(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021445
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】二次電池の状態推定方法及び二次電池の状態推定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20220127BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220127BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20220127BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20220127BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20220127BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 301
H02J7/00 X
H02J7/00 Y
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124997
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】西 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒良
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕也
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AA01
2G216AB01
2G216BA22
2G216BA34
2G216BA35
2G216CB05
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA08
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB06
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】二次電池を破壊することなく、正極の劣化状態を劣化要因毎に推定する。
【解決手段】電池状態を推定する二次電池の電池状態推定方法は、二次電池の初期容量からの電池容量の低下量である容量低下量ΔQを特定する容量低下量特定工程と、正極電位及び温度に基づき、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量Q1を特定する第1工程と、正極電位及び温度に基づき、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量Q2を特定する第2工程と、容量低下量ΔQから、第1容量低下量Q1及び第2容量低下量Q2を減じて、正極活物質の構造変化による第3容量低下量Q3を算出する第3工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池状態を推定する二次電池の状態推定方法であって、
前記二次電池の初期容量からの電池容量の低下量である容量低下量を特定する容量低下量特定工程と、
正極電位及び温度に基づき、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量を特定する第1工程と、
前記正極電位及び前記温度に基づき、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する第2工程と、
前記容量低下量から、前記第1容量低下量及び前記第2容量低下量を減じて、前記正極活物質の構造変化による第3容量低下量を算出する第3工程と、
を含む二次電池の状態推定方法。
【請求項2】
前記第3容量低下量が第2閾値未満である場合に、前記二次電池を、相対的に広いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定し、前記第3容量低下量が前記第2閾値以上である場合に、前記二次電池を、前記二次電池を相対的に狭いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定する判定工程をさらに含む
請求項1に記載の二次電池の状態推定方法。
【請求項3】
前記第1工程は、
被膜形成電流密度を電極毎に推定する電流密度推定工程と、
前記被膜形成電流密度に基づいて副反応電流値を電極毎に推定する電流値推定工程と、
負極の前記副反応電流値及び正極の前記副反応電流値の差と時間とに基づいて前記第1容量低下量を算出する工程とを含み、
前記電流密度推定工程は、「i
0」を交換電流密度、「α」を移動係数、「F」をファラデー定数、「R」を気体定数、「T」を温度、「E´」を被膜形成電位、「E」を電極電位としたとき、下記式(1)に基づいて前記被膜形成電流密度を推定し、
【数1】
前記電流値推定工程は、過電圧項を「η」としたとき、下記式(2)に基づいて前記副反応電流値を推定する
【数2】
請求項1又は2に記載の二次電池の状態推定方法。
【請求項4】
前記第2工程は、時間当たりの容量低下量である劣化速度と前記正極電位及び前記温度との関係を示す劣化速度情報に基づき前記第2容量低下量を特定し、
