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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021563
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】車両用電装装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 9/18 20060101AFI20220127BHJP
   G10K 9/12 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
G10K9/18 Z
G10K9/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125217
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 満
(57)【要約】
【課題】誤通信を防止することが可能な車両用電装装置を提供する。
【解決手段】メモリ73は、制御プログラム85または制御パラメータ86の少なくとも一方を記憶する。主制御部(72)は、メモリ73に対して書き込みおよび読み出しを行うメモリインタフェース81を含み、メモリ81の記憶情報に基づいて所定の制御を行う。通信制御部77は、外部端子(外部通信端子)PN3と主制御部(72)との間の通信経路78を制御する。ここで、通信制御部77は、外部端子PN3から、予め定めた複数ビットの信号パターンからなるキー信号を受信した場合に通信経路78を有効状態に制御するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御プログラムまたは制御パラメータの少なくとも一方を記憶するメモリと、
前記メモリに対して書き込みおよび読み出しを行うメモリインタフェースを含み、前記メモリの記憶情報に基づいて所定の制御を行う主制御部と、
外部電源端子と、
外部通信端子と、
前記外部通信端子と前記主制御部との間の通信経路を制御する通信制御部と、
を有し、
前記通信制御部は、前記外部通信端子から、予め定めた複数ビットの信号パターンからなるキー信号を受信した場合に前記通信経路を有効状態に制御する、
車両用電装装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記外部電源端子に電源が投入されたのち、予め定めた所定の期間内に前記キー信号を受信した場合に前記通信経路を有効状態に制御し、前記所定の期間内に前記キー信号を受信しない場合に前記通信経路を無効状態に制御する、
請求項1に記載の車両用電装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電装装置において、
前記通信制御部は、
前記外部電源端子に電源が投入された時点で検出信号を送信するパワーオン検出器と、
前記パワーオン検出器からの前記検出信号に応じて前記所定の期間を計測し、前記所定の期間を経過した際にタイムアウト信号を送信するタイマと、
前記外部通信端子で受信した信号が前記キー信号であるか否かを判定し、前記キー信号である場合に一致信号を送信するキー信号判定器と、
各状態間の状態遷移を制御するシーケンサと、
と有し、
前記シーケンサは、
前記通信経路が有効に制御された状態である通信有効状態と、
前記通信経路が無効に制御された状態である通信無効状態と、
前記外部通信端子からの信号を前記キー信号判定器に判定させる状態であるキー通信有効状態と、
を有し、
前記パワーオン検出器からの前記検出信号に応じて前記キー通信有効状態に遷移し、前記キー通信有効状態で前記キー信号判定器からの前記一致信号を受信した場合には前記通信有効状態に遷移し、前記キー通信有効状態で前記タイマからの前記タイムアウト信号を受信した場合には前記通信無効状態に遷移する、
車両用電装装置。
【請求項4】
前記タイマは、クリア信号に応じて、前記所定の期間を再度計測し、
前記シーケンサは、前記通信有効状態では、前記外部通信端子からの所定の信号を受信する毎に前記タイマへ前記クリア信号を送信し、前記通信有効状態で、前記タイマからの前記タイムアウト信号を受信した場合には前記通信無効状態に遷移する、
請求項3に記載の車両用電装装置。
【請求項5】
