(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021476
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂フィルム、粘着フィルム、半導体製造工程用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20220127BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220127BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220127BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220127BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20220127BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B32B27/32 Z
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/24
C08L23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125056
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK03J
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK25D
4F100AK54A
4F100AK54J
4F100AL02A
4F100AL03B
4F100AL03C
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL09A
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4F100AL09C
4F100AR00D
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4F100BA02
4F100BA03
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4F100BA10B
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4F100EJ862
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4F100YY00A
4J002BB151
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4J002BN183
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA04
4J004CB03
4J004FA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】帯電防止性に優れると共に、長時間のフィルムの生産においても、優れた外観を維持するフィルムの提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイトが10g/10分以下である高分子型帯電防止剤(A)及び10g/10分以上である高分子型帯電防止剤(B)を含有し、前記樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計に対し、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計が25~40質量%であり、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計に対し、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%含有する樹脂組成物からなる層を表裏の少なくとも一方の面の側に有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)を含有する樹脂組成物であり、当該樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25~40質量%であり、且つ、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%含有する樹脂組成物からなる層を、表裏の少なくとも一方の面の側に有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
高分子型帯電防止剤(A):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以下
高分子型帯電防止剤(B):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以上
【請求項2】
高分子型帯電防止剤(A)および高分子型帯電防止剤(B)が、ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物からなる層の表面抵抗値が1.0×1010Ω/□以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物からなる層をフィルムの表及び裏の面の側に有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記樹脂組成物からなる層の厚みが、フィルムの総厚みに対して5~50%の範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を積層してなる粘着フィルム。
【請求項7】
半導体製造工程に用いられる請求項6に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の粘着フィルム(テープ)、化粧シート等の基材に好適に用いられるポリオレフィン系樹脂フィルム、及びそのフィルムに粘着層を積層した粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されている。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムが用いられており、上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、PVC系、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。
【0005】
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進みこれまでは問題になっていなかった、静電気によるデバイス破壊の問題が顕在化してきている。また、特にエチレンビニルアルコール系シートやエチレンメタクリル酸アクリレート系のシートで切り屑(基材シートのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)のデバイスへの付着が問題になっている。そのため、半導体ウエハ加工用粘着テープにおいて、帯電防止性能が優れ、切り屑の発生が少ないポリオレフィン系シートへの要求が高まっている。
【0006】
例えば、特許文献2には、帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ない、ポリオレフィン系シート及びその基材シートを用いたポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープが開示されている。
また、特許文献3には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09-008111号公報
【特許文献2】特開2012-69999号公報
【特許文献3】特開2020-84143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2及び3に記載されている発明のように、樹脂組成物中に高分子型帯電性防止剤を多く含む場合には、長時間フィルムを生産した場合に、フィルムの高分子型帯電防止剤を含む層において経時によりスジ状の外観不良が生じてしまうという問題があった。
本発明は、かかる問題に鑑みて、帯電防止性に優れると共に、長時間のフィルムの生産においても、優れた外観を維持し、外観欠陥の抑制されたフィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、帯電防止性およびフィルム外観に優れた半導体製造工程用粘着フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、多くの量の帯電防止剤をフィルムに含有させて、長時間生産を行った場合においても、フィルムの帯電防止性能に優れ、且つ優れた外観特性を兼ね備える配合を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)を含有する樹脂組成物であり、当該樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25~40質量%であり、且つ、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%含有する樹脂組成物からなる層を、表裏の少なくとも一方の面の側に有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルム。
