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  • 特開-車両用灯具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021516
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/27 20180101AFI20220127BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20220127BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20220127BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20220127BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220127BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20220127BHJP
【FI】
F21S41/27
F21S41/16
F21S41/43
F21S41/32
F21Y115:30
F21W102:135
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125123
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 秀丸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 喜郎
(57)【要約】
【課題】レーザー光源を用いる場合においてIEC68025に準拠するクラスをより抑えることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具1は、ロービーム配光を形成するためのレーザー光を放出するレーザー光源11と、レーザー光源11からのレーザー光を反射するリフレクタ21と、リフレクタ21により反射されたレーザー光を出射する光学レンズ22と、リフレクタ21と光学レンズ22との間に配置されて、ロービーム配光にカットオフラインを形成するためのシェード23とを備え、光学レンズ22から200mmの距離において、レーザー光源11からのレーザー光によって形成されるアパーレント光源ALSに張る視角が5mrad以上とされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム配光を形成するためのレーザー光を放出するレーザー光源と、
前記レーザー光源からのレーザー光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタにより反射されたレーザー光を出射する光学レンズと、
前記リフレクタと前記光学レンズとの間に配置されて、前記ロービーム配光にカットオフラインを形成するためのシェードと、を備え、
前記光学レンズから200mmの距離において、前記レーザー光源からのレーザー光によって形成されるアパーレント光源に張る視角が5mrad以上とされている
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記アパーレント光源は、車両上下方向よりも車幅方向に長く形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記アパーレント光源は、前記レーザー光源よりも8倍以上の面積を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青色域のレーザー光を放出するレーザーダイオードとレーザーダイオードからのレーザー光を異なる波長の光(例えば黄色光)に変換する波長変換部材(蛍光体)とを備え、青色光と黄色光との混色によって白色光を放出するレーザー光源を車両用灯具に使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-46129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の車両用灯具は、レーザー光源を用いる関係上、IEC68025の規定に準拠する必要がある。IEC68025によると、レーザーダイオードを用いた製品は7段階(クラス1,1M,2,2M,3R,3B,4)にクラス分けされている。レーザー光源を車両用灯具の光源として用いる場合、現時点ではクラス2M以下である必要がある。ここで、例えばクラス4に該当するレーザーダイオードを用いたとしても蛍光体等を介して車両用灯具として光を分散光として出力することで、クラス2以下とすることができ、車両用灯具としての販売を実現することができる。
【0005】
しかし、レーザーダイオードを用いる製品は蛍光体を取り外した状態でのクラス選定も求められている。このため、クラス4に該当するレーザーダイオードを用いた場合には、基本的にIEC68025の規定に準拠するために、レーザー光の放出時間を抑える必要がある。例えば車両用灯具として用いる場合、車両事故等によってレーザー光源から蛍光体が外れてしまう可能性があり、このような事態の発生時に対応すべくレーザーダイオードを直ぐにシャットダウンさせる回路を組み込むようにする必要がある。
【0006】
ところが、このような回路を搭載したとしても、車両事故等の発生からシャットダウンまでには約1μs程度の時間が必要となってしまい、クラスを抑えるにも限界が生じてしまう。よって、車両用灯具として用いる場合にIEC68025に準拠するクラスをより抑えることができるようにすることが好ましい。
【0007】