前記キー信号は、LIN(Local Interconnect Network)プロトコルまたはCAN(Controller Area Network)プロトコルに基づく信号である、
請求項2に記載の車両用電装装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用電装装置において、
前記車両用電装装置は、ダイヤフラムを振動させることにより発生した音を共鳴器により共鳴させるホーン装置であり、
前記主制御部は、前記メモリの記憶情報に基づいて前記ダイヤフラムの振動を制御するホーン制御部である、
車両用電装装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用電装装置において、
前記車両用電装装置は、車両に実装された状態で、前記車両が通常動作を行う際に、前記車両との通信を行う必要がない装置である、
車両用電装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電装装置に関し、例えば、ホーン装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のモータのそれぞれを効率的に動作させるモータ駆動システムが示される。当該モータ駆動システムは、制御部と、複数のモータ駆動制御装置とをそれぞれ接続する複数の通信ラインと、複数の通信ラインの有効状態・無効状態を切り替えるスイッチ部とを備える。
【0003】
特許文献2には、ホーン装置を分解せずに外部から内部のコントローラに通信可能なホーン装置が示される。当該ホーン装置は、コイルボビンをケースに固定するリベットを備える。外部から内部のコントローラへの通信は、このリベットを通信媒体として行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-129594号公報
【特許文献2】特開2019-70727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホーン装置等を代表とする車両用電装装置は、製品完成後の不具合解析や、製品完成後の制御プログラム変更・制御パラメータ変更等を行うため、外部通信端子を備える場合がある。一方、ホーン装置等は、車両に搭載された実使用状態では、このような外部通信端子を用いた通信を行う必要はない。このため、例えば、特許文献2に示されるようなリベット(外部通信端子)は、車両上に開放状態で実装され得る。しかし、車両では、多くのノイズが発生し得るため、外部通信端子に各種ノイズが入力される場合があった。その結果、ホーン装置等において、誤通信に伴う意図しない誤動作が生じる恐れがあった。
【0006】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、誤通信を防止することが可能な車両用電装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用電装装置は、制御プログラムまたは制御パラメータの少なくとも一方を記憶するメモリと、前記メモリに対して書き込みおよび読み出しを行うメモリインタフェースを含み、前記メモリの記憶情報に基づいて所定の制御を行う主制御部と、外部電源端子と、外部通信端子と、前記外部通信端子と前記主制御部との間の通信経路を制御する通信制御部と、を有し、前記通信制御部は、前記外部通信端子から、予め定めた複数ビットの信号パターンからなるキー信号を受信した場合に前記通信経路を有効状態に制御するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両用電装装置において、誤通信を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態によるホーン装置の概略構成例を示す斜視図である。
図2図1のホーン装置の内部構造の一例を示す断面図である。
図3】(a)は、図2において、ケースに収容されるコイルボビンの構成例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のコイルボビンを裏側から見た場合の構成例を示す斜視図である。
図4図2および図3(a)における制御IC周りの概略構成例を示す回路ブロック図である。
図5図4における通信制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