高分子型帯電防止剤(A):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以下
高分子型帯電防止剤(B):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイトが10g/10分以上
[2]
高分子型帯電防止剤(A)および高分子型帯電防止剤(B)が、ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体であることを特徴とする[1]に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
[3]
前記樹脂組成物からなる層の表面抵抗値が1.0×1010Ω/□以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
[4]
前記樹脂組成物からなる層をフィルムの表及び裏の面に有することを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
[5]
前記樹脂組成物からなる層の厚みが、フィルムの総厚みに対して5~50%の範囲内であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を積層してなる粘着フィルム。
[7]
半導体製造工程に用いられる請求項7に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムを用いることで、帯電防止性に優れると共に、長時間のフィルムの生産においても、優れた外観を維持したフィルムを提供することが可能となる。また、本発明により、帯電防止性およびフィルム外観に優れた半導体製造工程用粘着フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0013】
本発明の1つの実施態様は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)を含有する樹脂組成物であり、当該樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25~40質量%であり、且つ、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%含有する樹脂組成物からなる層を、表裏の少なくとも一方の面の側に有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムである(以下「本発明のフィルム」ともいう)。
高分子型帯電防止剤(A):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以下
高分子型帯電防止剤(B):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以上
【0014】
1. 樹脂組成物A
本発明のフィルムに使用する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)を含有し、当該樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25~40質量%であり、且つ、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%する。以下、本発明のフィルムに使用する樹脂組成物を「樹脂組成物A」ともいう。
【0015】
<各種樹脂>
樹脂組成物Aには、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂が必須成分として含まれる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーから選択される1種以上の樹脂が、入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性等の観点から、好適に用いられる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0017】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0018】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでも良いし、互いが共重合されているものでも良い。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0019】
前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
また、スジ状の外観不良を削減する観点からすれば、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値がメルトフローレイトは、10g/10分以下であることが好ましい。10g/10分以下であれば、後述する帯電防止剤を上記の樹脂に添加した際の分散性の改善、流動性の違いによるスジ状の欠陥の発生を削減することができると推測している。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは80~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは100~1800MPaの範囲内である。
【0021】
上記、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として、スチレン系エラストマーを用いることも可能である。
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0022】
本発明に用いられる、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーはそれぞれ単独の樹脂を用いてもよいし、それらを2種以上混合して用いてもよい。得られるフィルムへの柔軟性付与の観点から、オレフィン系エラストマーおよび/もしくはスチレン系エラストマーを併用することがより好ましい。
【0023】
前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー以外の樹脂として、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等を添加することもできる。
【0024】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0025】
<高分子型帯電防止剤>
樹脂組成物Aには、以下に示す高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)が必須成分として含まれる。
高分子型帯電防止剤(A):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以下
高分子型帯電防止剤(B):
JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したメルトフローレイト(MFR)が10g/10分以上
【0026】
また、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂、高分子型帯電防止剤(A)及び高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25~40質量%であり、且つ、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合に、高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%含有することが必要である。
【0027】
また、高分子型帯電防止剤(A)のみを25~40質量%の含有量(ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂と高分子型帯電防止剤(A)の含有量の合計を100質量%とする)で用いた場合には、高分子型帯電防止剤(A)の190℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイトが10g/10分以下であることから、MFRが低いことに起因する前述した各種樹脂への分散性が不十分となり、長時間の生産を行った際に帯電防止剤の分散不良に起因するスジ状の欠陥が発生することがある。
