IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大西 徳生の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021596
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】共振絶縁形DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125265
(22)【出願日】2020-07-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA19
5H730BB27
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE08
5H730EE10
5H730EE49
5H730FD01
5H730FD51
5H730FG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】共振動作が負荷電流に応じた大きさで共振電流を流すことができ、共振電流が零の時点で、スイッチのオン、オフ制御ができるため、スイッチング損失及びスイッチングノイズの低減ができる共振絶縁形DC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】直流電圧源100に対し、電圧形方形波インバータ210と絶縁形変圧器220と整流回路230、LC共振回路250及びLCフィルタ回路260で構成される共振絶縁形DC-DCコンバータ回路200であって、直流スイッチ回路を加え方形波電圧の整流出力に対して共振回路の共振周期幅に依存する一定の期間幅の電圧波形を共振回路に加えるか、インバータ単独で正負対称性を保ちながら同様の期間幅の電圧波形を共振回路に加えるとともに、スイッチング周期を変える。
【効果】変圧器の偏磁を防ぎながら電流回路損失の少ない零電流スイッチング動作のもとで直流出力電圧を連続的に制御することができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源に接続した電圧形方形波インバータの交流出力に対し変圧器を介して必要とする交流電圧に変圧した出力をダイオード全波整流回路で整流してスイッチ単独または必要に応じてスイッチオフ時点の保護用フリーフォイーリングダイオードとで構成する直流スイッチ回路を経て共振インダクタと共振キャパシタで構成するLC共振回路に接続し、前記共振キャパシタの両端に平滑インダクタと平滑キャパシタで構成するLC平滑回路を接続して直流負荷に導く直流―交流―直流変換回路において、
前記電圧形方形波インバータで、前記LC共振回路に電圧を加えて流れる共振電流が零に戻るまでの共振周期幅あるいはその整数倍の周期幅に依存する一定の期間幅の正負電圧の方形波電圧を発生させて、その方形波電圧波形に同期して半周期毎に前記直流スイッチ回路を前記LC共振回路の共振周期幅あるいはその整数倍の周期幅とほぼ一致する期間オンした後、オフ期間を入れるスイッチング動作をスイッチング周期とするオンオフ電圧波形を前記LC共振回路に加えることにより、
前記電圧形方形波インバータおよび前記直流スイッチ回路のスイッチング素子に流れる電流が零あるいはほぼ零に近い値でスイッチング動作をさせ、スイッチング損失とスイッチングノイズの低減ができ、高周波スイッチング動作による前記変圧器および前記LC共振回路、前記LC平滑回路などの小型軽量化ができることを特徴とする共振絶縁形DC-DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記電圧形方形波インバータおよび前記直流スイッチ回路の前記スイッチング周期を変えることにより、直流電圧、直流電流を制御することを特徴とする共振絶縁形DC-DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1から2記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記直流負荷または前記共振キャパシタの端子電圧の平均電圧が基準電圧と一致するように前記スイッチング周期を制御することにより、直流電圧を制御することを特徴とする共振絶縁形DCDCコンバータ。
【請求項4】
請求項1から2記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記直流負荷または前記平滑インダクタに流れる電流の平均値が基準電流と一致するように前記スイッチング周期を制御することにより、直流電流を制御することを特徴とする共振絶縁形DCDCコンバータ。
【請求項5】
