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  • 特開-コネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021464
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
H01R13/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125036
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藪木 聖司
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏典
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG14
5E087RR04
5E087RR06
5E087RR25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハウジングの大型化にならず、コンタクトの保持力が向上されたコネクタを提供する。
【解決手段】前後方向に延びる複数個のコンタクト収容室110が幅方向に沿って配置されたハウジング10と、コンタクト収容室110にハウジング10の後壁150の開口部から挿入されるコンタクトを備えるコネクタ。コンタクト収容室110には隣接するコンタクト収容室110との間を仕切る、又は幅方向を画定するための仕切り壁120が備わり、仕切り壁120の連続性が断たれた所定位置には幅方向に沿って変位し、隣接するコンタクト収容室110に共通するランス121が備わる。ランス121はハウジング10の底壁を基端部とし、先頭部がコンタクト収容室110に延出する。ランス121の先頭部の前面には係止部が備わり、コンタクト収容室110に挿入されたコンタクトには係止部に係止する被係止部が備わる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる複数個のコンタクト収容室が前後方向に直交する幅方向に沿って配置されたハウジングと、前記コンタクト収容室に前記ハウジングの嵌合面の反対側にある後面の開口部から挿入されるコンタクトを備えるコネクタであって、
前記コンタクト収容室には隣接する前記コンタクト収容室との間を仕切る、又は前記幅方向を画定するための仕切り壁が備わり、前記仕切り壁の連続性が断たれた所定位置には前記幅方向に沿って変位し、前記隣接するコンタクト収容室に共通するランスが備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のランスは前記ハウジングの底壁を基端部とし、先端部が前記コンタクト収容室に延出する片持ち梁状であるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のランスの先端部に備わる先頭部の前面には係止部が備わり、前記コンタクト収容室に挿入される前記コンタクトには前記係止部に係止する被係止部が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のランスの先頭部には前記コンタクトの装着時に挿入をスムースに行わせるためのテーパー面が備わるところに特徴を有するコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4の内一項に記載のコネクタであって、前記ランスの係止外れを抑制するためのリテーナが備わるところに特徴を有するコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタのハウジングランスとコンタクトとの係止に関する
【0002】
この分野の技術として特許文献1に記載の技術が知られている。ソケットハウジングのコンタクト保持力の向上と、コンタクトの半挿入の抑止とを課題とし、ハウジングランスとリテーナを用いてこれを解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-283202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ソケットハウジングのハウジングランスは、コンタクトの挿入方向と平行に延びていて、ハウジングランスの可動範囲をキャビティ内に収める制約があるために、コネクタのサイズが大きくなっている。また、ソケットハウジングのハウジングランスと、リテーナの係止部とは互いに干渉しない構造なので、係止部の強度を確保するためには、リテーナを大きくせざるを得ない。
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、コンタクトやハウジングを大きくすることなく、コンタクトの保持力が向上されたコネクタの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタは、(1)前後方向に延びる複数個のコンタクト収容室が前後方向に直交する幅方向に沿って配置されたハウジングと、前記コンタクト収容室に前記ハウジングの嵌合面の反対側にある後面の開口部から挿入されるコンタクトを備えるコネクタであって、前記コンタクト収容室には隣接するコンタクト収容室との間を仕切る、又は前記幅方向を画定するための仕切り壁が備わり、前記仕切り壁の連続性が断たれた所定位置には前記幅方向に沿って変位し、前記隣接するコンタクト収容室に共通するランスが備わるところに特徴を有するものである。
【0006】
この発明によれば、ランスは、仕切り壁の連続性が断たれたところ、すなわち、連続していたならば本来仕切り壁があったところに位置するので、コンタクトやハウジングの大型化を来すことなく、コンタクトの保持力が向上したコネクタが得られる。
