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特開2022-21361筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法
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  • 特開-筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法 図1
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  • 特開-筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021361
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法
(51)【国際特許分類】
   B43K 5/00 20060101AFI20220127BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B43K5/00 100
B43K3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124839
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】504467820
【氏名又は名称】有限会社中屋万年筆
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 俊也
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350KF01
2C350KF05
(57)【要約】
【課題】筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法を提供すること。
【解決手段】本方法は、鞘または胴の側面に設けられた孔の中に装飾部品の脚部を挿入するステップと、固定用部品を鞘または胴の開口端部から鞘または胴の中に押し込むことによって、鞘または胴の内部に突出する脚部を固定用部品によって折り曲げるステップと、固定用部品を鞘または胴の中にそのまま残し、装飾部品を固定するステップとを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用具の鞘(2)または胴に装飾部品(5)を固定するための方法であって、前記方法は、
前記鞘(2)または前記胴の側面に設けられた孔(4)の中に前記装飾部品(5)の脚部(6)を挿入するステップと、
固定用部品(10)を前記鞘(2)または前記胴の開口端部から前記鞘(2)または前記胴の中に押し込むことによって、前記鞘(2)または前記胴の内部に突出する前記脚部(6)を前記固定用部品(10)によって折り曲げるステップと、
前記固定用部品(10)を前記鞘(2)または前記胴の中にそのまま残し、前記装飾部品(5)を固定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記鞘(2)または前記胴の内面は、所定の範囲の円筒領域を有しており、前記固定用部品(10)は、前記円筒領域の範囲の中で任意の位置に固定され得り、前記装飾部品(5)は、前記固定用部品(10)が最も遠位に固定される位置(10A)と固定用部品(10)が最も近位に固定される位置(10B)との間の任意の位置に取り付け可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾部品(5)の前記脚部(6)は、板状になっている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記固定用部品(10)は、前記装飾部品(5)の前記脚部(6)を収容するための凹部(11)を有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固定用部品(10)は、円筒形の中空構造を有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固定用部品(10)は、3つ以上のガイドレール(12)を有している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記筆記用具は、万年筆である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
筆記用具の鞘(2)または胴の側面に設けられた孔(4)の中に装飾部品(5)の脚部(6)が挿入されており、前記鞘(2)または前記胴の内部に突出する脚部(6)が、前記鞘(2)または前記胴の中に設置された固定用部品(10)によって折り曲げられており、前記脚部(6)の折り曲げられた部分が、前記鞘(2)または前記胴の内面と前記固定用部品(10)との間に挟まれて固定されている、筆記用具。
【請求項9】
前記鞘(2)または前記胴の内面は、所定の範囲の円筒領域を有しており、前記固定用部品(10)は、前記円筒領域の範囲の中で任意の位置に固定され得り、前記装飾部品(5)は、前記固定用部品(10)が最も遠位に固定される位置(10A)と固定用部品(10)が最も近位に固定される位置(10B)との間の任意の位置に取り付け可能である、請求項8に記載の筆記用具。
【請求項10】
前記装飾部品(5)の前記脚部(6)は、板状になっている、請求項8または9に記載の筆記用具。
【請求項11】
