(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021345
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】植生切断用のモノフィラメント
(51)【国際特許分類】
D01F 8/12 20060101AFI20220126BHJP
A01D 34/416 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
D01F8/12 Z
A01D34/416 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120232
(22)【出願日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】20305834.2
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】315009862
【氏名又は名称】スピード フランス エス エー エス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ベルジャン ヤン
【テーマコード(参考)】
2B083
4L041
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA12
2B083CA22
2B083GA02
4L041BA11
4L041BA46
4L041BD20
(57)【要約】
【課題】植生切断用のモノフィラメント。
【解決手段】本発明の一実施形態は、植生切断用のモノフィラメントであって、
少なくとも1つのポリアミドを有する第1の材料で構成されたマトリクスと、
前記マトリクスに別個に埋設された、少なくとも2つのチャネルであって、前記第1の材料とは異なる第2の材料で構成された、少なくとも2つのチャネルと、
を有し、
前記第2の材料は、少なくとも1つの生体高分子および/または少なくとも一1つの再利用ポリマーを有する、モノフィラメントに関する。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生切断用のモノフィラメントであって、
少なくとも1つのポリアミドを有する第1の材料で構成されたマトリクスと、
前記マトリクスに別個に埋設された、少なくとも2つのチャネルであって、前記第1の材料とは異なる第2の材料で構成された、少なくとも2つのチャネルと、
を有し、
前記第2の材料は、少なくとも1つの生体高分子および/または少なくとも一1つの再利用ポリマーを有する、モノフィラメント。
【請求項2】
前記少なくとも2つのチャネルは、各々、異なる第2の材料で構成され、および/または
各々は、異なる断面を有する、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項3】
前記マトリクスは、当該モノフィラメントの全周にわたって延在する、請求項1または2に記載のモノフィラメント。
【請求項4】
前記マトリクスおよび前記少なくとも2つのチャネルは、当該モノフィラメントの長手軸に沿って連続的に延在する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項5】
前記少なくとも2つのチャネルは、直線状であり、前記長手軸と平行である、請求項4に記載のモノフィラメント。
【請求項6】
前記少なくとも2つのチャネルは、当該モノフィラメントの前記断面にわたって規則的パターンに従って配置される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項7】
前記少なくとも2つのチャネルは、三角形断面を示し、
各三角形の高さは、前記三角形の基部と頂部との間で半径方向に配向され、
前記基部は、前記頂部よりも当該モノフィラメントの内側に配置される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項8】
前記チャネルの体積は、 当該モノフィラメントの体積の10%から80%の間を構成する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項9】
前記第1の材料は、ポリアミド6、ポリアミド6-6、コポリアミド6/66、ポリアミド4-6、ポリアミド6-10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6Tの少なくとも1つを有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項10】
前記第2の材料は、熱可塑性デンプン(TPS)もしくはセルロースのような多糖類、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシブチル酸(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリブチレンアジピン酸テレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、および熱可塑性エラストマー(TPE)の少なくとも1つを有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項11】