なお、上記の問題は、青色域のレーザー光を放出するレーザーダイオードとレーザーダイオードからのレーザー光を黄色光に変換する蛍光体とを備えたレーザー光源を有する車両用灯具に限る問題ではなく、単に白色光等を放出可能なレーザーダイオードを有する車両用灯具においても共通する問題である。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、レーザー光源を用いる場合においてIEC68025に準拠するクラスをより抑えることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用灯具は、ロービーム配光を形成するためのレーザー光を放出するレーザー光源と、前記レーザー光源からのレーザー光を反射するリフレクタと、前記リフレクタにより反射されたレーザー光を出射する光学レンズと、前記リフレクタと前記光学レンズとの間に配置されて、前記ロービーム配光にカットオフラインを形成するためのシェードと、を備え、前記光学レンズから200mmの距離において、前記レーザー光源からのレーザー光によって形成されるアパーレント光源に張る視角が5mrad以上とされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー光源を用いる場合においてIEC68025に準拠するクラスをより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る車両用灯具を示す要部正面図である。
図2】本実施形態に係る車両用灯具を示す要部断面図である。
図3図2に示したレンズ体の拡大断面図である。
図4】本実施形態に係る車両用灯具の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具を示す要部正面図であり、図2は、本実施形態に係る車両用灯具を示す要部断面図である。
【0014】
図1及び図2に示す車両用灯具1は、例えば車両前方部位に設けられる前照灯として構成されるものであって、図示しないハウジングとアウターレンズとによって形成された灯室内に配置されるものである。この車両用灯具1は、例えばロービーム配光を形成するためのものであって、レーザーダイオードユニット10と、レンズ体20と、ヒートシンク30と、ファンユニット40とを備えている。なお、図2においてはファンユニット40の図示を省略している。
【0015】
レーザーダイオードユニット10は、レーザー光源11と、コネクタ部12とを備えている。レーザー光源11は、例えば、LED(Light Emitting Diode)よりも光束密度が高いレーザー光を放出するレーザーダイオードと、レーザーダイオードからの光を波長変換する蛍光体とを有した光源である。本実施形態においてレーザー光源11は、基板13に搭載されて光軸が前方の斜め上方に向いた状態で設けられている。コネクタ部12は、レーザー光源11に対して給電を行うべく相手側コネクタが嵌合させられる部位である。このコネクタ部12は前方下方から相手側コネクタが嵌合される向きで設けられている。
【0016】
レンズ体20は、レーザー光源11からの光を車両前方に向けて出射するための光学部材である。ヒートシンク30は、レーザーダイオードユニット10及びレンズ体20の台座となると共に、放熱フィンFを有して放熱性を発揮するものである。レーザーダイオードユニット10及びレンズ体20はヒートシンク30に対してネジ止め等されて固定されており、レーザー光源11からの熱がヒートシンク30により放熱されるようになっている。ファンユニット40は、送風機能を有するファン41を有し、ヒートシンク30に対して送風することで放熱を促進させるものである。
【0017】
図3は、図2に示したレンズ体20の拡大断面図である。図3に示すように、レンズ体20は、レーザー光源11からの光を車両前方に向けて出射するためのものであって、本実施形態においては、リフレクタ21と、光学レンズ22と、シェード23とが一体となった光学部材により構成されている。このレンズ体20は、レーザー光源11からの光を受け入れる入射側20aがレーザー光源11の光軸に沿って延びているが、光学レンズ22が設けれられる出射側20bが水平方向(車両前方)に向けて屈曲した屈曲構造となっている。
【0018】
このようなレンズ体20は、入射レンズ部24を備えている。入射レンズ部24は、入射側20aの端部に形成された凹部20cの底面部として設けられており、レーザー光源11側に凸となる凸レンズ形状となっている。レーザー光源11からのレーザー光は、入射レンズ部24又は凹部20cの側壁からレンズ体20内に入射していく。
【0019】
また、レンズ体20は、リフレクタ21として第1及び第2リフレクタ部21a,21bを備えている。第1リフレクタ部21aは、略円錐台の上面側をレーザー光源11としたときの円錐台側面に相当する反射部位である。この第1リフレクタ部21aは、レンズ体20に入射したレーザー光源11の一部を反射させて、出射側20bに導くものである。第2リフレクタ部21bは、回転楕円面等を基調とする反射面であり、第1リフレクタ部21aに連続して第1リフレクタ部21aよりも出射側20bに設けられている。この第2リフレクタ部21bについても反射した光を出射側20b(特に光学レンズ22側)に導くものである。
【0020】
光学レンズ22は、車両前方に向かって凸となるレンズ部位であって、リフレクタ21により反射されたレーザー光を出射する出射端となる部位である。シェード23は、リフレクタ21と光学レンズ22との間に配置されて、ロービーム配光にカットオフラインを形成するための部位である。このシェード23は、リフレクタ21によって反射されたレーザー光の一部をカットすることでロービーム配光にカットオフラインを形成する。本実施形態においては、入射側20aと出射側20bとの中間的な位置において、下方から上方に向けて刳り貫かれた段部25によってシェード23が形成されている。
【0021】