【0007】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(2)上記(1)に記載のランスは前記ハウジングの底壁を基端部とし、先端部が前記コンタクト収容室に延出する片持ち梁状であるところに特徴を有するものである。
【0008】
この発明によれば、ランスは先端部が幅方向に変位してコンタクトの所定位置に係止するので、コンタクトとの係止が固く、且つハウジングの大型化が抑制されたコネクタが得られる。
【0009】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(3)上記(2)に記載のランスの先端部に備わる先頭部の前面には係止部が備わり、前記コンタクト収容室に挿入される前記コンタクトには前記係止部に係止する被係止部が備わるところに特徴を有するものである。
【0010】
この発明によれば、ランスの先頭部の係止部とコンタクトの被係止部とが係止する。これにより、コンタクトとの係止が固く、且つハウジングの大型化が抑制されたコネクタが得られる。
【0011】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(4)上記(3)に記載のランスの先頭部には前記コンタクトの装着時に挿入をスムースに行わせるためのテーパー面が備わるところに特徴を有するものである。
【0012】
この発明によれば、ランスは先頭部のテーパー面に倣って変位するので装着の妨げにならないランスを備えたコネクタが得られる。
【0013】
好ましくは、本発明に係るコネクタは、(5)上記(1)から(4)の内一項に記載のコネクタであって、前記ランスの係止外れを抑制するためのリテーナが備わるところに特徴を有するものである。
【0014】
この発明によれば、コンタクトを保持するランスが備わり、さらにリテーナがランスをハウジングに固定するのでハウジングの大型化が抑制された、コンタクト保持力の優れたコネクタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタの外観斜視図である。
図2図2は、同コネクタのハウジングとコンタクトとが分離された状態を示す分解斜視図である。
図3図3は、同コネクタのハウジングにコンタクトが装着される過程を示す工程図であって、(1)はコンタクトの被係止部がランスの先頭部を通過する前、(2)はコンタクトの被係止部がランスの先頭部を通過中、(3)はランスの係止部とコンタクトの被係止部とが係止している状態である。
図4図4は、同コネクタのハウジングにリテーナが装着された状態を示す外観斜視図である。
図5図5は、図4のV-V断面線に沿った断面図であって、コンタクト収容室に収まるコンタクトとランスの関係及びランスとリテーナの関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るコネクタを図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態に係るコネクタの外観斜視図である。図2は、同コネクタのハウジングとコンタクトとが分離された状態を示す分解斜視図ある。図3は、同コネクタのハウジングにコンタクトが装着される過程を示す工程図であって、(1)はコンタクトの被係止部がランスの先頭部を通過する前、(2)はコンタクトの被係止部がランスの先頭部を通過中、(3)はランスの係止部とコンタクトの被係止部とが係止している状態である。図4は、同コネクタのハウジングにリテーナが装着された状態を示す外観斜視図である。図5は、図4のV-V断面線に沿った断面図であって、コンタクト収容室に収まるコンタクトとランスの関係及びランスとリテーナの関係を示す断面図である。なお、本発明の技術的範囲は、本実施形態のコネクタに限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更をし得るものである。また、説明中の指示方向は図中の方向定義に従う。
【0017】
本実施形態に係るコネクタ1は、図1図2に示されるように、箱状のハウジング10と、針状に延びるコンタクト20とを備える。ハウジング10は、非導電性の合成樹脂からなる射出成形体である。コンタクト20は、銅合金等導電性金属の圧延材の塑性加工品である。コンタクト20は、電線Wを装着した状態でハウジング10の後面から装着される。
【0018】
ハウジング10は、左右方向(幅方向)に沿って整列されたコンタクト収容室110を備える。コンタクト収容室110は、隣接するコンタクト収容室110との間に仕切り壁120が備わる。コンタクト収容室110の前方部分には、コンタクト20の接触部220が収容され、後方部分にはコンタクト20の接続部210及び連結部230が収容される。コンタクト収容室110の前方部分は、ハウジング10の上壁170で覆われている。上壁には前後方向に沿って溝部171が備わる。コンタクト収容室110の後方部分は、底壁130と左右の仕切り壁120、120とから成り、上面の開口部は、別部材のリテーナ30で覆われる。
【0019】
ハウジング10の前方は、前面160を有する嵌合部である。上壁170の下方には、コンタクト20の接触部220が備わり、図示しない相手方コンタクトに接続する。ハウジング10の後壁150には、コンタクト収容室に連なる開口部151が備わる。このようにハウジング10は、開口部151を備えた箱体で、幅方向に沿ってコンタクト収容室110が等間隔で配置されている。
【0020】