前記固定用部品(10)は、前記装飾部品(5)の前記脚部(6)を収容するための凹部(11)を有している、請求項8から10のいずれか一項に記載の筆記用具。
【請求項12】
前記固定用部品(10)は、円筒形の中空構造を有している、請求項8から11のいずれか一項に記載の筆記用具。
【請求項13】
前記固定用部品(10)は、3つ以上のガイドレール(12)を有している、請求項8から12のいずれか一項に記載の筆記用具。
【請求項14】
前記筆記用具は、万年筆である、請求項8から13のいずれか一項に記載の筆記用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、万年筆等の筆記用具に装飾を施すことが望まれている。装飾品を筆記用具に取り付ける方法は各種存在するが、たとえば、以下の方法がある。(1)万年筆の鞘表面に装飾品を直に接着する。(2)鞘の側面に孔をあけ、棒状部分の付いた装飾部品を挿し込み接着する。(3)万年筆のクリップ装着部に代替の装飾部品を取り付ける。
【0003】
しかし、従来方法では、以下の問題点がある。上記(1)の場合には、衝撃で装飾部品が取れ易い。上記(2)の場合には、取り付ける箇所の材料厚が薄い場合、部品の安定度および接着強度が足りなくなる。また、挿し込んだ装飾部品が鞘の内側の部品に干渉する場合がある。上記(3)の場合には、取り付け位置がクリップに限定される。また、クリップの無い製品には取り付けられないため、適用製品が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実全昭61-047689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための改良された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、筆記用具の鞘または胴に装飾部品を固定するための方法であって、方法は、
鞘または胴の側面に設けられた孔の中に装飾部品の脚部を挿入するステップと、
固定用部品を鞘または胴の開口端部から鞘または胴の中に押し込むことによって、鞘または胴の内部に突出する脚部を固定用部品によって折り曲げるステップと、
固定用部品を鞘または胴の中にそのまま残し、装飾部品を固定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0007】
また、本発明の別の実施形態では、鞘または胴の内面は、所定の範囲の円筒領域を有しており、固定用部品は、円筒領域の範囲の中で任意の位置に固定され得り、装飾部品は、固定用部品が最も遠位に固定される位置と固定用部品が最も近位に固定される位置との間の任意の位置に取り付け可能である。
【0008】
また、本発明の別の実施形態では、装飾部品の脚部は、板状になっている。
【0009】
また、本発明の別の実施形態では、固定用部品は、装飾部品の脚部を収容するための凹部を有している。
【0010】
また、本発明の別の実施形態では、固定用部品は、円筒形の中空構造を有している。
【0011】
また、本発明の別の実施形態では、固定用部品は、3つ以上のガイドレールを有している。
【0012】
また、本発明の別の実施形態では、筆記用具は、万年筆である。
【0013】
また、本発明の別の態様は、筆記用具の鞘または胴の側面に設けられた孔の中に装飾部品の脚部が挿入されており、鞘または胴の内部に突出する脚部が、鞘または胴の中に設置された固定用部品によって折り曲げられており、脚部の折り曲げられた部分が、鞘または胴の内面と固定用部品との間に挟まれて固定されている、筆記用具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による筆記用具の組付け状態を示す概略説明図である。
図2】本発明の一実施形態による装飾部品を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による装飾部品を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による固定用部品を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による固定用部品を示す斜視図である。
図6】本発明方法の作業工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による筆記用具の組付け状態を示す概略説明図である。図1(a)は、側部からの部分断面図を示しており、図1(b)は、上部からの部分断面図を示している。図1(c)は、図1(a)の線A-A’における断面図を示している。本実施形態において、筆記用具は、万年筆である。しかし、本発明は、万年筆以外にも、ボールペンなどのような、鞘を有する任意の筆記用具に適用可能である。万年筆のペン先1を覆うように鞘2が設けられている。鞘2は、筆記時には、万年筆の本体部3から取り外される。鞘2の側面には、孔4が設けられている。孔4の中には、装飾部品5の脚部6が挿入されている。鞘2の内部に突出する脚部6は、鞘2の中に設置された固定用部品10によって折り曲げられている。脚部6の折り曲げられた部分は、鞘2の内面と固定用部品10との間に挟まれて固定されている。
【0016】
図1(a)に示されているように、鞘2の内面は、所定の範囲の円筒領域を有している。固定用部品10は、円筒領域の範囲の中で任意の位置に固定され得る。図1(a)では、固定用部品10が最も遠位に固定された位置10Aと、固定用部品10が最も近位に固定された位置10Bとが示されている。ここで、「遠位」方向とは、本体部3からペン先1の方向を表しており、すなわち、鞘2の中に深く入る方向を表している。「近位」方向とは、遠位方向の反対方向を表している。装飾部品5は、固定用部品10が最も遠位に固定される位置10Aと、固定用部品10が最も近位に固定される位置10Bとの間において、円周方向のすべてにおいて任意の位置に取り付け可能である。
