(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021429
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】バンパー及びワイヤハーネスの配索方法
(51)【国際特許分類】
B60R 19/04 20060101AFI20220127BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20220127BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220127BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B60R19/04 K
H02G3/32
B60R16/02 620Z
F16B2/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124968
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 湧真
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA42
3J022EC14
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA20
3J022GB23
3J022GB27
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスの配索に当たり、従来よりも作業性を改善可能とする。
【解決手段】バンパー本体11は、車両前後の少なくとも一方に設けられ、露出面が意匠面10Aとなり、当該意匠面10Aに対向する裏面がワイヤハーネス80の配索面10Bとなる。保持部材40は、バンパー本体11と一体的に成型され、バンパー本体11の配索面10Bにワイヤハーネス80を保持させる。保持部材40は、インテグラルヒンジ41、収納部42、及び係止爪43を備える。インテグラルヒンジ41は、バンパー本体11の端縁から突出され、当該端縁に沿って間隔を空けて複数設けられる。収納部42は、複数のインテグラルヒンジ41の末端に接続され、ワイヤハーネス80を収納する収納溝42Aがバンパー本体11の端縁に沿って延設される。係止爪43は、収納部42の末端に接続される。さらにバンパーには、係止爪43を係止する係止孔52が設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後の少なくとも一方に設けられ、露出面が意匠面となり、当該意匠面に対向する裏面がワイヤハーネスの配索面となるバンパー本体と、
前記バンパー本体と一体的に成型され、前記バンパー本体の前記配索面に前記ワイヤハーネスを保持させる保持部材と、
を備えるバンパーであって、
前記保持部材は、
前記バンパー本体の端縁から突出され、当該端縁に沿って間隔を空けて複数設けられたインテグラルヒンジと、
複数の前記インテグラルヒンジの末端に接続され、前記ワイヤハーネスを収納する収納溝が前記バンパー本体の端縁に沿って延設された収納部と、
前記収納部の末端に接続される係止爪と、
を備え、
さらに前記係止爪を係止する係止孔が設けられた、バンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のバンパーであって、
前記収納部は、前記収納溝の開放部分を跨ぐようにして、前記収納溝の対向する一方の側壁から延設されその端部が他方の側壁に係止される仮留部を備え、
前記バンパー本体の前記配索面には、前記ワイヤハーネスの始端に設けられた端子を含む始端部と、前記ワイヤハーネスの終端に設けられた端子を含む終端部を、前記配索面に支持する支持部材が設けられ、
前記支持部材による支持力は、前記収納溝の前記ワイヤハーネスの支持力を超過する、バンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両に取り付けられるバンパー及びそのバンパーの配索面上に配索されるワイヤハーネスの配索方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