前記劣化速度情報は、前記温度が一定の場合に前記正極電位が高くなるに伴い高い前記劣化速度を関連付け、前記正極電位が一定の場合に前記温度が高くなるに伴い高い前記劣化速度を関連付ける
請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池の状態推定方法。
【請求項5】
前記二次電池は車両に搭載され、
前記車両に設けられた制御装置が、
前記二次電池の電圧及び温度を取得し、
前記正負極容量ずれに由来する前記第1容量低下量を特定する前記第1工程を実行し、
前記正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する前記第2工程を実行する
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池の状態推定方法。
【請求項6】
電池状態を推定する二次電池の状態推定システムであって、
前記二次電池が搭載された車両に設けられた第1制御装置が、
正極電位及び温度に基づき、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量を特定する第1工程と、
正極電位及び温度に基づき、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する第2工程と、を実行し、
第2制御装置が、
前記二次電池の初期容量からの電池容量の低下量である容量低下量を特定する容量低下量特定工程と、
前記容量低下量から、前記第1容量低下量及び前記第2容量低下量を減じて、正極活物質の構造変化による第3容量低下量を算出する第3工程とを実行する
を含む二次電池の状態推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の状態推定方法法及び二次電池の状態推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯用の電子機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として、リチウムイオン二次電池などの二次電池が用いられている。
例えば車両に搭載されるリチウムイオン二次電池は、温度環境や経過時間といった劣化要因に加えて、充放電回数等も劣化要因として寄与する。そのため、経過時間や走行距離等のみだけでは、劣化度を推定することができない。
【0003】
そこで、特許文献1では、リチウムイオン二次電池の容量の低下の要因である正負極組成対応ずれ容量を用いて、リチウムイオン二次電池の劣化を推定する手法が開示されている。具体的には、電流密度と過電圧との関係を記述したターフェル式を用いて、負極での副反応における被膜形成電流密度を求める。そして、被膜形成電流密度を所定の周期毎に算出し、その被膜形成電流密度を積算することで正負極組成対応ずれ容量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発明では、負極における副反応のみを考慮している。しかし、リチウムイオン二次電池の劣化状態を精度よく判定するためには、正極における容量低下量を考慮する必要があるが、正極の容量低下の要因は複数であり判定が困難であった。また、リチウムイオン二次電池の劣化状態を判定するには、リチウムイオン二次電池を分解すればよいが、リチウムイオン二次電池を再利用する上では、非破壊で劣化状態を把握することが望ましい。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リチウムイオン二次電池を破壊することなく、正極の劣化状態を劣化要因毎に推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電池状態推定方法は、電池状態を推定する二次電池の電池状態推定方法であって、前記二次電池の初期容量からの電池容量の低下量である容量低下量を特定する容量低下量特定工程と、正極電位及び温度に基づき、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量を特定する第1工程と、前記正極電位及び前記温度に基づき、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する第2工程と、前記容量低下量から、前記第1容量低下量及び前記第2容量低下量を減じて、前記正極活物質の構造変化による第3容量低下量を算出する第3工程と、を含む。
【0008】
上記課題を解決する電池状態推定システムは、電池状態を推定する二次電池の電池状態推定システムであって、前記二次電池が搭載された車両に設けられた第1制御装置が、正極電位及び温度に基づき、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量を特定する第1工程と、正極電位及び温度に基づき、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する第2工程と、を実行し、第2制御装置が、前記二次電池の初期容量からの電池容量の低下量である容量低下量を特定する容量低下量特定工程と、前記容量低下量から、前記第1容量低下量及び前記第2容量低下量を減じて、正極活物質の構造変化による第3容量低下量を算出する第3工程とを実行する。
【0009】