仕切り壁120は、図1図2に示されるように、ハウジング10の底壁130から所定高さで前後方向に延びている。仕切り壁120は、左側のコンタクト収容室110と、右側のコンタクト収容室110とを仕切る衝立状の壁である。仕切り壁120は、隣接するコンタクト収容室110に収容されたコンタクト20同士の電気的機械的影響を互いに遮断する。仕切り壁120は、後壁150の内側から前方に連なり中央付近で連続性が断たれ、断たれたその位置にランス121が備わる。
【0021】
ランス121は、図1図2に示されるように、仕切り壁120の途切れた部分に備わり、コンタクト収容室110に収容されたコンタクト20に対して左右側面に各々備わる。ランス121は、正面視T字状で縦方向に延びる支部121bと、上方に備わる傘状の先頭部121aとからなる。ランス121の高さは、仕切り壁120の高さと概ね等しく、支部121bの付け根を支点にして左右方向(幅方向)に弾性的に変位する。一つのランス121に注目すると、ランス121の左半分は左側のコンタクト20に係止し、右半分は右側のコンタクト20に係止する左右対称の構造体である。
【0022】
ランス121の先頭部121aは、図2に示されるように、平面視は、野球のベース状で前面に平坦な係止部122と、後方に山状のテーパー面123、123とを備える。
【0023】
コンタクト20は、図2に示されるように、細長い針状で、前方から順に接触部220、連結部230及び接続部210から成る。接触部220は、図示しない相手方コンタクトと接続する部分で箱状のボックス部220aと、内部に図示しない板バネ部とを備える。連結部230は、接触部220と接続部210との間に位置し、上方にU字状の張り出し部240が備わる。接続部210は、電線バレル部210aと、被覆バレル部210bとから成り電線Wに接続する。
【0024】
連結部230の張り出し部240は、図2に示されるように、コンタクト20の側壁部250から上方に張り出すように備わる。張り出し部240の前面は当接部240aであり、後面は被係止部240bである。
【0025】
<コンタクトの装着>
コンタクト20は、図3に示されるように、コンタクト収容室110に装着される過程でランス121を変位させる。ランス121は、コンタクト20に対して左右側面に一対備わる。コンタクト20の当接部240aがランス先頭部121aのテーパー面123に当接すると、コンタクト20の挿入に応じてランス121の先頭部121aは、コンタクト20から離れる方向に移動する。すなわち、ランス121の先頭部121aはコンタクト20の挿入方向と直交する幅方向に沿って変位する。コンタクト20の張り出し部240が先頭部121aに当接している間、ランス121の変位は最大になる。コンタクト20の張り出し部240が先頭部121aを通過すると、ランス121は元の位置に戻り、ランス121の先頭部121aの係止部122と、コンタクト20の被係止部240bとが係止する。このようにして、コンタクト20は、コンタクト収容室110の所定位置に収容される。そして、コンタクト20はハウジング10の前壁160で前方向への移動が規制され、ランス121で後方向への移動が規制される。また上方向への抜出しは、ハウジング10の上壁170及びランス121の先頭部121aによって規制される。
【0026】
<リテーナの装着>
ハウジング10の後方は、図4に示されるように、リテーナ30が装着される。リテーナ30は、左右方向に延びる板状の本体部300と、本体部300の端部から垂直下方に延びる左右一対の固定部310とからなる。固定部310には固定孔311が穿たれている。リテーナ30は、ハウジング10の所定位置に装着されると、ハウジング10側壁140に備わる係止突部141がリテーナ30の固定孔311に嵌り固定される。リテーナ30が所定位置に装着されると、ランス121の移動が規制されるのでランス121のずれによるコンタクト20の抜け出しが抑制されることとなる。
【0027】
リテーナ30が装着されたハウジング10の要部は、図5に示されるように、リテーナ30の裏面側に備わる突起部310がランス121の先頭部121aと先頭部121aとの間に挟まれるようにして嵌り込む。これにより、ランス121の左右方向の位置ずれが規制される。これにより、コンタクト20は所定位置で安定的に保持されるので、コンタクト20の抜け出しや位置ずれが抑制されたコネクタ1が得られる。
【0028】
<効果>
・ランス121の変位が左右方向(幅方向)のみなのでコンタクト20の係止が外れにくいコネクタ1が得られる。
・ランス121の梁が高さ方向に延びるので低背で前後方向に小型化されたコネクタ1が得られる。
・ランス121の変位が左右方向(幅方向)なので係止の位置ずれが生じにくいコネクタ1が得られる。
・ランス121の先頭部121aは、リテーナ30の突起部310で左右方向の移動が規制されているのでコンタクト20の保持が安定しているコネクタ1が得られる。
・ランス121は、仕切り壁120の連続性が断たれた位置に備わるので、ハウジング10の左右方向(幅方向)の小型化が可能なコネクタ1が得られる。
【符号の説明】
【0029】
1 コネクタ
10 ハウジング
110 コンタクト収容室
120 仕切り壁
121 ランス
121a 先頭部
121b 支部
122 係止部
123 テーパー部
130 底壁
140 側壁
141 突起部
150 後壁
151 後開口部
160 前壁
161 前開口部
170 上壁
171 スリット
20 コンタクト
210 接続部
220 接触部
230 連結部
240 張り出し部
240a 当接部
240b 被係止部
250 側壁部
30 リテーナ
300 本体部
310 固定部
311 固定孔
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5