(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021411
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/06 20060101AFI20220127BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220127BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20220127BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220127BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B29C44/06
B29C44/00 G
B29C44/44
B29K105:04
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124945
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】591209361
【氏名又は名称】DAISEN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】細澤 孝晃
【テーマコード(参考)】
4F214
【Fターム(参考)】
4F214AC01
4F214AG20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB22
4F214UC02
4F214UC10
4F214UH18
4F214UR29
(57)【要約】
【課題】表皮層を備えた発泡樹脂製品を、同一の原料を用いて安価に製造することができる表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法を提供する。
【解決手段】分割金型を用いて発泡樹脂成形品を成形する第1工程と、第1工程で成形された発泡樹脂成形品Wを加熱された下型30の内面に押し付けて表面を溶融させて表皮層を形成する第2工程と、第2工程で表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wを冷却する第3工程と、第3工程で冷却された発泡樹脂成形品Wを取り出す第4工程とからなる。第1工程と第2工程を同一のステーションで進行させるか、全工程を同一のステーションで進行させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とからなる分割金型を用いて発泡樹脂成形品を成形する第1工程と、
第1工程で成形された発泡樹脂成形品を、加熱された下型の内面に押し付けて表面を溶融させ、表皮層を形成する第2工程と、
第2工程で表皮層が形成された発泡樹脂成形品をさらに冷却する第3工程と、
第3工程で冷却された発泡樹脂成形品を取り出す第4工程とを含むことを特徴とする表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
上記の第1工程から第4工程を、同一のステーションで進行させることを特徴とする請求項1に記載の表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
上記の第1工程と第2工程を同一の第1ステーションで進行させ、第3工程と第4工程を次の第2ステーションで進行させることを特徴とする請求項1に記載の表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
下型の加熱を第1工程と並行して行うことを特徴とする請求項1に記載の表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
下型の加熱を、加熱オイル槽への浸漬によって行うことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡層の表面に平滑な表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形品は、発泡剤を含有させた原料ビーズを金型内に充填し、加熱し発泡させて成形されるものであり、断熱性、緩衝性に優れるうえに軽量であるため、食品用容器や梱包用緩衝材などとして広く用いられている。また近年においてはその吸音性に着目し、自動車の室内騒音の低減のために車室の床面などにも適用されている。
【0003】
しかし通常の発泡樹脂製品は発泡粒子が表面に露出しているために崩れやすく、内装材として用いるには外観が好ましくないという問題がある。そこで発泡層の表面に平滑な表皮層を形成した発泡樹脂製品が開発されている。
【0004】
例えば特許文献1には、緻密な遮音層と空隙率の大きい吸音層とを積層した車両用フロアマット材が記載されている。これらの各層はともにポリプロピレンの発泡ビーズを金型内で発泡させたものであるが、発泡条件を変えて個別に製造したうえで積層したものであり、一体成形品ではない。
【0005】