車両の前後には、緩衝部材であるバンパーが取り付けられる。バンパーの露出面(意匠面)に対向する裏面は、電線の束であるワイヤハーネスの配索面として利用される。この配索面へのワイヤハーネスの配索方法として、例えばバンパーと一体成型された保持部材が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1では、保持部材としてインテグラルヒンジ、保持部、及び係止爪が設けられる。インテグラルヒンジは、バンパーの端縁から突出するように設けられる。インテグラルヒンジとは、他部品(ここではバンパー)との一体構造型のヒンジを指す。さらにインテグラルヒンジの末端には、ワイヤハーネスを嵌め込ませるU字型の保持部が設けられる。加えて保持部の末端には、バンパーに設けられた係止孔に挿入される係止爪が設けられる。このような保持部材は、バンパーの端縁に沿って、間隔を空けて複数個に亘って設けられる。
【0004】
ワイヤハーネスの配索時には、作業者の一方の手によりワイヤハーネスがバンパーの配索面上に配置される。さらにもう一方の手により、ワイヤハーネスが保持部に嵌め込まれ、また、係止爪が係止孔に差し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記配索作業においては、ワイヤハーネスを一方の手で配索面に配置する必要があるため、他方の手で、ワイヤハーネスを保持部に嵌め込みつつ係止爪を係止孔へ挿入させる作業を行う必要があり、作業に一定の習熟度が要求される。そこで本明細書に開示されるバンパー及びワイヤハーネスの配索方法は、ワイヤハーネスの配索に当たり、従来よりも作業性を改善可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるバンパーは、バンパー本体と保持部材を備える。バンパー本体は、車両前後の少なくとも一方に設けられ、露出面が意匠面となり、当該意匠面に対向する裏面がワイヤハーネスの配索面となる。保持部材は、バンパー本体と一体的に成型され、バンパー本体の配索面にワイヤハーネスを保持させる。保持部材は、インテグラルヒンジ、収納部、及び係止爪を備える。インテグラルヒンジは、バンパー本体の端縁から突出され、当該端縁に沿って間隔を空けて複数設けられる。収納部は、複数のインテグラルヒンジの末端に接続され、ワイヤハーネスを収納する収納溝がバンパー本体の端縁に沿って延設される。係止爪は、収納部の末端に接続される。さらにバンパーには、係止爪を係止する係止孔が設けられる。
【0008】
上記構成によれば、係止前の保持部材の収納部にワイヤハーネスを収納させた後に、インテグラルヒンジを回動起点として保持部材を収納部ごと回動させて、係止爪を係止穴に係止させるといった配索作業が可能となる。これにより、例えば片方の手でワイヤハーネスを配索面上に配置させておく工程が不要となり、作業性が向上する。
【0009】
また上記構成において、収納部は、仮留部を備えてもよい。仮留部は、収納溝の開放部分を跨ぐようにして、収納溝の対向する一方の側壁から延設されその端部が他方の側壁に係止される。またバンパー本体の配索面には、ワイヤハーネスの始端に設けられた端子を含む始端部と、ワイヤハーネスの終端に設けられた端子を含む終端部を、配索面に支持する支持部材が設けられてもよい。この場合、支持部材による支持力は、収納溝のワイヤハーネスの支持力を超過する。
【0010】
上記構成によれば、仮留部により収納溝が部分的に閉じられるので、保持部材の回動時に収納溝からワイヤハーネスが離脱することが抑制される。
【0011】
また、保持部材の回動前後で、ワイヤハーネスの配索経路が変化して、これによりワイヤハーネスの始端部及び終端部が引っ張られるおそれがある。そうなると、始端部及び終端部に負荷が掛かり、端子とコネクタとの接続状況が変化するおそれがある。そこで支持部材によって収納溝よりも堅固にワイヤハーネスの始端部及び終端部を支持することで、端子とコネクタとの接続状況が保持部材の回動前後に亘って維持可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に開示されるバンパー及びワイヤハーネスの配索方法によれば、ワイヤハーネスの配索に当たり、従来よりも作業性が改善可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るフロントバンパーを配索面(裏面)から見たときの、当該バンパーの概要を例示する図である。
【
図2】上枠部に設けられた保持部材及びタブの構造について説明する斜視図である。
【
