(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021414
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】気体センサ用気液分離器
(51)【国際特許分類】
B01D 45/12 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
B01D45/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124950
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 映雄
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 弘行
(72)【発明者】
【氏名】仁平 あゆ美
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆志
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AC02
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、気体センサの性能を向上させる気液分離器を実現することである。
【解決手段】気液分離器16は、上流から下流に向かう気体を、上流から下流に向かう流れ軸の周りで旋回させる旋回構造と、旋回構造を通過した気体に含まれている液体成分を外側に放出する分離構造と、旋回構造の下流側に設けられ、旋回構造を通った気体を偏向させる偏向構造とを備えている。偏向構造は、上流から下流に向かって窄まる立体形状を有する窄まり芯部26と、窄まり芯部26の側面に設けられ、旋回構造による旋回方向とは逆方向に気体を偏向させる偏向フィン32とを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に向かう気体を、上流から下流に向かう流れ軸の周りで旋回させる旋回構造と、
前記旋回構造を通過した前記気体に含まれている液体成分を外側に放出する分離構造と、
前記旋回構造の下流側に設けられ、前記旋回構造を通った前記気体を偏向させる偏向構造と、を備え、
前記偏向構造は、
上流から下流に向かって窄まる立体形状を有する窄まり芯部と、
前記窄まり芯部の側面に設けられ、前記旋回構造による旋回方向とは逆方向に前記気体を偏向させる偏向フィンと、
を備えることを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【請求項2】
請求項1に記載の気体センサ用気液分離器において、
前記流れ軸上の所定位置より下流側における前記窄まり芯部の側面の傾斜であって、前記流れ軸方向を基準とした傾斜が、前記所定位置より上流側に比べて緩やかであることを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の気体センサ用気液分離器において、
下流側における前記窄まり芯部の端部が、下流側に凸の曲面を有していることを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気体センサ用気液分離器において、
前記旋回構造は、
上流から下流に向かって広がる立体形状を有する広がり芯部と、
前記広がり芯部の側面に設けられ、前記気体を旋回させる旋回フィンと、を備え、
前記広がり芯部の下流側の端と、前記窄まり芯部の上流側の端とが接続されていることを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の気体センサ用気液分離器において、
前記窄まり芯部の側面との間に空間が設けられた状態で、前記窄まり芯部の周囲を囲む筐体を備え、
前記分離構造は、
前記窄まり芯部の上流側の端部に対応する位置に設けられた穴であって、前記筐体の内側から外側に連通する穴と、
前記穴の下流側で前記穴に隣接し、前記筐体の内側に向けて突出する突出部と、
を有することを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の気体センサ用気液分離器において、
前記窄まり芯部は、前記流れ軸を中心軸とした回転対称体であり、