高分子型帯電防止剤(B)のみを25~40質量%の含有量(ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とする)で用いた場合には、高分子型帯電防止剤(B)の190℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイトが10g/10分以上であり、MFRが高いことで帯電防止剤自体の流動性が良く、長時間の生産を行った際に高分子型帯電防止剤(B)の流れ方向のムラが発生しやすくなり、スジ状の欠陥が発生することがある。
上記のような高分子型帯電防止剤の分散性や流動性に起因するスジ状の外観欠陥の解決のために、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の両方を併用する必要がある。
【0028】
高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の合計の含有量が25質量%以上であれば、フィルムに十分な帯電防止性能を付与することが可能となり、40質量%以下とすることで帯電防止性能とフィルムの美麗な外観を維持することが可能となる。より好ましくは27~40質量%、さらに好ましくは29~40質量%の範囲内である
【0029】
また、高分子型帯電防止剤(A)と高分子型帯電防止剤(B)の含有量の合計を100質量%とした場合の、それぞれの含有量としては、高分子帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%とすることが好ましい。高分子型帯電防止剤(A)を40~95質量%、高分子型帯電防止剤(B)を5~60質量%とすることで、高分子型帯電防止剤(A)を各種樹脂に均一に分散させつつ、高分子型帯電防止剤(B)の流動性に起因する流れムラを抑制することが可能となる。より好ましくは、高分子帯電防止剤(A)を50~88質量%、高分子型帯電防止剤(B)を12~50質量%、さらに好ましくは高分子帯電防止剤(A)を55~86質量%、高分子型帯電防止剤(B)を14~45質量%である。
【0030】
高分子型帯電防止剤としては公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
【0031】
疎水性ブロックには、例えば、ポリオレフィンブロックを挙げることができ、ポリオレフィンブロックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなるブロック等を挙げることができる。ここで、ポリオレフィンブロックは、フッ素変性されていてもよい。また、疎水性ブロックは、疎水性であればよく、例えば、アルキレン基や芳香族基等の疎水性基を有している疎水性アミン、疎水性エステル、疎水性アミド、疎水性イミド、及び、疎水性エステルアミド等であってもよい。また、疎水性ブロックは、例えば、アルキル基等の疎水性の側鎖を有していてもよい。
【0032】
ポリオレフィンブロック等の疎水性ブロックは、その両末端にカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等の極性基を有している。疎水性ブロックが両末端に有している極性基を、親水性ブロックの両末端に存在するカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等に重合させるか、或いは、ジイソシアネートやジグリシジルエーテル等によって架橋させることにより、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を得ることができる。
【0033】
親水性ブロックには、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエーテル含有親水性ポリマーブロック、カチオン性ポリマーブロック及びアニオン性ポリマーブロックを挙げることができる。ポリエーテルブロックは、典型的には、ポリエーテルジオールであり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体などを挙げることかできる。ポリエーテル含有親水性ポリマーブロックとは、ポリエーテルセグメントを有するものであり、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド及びエーテルウレタン等を挙げることができる。また、ポリエーテルブロック及びポリエーテルのセグメントは、直鎖状であってもよく、分岐していてもよい。また、カチオン性ポリマーブロックには、BF4
-、PF6
-、BF3Cl-、及び、PF5Cl-等の超強酸アニオンを対イオンとする4級アンモニウム塩構造、又は、ホスホニウム塩構造が、非イオン性分子鎖で隔てられているカチオン性ポリマーブロックを挙げることができる。また、アニオン性ポリマーブロックには、スルホニル基のみが塩となったスルホニル基を有する芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、ジオール又はポリエーテとが共重合したポリマーブロックを挙げることができる。
【0034】
以上のような構造を示す高分子型帯電防止剤のうち、例えば、ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体、ポリエーテルと疎水性エステルアミドとのブロック共重合体であるポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルと疎水性アミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミド、又は、ポリエーテルと疎水性アミドイミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミドイミド、或いは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体をより好ましく用いることができる。また、例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合、高分子型帯電防止剤には、ポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点からポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体に例示される、特開2008-274031号公報に記載されたポリオレフィン部及び親水性ポリマー部の各々のブロックが繰り返し交互に結合した構造を有するブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0035】
なお、高分子型帯電防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に帯電防止性を向上させるために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤及びイオン性液体等が配合されていてもよい。
【0036】
ポリエーテルエステルアミドの市販品としては、富士化成工業株式会社製のTPAEが挙げられる。ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体の市販品としては、三洋化成工業社製のペレスタット300、ペレスタット230及びペレクトロンPVL、ぺレクトロンPVH等が挙げられる。
【0037】
<その他成分>
樹脂組成物Aには、前述したポリオレフィン系樹脂や高分子型帯電防止剤以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、前述した高分子型帯電防止剤以外の帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0038】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0039】
2.ポリオレフィン系樹脂フィルム
本発明のフィルムは、前述した各種樹脂と高分子型帯電防止剤とを含む樹脂組成物Aからなる層を表裏のいずれか一方の面の側に有するポリオレフィン系樹脂フィルムである。
前述した各種樹脂と高分子型帯電防止剤を有する層を表裏のいずれか一方の面に有することで、得られるポリオレフィン系樹脂フィルムに良好な帯電防止性能を付与することが可能となる。
【0040】
表裏のいずれか一方の面の側にのみ樹脂組成物Aからなる層を設けるか、表裏の両面の側ともに樹脂組成物Aからなる層を設けるかは適宜用途に応じて決めることができる。得られるフィルムへの帯電防止性能の付与や、フィルムへの埃やその他浮遊物等の異物の付着を抑制する観点から、表裏の両面ともに該樹脂組成物からなる層を設けることが好ましい。
【0041】
本発明のフィルムは、樹脂組成物Aからなる層を、表裏の少なくとも一方の面の側に有するが、その基本的な構成は次の通りである。
(1)樹脂組成物Aからなる層、及びポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物(以下「樹脂組成物B」ともいう)からなる層を備える2層フィルムの構成。
(2)樹脂組成物Aからなる層(表層)、樹脂組成物Bからなる層(中間層)、及び樹脂組成物Aからなる層(裏層)を備える3層フィルムの構成。
