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  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図1
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図2
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図3
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図4
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図5
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図6
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図7
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図8
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図9
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図10
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図11
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図12
  • 特開-横抗の形成方法及び横抗 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021533
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】横抗の形成方法及び横抗
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20220127BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20220127BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
E02D3/10 101
E21D9/06 311C
E21B3/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125149
(22)【出願日】2020-07-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】519022090
【氏名又は名称】アサヒエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 恵太
(72)【発明者】
【氏名】小島 功
(72)【発明者】
【氏名】橋ヶ谷 直之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆雄
【テーマコード(参考)】
2D043
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D043CA20
2D043DA04
2D043DA10
2D054AC18
2D054BA03
2D054DA12
2D054EA07
2D054FA08
2D129AA08
2D129BA02
2D129EA01
2D129HA02
2D129HB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鞘管の内部を通して掘進機を発進立坑に引き戻すことで到達立坑の掘削は必要とせず、工期の短縮や工事費の削減につながり、地中に排水用の横抗を短期間で布設することができる横坑の提供。
【解決手段】発進立坑11から到達目標地点12へ向けて地中内に透水性のドレイン管31を埋設する方法であって、第1鞘管の先頭部に設けられた土砂シャッター40を開とするように掘進機の頭を挿入して配置し、単位鞘管を順次連結し推進して連結鞘管を形成し、その後、掘進機を発進立抗11方向へ引き戻すとともに土砂シャッター40を閉の状態にし、次に、連結鞘管内に、第1ドレイン管31a1に単位ドレイン管を順次連結して、土砂シャッター40の手前まで挿入し、第1鞘管の先頭部21a0を切り離して、連結鞘管を発進立抗11方向へ引き抜くとともに単位鞘管に分解し、土砂シャッター40を設けた先頭部及び連結ドレイン管を埋設する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑から到達目標地点へ向けて地中内に透水性のドレイン管を埋設する方法であって、