本発明者は、二次電池の劣化要因が、主に正負極容量ずれに由来する第1容量低下量、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量、正極活物質の二次粒子の構造変化に由来する第3容量低下量であることに着目し、二次電池11の使用履歴である正極電位、負極電位及び温度に基づき第1容量低下量と、第2容量低下量とを推定した。そして、初期容量からの容量低下量から、第1容量低下量及び第2容量低下量を減じて、正極活物質の二次粒子の構造変化に由来する第3容量低下量を推定した。このため、第3容量低下量を、二次電池を破壊することなく推定することができる。
【0010】
上記電池状態推定方法について、前記第3容量低下量が第2閾値未満である場合に、前記二次電池を、相対的に広いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定し、前記第3容量低下量が前記第2閾値以上である場合に、前記二次電池を、前記二次電池を相対的に狭いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定する判定工程をさらに含んでいてもよい。
【0011】
上記構成によれば、二次電池の容量低下量の大きさに基づき、SOCの許容範囲に応じた再利用時の用途を判定した。このため、二次電池の再利用時の用途を適切に判定することができる。
【0012】
上記電池状態推定方法について、前記第1工程は、被膜形成電流密度を電極毎に推定する電流密度推定工程と、前記被膜形成電流密度に基づいて副反応電流値を電極毎に推定する電流値推定工程と、負極の前記副反応電流値及び正極の前記副反応電流値の差と時間とに基づいて前記第1容量低下量を算出する工程とを含み、前記電流密度推定工程は、「i0」を交換電流密度、「α」を移動係数、「F」をファラデー定数、「R」を気体定数、「T」を温度、「E´」を被膜形成電位、「E」を電極電位としたとき、下記式(1)に基づいて前記被膜形成電流密度を推定し、
【0013】
【数1】
前記電流値推定工程は、過電圧項を「η」としたとき、下記式(2)に基づいて前記副反応電流値を推定してもよい。
【0014】
【数2】
上記構成によれば、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量を、ターフェルの式に基づき被膜形成電流密度を推定する工程と、被膜形成電流密度から副反応電流値を求める工程と、正極の副反応電流値及び負極の副反応電流値から第1容量低下量を算出する工程とによって求めた。このため、二次電池を解体することなく、第1容量低下量を推定することができる。
【0015】
上記電池状態推定方法について、前記第2工程は、時間当たりの容量低下量である劣化速度と前記正極電位及び前記温度との関係を示す劣化速度情報に基づき前記第2容量低下量を特定し、前記劣化速度情報は、前記温度が一定の場合に前記正極電位が高くなるに伴い高い前記劣化速度を関連付け、前記正極電位が一定の場合に前記温度が高くなるに伴い高い前記劣化速度を関連付けてもよい。
【0016】
上記実施形態によれば、二次電池11の正極の劣化速度と、正極電位及び二次電池11の温度との関係を定めた劣化速度情報を予め準備し、二次電池の使用履歴に基づき、劣化速度情報を参照することによって、正極の保存劣化による第2容量低下量を求めた。つまり二次電池の使用履歴さえ蓄積すれば、二次電池を解体することなく、第2容量低下量を推定することができる。
【0017】
上記電池状態推定方法について、前記二次電池は車両に搭載され、前記車両に設けられた制御装置が、前記正負極容量ずれに由来する前記第1容量低下量を特定する前記第1工程を実行し、前記正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量を特定する前記第2工程を実行してもよい。
【0018】
上記構成によれば、車両に搭載された制御装置が、前記二次電池の電圧及び温度を取得し、第1容量低下量及び容量低下量を推定する。したがって、二次電池を車両から取り外した後に、予め算出した容量低下量及び容量低下量を利用することができるため、劣化状態を短時間で判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二次電池を破壊することなく、正極の劣化状態を劣化要因毎に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態の二次電池の容量低下量の内訳を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態の電池制御回路を概略的に示す図。
【
図3】同実施形態の充放電制御回路及び劣化判定装置を概略的に示す図。
【
図4】同実施形態の容量低下量判定の手順を示すフローチャート。
【
図5】同実施形態の正極の保存劣化に由来する劣化速度と保存時間との関係を正極電位毎に示すグラフ。
【
図6】同実施形態の正極の保存劣化に由来する劣化速度と正極電位との関係を示すグラフ。
【
図7】同実施形態の正極の保存劣化に由来する劣化速度と保存時間との関係を温度毎に示すグラフ。
【
図8】同実施形態の正極の保存劣化に由来する劣化速度と温度との関係を示すグラフ。
【
図9】同実施形態の正極の保存劣化に由来する劣化速度と、正極電位及び温度との関係を示すマップの概略図。
【
図10】同実施形態の劣化状態判定の手順を示すフローチャート。
【
図11】変形例の状態推定システムを概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図10を参照して、二次電池の状態推定方法及び状態推定システムの一実施形態について説明する。