(3)樹脂組成物Aからなる層(表層)、樹脂組成物Bからなる層(中間層)、及び樹脂組成物Bからなる層(裏層)を備える3層フィルムの構成。
ここで、(2)の3層フィルムの構成において、表層と裏層を構成する樹脂組成物Aは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、(3)の3層フィルムの構成において、中間層と裏層を構成する樹脂組成物Bは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、(2)、(3)の構成においては、中間層が2以上の多層から構成されていてもよい。その場合には、(2)、(3)の構成は、3層以上からなるフィルム構成も包含する。
【0042】
上記の樹脂組成物Bは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物であるが、その詳細は、樹脂組成物Aについて詳述した内容と同様である。
即ち、樹脂組成物Bにおいても、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーから選択される1種以上の樹脂が好適に用いられる。また、樹脂組成物Bには、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として、スチレン系エラストマーを含有させることも可能である。
また、樹脂組成物Bには、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー以外の樹脂として、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等を添加することもできる。
更に、樹脂組成物Bには、ポリオレフィン系樹脂等以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
樹脂組成物Bは、高分子型帯電防止剤を含有しても含有しなくてもよいが、コスト面からは高分子型帯電防止剤を含有しないことが好ましい。
【0043】
本発明のフィルムの1つの側面は、2以上の層を有するポリオレフィン系樹脂フィルムであって、少なくとも1つの層が樹脂組成物Aからなり、樹脂組成物Aからなる層を、該ポリオレフィン系樹脂フィルムの表裏の少なくとも一方の面側に有する、ポリオレフィン系樹脂フィルムである。
ここで、少なくとも1つの層以外の層は、樹脂組成物Bからなるのが好ましい。
【0044】
また、樹脂組成物Aからなる層を設けた面の表面抵抗値としては、1.0×1010Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値が1.0×1010Ω/□以下であれば、優れた帯電防止性能を有し、フィルムの生産時や続く印刷層、粘着層を積層する工程においても埃やその他浮遊物等の異物が付着しにくくなるため好ましい。より好ましくは9.0×109Ω/□以下、さらに好ましくは8.0×109Ω/□以下である。
本発明で行われる表面抵抗値の測定は、JISK6911に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、2重リング法の電極を用いて行うものである。
【0045】
また、本発明のフィルムの厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、250μm以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。本発明のフィルムの厚みは、より好ましくは40~230μm、さらに好ましくは50~210μmである。
【0046】
また、本発明のフィルムの引張弾性率が、50~1500MPaの範囲内であることが好ましい。50MPa以上であればフィルムに十分な剛性が付与されていることから、取り扱い性を良好に保つことが可能となり、1500MPa以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの加工性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは70~1400MPa、さらに好ましくは90~1300MPaの範囲内である。
【0047】
本発明のフィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0048】
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の樹脂組成物からなる層を表裏の一方の面のみとすることも、表裏の両面とすることも可能となる。
さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで全層が同一の樹脂組成物からなる実質的に単層のフィルムを得ることも可能となる。
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0049】
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0050】
また、樹脂組成物Aからなる層の厚みが、フィルム全体の厚みの5~50%の範囲内とすることが好ましい。5%以上とすることで、高分子型帯電防止剤を含有する層の帯電防止性能を十分に発現させることが可能となり、50%以下とすることで、フィルムを生産する際の製膜性を良好に保つことができ、経済性の観点からも好ましい。より好ましくはフィルム全体の厚みの5~45%、さらに好ましくは5~40%の範囲内である。
【0051】
3.粘着フィルム
本発明のフィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
【0052】
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0053】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0054】
本発明のフィルムは、帯電防止性に優れると共に、長時間のフィルムの生産においても、優れた外観を維持し、外観欠陥の抑制されたフィルムである。
さらに、本発明のフィルムに粘着層を積層することで粘着フィルムを得ることも可能であり、その粘着フィルムを半導体製造工程用途に好適に用いることができる。
【実施例0055】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0056】
[使用材料]
<ポリオレフィン系樹脂>
ホモポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「MA3U」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:15.0g/10分、融点:168℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
ランダムポリプロピレン:
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.5g/10分、融点:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
オレフィン系エラストマー:
日本ポリプロ製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:6.0g/10分、融点:127℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
低密度ポリエチレン:
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.0g/10分、融点:106℃、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
スチレン系エラストマー:
クラレ社製、「ハイブラー7311F、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:2.0g/10分)
【0057】
<高分子型帯電防止剤>
高分子型帯電防止剤(A)(ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体):
三洋化成工業社製、「ペレクトロンPVH、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:8.0g/10分)」
高分子型帯電防止剤(B)(ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体):
三洋化成工業社製、「ペレクトロンPVL、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:15.0g/10分)」
【0058】
<樹脂組成物の調製>
上記のポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤を合計で100質量部となるよう配合し、ドライブレンドにより混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用の樹脂組成物を作成した。