図6図5におけるシーケンサの処理内容の一例を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
《車両用電装装置(ホーン装置)の構成》
実施の形態では、車両用電装装置がホーン装置である場合を例に説明を行う。図1は、本発明の一実施の形態によるホーン装置の概略構成例を示す斜視図である。図1に示すホーン装置10は、自動車等の車両の前方側に搭載され、ホーン(警報音)を発生する。ホーン装置10は、電磁式の渦巻き形ホーンであり、ステアリング等に設けられるホーンスイッチの操作により作動し、ホーンを発生する。
【0012】
ホーン装置10は、取り付けステー11と、取り付けステー11に設置されるホーン本体20と、ホーン本体20に設置される共鳴器30と、ホーン本体20のケース21に固定されるコネクタ50とを備える。共鳴器30は、ホーン本体20が発生する音を共鳴させて外部に放音する。コネクタ50には、車両側の外部コネクタ(図示せず)が差し込めるようになっている。
【0013】
図2は、図1のホーン装置の内部構造の一例を示す断面図である。図2に示されるように、ホーン本体20は、ケース21を備える。ケース21は、一方側(図中下側)が閉塞されるとともに他方側(図中上側)が開口され、段付きの有底筒状に形成される。ケース21内には、円板底部を備えた小径収容部21bと、環状底部を備えた大径収容部21dとが設けられる。小径収容部21bおよび大径収容部21d内には、プラスチック等の樹脂材料(絶縁材料)よりなるコイルボビン40が収容される。コイルボビン40は、コイルL1を巻装するコイル巻装部41と、制御IC(Integrated Circuit)CICおよび容量素子C1を含むコントローラを実装するコントローラ実装部42とを備える。
【0014】
ケース21の開口部は、薄い金属板で略円盤状に形成されたダイヤフラム22により閉塞される。ダイヤフラム22の中心部分には、可動鉄心23が固定され、可動鉄心23は、磁性材料を用いて段付きの略円柱形状に形成される。可動鉄心23は、ケース21の開口部側において、径が異なる一対のワッシャ24a,24bを用いてダイヤフラム22に固定される。径が異なる一対のワッシャ24a,24bを用いることで、可動鉄心23の共鳴器30側(図中上側)が先細り形状となる。これにより、空気振動室27と発音室31との間の出音口26における空気流路の面積が大きくなり、出音口26を流れる空気の流れをスムーズにして、ホーン装置10の音響特性が安定化する。
【0015】
一方、可動鉄心23と同軸上で、可動鉄心23に対向する位置には、固定鉄心であるポール43が配置される。ポール(固定鉄心)43は、段付きの略円柱形状に形成され、ケース21に設けた穴に挿入されることでケース21に固定される。ポール43の外周には、コイルボビン40のコイル巻装部41が配置され、コイル巻装部41には、導電材料よりなるコイルL1が巻装される。これにより、ポール43は、コイルL1の中心に配置される。
【0016】
ここで、制御IC(CIC)等によってコイルL1に駆動電流が供給されると、ポール43は、電磁石となることで可動鉄心23を吸引する磁力を発生し、可動鉄心23はポール43に吸引される。一方、コイルL1に対する駆動電流の供給を停止すると、可動鉄心23は、ダイヤフラム22によって初期位置に戻る。すなわち、ダイヤフラム22は、板ばねとしての機能を有し、外力が加えられていない自由状態では、可動鉄心23をポール43から引き離した状態で保持する。
【0017】
ダイヤフラム22を基準としてケース21側とは反対側(図中上側)の位置には、略円盤形状に形成されるカバー25が設けられている。カバー25の外周部分には、固定部25aが設けられる。固定部25aは、ケース21の外周部分およびダイヤフラム22の外周部分を挟持する。これにより、ダイヤフラム22およびカバー25の双方が、ケース21に対して固定される。
【0018】
カバー25の内周部分と、一対のワッシャ24a,24bとの間には、環状の出音口26が形成される。出音口26には、ダイヤフラム22の振動によって空気が流通する。すなわち、前述したように、コイルL1への通電を用いてポール(固定鉄心)43に対して可動鉄心23(ひいてはダイヤフラム22)を振動させることで、空気振動室27の容積が増減し、出音口26において空気の振動が発生する。出音口26では、このダイヤフラム22の振動に伴う空気の振動によって音が発生する。この振動周波数は、例えば、490Hzや410Hz程度である。