図1を参照して、リチウムイオン二次電池(以下、二次電池という)の状態推定方法の概要を説明する。二次電池の容量低下の要因としては、主に、「(1)正負極容量ずれ」、「(2)正極の保存劣化」、「(3)正極のサイクル劣化」がある。なお、本実施形態では、二次電池は、LiNiO
2を含む正極活物質、グラファイトを主成分とする負極活物質を備えるものとして説明する。
【0022】
「(1)正負極容量ずれ」は、正極容量と負極容量とのずれに由来する。二次電池の容量は、二次電池の動作範囲での正極容量と負極容量とが重なる領域の大きさで決まる。劣化のない初期状態の二次電池であっても、正極容量及び負極容量は互いにずれた状態にある。やがて正極と負極との両方で副反応等が進行すると、正極容量及び負極容量が初期状態から低下する。その結果、正極容量及び負極容量のずれが拡大し、正極容量及び負極容量の重なる領域がさらに縮小される。この拡大した容量ずれが、正負極容量ずれによる容量低下である。
【0023】
「(2)正極の保存劣化」は、放置しているだけで正極容量自体が低下する現象である。この容量低下は、正極活物質であるLiNiO2が、NiO等を含む被膜を生成する副反応によるものである。つまり、被膜が生成されることにより、正極へのリチウムイオンの吸蔵及び放出が妨げられ、結果として正極容量が低下する。
【0024】
「(3)正極のサイクル劣化」は、正極活物質の二次粒子の構造変化に伴う現象であって、二次電池が充放電を繰り返すことにより正極容量が低下するものである。なお、二次粒子は、一次粒子が集まった二次粒子である。ここで「一次粒子」とは、外見上の幾何学的形態から判断して単位粒子と考えられる粒子を指す。充放電の条件にもよるが、充放電が繰り返されることにより正極活物質は膨張及び収縮し、二次粒子の殻が崩れる。二次粒子の殻が崩れると、正極活物質の粒子を流れる電子の導電パスが切断されるため、正極の容量が低下する。また、正極活物質がLiNiO2ではなくても、充放電を繰り返すことにより、正極活物質は膨張及び収縮を繰り返すため、サイクル劣化が生じる。
【0025】
二次電池の初期容量Qから推定時の容量Q´を減じた全体の容量低下量ΔQは、これらの要因毎の容量低下量Q1~Q3を積算した量に対応すると考えられる。このうち、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量Q1(以下、単に容量低下量Q1という)は、副反応の電極反応速度に応じた電流密度と過電圧との関係を記述したターフェルの式に基づく正極の副反応電流値と負極の副反応電流値により推定することが可能である。つまり、過電圧が同一である場合に、大きな電流が流れるほど、その反応速度は早いといえる。また、正極の保存劣化による第2容量低下量Q2(以下、単に容量低下量Q2という)は、二次電池の温度及び電池電圧を含む使用履歴と、予め記録されたマップとを用いて推定することが可能である。
【0026】
一方、正極のサイクル劣化による第3容量低下量Q3(以下、単に容量低下量Q3という)は、上述したように正極活物質の充放電の繰り返しに伴う二次粒子の構造変化に由来し、電気化学反応とは異なる機構で発生するため、電気化学反応の電流密度を求めるターフェルの式等からはその容量低下量を推定することはできない。また、温度や電池電圧とは直接的に依存しないため、正極の保存劣化による容量低下量Q2のように電池温度及び電池電圧から求めることはできない。一方、容量低下量Q3は、二次電池を解体し、正極活物質を取り出して分析すれば劣化状態は判別できるが、二次電池を再利用する上では非破壊で容量低下量を推定することが好ましい。
【0027】
したがって、本実施形態では、全体の容量低下量ΔQ、正負極容量ずれに由来する容量低下量Q1、及び正極の保存劣化に由来する容量低下量Q2を求め、容量低下量ΔQから容量低下量Q1,Q2を減ずることによって、正極のサイクル劣化に由来する容量低下量Q3を推定する。
【0028】
そして、推定した容量低下量Q3は、二次電池の再利用時の用途又は条件を決定するために用いられる。例えば、容量低下量Q3が所定値以上の場合には、その二次電池を、相対的に狭いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定し、容量低下量Q3が所定値未満の場合には、相対的に広いSOCの許容範囲で再利用される二次電池として判定する。又は、容量低下量Q3に基づき、二次電池のSOCの許容範囲を決定してもよいし、二次電池の温度環境、下限電圧及び上限電圧、充放電の制御方法、使用可能期間等を決定してもよい。
【0029】
次に
図2~
図10を参照して、二次電池の状態推定方法及び状態推定システムについて詳述する。
図2は、二次電池11を搭載する車両10の要部の概略的に示す図である。車両10は、ハイブリッド自動車又は電気自動車である。二次電池11は、複数の電池モジュール11Aを組み合わせた組電池である。電池モジュール11Aは、LiNiO
2等のリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質、炭素材料を含む負極活物質を備える。
【0030】
