(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021561
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】採尿容器
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20220127BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G01N33/48 S
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125210
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591029149
【氏名又は名称】本多プラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】堀端 篤
(72)【発明者】
【氏名】今岡 慎介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 さやか
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA16
2G045CB03
2G045HA06
2G045HA12
2G045HA14
2G052AA32
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA27
2G052JA23
(57)【要約】
【課題】シール性を維持しつつ、容器本体を容易に開閉できる採尿容器を提供することを目的とする。
【解決手段】有底筒状の容器本体2と、容器本体2の開口2aを閉じる蓋部3と、蓋部3を容器本体2に開閉可能に接続する接続片4と、を備え、蓋部3は、容器本体2に圧入され、弾性変形して容器本体2の内周面に密接する筒状の嵌合部7を備えている採尿容器1である。この採尿容器1によれば、シール性を安定して維持しつつ、容器本体2を容易に開閉できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の開口を閉じる蓋部と、
前記蓋部を前記容器本体に開閉可能に接続する接続部と、を備え、
前記蓋部は、前記容器本体に圧入され、弾性変形して前記容器本体の内周面に密接する筒状の嵌合部を備えている採尿容器。
【請求項2】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部と、前記カバー部から突出すると共に、先端が開放された前記嵌合部とを備え、
前記嵌合部の前記先端に沿った外周面には、前記カバー部から離れるほど縮径するテーパ部が設けられている、請求項1記載の採尿容器。
【請求項3】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部と、前記カバー部から突出すると共に、先端が開放された前記嵌合部とを備え、
前記嵌合部の内周面は、前記カバー部に接続された根元から前記先端にかけて漸次拡径したテーパ状である、請求項1または2記載の採尿容器。
【請求項4】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部と、前記カバー部から突出すると共に、先端が開放された前記嵌合部とを備え、
前記嵌合部の厚さは、前記カバー部に接続された根元よりも前記先端の方が薄くなっている、請求項1~3のいずれか一項記載の採尿容器。
【請求項5】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部と、前記カバー部から突出すると共に、先端が開放された前記嵌合部とを備え、
前記嵌合部は、前記嵌合部の軸線回りに沿って外周面が環状に凹んだくびれ部と、前記くびれ部と前記先端との間の可撓部と、前記カバー部に接続された根元と前記くびれ部との間の胴体部と、を備え、
前記可撓部の外周面には、前記嵌合部の軸線回りに沿って突出し、且つ前記容器本体の内周面に閉環状に密接する第1シール部が設けられており、
前記胴体部の外周面には、前記嵌合部の軸線回りに沿って突出し、且つ前記容器本体の内周面に閉環状に密接する第2シール部が設けられている、請求項1~4のいずれか一項記載の採尿容器。
【請求項6】
前記容器本体は、テーパ状の内周面を備えた本管部と、前記本管部と前記開口との間に設けられた直管状の圧接管部とを備え、
前記第1シール部は、前記圧接管部の内周面に密接している、請求項5記載の採尿容器。
【請求項7】
前記蓋部を前記容器本体に固定するロック部を更に備え、
前記ロック部は、前記蓋部及び前記容器本体の一方から他方に向けて延在すると共に、前記一方に接続された固定部を支点に弾性変形可能な腕部と、前記他方に設けられ、前記腕部に係合して前記蓋部の移動を規制すると共に、前記腕部の撓みによって前記蓋部の移動の規制が解除される係合部とを備えている、請求項1~6のいずれか一項記載の採尿容器。
【請求項8】
前記係合部は、前記容器本体の外周面に設けられ、且つ突出する凸部であり、
前記腕部は、前記蓋部から前記凸部を乗り越えて延在する弾性部と、前記弾性部から前記外周面に向けて突出すると共に、前記凸部を超えた位置で前記凸部に係合する爪部と、を備えている、請求項7記載の採尿容器。
【請求項9】
前記係合部は、前記容器本体の外周面に設けられ、且つ突出する凸部であり、
前記腕部は、前記蓋部から前記凸部を乗り越えて延在する弾性部と、前記弾性部に設けられると共に、前記凸部が挿入されて前記凸部に係合する孔部と、を備えている、請求項7記載の採尿容器。