第1鞘管の先頭部に設けられた土砂シャッターを開とするように掘進機の頭を挿入して配置し、
単位鞘管を順次連結し推進して連結鞘管を形成し、
その後、
前記掘進機を発進立抗方向へ引き戻すとともに前記土砂シャッターを閉の状態にし、
次に、前記連結鞘管内に、
第1ドレイン管に単位ドレイン管を順次連結して、前記土砂シャッターの手前まで挿入し、
前記第1鞘管の先頭部を切り離して、
連結鞘管を発進立抗方向へ引き抜くとともに単位鞘管に分解し、
前記土砂シャッターを設けた先頭部及び連結ドレイン管を埋設することを特徴とする横抗の形成方法。
【請求項2】
地中に、
土砂シャッターと、
前記土砂シャッターを設けた第1鞘管の先頭部と、
前記土砂シャッターの手前まで挿入された連結ドレイン管と、
が残置されたことを特徴とする横坑。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は横抗の形成方法及び横抗に関し、特に上昇した地下水位を降下させ、あるいは地下水を排水して地盤を改良する際に用いられる横抗の形成方法及び横抗に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設されたドレイン管によって地中の雨水や湧水を集め、地上に排水することで地盤の地下水位を低下させ、地すべりや液状化を防止するため、透水性を有するポーラスなドレイン管を工事対象地盤の地中に埋設する横抗の形成方法が知られている。
【0003】
このような横抗の形成方法の技術として、以下のような文献が知られている。
例えば、特許文献1には、発進立坑から到達立坑に向けて貫通させた横坑内に透水性のドレイン管を埋設する非開削工法が開示されており、地表から発進立坑及び到達立坑を掘削した後、発進立坑から到達立坑に向かって横坑を形成すると同時に鞘管を推進させて横坑内に鞘管を設置し、次に、鞘管内にドレイン管を挿入し、プッシュロッドを発進立坑から押し出すことにより、横坑から鞘管を到達立坑へ引き抜いて、横坑内にドレイン管を残置することが記載されている。
【0004】
特許文献1の工法は、地表から発進立坑及び到達立坑を掘削することや、発進立坑から到達立坑に向かって横坑を形成する工程である。
しかし、現場の状況によっては、地表の形状や地盤の状況で、到達立孔を掘削できない場合がある。
また、到達立坑を掘削するためには、コストが嵩むという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-002641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、排水用の横抗を布設するに際し、鞘管の内部を通して掘進機を発進立坑に引き戻すことで到達立坑の掘削は必要とせず、工期の短縮や工事費の削減につながり、地中に排水用の横抗を短期間で布設することができる横坑の形成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、土砂シャッターを備えた第1鞘管を横坑内へ残置しているので、土砂シャッターを閉にすることによって、掘進機を引き戻してからドレイン管を挿入するまでの間に鞘管内に土砂が流入することを防止できる横抗を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の横抗の形成方法は、
発進立坑から到達目標地点へ向けて地中内に透水性のドレイン管を埋設する方法であって、
第1鞘管の先頭部21a0に設けられた土砂シャッターを開とするように掘進機の頭を挿入して配置し、
単位鞘管を順次連結し推進して連結鞘管を形成し、
その後、
前記掘進機を発進立抗方向へ引き戻すとともに前記土砂シャッターを閉の状態にし、
次に、前記連結鞘管内に、
第1ドレイン管に単位ドレイン管を順次連結して、前記土砂シャッターの手前まで挿入し、
前記第1鞘管の先頭部を切り離して、
連結鞘管を発進立抗方向へ引き抜くとともに単位鞘管に分解し、
前記土砂シャッターを設けた先頭部及び連結ドレイン管を埋設することを特徴とする。
(2)本発明の横抗は、
地中に、
土砂シャッターと、
前記土砂シャッターを設けた第1鞘管の先頭部と、
前記土砂シャッターの手前まで挿入された連結ドレイン管と、
が残置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の横抗の形成方法は、鞘管の内部を通して掘進機を発進立坑に引き戻すことで回収でき、到達立坑の掘削は必要とせず、工期の短縮や工事費の削減につながるとともに、地中に排水用の横抗を短期間で布設することができる。
