IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NSCの特許一覧

<>
  • 特開-基板封止用治具 図1
  • 特開-基板封止用治具 図2
  • 特開-基板封止用治具 図3
  • 特開-基板封止用治具 図4
  • 特開-基板封止用治具 図5
  • 特開-基板封止用治具 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021482
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】基板封止用治具
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20220127BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/1339 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125065
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】509154420
【氏名又は名称】株式会社NSC
(72)【発明者】
【氏名】今西 卓也
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 龍治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088FA18
2H088FA25
2H088FA28
2H088FA30
2H088HA14
2H189DA73
2H189EA04Y
2H189FA54
2H189FA79
2H189FA90
2H189FA91
2H189HA11
2H189HA12
2H189LA15
(57)【要約】
【課題】封止剤の塗布および硬化作業をスムーズに行うための基板封止用治具を提供する。
【解決手段】本発明に係る遮光治具18は、複数の液晶パネル50を垂直に保持するように構成された保持ケース12の開口部34に配置される。遮光治具18は、額縁状のフレーム部34と遮蔽部36を備えている。遮蔽部36は、フレーム部34の開口部において、液晶パネル50の隙間に対応する位置に液晶パネル50の主面と接するように設けられている。遮蔽部36は、円筒部42および支柱部40を有している。円筒部42は、液晶パネル50と接するように構成される。支柱部40は、円筒部42に挿通され、かつ、フレーム部34に固定されている。さらに、円筒部42は、支柱部40に対して回転可能に支持されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の隙間を設けて複数の貼り合わせ基板を垂直に保持するように構成されたケースの開口部に配置される基板封止用治具であって、
額縁状のフレーム部と、
前記フレーム部の開口部において、前記貼り合わせ基板の隙間に対応する位置に前記貼り合わせ基板の主面と接するように設けられた複数の遮蔽部と、
を備えており、
前記遮蔽部は、前記貼り合わせ基板と接する円筒部と、
前記円筒部に挿通され、かつ、前記フレーム部に固定される支柱部と、
を有しており、
前記円筒部は、前記支柱部に対して回転可能に支持されている基板封止用治具。
【請求項2】
前記円筒部は、周面が弾性部材で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の基板封止用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の貼り合わせ基板の端面への封止剤の塗布に用いる基板封止用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイは、近年、薄型化の要請がますます強くなっている。フラットパネルディスプレイの製造プロセスでは、2枚のガラス基板で液晶層等の画像表示に必要な機能層を挟持することによって製造される。フラットパネルディスプレイを薄型化する方法としては、フラットパネルディスプレイモジュールを製造した後に、エッチングプロセスによってガラス基板を薄型化する方法がある。
【0003】
エッチングプロセスは、ガラス基板をエッチング液と接触させるウェットエッチング処理が一般的に採用されている。ウェットエッチング処理は、枚葉式エッチングと浸漬式エッチングに大別される。枚葉式エッチングは、搬送されているガラス基板に対してスプレイノズル等を用いてエッチング液を噴射する方式である。浸漬式エッチングは、複数のガラス基板が保持されたケースを、エッチング液が収容されたエッチング槽に浸漬することによって処理する方式である。
【0004】
上述のようなエッチングプロセスを行う場合、2枚のガラス基板の隙間からエッチング液が侵入し、機能層が汚損するおそれがある。そこで、エッチングプロセスの前にフラットパネルディスプレイモジュールの端面に封止剤を塗布する封止作業が必要となる(例えば、特許文献1参照)。封止剤は、エッチング液に耐性を有する紫外線硬化型樹脂が使用され、フラットパネルディスプレイモジュールがエッチング液と接触しても、端面からモジュール内部にエッチング液が侵入することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-013489
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