図3】下枠部に設けられた保持部材及び筒状部の構造について説明する斜視図である。
【
図4】ワイヤハーネスの配索工程のうち、ワイヤハーネスの収納工程について説明する図である。
【
図5】ワイヤハーネス収納時の収納部の様子を説明する図である。
【
図6】ワイヤハーネスの配索工程のうち、係止工程について説明する図である。
【
図7】
図6のA-A断面図であって、フロントバンパーにヘッドランプカバー及びフロントグリルが被せられたときの構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本実施形態に係るバンパーとして、車両前端部に取り付けられるフロントバンパー10が例示される。なお、本実施形態に係るバンパーは、車両前後の少なくとも一方に設けられればよく、例えば
図1に例示されたフロントバンパーの代わりに、車両後端部に取り付けられるリアバンパーであってもよい。
【0015】
また
図1~
図7において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号RWで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
【0016】
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。以下適宜、これら3軸を基準に、本実施形態に係るバンパーが説明される。例えば「前端」は任意の部材のFR軸正方向側の端部を指し、「後端」は任意の部材のFR軸負方向側の端部を指す。「幅内側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向内側を指すものとし、「幅外側」はRW軸に沿って相対的に車両の幅方向外側を指すものとする。さらに「上側」は相対的にUP軸の正方向側を指し、「下側」は相対的にUP軸の負方向側を指す。
【0017】
図1には、本実施形態に係るフロントバンパー10の裏面側の概要が例示される。なお、フロントバンパー10の裏面とは、車両外観の一部を構成する露出面である意匠面10A(
図7参照)に対向する面を示す。
【0018】
フロントバンパー10の裏面は、ワイヤハーネス80(
図4参照)の配索用の面となっており、以下では適宜、フロントバンパー10の裏面は配索面10Bと記載される。なお配索とは、ワイヤハーネス80等の線材を車両内に設置することを指す。
【0019】
図1を参照して、フロントバンパー10は、例えばポリプロピレン等の樹脂材料の成型品から構成される。フロントバンパー10は、バンパー本体11、保持部材40及びタブ50を備える。バンパー本体11、保持部材40、及びタブ50は、一体成型される。
【0020】
<バンパー本体>
バンパー本体11は、
図1のように背面視で略ロ字状の構造を備える。バンパー本体11は、相対的に上方部材である上枠部12(バンパアッパー)と、相対的に下方部材である下枠部14(バンパロア)を備える。さらにバンパー本体11は、上枠部12及び下枠部14の、車幅方向両端に接続される側枠部を備える。側枠部は、相対的に車幅方向内側の内側部16と、相対的に車幅方向外側の外側部18を備える。車両デザインの対称性から、内側部16及び外側部18はバンパー本体11の車幅方向両端に一対設けられる。
【0021】
バンパー本体11は、周辺の他部材との配置に基づいて、端縁の形状が定められ、また開口が形成される。例えばバンパー本体11の背面視中央部には、フロントグリル(図示せず)を取り付けるためのグリル開口20が形成される。グリル開口20は略多角形状、例えば略矩形の開口であって、グリル開口20の枠は、上枠部12の下端縁、下枠部14の上端縁、及び一対の内側部16,16の車幅方向内側端縁により形成される。
【0022】
またグリル開口20から内側部16を挟んで、車幅方向外側には、フォグランプカバー(図示せず)が取り付けられるためのフォグランプ開口22が一対設けられる。フォグランプ開口22を車幅方向に挟んで内側部16と外側部18が形成される。
【0023】
さらに上枠部12の上端縁には、アッパーグリル32及びヘッドランプカバー30が取り付けられる。アッパーグリル32は上枠部12の上端縁の、車幅方向中央領域に取り付けられる。またヘッドランプカバー30は、上枠部12の上端縁の、車幅方向両側領域に、一対取り付けられる。
【0024】