【請求項10】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部を備え、
前記嵌合部は、前記カバー部から筒状に突出して設けられると共に、筒状の内側には、抽出針の穿刺領域が形成されており、
前記カバー部は、前記穿刺領域に面する内表面と、前記内表面とは反対側の外表面とを備え、
前記外表面には、テーパ状に凹む傾斜面と、前記傾斜面の底である穿刺面とが設けられており、
前記カバー部は、前記穿刺面を形成する部分の厚さが前記傾斜面を形成する部分の厚さよりも薄い、請求項1~9のいずれか一項記載の採尿容器。
【請求項11】
前記蓋部は、前記容器本体の開口を覆うカバー部を備え、
前記嵌合部は、前記カバー部から突出して設けられると共に、筒状の内側には、抽出針の穿刺領域が形成されており、
前記カバー部は、前記穿刺領域に面する内表面と、前記内表面とは反対側の外表面とを備え、
前記外表面には、テーパ状に凹む傾斜面と、前記傾斜面に形成されると共に、少なくとも前記傾斜面の底を通過する穿刺用の溝とが設けられている、請求項1~10のいずれか一項記載の採尿容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用の尿を収容する採尿容器に関する。
【背景技術】
【0002】
尿検査を受ける被検者等は、例えば、自身で採取した尿を採尿容器に収め、病院などの検査機関に提出して検査を受ける。また、採尿容器は、尿サンプルとして搬送される際に用いられることもある。例えば、特許文献1、2には、ねじ付きキャップによって開閉される採尿容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54-92694号公報
【特許文献2】特開平9-325154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の採尿容器では、容器本体を開く場合にはキャップを回して螺合を解き、閉める場合にはキャップを逆方向に回して螺合させる必要があり、片手での開閉作業を行い難く、採集した尿を収容する際の扱いが面倒である。また、キャップが容器本体に螺合して容器本体を閉鎖するが、キャップと容器本体との螺合がずれていると尿が漏れてしまい、また、ずれていなくても、ねじ溝同士の摺接では、シール性が安定せず、結果として搬送中や検査中などに漏れてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、シール性を維持しつつ、容器本体を容易に開閉できる採尿容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有底筒状の容器本体と、容器本体の開口を閉じる蓋部と、蓋部を容器本体に開閉可能に接続する接続部と、を備え、蓋部は、容器本体に圧入され、弾性変形して容器本体の内周面に密接する筒状の嵌合部を備えている採尿容器である。
【0007】
この採尿容器では、接続部を介して蓋部と容器本体とが開閉可能に接続されているため、例えば、容器本体を片手で持った状態で蓋部を空けても、蓋部が落下等せず、蓋部を別の場所に仮置き等するような面倒は生じない。また、蓋部は、嵌合部を容器本体に圧入することで容器本体を閉じ、嵌合部を容器本体から抜くことで開くことができるので、容器本体の開閉は非常に簡単である。また、嵌合部は、容器本体の内周面に案内されながら圧入されるので、容器本体に対してずれ難く、シール性を安定して維持するのに好適である。つまり、この採尿容器は尿を収容する際の開閉操作が容易で、操作性が高く、一方で、容器本体を蓋部で閉じている状態では漏れにくく、シール性が高い。従って、この採尿容器によれば、シール性を安定して維持しつつ、容器本体を容易に開閉できる。
【0008】
上記の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部と、カバー部から突出すると共に、先端が開放された嵌合部とを備え、嵌合部の先端に沿った外周面には、カバー部から離れるほど縮径するテーパ部が設けられていてもよい。嵌合部を容器本体に圧入する際、先端のテーパ部によって嵌め込みが容易になる。
【0009】
上記の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部と、カバー部から突出すると共に、先端が開放された嵌合部とを備え、嵌合部の内周面は、カバー部に接続された根元から先端にかけて漸次拡径したテーパ状であってもよい。嵌合部の内周面をテーパ状にすることで、嵌合部の軸線方向で外径寸法を変えずに先端側の肉厚を薄くし易くなる。その結果、容器本体の内周面に密接してシール性を確保する嵌合部の機能を損なうことなく、嵌合部の先端を撓み易くして嵌合部を圧入する際の操作性を向上できる。
【0010】
上記の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部と、カバー部から突出すると共に、先端が開放された嵌合部とを備え、嵌合部の厚さは、カバー部に接続された根元よりも先端の方が薄くなっていてもよい。嵌合部の先端が根元よりも撓み易くなり、嵌合部を圧入する際の操作性を向上できる。
【0011】
上記の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部と、カバー部から突出すると共に、先端が開放された嵌合部とを備え、嵌合部は、嵌合部の軸線回りに沿って外周面が環状に凹んだくびれ部と、くびれ部と先端との間の可撓部と、カバー部に接続された根元とくびれ部との間の胴体部と、を備え、可撓部の外周面には、嵌合部の軸線回りに沿って突出し、且つ容器本体の内周面に閉環状に密接する第1シール部が設けられており、胴体部の外周面には、嵌合部の軸線回りに沿って突出し、且つ容器本体の内周面に閉環状に密接する第2シール部が設けられていてもよい。