前記第1および第2の材料は、ポリアミドとデンプンの混合物を有し、
前記第2の材料中のデンプンの量は、前記第1の材料中のデンプンの量よりも多い、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項12】
前記第2の材料は、亜麻、麻布、セルロース、もしくはススキのような天然繊維、タルク、シリカ、アルミナ(Al2O3)、および酸化チタン(TiO2)の少なくとも1つで構成されたフィラーを有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項13】
前記チャネルの重量は、当該フィラメントの重量の20から80%の間で構成される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項14】
当該モノフィラメントは、単一の押出ステップにより得られる、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項15】
前記第1および第2の材料は、共押出される、請求項14に記載のモノフィラメント。
【請求項16】
さらに、
前記第1および第2の材料の結合を促進するように構成された、少なくとも1つの相溶化剤を有する、請求項15に記載のモノフィラメント。
【請求項17】
1.6mmから4.5mmの間の直径を有する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項18】
さらに、前記マトリクスに埋設された少なくとも1つの中空チャネルを有する、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のモノフィラメント。
【請求項19】
前記マトリクスおよび前記少なくとも2つのチャネルは、単一の押出ステップで形成される、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のモノフィラメントを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生切断機に使用されるモノフィラメント、およびそのようなモノフィラメントを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、植生の切断に用いられるモノフィラメントは、ポリアミドで構成される。この材料は、摩耗および熱に耐性があるためである。
【0003】
1または2以上のモノフィラメントは、植生切断機の一部を構成する切断ヘッドに取り付けられる。モノフィラメントの自由部分は、切断ヘッドの外側に延在し、植生切断機の切断直径を定める。
【0004】
モノフィラメントは、植生との衝突により摩耗するため、小片に破砕され、これが土壌に落下する。
【0005】
簡単には分解されないそのような破片による土壌の汚染を避けるため、環境規制により、切断モノフィラメントのポリアミド含有量を大きく低減させること、および/または代替材料を使用することが要求される。
【0006】
しかしながら、しばしば「生体高分子」として知られる他の種類の材料を使用すると、モノフィラメントの切断特性が損なわれる場合がある。実際、そのような生体高分子は、通常、ポリアミドに比べて有意に低い耐熱性を有する。その結果、モノフィラメントは、使用中に軟化し、特に、開口部(「アイレット」とも称される)の近傍では破損する場合がある。モノフィラメントは、アイレットから、切断ヘッドの外側に延在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ポリアミド含有量が低減された組成を有し、従来のポリアミドモノフィラメントと同様の切断特性を有する、植生切断用のモノフィラメントに対してニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明では、植生切断用のモノフィラメントであって、
少なくとも1つのポリアミドを有する第1の材料で構成されたマトリクスと、
前記マトリクスに別個に埋設された、少なくとも2つのチャネルであって、前記第1の材料とは異なる第2の材料で構成された、少なくとも2つのチャネルと、
を有し、
前記第2の材料は、少なくとも1つの生体高分子および/または少なくとも一1つの再利用ポリマーを有する、モノフィラメントが提供される。
【0009】
当該モノフィラメントの任意の好適特徴によれば:
-前記少なくとも2つのチャネルは、各々、異なる第2の材料で構成され、および/または各々は、異なる断面を有し;
-前記マトリクスは、前記モノフィラメントの全周にわたって延在し;
-前記マトリクスおよび前記少なくとも2つのチャネルは、当該モノフィラメントの長手軸に沿って連続的に延在し;
-前記少なくとも2つのチャネルは、直線状であり、前記長手軸と平行であり;
-前記少なくとも2つのチャネルは、当該モノフィラメントの前記断面にわたって規則的パターンに従って配置され;
-前記少なくとも2つのチャネルは、三角形断面を示し、各三角形の高さは、前記三角形の基部と頂部との間で半径方向に配向され、前記基部は、前記頂部よりも当該モノフィラメントの内側に配置され;
-前記チャネルの体積は、当該モノフィラメントの体積の10%から80%の間を構成し;