【0019】
共鳴器30は、ホーン本体20のカバー25側を覆うようにして設けられ、ダイヤフラム22を振動させることにより発生した音を共鳴する。共鳴器30の中央部分には、可動鉄心23の軸上に配置され、出音口26との間で空気の流通を行う発音室31が設けられる。また、共鳴器30内には、渦巻き形状に形成された音道32(詳細図示せず)が設けられる。音道32は、ダイヤフラム22の振動により発生した音が通過する通路となる。
【0020】
音道32の入口側、つまり渦巻きの中心部分には、発音室31が配置され、音道32の出口側、つまり渦巻きの外周寄りの部分には、出口開口部33が設けられる。音道32は、発音室31側から出口開口部33側に向けて、徐々にその開口面積が大きくなるように形成される。これにより、ダイヤフラム22を振動させることで発生した音の音圧レベルが徐々に増幅され、所定音量の音となって出口開口部33から外部へ放音される。
【0021】
図3(a)は、図2において、ケースに収容されるコイルボビンの構成例を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のコイルボビンを裏側から見た場合の構成例を示す斜視図である。図3(b)に示すコイルボビン40は、図2でも述べたように、コイル巻装部41と、コントローラ実装部42とを備える。図2に示したように、コイル巻装部41は、ケース21の小径収容部21bに収容され、コントローラ実装部42は、ケース21の大径収容部21dに収容される。
【0022】
図3(b)において、コントローラ実装部42は、円盤状の実装面42aと実装面42aの外周部分に設けられる壁面42bとを備える。また、ポール(固定鉄心)43は、大径の本体部43aと、小径の雄ねじ部43bとを備える。本体部43aは、コイル巻装部41の径方向内側にセレーション嵌合等(図示せず)により固定される。コイル巻装部41の径方向外側には、コイルL1が巻装される。雄ねじ部43bは、図2に示されるように、ケース21の外部に露出し、図1の取り付けステー11に固定される。
【0023】
図3(a)に示されるように、コントローラ実装部42の内部の実装面42aには、図2に示した制御IC(CIC)および容量素子(例えば、フィルムコンデンサ)C1に加えて、抵抗素子R1が実装される。また、コントローラ実装部42(ひいてはコイルボビン40)は、図3(a)および図3(b)に示されるように、実装面42aに設けられたリベットRV1~RV3を介して、図2のケース21に固定される。リベットRV1~RV3は、例えば、導電性に優れた黄銅等により形成され、コイルボビン40をケース21に固定する機能に加えて、図1のコネクタ50を介して外部から供給される電源等を伝送する電子部品としての機能も備える。
【0024】
制御IC(CIC)は、外部端子PN1~PN5を備え、単一のICパッケージで構成される。制御IC(CIC)、抵抗素子R1、容量素子C1、コイルL1およびリベットRV1~RV3は、複数の導電部材を介して適宜接続される。例えば、制御IC(CIC)の外部端子PN1,PN2は、それぞれ、導電部材LN1,LN2を介してリベットRV1,RV2に接続される。リベットRV1,RV2は、外部のバッテリ等に接続される。
【0025】
制御IC(CIC)の外部端子PN3は、導電部材LN3を介してリベットRV3に接続される。制御IC(CIC)の外部端子PN4は、導電部材LN4aを介して抵抗素子R1の一端と、図示は省略されるがコイルL1の一端とに接続される。コイルL1の他端は、図示は省略されるが、制御IC(CIC)の外部端子PN1に接続される。抵抗素子R1の他端は、導電部材LN4bを介して容量素子C1の一端に接続される。容量素子C1の他端は、導電部材LN5を介して制御IC(CIC)の外部端子PN5に接続される。
【0026】
《制御IC周りの構成》
図4は、図2および図3(a)における制御IC周りの概略構成例を示す回路ブロック図である。図4に示す制御IC(CIC)は、図3(a)で述べたように、単一のICパッケージで構成され、外部端子PN1~PN5を備える。外部端子PN1は、外部電源端子であり、外部のバッテリ60からの高電位側電源VBがホーンスイッチ61を介して供給される。外部端子PN2には、外部のバッテリ60からの低電位側電源VSSが供給される。