【0059】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、各押出機の押出機温度を190~210℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約80μmの2種3層もしくは3種3層となる複層のフィルムを得た。
また、本発明では、得られたフィルムの鏡面上の冷却ロール側の面を表層と表現している。
【0060】
[高分子型帯電防止剤の含有量]
各層に含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の合計量とそれぞれの含有量から計算し、算出した。
【0061】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。また、得られたフィルムの断面観察の結果から、設定通りの厚みになっていることを確認した。
【0062】
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0063】
[フィルムの外観]
前述した製膜方法でフィルムを生産した際の、1時間経過後のフィルムの外観を目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:フィルムにスジ状の結果がなく、外観良好
○:フィルムに僅かにスジ状の欠陥は見られるものの、使用可能
×:フィルムに顕著なスジ状の欠陥が見られるため、使用不可
【0064】
[表面抵抗値]
JISK6911に準拠したダイアインスツルメンツ社製ハイレスタUP高抵抗率計(MCP-HT450,電極:2重リング法(URSプローブ)を用い、表面抵抗値を測定した。また、500Vの電圧で10秒後の値を測定値として採用した。
【0065】
[実施例1]
表層、中間層、裏層に用いるポリオレフィン系樹脂としてランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および高分子型帯電防止剤(B)を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は50質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は50質量%であった。裏層のみに高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は5%であった。
また、フィルムに含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が、所定の含有量の範囲内であったことから、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥は確認されず、外観に優れるフィルムを得ることができた。
得られたフィルムの裏層に十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は3.3×109Ω/□を示し、1.0×1010Ω/□を下回ることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
【0066】
[実施例2]
ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例1と同様に行った。
各層の厚みは、表層が16μm、中間層が48μm、裏層が16μmであり、各厚みの比率は、表層が20%、中間層が60%、裏層が20%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は50質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は50質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は50質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は50質量%であった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は40%であった。
また、フィルムに含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が、所定の含有量の範囲内であったことから、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥は確認されず、外観に優れるフィルムを得ることができた。
得られたフィルムの表層および裏層の両層共に十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表層側の表面抵抗値は1.7×109Ω/□、裏層側の表面抵抗値は1.7×109Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回ることから、表裏共に帯電防止性能にも優れていることが確認された。
【0067】
[実施例3]
ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とした以外は、実施例1と同様に行った。
各層の厚みは、表層が16μm、中間層が48μm、裏層が16μmであり、各厚みの比率は、表層が20%、中間層が60%、裏層が20%であった。
該フィルムの裏層側に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は67質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は33質量%であった。裏層のみに高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は20%であった。
また、フィルムに含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が、所定の含有量の範囲内であったことから、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥は確認されず、外観に優れるフィルムを得ることができた。
得られたフィルムの裏層に十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、裏層側の表面抵抗値は3.4×109Ω/□を示し、1.0×1010Ω/□を下回ることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
【0068】
[実施例4]
オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例2と同様に行った。
各層の厚みは、表層が16μm、中間層が48μm、裏層が16μmであり、各厚みの比率は、表層が20%、中間層が60%、裏層が20%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は57質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は43質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は57質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は43質量%であった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は40%であった。
また、フィルムに含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が、所定の含有量の範囲内であったことから、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、僅かにスジ状の外観欠陥が認められたものの使用は可能であり、外観の良好なフィルムを得ることができた。
得られたフィルムの表層および裏層の両層共に十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表層側の表面抵抗値は1.4×109Ω/□、裏層側の表面抵抗値は1.4×109Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回ることから、表裏共に帯電防止性能にも優れていることが確認された。
【0069】
[実施例5]
オレフィン系エラストマー、低密度ポリエチレン、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例2と同様に行った。
各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの表層側に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は71質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は29質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は71質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は29質量%であった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は10%であった。