-前記第1の材料は、ポリアミド6、ポリアミド6-6、コポリアミド6/66、ポリアミド4-6、ポリアミド6-10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6Tの少なくとも1つを有し;
-前記第2の材料は、熱可塑性デンプン(TPS)もしくはセルロースのような多糖類、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシブチル酸(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリブチレンアジピン酸テレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、および熱可塑性エラストマー(TPE)の少なくとも1つを有し;
-前記第1および第2の材料は、ポリアミドとデンプンの混合物を有し、前記第2の材料中のデンプンの量は、前記第1の材料中のデンプンの量よりも多く;
-前記第2の材料は、亜麻、麻布、セルロース、もしくはススキのような天然繊維、タルク、シリカ、アルミナ(Al2O3)、および酸化チタン(TiO2)の少なくとも1つで構成されたフィラーを有し;
-前記チャネルの重量は、当該フィラメントの重量の20から80%の間で構成され;
-当該モノフィラメントは、単一の押出ステップにより得られ;
-前記第1および第2の材料は、共押出され;
-当該フィラメントは、さらに、前記第1および第2の材料の結合を促進するように構成された、少なくとも1つの相溶化剤を有し;
-1.6mmから4.5mmの間の直径を有し;
-さらに、前記マトリクスに埋設された少なくとも1つの中空チャネルを有する。これらは、適切な場合、組み合わされてもよい。
【0010】
別の目的は、前述のモノフィラメントを製造する方法に関する。当該方法において、前記マトリクスおよび前記少なくとも2つのチャネルは、単一の押出ステップで形成される。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面に基づく以下の実施形態の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】第1の実施形態によるモノフィラメントの斜視図である。
【
図2】第2の実施形態によるモノフィラメントの断面図である。
【
図3】第3の実施形態によるモノフィラメントの断面図である。
【
図4A】第4の実施形態によるモノフィラメントの斜視図である。
【
図5A】第5の実施形態によるモノフィラメントの斜視図である。
【
図6】少なくとも一つの切断モノフィラメントを有する切断ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
コア、および該コアを取り囲み該コアと同軸のシースを有する、従来の二材料モノフィラメントの構成を使用する代わりに、本発明では、マトリクスに埋設された少なくとも2つのチャネルを有するモノフィラメントが提供される。チャネルは、マトリクスの一部により相互に分離される。
【0014】
少なくとも2つのチャネルは、少なくとも1つの特徴により差別化され、これは、チャネルの材料および/または断面(サイズおよび/または形状)であってもよい。
【0015】
マトリクスは、モノフィラメントの全周にわたって延在することが好ましい。マトリックスの材料は、ポリアミド、またはポリアミドの混合物である。ポリアミドは、通常、高い耐熱性および高い耐衝撃性のため、切断用モノフィラメントの形成に使用される。
【0016】
ある実施形態では、チャネルの材料は、生体高分子または再利用ポリマーである。
【0017】
本願の文章において、生体高分子は、産業用堆肥に関する基準EN13432に適合する、生体および/または任意のポリマーにより製造される高分子である。
【0018】
要約すると、この基準に従った堆肥化が考慮される材料は、以下の特性を有する必要がある:
-生物分解性(材料の二酸化炭素(CO2)、水(H2O)、および腐植土への代謝変換):生物分解性は、標準化試験(ISO14855)により測定される;生物分解の90%が6ヶ月未満で達成された場合、材料が生物分解性であるとみなされる:
-腐敗(材料の小片化、および堆肥内の全不可視性):腐敗は、パイロットスケールの堆肥化試験により測定される;試験材料のサンプルは、3ヶ月間、有機廃棄物とともに堆肥化され、その後、堆肥は、2mmの篩いで篩い分けされる。2mmよりも大きな残留物の質量は、全質量の10%未満である必要がある;
-重金属の低濃度/堆肥の良質(生態毒性および農学価値の点で);堆肥の腐敗が生じた堆肥サンプルに対して植物成長試験を実施する;制御堆肥との差異が強調されない;
-一定の物理化学的パラメータ:窒素(N)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、の濃度、pH、生理食塩水含有量は、材料の分解後も一定である必要がある。
【0019】
モノフィラメントのチャンネルの形成に使用され得る生体高分子は、以下の材料を有してもよい:単一材料としての、または少なくとも2つの材料の組み合わせとしての、多糖類(例えば、熱可塑性デンプン(TPS)、セルロース)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシブチル酸(PHB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンコハク酸(PBS)、ポリブチレンアジピン酸テレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、熱可塑性エラストマー(TPE)。