【0012】
上述の採尿容器は、くびれ部によって胴体部よりも撓み易くなった可撓部を供えている。第1シール部は、可撓部に設けられているので、可撓部の撓みによって容器本体の内周面の形状に追従し易く、シール性を確保するのに有効である。更に、胴体部には第2シール部が設けられており、胴体部は可撓部よりも変形し難いので、安定したシール性の維持に有効である。つまり、第1シール部と第2シール部との相乗効果により、好適にシール性を確保でき、更に安定したシール性の維持に有利になる。
【0013】
上記の容器本体は、テーパ状の内周面を備えた本管部と、本管部と開口との間に設けられた直管状の圧接管部とを備え、第1シール部は、圧接管部の内周面に密接していてもよい。容器本体の底にいたる本管部がテーパ状であると型抜き等が容易であって効率良く製造できる。一方、圧接管部を直管状にすることで第1シール部との安定した密接性を確保し易くなり、シール性が向上する。
【0014】
上述の採尿容器は、蓋部を容器本体に固定するロック部を更に備え、ロック部は、蓋部及び容器本体の一方から他方に向けて延在すると共に、一方に接続された固定部を支点に弾性変形可能な腕部と、他方に設けられ、腕部に係合して蓋部の移動を規制すると共に、腕部の撓みによって蓋部の移動の規制が解除される係合部とを備えていてもよい。ロック部を備えることで、意図せずに蓋部が開放されてしまう不都合を防止できる。更に、腕部の撓みによって蓋部の移動の規制が解除されて蓋部の開放が可能になるため、蓋部の規制の解除も容易であり、操作性が向上する。
【0015】
上述の採尿容器の係合部は、容器本体の外周面に設けられ、且つ突出する凸部であり、腕部は、蓋部から凸部を乗り越えて延在する弾性部と、弾性部から上記外周面に向けて突出すると共に、凸部を超えた位置で凸部に係合する爪部と、を備えていてもよい。この採尿容器では、蓋部から容器本体に向けて腕部が延在することになる。そして、容器本体を片手で持ったまま、例えば親指で腕部を容器本体から引き離すように撓ませることで簡単に腕部の規制を解除して蓋部の開放が可能になる。つまり、片手での操作性の向上に有利になる。
【0016】
上述の採尿容器の係合部は、容器本体の外周面に設けられ、且つ突出する凸部であり、腕部は、蓋部から凸部を乗り越えて延在する弾性部と、弾性部に設けられると共に、凸部が挿入されて凸部に係合する孔部と、を備えていてもよい。この採尿容器では、蓋部から容器本体に向けて腕部が延在することになる。そして、容器本体を片手で持ったまま、例えば親指で腕部を容器本体から引き離すように撓ませることで簡単に腕部の規制を解除して蓋部の開放が可能になる。つまり、片手での操作性の向上に有利になる。
【0017】
上述の採尿容器の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部を備え、嵌合部は、カバー部から筒状に突出して設けられると共に、筒状の内側には、抽出針の穿刺領域が形成されており、カバー部は、穿刺領域に面する内表面と、内表面とは反対側の外表面とを備え、外表面には、テーパ状に凹む傾斜面と、傾斜面の底である穿刺面とが設けられており、カバー部は、穿刺面を形成する部分の厚さが傾斜面を形成する部分の厚さよりも薄くてもよい。抽出針を採尿容器の蓋部に穿刺する際、抽出針は傾斜面によって多少のズレを補正されながら、穿刺面に穿刺されるので好適に穿刺領域に達する。更に穿刺面は、傾斜面よりも厚さが薄いので、傾斜面よりも破断し易く、穿刺する際の効率も向上する。
【0018】
上述の採尿容器の蓋部は、容器本体の開口を覆うカバー部を備え、嵌合部は、カバー部から突出して設けられると共に、筒状の内側には、抽出針の穿刺領域が形成されており、カバー部は、穿刺領域に面する内表面と、内表面とは反対側の外表面とを備え、外表面には、テーパ状に凹む傾斜面と、傾斜面に形成されると共に、少なくとも傾斜面の底を通過する穿刺用の溝とが設けられていてもよい。抽出針を採尿容器の蓋部に穿刺する際、抽出針は傾斜面によって多少のズレを補正されながら、穿刺用の溝から穿刺されるので好適に穿刺領域に達する。更に穿刺用の溝は、溝が設けられていない部分よりも破断し易く、穿刺する際の効率も向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シール性を維持しつつ、容器本体を容易に開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る採尿容器において蓋部が開いている状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、開いている状態の蓋部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、開いている状態の容器本体の上管部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、蓋部が閉じている状態の採尿容器の斜視図である。
【
図5】
図5は、採尿容器を蓋部の上方から見た平面図である。
【
図6】
図6は、尿が入った状態の
図5のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に沿った断面を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図5のVIII-VIII線に沿った断面図であり、特に穿刺予定部を中心に示す図である。
