クローラークレーンの側面図を示す。クレーン1は、走行体(例えばクローラー走行体、クローラーチェーン走行体など)を有する車台2と、車台2の上に縦軸回りに回転可能に支持された上部構造3と、上部構造3に対して傾斜角が調整できるように、水平軸回りに回転可能に軸支されたブーム4と、を備える。ブーム4の調整は、引き込みウインチ6により、引き込みロープ5を介して行われる。荷重懸架手段7またはクレーンフックは、ホイストロープ8を介して、ホイストウインチ9に接続されている。ホイストロープ8の自然長は、ホイストウインチ9を動かして、荷重懸架手段7の吊り荷重を増減することによって変更できる。
【0003】
吊り荷重を含めたブーム4の荷重は、上部構造3のブーム4の軸支点に対して反時計回りに作用する荷重トルクMを生じる。この荷重トルクMは、引き込みロープ5のロープ力を相殺する。それにより、後者がぴんと張られて、ブーム4が上部構造3に対して所定の角度で保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブーム4は、風に曝される大きな表面を有している。従って、前方から(図1における左側から)の風力は、荷重トルクMを相殺し、引き込みロープ5のロープ力を低減する。そのため、荷重トルクMが過剰になるというリスクがある。その結果、引き込みロープ5に弛みが形成され、最悪の場合、ブーム4が後方に引っ繰り返る。これは、機械的な損害および人的な傷害を招き得る。機械的な接触、または、引き込みウインチ6のスイッチオフにより、90°以下となる適切なタイミングでブームの上限角度を制限する対策が知られている。機械操作を停止して、ブーム4を地面に置くべき最大風速が更に定義されている。
【0005】
より急勾配なブーム角度とより速い風速を許容することが可能になることを、この予備的保護の使用は明らかにする。すなわち、油圧で操作される複数のシリンダが、ブーム4と上部構造3との間に配置されていて、それらの力が荷重トルクMの効果を補完する。1以上の予備的保護シリンダ12は、ブーム4と常時接触しており、その全ての動作に連動する。それらは、引き込みウインチ6の活動(すなわち、通常は数十デシメートルの範囲における、大きなシリンダストロークを伴う作業動作)、または、持ち上げ荷重の増加や低下に基づく荷重変化の作用による全システムの弾性変形のような、より小さな動作(すなわち、通常は数センチメートルの範囲の、非常に小さなシリンダストロークを伴う微少動作)からの動作であり得る。
【0006】
予備的保護のエネルギーの供給は、一般に、その目的のために明確に組み付けられている、公知のユニットと、全ての活動時間にわたって、予備的保護シリンダに圧力を加える複数の油圧ポンプとによって行われる。この点、予備的保護シリンダのピストン表面は、一般に、作業の操作中は、明確に加えられる油圧ポンプの圧力によって常に作用を受ける。有利な実証されている実施例において、これらのポンプは、必要に応じて(いわゆる「荷重の検知」によって)制御され、それらが、所定の圧力で、油の移送量を予備的保護シリンダの動作状態に合わせることで、出力が制限内に保持される。
【0007】
このような公知のエネルギー供給システムの欠点は、組み付けられている全ての油圧ポンプは、作業時間の100%のうち、基礎的な荷重(ベアリングの摩擦、スプラッシュロス、調整機器のエネルギー要求など)を消費するので、作業機械全体の効率を減少させる。通常、このような状況は、ディーゼルで操作する過去の機械においては無視されていた。しかしながら、その間、不要なエミッションを回避する努力は増大している。対して、例えば充電式バッテリーを具備した電気駆動など、基本的な荷重を抑制することの経済的かつ技術的な興味は高まっている。加えて、主要なエネルギー源としての複数のポンプの組み付けや設置スペースもまた、限られている。
【0008】