また、特許文献2には同一の金型内で表皮層を備えた発泡樹脂製品を成形する方法が開示されている。ここでは先ず表皮層を形成する樹脂を金型内に射出し、次に発泡層を形成する樹脂を高圧のガスとともに金型内に射出し、発泡させている。この発泡圧により表皮層を形成する樹脂は金型の内面に押し付けられ、滑らかな表皮層が形成される。
【0006】
このように、従来の表皮層を備えた発泡樹脂製品は表皮層と発泡層を個別に成形したものであったり、表皮層と発泡層とを別の原料として2回に分けて充填したものである。このため、工程が複雑で製造コストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-43826号公報
【特許文献2】特開2002-172651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解決し、表皮層を備えた発泡樹脂製品を、同一の原料を用いて安価に製造することができる表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明の表皮層を備えた発泡樹脂製品の製造方法は、上型と下型とからなる分割金型を用いて発泡樹脂成形品を成形する第1工程と、第1工程で成形された発泡樹脂成形品を、上型により加熱された金型の内面に押し付けて表面を溶融させ、表皮層を形成する第2工程と、第2工程で表皮層が形成された発泡樹脂成形品をさらに冷却する第3工程と、第3工程で冷却された発泡樹脂成形品を取り出す第4工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
なお、上記の第1工程から第4工程を、同一のステーションで進行させることができ、あるいは上記の第1工程と第2工程を同一の第1ステーションで進行させ、第3工程と第4工程を次の第2ステーションで進行させることができる。また、下型の加熱を第1工程と並行して行うことが好ましく、下型の加熱を、加熱オイル槽への浸漬によって行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1工程で成形された発泡樹脂成形品を第2工程において加熱された金型の内面に押し付けて表面を溶融させて表皮層を形成する。このため同一の原料を用いて表皮層を備えた発泡樹脂製品を製造することができる。また、発泡樹脂成形品を成形する第1工程と、表面を溶融させて表皮層を形成する第2工程とを同一のステーションで連続して又は並行して行えば、成形時間を短縮することができる。このため生産性が高まり、製造コストも安価となる。また金型の加熱を加熱オイル槽への浸漬によって行えば、金型の形状に拘わらず、金型の全面を均一温度に加熱することができ、しかも金型と加熱オイルとを直接接触させることができるので、金型への熱伝達を極めて効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。この実施形態では、第1工程と第2工程を同一の第1ステーションで進行させ、第3工程と第4工程を次の第2ステーションで進行させている。
【0014】
(第1工程)
図1は第1工程の説明図である。この図において、10は機台、11は機台10上に立設された複数のガイド支柱、12はガイド支柱11の上部に固定された上部架台、13はガイド支柱11にガイドされて昇降できる昇降盤である。上部架台12には昇降用モータ14が搭載されており、減速機15を介して駆動される送りねじ16が、昇降盤13の上部に固定されたナット17に螺合している。このため送りねじ16を正逆何れかの方向に回転させることによって、昇降盤13を昇降させることができる。
【0015】
昇降盤13の下面には、分割型を構成する上型20が取り付けられている。上型20は中空の上型ホルダ21に支持されている。上型ホルダ21の内部は蒸気室となっており、加熱蒸気供給ライン22、冷却水供給ライン23、ドレン排出ライン24が設けられている。このほか、上型20を貫通して原料ビーズ供給管25が設けられている。原料ビーズ供給管25の上部は、図示を略した原料ビーズ供給用ホッパに接続されている。
【0016】
機台10の上には上面が開口した固定フレーム26が設けられており、その上に移動フレーム27が置かれている。この移動フレーム27には分割型を構成する下型30が取り付けられている。移動フレーム27は固定フレーム26に対して、位置決め手段29によって正しく位置決めされる。この実施形態では、左右一対の搬送手段31によって移動フレーム27と下型30を、第1ステーションと第2ステーションとの間で移動させることができる。この搬送手段31は、上昇、水平方向移動、下降、後退の一連の動作を繰り返すものであり、公知の搬送機構を利用することができる。
【0017】
固定フレーム26の内部には、加熱オイル槽70が配置されている。加熱オイル槽70にはシリコーンオイル等の揮発しにくく安全性の高いオイル71が充填されている。加熱オイル槽70の内部にはシーズヒータ72と温度センサ73が配置され、温度制御手段74によりオイル71を加熱する。また加熱オイル槽70の底部下面には電磁加熱手段75を配置することもできる。
【0018】
第1工程では
