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特開2022-21401熱収縮性フィルムを利用したタイダイ染
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  • 特開-熱収縮性フィルムを利用したタイダイ染 図1
  • 特開-熱収縮性フィルムを利用したタイダイ染 図2
  • 特開-熱収縮性フィルムを利用したタイダイ染 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021401
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルムを利用したタイダイ染
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/00 20060101AFI20220127BHJP
   D06J 1/12 20060101ALI20220127BHJP
   D06C 23/04 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
D06P5/00 124
D06J1/12
D06C23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124925
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】512019295
【氏名又は名称】森保染色株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】早川 典雄
【テーマコード(参考)】
3B154
4H157
【Fターム(参考)】
3B154AA07
3B154AB31
3B154BA09
3B154BA39
3B154BB02
3B154BB12
3B154BB32
3B154BC50
3B154BD01
3B154BE05
3B154DA13
4H157AA02
4H157BA08
4H157DA01
4H157DA17
4H157GA07
4H157GA33
(57)【要約】
【課題】新しい感性やファッション性に対応し、人為的に染斑を発生させて、不規則な形状の模様や色調が不規則に変化する色彩とするタイダイ染方法において、簡易な手段にて、被染色品である繊維製品を簡単に塊状とする手段の提供。
【解決手段】繊維製品1を、皺を付けて折り込み、多数の孔が設けられた熱収縮性フィルムシート2で包み込み、熱を加えて収縮させた熱収縮性フィルムシート2aにて繊維製品1を圧縮して塊状とした繊維製品1aを染色液に浸漬して染色するタイダイ染方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品を、皺を付けて折り込み、多数の孔が設けられた熱収縮性フィルムで包み込み、熱を加えて前記熱収縮性フィルムを収縮させて、前記繊維製品を圧縮包装して塊状としたのち、染色液に浸漬して染色するタイダイ染方法。
【請求項2】
前記タイダイ染方法において、繊維製品はポリエステル繊維製品であって、染色機の染色釜または染色液循環流を利用することにより、染色液に浸漬して染色することを特徴とする請求項1に記載のタイダイ染方法。
【請求項3】
前記染色液は、2種以上の染料を含有し色相調整された分散染料を用いて調合された染色液であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイダイ染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファッション性に優れた模様や色彩を有するタイダイ染に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい感性やファッション性に対応して、人為的に染斑を発生させて、不規則な形状の模様や色調が不規則に変化する色彩の染柄とするタイダイ染が、T-シャツなどの衣料製品やインテリア用の布帛などの繊維製品に施されることが行われている。
【0003】
このような染斑を発生させる染色方法としては、染色を施す衣料製品や布帛などに皺を付けて折り込み、さらにゴムバンドやひもなどで括って塊状とした繊維製品を染色液に浸漬して、不規則な形状の模様や色調を発生させるものである。このように、染斑を発生させて不規則模様を生地に施す染色方法は、従来から検討が行われており、例えば特許文献1には、布帛を、ロープ状に収束したり、押込捲縮をしたりして染色を行い、布帛に不規則な立体模様効果を発揮させる染色方法が記載され、特許文献2には、セルロース系繊維構造物に皺付け加工を施した後、該繊維構造物を袋詰めし、次いでビニルスルホン型反応性染料とアルカリからなる処理液に浸漬して放置することにより、皺模様を有する繊維構造物の製造方法が記載されている。
【0004】
さらには、特許文献3には、布帛に改質剤としてキトサン酸性溶液を含浸させた後、皺付けした状態で乾燥することにより布帛を不均一に改質し、次いで、不均一に改質された布帛を、反応染料を用いて染色することにより、感性とファション性に優れた二色相の斑染め布帛が得られる簡便な染色方法が記載されている。また、電子的技術情報の非特許文献1には、手作りによるタイダイ染のサンプルや作業方法が紹介されており、人為的に染斑を発生させて、独特の形状の模様や色調が不規則に変化する色彩とするタイダイ染はよく知られている。