これらの、フロントバンパー10に取り付けられる他部材である、ヘッドランプカバー30、アッパーグリル32、フォグランプカバー、及びフロントグリルは、車両外側からフロントバンパー10に取り付けられる。後述される
図2のように、フロントバンパー10の端縁には、これらの他部材の端縁と接する受け面であるフランジ12A,12Bが形成される。このフランジ12A,12Bからさらに他部材側に延設する部分は、車両外観において他部材に重なる隠れ部分となり、車両の外観意匠への影響は実質的に無い。このような、意匠上の影響が実質的に無い領域に、後述される保持部材40やタブ50が形成される。
【0025】
<保持部材>
バンパー本体11の縁端から突出するようにして、保持部材40が設けられる。保持部材40は後述されるようにワイヤハーネス80(
図4参照)をバンパー本体11の配索面10Bに保持させる。
【0026】
保持部材40は、バンパー本体11の端縁に沿って、間隔を空けて複数設けられる。保持部材40は、例えば、バンパー本体11の内縁端からグリル開口20内に突設される。例えば保持部材40は、グリル開口20の少なくとも角度の異なる2辺に亘って複数設けられる。
図1の例では、上枠部12の下端縁、内側部16の車幅方向内端縁、及び、下枠部14の上端縁から、保持部材40がグリル開口20内に突設される。このような構成により、グリル開口20に沿ったワイヤハーネス80の配索が可能となる。
【0027】
図1に例示されるように、複数の保持部材40は、前後方向に重ならないような配置に定められる。このような配置とすることで、従来のフロントバンパーの製法と同様にして、意匠面10A(
図7参照)側の金型と配索面10B側の金型とを用いて、本実施形態に係るフロントバンパー10を一体成型することが出来る。例えばグリル開口20のためのスペースを利用して、保持部材40が設けられる。
【0028】
図2には、フロントバンパー10の上枠部12の一部拡大斜視図が例示される。上述のように、上枠部12の下端縁には、他部材であるフロントグリル(図示せず)の端縁を受けるフランジ12Bが、グリル開口20に沿って形成される。このフランジ12Bから、さらにグリル開口20内に突設されるようにして、保持部材40が形成される。保持部材40は、例えば直線状に延設されたフランジ12Bの延設方向に垂直に、グリル開口20内に突設される。
【0029】
保持部材40は、インテグラルヒンジ41、収納部42、係止爪43、仮留部44、及びアーム46,48を備える。
【0030】
インテグラルヒンジ41は、保持部材40の回動の起点となる。インテグラルヒンジ41は、バンパー本体11の端縁、より詳細にはバンパー本体11の下端部に設けられたフランジ12Bの端縁から、グリル開口20内に突設される。インテグラルヒンジ41は、例えば、保持部材40の他の部分と比較して肉薄となるように形成され、当該他の部分と比較して容易に屈曲可能となっている。
【0031】
また、インテグラルヒンジ41は、バンパー本体11の端縁に沿って間隔を空けて複数設けられる。後述されるように、長尺状の収納部42を支持するために、インテグラルヒンジ41は、保持部材40一個当たり複数設けられてよい。
【0032】
インテグラルヒンジ41の末端、より詳細には、インテグラルヒンジ41の、フランジ12Bと接続される末端とは対向する末端に、アーム46を介して、収納部42が接続される。収納部42は、上枠部12の端縁に沿って延設される長尺状の部材であって、複数のインテグラルヒンジ41の末端に接続される。後述されるように、収納部42には、ワイヤハーネス80が収納される。
【0033】
収納部42は収納溝42Aが設けられる。収納溝42Aは、上枠部12の端縁に沿って延設される長尺状の溝である。収納溝42Aは、対向する一対の側壁42C1,42C2と、この両側の下端に接続される底壁42Dを含んで構成される、断面コ字状に形成される。また収納溝42Aの長手方向両端は開放される。
【0034】
収納溝42Aの内部には、保持リブ42Bが形成される。保持リブ42Bは、側壁42C1,42C2の内壁から収納溝42Aの内部に突出するようにして形成される。また保持リブ42Bは収納溝42Aの延設方向に沿って複数設けられてよい。
【0035】
保持リブ42Bは、ワイヤハーネス80を収納溝42A内に保持する。例えば、保持リブ42Bとこれに対向する側壁42C1,42C2との最小離間距離は、ワイヤハーネス80の直径以下に構成される。
【0036】