複数の前記偏向フィンが、前記流れ軸を中心とした前記側面の周方向に等角度間隔で配置されていることを特徴とする気体センサ用気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体センサ用気液分離器に関し、特に、気体を旋回させて液体を気体から分離する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池から供給される電力によって走行する燃料電池車について、広く研究開発が行われている。燃料電池は水素および酸素の化学反応によって電力を発生する。一般に、水素が燃料として燃料電池に供給され、酸素は周囲の空気から燃料電池に取り入れられる。燃料電池車には水素タンクが搭載され、水素タンクから燃料電池に水素が供給される。水素タンク内の水素が少なくなったときは、サービスステーションに設置された水素供給装置から燃料電池車の水素タンクに水素が供給される。
【0003】
水素は可燃性の気体であるため、燃料電池を用いる場合には水素の漏れの監視が必要となる。そこで、燃料電池と共に水素センサが広く用いられている。水素センサは、空気中に含まれる水素の濃度を測定したり、水素濃度が所定値を超えたときに警報を発したりする機能を有する。
【0004】
なお、以下の特許文献1には、本願発明に関連する技術として、燃料電池に用いられる気液分離器が記載されている。この気液分離器は旋回翼を有し、旋回翼の回転によって気体を旋回させて、気体から液体を分離する。特許文献1に記載の燃料電池発電システムでは、燃料電池から排出された空気から気液分離器によって水が分離されている。燃料電池に供給される空気を加湿するために、排出空気から分離された水が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素センサ等の気体センサには、超音波の伝搬速度に基づいて特定の気体の濃度を測定するものがある。このような気体センサには、気体の濃度を測定する空間(濃度測定空間)が設けられている。濃度測定空間には超音波を送受信する超音波振動子が設けられている。送信用の超音波振動子から超音波が送信されてから、濃度測定空間内を伝搬した超音波が受信用の超音波振動子で受信されるまでの伝搬時間と、予め求められた伝搬距離とに基づいて、超音波の伝搬速度が求められる。
【0007】
超音波の伝搬速度を求める気体センサでは、濃度測定空間に流入した気体に水滴やミスト等の水分が含まれている場合、濃度測定空間内を伝搬した超音波の伝搬時間の測定精度が低下し、気体の濃度の測定精度が低下することがある。そこで、気体センサに流入させる気体に含まれる水滴やミスト等の水分を気液分離器を用いて低減または除去することが考えられる。しかし、気体を旋回させて液体を分離する気液分離器を用いた場合には、濃度測定空間に流入した気体の向きがばらついてしまい、超音波の伝搬時間の測定精度が低下し、気体の濃度の測定精度が低下することがある。
【0008】
本発明の目的は、気体センサの性能を向上させる気液分離器を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上流から下流に向かう気体を、上流から下流に向かう流れ軸の周りで旋回させる旋回構造と、前記旋回構造を通過した前記気体に含まれている液体成分を外側に放出する分離構造と、前記旋回構造の下流側に設けられ、前記旋回構造を通った前記気体を偏向させる偏向構造と、を備え、前記偏向構造は、上流から下流に向かって窄まる立体形状を有する窄まり芯部と、前記窄まり芯部の側面に設けられ、前記旋回構造による旋回方向とは逆方向に前記気体を偏向させる偏向フィンと、を備えることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記流れ軸上の所定位置より下流側における前記窄まり芯部の側面の傾斜であって、前記流れ軸を基準とした傾斜が、前記所定位置より上流側に比べて緩やかである。
【0011】
望ましくは、下流側における前記窄まり芯部の端部が、下流側に凸の曲面を有している。
【0012】
望ましくは、前記旋回構造は、上流から下流に向かって広がる立体形状を有する広がり芯部と、前記広がり芯部の側面に設けられ、前記気体を旋回させる旋回フィンと、を備え、前記広がり芯部の下流側の端と、前記窄まり芯部の上流側の端とが接続されている。
【0013】
望ましくは、前記窄まり芯部の側面との間に空間が設けられた状態で、前記窄まり芯部の周囲を囲む筐体を備え、前記分離構造は、前記窄まり芯部の上流側の端部に対応する位置に設けられた穴であって、前記筐体の内側から外側に連通する穴と、前記穴の下流側で前記穴に隣接し、前記筐体の内側に向けて突出する突出部と、を有する。