【
図10】
図10は、ロック部の変形例を示し、(a)の図は一の変形例に係る採尿容器の断面図であり、(b)の図は他の変形例に係るロック部を備えた採尿容器の断面図であり、(c)の図は他の変形例に係るロック部を備えた採尿容器の断面図である。
【
図12】
図12は、採尿容器を片手で操作している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る採尿容器の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、
図1及び
図4に示されるように、実施形態に係る採尿容器1は、有底筒状の容器本体2と、容器本体2の開口2aを閉じる蓋部3と、容器本体2と蓋部3とを接続する接続片4(接続部の一例)とを備えている。容器本体2、蓋部3、及び接続片4は一体成形されても良いし、別体として成形した後に接着等して一体化させてもよい。なお、以下の説明において「下」とは、蓋部3を閉じて採尿容器1を立てた状態(
図4参照)を前提にして、鉛直方向または他の部分等と比較して鉛直方向側に存在する部分を意図し、また、「上」とは、鉛直方向の反対方向または他の部分等と比較して鉛直方向とは反対側に存在する部分を意図する。
【0023】
容器本体2及び蓋部3は、収容対象である尿Uに対して耐水性、耐久性を有し、且つ検査対象である尿Uに影響等を与え難い材料を広く使用することができる。例えば、採尿容器1は、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリフェニレンエーテル等を使用することができ、更に製造性や耐腐食性等を考慮すると、例えばポリエチレン、ポリプロピレンが望ましい。また、容器本体2は、収容対象である尿Uを外部から視認できるように透明あるいは半透明であると好ましく、逆に不透明にすることもできる。
【0024】
容器本体2は、採取した尿Uを収容する筒状の容器である。容器本体2の一方の端部には、蓋部3によって開閉する開口2aが形成され、他方の端部は閉塞して底2bとなる。底2bの外形は凸状に湾曲している。容器本体2の外周面2cには、収容された尿Uの量を目視にて確認できるように目盛等が設けられていてもよい。また、容器本体2の外周面2cには、被検者を識別するための識別情報、例えばバーコードシールなどが貼付されるなどして設けられていてもよい。
【0025】
容器本体2は、開口2aを有する上管部21(
図3参照)と、底2bを有する底管部22と、上管部21と底管部22との間の中管部23とを備えている。
【0026】
底管部22は底2bに向けて漸次縮径しており、底2bに至るテーパ状の内周面を備えている。
図3に示されるように、中管部23も僅かに勾配を有し、テーパ状の内周面23aを有する。中管部23の勾配角度は、底管部22の勾配角度に比べて小さい。中管部23及び底管部22の勾配角度とは、筒状の容器本体2の軸線Laを仮定し、この軸線Laを含む仮想の断面を仮定した場合に、この断面上で、この軸線Laとの間に形成される傾斜角度を意味する。中管部23や底管部22の勾配角度は、例えば、射出成形等で容器本体2を製造する場合に、型抜き等をスムーズに実施できる角度であれば良い。なお、底管部22や中管部23は、例えば、勾配が無く、直線的な円筒状(直状管)であってもよい。
【0027】
容器本体2の上管部21は直状管であり、直線的な円筒状の内周面21aを有する。上管部21の外周面2cには、外方に突出した環状の位置決め部2dが設けられている。位置決め部2dは、蓋部3に当接して蓋部3の位置決めを補助する(
図4及び
図9参照)。なお、本実施形態において、上管部21は、容器本体2の圧接管部の一例であり、テーパ状の内周面23aを有する中管部23は容器本体2の本管部の一例である。
【0028】
上管部21の端部(上端部)は閉じておらず、開口2aが形成されている。上管部21の内径は、軸線La方向で変化なく、基本的に同径であるが、開口2aを形成する上端部には、上方に向けて内径が広がる受け入れ部21bが形成されている。つまり、受け入れ部21bは、上管部21の上端部から下方に向けて内径が漸次縮径したテーパ状の内周面を有する部分である。また、上管部21は、受け入れ部21bよりも下方の位置、つまり、受け入れ部21bと中管部23との間に直管部21cを備えている。直管部21cは、軸線La方向で内径が一定の部分である。直管部21cは、上管部21の主要部であり、本実施形態において、上管部21と言えば、基本的に直管部21cを意味する。
【0029】
図2、
図6及び
図9に示されるように、蓋部3は、容器本体2に装着されて開口2aを覆うカバー部6と、カバー部6から突出する嵌合部7とを備えている。カバー部6は、容器本体2に装着された際に開口2aに面する内表面6aと、反対側の外表面6bとを備えている。嵌合部7は、カバー部6の内表面6aから突出して設けられている。
【0030】
嵌合部7は筒状である。嵌合部7の外径は、上管部21(直管部21c)の内径と同一、あるいは上管部21の内径よりも大きい。嵌合部7は、容器本体2の上管部21の内周面21aに当接するように圧入され、容器本体2の内部のシール性を確保する。嵌合部7は、カバー部6に接続された一方の端部(根元7a)と、根元7aに対して反対側の端部(先端7b)とを備えている。嵌合部7の先端7bは開放され、更に規制を受けていない遊端である。嵌合部7は、主に先端7bを起点として弾性変形可能な可撓性を有する。