また、本発明の横坑は、土砂シャッターを備えた第1鞘管の先頭部を横坑内へ残置しているので、土砂シャッターを閉にすることによって、掘進機を引き戻してからドレイン管を挿入するまでの間に鞘管内に土砂が流入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発進立坑11に油圧機構17を設置し、発進立坑11から到達目標地点12に向かって、掘進機15及び単位鞘管21aを推進するSTEP1の工程を示す平面図である。
図2】第1鞘管21a1内での掘進機15の前進・後退によって、土砂シャッター40が開閉される態様を示す斜視図である。
図3】掘進機15の前進・後退による、第1鞘管21a1の先頭部21a0内に設けられた土砂シャッター40の開閉状態を示す概略図であり、(a)は土砂シャッター40が開の状態を示す側面断面図であり、(b)は土砂シャッター40の閉の状態を示す側面断面図である。
図4】(a)は土砂シャッター40が開の状態を示す先頭部21a0を正面から見た正面図であり、(b)は土砂シャッター40の開閉の様子を示す側面断面図であり、(c)は土砂シャッター40の開の状態を示す平面図である。
図5】単位鞘管21aを順次連結する工程を繰り返し、発進立坑11から到達目標地点12に至る連結鞘管21を完成させるSTEP2の工程を示す平面図である。
図6】掘進機15を第1鞘管21a1の内側に張り出しているグリッパー15bを収納して第1鞘管21a1との固定を解くとともに、掘削カッター15aを第1鞘管21a1の内径に収まるように縮小して、掘進機15を発進立坑11方向に引き戻すSTEP3の工程を示す平面図である。
図7】発進立坑11まで引き戻した掘進機15を回収するSTEP4の工程を示す平面図である。
図8】完成した連結鞘管21内に、単位ドレイン管31aを連結しながら挿入するSTEP5の工程を示す平面図である。
図9】連結ドレイン管31の後端に止水キャップ32を取り付けるSTEP6の工程を示す平面図である。
図10】止水キャップ32の取り付けの詳細を示す断面図である。
図11】(a)は、油圧機構17を用いて連結鞘管21を発進立坑11方向に順次引き抜くSTEP7の工程を示す平面図であり、(b)は、連結鞘管21の引き抜きにあたって、プッシュロッド15dを止水キャップ32に押し当て、連結ドレイン管31が共下がりしないようにする様子を示す側面図である。
図12】土砂シャッター40が設けられた先頭部21a0と連結ドレイン管31を残置して、発進立坑11を始点として、到達目標地点12に向けて地中内をトンネル状に形成された横抗13を完成させたSTEP8の工程を示す平面図である。
図13】土砂シャッター40を閉にした先頭部21a0及び連結ドレイン管31を残置して、地中に横坑13を完成させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すSTEP1では、発進立坑11に油圧機構17を設置し、発進立坑11から到達目標地点12に向かって、掘進機17及び単位鞘管21aを推進する。
なお、本発明では、到達立坑は必要としない。
【0012】
発進立坑11は、地盤の所定を垂直方向に、すなわち、地表側から地中縦方向に向けて掘削することにより形成されたものである。
到達目標地点12は、連結ドレイン管31を埋設するために掘削すべき位置である。
本発明では、到達立坑の形成は必要とはしないので、発進立坑11と到達目標地点12は、相対的な距離を介在した状態で対峙する。
この距離については適宜決定されるものであるが、例えば、通常10m~50m程度を想定している。
発進立坑11内には、掘進機17や単位鞘管21aの推進、単位ドレイン管31aの挿入に用いる油圧機構17が配置されている。
掘進機15には、先頭に掘削カッター15aが付属している。
【0013】
<油圧機構17>
油圧機構17は、発進立抗11内に配置され、単位鞘管21aや掘進機15を推進する装置である。
また、掘進機15や単位鞘管21aを発進立抗11に引き戻す際にも使用する装置である。
油圧機構17としては、例えば、油圧を利用した元押しジャッキなどが挙げられる。
油圧機構17は、掘進機15や単位鞘管21aの推進や引き戻し(鞘管の場合は引き抜き)に際し、
到達目標地点12に向けて往動(前進)や、元の位置まで復動(後退)ができるようになっている。
【0014】
<掘進機>
掘進機15は、その先頭に、地中の掘削するための掘削カッター15aを備えた装置である。