【0014】
望ましくは、前記窄まり芯部は、前記流れ軸を中心軸とした回転対称体であり、複数の前記偏向フィンが、前記流れ軸を中心とした前記側面の周方向に等角度間隔で配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気体センサの性能を向上させる気液分離器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
各図を参照して本発明の実施形態に係る燃料電池システムおよび気液分離器について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。本明細書における、「円筒」、「円環」等の形状を表す用語は、幾何学的に厳密に定義された形状のみを表すものではなく、その形状を有する構成要素の機能が発揮される範囲で変形が加えられた形状も表す。
【0018】
図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10の構成が示されている。燃料電池システム10は、燃料電池12、加湿器14、気液分離器16および水素センサ18を備えている。燃料電池12には酸素を含む空気が供給される。すなわち、空気は加湿器14に送り込まれ、加湿器14は空気に適度な水分を与える。加湿器14によって水分が与えられた空気は、燃料電池12に供給される。燃料電池12には、空気とは別に、燃料として水素が供給される。
【0019】
燃料電池12は、水素と酸素の化学反応によって電力を発生する。水素と酸素の化学反応によって生じた水は、空気と共に燃料電池12から気液分離器16に送り込まれる。気液分離器16は空気から水分を分離し、その水分は加湿器14に送り込まれる。気液分離器16からは水分が分離された空気が排出される。気液分離器16から排出される空気については、水素センサ18によって水素の濃度が検出される。
【0020】
図2には、気液分離器16の断面斜視図が示されている。この図には、気液分離器16の中心軸上にあり、気液分離器16における空気が流れる方向に向けられた流れ軸Fが示されている。気液分離器16は、筒状の筐体20の内部に中心軸を共通にして芯部22が配置された構造を有している。
図3には、流れ軸Fを通る面で気液分離器16を切断した場合に現れる軸方向断面が示されている。
【0021】
芯部22は、流れ軸Fを中心軸とした回転対称体であり、略紡錘形状の部材である。
図3に示されているように、芯部22は、上流から下流に向かって径が大きくなり、径が最大となった位置よりも下流側では、上流から下流に向かって径が小さくなっている。このように芯部22は、上流から下流に向かって広がる立体形状を有する広がり芯部24と、上流から下流に向かって窄まる立体形状を有する窄まり芯部26を含んでいる。すなわち、広がり芯部24の下流側の端と、窄まり芯部26の上流側の端とが接続され、広がり芯部24および窄まり芯部26によって芯部22が一体的に形成されている。後述するように、芯部22の側面には空気が流れる方向を調整するためのフィンが設けられている。
【0022】
広がり芯部24の側面は、流れ軸Fを通る軸方向断面内で内側に凸の曲線を描く。広がり芯部24の側面は、軸方向断面内で外側に凸の曲線を描いてもよいし、直線を描いてもよい。広がり芯部24の上流側の端面は、上流側に凸の曲面となっている。
【0023】
窄まり芯部26の側面は、軸方向断面内で直線を描く。流れ軸F上の所定位置より下流側における窄まり芯部26の側面の傾斜は、流れ軸Fの方向を基準として、その所定位置より上流側に比べて緩やかであってよい。本実施形態においては、窄まり芯部26の側面は、上流から下流に向かって流れ軸Fに近付き、流れ軸Fに対して傾斜が緩やかになって下流側の端面に至る。下流端に至る前の側面は、流れ軸Fと略平行である。窄まり芯部26の下流側の端面は、下流側に凸の曲面となっている。なお、窄まり芯部26の側面は、軸方向断面内において外側に凸の曲線を描いてもよいし、内側に凸の曲線を描いてもよい。
【0024】
図4(a)には、上流側から眺めた芯部22の斜視図が示されており、
図4(b)には、下流側から眺めた芯部22の斜視図が示されている。
図4(a)に示されているように、広がり芯部24の側面には複数の旋回フィン30が立設されている。