収納溝42Aの末端、より詳細には、アーム46との接続端と対向する末端に、アーム48を介して係止爪43が接続される。係止爪43は、
図2のような成型時、言い換えると保持部材40が回動される前のフロントバンパー10において、アーム48から車両後方に突設される。
【0037】
係止爪43は、いわゆる片持ち梁型のフックであってよく、係止孔52に圧入されることで係止孔52に係止される。係止爪43は、上枠部12の端縁に沿って複数設けられてよい。
【0038】
さらに保持部材40には、仮留部44が設けられる。仮留部44は、収納溝42Aの開放端(開放部分)の一部を閉じる部材であって、収納溝42A内に収納されたワイヤハーネス80の離脱を抑制するために用いられる。
【0039】
仮留部44は、係止爪44A、タブ44B、インテグラルヒンジ44D及びアーム44Eを備える。インテグラルヒンジ44Dは、収納部42の側壁42C1の外側に設けられる。インテグラルヒンジ44Dは、例えば、保持部材40の他の部分と比較して肉薄となるように形成され、当該他の部分と比較して容易に屈曲可能となっている。
【0040】
インテグラルヒンジ44Dの末端、より詳細には、インテグラルヒンジ44Dの、収納部42の側壁42C1と接続される末端とは対向する末端に、アーム44Eを介して、係止爪44Aが接続される。アーム44E及び係止爪44Aは、上枠部12から離間されるように側壁42C1から突設される。係止爪44Aは、
図2のような成型時、言い換えると保持部材40が回動される前のフロントバンパー10において、アーム44Eから車両後方に突設される。
【0041】
係止爪44Aが設けられた側壁42C1と対向する側壁42C2には、タブ44Bが形成される。タブ44Bは、上枠部12に近づくようにして、側壁42C2から突設される。タブ44Bは、その厚さ方向に貫通される係止孔44Cが穿孔される。
【0042】
後述される
図5のように、ワイヤハーネス80の配索時には、収納溝42Aにワイヤハーネス80が収納される。その後、仮留部44の係止爪44Aが、収納溝42Aの対向する一方の側壁42C1から、インテグラルヒンジ44Dを回動の起点として、収納溝42Aの開放溝を跨ぐように回動し、他方の側壁42C2のタブ44Bの係止孔44Cに圧入され、係止される。これにより収納溝42Aの開放端(開放部分)が一部閉じられることになり、その結果、収納溝42A内に収納されたワイヤハーネス80の離脱が抑制される。
【0043】
なお、
図1を参照して、上記と同様の構造を備えた保持部材40は、バンパー本体11の内側部16及び下枠部14にも設けられる。これらの保持部材40はいずれも、グリル開口20を区画するバンパー本体11のフランジの端縁から順に、インテグラルヒンジ41、アーム46、収納部42、アーム48、及び係止爪43を備える。また収納部42には仮留部44が設けられる。
【0044】
<タブ>
図2を参照して、上枠部12の上部のフランジ12A、つまりアッパーグリル32及びヘッドランプカバー30の端縁を受けるフランジ12Aには、当該フランジ12Aの端縁からタブ50が突設される。例えばタブ50はフランジ12Aと同一平面上に突設される。
【0045】
またタブ50には厚さ方向に貫通する係止孔52が穿孔される。係止孔52には保持部材40の係止爪43が圧入される。係止孔52は、インテグラルヒンジ41を回動の起点としたときの、係止爪43の軌跡上に形成される。
図2では、係止爪43が複数設けられており、これと同数のタブ50がフランジ12Aに形成される。
【0046】
この、保持部材40とタブ50の組合せは、配索面10Bを挟んで対向する一対のフランジが形成されている領域に形成される。フランジには車両外側から他部材が被せられるため、フランジからさらに他部材側に延設される部材は、車両外側から車両を見たときに、当該他部材に隠されることになる。
【0047】
このような、配索面10Bを挟んで一対のフランジが形成される箇所は、バンパー本体11のうち、上枠部12に加えて内側部16(
図1参照)が含まれる。したがって内側部16にも、配索面10Bを挟んだ端縁(より詳細にはフランジの端縁)には、保持部材40及びタブ50が設けられる。
【0048】
<筒状部>
図3を参照して、下枠部14の下端縁には、フロントグリル等の他部材が被せられない。したがって仮にこの下端縁にタブ50が形成されると、車両外観時に、下枠部14から更に下方に突設されるタブ50が視認されるおそれがある。またその一方で、仮に、配索面10Bに、バンパー本体11の厚さ方向に貫通する係止孔を穿孔させると、当該係止孔及びこれに圧入された係止爪が、バンパー本体11の意匠面10A側に露出してしまい、車両外観上の美観を備えるおそれがある。