車両10は、二次電池11とPCU12とを接続する電池制御回路13を備えている。PCU12は、インバータ等を内蔵し、発電機及び電動機として機能するモータジェネレータ15と接続している。モータジェネレータ15は、電動機として機能する場合にはPCU12を介して二次電池11から供給された電流によって駆動して、車輪に回転力を伝達する。また、モータジェネレータ15は、発電機として機能する場合にはPCU12を介して二次電池11に電流を供給し、二次電池11を充電する。また、二次電池11は、図示しない充放電制御装置を介して、充電スタンド等の外部の充電装置から電流を供給されるものであってもよい。
【0031】
また、電池制御回路13には、電圧検出部16及び電流検出部17が設けられている。さらに、車両10には二次電池11の状態を監視する第1制御装置としての制御装置20が設けられている。制御装置20は、CPU等の演算部21、演算結果を一時的に記憶するメモリ22、及びストレージ23を備えている。ストレージ23には、状態推定プログラムや二次電池11の履歴情報等が記録される。電圧検出部16は、検出した二次電池11の電圧値を、制御装置20に出力する。電流検出部17は、検出した二次電池11の電流値を、制御装置20に出力する。制御装置20は、電圧検出部16及び電流検出部17から取得した電圧値及び電流値等の履歴情報をストレージ23に記憶する。
【0032】
また、二次電池11には、電池内の温度である温度Tを測定する温度検出部18が設けられている。温度検出部18は、1乃至複数の電池モジュール11Aの内部の温度を検出する。なお、温度検出部18は、電池モジュール11Aの外側であって電池モジュール11Aのケース近傍の温度を検出してもよい。
【0033】
制御装置20の演算部21は、所定の時間間隔毎に、電圧値、電流値及び温度を取得し、取得した時刻(又は基準時からの経過時間)に関連付けて履歴情報としてストレージ23に記録する。また、演算部21は、履歴情報に基づき、電圧値及び温度に基づいて、二次電池11の正負極容量ずれに由来する容量低下量Q1と、正極のサイクル劣化に由来する容量低下量Q2とを状態推定プログラムに従って推定し、それらの値をストレージ23に記録する。
【0034】
図3は、二次電池11について、劣化状態を判定する検査システム30を概略的に示す図である。この検査システム30は、電池制御回路13から外した二次電池11を測定対象とする。検査システム30は、充放電制御回路31と、第2制御装置としての劣化判定装置35とを備える。充放電制御回路31は、図示しない電源に接続された測定用充放電装置32と、電圧検出部33と、電流検出部34とを備える。劣化判定装置35は、測定用充放電装置32を制御する。測定用充放電装置32は、劣化判定装置35からの要求に基づき、直流電流を供給して二次電池11を充電する。また、測定用充放電装置32は、劣化判定装置35からの要求に基づき、二次電池11を放電する。なお、充放電制御回路31には外部負荷(図示略)が接続されていてもよい。なお、制御装置20と劣化判定装置35とが、状態判定システムに対応する。
【0035】
劣化判定装置35は、CPU等の演算部36と、演算部36の演算結果を一時的に記憶するメモリ37と、ストレージ38とを備える。ストレージ38には、劣化判定プログラム、二次電池11の履歴情報、劣化判定結果を示す劣化判定情報等が記録される。なお、履歴情報は制御装置20から取得される。履歴情報の取得方法は特に限定されない。例えば、二次電池11を車両10から取り外す際に制御装置20も合わせて取り外す場合には、取り外した制御装置20と劣化判定装置35とを接続して履歴情報を取得してもよい。又は劣化判定装置35を車載ネットワーク等に接続し、車両10に搭載された制御装置20から履歴情報を取得するようにしてもよい。
【0036】
次に、
図4及び
図5を参照して、二次電池11の状態推定方法の手順についてその動作とともに説明する。
図4は、車両10に搭載された制御装置20が実行する容量低下量の推定方法の手順を示す。制御装置20は、ストレージ23に格納された状態推定プログラムを実行し、ステップS11~S15の処理を所定の時間Δt毎に繰り返す。なお、この容量低下量の推定は、走行状態、停車状態、及び駐車状態等の車両状態、充電状態、放電状態及び充放電を行っていない状態といった二次電池11の電池状態に限らず、所定の時間Δt毎に実行してもよい。或いは、車両状態及び電池状態の少なくとも一方が所定の状態である場合に実行してもよい。
【0037】
まず制御装置20は、温度検出部18から温度Tを取得する(ステップS11)。また、制御装置20は、電圧検出部16から電圧値である電圧Vを取得する(ステップS12)。さらに、制御装置20は、取得した温度T及び電圧Vに基づいて、正極の副反応電流値Ipと、負極の副反応電流値Inとを推定する(ステップS13)。
【0038】
ステップS13における正極の副反応電流値Ipの予測方法について説明する。まず、NiOを含む被膜を生成する正極の副反応における被膜形成電流密度ipを下記の式(3)に従って求める(電流密度推定工程)。被膜形成電流密度ipが大きいほど、この副反応による正極の劣化速度は大きいことになる。
【0039】
【数3】
上記式(3)はターフェルの式に基づくものである。「io」は、正極の副反応が平衡状態にある場合の交換電流密度であり、定数である。「α」は移動係数、「F」はファラデー定数、「R」は気体定数である。「T」は絶対温度であって、温度検出部18から取得した温度Tである。また「Ep」は電圧Vから求められた正極電位であって、「Ep´」はNiO等を含む被膜が形成される被膜形成電位であり定数である。つまり、温度T及び正極電位Epに応じて、被膜形成電流密度ipは変わる。