図4(a)に示されている例では、側面の周方向に沿って60°間隔(等角度間隔)で6枚の旋回フィン30が設けられている。広がり芯部24および6枚の旋回フィン30が形成する構造は、流れ軸Fを中心とした60°回転対称構造である。各旋回フィン30は、上流から下流に向かう方向に見て右方向に曲がる曲線を描く。各旋回フィン30の外側の辺は、筐体20の内壁面に接する。
【0025】
なお、広がり芯部24の側面に設けられている旋回フィン30の枚数は6枚に限定されない。広がり芯部24の側面の周方向に沿って360°/N間隔でN枚の旋回フィン30が設けられてよい。ここで、Nは2以上の整数である。また、複数の旋回フィン30が設けられる間隔は、広がり芯部24の形状等、その他の要因に応じて定められてもよく、必ずしも等間隔でなくてもよい。
【0026】
図4(b)に示されているように、窄まり芯部26の側面には複数の偏向フィン32が立設されている。
図4(b)に示されている例では、側面の周方向に沿って60°間隔で6枚の偏向フィン32が設けられている。窄まり芯部26および6枚の偏向フィン32が形成する構造は、流れ軸Fを中心とした60°回転対称構造である。各偏向フィン32は、上流から下流に向かう方向に見て左方向に曲がる曲線を描く。各偏向フィン32の外側の辺は、筐体20の内壁面に接する。
【0027】
なお、窄まり芯部26の側面に設けられている偏向フィン32の枚数は6枚に限定されない。窄まり芯部26の側面の周方向に沿って360°/M間隔でM枚の偏向フィン32が設けられてよい。ここで、Mは2以上の整数である。また、複数の偏向フィン32が設けられる間隔は、窄まり芯部26の形状等、その他の要因に応じて定められてもよく、必ずしも等間隔でなくてもよい。
【0028】
図4(a)の矢印34に示されているように、広がり芯部24の側面に流れ込んだ空気は、旋回フィン30によって右方向に曲がりながら広がり芯部24の外側に向かう。これによって、広がり芯部24の下流端では、上流側から見て時計回りに旋回する気流が発生する。
図4(b)の矢印36に示されているように、窄まり芯部26の側面に流れ込んだ空気は、偏向フィン32によって左方向に曲がりながら窄まり芯部26の内側に向かう。これによって、広がり芯部24を通過した空気に対して旋回を抑制する力が作用し、窄まり芯部26の下端では空気の旋回が抑制される。
【0029】
図3に戻って気液分離器16について更に説明する。筐体20は、上流筐体40および下流筐体42から構成されている。上流筐体40は、断面が円環状である筒形状を有しており、広がり芯部24と、窄まり芯部26の上流側の一部を囲んでいる。上流筐体40は、上流から下流に向かって、広がり芯部24の側面に沿って径が広がる形状を有している。下流筐体42は、上流筐体40の下流側の端部よりも径が小さい円筒形状を有しており、窄まり芯部26の残りの部分を囲んでいる。
【0030】
なお、上流筐体40および下流筐体42の外側の形状は柱状でなくてもよい。例えば
上流筐体40および下流筐体42の表面には、様々な形状が形成されてもよい。上流筐体40は、広がり芯部24の側面との間および窄まり芯部26の一部の側面との間に空間が設けられた状態で、広がり芯部24を囲み、さらに窄まり芯部26の一部を囲む形状であってよい。また、下流筐体42は、窄まり芯部26の側面との間に空間が設けられた状態で、窄まり芯部26の周囲を囲む形状であってよい。
【0031】
上流筐体40と下流筐体42との境界には、筐体20の内側から外側に連通する穴50が形成されている。すなわち、広がり芯部24の下流側の端部に対応する位置、あるいは、窄まり芯部26の上流側の端部に対応する位置に、穴50が形成されている。穴50は、隣接する旋回フィン30の間の位置に設けられていてよい。また、穴50は、上流筐体40と下流筐体42との間における円環状境界の全周に亘って設けられてもよい。
【0032】
下流筐体42の内壁面には、穴50の下流側で穴50に隣接する位置に、内側に突出した突出部52が形成されている。突出部52は、下流筐体42の周方向に沿った円環形状を有していてよい。突出部52において最も内側に突出した位置よりも上流側は、穴50から窄まり芯部26の側面に沿って下流側に向かう傾斜壁面を形成する。穴50と突出部52は、空気から水分を分離するための分離構造を形成する。
【0033】
図5(a)~
図5(f)には、それぞれ、
図3に示されたAA線、BB線、CC線、DD線、EE線およびFF線で気液分離器16を切断した場合に現れる断面が示されている。
図5(a)~
図5(c)には、広がり芯部24、旋回フィン30および上流筐体40の断面が現れている。
図5(d)には、窄まり芯部26、偏向フィン32および上流筐体40の断面が現れている。