【0020】
本願において、再利用ポリマーは、少なくとも一度、既に処理され、射出成形、押出成形、または他の任意の製造プロセスにより、製品製造されているポリマーである。製品の廃棄の際には、小片に切断され、溶解され、押出機において使用されるように顆粒化される。
【0021】
モノフィラメントのチャネルを形成するために使用され得る再利用ポリマーは、以下の材料を含んでもよい:単一材料としての、または少なくとも2つの材料の組み合わせとしての、ポリアミド(ホモポリマまたはコポリマ)、特に、PA6、PA6/66、PA66、PA6/10、PA4/6、PA11、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンランダムコポリマ(PP-R)、ポリエチレンテレフタレートグリコール改質(PET/G)。
【0022】
再利用ポリマーは、初めて処理されたポリマーと比べて、改変された物理化学的特性を有する。特に、再利用ポリマーは、低下した粘度、および/または低下した衝撃抵抗を有してもよい。
【0023】
その結果、再利用ポリマーから形成されたモノフィラメントは、同じポリマーから初めて処理されて形成されたモノフィラメントと比べて、約30%低下した特性を有することが認められている。
【0024】
一方、ポリマーの再利用は、環境上の理由から、厳しく要求されている。
【0025】
本発明では、切断モノフィラメントの好適な切削特性を維持したまま、前記要件に適合することができる。実際、チャネルにより、既に処理されたポリマーの2度目の使用が可能となるが、生体高分子または再利用ポリマーは、それを取り囲むポリアミドマトリックスにより、衝撃および/または熱から保護される。さらに、モノフィラメントの構造により、複数のチャネルにわたる衝撃によって生じる機械的制約を分散させることができる。
【0026】
従って、生体高分子または再利用ポリマーの低下した性能は、チャネルを取り囲むマトリクスとしてのポリアミドの組み合わせ使用により補償される。
【0027】
モノフィラメントのマトリクスを形成するために使用され得るポリアミドは、以下を含んでもよい:単一材料としての、または少なくとも2つの材料の組み合わせとしての、PA6、PA6/66、PA66、PA11、PA12、PA6/10、PA4/6、PA6T。
【0028】
マトリクスおよび/またはチャネルに追加の材料を使用してもよい。
【0029】
そのような追加の材料は、以下を含んでもよい:
-亜麻、麻布、セルロース、またはススキのような天然繊維、タルク、シリカ、アルミナ(Al2O3)、および酸化チタン(TiO2)の単独、または組み合わせ;
-色素;
-相溶化剤、例えば、エチレンアクリルエステル、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルアクリレート、スチレンアクリル、2,3-エポキシプロピルメタクリレート、および無水マレイン酸の単独、または組み合わせ。
【0030】
通常、ポリアミドおよび生体高分子は、大きく異なる融点を有し(ポリアミドでは約220℃、生体高分子では約140℃)、これらの材料で構成された良好な結合部分を有する高品質のモノフィラメントを製造することは難しい場合がある。
【0031】
また、ポリアミドおよび生体高分子が化学的に両立性でない場合、これは、少なくともモノフィラメントの自由端において、マトリクスおよびチャネルの剥離につながり、モノフィラメントの自由端が複数の小さなストランドに分離し、切断効率が大きく低下する可能性がある。
【0032】
しかしながら、モノフィラメント自体の機械的構造は、異なる材料間の結合を高め、剥離のリスクを低減する。マトリクス内のチャネルの配置により、チャネルとマトリクスの間に、大きな接触表面が提供されるためである。例えば、一方では、生体高分子で構成されたコアと、ポリアミドで構成され、コアと同軸でコアを取り囲むシースとを有するモノフィラメント、他方では、チャネル(またはコア)とマトリクス(またはシース)の間の同じ重量比を有する、生体高分子で構成された4つのチャネルと該チャネルを取り囲むマトリクスとを有する、本発明によるモノフィラメントを考慮すると、チャネル(またはコア)とマトリクス(またはシース)の間の接触面は、後者の方がより大きい。従って、本発明によるモノフィラメントの構成により、マトリクスとチャネルの結合が促進される。
【0033】
また、剥離を最小限に抑制するため、モノフィラメントに少なくとも1つの相溶化剤を添加してもよい。ある実施形態では、そのような相溶化剤は、マトリクスおよび/またはチャネルの組成物中に含まれてもよい。別の態様では、相溶化剤は、チャネルとマトリクスとの間の界面に添加されてもよい。
【0034】
ある実施形態では、チャネルは中空であってもよい。このように、マトリクスの材料が再利用材料でない場合でも、マトリクスと同じ材料で構成されたそのままのモノフィラメントに比べて、モノフィラメントの重量が軽減される。その結果、モノフィラメントの製造に使用されるポリマーの量が減少する。