この背景に対し、本発明の潜在的な目的は、予備的保護機能に供給するエネルギーの必要量を低減し、作業機械のブームの最小動作におけるエネルギーの効率的なバランスを確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のこの目的は、クレーム1の特徴を有する油圧システムによって達成される。作業機械に具備されている油圧の予備的保護を操作する油圧システムであって、作業機械のブームの動作を追跡して制限する、少なくとも1つの油圧の予備的保護シリンダと、予備的保護シリンダ、および、少なくとも1つの油圧消費物に作動油を供給する油圧ポンプとを備える。従って、油圧ポンプは、予備的保護シリンダへの供給のために独占的に備えられていない。むしろ、ラジエータドライブ、ウインチなどのような様々な消費物への供給の主要なエネルギー源として用いられ、付加的に、予備的保護機能に供給するために用いられる。
【0010】
本発明では、閉止弁は、油圧ポンプと予備的保護シリンダの間に接続されていて、閉止位置と通過位置とに切替可能であり、それによって予備的保護シリンダの耐荷重シリンダスペースを閉じることができる。
【0011】
油圧システムに留まるエネルギーの入れ替わりを防ぐために、閉止弁を閉止位置に切り換えることにより、予備的保護シリンダの耐荷重シリンダスペースは閉止され得る。従って、その油圧は、閉止弁の閉止時に存在していた閉止領域か耐荷重シリンダスペースに留まる。それゆえ、ブームの動作を意図しないならば、油圧ポンプは、予備的保護機能のためのエネルギーを供給する必要がないので、エネルギーの要求や主要なエネルギー源の基礎的な荷重を低減し、全効率を増大させる。ブームの活動的な動作、すなわち作業機械のオペレータによって要求される動作により、閉止弁は、作動油の内外への誘導を可能にし、予備的保護シリンダの追跡を可能にするために、通過位置に切り換えられ得る。
【0012】
ブームは、予備的保護シリンダを介して動かないというよりはむしろ、例えば引き込みウインチのような調整装置を介して動かないので、油圧ポンプによって供給されるエネルギーは、ブームの上昇、つまり予備的保護シリンダのピストンロッドの収縮には不要である。それよりはむしろ、耐荷重シリンダスペースに潜在的な圧力が維持されている間は、作動油は、排出されるように誘導されるか、タンクに供給される必要がある。油圧ポンプを介した供給は、予備的保護シリンダの伸長、つまりブームの降下時に提供されさえすればよい。予備的保護シリンダがブームから取り外される、組み付け操作においても同様に適用できる。
【0013】
本発明では、耐荷重シリンダスペースに接続される油圧溜めが、閉止弁と予備的保護シリンダとの間に更に備えられている。それにより、耐荷重シリンダスペースが閉止弁の補助によって閉止されるとともに油圧ポンプまたはタンクから切り離されていても、ブームの微少動作が補償される。予備的保護シリンダは、ブームの微少動作に続いて、これに必要とされる作動油の流れを油圧溜めから除くか、油圧溜めに与えることができる。
【0014】
本発明の有利な実施例は、従属クレームと以下の説明から導かれる。
【0015】
実施例では、各々が、油圧ポンプによって作動油が共に供給され得る閉止弁と油圧溜めとを有する、少なくとも2つの予備的保護シリンダが備えられている。
【0016】
さらなる実施例では、圧力開放弁が、閉止弁と予備的保護シリンダとの間に備えられている。これは特に、異常な運転に対する圧力のバックアップを提供し、それゆえに、通常操作における予備的保護には含まれない。しかしながら、閉止弁の同期した開放、すなわち通過位置の閉止弁とともに、圧力開放弁が、圧力または予備的保護に対する作動油の流れの移送量の制御または調整に用いることで、ブームの追跡における最適な範囲に耐荷重シリンダスペースの油圧を保持することは考えられる。圧力開放弁によって保証される最大圧力値は、設定できる。
【0017】
さらなる実施例では、チェックバルブが備えられていて、それが閉止弁によって油圧ポンプの方向に閉止可能な油圧システムの領域を閉止する。チェックバルブは、操作において閉止弁の切り換え状態から独立して、閉止弁と並列に接続され得るか、または、閉止弁の閉止位置でのみ作動し得る。すなわち、閉止弁が閉止位置にある時にのみ用い得る。後者の場合、チェックバルブは特に、閉止弁の一部であってもよい。それは特に、ブームの動作における予備的保護シリンダの開放前に、閉止弁の両側の圧力平衡を最初に確立するために、そして、異なる操作状態の過渡時における荷重の変化反応を低減または回避するために、チェックバルブを備えることができる。
【0018】