なお、上記においてリフレクタ21は、アルミ蒸着等による全反射面であってもよいが、臨界角を利用した反射面であってもよい。また、シェード23は、黒色等の印刷が施されて光をカットする構成となっていてもよい。
【0022】
ここで、本実施形態においてリフレクタ21はレーザー光を反射して段部25の前端部付近に光を集光させて(且つ、一部の光がシェード23によってカットされて)アパーレント光源ALSを形成している。本実施形態において形成されるアパーレント光源ALSは、レーザー光源11よりも8倍以上の面積を有するようにされており、或る程度の大きさを有したものとなっている。なお、アパーレント光源ALSは、ロービーム配光を形成し易くなるよう、車両上下方向よりも車幅方向に長く形成されている。
【0023】
このような車両用灯具1においては、光学レンズ22から200mmの距離において、アパーレント光源ALSに張る視角が(縦横の平均で)5mrad以上とされている。ここで、上記視角が5mrad以上である場合、光学レンズ22から200mmの位置における最大放射輝度が特定値L以下であれば、車両用灯具1はランプ規格で判断され、レーザー規格としてもクラス1とすることができる。よって、本実施形態に係る車両用灯具1は、光学レンズ22から200mmの距離において、アパーレント光源ALSに張る視角が5mrad以上とされている。
【0024】
また、本実施形態に係る車両用灯具1は、光学レンズ22から200mmの位置における最大放射輝度が特定値L以下となっている。特定値Lは、L=(1MW・m-2・sr-1)/αである。ここで、αは視角(rad)である。よって、例えば視角が5mradである場合、特定値Lは、200MW・m-2・sr-1となり、光学レンズ22からの200mmの位置における最大放射輝度が200MW・m-2・sr-1以下であれば、車両用灯具1は、ランプ規格で判断される。
【0025】
ここで、レーザー規格であると、小光源(レーザー光源11は小光源に該当)の限界被ばく量は、1usのシャットダウンのときに77mWであったが、アパーレント光源ALSを張る視角が5mrad以上である場合、限界被ばく量は、1usのシャットダウンのときに257mW以上となるため、少なくとも3倍以上の被ばく量でも問題ないこととなる。
【0026】
次に、本実施形態に係る車両用灯具1の作用を説明する。まず、図3に示すように、レーザー光源11が点灯させられる。これにより、レーザー光源11からのレーザー光が入射レンズ部24等を介してレンズ体20内に至る。
【0027】
レンズ体20内に至ったレーザー光は、図3に示す光路例のように第1リフレクタ部21a及び第2リフレクタ部21bの少なくとも一方で反射して光学レンズ22に至る。そして、光学レンズ22から車両前方に向けて出射されてロービーム配光が形成される。なお、この光学レンズ22からの出射に至るまでに、シェード23によって一部光がカットされることとなり、ロービーム配光にカットオフラインが形成される。
【0028】
また、図3に示す光路例のようにレーザー光は、第1リフレクタ部21a及び第2リフレクタ部21bの少なくとも一方で反射された結果、段部25の前端部付近においてアパーレント光源ALSを形成する。ここで、光学レンズ22から200mmの距離において、アパーレント光源ALSに張る視角は5mrad以上とされている。さらに、光学レンズ22から200mmの距離における最大放射輝度が特定値L以下となっている。
【0029】
よって、本実施形態に係る車両用灯具1はランプ規格で判断され、レーザー規格においてもクラス1とすることができる。
【0030】
このようにして、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、光学レンズ22から200mmの距離において、レーザー光源11からのレーザー光によって形成されるアパーレント光源ALSに張る視角が5mrad以上とされているため、レーザー規格ではなくランプ規格で評価されるようにでき、レーザー規格においてクラス1と評価することが可能となる。従って、レーザー光源11を用いる場合においてIEC68025に準拠するクラスをより抑えることができる。
【0031】
また、アパーレント光源ALSは、車両上下方向よりも車幅方向に長く形成されているため、横長となるロービーム配光を形成し易くすることができる。
【0032】
また、アパーレント光源ALSはレーザー光源11よりも8倍以上の面積を有するため、面積拡大率を8倍以上として視角を拡げ易くして、クラスをより抑え易くすることができる。
【0033】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0034】
図4は、本実施形態に係る車両用灯具の変形例を示す斜視図である。図1に示す車両用灯具1は、リフレクタ21と、光学レンズ22と、シェード23とが一体となったレンズ体20を用いている。これに対して、変形例に係る車両用灯具2は、リフレクタ21と、光学レンズ22と、シェード23とは別部材によって構成されている。このような車両用灯具2であっても、光学レンズ22から200mmの距離において、アパーレント光源ALSに張る視角が5mrad以上とされていれば、光学レンズ22から200mmの位置における最大放射輝度が特定値L以下であるときに、ランプ規格で判断され、レーザー規格としてもクラス1とすることができるからである。
【0035】
また、本実施形態においては前照灯を前提に説明したが、これに限らず、適用可能であれば、他の方向を照射する車両用灯具に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,2 :車両用灯具
10 :レーザーダイオードユニット
11 :レーザー光源
21 :リフレクタ
22 :光学レンズ
23 :シェード
ALS :アパーレント光源
図1
図2
図3
図4