【0049】
そこで本実施形態に係るフロントバンパー10では、
図3のように、配索面10Bの一方の端縁にのみフランジ14Aが形成され、そこに保持部材40が形成される場合には、配索面10Bに筒状部60が形成される。筒状部60は、配索面10Bから例えば垂直方向に立設される。また筒状部60にはその立設方向に沿って穿孔された係止孔62が設けられる。係止孔62は、保持部材40のインテグラルヒンジ41を回動の起点としたときの係止爪43の軌跡上に設けられる。また筒状部60の係止孔62はいわゆる止まり孔であって、バンパー本体11の意匠面10A(
図7参照)まで貫通されずに、配索面10Bにて終端される。
【0050】
このように、筒状部60が設けられることで、配索面の片面のみが他部材に覆われる場合等、タブを設けることが意匠上困難な場合に、配索面から意匠面に係止孔を貫通させることなく、係止爪を係止孔62に係止可能となる。
図1を参照して、このような保持部材40と筒状部60の組合せは、下端縁にフランジが形成されない下枠部14において形成される。
【0051】
<凸リブ>
図4を参照して、バンパー本体11の配索面10Bには、ワイヤハーネス80の支持部材である一対の凸リブ70A,70Bが設けられる。凸リブ70A,70Bは、ワイヤハーネス80の始端部81及び終端部82に対応した箇所に設けられる。
【0052】
図2を参照して、凸リブ70A,70Aは、配索面10Bから車両後方に延設される柱状の構造物である。凸リブ70A,70Aは、フロントバンパー10の成形時にバンパー本体11等と一体成型される。また、ワイヤハーネス80の終端部82を支持する凸リブ70B,70Bも、フロントバンパー10の成形時にバンパー本体11等と一体成型され、また、凸リブ70A,70Aと同一の構造であってよい。
【0053】
上枠部12の車幅方向中央部には始端接続部12Cが設けられる。始端接続部12Cでは、ワイヤハーネス80の始端部81に設けられた端子が、コネクタ(図示せず)に接続される。このコネクタには、図示しない車両のメインワイヤも接続される。つまりコネクタを介して、ワイヤハーネス80とメインワイヤとが接続される。
【0054】
また同様にして、
図4を参照してワイヤハーネス80の終端部82は、フォグランプ84と接続される。より詳細には、ワイヤハーネス80の終端部82に設けられた端子と、フォグランプ84のコネクタが接続される。
【0055】
これらのワイヤハーネス80の端子とコネクタとの接続状況が、保持部材40の回動によって変化することを抑制するために、ワイヤハーネス80の始端部81は支持部材である凸リブ70A,70Aに狭持される。さらにワイヤハーネス80の終端部82は凸リブ70B,70Bに挟持される。
【0056】
ここで、凸リブ70A,70Bによるワイヤハーネス80の支持力(狭持圧)は、保持部材40の収納溝42Aにおけるワイヤハーネス80の支持力(狭持圧)を超過していてよい。後述されるように、配索作業時に、保持部材40の回動に伴って、ワイヤハーネス80の、グリル開口20に沿った配索経路が大回り化し、ワイヤハーネス80に引張応力が生じる場合がある。このような場合であっても、凸リブ70A,70Bが堅固にワイヤハーネス80の始端部81及び終端部82を支持するため、始端部81及び終端部82の端子とコネクタの接続状態を維持可能となる。
【0057】
<配索工程>
図4~
図7には、本実施形態に係るフロントバンパー10における、ワイヤハーネス80の配索工程が例示される。この配索工程は、大別して収納工程と係止工程とに分けることが出来る。
【0058】
収納工程では、
図4及び
図5に例示されるように、グリル開口20の内側に配置された、複数の保持部材40の収納溝42A内に、ワイヤハーネス80が収納される。
図5に例示されるように、ワイヤハーネス80は、収納溝42A内で保持リブ42B及びこれに対向する側壁42C1,42C2に狭持され、仮固定される。また収納溝42A内にワイヤハーネス80が収納されると、仮留部44の係止爪44A(
図3参照)がインテグラルヒンジ44Dを回動起点として回動してタブ44Bの係止孔44Cに圧入、係止される。これにより収納溝42Aの開放端が部分的に閉じられ、収納されたワイヤハーネス80の、特に次の係止工程における離脱が抑制される。