【0031】
嵌合部7の先端7bに沿った外周面には、カバー部6から離れるほど縮径する先導部7c(テーパ部の一例)が設けられている(
図3参照)。嵌合部7の外径は、容器本体2の内部のシール性を確保するため、基本的に容器本体2の上管部21の内径と同一、あるいは上管部21の内径よりも大きい。一方で、嵌合部7の先端7bの外径は、先導部7cを設けることで上管部21の内径よりも小さくなっており、嵌合部7を容器本体2の開口2aから圧入する際の操作性を向上させている。なお、本実施形態では、上管部21にもテーパ状の受け入れ部21bが形成されている。そのため、嵌合部7の先導部7c及び上管部21の受け入れ部21bの相乗効果により、嵌合部7を上管部21の開口2aに挿入する際の操作性が向上する。
【0032】
嵌合部7の内周面7dは、根元7aから先端7bにかけて漸次拡径したテーパ状である。嵌合部7を容器本体2に圧入してシールする際、先端7bは根元7aに比べて弾性変形し易く、この弾性変形によって縮径する。その結果、嵌合部7の先端7b近傍では、容器本体2の内周面21aに対する反力が大きくなり、シール性の維持に有効である。
【0033】
なお、嵌合部7の内周面7dがテーパ状に広がる傾斜は、カバー部6の内表面6aを平面と仮定し、カバー部6の内表面6aの法線NL方向に対する傾き(傾斜角度α)として把握することができる。この傾斜角度αは、嵌合部7を容器本体2に圧入した際の操作性や圧入した後のシール性等を考慮して適宜に決定でき、例えば、0.5°以上、10°以下にすることができる。0.5°以上にすることで嵌合部7を弾性変形させて圧入した後に十分な反力を得やすくなり、シール性の向上という点で有利になる。また、10°以下であれば圧入する際に作業し易く、操作性の向上に有利である。また、この傾斜角度αは、1°以上、5°以下が更に望ましく、1.5°以上、3°以下が更に望ましい。
【0034】
また、嵌合部7の先端7bの厚さT2は根元7aの厚さT1よりも小さくなっている。例えば、嵌合部7の根元7aから先端7bにかけての厚さTは、漸次小さくなっている。この「厚さTが漸次小さくなる」という技術的意義は、厚さTが連続的に縮小していく形態のみならず、厚さTが段階的(不連続)に縮小していく形態も含むことを意図している。根元7aの厚さT1を厚く(大きく)することで形状安定性に優れた嵌合部7にすることができ、シール性を安定して維持するのに有利になる。一方で、先端7bの厚さT2を薄く(小さく)することで、先端7bは撓み易くなり、容器本体2に圧入して蓋部3を閉じる際の操作性が向上する。つまり、嵌合部7の先端7bの厚さT2を根元7aの厚さT1よりも小さくすることで、装着時の操作性の向上と装着後のシール性の安定性向上とを両立できる。なお、嵌合部7の根元7aの厚さT1に対する先端7bの厚さT2の比率は、装着時の操作性の向上と装着後のシール性の安定性向上とを両立するという観点で、80%以下が望ましく、70%以下が更に望ましく、60%以下が更に望ましい。
【0035】
嵌合部7の根元7aと先端7bとの間には、嵌合部7の軸線Lb回りに沿って外周面が環状に凹んだくびれ部8が設けられている。くびれ部8を支点にして、くびれ部8と先端7bとの間の部分(可撓部9)は撓み易くなる。つまり、可撓部9は、嵌合部7を容器本体2に圧入する際に積極的に撓んで嵌め易くなるという機能を奏する。逆に、くびれ部8と根元7aとの間の部分(胴体部10)は、嵌合部7の形状安定性を優先する部分であり、胴体部10は可撓部9に比べて撓み難くなっている。本実施形態では、くびれ部8を設けることで可撓部9を撓み易くし、更に、可撓性の観点で可撓部9と胴体部10とはくびれ部8によって縁切りされる。その結果、可撓部9での撓みの影響を胴体部10が受けて形状安定性が損なわれるのを軽減するという工夫も施されている。
【0036】
可撓部9の外周面には、嵌合部7の軸線Lb回りに沿って環状に突出し、且つ容器本体2の内周面21aに閉環状に密接する第1シール部7eが設けられている。また、胴体部10の外周面には、嵌合部7の軸線Lb回りに沿って容器本体2の内周面21aに閉環状に密接する第2シール部7fが設けられている。第1シール部7eは、弾性変形して縮径している可撓部9の反力もあり、第2シール部7fに比べてライン状の狭い範囲で容器本体2の内周面21aに強固に密着してシール性を確保している。一方で、第2シール部7fは、第1シール部7eよりも広い範囲で容器本体2の内周面21aに密着し、シール性の維持に貢献している。
【0037】
図4及び
図9に示されるように、蓋部3は、嵌合部7の外周面を囲むように設けられた筒状の外覆部3aを備えている。外覆部3aは、カバー部6の外縁に沿って立設され、カバー部6の内表面6aの全体を囲むように設けられている。蓋部3で容器本体2の開口2aを閉じた際、外覆部3aは容器本体2の位置決め部2dに当接し、蓋部3の適切な装着や位置決めの補助的な役割を果たす。
【0038】
図6、
図7、及び
図8に示されるように、蓋部3は、抽出針Nを受け入れる導入部31と、抽出針Nが穿刺されて貫通する穿刺予定部32とを備えている。導入部31は、カバー部6の外表面6bの中央に設けられた穴部であり、穿刺予定部32は導入部31の底の部分である。カバー部6の内表面6aには上述の嵌合部7が設けられており、筒状の嵌合部7の内側には、穿刺領域Arが形成されている。穿刺領域Arは、穿刺予定部32を貫通した抽出針Nの先端が差し入れられる領域である。
【0039】