好ましくは電気的に切替可能な更なるバルブが、閉止弁と油圧ポンプとの間に配置されている、更なる実施例が提供される。そのバルブは、方向弁であり得るものであり、特に、4/2方向弁または4/3方向弁であり得る。付加的なバルブの可能な機能は、油圧ポンプまたはタンクからの閉止弁の切り離しである。ブームの追跡に最適な範囲に耐荷重シリンダスペースの油圧を保持するために、チェックバルブの同時開放とともに、それが圧力と予備的保護への(からの)その作動油の流量とを制御または調整に用いられることは、代替的または付加的に考え得る。そのバルブは電気的に制御可能であり得る。複数の予備的保護シリンダとともに、好ましくはそのようなバルブが1つだけ備えられ得る。
【0019】
予備的保護シリンダの荷重が、荷重計測装置、好ましくは、閉止弁と予備的保護シリンダとの間に配置された圧力センサ、によって計測可能な更なる実施例が提供される。それに伴い、荷重を検知するアプリケーションが実装される。それによって特に、圧力と予備的保護への(からの)その作動油の流量の制御または調整が可能になり、予備的保護シリンダの最適な追跡が可能になる。
【0020】
さらなる実施例では、圧力、および、予備的保護シリンダへ、または予備的保護シリンダからの流量または移送量、の設定を可能にするために用いられ、可能であれば、予備的保護シリンダの計測された荷重に基づいて調節可能な、圧力調整装置を備える。それにより、予備的保護シリンダの耐荷重シリンダスペースの油圧を、ブームの追跡の最適な範囲に保持し得る。特にブームの活動的な動作に対応する予備的保護シリンダの収縮において、圧力調整装置が、抵抗を発生させ、予備的保護機能が維持されている間の最適な追跡を保証する。
【0021】
さらなる実施例では、圧力調整装置が、内部を流れる作動油がピストンの反対側に排出される予備的保護シリンダに配置された回復デバイスと、閉止弁と油圧ポンプの間に配置された、少なくとも1つの圧力開放弁と、特に電気的に制御可能な荷重を検知する構成、および/または、油圧ポンプと閉止弁との間に配置された上述したバルブを制御するための手段と、を有している。後者のバルブの制御または調整は、油圧によって機械的に、あるいは、ソフトウエアに基づく電気的な方法で行うことができる。荷重を検知する構成の数値は、この処理において考慮され得る。
【0022】
さらなる実施例では、閉止弁が、特に電気的に制御可能なスイッチングバルブによって油圧制御可能である。好ましくは、スイッチングバルブは、油圧ポンプと、閉止弁の制御接続部位との間に配置されていて、例えば、閉止位置と通過位置とを有することができる。
【0023】
さらなる実施例では、閉止弁は、油圧制御可能であるとともに、油圧往復バルブの出口に接続される制御の接続を有し、油圧往復バルブの出口は、可能であれば、予備的保護シリンダの非耐荷重シリンダスペースに接続されるとともに、他方の入口は、特に電気的に制御可能なスイッチングバルブに接続される。往復バルブの補助により、例えば、組み付け操作における、予備的保護シリンダの非耐荷重シリンダスペースへの作用、または、例えば、非耐荷重シリンダスペースのいかなる圧力作用も生じない通常操作よりはむしろ、作動したブームに「衝突すること」によって生じる予備的保護シリンダの収縮における、スイッチングバルブの制御、のいずれかからなる、2つの方法で、閉止弁は切り換えることが可能になる。
【0024】
さらなる実施例では、油圧溜めが、閉止弁が作動油を除去または抜き出すことよって閉止された耐荷重シリンダスペースを有する予備的保護シリンダの微小動作を補償するように構成されている。これは特に、油圧溜めの特有な補充に伴う力変化と適度な圧力を生じる。
【0025】
本発明は、更に作業機械に関する。特に、モービルクレーンまたはケーブル掘削機からなり、旋回可能なブームと、ブームを調整するための調整装置と、ブームに接続されてその動作に従う、少なくとも1つの予備的保護シリンダと、少なくとも1つの予備的保護シリンダの操作のための本発明に関する油圧システムと、を備える。この点、本発明に関する油圧システムと同じ利点と特徴とを有することは明らかなので、重複した説明は割愛する。
【0026】
さらなる実施例では、調整装置によってブームが動作不能な時に、閉止弁が閉止位置に位置し、予備的保護シリンダの耐荷重シリンダスペースを閉止する。それにより、オペレータによってブームが動かされない時に、エネルギー消費または基礎的な荷重が低減される。
【0027】