【0059】
ワイヤハーネス80は、複数の保持部材40に亘って、その収納溝42Aに収納される。上述のように、略多角形状のグリル開口20の複数の辺に亘って保持部材40が設けられており、これに伴ってワイヤハーネス80の配索経路はグリル開口20に沿ったものとなる。
【0060】
ここで、配索されるワイヤハーネス80のうち、隣り合う保持部材40,40間では、弛み83(
図4参照)を持った状態でワイヤハーネス80が配置される。後述される係止工程において、保持部材40の回動に伴って、ワイヤハーネス80の配索経路が、グリル開口20の内側を通る経路から、配索面10Bを通る経路(
図6参照)に、つまり大回りの経路に変化する。この経路の周長の増加を見越して、保持部材40の回動前の段階において、隣り合う保持部材40,40間にはワイヤハーネス80に弛み83が形成される。弛み83が形成されることで、配索経路の大回化したとき、つまり、保持部材の回動後における、ワイヤハーネス80の引張応力の発生が抑制可能となる。
【0061】
すべての保持部材40の収納溝42Aにワイヤハーネス80が収納され、さらに、ワイヤハーネス80の始端部81が凸リブ70A,70Aに挟持され、加えてワイヤハーネス80の終端部82が凸リブ70B,70Bに挟持されると、収納工程は完了する。
【0062】
配索工程は収納工程から係止工程に移行される。係止工程では、保持部材40が、インテグラルヒンジ41を回動起点として、グリル開口20の内側から外側に回動される。
【0063】
このとき、ワイヤハーネス80は既に収納溝42A内に収納されているので、従来のように片手でワイヤハーネスを配索面10Bに配置させる必要が無い。例えば両手で保持部材40を回動させ、それぞれの係止爪43をタブ50の係止孔52または筒状部60の係止孔62に嵌め込むのみで、係止工程が完了される。
【0064】
ここで、
図4から
図6のように、ワイヤハーネス80の配索経路が、保持部材40の回動に伴って大回り化する。ここで、凸リブ70A,70Bによる支持力は収納溝42Aの支持力を超過するから、凸リブ70A,70Bに支持されるワイヤハーネス80の始端部81及び終端部82は堅固に支持され、その一方で、収納溝42A内をワイヤハーネス80が摺動する。この過程で、
図6のように弛み83が解消され、ワイヤハーネス80は配索面10B内に配索される。
【0065】
図7には
図6のA-A断面、つまり上枠部12の側面断面図が例示される。上述のように、フロントバンパー10の上下の端縁には、他部材であるヘッドランプカバー30及びフロントグリル90の端縁30A,90Aを受けるフランジ12A,12Bが形成される。フランジ12Aより更にヘッドランプカバー30側にタブ50が形成されるので、当該タブ50及びタブ50の係止孔52に圧入された係止爪43は、車両正面視でヘッドランプカバー30に隠される。
【0066】
同様にして、下方のフランジ12Bより更にフロントグリル90側にインテグラルヒンジ41が形成されるので、当該ヒンジは車両正面視でフロントグリル90に隠される。つまり、ワイヤハーネス80の配索に用いられる保持部材40及びタブ50は、フロントバンパー10及びこれに車両外側から被せられる他部材に覆われる。したがってこれらの配索用部材の、車両外側からの保持部材の視認が抑制され、車両の意匠面への影響が抑制される。
【符号の説明】
【0067】
10 フロントバンパー(バンパー)10A バンパーの意匠面、10B バンパーの配索面、11 バンパー本体、12 上枠部、12A,12B 上枠部のフランジ、14 下枠部、14A 下枠部のフランジ、16 内側部、18 外側部、20 グリル開口、22 フォグランプ開口、30 ヘッドランプカバー、32 アッパーグリル、40 保持部材、41 保持部材のインテグラルヒンジ、42 収納部、42A 収納溝、42B 保持リブ、42C1,42C2 側壁、42D 底壁、43 保持部材の係止爪、44 仮留部、44A 仮留部の係止爪、44B 仮留部のタブ、44C 仮留部の係止孔、44D 仮留部のインテグラルヒンジ、44E 仮留部のアーム、46,48 保持部材のアーム、50 保持部材のタブ、52 タブの係止孔、60 筒状部、62 筒状部の係止孔、70A,70B 凸リブ、80 ワイヤハーネス、81 ワイヤハーネスの始端部、82 ワイヤハーネスの終端部、84 フォグランプ、90 フロントグリル。