また、フィルムに含まれる高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が、所定の含有量の範囲内であったことから、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥は確認されず、外観に優れるフィルムを得ることができた。
得られたフィルムの表層および裏層の両層共に十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表層側の表面抵抗値は1.7×109Ω/□、裏層側の表面抵抗値は2.1×109Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回ることから、表裏共に帯電防止性能にも優れていることが確認された。
【0070】
[比較例1]
ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例5と同様に行った。
各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は50質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は50質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は50質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は50質量%であった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は10%であった。
本フィルムは、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥は確認されず、外観に優れるフィルムであったものの、高分子型帯電防止剤(A)および(B)の含有量が樹脂組成物中の20質量%であり、所定の量を含んでおらず、表層側の表面抵抗値は3.2×1010Ω/□、裏層側の表面抵抗値は2.2×1010Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を上回り、表裏共に帯電防止性能に劣っていることが確認された。
【0071】
[比較例2]
ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例5と同様に行った。
各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は100質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は100質量%であり、高分子型帯電防止剤(A)を含まないものであった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は10%であった。
本フィルムは、高分子型帯電防止剤(B)のみを含有するフィルムであったため、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥が顕著に確認され、外観に劣るものであった。
表層側の表面抵抗値は5.3×109Ω/□、裏層側の表面抵抗値は5.2×109Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回るものの、優れた外観と帯電防止性能を両立していないことが確認された。
【0072】
[比較例3]
オレフィン系エラストマー、低密度ポリエチレン、高分子型帯電防止剤(A)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例5と同様に行った。
各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は100質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は100質量%であり、高分子型帯電防止剤(B)を含まないものであった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は10%であった。
本フィルムは、高分子型帯電防止剤(A)のみを含有するフィルムであったため、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥が顕著に確認され、外観に劣るものであった。
表層側の表面抵抗値は4.0×109Ω/□、裏層側の表面抵抗値は4.0×109Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回るものの、優れた外観と帯電防止性能を両立していないことが確認された。
【0073】
[比較例4]
ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、表層および裏層にも高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例5と同様に行った。
各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmであり、各厚みの比率は、表層が5%、中間層が90%、裏層が5%であった。
該フィルムの表層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は56質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は44質量%であり、裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は56質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は44質量%であった。表層および裏層の両層に高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は10%であった。
本フィルムは、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を樹脂組成物中に45質量%含有し、所定の量を上回るために、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥が顕著に確認され、外観に劣るものであった。
表層側の表面抵抗値は8.0×108Ω/□、裏層側の表面抵抗値は8.1×108Ω/□を示し、いずれも1.0×1010Ω/□を下回るものの、優れた外観と帯電防止性能を両立していないことが確認された。
【0074】
[比較例5]
オレフィン系エラストマー、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を表1に記載の量とし、裏層のみに高分子型帯電防止剤を配合した以外は、実施例3と同様に行った。
各層の厚みは、表層が16μm、中間層が48μm、裏層が16μmであり、各厚みの比率は、表層が20%、中間層が60%、裏層が20%であった。
該フィルムの裏層に用いた高分子型帯電防止剤の合計量を100質量%とした際の、高分子型帯電防止剤(A)の含有量は33質量%、高分子型帯電防止剤(B)の含有量は67質量%であった。裏層のみに高分子型帯電防止剤を含有していることから、帯電防止剤を含有する層の厚みの比率は20%であった。
本フィルムは、高分子型帯電防止剤(A)および(B)を樹脂組成物中に30質量%含有し、所定の量を含んでいるものの、高分子型帯電防止剤中の高分子型帯電防止剤(B)の含有量が50質量%を超える67質量%であったため、フィルムの生産開始から1時間経過後の外観には、スジ状の外観欠陥が顕著に確認され、外観に劣るものであった。
裏層側の表面抵抗値は1.8×109Ω/□、を示し、1.0×1010Ω/□を下回るものの、優れた外観と帯電防止性能を両立していないことが確認された。
【0075】
【0076】
[実施例6]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
作成したセパレータの粘着剤層側の面を本フィルムの冷却ロール側の面に貼り合わせることで本発明のフィルムと粘着剤層とが積層された粘着フィルムを得た。
また、外観および帯電防止性能に優れる本粘着フィルムを半導体製造工程用粘着フィルムとして用いることで、外観悪化による歩留まりの低下を抑制でき、且つ埃やその他浮遊物等の異物の付着を抑制でき、半導体製造工程における不具合を低減させることが可能となる。
【0077】
[産業上の利用可能性]
本発明のフィルムを用いることで、帯電防止性に優れると共に、長時間のフィルムの生産においても、優れた外観を維持したフィルムを提供することが可能となる。また、本発明により、帯電防止性およびフィルム外観に優れた半導体製造工程用粘着フィルムを提供することが可能となる。