さらなる実施例では、閉止弁と、好ましくは調整装置とを、間接的または直接的に制御可能にする制御を備えるとともに、調整装置の作動時に閉止弁を通過位置に切り替える。それにより、作動油は、耐荷重シリンダスペースに移送可能になるか、または、ブームの追跡に最適な範囲に圧力を保持するために、それから排除可能になる。
【0028】
さらなる実施例では、上述したように、1つの予備的保護シリンダに対して閉止弁と油圧ポンプと1つのチェックバルブとが備えられていて、ブームの動作のために、調整装置を作動させる信号を入力装置から受信するように構成されるとともに、バルブを通過位置に切り換えて閉止弁を閉止位置に保持し、チェックバルブが開いた後に閉止弁を通過位置に切り替え(付加的にその他のバルブを閉じて)、その後に、調整装置を作動させるように構成されている制御を有する。それにより、油圧システムの閉止されていない領域の圧力は、最初に油圧ポンプによって十分に増強され得る。チェックバルブが開かれ(それに伴って圧力平衡が確立される)と直ちに、閉止弁が開かれて、ブームのその後の動作によって予備的保護シリンダが収縮または伸長し、作動油がそれに対応して、耐荷重シリンダスペースに送られるか排出され得る。
【発明の効果】
【0029】
発明の更なる機能、詳細、および利点は、図を参照して以下に説明された実施形態によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】予備的保護を有するクローラークレーンの側面図である。
図2】発明に関する油圧システムの第1の実施例の回路図である。
図3】発明に関する油圧システムの第2の実施例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、クローラークレーンの概略側面図であり、既に先に説明してあるので、ここでは重複した説明は省略する。本発明に関する作業機械1は、原理的に、公知の機械とは異なり、本発明に関する油圧システム10を備えるクローラークレーンであり得る。図1に示すクローラークレーンにおいて、上部構造3に配置された引き込みウインチ6が、調整装置を表している。Aフレームが、関節状に接続されることによって上部構造3の水平軸回りに旋回可能に接続されている。ブーム4が、支持手段、例えば支持ロッドを介してAフレームに接続されていて、引き込みウインチ6の作動により、連れだって旋回可能となっている。しかし、他のブームの形態および調整装置もまた、発明に関する予備的保護または油圧システム10の機能にいかなる影響を及ぼすことなく、ブームの動作として考え得る。
【0032】
図2に、第1の実施例に関する油圧システム10の回路図を示す。油圧システム10は、図1に示すクローラークレーン1において、次に説明する第2の実施例で想定される状態で、作業機械1の予備的保護の機能の操作を行う。モータ15によって駆動され、詳細な説明はしないが多くの油圧消費物50を操作する油圧ポンプ14は、主要なエネルギー源として機能する。油圧消費物50としては、例えば、ラジエータドライブや、ホイストロープ、引き込みウインチ6,9のようなウインチが挙げられる。本発明に関して、油圧ポンプ14は、さらに、ピストンロッドが作業機械1のブーム4に回動可能に連結されている、2つの予備的保護シリンダ12にも供給する。
【0033】
2つの対称状に接続された予備的保護シリンダ12によるシステムに代えて、1つ以上の予備的保護シリンダ12で他のシステムを構成することも可能である。主要なエネルギー源14,15の正確な形態は、発明の機能に関連しない。油圧システム10の機能は、以下に示す2つの対称状の枝の一方によって説明されるであろう。
【0034】
予備的保護シリンダ12は、閉止位置と通過位置を有する電気的に切り換え可能な閉止弁16によって油圧ポンプ14の出口から分岐している。閉止位置では、チェックバルブ24が、油圧ポンプ14と対向する方向に、予備的保護シリンダ12の耐荷重シリンダスペース18を閉止する。通過位置では、予備的保護シリンダ12への作動油の送りまたは予備的保護シリンダ12からの作動油の戻しが可能になる。油圧溜め20および圧力センサ28は、閉止弁16と予備的保護シリンダ12との間の領域、つまり閉止可能領域に配置されている。
【0035】