導入部31は、嵌合部7の軸線Lbに対して同芯状の円形の凹みであり、軸線Lb方向で内径が一定の円筒状であっても、穿刺予定部32に向けて内径が縮径した円錐台状であってもよい。また、本実施形態に係るカバー部6の内表面6aには、導入部31に対応して環状に突出した筒状部33が設けられており、筒状部33は穿刺領域Ar内に配置されている。
【0040】
抽出針Nが穿刺される前の状態において、穿刺予定部32は破断されていない。穿刺予定部32は、テーパ状に凹む傾斜面32aと、傾斜面32aの底である穿刺面32bとを備えている。より詳しく説明すると、傾斜面32aは導入部31に囲まれており、中心に向けて降下するような勾配を有し、中心に穿刺面32bが設けられている。傾斜面32aの勾配角度は、軸線Lbに直交する仮想の平面を基準にして1°以上で、且つ5°以下である。また、この勾配角度は、1.5°以上で、且つ4°以下が望ましく、2°以上で、且つ3°以下が更に望ましい。
【0041】
穿刺面32bを形成する部分の厚さT3は、傾斜面32aを形成する部分の厚さT4よりも薄くなっている。穿刺面32bを形成する部分は、傾斜面32aを形成する部分よりも破断し易く、抽出針Nによって穿刺された際に抽出針Nが貫通し易くなっている。なお、穿刺面32bを形成する部分の厚さT3は、傾斜面32aを形成する部分の厚さT4に対して50%以下であり、40%以下が望ましく、30%以下が更に望ましい。
【0042】
また、穿刺予定部32には、一または複数の溝32cが設けられている。溝32cは、傾斜面32aに沿うように傾斜しており、傾斜面32aの底となる中央の穿刺面32bを通過するように設けられている。溝32cが形成された部分は、傾斜面32aを形成する部分の厚さT4よりも薄くなっており、傾斜面32aを形成する部分よりも抽出針Nが貫通し易くなっている。なお、本実施形態に係る穿刺用の溝32cは二本であり、平面視において穿刺面32bで交差するような十字状(
図5参照)であるが、穿刺面32bを通過する単体(一本)の溝32c、あるいは三本以上の溝32cが穿刺面32bを通過し、複数の溝32cが穿刺面32bで交差するように設けても良い。
【0043】
図1及び
図6に示されるように、蓋部3は、接続片4を介して容器本体2の上管部21に接続されている。接続片4は可撓性を有し、容器本体2に対して蓋部3を柔軟に移動させることができる。蓋部3を容器本体2に装着して開口2aを閉じた状態において、接続片4が設けられた側部に対し、反対側となる側部には蓋部3を容器本体2に固定するためのロック部5が設けられている。
【0044】
図4及び
図6に示されるように、ロック部5は、蓋部3及び容器本体2の一方から他方に向けて延在すると共に、一方に接続された固定部51cを支点に弾性変形可能な腕部51と、他方に設けられ、腕部51に係合する凸部52とを備えている。凸部52は、腕部51の延在方向Daの移動を規制して蓋部3の移動を規制する。また、凸部52は、腕部51の撓みによって腕部51に対する係合が解かれ、蓋部3の移動の規制が解除される。凸部52は、係合部の一例である。
【0045】
本実施形態において、上記の「一方」とは蓋部3を意図し、「他方」とは容器本体2を意図している。容器本体2の外周面2cには、外方に突出する凸部52が設けられている。腕部51は、U字板状の弾性部51aを備えている。弾性部51aは、カバー部6の縁である外覆部3aから下方に突き出すように設けられている。また、弾性部51aは、蓋部3(外覆部3a)との固定部51cから容器本体2の外周面2cに沿うように延在し、凸部52を乗り越える位置まで達している。弾性部51aには、凸部52を乗り越えた位置に爪部51bが設けられており、爪部51bは容器本体2の外周面2cに向けて突出している。爪部51bは、蓋部3が容器本体2から離脱する際に掛かって抵抗となるように凸部52に係合する。なお、爪部51bは、凸部52に係合できれば、弾性部51aの先端ではなく、途中に設けられていても良い。
【0046】
弾性部51aには、孔部51dが設けられている。孔部51dは、弾性部51aを超えて外覆部3aにも至るように上下方向に長い矩形形状である(
図4参照)。孔部51dの一部(下部)は爪部51bと一緒に凸部52に係合する。つまり、本実施形態に係る凸部52は、爪部51bを超えて孔部51dにも挿入され、孔部51dにも係合している。つまり、凸部52は、爪部51b及び孔部51dの両方に係合することで、蓋部3が容器本体2から離脱する際の抵抗になっている。なお、本実施形態において、弾性部51aに爪部51bを設けず、孔部51dのみが凸部52に係合する態様にすることも可能である。
【0047】
次に、
図10を参照し、ロック部5の変形例について説明する。なお、下記の変形例において、上記の実施形態と同一または対応する部材や構造には、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0048】
図10の(a)図に係る変形例では、孔部51dは形成されておらず、弾性部51aに設けられた爪部51bが凸部52Aに係合する。上述の実施形態と同様に、腕部51Aは、蓋部3に接続された固定部51cを支点にして弾性変形可能である。そして、容器本体2に設けられた凸部52A(係合部)は、腕部51Aの爪部51bに係合して腕部51Aの延在方向Daの移動を規制すると共に、腕部51Aの撓みによって腕部51Aの規制が解除される。
【0049】
図10の(b)図または(c)図は、ロック部5の他の変形例を示している。これらの変形例に係る腕部51B、51Cは、「蓋部3及び容器本体2の一方」として容器本体2に設けられており、凸部52B、52C(係合部)は、「他方」として蓋部3に設けられている。つまり、これらの変形例に係る腕部51B,51Cは、容器本体2の外周面2cに固定されており、この固定部51cから蓋部3に向けて延在している。腕部51B、51Cは、容器本体2に接続された固定部51cを支点に弾性変形可能である。