封止剤を塗布するための塗布装置も存在するが、塗布可能な基板サイズが限定されていたり、基板端面の幅にばらつきがあったりするため、依然として封止剤の塗布作業は作業員が行うこともある。作業員は、ディスペンサ等を用いて液晶パネルの端面に封止剤を塗布する。しかしながら、端面の塗布領域の幅(フラットパネルディスプレイモジュールの板厚)は、1mm未満であり、端面に正確に封止剤を塗布するためには、作業員の高い技量が要求される。このため、作業員が封止剤を塗布しやすいように液晶パネルを保持する機構が求められていた。
【0007】
また、封止剤を塗布した後に、封止剤を硬化させるために紫外線を照射する必要があるが、紫外線は液晶層に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、紫外線を照射する際に、遮光マスク等を使用して、液晶層を保護する必要があった。しかし、封止剤を塗布した後に、遮光マスクをセッティングすることは作業効率の低下につながる。また、液晶パネルの板厚にはわずかなばらつきがあるため、遮光マスクを配置しても完全に紫外線を遮光できないことがあった。このような封止作業を改善するために、塗布作業から紫外線照射処理までをスムーズに行うために適した治具が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、封止剤の塗布および硬化作業をスムーズに行うための基板封止用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板封止用治具は、所定の隙間を設けて複数の貼り合わせ基板を垂直に保持するように構成されたケースの開口部に配置される。基板封止用治具は、額縁状のフレーム部と遮蔽部を備えている。遮蔽部は、フレーム部の開口部において、貼り合わせ基板の隙間に対応する位置に貼り合わせ基板の主面と接するように設けられている。遮蔽部は、円筒部および支柱部を有している。円筒部は、貼り合わせ基板と接するように構成される。支柱部は、円筒部に挿通され、かつ、フレーム部に固定されている。さらに、円筒部は、支柱部に対して回転可能に支持されている。
【0010】
基板封止用治具は、遮蔽部が貼り合わせ基板の主面と接するように構成されている。このため、貼り合わせ基板を垂直状態に保持し、作業員が封止剤の塗布作業を行いやすくなる。また、封止剤が貼り合わせ基板の端面から垂れた場合でも遮蔽部よりも下方に封止剤が垂れることが防止される。さらに、封止剤の塗布後の硬化処理においても、遮蔽部が貼り合わせ基板と密着しているため、貼り合わせ基板の機能層に紫外線が照射されることが防止できる。
【0011】
また、円筒部は、周面が弾性部材で被覆されていることが好ましい。弾性部材で被覆することにより、保持ケース内に貼り合わせ基板を収納する際に、貼り合わせ基板が傷つくことが防止される。さらに、弾性部材により遮蔽部と貼り合わせ基板の密着性が向上し、遮光能力がさらに向上する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、封止剤の塗布および硬化作業をスムーズに行うための基板封止用治具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に基板塗布装置の構成を示す図である。
図2】液晶パネルを保持する保持ケースを示す図である。
図3】保持ケースの底面の構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基板塗布装置の昇降装置を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基板封止用治具を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板封止用治具の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここから、図面を用いて本発明の一実施形態に係る端面封止用治具について説明する。図1(A)および図1(B)は、本発明の一実施形態に係る基板封止用治具が使用される基板塗布装置10を示す図である。基板塗布装置10は、保持ケース12、架台14、昇降部16および遮光治具18を備えている。基板塗布装置10は、保持ケース12内で垂直に保持された液晶パネル50の端面に封止剤を塗布するために使用される。
【0015】
保持ケース12は、図2および図3に示すように、所定の間隔で複数の液晶パネル50を内部に保持するように構成される発泡ポリウレタン製の箱状体である。保持ケース12は、本体部20、底面部22および開口部24を備えている。本体部20は、保持ケース12の側面部を構成している。
【0016】
底面部22は、保持ケース12の底面を構成しており、ベース部221および基板保持部222を有している。ベース部221は、底面部22の周縁部に位置する領域であり、本体部20と接続されている。
【0017】
基板保持部222は、底面部22の中央部に配置されており、ベース部221に周囲を囲まれている。基板保持部222は、図3(A)に示すように、ベース部221に対して着脱自在に構成される。基板保持部222は、液晶パネル50の端部が挿入される溝部26を有している。溝部26は、図3(B)に示すように、基板保持部222の表面に所定の間隔で形成された凹状の有底溝である。溝部26は、基板保持部222の長さ方向の全域に沿って形成されている。
【0018】
開口部24は、底面部22と対向する保持ケース12の上部において液晶パネル50を内部に収納するために形成されている。
【0019】
架台14は、上部に保持ケース12を載置するように構成される。架台14は、作業員が保持ケース12に収納された液晶パネル50の端面に封止剤を塗布しやすい高さに調整される。