電気的に切り換え可能な、4/3方向バルブ26は、閉止弁16と、予備的保護シリンダ12の非耐荷重シリンダスペースまたは環状スペース19とに、油圧ポンプ14を導く油圧管路に接続している。図2では、油圧ポンプ14と閉止弁16との間の接続が作動不能となるように、方向弁26は(中間の)閉止位置に位置している。予備的保護シリンダ12の引き込みは、油圧によってではなく、ブーム4の緊急な動作によって起きるので、図において左側に配置された方向弁26の「クロス」の切り換え位置は、正常な操作では必要とされない。この切り換え位置は、例えば、作業機械が輸送のために部分的に分解、つまりブーム4が上部構造3から取り外されて、上部構造3の上方に突き出た予備的保護シリンダ12が、輸送準備を終えるために引き込まれるときに必要とされる。輸送または組み付けの状況が無い作業機械では、クロスの位置が無い簡単な4/2方向バルブを用いることも可能である。
【0036】
更に、圧力開放弁30は、方向弁26と閉止弁16の間に配置されている。そのバルブ30は、方向弁26を環状スペース19に接続する経路に配置されている。その圧力開放弁によって制限される最大圧力値は、電気的に設定可能である。圧力と、作動油の流量または予備的保護シリンダ12への(からの)その作動油の流れを制御することは、方向弁26との協働による圧力開放弁30によって可能である。
【0037】
電気的に切換可能または調節可能な全てのバルブ16、26、30は、作業機械1の制御によって制御される。特に、ホイストウインチ9や引き込みウインチ6などの作業機械1の種々のアクチュエーターに引き継ぐように制御される。加えて、その制御は、予備的保護シリンダ12の耐荷重シリンダスペース18の圧力に関する圧力センサ28の数値を受信し、それによって荷重検知機能を実行する。この目的のために、油圧システム10の内外に、更なるセンサが備えられていてもよい。
【0038】
予備的保護機能を備えた公知のシステムと異なり、油圧ポンプによる予備的保護シリンダ12の継続的な供給は、この発明に係る油圧システム10では必須でない。その代わりに、既存の作業機械1の油圧ポンプ14は、所定の状況における予備的保護機能のエネルギーを提供することだけのために使われる。もし、ブーム4が引き込みウインチ6の作動によって動かないならば、他のシステムとエネルギー交換が生じないように、圧力センサ28と油圧溜め20に接続された領域、および、耐荷重シリンダスペース18は、閉止弁16によって閉止される。閉止弁16の最後の閉止位置への切り換え前に存在するシリンダ圧は、閉じた容積に保持される。残りの消費物50のみが、油圧ポンプ14によって供給される。
【0039】
油圧溜め20は、それに加えて、外力によって生じる閉止された耐荷重シリンダスペース18によるブーム4の最小の動作、例えば、突風などの風の荷重による持ち上げの増加または低下におけるブーム4の予備的保護機能を保証するために備えられている。必要な作動油の流れが、予備的保護シリンダ12の伸長によってそこから取り除かれるか、予備的保護シリンダ12の収縮によってそこに加えられることにより、予備的保護シリンダ12は、ブーム4の微少動作を導くことができる。従って、油圧溜め20は、ブーム4の微少動作のためのエネルギーの発生源および消失源の双方として作用する。
【0040】
ブーム4の活動的な動きを目的とした操作による引き込みウインチ6の作動では、閉止弁16は開かれる。すなわち、通過位置に切り換えられる。ブーム4の下降では、予備的保護シリンダ12は伸長し、ブーム4を引っ張るために必要とされる圧力は、作動油の供給により、油圧溜め20または耐荷重シリンダスペース18に維持または調整される。方向弁26もまた、この目的のために、通過位置に切り換えられる。対して、ブーム4の上昇では、予備的保護シリンダ12は収縮し、方向弁26が閉止位置に維持されるので、作動油は、圧力開放弁30が生じる抵抗に抗して、耐荷重シリンダスペース18からタンク36に戻るように誘導される。圧力開放弁30の設定可能な抵抗により、予備的保護シリンダ12の上昇における予備的保護シリンダ12の最適な追跡が保証される。
【0041】
それゆえ、油圧ポンプ14による予備的保護シリンダ12への供給は、ブーム4を下降させた状態でのオーバーホールや、付加的な組み付け作業において行えさえすればよい。