【0005】
しかし、タイダイ染においては、皺を付けて折り込んだ繊維製品を、紐などで括って圧縮し塊状にする作業は手間のかかる作業であり、この作業を簡単に行うことのできる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭48-96887号公報
【特許文献2】特開平7-11591号公報
【特許文献3】特開2006-200045号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ダイロン社、[2017.06ダイロンニュースVol.02]、[online]、[令和2年5月18日検索]、インターネット〈URL:http://www.dylon.co.jp/dylon_news/02/02.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の課題は、新しい感性やファッション性に対応し、人為的に染斑を発生させて、不規則な形状の模様や色調が不規則に変化する色彩とするタイダイ染方法において、簡易な手段にて、被染色である繊維製品を簡単に塊状とする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタイダイ染方法は、繊維製品を、皺を付けて折り込み、多数の孔が設けられた熱収縮性フィルムで包み込み、熱を加えて前記熱収縮性フィルムを収縮させて、前記繊維製品を圧縮包装して塊状としたのち、染色液に浸漬して染色する方法である。
【0010】
熱収縮性フィルムは、延伸加工したプラスチックフィルムであって、加熱することによって収縮し、物品を圧縮包装するために用いられ、食品、日用品、スポーツ用品、各種の工業製品の包装や固定に用いられているフィルムであり、本発明の方法ではこの熱収縮性フィルムに多数の孔が設けられたフィルムが用いられる。熱収縮性フィルムはシートやチューブなどとして提供されているが、いずれも形態でも、皺を付けて折り込んだ繊維製品を包み込むことができればよく、包み込んだ後に加熱することにより、熱収縮性フィルムが収縮して繊維製品を圧縮包装して塊状とすることができる。この場合、大まかに折り込んだ繊維製品を、熱収縮性フィルムで包み込んで、熱を加えて熱収縮性フィルムを収縮させ、繊維製品を皺が付けられた塊状とすることでもよい。また、熱収縮性フィルムは染色液を透過しないので、多数の孔を設けて、圧縮包装して塊状とした繊維製品に染色液を浸透させて染色する。
【0011】
塊状とした繊維製品を染色液に浸漬する方法は、特に限定されず、染料や助剤を溶解した染色液が収容された染色浴槽に塊状の繊維製品を投入したり、染色液をシャワーで繊維製品に流しかけたりして染色液に浸漬することができる。染色浴槽は、染色液を収容できる容器や槽であればよく、特に限定されないが、各種染色機の染色釜または染色液循環流を利用することができる。そして、タイダイ染方法は、衣料製品、雑貨、インテリアなどに用いられる繊維製品に適用され、繊維製品の素材は特に限定されず各種の天然繊維、化学繊維、合成繊維を用いることができるが、このように、染色機の染色釜または染色液循環流を利用することにより、ポリエステル繊維製品にタイダイ染を容易に施すことができる。また、衣料製品のT-シャツに好ましく適用することができる。
【0012】
また、上記タイダイ染方法において、染色液として、2種以上の染料を含有し色相調整された分散染料を用いて調合された染色液も好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイダイ染方法では、染色液への浸漬に先立ち、被染色品である繊維製品を塊状とするのに、手間のかかる紐で括る作業に代えて、熱収縮性フィルムで包み込み、次いで加熱して圧縮包装する作業となるため、作業が簡単となり、作業時間も短縮することができる。さらに、熱収縮性フィルムに設ける孔の大きさや数を変えることにより、模様や色調を簡単に変化させることができ、従来の方法に比べてよりバラエティーに富んだ模様や色調のタイダイ染製品を簡単な作業で得ることができる。また、ポリエステル繊維製品では、専らプリント方式の捺染により絵柄や模様を施していたが、前記のように染色機の染色釜または染色液循環流を利用して、タイダイ染を容易に施すことができる。
【0014】
そして、分散染料では、2種以上の染料を調合して色相調整がなされる場合があり、このような分散染料を用いて調合された染色液を用いた場合には、皺を付けて折り込み、塊状とした繊維製品へ浸透拡散する程度や速度が、調合された各染料で異なるため、本来の被染色品に対して設定した染色色調とは異なり、より複雑な斑模様や色彩のタイダイ染が施された繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】皺を付けて折り込んだ繊維製品を、熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状とする説明図。
図2】多数の孔が設けられた熱収縮性フィルムチューブ。
図3】タイダイ染が施されたT-シャツ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態に付き、さらに詳しく説明する。
【0017】