図1に示す状態から昇降盤13とともに上型20を下降し、下型30との間にキャビティを形成する。また加熱オイル槽70による下型30の加温を開始する。加熱オイル槽70は例えば240℃に維持されているが、下型30の初期温度は60~70℃であるから、下型30は次第に昇温して行く。発泡樹脂成形に適した温度、例えば120~150℃に達したときに原料ビーズ供給管25から発泡剤を含む原料ビーズをキャビティ内に供給する。また、上型20の蒸気室内に加熱蒸気供給ライン22を通じて加熱蒸気を吹き込み、上型20を加熱する。このように上型20と下型30を加熱することにより原料ビーズは発泡し、
図2に示されるように発泡樹脂成形品Wが成形される。成形後、上型20の蒸気室から蒸気を排気し、冷却水供給ライン23から冷却水を導入して発泡樹脂成形品Wを冷却する。
【0019】
なお、上型20と下型30は熱伝導率が大きいアルミ合金製とすることが好ましい。また上型20と下型30は加熱と冷却を繰り返されるので、熱容量を小さくしておくことが好ましい。このためにはアルミ材を用いるとともに肉薄化し、リブを設けて強度及び剛性を確保することが好ましい。
【0020】
(第2工程)
第1工程で成形された発泡樹脂成形品Wはそのまま上型20と下型30に挟まれた状態にあるが、下型30は加熱オイル槽70に浸漬されたままであるから、その温度は更に上昇し、樹脂の溶融温度に達する。この状態において上型20を冷却したまま更に下降させ、発泡樹脂成形品Wの下面を溶融温度に達した下型30に押し付ける。その結果、発泡樹脂成形品Wの表面が溶融して表皮層が形成される。なお、原料ビーズの種類に応じてキャビティ内の発泡圧が異なるため、原料ビーズの種類に応じて上型20による発泡樹脂成形品Wの押圧力を調整するものとする。
【0021】
(第3工程)
第2工程において表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wは、搬送手段31によって次の第2ステーションに搬送される。
図3に示すように、第2ステーションには冷却オイル槽76が設けられている。この冷却オイル槽76の内部には冷却コイル77により冷却されたオイル78が充填されており、冷却装置79により常温~40℃程度に維持されている。第2ステーションに搬送された下型30はこの冷却オイル槽76に浸漬され、表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wが急速に冷却される。この冷却は下型30の下面から行われるので、表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wが変形するおそれがある。そこで第3ステーションにも昇降可能な冷却用金型80を設けておき、発泡樹脂成形品Wを軽く押圧しながら冷却することが好ましい。なお、冷却用金型80にも冷却ノズルを設け、発泡樹脂成形品Wを上下両面から急速に冷却することもできる。
【0022】
(第4工程)
冷却された発泡樹脂成形品Wは下型30から取り出される。
図4の実施形態では昇降可能な冷却用金型80を用い、表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wを冷却用金型80に吸着して下型30から取り出す。しかし取り出し方法はこれに限定されるものではなく、例えばロボットハンドを用いることも可能である。このときの下型30の温度は60℃前後であり、第1ステーションに返送される。
【0023】
このように本発明によれば、表皮層が形成された発泡樹脂成形品Wを、同一の原料を用いて安価に製造することができる。また、第1工程と第2工程を同一の上型20と下型30とを用いて連続して進行させるので、成形時間を短縮することができる。このため生産性が高まり、製造コストも安価となる。
【0024】
上記した実施形態では、第1工程と第2工程を同一の第1ステーションで進行させ、第3工程と第4工程を次の第2ステーションで進行させた。しかし全工程を同一のステーションで進行させることもできる。この場合には240℃前後に加熱された加熱オイル槽70と40℃前後に維持された冷却オイル槽76とを移動可能に設け、第1工程と第2工程では下型30を加熱し、第3工程では下型30を冷却すればよい。
【0025】
何れの実施形態においても、下型30の加熱、冷却をオイルバスを利用して行うので、下型30の全体を速やかに均一温度に昇温させたり降温させることができる。また下型30とオイルを直接接触させるので熱伝達効率がよく、下型30の形状が変化しても設備構成を変更する必要がない等の利点がある。
【符号の説明】
【0026】
10 機台
11 ガイド支柱
12 上部架台
13 昇降盤
14 昇降用モータ
15 減速機
16 送りねじ
17 ナット
20 上型
21 上型ホルダ
22 加熱蒸気供給ライン
23 冷却水供給ライン
24 ドレン排出ライン
25 原料ビーズ供給管
26 固定フレーム
27 移動フレーム
29 位置決め手段
30 下型
31 搬送手段
70 加熱オイル槽
71 加熱されたオイル
72 シーズヒータ
73 温度センサ
74 温度制御手段
75 電磁加熱手段
76 冷却オイル槽
77 冷却コイル
78 冷却されたオイル
79 冷却装置
80 冷却用金型