本発明に用いられる掘進機15は、連結鞘管21の中を進退できるように、その外径は、単位鞘管21aの内径よりも僅かに小さく形成されており、掘削カッター15aの外径を縮小させて単位鞘管21aの中に内挿し、掘進機15内に設けられたグリッパー15bによって第1鞘管21a1の内部に固定できるようになっている。
なお、掘進機15の掘削カッター15aは、掘削時には外刃を拡大し、非掘削時には外刃を収納して全体の外径を縮小でき、連結鞘管21の中を進退できるようになっている。
グリッパー15bとしては、例えば、外方へ向かって張り出す張出しジャッキなどが挙げられる。
【0015】
<鞘管>
次に、鞘管について説明する。
連結鞘管21は、所定の長さの単位鞘管21aが連結された長尺状の管形状構造を有している。
一般に、連結鞘管21の布設長さは油圧機構17のストロークよりも長く、油圧機構17のストロークに応じた長さを有する複数の単位鞘管21aを連結させて布設する。
単位鞘管21aの先端及び後端外周面には、互いに連結するための雌ネジ・雄ネジが設けられており、複数の単位鞘管21aを、雌雄一対のネジで長手方向に連結することにより長尺の連結鞘管21を形成する。
なお、実施形態では、掘進機15が挿入された先頭の単位鞘管21aを第1鞘管21a1という。
単位鞘管21aの構成材料としては、所定の推進荷重にたえることのできる機械的強度を有する材質のものであればよく、例えば、鋼管などの金属管が挙げられる。
【0016】
つぎに、本実施形態の横坑の形成方法の工程を説明する。
図1のSTEP1に示すように、まずは、油圧機構17を使用して掘進機15を第1鞘管21a1に挿入して地中掘削稼働状態とする。
つぎに、油圧機構17を往動させて、第1鞘管21a1を、発進立坑11の前壁側から到達目標地点12に向けて、第1回目の、掘進機15による掘削と第1鞘管21a1の地中推進作業を開始する。
【0017】
油圧機構17の推進ジャッキが往動ストローク終端に至ったとき、油圧機構17を一時停止させ、第1鞘管21a1の推進を停止させるとともに、掘進機15の地中掘削を一時停止させて、往動ストローク分に応じた1回目の掘削及び推進作業を終える。
次に、油圧機構17の後端部に連結した第1鞘管21a1を切り離し、油圧機構17の推進ジャッキを復動させ元の位置へと復帰させる。
続いて、第1鞘管21a1の後端部に、次の単位鞘管である第2鞘管21a2を連結し、再び、掘進機15及び油圧機構17を運転状態とするとともに、油圧機構17を往動させて、2回目の、掘削及び推進作業を開始する。
【0018】
<土砂シャッター>
図2は、第1鞘管21a1内での掘進機15の前進・後退によって、土砂シャッター40が開閉される態様を示す斜視図である。
図3は、掘進機15の前進・後退による、第1鞘管21a1の先頭部21a0内に設けられた土砂シャッター40の開閉状態を示す概略図であり、
(a)は土砂シャッター40が開の状態を示す側面断面図であり、
(b)は土砂シャッター40の閉の状態を示す側面断面図である。
図4(a)は土砂シャッター40が開の状態を示す先頭部21a0を正面から見た正面図であり、
(b)は土砂シャッター40の開閉の様子を示す側面断面図であり、
(c)は土砂シャッター40の開の状態を示す平面図である。
図示するように、第1鞘管21a1の先頭(到達目標地点方向)に設けられた先頭部21a0の天井部分には、土砂シャッター40の後部が回動自在に丁番41で留められており、土砂シャッター40の前部が自重で降下することによって第1鞘管21a1を閉塞できるようになっている。
前述した、掘進機15を第1鞘管21a1に挿入する際には、土砂シャッター40を押して開の状態にして、稼働状態時には、掘削カッター15aを第1鞘管21a1の前部から露出させ、地中での掘削作業を行えるようにする。
つぎに、掘進機15を第1鞘管21a1から引き戻す(後退させる)と、土砂シャッター40は自重で前部が降下して閉の状態となり、掘進機15を引き戻してからドレイン管を挿入するまでの間に連結鞘管21内へ土砂が流入することを防止できる。
なお、土砂シャッター40は、図示するような形態以外のものでもよい。
例えば、遠隔操作で開閉を制御できるようにしてもよい。
【0019】
図5のSTEP2に示すように、掘進機15による地中掘削作業を行いつつ、単位鞘管21aを順次連結する上記の工程を繰り返して、第1鞘管21a1を到達目標地点12まで推進して、発進立坑11から到達目標地点12に至る連結鞘管21の布設を完成させる。
【0020】