【0040】
なお、電圧Vは、その電圧値が検出されたときの正極電位Epと負極電位Enとの差であるため、正極電位Ep及び負極電位Enは、電圧値が測定されたときの温度Tと電圧Vとからそれぞれ求めることができる。そのため、電圧V、温度T、予め求められたマップ又はグラフを用いて正極電位Epを特定する。負極電位Enも同様である。
【0041】
次に、被膜形成電流密度ipを用い、式(4)に従って正極の副反応電流値Ipを求める(電流値推定工程)。
【0042】
【数4】
「ηp」は過電圧項であって、正極の副反応の平衡電極電位と実際に反応が進行するときの正極電位Epとの差である。
【0043】
次に、負極の副反応電流値Inの推定方法について説明する。負極の副反応は、主に電解質の分解反応による負極活物質の表面上に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interphase)の生成反応である。SEIは、リチウムイオンを放出及び吸入可能な被膜であり、電解質の分解を抑制するが、厚くなるとリチウムイオンの拡散を妨げ容量低下を招来する。負極の副反応電流値Inを推定する際は、まず負極の被膜形成電流密度inを下記の式(5)に従って求める(電流密度推定工程)。被膜形成電流密度inが大きいほど、SEIを生成する副反応による副反応の劣化速度は大きいことになる。
【0044】
【数5】
「io」は、副反応が平衡状態にある場合の交換電流密度であり、定数である。「α」は移動係数、「F」はファラデー定数、「R」は気体定数である。「T」は絶対温度であって、温度検出部18から取得した温度Tである。また「En」は負極電位であり、「En´」はSEI等が形成される被膜形成電位であって定数である。つまり、温度T及び負極電位Enに応じて、正極の交換電流密度ioは変わる。
【0045】
次に、被膜形成電流密度inを用い、式(6)に従って負極の副反応電流値Inを求める(電流値推定工程)。
【0046】
【数6】
「ηn」は過電圧項であって、負極の副反応の平衡電極電位と実際に反応が進行するときの負極電位Enとの差である。
【0047】
このようにして正極の副反応電流値Ip及び負極の副反応電流値Inを求めると、これらから、正極及び負極の容量ずれによる容量低下量Q1を推定する(ステップS14、第1工程)。具体的には、制御装置20は、副反応電流値Ipと副反応電流値Inを用いて以下の式(7)に従って、時間Δtあたりの容量ずれによる容量低下量Q1を算出する。
【0048】
【数7】
次に、制御装置20は、正極の保存劣化による容量低下量Q2を推定する(ステップS15、第2工程)。以下、保存劣化による容量低下量Q2の推定方法について詳述する。
【0049】
先ず、
図5~
図8を参照して、正極劣化速度の傾向について説明する。
図5及び
図6は、正極劣化速度の正極電位依存性を示し、
図7及び
図8は正極劣化速度の温度依存性を示す。
図5は、横軸を電池の保存時間(t)の平方根(t
1/2)、縦軸を正極比容量(mAh/g)としている。劣化速度線100は正極電位Epが3.886V、劣化速度線101は正極電位Epが3.984V、劣化速度線102は正極電位Epが4.1Vであって、いずれも保存時の温度が85℃であるときの劣化速度を示す。劣化速度線100~102はいずれも保存時間が長くなるに伴い正極比容量が低下している。また、劣化速度線100~102のうち、正極電位Epが最も高い劣化速度線102は最も傾きの絶対値が大きく、劣化速度が大きい。また、正極電位Epが最も低い劣化速度線100は、最も傾きの絶対値が小さく、劣化速度が小さい。
【0050】
図6は、
図5に示すグラフを、正極電位Epと正極劣化速度との関係に置き換えたものである。正極劣化速度{(mAh/g)・t
1/2}は、正極比容量を保存時間の平方根(t
1/2)で除して算出する。正極電位Epが大きくなるに伴い、劣化速度は指数関数的に上昇する。
【0051】
図7及び
図8は、正極劣化速度の温度依存性を示すグラフである。
図7のグラフの横軸は、電池の保存時間(t)の平方根(t
1/2)、縦軸は電池の正極比容量(mAh/g)である。劣化速度線110~112は、いずれも保存時の正極電位Epが4.1Vであり、劣化速度線110が温度60℃、劣化速度線111が温度75℃、劣化速度線112が温度85℃の条件で測定されたものである。劣化速度線110~112は、保存時間が長くなるに伴い、正極比容量が低下している。温度が最も高い劣化速度線112は、最も傾きの絶対値が大きく、劣化速度が大きい。また、温度が最も低い劣化速度線110は、最も傾きが大きく、劣化速度が小さい。
【0052】
図8は、
図7に示すグラフを、温度と劣化速度との関係に置き換えたものである。縦軸は、正極比容量を時間で除して算出した劣化速度の自然対数である。横軸は、絶対温度の逆数「1/K」に「10
3」を乗じたものである。温度が高くなるほど、劣化速度は大きくなる。
【0053】
図9は、
図5~
図8のグラフに基づき作成された劣化速度情報としてのマップ120を模式的に示す。マップ120は、温度T及び正極電位Epから劣化速度(mAh/g・t
1/2)を求めるためのものである。このマップ120は、車両10に搭載された制御装置20のストレージ23に格納されている。縦軸は温度であり、
図9中上方向に向かうにつれて温度は高くなり、下方向に向かうにつれて温度は低くなる。横軸は正極電位Epであり、