図5(e)および
図5(f)には、窄まり芯部26、偏向フィン32および下流筐体42の断面が現れている。
【0034】
図5(a)~
図5(c)に示されているように、広がり芯部24は上流から下流に向かうに従って径が大きくなる。
図5(d)~
図5(f)に示されているように、窄まり芯部26は上流から下流に向かうに従って径が小さくなる。
図5(a)~
図5(c)に示されているように、旋回フィン30は時計回り方向に曲がっている。
図5(d)~
図5(f)に示されているように、偏向フィン32は反時計回り方向に曲がっている。このように、旋回フィン30が曲がる向きに対し、偏向フィン32が曲がる向きは逆である。
【0035】
気液分離器16による作用効果について
図3を参照して説明する。上流筐体40の上流側から流入した空気は、広がり芯部24の側面および各旋回フィン30に沿って下流に向かって流れながら外側に向かう。広がり芯部24の下端では、その周方向に沿って空気が旋回する。空気に含まれる水滴、ミスト等の水分は遠心力によって、旋回する空気中の外側を旋回する。そのため、空気に含まれていた水滴、ミスト等の水分は穴50を通って筐体20の外側へ、一部の空気と共に放出される。広がり芯部24の側面は、外側に反った形状を有している。そのため、水滴、ミスト等の水分に作用する遠心力が広がり芯部24の下流側で増加し、より多くの水滴、ミスト等の水分が空気から分離される。一方、筐体20の外側へ水滴、ミスト等の水分が放出されて残った空気は、突出部52によって下流筐体42の内壁面と窄まり芯部26との間に導かれる。
【0036】
このように、広がり芯部24および旋回フィン30は、上流から下流に向かう空気(気体)を、上流から下流に向かう流れ軸Fの周りで旋回させる旋回構造を形成する。穴50および突出部52は、旋回構造を通過した空気に含まれている水分(液体成分)を筐体20の外側に放出する分離構造を形成する。以下に説明するように、旋回構造の下流側には、旋回構造を通った空気を偏向させる偏向構造が設けられる。旋回構造は、窄まり芯部26および偏向フィン32を含む。偏向フィン32は、旋回構造による旋回方向とは逆方向に空気を偏向させる。
【0037】
下流筐体42の内壁面と窄まり芯部26との間に導かれた空気は、窄まり芯部26の側面および各偏向フィン32に沿って下流に向かって流れながら内側に向かう。上流から下流を見て、各偏向フィン32が曲がる方向は、旋回フィン30が曲がる方向に対して逆である。したがって、広がり芯部24を通過した空気に対して旋回を抑制する力が作用し、窄まり芯部26の下端では空気の旋回が抑制される。
【0038】
また、窄まり芯部26の下流側では、窄まり芯部26の側面の傾斜は流れ軸Fに対して緩やかになっており、本実施形態では流れ軸Fに対して側面が略平行になっている。これによって、窄まり芯部26の下流端に至る空気の方向が流れ軸F方向に近付けられ、または一致する。さらに、窄まり芯部26の下流側の端面は、下流側に凸の曲面である。一般に、異なる方向から空気が合流するときには渦流や乱流が生じる。窄まり芯部26の構造によって、窄まり芯部26の下流端に至った空気の渦流や乱流の発生が抑制される。本実施形態に係る気液分離器16によって水滴やミスト等の水分を分離し、さらに旋回を抑制した空気に対して水素センサを用いることで、水素センサの測定精度が向上する。
【0039】
上記では、水素が含まれる空気に対して用いられる実施形態が示された。本発明に係る気液分離器は、その他の測定対象の気体が含まれる空気に対して用いられてもよい。また、上記では、空気から水分を分離する実施形態が示された。本発明に係る気液分離器は、その他の液体成分を気体から分離するために用いられてもよい。また、上記では、旋回フィン30が上流から下流に向かって時計回りに曲がっており、偏向フィン32が上流から下流に向かって反時計回りに曲がっている実施形態が示された。このような構成の他、旋回フィン30が上流から下流に向かって反時計回りに曲がっており、偏向フィン32が上流から下流に向かって時計回りに曲がっている構成が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 燃料電池システム、12 燃料電池、14 加湿器、16 気液分離器、18 水素センサ、20 筐体、22 芯部、24 広がり芯部、26 窄まり芯部、30 旋回フィン、32 偏向フィン、34,36 矢印、40 上流筐体、42 下流筐体、50 穴、52 突出部。