【0017】
図2および図3は、本発明の一実施形態による装飾部品5を示す図である。図2は、2方向からの側面図とそれぞれの端面図を含む。図3は、装飾部品5の斜視図である。装飾部品5は、脚部6および台座部7を含む。脚部6は、鞘2の孔4の中に挿入される細長い部分である。本実施形態では、脚部6は、断面が長方形の板状になっている。板状の脚部6は、折れ曲がる方向に薄くなっていることによって、折り曲げが容易になる。しかし、脚部6は、折り曲げることができる形状であれば任意の形状でよい。
【0018】
台座部7は、鞘2の外側に設置される部分である。宝石などから作製された装飾品が、台座部7の上に取り付けられる。代替的に、装飾品は、台座部7と一体に形成されていてもよい。台座部7の脚部6側の面は、鞘2の曲面に合わせた形状になっている。これにより、装飾部品5の鞘2への固定が強化される。
【0019】
装飾部品5の材質は、折れ曲がることが可能であり、ある程度靭性のあるものであれば任意である。たとえば、黄銅などが好ましいが、金属に限定されない。
【0020】
図4および図5は、本発明の一実施形態による固定用部品10を示す図である。図4は、側面図と両側端面図を含む。図5は、固定用部品10の斜視図である。固定用部品10は、概して円筒リングの形状を有している。固定用部品10は、鞘2の内部に存在することとなるペン先1との干渉を避けるために、中空構造になっている。固定用部品10の外面には凹部11が設けられている。凹部11は、装飾部品5の脚部6を収容するための領域である。本実施形態では、凹部11は、円周方向に3箇所設けられている。凹部11同士の間の円周方向の部分は、ガイドレール12を構成している。凹部11は固定用部品10の長手方向に全体には設けられていないため、固定用部品10の一部にフランジ部13が形成されている。
【0021】
本実施形態では、凹部11が円周方向に3箇所設けられているが、凹部11は、装飾部品5を取り付ける位置に対応して設けられていれば十分である。また、本実施形態では、装飾部品5が1つだけ示されているが、複数の装飾部品5を固定することも可能である。複数の装飾部品5を取り付ける場合には、装飾部品5の位置に応じて凹部11が設けられている必要がある。
【0022】
ガイドレール12は、固定用部品10を鞘2の中に押し込むときに、固定用部品10が傾いて鞘2の中で引っ掛かることを防ぐ。本実施形態では、3箇所のガイドレール12が円周方向に均等の位置に配置されている。しかし、ガイドレール12は、円周方向に均等の位置に配置されなくてもよい。本実施形態では、部品の共通化の観点から、凹部11を円周方向に3箇所設け、すなわち、ガイドレール12を3箇所設けている。しかし、凹部11とガイドレール12の数は任意に設定できる。ただし、固定用部品10の安定した円滑な押し込みの観点から、ガイドレール12を3つ以上設けることが好ましい。
【0023】
フランジ部13は、装飾部品5と当接することとなり、装飾部品5の位置において固定用部品10を位置決めすること可能にする。また、フランジ部13は、ガイドレール12とともに、固定用部品10の安定した円滑な押し込みを促進させる役割も果たす。
【0024】
固定用部品10の材質は、ある程度強度のあるものであれば任意である。たとえば、SUS鋼などが好ましいが、金属に限定されない。
【0025】
次に、筆記用具の鞘2に装飾部品5を固定するための方法について説明する。図6は、本発明方法の作業工程を示す図である。
【0026】
図6(a)は、加工前の鞘2を示している。最初に、鞘2の側面に孔をあける(図6(b))。次いで、鞘2の側面に設けられた孔の中に装飾部品5の脚部6を挿入する(図6(c))。次いで、固定用部品10を鞘2の開口端部から鞘2の中に押し込むことによって、鞘2の内部に突出する脚部6を固定用部品10によって折り曲げる(図6(d))。そして、固定用部品10を鞘2の中にそのまま残し、装飾部品5を固定する(図6(d))。
【0027】
以上の実施形態では、鞘2に装飾部品5を固定することについて説明してきたが、本発明は、同様に、本体部3の中空の胴に装飾部品5を固定することも可能である。
【0028】
本発明によって、特に以下の利点が得られる。鞘の外側からではなく、内側から装飾部品を固定することが可能になる。鞘の外側から接着しなくて良くなるため外観の審美性が向上する。また、装飾部品を折り曲げるための冶具を同時に固定用部品として使用することができ、効率的である。また、装飾部品の折り曲げにより発生する弾性力と、固定用部品の摩擦力とを利用して、確実に固定することができる。また、装飾部品の取り付け位置を一定の範囲内で自由に設定でき、装飾の自由度が増す。また、接着剤を使用しないため、分解が容易であり、装飾部品の修理対応が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ペン先
2 鞘
3 本体部
4 孔
5 装飾部品
6 脚部
7 台座部
10 固定用部品
10A 固定用部品10が最も遠位に固定された位置
10B 固定用部品10が最も近位に固定された位置
11 凹部
12 ガイドレール
13 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6