【0020】
昇降部16は、保持ケース12の下部に配置されており、基板保持部222を昇降させるように構成されるジャッキ装置である。昇降部16は、図4に示すように、昇降アーム30および昇降ステージ32を有している。
【0021】
昇降アーム30は、図1(A)および図1(B)に示すように、伸縮することによって昇降ステージ32を上下に移動させる。昇降ステージ32は、昇降アーム30の上部に配置されており、基板保持部222が載置される。
【0022】
遮光治具18は、保持ケース12の開口部24に載置されるように構成されており、フレーム部34および遮蔽部36を備えている。フレーム部34は、図5(A)に示すように、額縁状の矩形形状をしており、遮光治具18の外周部を形成している。フレーム部34は、鉄やアルミニウム等の金属部材で構成される。
【0023】
遮蔽部36は、フレーム部34の内部において液晶パネル50が通過できるスリットを形成するように構成され、図5(B)に示すように、支柱部40および円筒部42を備えている。支柱部40は、遮光治具18の長さ方向にわたって設けられる円柱部材である。支柱部40は、液晶パネル50の配列間隔に応じて複数配置されており、ビス等の固定部材でフレーム部34に固定されている。
【0024】
円筒部42は、支柱部40の外周面に取り付けられる円筒部材である。支柱部40は、円筒部42の内部に挿通されている。円筒部42は、支柱部40に対して回転可能に支持されている。また、円筒部42の内径は、支柱部40の外径よりも大きく、円筒部42と支柱部40の間には隙間が設けられている。
【0025】
円筒部42の外周面は、ゴム44で被覆されている。ゴム44は、円筒部42の外周面に密着するように設けられている。ゴム44としては、熱収縮ゴムチューブ等を使用することで、円筒部42に装着させることが可能である。
【0026】
液晶パネル50の端面に封止剤を塗布する際は、図6(A)に示すように、遮光治具18が開口部24に配置された状態で液晶パネル50を保持ケース12内に導入する。液晶パネル50は、保持ケース12の上部から遮蔽部36の間に形成されたスリットを通過しながら保持ケース12の内部に導入される。液晶パネル50は、保持ケース12に導入されると下端部が溝部26に挿入される。さらに、液晶パネル50は、図6(B)に示すように、主面の上部が円筒部42によって挟持されることで垂直状態に保持される。
【0027】
円筒部42の外周面はゴム44で被覆されているため、液晶パネル50を保持ケース12に導入する際に主面が傷つくことが防止される。また、円筒部42は、液晶パネル50と接触すると、支持部40の軸回りに回転するため、液晶パネル50がスムーズに保持ケース12内に導入される。さらに、円筒部42と支持部40の間には隙間が設けられているので、液晶パネル50の配列方向に円筒部42がスライドすることが可能であり、板厚にばらつきが存在する液晶パネル50であっても、スリットを通過することが可能である。
【0028】
液晶パネル50が保持ケース12に導入されると、液晶パネル50の端面に封止剤が塗布される。封止剤は、公知の光硬化型樹脂が使用される。封止剤を塗布する際は、昇降部16を操作して、作業者が塗布しやすい高さに液晶パネル50の端面が位置するように調整する。封止剤は、シリンジ等の塗布装置を用いて、液晶パネル50の上部端面において、液晶パネル50を構成する2枚のガラス基板501,502の間に形成される凹部52に塗布される。円筒部42が液晶パネル50の主面を挟持していることにより、封止剤が液晶パネル50の端面から主面に垂れた場合でも、円筒部42との接触部よりも下方に垂れることが防止され、拭き取り作業等により封止剤を容易に除去することが可能になる。
【0029】
封止剤を塗布した後は、紫外線を照射し、封止剤を硬化させる。封止剤の硬化処理は、液晶パネル50を保持した状態で紫外線照射装置に保持ケース12を導入する。紫外線照射装置は、保持ケース12の上部から紫外線を照射し、封止剤を硬化させる装置である。また、硬化処理の前に昇降部16を操作して、遮光治具18より上部に液晶パネル50が露出している領域が最小限になるように調整する。液晶パネル50の液晶素子は、紫外線によって表示不良等の悪影響が発生するおそれがあるが、液晶パネル50は、保持ケース12および遮光治具18で保護されているため、液晶パネル50の上端部以外の領域に紫外線が照射されることが防止される。特に、ゴム44が液晶パネル50と接触していることにより密着性がさらに向上し、遮光能力がさらに向上する。
【0030】
この基板塗布装置10を用いることで、封止剤の塗布後に保持ケース12に液晶パネル50を導入したまま硬化処理が行えるため、封止作業の作業効率が向上する。遮光治具18は、円筒部42と支柱部40の間に隙間があるため、液晶パネル50の板厚に誤差があっても、円筒部42が液晶パネル50の配列方向に移動できるため、遮蔽部36と液晶パネル50の間に隙間が生じることが防止され、好適に紫外線を遮光することが可能になる。さらに、ゴム44が弾性変形することで、液晶パネル50と遮蔽部36の隙間を埋めることができるので、より高い遮光能力が発揮される。
【0031】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
10-基板塗布装置
12-保持ケース
14-架台
16-昇降部
18-遮光治具
20-本体部
22-底面部
24-開口部
26-溝部
34-フレーム部
36-遮蔽部
50-液晶パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6