請求項1から2記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記直流負荷または前記共振キャパシタの端子電圧の平均電圧が基準電圧と一致するように基準電流を発生させ、この基準電流に前記直流負荷または前記平滑インダクタに流れる電流の平均値が一致するように前記スイッチング周期を制御することにより、直流電圧、直流電流を制御することを特徴とする共振絶縁形DCDCコンバータ。
【請求項6】
請求項1から5記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記直流スイッチ回路を取り除き、前記直流スイッチ回路のオフ期間のスイッチング動作の代わりに、前記電圧形方形波インバータの方形波スイッチング信号をオフにするか、零電圧期間を含む方形波スイッチング信号で前記電圧形方形波インバータを働かせ、正負対称方形波電圧の波形制御を行うことにより、スイッチング素子に流れる電流が零あるいはほぼ零に近い値でスイッチング動作を可能とし、前記電圧形方形波インバータの前記スイッチング周期を変えることにより、直流電圧、直流電流を制御することを特徴とする共振絶縁形DC-DCコンバータ。
【請求項7】
請求項1から6記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記ダイオード全波整流回路の直流側に接続していた前記共振インダクタを交流側に変更接続して制御することを特徴とする共振絶縁形DC-DCコンバータ。
【請求項8】
請求項1から7記載の共振絶縁形DC-DCコンバータにおいて、前記変圧器が偏磁することによる直流成分電流が流れないように前記電圧形方形波インバータの正電圧期間あるいは負電圧期間の幅を調整する制御部を付加して制御することを特徴とする共振絶縁形DC-DCコンバータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範な直流出力電圧設定が可能な絶縁形DC-DCコンバータの小型・軽量・高効率化とスイッチングノイズの低減化に貢献する技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーエレクトロニクス装置の急激な発達と、リチウムイオン電池などの蓄電池の発達普及とも相まって、小型・軽量・高効率の小中容量の様々な出力電圧レベルの直流電源装置から、容量の大きなものでは周波数変換電源やモータドライブ用のインバータの直流電源など幅広い応用分野でDC-DCコンバータの需要が高まってきた。
【0003】
DC-DCコンバータは、大幅な電圧変換制御が求められる場合、ハードスイッチングによるスイッチングデューティだけで電圧制御を行うと効率が著しく低下するとともに、DC-DCコンバータで直流電源と直流出力間で絶縁がとられていない場合は、適用できる範囲も限定されるなどの課題がある。
【0004】
このため、変圧器を介在させることで絶縁する装置の一つとして、直流電源を一度交流に変換して、変圧器で必要な電圧出力が得られる電圧に変換した後、整流回路、フィルタ回路を介して直流出力を得る絶縁形DC-DCコンバータが用いられている。
【0005】
この変圧器の小型化軽量化のため、高い周波数の交流電圧が要求されるが、インバータで高周波電圧を発生するとき、流れている電流に関係なくスイッチングするハードスイッチングすると、スイッチング損失やスイッチングノイズなどの課題を生じる。
【0006】
このため、課題となるハードスイッチング制御する代わりに、電圧あるいは電流が零あるいはこれに近い状態でスイッチングするソフトスイッチング制御を用いた様々なDC-DCコンバータが提案されているが、LC共振作用による振動電流損失の増加や素子耐圧の増加を招くなどの問題があり、その対策として部分共振によるものも提案されているが、回路構成や制御システムが複雑化するなどの傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-157273号公報
【特許文献2】特開平1-218352号公報
【特許文献3】特開平4-368464号公報
【特許文献4】特開2011-211886号公報
【特許文献5】特開2013-201833号公報
【特許文献6】国際公開第2017/090118号
【特許文献7】特開2010-4724号公報
【特許文献8】特開2003-259643
【特許文献9】特願2016-181995
【特許文献10】特許第6667750号
【0008】
これまでの共振ソフトスイッチング制御手法に関する先行技術文献のうち、絶縁形DC-DCコンバータで特徴的な先行技術文献として、回路形態や制御方式に分類して挙げたが、本発明の絶縁形DC-DCコンバータとは、以下の点で異なっている
【0009】
本発明は零電流スイッチ作用によっており、先行技術文献のうち、(特許文献1)から(特許文献8)までは零電流スイッチ(ZCS)作用を用いているが、(特許文献9)は零電圧スイッチ(ZVS)作用によるもので、ソフトスイッチの基本的な制御手段そのものが本発明のものと異なっている。