本発明の方法は、タイダイ染を施す繊維製品を染色液に浸漬する前に、皺を付けて折り込んだ繊維製品を熱収縮性フィルムにて圧縮包装して塊状とする方法である。図1の上図に示すように、皺を付けて織り込んだ繊維製品1を、背3にて二つ折りにした熱収縮性フィルムシート2の間に挟み込み、背3以外の開放端部3辺をシールしてシール部4とし、繊維製品1を包み込み、次いで、シート表面に熱風を吹きかけて加熱して、収縮させた熱収縮性フィルムシート2aとして、図1の下図に示すように全体を圧縮包装して塊状とした繊維製品1aとしたものである。熱収縮性フィルムシート2には、図1には記載を省略しているが、多数の孔が全面に設けられている。そして、皺を付けて折り込まれた繊維製品1は、収縮した熱収縮性フィルムシート2aで圧縮包装され、塊状の繊維製品1aとなり、部位により圧縮の程度が異なっている。そのため、染色液に浸漬された場合には、熱収縮性フィルムシート2aに設けられた穴を通して、染色液が繊維製品1aへ浸透する際に、浸透速度や含浸量が部位により異なり、染着する染料の量が変化して、付けられた皴の形状が反映された染斑模様が形成される。
【0018】
図2には、熱収縮性フィルムチューブ5、6を示す。(a)に示す熱収縮性フィルムチューブ5は両方の端部7が開口したスリーブ状となっており、側面には多数の孔8が全体に設けられている。(b)に示す熱収縮性フィルムチューブ6は一方の端部がシールされ底9となり袋状となっている。スリーブ状の熱収縮性フィルムチューブ5を用いる場合には、皺を付けて折り込んだ繊維製品を、チューブ内部に収納し、両方の端部7をシールして包み込んだ状態とし、次いで表面に、熱風を吹きかけて加熱して、熱収縮性フィルムチューブ5を収縮させて繊維製品の全体を圧縮包装し塊状とすることができる。袋状の熱収縮性フィルムチューブ6を用いる場合は、開口した端部7より、皺を付けて折り込んだ繊維製品を袋内部に収納し、端部7をシールして包み込んだ状態とし、同様に熱収縮性フィルムチューブ6を収縮させて繊維製品の全体を圧縮包装し塊状とすることができる。
【0019】
熱収縮性フィルムは、前記したように延伸加工したプラスチックフィルムであって、加熱することによって収縮し、物品を圧縮包装するために用いられる。熱収縮性フィルムとしては各種の素材を用いることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどを用いることができる。熱収縮性フィルムは押出成形とテンターにより延伸してシートとしたり、インフレーション成形によりチューブとしたりして提供されており、上記のようにいずれの形態でも使用できるが、染色液を通過させるための多数の孔が設けられている。
【0020】
シートやチューブとされた熱収縮性フィルムで繊維製品を包みこむ際に、シートやチューブの開放端部をシールする手段としては、各種のシーラーを用いて熱融着してもよいし、感圧接着テープを用いて端部を接着してもよい。さらには熱収縮性フィルムチューブを用いる場合には、最初に開口端部のみを加熱して収縮させて開口部分を縮小し、次いでチューブ全体を加熱して収縮させることもできる。このように開口端部をシールした後、全体を加熱して、包み込んだ繊維製品を熱収縮性フィルムで圧縮包装し、塊状とすることができる。
【0021】
皺を付けて折り込んだ繊維製品を包み込んだ熱収縮性フィルムを加熱する方法は、ドライヤーを用いて熱風を当てる方法でも、熱風循環式や赤外線放射式の炉に入れたり、トンネルを通過させたりする方法でもよく、染色を施す繊維製品の数量により選択することができ、従来の方法のように紐で括ったりする方法に比べ、作業が簡単であり、効率よく多数の繊維製品を塊状として、染色を施すことができる。
【0022】
図3は、予め糊抜きなどの処理を行ったT-シャツを、皺を付けて折り込み、多数の穴を設けた熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状とし、染色液に浸漬して、タイダイ染を施したT-シャツを示す。上図(c)に示すT-シャツ10は、前身頃の中央をつまんで、捩じり回して、渦巻状の皺を付けながら折り込み、多数の孔を設けた熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状として、タイダイ染を施したT-シャツであり、タイダイ染模様11は胸元を中心とした渦巻状の絵柄が得られている。下図(d)に示すT-シャツ12は、首元に沿って放射状の皺を付けながら折り込み、多数の孔を設けた熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状として、同様にタイダイ染を施したT-シャツであり、タイダイ染模様13は首元から放射状の絵柄となっている。このように、仕上げのタイダイ染模様を想定して、繊維製品に皺を付けて折り込み、多数の孔を設けた熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状として染色するが、皺を付ける際に、通常の絞り染と同様に糸で縛り付けて、ぼかし模様とする手法も併用することもできる。
【0023】
そして、熱収縮性フィルムに設けられた孔の数、大きさ、位置などを変化させても、タイダイ染模様は変化するため、予備的に種々変化させて、染模様との関連を把握しておくことで、不規則ではあるが、新しい感性やファッション性に対応して想定したデザインの模様や色調を得ることができる。
【0024】
熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状にした繊維製品を染色液に浸漬する方法は、前記したように限定されず、適用な容器に収納された染色液に浸漬することでよいが、既存の染色機に用いられる染色釜を利用することが好ましく、各種の染色機に用いられる染色釜を用いることができる。染色機としては、染色液の液流を発生させて、染色する染色機が好ましく、例えば、綿状や綛糸状の繊維をかごに詰めて染色釜内で染色液に浸漬するパッケージ染色機、糸をボビンに巻き取ったコーンやチーズを染色釜内に積み重ねて染色液を循環させて染色を行うチーズ染色機、綛状の糸を染色釜内のアームに取り付け、染色液を噴射して染色液に浸漬する綛糸染色機、反物を移動させながら染色液に浸漬する布染用の液流染色機、製品を染めるタンブラー式染色機などの染色機の染色釜を用いることができる。
【0025】
繊維製品の染色では、被染色品を構成する繊維素材により、使用される染料は限定され、綿、セルロースであれば直接染料や反応染料、羊毛、絹、ナイロンであれば酸性染料、アクリルであればカチオン染料、アセテート、ポリエステルであれば分散染料のように、使用される主な染料は限られる。さらに、糸の繊維素材や染料の種類により温度を設定して染色が行われ、綿、羊毛、絹などの天然繊維では50~100℃、ナイロン、アクリルなどの合成繊維では100℃程度の温度で染色されるが、ポリエステルを分散染料で染色する場合には110℃~140℃程度の高温で染色される。そのため、染色機の染色釜を利用すれば、染色液の調合、染色液の温度調整を行う付帯設備が備わっており染色作業をスムーズに行うことができる。そして、ポリエステル繊維製品にも、容易にタイダイ染を施すことができる。
【0026】
また、糸や布帛の染色は、各種染料や薬剤が投入された染色釜(染色浴槽)に糸や布帛などの被染色品を浸漬させて行われる浸染によって行われることが多い。この浸染では、多量の水とエネルギーを使って行われ、染色釜ではデッドスペースが生じ、さらには未固着の染料や未消費の薬剤である着色排水が発生し、排水処理が必要である。そのため、浸染による染色工程では、染料や薬剤を効率よく使用して、着色排水量を減少させ、さらにはデッドスペースを有効利用し、水、エネルギー、染料、薬剤の無駄を省くことは、環境負荷の低減の観点からは望ましい。しかしながら、糸や布帛などの被染色品への染色液の均一な浸透を得るために、被染色品や染色液を循環させて染色を行っているが、染色釜のデッドスペースではこの染色液の均一な浸透は必ずしも確保されず、デッドスペースの有効利用はなされていない。
【0027】
一方、タイダイ染では、人為的に染斑を発生させて、不規則な形状の模様や色彩とするものであるため、繊維製品を染色釜のデッドスペースに配置したことに起因する染斑が発生してもよく、皺を付けて折り込み、熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状としたことにより発生する染斑に加えて、このデッドスペースに配置したために発生する染斑が加わっても、新しい感性やファッション性に対応する形状の模様や、色調の変化する色彩を得ることができる。
【0028】
そのため、熱収縮性フィルムで圧縮包装して塊状とした繊維製品を染色液に浸漬する方法として、既存の染色機の染色釜を利用する場合、専用の染色釜として利用するだけでなく、デッドスペースを利用して、本来の被染色品の染色作業と同時に行い、環境負荷の低減に寄与することもできる。さらには、本来の被染色本の染色作業後の残染色液を使用して、染色液の使用効率を上げることもできる。
【0029】
また、ポリエステルの染色に用いられる分散染料は、2種以上の染料を調合して色相調整がなされる場合があり、複数の染料が混合したものも供給されている。分散染料は水不溶性であり、微粒子化、分散化処理をして、微粒子粉体状、ペースト状、分散液状で供給されており、これらに温水を加えて均一な分散液とされ、染色液として使用されている。このような分散染料を用いた通常の染色工程では、ポリエステル被染色品に各染料を均一に浸透固着させ、設計した色調の染色品を得ている。この場合、さらに各種の染色助剤や各種色調の分散染料を加えて、設計した色調とすることも行われている。
【0030】
本発明のタイダイ染では、被染色品である繊維製品に、皺を付け、塊状として染色に供するため、繊維製品の部位により、締め付けの程度が異なり、見かけの密度が変化している。そのため、上記のような2種以上の染料を調合して色相調整がなされた分散染料による染色液で染色する場合には、染色液自体の浸透拡散する程度や速度が異なるだけではなく、調合された各染料の分子の繊維製品に対する染着性や、分散された微粒子の大きさや形状に基づく繊維製品への染着性が、染料毎に異なってくる。そのため、本来の被染色品に対して設定した染色色調とは異なり、繊維製品の部位により染着する染料が異なり、部位により染色される色相が異なり、バラエティーに富んだ斑模様や色彩のタイダイ染が施された繊維製品が得られる。さらには、このような塊状とした繊維製品の部位による斑模様や色彩の変化は、染色時の温度条件でも変化するため、同じ染料、同じ素材の繊維製品を用いても、異なった色彩の変化が生まれ、予想外の効果の染柄の製品を得ることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 皺を付けて折り込んだ繊維製品
1a 塊状とした繊維製品
2 熱収縮性フィルムシート
2a 収縮した熱収縮性フィルムシート
3 背
4 シール部
5、6 熱収縮性フィルムチューブ
7 端部(開口)
8 孔
9 底
10、12 T-シャツ
11、13 タイダイ染模様

図1
図2
図3