図9中右方向に向かうにつれて正極電位Epは高くなる。温度が一定の場合、正極電位が高いほど劣化速度は大きい。また、正極電位が一定の場合、温度が高いほど劣化速度は大きい。また、マップ120の上方左側に向かうにつれ、劣化速度は大きくなる。つまり、温度が高く且つ正極電位が高くなるほど相乗的に劣化速度は大きくなる。
【0054】
制御装置20は、
図9に示すマップ120を用いて、正極電位Epと温度Tとから劣化速度を求める。また、制御装置20は劣化速度に時間(Δt)を乗算して、正極の保存劣化による容量低下量Q2を算出する。
【0055】
このように、制御装置20は、時間Δt毎に容量低下量Q1,Q2を推定し、前回(n回目)までに算出した容量低下量の積算値(ΣQ1,ΣQ2)に、今回(n+1回目)に算出した容量低下量Q1,Q2を新たに積算する。
【0056】
このようにステップS11~S15を繰り返すことにより、制御装置20のストレージ23に記録された容量低下量Q1,Q2を更新する。或いは、所定の時間Δt毎に算出した容量低下量Q1,Q2を、算出の都度、ストレージ23に蓄積してもよい。
【0057】
次に、
図10を参照して、容量低下量の推定方法の後に行われる劣化判定方法について説明する。本実施形態では、劣化判定は、車両10から二次電池11を取り外した後に検査システム30を用いて行われる。
【0058】
まず、充放電制御回路31に二次電池11を接続し、SOC100%まで充電した後、放電することで電池容量Q´を取得する(ステップS21)。電池容量Q´は放電容量であり、容量の測定方法は特に限定されず、電池の使用状況の情報等から推定してもよい。
【0059】
次に、劣化判定装置35は、初期容量Qを取得する(ステップS22)。初期容量は、劣化判定装置35のストレージ23等に記憶されているか、若しくは二次電池11の固有の規定値である。さらに、劣化判定装置35は、初期容量Qから電池容量Q´を減じて、電池全体の容量低下量ΔQを算出する(ステップS23、容量低下量特定工程)。
【0060】
また、劣化判定装置35は、ステップS14で算出した正負極容量ずれによる容量低下量Q1、ステップS15で算出した正極の保存劣化による容量低下量Q2を取得する(ステップS25、第3工程)。
【0061】
劣化判定装置35は、電池容量Q´が第1閾値Qth1を超えるか否かを判断する(ステップS26)。第1閾値Qth1は、再利用可能な二次電池11の容量の下限値に設定されている。この下限値は、用途を問わず、共通のものである。劣化判定装置35は、電池容量Q´が第1閾値Qth1以下と判断すると(ステップS26:NO)、その二次電池11を再利用不可能と判断する(ステップS29)。
【0062】
一方、劣化判定装置35は、電池容量Q´が第1閾値Qth1以下と判断すると(ステップS26:YES)、正極のサイクル劣化による容量低下量Q3が第2閾値Qth2未満であるか否かを判断する(ステップS27、判定工程)。第2閾値Qth2は、再利用が可能と判断された場合に、二次電池11の劣化状態を第1劣化状態と第2劣化状態に分類するための閾値である。
【0063】
劣化判定装置35は、容量低下量Q3が第2閾値Qth2未満であると判断すると(ステップS27:YES)、二次電池11が第1劣化状態であると判断する(ステップS28)。第1劣化状態は、第2劣化状態よりも劣化が進んでいない状態である。第1劣化状態の二次電池11は、SOCの許容範囲が広い使用状態、つまり深い充放電を行う状態で使用される二次電池11として用いられる。具体的には、第1劣化状態の二次電池11は、家庭向け定置用途、産業用定置等の定置用途とされるか、又は電気自動車(EV車)で利用される。
【0064】
一方、劣化判定装置35は、容量低下量Q3が第2閾値Qth2以上であると判断すると(ステップS27:NO)、二次電池11が第2劣化状態であると判断する(ステップS30)。第2劣化状態は、第1劣化状態よりも劣化が進んだ状態であって、二次電池11のSOCの許容範囲が比較的狭くされる。第2劣化状態では、家庭向け定置、産業用定置等の定置用途、又は電気自動車(EV車)での利用を不可能とし、浅い充放電が行われるハイブリッド車や自動運転用のバックアップ電池等での利用を可能とする。
【0065】
上記実施形態の効果について説明する。
(1)本発明者は、二次電池11の劣化要因が、主に正負極容量ずれに由来する容量低下量Q1、正極の保存劣化に由来する容量低下量Q2、サイクル劣化による容量低下量Q3であることに着目した。このうち、サイクル劣化による容量低下量Q3は、二次電池を解体しなければその定量化は困難である。そこで、二次電池11の使用履歴である電圧V及び温度Tに基づき容量低下量Q1と、容量低下量Q2とを推定した。そして、初期容量Qを基準とした容量低下量ΔQから、容量低下量Q1及び容量低下量Q2を減じることによって、容量低下量Q3を推定した。このため、二次電池11を破壊することなく、正極の劣化状態を劣化要因毎に推定することができる。
【0066】
(2)上記実施形態では、二次電池11の容量低下量Q3の大きさに基づき、SOCの許容範囲に応じた再利用時の用途を判定した。このため、二次電池11の再利用時の用途を適切に判定することができる。
【0067】