【0027】
外部端子PN1と外部端子PN4との間には、コイルL1が接続される。外部端子PN4と外部端子PN5との間には、抵抗素子R1および容量素子C1が直列に接続される。外部端子PN5には、接地電源GNDが供給される。また、外部端子PN3は、外部通信端子であり、図3(a)および図3(b)におけるリベットRV3に接続される端子である。外部端子PN3(リベットRV3)は、例えば、車両上に開放状態で実装される。
【0028】
制御IC(CIC)は、温度センサ70と、電圧センサ71と、ホーン制御部72と、メモリ73と、ドライバ74と、電流センサ75と、逆接続防止スイッチ76と、通信制御部77とを備える。逆接続防止スイッチ76は、バッテリ60が順極性に(言い換えれば正しく)接続されている場合には、内部のスイッチをオンに制御する。これにより、逆接続防止スイッチ76は、バッテリ60からの低電位側電源VSSの電圧を制御IC(CIC)の接地電源GNDの電圧に定めることで、バッテリ60からの給電を許可する。一方、逆接続防止スイッチ76は、例えば、バッテリ60が逆極性(言い換えれば誤って)接続されている場合には、内部のスイッチをオフに制御することで、制御IC(CIC)に対する給電を禁止する。
【0029】
温度センサ70は、例えば、サーミスタ等を含み、制御IC(CIC)の温度(ひいてはホーン装置10の温度)を検出する。電圧センサ71は、外部端子PN1から供給される高電位側電源VBの電圧を検出する。ドライバ74は、スイッチング素子(例えばMOSFET)SWと、スイッチング素子SWのゲートを駆動するゲートドライバGDとを有する。ドライバ74は、PWM信号PSに応じてコイルL1に駆動電流Idを供給する。スイッチング素子SWは、一端に接地電源GNDが供給され、他端が外部端子PN4を介してコイルL1に接続される。
【0030】
スイッチング素子SWは、PWM信号PSのオン期間でオンに制御されることでコイルL1に駆動電流Idを供給する。一方、PWM信号PSのオフ期間への遷移に応じてスイッチング素子SWがターンオフし、駆動電流Idの供給経路が無くなると、外部端子PN4に大きな逆起電圧が生じ得る。抵抗素子R1および容量素子C1は、所謂、スナバ回路であり、当該逆起電圧を吸収する。電流センサ75は、例えば、電流検出用の抵抗素子またはカレントトランス等であり、スイッチング素子SWに流れる電流を検出することでコイルL1の駆動電流Idを検出電流Idetとして検出する。
【0031】
メモリ73は、不揮発性メモリまたは揮発性メモリであり、好ましくは、記憶されたデータを電力無しで保持できる不揮発性メモリである。メモリ73は、制御プログラム85や、制御パラメータ86等を記憶する。制御パラメータ86は、例えば、各種動作条件と、PWM信号PSのPWM周波数fout(ひいては、図2のダイヤフラム22の振動周波数)およびデューティ比DTとの関係を記憶する。各種動作条件の中には、電圧センサ71による検出電圧Vdet、温度センサ70による検出温度TAdet、電流センサ75による検出電流Idetが含まれる。
【0032】
ホーン制御部72は、例えば、補正部80、メモリインタフェース81およびPWM信号生成部82等を備える。メモリインタフェース81は、メモリ73に対して書き込みおよび読み出しを行う。補正部80は、前述した検出電圧Vdet、検出温度TAdet、検出電流Idetを受け、メモリインタフェース81を介して読み出したメモリ73内の制御パラメータ86の情報に基づいて、PWM周波数foutおよびデューティ比DTを定める。
【0033】
ここで、コイルL1に供給する駆動電流Idは、ある程度一定であることが望ましい。例えば、駆動電流Idが過大になると、電磁石の磁力の増加によって可動鉄心23がポール(固定鉄心)43に衝突し、異音を招く恐れがある。逆に、駆動電流Idが過小になると、ホーンの音圧が低下する恐れがある。一方、駆動電流Idの大きさは、ホーン装置10の温度(例えば、コイルL1の寄生抵抗の温度依存性等)によって変化し、また、ゲートドライバGDに供給される高電位側電源VBの電圧値によっても変化する。そこで、補正部80は、制御パラメータ86の情報に基づいて、検出電流Idet(ひいては駆動電流Id)が所定の範囲内となるようにデューティ比DTを定める。