【0050】
図10の(b)図に示される変形例に係る腕部51Bには孔部51eが設けられている。蓋部3には、凸部52Bが設けられており、凸部52Bは、腕部51Bの孔部51eに係合して蓋部3の移動を規制すると共に、腕部51Bの撓みによって蓋部3の移動の規制が解除される。
図10の(c)図に示される変形形態に係る腕部51Cには爪部51fが設けられている。蓋部3には、凸部52Cが設けられており、凸部52Cは、腕部51Cの爪部51fに係合して蓋部3の移動を規制すると共に、腕部51Cの撓みによって蓋部3の移動の規制が解除される。
【0051】
次に、
図11を参照し、採尿容器1に収容されている尿Uの検査工程について説明する。尿Uの検査工程では、例えば、
図11に示されるような尿分析装置100が使用される。尿分析装置100は、尿Uが収容された複数の採尿容器1を格納するラックトレイ101と、ラックトレイ101を移動させる搬送部102と、採尿容器1の蓋部3から抽出針Nを穿刺すると共に、採尿容器1内の尿Uを抽出して成分等を分析する分析部103とを備えている。
【0052】
採尿容器1には、例えば検体を識別するためのバーコードシールが貼付されている。ラックトレイ101には、複数の採尿容器1が、蓋部3を上にして立てた状態で設置されている。複数の採尿容器1が設置されたラックトレイ101は、待機エリアWAから分析エリアAAに搬送される。分析エリアAAには分析部103が設置されている。ラックトレイ101上で規則的に並んでいる採尿容器1は、分析エリアAAにおいて順番に引き出される。分析部103は、引き出された採尿容器1に対し、抽出針Nを蓋部3に穿刺することで尿Uのサンプリング動作を実施する。ここで、分析部103は、抽出針Nの移動を高い精度で制御しており、基本的に抽出針Nが穿刺予定部32の穿刺面32bから外れることは少ない。しかしながら、仮に多少のズレが生じても、蓋部3の穿刺予定部32には傾斜面32aが形成されており、この傾斜面32aによって抽出針Nの位置は補正されるので、穿刺面32bでの抽出針Nの適切な穿刺が行われる。
【0053】
分析部103でのサンプリング動作によって抽出された尿Uは、例えば、試薬層に滴下されて所定の検査項目の測定が行われたり、あるいは、フローセルを用いた側光によって尿色や混濁の程度の測定などが行われたりする。分析部103での尿Uの抽出等が終わると、ラックトレイ101は分析エリアAAから搬出エリアFAに搬送される。
【0054】
上記の実施形態に係る採尿容器1では、接続片4を介して蓋部3と容器本体2とが開閉可能に接続されている。従って、例えば、
図12に示されるように、容器本体2を片手Hで持った状態で蓋部3を空けても、蓋部3が落下等せず、蓋部3を別の場所に仮置き等するような面倒は生じない。また、蓋部3は、嵌合部7を容器本体2に圧入することで容器本体2を閉じ、嵌合部7を容器本体2から抜くことで開くことができるので、容器本体2の開閉は非常に簡単である。また、嵌合部7は、容器本体2の内周面21aに案内されながら圧入されるので、容器本体2に対してずれ難く、シール性を安定して維持するのに好適である。つまり、この採尿容器1は尿Uを収容する際の開閉操作が容易で、操作性が高い。一方で、容器本体2を蓋部3で閉じている状態では漏れにくく、シール性が高い。従って、この採尿容器1によれば、シール性を安定して維持しつつ、容器本体2を容易に開閉できる。
【0055】
また、蓋部3は、容器本体2の開口2aを覆うカバー部6と、カバー部6から突出すると共に、先端7bが開放された嵌合部7とを備え、嵌合部7の先端7bには先導部7cが設けられている。嵌合部7を容器本体2に圧入する際、先導部7cを容器本体2の開口2a内に差し込み易くなるため、嵌合部7の嵌め込みが容易になる。
【0056】
また、嵌合部7の内周面7dは、根元7aから先端7bにかけて漸次拡径したテーパ状である。嵌合部7の内周面7dをテーパ状にすることで、嵌合部7の軸線Lb方向で外径寸法を変えずに先端7b側の肉厚を薄くし易くなる。その結果、容器本体2の内周面21aに密接してシール性を確保する嵌合部7の機能を損なうことなく、嵌合部7の先端7bを撓み易くして嵌合部7を圧入する際の操作性を向上できる。
【0057】
また、嵌合部7の厚さTは、根元7aよりも先端7bの方が薄くなっている。その結果、嵌合部7の先端7bが根元7aよりも撓み易くなり、嵌合部7を圧入する際の操作性を向上できる。
【0058】
また、嵌合部7には、くびれ部8が設けられており、くびれ部8と先端7bとの間の可撓部9には、第1シール部7eが設けられており、くびれ部8と根元7aとの間の胴体部10には、第2シール部7fが設けられている。可撓部9は胴体部10よりも撓み易くなっており、第1シール部7eは可撓部9に設けられているので、可撓部9の撓みによって容器本体2の内周面21aの形状に追従し易く、シール性を確保するのに有効である。更に、胴体部10には第2シール部7fが設けられており、胴体部10は可撓部9よりも変形し難いので、安定したシール性の維持に有効である。つまり、第1シール部7eと第2シール部7fとの相乗効果により、好適にシール性を確保でき、更に安定したシール性の維持に有利になる。なお、本実施形態において、第2シール部7fが容器本体2の内周面21aに密接する領域は第1シール部7eよりも広いため、形状安定性の高い第2シール部7fによってシール性を広い範囲で担保し易くなる。