【0035】
マトリクス内のチャネルの数、形状および配置は、選択材料および切断モノフィラメントの要求仕様に応じて調整されてもよい。
【0036】
ある実施形態では、チャネルおよびマトリクスの両方は、生体高分子を含んでもよい。例えば、チャネルおよびマトリクスは、ポリアミドとデンプンの混合物で構成されてもよい。異なる量のデンプンを有してもよい。通常、マトリクス中のデンプンの量は、チャネル中よりも少ない。例えば、マトリクスは、ポリアミドと、20から40%の間の重量のデンプンを含むデンプンの混合物を含んでもよく、チャネルは、ポリアミドと、40から60%の間のデンプン重量のデンプンを含むデンプンの混合物を含んでもよい。また、1つのチャンネルにおけるデンプンの重量は、別のチャンネルにおけるデンプンの重量と異なっていてもよい(例えば、あるチャンネルにおいては40から50%の間であり、別のチャンネルでは50から60%の間)。
【0037】
好適実施例では、モノフィラメントは、円形の断面を有し、典型的には、1.6mmと4.5mmの間の直径を示す。ただし、正方形または長方形のような、他の形状を選定してもよい。
【0038】
チャネルは、モノフィラメントの断面にわたって規則的なパターンに従って配置されることが好ましい。特に、チャネルは、同一の断面形状およびサイズを有し、モノフィラメントの周囲に対しておよび互いに対して、規則的な間隔で配置されてもよい。別の実施形態では、チャネルは、異なる断面形状およびサイズを有してもよい。
【0039】
モノフィラメントは、共押出プロセス、すなわち、チャンネルおよびマトリクスが押出ヘッドから同時に押出される方法により製造される。前記押出しステップの間、チャネルおよびマトリクスの材料は、溶融状態にあるため、チャネルとマトリクスの間の界面では材料のより良好な結合が得られ、これは、相溶化剤の使用により強化され得る。チャンネルが中空の場合、押出ヘッドに設けられた対応する孔を介してガスが注入され、押出プロセス全体を通じて、マトリクス内のチャンネルの形状が定められ、維持されてもよい。
【0040】
チャンネルが2つの異なる材料で構成される場合(両方の材料は、マトリクスの材料と異なる)、押出プロセスは、トリ押出と呼ばれる。前述のように、チャネルとマトリクスの材料は、それらの界面で緊密に結合され、これにより、モノフィラメントの良好な結合が提供され、従って、衝撃に対してより大きな抵抗が得られる。また、そのような同時押出またはトリ押出プロセスでは、各種材料を組み合わせることができ、従って、モノフィラメントの技術的特性に関し、より多用性が提供される。
【0041】
マトリクスおよびチャネルは、モノフィラメントの長手軸に沿って連続する。特に、モノフィラメントは、長手軸に沿った任意の位置で同じ構造を有する。
【0042】
図1Aおよび
図1Bには、モノフィラメントの第1の実施形態を示す。モノフィラメントは、円形断面を有し、これは、マトリクス1の円周により定められる。
【0043】
マトリクスには、4つのチャネル2a乃至2dが埋設される。全てのチャネルは、同じ形状を有し、これは、マトリクスの中心と同じ中心を有する2つの対向する弓形のエッジと、互いに直交する2つの対向する直線のエッジとにより、定められる。
【0044】
チャネル2a乃至2dは、モノフィラメントの長手軸Xに沿って連続的に延びる。
【0045】
ある実施形態では、全てのチャネル2a~2dが、同一の生体高分子または再利用材料で構成される。
【0046】
別の実施形態では、少なくとも2つのチャネルが、異なる生体高分子または再利用材料で構成される。このように、モノフィラメントの機械的挙動は、チャネルの組成を変化させることにより、調節されてもよい。
【0047】
通常、チャネル2a乃至2dとマトリクス1の間の重量比は、20/80から80/20の間、好ましくは40/60から60/40の間で構成される。例えば、各チャネルは、モノフィラメントの重量の5から15%の間の重量を有し、マトリクスは、モノフィラメントの重量の20から80%の間の重量を有する。
【0048】
別の実施形態では、チャネル2は中空である。
【0049】
図2には、モノフィラメントの第2の実施形態を示す。
【0050】
モノフィラメントは、円形断面を有し、これは、マトリクス1の円周により定められる。
【0051】
マトリクス1には、5つのチャンネル2が埋設される。全てのチャネルは、同じ形状を有し、これは、マトリクスの中心から実質的に半径方向に延びる対称軸を有する、2つの対向する弓形のエッジにより定められる。
【0052】
これらのチャネルは、花弁の形態で、マトリクスの中心の周りに規則的に配列される。
【0053】
通常、チャネル2a乃至2dとマトリクス1の間の重量比は、20/80から80/20の間、好ましくは40/60から60/40の間で構成される。例えば、各チャネルは、モノフィラメントの重量の約10%の重量を有し、マトリクスは、モノフィラメントの重量の約50%の重量を有する。
【0054】
別の実施形態では、チャネル2は中空である。
【0055】
図3には、モノフィラメントの第3の実施形態を示す。
【0056】
モノフィラメントは円形断面を有し、これはマトリクス1の円周により定められる。
【0057】
円形断面を有する複数のチャネル2は、隣接するチャネル間に同一の角度距離を有するように、マトリクスの中心の周りに同心状に配置される。