【0034】
また、ダイヤフラム22や共鳴器30の形状および材質に応じて、ホーンの音圧が最大となる共振周波数(言い換えれば最適なダイヤフラム22の振動周波数)が存在する。この共振周波数の値は、例えば、ホーン装置10の温度に応じて変化し得る。そこで、補正部80は、制御パラメータ86の情報に基づいて、最適なダイヤフラム22の振動周波数(すなわちPWM周波数fout)を定める。
【0035】
PWM信号生成部82は、補正部80からのPWM周波数foutおよびデューティ比DTに基づいてPWM信号PSを生成し、それをゲートドライバGDへ送信する。なお、補正部80およびPWM信号生成部82は、主に、メモリ73内の制御プログラム85をCPU(Central Processing Unit)等が実行することで実装される。すなわち、図4のホーン制御部72は、メモリ73の記憶情報に基づいてコイルL1を適切に駆動することで、ダイヤフラム22の振動を制御する
通信制御部77は、外部端子(外部通信端子)PN3とホーン制御部72との間の通信経路78の有効・無効を制御する。ここで、通信経路78が有効状態である場合、例えば、外部機器(図示せず)は、外部端子PN3、通信制御部77およびメモリインタフェース81等を介して、メモリ73内の制御プログラム85や制御パラメータ86を書き換えることが可能である。また、通信経路78が有効状態である場合、例えば、外部機器は、外部端子PN3および通信制御部77を介してホーン制御部72が備える各種解析機能(図示せず)を操作することが可能である。
【0036】
一例として、例えば、ホーン装置10が車両に実装された状態で、当該ホーン装置10に不具合が生じた場合や、当該ホーン装置10の制御プログラム85または制御パラメータ86を変更する必要性が生じた場合を想定する。このような場合、ホーン装置10を車両から取り外したのち、外部端子PN3(リベットRV3)に外部機器を接続した上で、必要なメンテナンス処理を行えばよい。
【0037】
しかし、ホーン装置10が車両に実装された状態では、開放状態である外部端子PN3(リベットRV3)に多くのノイズが入力され得る。その結果、誤通信が生じ、意図しないメンテナンス処理が実行される恐れがある。そこで、通信制御部77は、外部端子(外部通信端子)PN3から、予め定めた複数ビットの信号パターンからなるキー信号を受信した場合に、通信経路78を有効状態に制御する。これにより、誤通信を防止することが可能になる。
【0038】
さらに、より望ましくは、通信制御部77は、外部端子(外部電源端子)PN1に電源が投入されたのち、予め定めた所定の期間内にキー信号を受信した場合に通信経路78を有効状態に制御し、当該所定の期間内にキー信号を受信しない場合に通信経路78を無効状態に制御する。所定の期間は、例えば、数秒等である。この場合、ホーン装置10の電源投入後、キー信号を受信することなく所定の期間が経過した場合には、電源が再度投入されるまでの期間で通信経路78は無効状態を保つ。このように、所定の期間の制限を加えることで、誤通信をより確実に防止することが可能になる。
【0039】
ここでは、車両用電装装置として、ホーン装置10を例としたが、ホーン装置10に限らず、外部通信端子を有する様々な装置であってよい。ただし、当該車両用電装装置は、ホーン装置10の場合と同様に、例えば、車両に実装された状態で、車両が通常動作を行う際に、車両との通信を行う必要がない装置である。この場合、メモリ73の記憶情報に基づいて、装置の機能に応じた所定の制御を行う主制御部が設けられることになる。また、メモリ73の記憶情報は、装置の構成に応じて、制御パラメータ86のみである場合や、制御プログラム85と制御パラメータ86の両方である場合がある。図4のホーン制御部72は、当該主制御部の一例である。
【0040】
また、図4の外部端子(外部通信端子)PN3は、車両に実装された際に、必ずしも開放状態である必要はなく、通信ケーブルを介して車両に接続されてもよい。すなわち、車両に実装された状態のままで、メンテナンス処理を行えるような形態であってもよい。この場合であっても、キー信号を設けることで誤通信を防止でき、加えて、所定の期間を設けることで、例えば、偶発的なキー信号の発生を踏まえて誤通信を防止できる。
【0041】