【0059】
上記の容器本体2は、テーパ状の内周面23aを備えた中管部23(本管部の一例)と、直管状の上管部21(圧接管部の一例)とを備え、第1シール部7eは上管部21の内周面21aに密接している。少なくとも中管部23がテーパ状であるので型抜き等が容易であって効率良く製造できる。一方、上管部21は直管状なので、第1シール部7eとの安定した密接性を確保し易くなり、シール性が向上する。
【0060】
また、上述の実施形態に係る採尿容器1は、蓋部3を容器本体2に固定するロック部5を備えている。ロック部5を備えることで、意図せずに蓋部3が開放されてしまう不都合を防止できる。更に、腕部51の撓みによって腕部51の規制が解除されて蓋部3の開放が可能になるため、蓋部3の規制の解除も容易であり、操作性が向上する。変形例に係る採尿容器1も同様であり、腕部51A、51B、51Cの撓みによって腕部51A、51B、51Cの規制が解除されて蓋部3の開放が可能になるため、蓋部3の規制の解除も容易であり、操作性が向上する。
【0061】
また、上述の採尿容器1は、ロック部5の係合部として凸部52を備えており、また、ロック部5の腕部51は、凸部52を乗り越えて延在する弾性部51aと、弾性部51aに設けられて凸部52、52Aに係合する爪部51bとを備えている。更に、この腕部51には、凸部52が挿入されて凸部52に係合する孔部51dが設けられている。この採尿容器1では、蓋部3から容器本体2に向けて腕部51が延在することになる。そして、容器本体2を片手Hで持ったまま、例えば親指で腕部51を容器本体2から引き離すように撓ませることで簡単に腕部51の規制を解除して蓋部3の開放が可能になる。つまり、片手Hでの操作性の向上に有利になる。
【0062】
なお、本実施形態に係るロック部5は爪部51bと孔部51dとの両方を備えており、凸部52との係合状態を維持する上で有利である。しかしながら、孔部51dのみを形成する態様であっても良く、また、上述の変形例(
図10の(a)図参照)のように、爪部51bのみを形成する態様であっても良い。この変形例においても、容器本体2を片手Hで持ったまま、例えば親指で腕部51を容器本体2から引き離すように撓ませることで簡単に腕部51の規制を解除して蓋部3の開放が可能になる。
【0063】
また、上述の実施形態に係る採尿容器1は、嵌合部7の内側に抽出針Nの穿刺領域Arが形成されており、カバー部6の外表面6bには、テーパ状に凹む傾斜面32aと、傾斜面32aの底である穿刺面32bとが設けられている。そして、穿刺面32bを形成する部分の厚さT3は傾斜面32aを形成する部分の厚さT4よりも薄い。その結果、抽出針Nを採尿容器1の蓋部3に穿刺する際、抽出針Nは傾斜面32aによって多少のズレを補正されながら、穿刺面32bに穿刺されるので好適に穿刺領域Arに達する。更に穿刺面32bは、傾斜面32aよりも厚さT4が薄いので、傾斜面32aよりも破断し易く、穿刺する際の効率も向上する。
【0064】
なお、本実施形態に係る採尿容器1は、抽出針Nが差し入れられる導入部31が形成されており、傾斜面32aと穿刺面32bとは導入部31の穿刺予定部32に形成されている。導入部31を有するので、抽出針Nで穿刺する部分を狙い易くなり、抽出針Nによる適切な穿刺を行い易い。なお、カバー部6の外表面6bに導入部31を形成するための凹みを設けることなく、傾斜面32aや穿刺面32bを設けるような態様にすることも可能である。
【0065】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態や変形形態のみに限定して解釈されるものではなく、他の形態であってもよい。例えば、容器本体は、全体を直管状となるような形態でもよく、逆に、全体がテーパ状で直管状の部分を有しない形態であってもよい。また、容器本体の開口の周りに、受け入れ部が形成されていない形態であってもよい。
【0066】
また、蓋部の嵌合部は、内周面がテーパ状に広がる形態に限定されず、内径が一定の直管状であってもよい。また、嵌合部に先導部が設けられていない形態や、くびれ部が設けられていない形態や、逆に複数のくびれ部が軸線方向に並んでいる形態であってもよい。また、嵌合部に第1シール部が設けられていない形態でもよく、例えば、くびれ部を設けることなく、嵌合部の外周面の略全体が容器本体の内周面に面接触している形態であってもよい。
【0067】
また、ロック部を備えていない形態であってもよい。また、接続部は変形可能な接続片に限定されず、蓋部に固定された支持片と容器本体に固定された支持片とが、それぞれ軸部を介して回動可能に接続された態様であっても良い。
【0068】
また、カバー部の外表面には、導入部を設けることなく、傾斜面と穿刺面とが設けられた形態でもよく、また、傾斜面には穿刺用の溝が設けられることなく、穿刺面を形成する部分の厚さが、傾斜面を形成する部分の厚さよりも薄い形態であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…採尿容器。2…容器本体、2a…開口、3…蓋部、4…接続片(接続部)、5…ロック部、6…カバー部、6a…内表面、6b…外表面、7a…根元、7b…先端、7c…先導部(テーパ部)、7e…第1シール部、7f…第2シール部、8…くびれ部、9…可撓部、10…胴体部、21…上管部(圧接管部)、21a…内周面、23…中管部(本管部)、32a…傾斜面、32b…穿刺面、32c…溝、51…腕部、51a…弾性部、51b…爪部、51d…孔部、52…凸部(係合部)、Ar…穿刺領域、Lb…軸線(嵌合部の軸線)、U…尿。