図6に示すSTEP3では、第1鞘管21a1の内側に張り出しているグリッパー15bを収納して、掘進機15と第1鞘管21a1との固定を解くとともに、掘削カッター15aのカッター刃を鞘管の内径に収まるように縮小させて、掘進機15を発進立坑11方向に引き戻す。
【0021】
この掘進機15の引き戻しは、以下のようにする。
すなわち、掘進機15の後端には、掘削時に、泥水をプラント(図示せず)から送ったり戻したりする送排泥管(図示せず)が連結され発進立孔11までつがっている。
掘進機15の後端に連結された送排泥管を油圧機構17に連結して、推進時と反対の力を掛けて発進立坑11まで引き戻す。
なお、この送排泥管も、単位鞘管と同じように単位の送排泥管を連結・切離しを繰り返して、掘進機15の進退を操作する。
【0022】
つぎに、掘進機15を第1鞘管21a1から引き戻して土砂シャッター40を閉じる。
すなわち、掘進機15を引き戻すと、開の状態にされていた土砂シャッター40が丁番を支点として回動して前部が自重で下がり、第1鞘管21a1の到達目標地点12側を閉鎖する。
なお、土砂シャッター40を閉鎖する前に、掘進機15の引き戻し時に土砂の第1鞘管21a1内への流入を防止するため、第1鞘管21a1の前方に地盤硬化用の薬剤注入を施すことも好ましい。
この薬剤注入は、現場の状況に応じて適宜な方法が採用される。
【0023】
<掘進機の地上回収>
図7のSTEP4に示すように、発進立坑11まで引き戻した掘進機15を、地上に回収する。
【0024】
<ドレイン管の挿入>
つぎに、図8のSTEP5に示すように、布設を完了した連結鞘管21内に、多数の孔が壁面に設けられた単位ドレイン管31aを連結しながら挿入する。
単位ドレイン管31aは、地中に布設される所定長の連結ドレイン管31を、発進立坑11から挿入できる長さに分割したしたものである。
単位ドレイン管31の連結には、例えば、単位ドレイン管同士の接続端面相互が突き合わされて当該両管が一直線状となるように保持するための接続外管などを用いることができる(図示せず)。
ドレイン管としては、例えば、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂で形成された円形網状構造の透水性管や、周囲に多数の孔を有するストレーナー状の管、鋼製の網をパイプ状に形成した網パイプ等が挙げられる。
単位ドレイン管31aの挿入は、前述した単位鞘管の推進と略同様にして実施する。
すなわち、第1ドレイン管31a1の後端を油圧機構17に当接し、複数個の単位ドレイン管31aを長手方向に順次連結しながら連結鞘管21内に挿入する、という工程を繰り返して、連結鞘管21内への連結ドレイン管31の挿入を完成させる。
なお、ドレイン管の挿入にあたっては、その先端が土砂シャッター40に当接しないように、あらかじめ挿入長さを決めておき、その直前で停止させるようにする。
このようにして、発進立坑11から到達目標地点12に至る連結ドレイン管31の布設が完了する。
【0025】
<止水キャップの取り付け>
図9のSTEP6に示すように、連結ドレイン管31の後端に泥水の流入を止める止水キャップ32を取り付ける。この詳細を図10に示す。
【0026】
<鞘管の引き抜き>
図11のSTEP7に示すように、油圧機構17を用いて連結鞘管21を発進立坑11方向に順次引き抜く。
連結鞘管21を引く抜く場合は、最後尾の単位鞘管21aの後端と油圧機構17とをつないで、油圧機構17の力で引く抜くようにする。
まずは、油圧機構17を、最後尾の単位鞘管21aへ所定のストローク分往動させ、最後尾の単位鞘管21aと油圧機構17とを連結し、油圧機構17を復動(復帰)させる。
連結鞘管21は、油圧機構17の復動ストローク分だけ発進立坑11方向へ引き抜かれ、連結鞘管21から切り離されて単位鞘管21aに分解される。
上記操作を繰り返すことで、連結鞘管21を単位鞘管21a として順次回収する。
なお、図11(b)に示すように、連結鞘管21の引き抜きにあたっては、プッシュロッド15dを止水キャップ32に押し当て、連結ドレイン管31が共下がりしないようにするとともに、連結鞘管21内部に注水して連結鞘管21内を満水にした後、油圧機構17を作動させて、連結鞘管21を発進立孔11に順次引き抜くことが好ましい。
これにより、連結鞘管21と連結ドレイン管31との隙間に泥水が流入することを防止することができる。
【0027】
なお、連結鞘管21の引き抜きにあたっては、土砂シャッター40が設けられている第1鞘管21a1の先頭部21a0を切り離して、先頭部21a0のみを残置するようにする。
第1鞘管21a1の先頭部21a0は、ねじ止めではなく、第1鞘管21a1の先頭(切離し線22の前方向)に差し込むだけの連結であるため、連結鞘管21の引き抜きにあたって、切離し線22で連結鞘管21から容易に切り離される。