なお、図4における、温度センサ70、電圧センサ71、ホーン制御部72、メモリ73、および通信制御部77は、代表的には、1個のマイクロコントローラチップ等で構成される。ただし、これらの一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。また、図4では、単一のICパッケージからなる制御IC(CIC)を用いたが、このような形態の代わりに、例えば、制御基板上に複数のICが搭載されたECU(Electronic Control Unit)の形態を用いてもよい。
【0042】
《通信制御部の詳細》
図5は、図4における通信制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。図6は、図5におけるシーケンサの処理内容の一例を示す状態遷移図である。図5に示す通信制御部77は、パワーオン検出器90と、タイマ91と、キー信号判定器92と、通信インタフェース93とを備える。通信インタフェース93は、シーケンサ95を備える。通信インタフェース93は、例えば、車両用途で広く用いられるLIN(Local Interconnect Network)プロトコルまたはCAN(Controller Area Network)プロトコルに基づいて通信を制御する。
【0043】
パワーオン検出器90は、外部端子(外部電源端子)PN1に電源が投入された時点で検出信号PDETを送信する。タイマ91は、パワーオン検出器90からの検出信号PDETに応じて予め定めた所定の期間(例えば、数秒等)を計測する。タイマ91は、当該所定の期間を経過した際に、タイムアウト信号TOUTを送信する。キー信号判定器92は、外部端子(外部通信端子)PN3で受信した信号がキー信号であるか否かを判定し、キー信号である場合には、通信インタフェース93へ一致信号MCHを送信する。
【0044】
具体的には、キー信号は、例えば、LINプロトコルに基づくフレームフォーマットにおいて、8ビットのPID(Protected IDentifier)フィールドと、最大8バイトのデータフィールドに特定値が格納された信号である。キー信号判定器92は、外部端子PN3で受信したフレームに含まれる当該フィールドの値を入力キーKYIとして、予め記憶部94に保持される設定キー(すなわち予め定めた特定値)KYSとの一致・不一致を判定する。そして、キー信号判定器92は、入力キーKYIと設定キーKYSとが一致する場合には、通信インタフェース93へ一致信号MCHを送信する。
【0045】
シーケンサ95は、キー信号判定器92からの一致信号MCHを受信した場合、タイマ91へクリア信号CLRを送信する。タイマ91は、このクリア信号CLRに応じて、所定の期間(例えば、数秒等)を再度計測する。また、シーケンサ95は、当該一致信号MCHを受信した場合、外部端子(外部通信端子)PN3と、ホーン制御部72との間の通信経路78を有効化する。その後、シーケンサ95は、外部端子PN3からメンテナンス処理に伴う所定の信号(具体的には1個のフレーム(例えばLINフレーム))を受信する毎に、タイマ91へクリア信号CLRを送信する。シーケンサ95は、タイマ91からのタイムアウト信号TOUTを受信しない限り、当該通信経路78の有効状態を維持する。
【0046】
詳細には、シーケンサ95は、図6に示されるように、無通電状態ST1、キー通信有効状態ST2、通信有効状態ST3、および通信無効状態ST4を有し、各状態間の状態遷移を制御する。無通電状態ST1は、電源オフの状態であり、電源投入前の初期状態でもある。通信有効状態ST3は、外部端子(外部通信端子)PN3と、ホーン制御部72との間の通信経路78が有効に制御された状態である。通信無効状態ST4は、当該通信経路78が無効に制御された状態である。キー通信有効状態ST2は、外部端子PN3からの信号をキー信号判定器92に判定させる状態である。
【0047】
ここで、シーケンサ95は、無通電状態ST1において、パワーオン検出器90からの検出信号PDETに応じてキー通信有効状態ST2に遷移する。また、シーケンサ95は、キー通信有効状態ST2で、キー信号判定器92がキー信号であることを判定した場合(すなわち一致信号MCHを受信した場合)には通信有効状態ST3に遷移する。この遷移の際に、シーケンサ95は、タイマ91へクリア信号CLRを送信する。一方、シーケンサ95は、キー通信有効状態ST2で、タイマ91がタイムアウトした場合(すなわちタイムアウト信号TOUTを受信した場合)には通信無効状態ST4に遷移する。