(3)上記実施形態では、正負極容量ずれに由来する容量低下量Q1を、ターフェルの式に基づき被膜形成電流密度を推定する工程と、被膜形成電流密度から副反応電流値を求める工程と、正極の副反応電流値及び負極の副反応電流値から第1容量低下量を算出する工程とによって求めた。このため、二次電池11を解体することなく、容量低下量Q1を推定することができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、二次電池11の正極の劣化速度と、正極電位及び二次電池11の温度との関係を定めたマップ120を予め準備し、二次電池11の使用履歴に基づき、マップ120を参照することによって、正極の保存劣化による容量低下量Q2を求めた。つまり二次電池11の使用履歴さえ蓄積すれば、二次電池11を解体することなく、容量低下量Q2を推定することができる。
【0069】
(5)上記実施形態によれば、車両10に搭載された制御装置20が、使用中の二次電池11の使用履歴を取得して、容量低下量Q1及び容量低下量Q2を推定する。したがって、二次電池11を車両10から取り外した後に、予め算出した容量低下量Q1及び容量低下量Q2を利用することができるため、劣化状態を短時間で判定することができる。
【0070】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、劣化判定装置35が、容量低下量ΔQを算出するようにした。劣化判定装置は、二次電池11の充電を行う充電スタンド等の外部充電装置であってもよい。
図11に示すように、車両130は、外部充電装置140から供給される電流によって二次電池11を充電する車載充電制御装置131と、制御装置20(
図2参照)とを備えている。なお、車載充電制御装置131は、制御装置20を兼ねていてもよい。車載充電制御装置131と、外部充電装置140とは、ケーブル群132,133によって接続される。ケーブル群132,133は、充電用のケーブルの他、車載充電制御装置131と外部充電装置140との間で通信に用いられる通信線を有している。そして、この通信線を通じて、車載充電制御装置131と外部充電装置140との間でデータを送受信する。この態様において、外部充電装置140が、二次電池11を放電(又は充電)させて、放電容量(又は充電容量)を測定するようにしてもよい。そして、測定した放電容量(又は充電容量)を通信線を通じて車載充電制御装置131に送信するようにしてもよい。車載充電制御装置131は、受信した放電容量(又は充電容量)を制御装置20に送信し、制御装置20は、初期容量と、放電容量(又は充電容量)とから容量低下量ΔQを算出する。これによれば、二次電池11が車両130に搭載された状態で、二次電池11の劣化状態を判定することができる。そして、制御装置20が、二次電池11が第1劣化状態又は第2劣化状態になったと判定した場合、車両130のインストルメントパネル等に設けられた報知装置を動作させて、二次電池11の劣化を報知するようにしてもよい。また、この態様において、外部充電装置140が、放電容量(又は充電容量)を測定することに加え、車載充電制御装置131から通信線を介して容量低下量Q1,Q2を取得し、容量低下量Q3を算出するようにしてもよい。そして、二次電池11の劣化状態について判定するようにしてもよい。
【0071】
・上記実施形態では、二次電池11の再利用について判定するにあたり、劣化判定装置35が電池容量Q´が第1閾値Qth1を超えるか否かを判断するようにした(ステップS26)。しかし、容量低下量Q3と、容量低下量Q1,Q2はある程度相関性がある場合には、少なくとも容量低下量Q3が第2閾値Qth2未満であるか否かを判定(ステップS27)できれば、ステップS26を省略してもよい。
【0072】
・二次電池11の劣化判定において、電池容量Q´が第1閾値Qth1以下であるか否か、及び正極のサイクル劣化による容量低下量Q3が第2閾値Qth2未満であるか否かを判断するようにした。これに加え、二次電池11の使用期間、及び充放電サイクル回数等の使用履歴を示すパラメータが、閾値を超えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、電池状態推定システムは、第1制御装置である制御装置20、及び第2制御装置である劣化判定装置35を含む構成とした。これに代えて、制御装置20を、容量低下量Q1を推定する装置と、容量低下量を推定する装置とに分けてもよい。劣化判定装置35を、容量低下量ΔQを特定する工程を実行する装置と、容量低下量ΔQから容量低下量Q1,Q2を減じて容量低下量Q3を算出する工程を実行する装置とに分けてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、二次電池11を、車両10,130に搭載されたリチウムイオン二次電池として説明したが、車両以外の移動体に搭載されたものであってもよい。また、家庭向け定置用途、産業用定置等の定置用途のものであってもよい。これらの二次電池11の再使用時の用途は特に限定されない。また、二次電池11は、リチウムイオン二次電池以外の電池であってもよい。例えば、容量低下の要因が、主に、正負極容量ずれに由来する第1容量低下量、正極活物質に被膜が形成される副反応に由来する第2容量低下量、正極活物質の構造変化に由来する第3容量低下量に分けられるのであれば、ニッケル水素二次電池等のアルカリ二次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10,130…車両
11…二次電池
20…第1制御装置としての制御装置
35…第2制御装置としての劣化判定装置
120…劣化速度情報としてのマップ