【0028】
<横抗13の完成>
図12のSTEP8に示すように、切離し線22で先頭部21a0を切り離して地中に残置した状態で連結鞘管21を引き抜き、残置した先頭部21a0内に連結ドレイン管31の先端を挿入して横坑13とする。
このようにして、発進立坑11を始点として、到達目標地点12に向けて地中内をトンネル状に形成された横抗13を完成させる。
【0029】
図13は、掘進機15を引き戻し、土砂シャッター40を閉にした先頭部21a0及び連結ドレイン管31を残置して、地中に横坑13を完成した状態を示す平面図である。
つぎに、人孔(マンホール)と接続する空伏管を布設後に、最後尾の単位鞘管21aの後端部に取り付けてあった止水キャップ32を取り外し、排水を開始する。
上記のようにして、一方の端部を発進立抗11に開口させた排水用の連結ドレイン管31を布設して、地盤に含まれた水を横抗13から発進立抗11に集めるとともに、発進立抗11に揚水ポンプ(図示せず)を設置して排水することで、地下水位の調整や地盤の改良を行うことができる。
【0030】
なお、発進立抗11を中心として放射状に複数の横抗13を布設することによって、広い範囲の地盤から地下水を排水することもできる。
発進立抗11を基点とする各横抗13は同一レベルの深さ方向で布設することもでき、また夫々異なるレベルで布設することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のドレイン管埋設方法及び横坑は、地震の際、沿岸部や埋立地などで発生する液状化現象の抑制や、降雨による地すべりが発生しやすい地域での地すべり抑制対策として適用することができ、その利用可能性はきわめて高い。
【符号の説明】
【0032】
11 発進立坑
12 到達目標地点
13 横抗
15 掘進機
15a 掘削カッター
15b グリッパー
15d プッシュロッド
17 油圧機構
21 連結鞘管
21a 単位鞘管
21a0 第1鞘管の先頭部
21a1 第1鞘管
21a2 第2鞘管
22 切離し線
31 ドレイン管
31a 単位ドレイン管
31a1 第1ドレイン管
32 止水キャップ
40 土砂シャッター
41 丁番

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2020-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑から到達目標地点へ向けて地中内に透水性のドレイン管を埋設する方法であって、
第1鞘管の先頭部に設けられた土砂シャッターを開とするように掘進機の頭を挿入して配置し、
単位鞘管を順次連結し推進して連結鞘管を形成し、
その後、
前記掘進機を発進立抗方向へ引き戻すとともに前記土砂シャッターを閉の状態にし、
次に、前記連結鞘管内に、
第1ドレイン管に単位ドレイン管を順次連結して、前記土砂シャッターの手前まで挿入し、
前記第1鞘管の先頭部を切り離して、
連結鞘管を発進立抗方向へ引き抜くとともに単位鞘管に分解し、
前記土砂シャッターを設けた先頭部及び連結ドレイン管を埋設することを特徴とする横抗
の形成方法。
【請求項2】
地中に、
第1鞘管内での掘進機の前進・後退によって開閉される構造を有する土砂シャッターと、
前記土砂シャッターを設けた第1鞘管の先頭部と、
前記土砂シャッターの手前まで挿入された連結ドレイン管と、
が残置されたことを特徴とする横坑。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
(1)本発明の横抗の形成方法は、
発進立坑から到達目標地点へ向けて地中内に透水性のドレイン管を埋設する方法であって、
第1鞘管の先頭部21a0に設けられた土砂シャッターを開とするように掘進機の頭を挿入して配置し、
単位鞘管を順次連結し推進して連結鞘管を形成し、
その後、
前記掘進機を発進立抗方向へ引き戻すとともに前記土砂シャッターを閉の状態にし、
次に、前記連結鞘管内に、
第1ドレイン管に単位ドレイン管を順次連結して、前記土砂シャッターの手前まで挿入し、
前記第1鞘管の先頭部を切り離して、
連結鞘管を発進立抗方向へ引き抜くとともに単位鞘管に分解し、
前記土砂シャッターを設けた先頭部及び連結ドレイン管を埋設することを特徴とする。
(2)本発明の横抗は、
地中に、
第1鞘管内での掘進機の前進・後退によって開閉される構造を有する土砂シャッターと、
前記土砂シャッターを設けた第1鞘管の先頭部と、
前記土砂シャッターの手前まで挿入された連結ドレイン管と、
が残置されたことを特徴とする。