【0048】
また、シーケンサ95は、通信有効状態ST3で、外部端子PN3からのメンテナンス処理に伴う所定の信号(具体的にはフレーム(例えばLINフレーム))を待つ。この状態で、シーケンサ95は、1個のフレームを正常に受信する(例えば、チェックサムエラー無しに受信する)毎に、タイマ91へクリア信号CLRを送信する。一方、シーケンサ95は、通信有効状態ST3で、タイマ91がタイムアウトした場合(タイムアウト信号TOUTを受信した場合)、通信無効状態ST4に遷移する。さらに、シーケンサ95は、キー通信有効状態ST2、通信有効状態ST3、または通信無効状態ST4で、電源がオフされた場合には、無通電状態ST1に遷移する。
【0049】
このようなシーケンサ95を設けることで、外部端子(外部電源端子)PN1から電源が投入されたのち、タイマ91に基づく所定の期間内にキー信号を受信した場合に限って通信経路78を有効状態に制御することが可能になる。さらに、その後は、タイマ91に基づく所定の期間内にメンテナンス処理に伴うフレームを受信する限り、この通信経路78の有効状態を維持することが可能になる。
【0050】
このように、通信経路78の有効状態を維持する条件として、継続的なフレームの受信を条件とすることで、例えば、通信有効状態ST3が不必要に維持されるような事態を防止でき、安全性をより高めることが可能になる。なお、キー信号判定器92およびシーケンサ95は、代表的には、CPUによるプログラム処理等によって実装される。ただし、これらは、適宜、FPGAやASIC等で構成されてもよい。
【0051】
《実施の形態の主要な効果》
以上、実施の形態の車両用電装装置を用いることで、通常動作時に使用されない外部端子(外部通信端子)PN3にノイズが入力されることによる誤通信を防止することができ、ひいては、車両用電装装置の誤動作を防止することが可能になる。その結果、例えば、ホーン装置10のように、車両に実装された状態で、車両が通常動作を行う際に、車両との通信を行う必要がない装置で有益な効果が得られる。また、特許文献1の方式のように、通信ラインの有効状態・無効状態を切り替えるハードウェア(すなわちスイッチ部)を新たに搭載することなく、例えば、シーケンサ95によるプログラム処理によって誤通信を防止することができる。その結果、コストの増大等を抑制できる。
【0052】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
10:ホーン装置、11:取り付けステー、20:ホーン本体、21:ケース、21b:小径収容部、21d:大径収容部、22:ダイヤフラム、23:可動鉄心、24a,24b:ワッシャ、25:カバー、25a:固定部、26:出音口、27:空気振動室、30:共鳴器、31:発音室、32:音道、33:出口開口部、40:コイルボビン、41:コイル巻装部、42:コントローラ実装部、42a:実装面、42b:壁面、43:ポール(固定鉄心)、43a:本体部、43b:雄ねじ部、50:コネクタ、60:バッテリ、61:ホーンスイッチ、70:温度センサ、71:電圧センサ、72:ホーン制御部、73:メモリ、74:ドライバ、75:電流センサ、76:逆接続防止スイッチ、77:通信制御部、78:通信経路、80:補正部、81:メモリインタフェース、82:PWM信号生成部、85:制御プログラム、86:制御パラメータ、90:パワーオン検出器、91:タイマ、92:キー信号判定器、93:通信インタフェース、94:記憶部、95:シーケンサ、C1:容量素子、CIC:制御IC、DT:デューティ比、GD:ゲートドライバ、GND:接地電源、Id:駆動電流、Idet:検出電流、KYI:入力キー、KYS:設定キー、L1:コイル、LN1~LN5:導電部材、MCH:一致信号、PDET:検出信号、PN1~PN5:外部端子、PS:PWM信号、R1:抵抗素子、RV1~RV3:リベット、ST1:無通電状態、ST2:キー通信有効状態、ST3:通信有効状態、ST4:通信無効状態、STP:停止信号、SW:スイッチング素子、TAdet:検出温度、TOUT:タイムアウト信号、VB:高電位側電源、VSS:低電位側電源、Vdet:検出電圧、fout:PWM周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6