【0058】
図4Aおよび
図4Bには、モノフィラメントの第4の実施形態を示す。
【0059】
モノフィラメントは、円形断面を有し、これはマトリクス1の円周により定められる。
【0060】
マトリクス1には3つのチャネル2a乃至2cが埋設される。全てのチャンネルは、同じ円形断面を有する。
【0061】
チャネル2a乃至2cは、モノフィラメントの長手軸Xに沿って連続的に延びる。
【0062】
別の実施形態では、少なくとも2つのチャネルは、異なる生体高分子または再利用材料で構成される。このように、モノフィラメントの機械的挙動は、チャネルの組成を変化させることにより、調節されてもよい。
【0063】
通常、チャネル2a乃至2cとマトリクス1との間の重量比は、40/60から60/40の間で構成される。
【0064】
ある実施形態では、全てのチャネル2a乃至2cは、同じ生体高分子または再利用材料で構成される。
【0065】
別の実施形態では、チャネル2a乃至2cは中空である。
【0066】
図5Aおよび
図5Bには、モノフィラメントの第4の実施形態を示す。
【0067】
モノフィラメントは、円形断面を有し、これはマトリクス1の円周により定められる。しかしながら、モノフィラメントは、他の断面を有してもよい。
【0068】
三角形の断面を有するチャネル2がマトリクスに埋設される。好ましくは、チャネルの断面は、正三角形または二等辺三角形として形状化される。
【0069】
チャネルは、各三角形が、半径方向に配向された、三角形の基部Bと頂点Vとの間に延在する高さAを有し、前記基部Bが頂点Vよりもモノフィラメントの内側に配置されるように配置される。示された実施形態では、モノフィラメントは、互いに90°に配置された4つのチャネル2を有する。この場合、前記高さAに垂直な2つの対向する三角形の基部Bは、互いに平行であり、隣接する三角形の基部に対して垂直である。しかしながら、異なる数の三角形チャンネル、前述の配向を有する、例えば、3から5個のチャンネルが使用されてもよい。
【0070】
この三角形チャンネルの特定の配置により、衝撃挙動のさらなる改善が可能になる。実際、チャネルのこの配向により、モノフィラメントの周囲部分(最初に衝撃の吸収に関与する)は、モノフィラメントの中央部分よりも多くの量のポリアミドを含有し、従って、衝撃に対し抵抗を有するように好適に適合される。他方、チャネルの三角形の形状は、依然、モノフィラメント内に相当量の生体高分子または再利用ポリマーを含有することを可能にする。
【0071】
チャネル2は、モノフィラメントの長手軸Xに沿って連続的に延びる。
【0072】
通常、チャネル2とマトリクス1の間の重量比は、20/80から80/20の間、好ましくは40/60から60/40の間で構成される。
【0073】
ある実施形態では、全てのチャネル2は、同一の生体高分子または再利用材料で構成される。
【0074】
別の実施形態では、少なくとも2つのチャネルが、異なる生体高分子または再利用材料で構成される。このように、モノフィラメントの機械的挙動は、チャネルの組成を変化させることにより調節されてもよい。
【0075】
別の実施形態では、チャネル2は中空である。チャンネルが中空である場合でも、モノフィラメント内の三角形チャンネルの配置により、良好な衝撃挙動が提供される。前述のように、最初に衝撃の吸収に関与するモノフィラメントの周辺部は、依然、多量のポリアミドを含有するためである。
【0076】
(実験結果)
広範なモノフィラメントサイズで、同じ外径(2.4mm)の円形断面を有する3種類のモノフィラメントのサンプルについて、試験を実施した。
【0077】
サンプル1では、モノフィラメントは、生体高分子(熱可塑性デンプン)で構成されたコアと、該コアと同軸の、該コアを取り囲むポリアミド(PA6)で構成されたシースとを有する。コアの重量とシースの重量の間の比は、約60/40であった。
【0078】
サンプル2では、モノフィラメントは、生体高分子で構成されたコアと、該コアと同軸の、該コアを取り囲むシースとを有する。コアの重量とシースの重量の間の比は、約40/60であった。
【0079】
サンプ3では、モノフィラメントは、本発明による、生体高分子で構成された4つのチャネルと、ポリアミドで構成されたマトリクスとを有する。
図1Aおよび
図1Bには、前記モノフィラメントの断面を示す。チャネルの重量とマトリクスの重量の間の比は、約50/50であった。
【0080】
全てのサンプルにおいて、生体高分子およびポリアミドは、同じ組成を有する。相溶化剤は使用しなかった。
【0081】
図6に示すように、各サンプル10を切断ヘッド3に配置した。切断ヘッド3は、切断ヘッドのアイレット30から外方に延在する130mmの長さLを有する部分を有する。
【0082】
植生切断機に切断ヘッドを取り付け、植生を切断した。30分間の間、5分毎の目視点検を行い、植生を切断するように操作した。
【0083】
その後、サンプルを観察し、剥離部分の長さを測定した。
【0084】
【表1】
これらの結果は、本発明によるモノフィラメントの構造がモノフィラメントの自由端の剥離および分裂を低減する上で有意に効果的であることを示している。
【符号の説明】
【0085】
1 マトリクス
2a~2d チャネル
【外国語明細書】