ブーム4の下降時には、閉止弁16を通過位置に切り換えるのではなく、むしろ、作動油の供給がチェックバルブ24を開くことを介して行われることにより、付加的に準備がなされる。チェックバルブ24は、とりわけ、操作状態を変える場合に荷重変更反応を減少させる機能を有しているが、それは必須ではない。ブーム4の上昇における油圧システム10の有利な運転方法は、以下において説明する。ブーム4の活動的な動きが起きない開始位置では、閉止弁16および方向弁26の各々は、閉止位置に位置し、これら閉止弁16および方向弁26の間の油圧経路に圧力は無い。対して、閉止弁16と予備的保護シリンダ12の間の油圧経路は、蓄えられた圧力が作用している。そうして、作業機械1のオペレータが、ブーム4を上昇させたり起立させたりする場合、入力装置を介して、対応する入力を行う。
【0042】
その制御により、方向弁26は通過位置(「平行な」位置)に切り替えられ、それにより、閉止弁16より上流側の油圧経路の圧力、つまり、チェックバルブ24に作用する圧力が増加する。仮に、油圧ポンプ14によって生じる圧力が、閉止された領域に蓄えられている圧力を上回る場合、チェックバルブ24が開いて、油圧溜め20において圧力平衡が確立される。方向弁26は、付加的に、この時点の後に閉じられ得る。
【0043】
その制御はまた、閉止弁16を通過位置に切り換える。しかしながら、このステップは、付加的に省略でき、必要に応じて(すなわち、許容される最小シリンダ力以下に低下した時に)、チェックバルブ24を介して、作動油の供給が行われ得る。続いて、引き込みウインチ6は、ブーム4が上昇するように作動する。それにより、予備的保護シリンダ12は、圧力開放弁30の抵抗に抗して収縮し、耐荷重シリンダスペース18の対応した圧力または対応した保持力により、予備的保護シリンダ12による追跡が行われる。
【0044】
図3は、この発明に基づく油圧システム10の第2実施例を示している。図2に示した第1実施例と比べて、ここでは、閉止弁16は、油圧の切り換えが可能な状態で、閉止位置に予め設定されていて、その制御の入力側が、油圧の往復バルブ34の出口に接続されている。往復バルブ34は、予備的保護シリンダ12の環状スペース19と入力側で接続されており、環状スペース19において求められた圧力動作により、閉止弁16が通過位置に切り換え可能になっている。しかしながら、予備的保護シリンダ12の収縮は、ブーム4を介して機械的に行われるので、これは、作業機械1の通常の作業操作においては発生しない。
【0045】
往復バルブ34の他の入力側は、電気的に切り換え可能なスイッチングバルブ32に接続されている。閉止弁16は、スイッチングバルブ32の制御によって通過位置に切り換えられ得る。閉止弁16は、閉止位置ではチェックバルブとして機能しないが、ここでのチェックバルブ24は、むしろ平行状態に継続的に接続される。しかしながら、この油圧システム10の機能は、第1実施例として示された機能と対応している。
【0046】
付加的な圧力開放弁22は、異常な運転に対する圧力のバックアップを提供し、油圧システムの機能に含まれないか、通常操作における予備的保護として、油圧システム10の閉止領域に備えられる。
【0047】
この発明に係る油圧システム10の実質的な利点は、包括すると、次のように要約できる。
・予備的保護機能への供給に必要とされるエネルギーは、予備的保護シリンダ12が伸長する時にのみ、必要とされる。これは、「ブームを下げる(Lower Boom)」という作業機械1の操作か、付加的に具備される組み付け操作の場合のみである。

・外的な力の作用で生じるブーム4の最小動作は、予備的保護機能を保証するために油圧溜め20によって補償されている。
【符号の説明】
【0048】
1 作業機械
2 車台を備えた走行体
3 上部構造
4 ブーム
5 引き込みロープ
6 調整装置(引き込みウインチ)
7 荷重懸架手段(荷重フック)
8 ホイストロープ
9 ホイストウインチ
10 油圧システム
12 予備的保護シリンダ
14 油圧ポンプ
15 モータ
16 閉止弁
18 耐荷重シリンダスペース
19 非耐荷重シリンダスペース
20 油圧溜め
22 圧力開放弁
24 チェックバルブ
26 バルブ(方向弁)
28 圧力センサ
30 圧力開放弁
32 スイッチングバルブ
34 往復バルブ
36 タンク
50 消費物
M 荷重トルク
図1
図2
図3
【外国語明細書】