【0010】
次に、(特許文献1)と(特許文献2)は、共にフォワードコンバータ構成によっているので、本発明とは回路構成が異なっており、制御原理においても共振キャパシタの電圧を毎周期零電圧まで下げているなどの点も大きな違いとなっている。
【0011】
また、(特許文献3)から(特許文献6)までは、インバータ、変圧器、共振インダクタ、ダイオードブリッジ整流回路、共振キャパシタを用いた共振回路とLCフィルタ回路で主回路が構成されている点では、本発明の回路構成と類似しているが、いずれも共振キャパシタと直列あるいは並列に共振動作をさせるためのスイッチ回路を接続することによる零電流スイッチの制御手段がとられている点で、本発明とは回路構成と制御手段が異なっている。
【0012】
そして、(特許文献7)と(特許文献8)は、インバータ、変圧器、共振インダクタ、ダイオードブリッジ整流回路、共振キャパシタを用いて共振回路が構成されているが、共振キャパシタのが交流回路に直列に接続され平滑用キャパシタのみが接続された構成となっていていることから主回路構成と制御手法が本発明とは異なっている。
【0013】
これらに対して、(
【特許文献10】)では、LC共振電流が零あるいはほぼ零に近い値でスイッチオフしてLC共振動作が継続できるのに必要な無給電期間を電圧形方形波インバータの出力に零電圧期間を設け、共振動作を継続させるとともに、共振キャパシタの電圧をあまり低下させない維持した状態で再度スイッチを投入する制御手法を採っているため、スイッチ投入時点での電源電圧と共振キャパシタの電圧差が小さくできるため、LC共振による振動電流を小さくできるところが大きな特徴となっている。
【0014】
このため、この電流共振形ソフトスイッチング制御手法を使ったDCDCコンバータは、直流電圧源に対して、変圧器を介在させているため、大幅な電圧制御が高効率で行え、直流出力電圧の制御を必ずしも必要としない用途においては、スイッチングノイズを抑えながら小型、軽量、高効率化が期待できる大変有益なDCDC変換制御技術であるといえる。
【0015】
しかしながら、出力電圧制御手法としては、ソフトスイッチング動作をさせる電源からの給電共振動作モードに対して、無給電期間を設けて共振キャパシタの電圧を低下させることにより、LCフィルタ回路の出力を制御する方法が採られているため、無給電期間の動作から給電スイッチ投入時に大きな電流が流入する場合があることや、変圧器を用いているため変圧器に加わる電圧の正負電圧の対称性が少しでも崩れると変圧器の偏磁による大きな電流が流れる恐れがあり、その対策も実用化する上での課題となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
図1は、(
【特許文献10】)による絶縁形DC-DCコンバータの主回路構成であり、電圧形方形波インバータ、変圧器、ダイオード全波整流回路、LC共振回路およびLC平滑回路により構成される。
【0017】
なお、(
【特許文献10】)には、LC共振回路を構成する共振インダクタをダイオード全波整流回路の交流回路側に配置した図2の構成も示されていて、基本的な動作は図1と同じである。
【0018】
図3は、電圧形方形波インバータのスイッチングタイミングをLC共振回路の共振周期に対応させてスイッチング制御をかけたときの動作波形を示している。
【0019】
図3(a)は、電圧形方形波インバータをLC共振回路の共振周波数に対応した周波数で方形波電圧を発生させたときの動作波形であり、スイッチ素子にかかる電圧eswと素子に流れる電流iswの波形から、スイッチ素子をオンした時点で共振回路により振動電流が零電流から流れ始め、再び零電流に戻ってからスイッチ素子をオフすることができる零電流ソフトスイッチング(ZCS:零電流スイッチング)動作が実現できることがを示す。
【0020】
また、同図には、このときの交流電圧eaと交流電流ia、共振回路の共振インダクタ電流irおよび共振キャパシタ電圧erを示している。
【0021】
従来からの共振動作を用いたものは、毎週期間共振キャパシタの電圧erを零電圧まで放電させているのに対し、(
【特許文献10】)による本回路では、共振キャパシタの電圧波形erの低下が特に負荷が軽くなると抑えられる。
【0022】
このため、スイッチが投入され電圧が加わったときの、電源電圧と共振キャパシタ電圧との差電圧が小さくなるため、共振振動電流irを小さく抑えることができため、従来からの共振動作を用いたものは異なり、共振電流損失を抑える事ができる。
【0023】
本発明は、共振電流が流れる期間TWが終わってから、スイッチをオフさせれば零電流スイッチング動作ができるが、この期間より短い周期でスイッチ切り替えを行うと、ソフトスイッチング動作が実現できなくなることに着目した出力電圧の制御法を詳しく検討したものである。
【0024】
零電流ソフトスイッチング動作は、共振電流が流れる期間TWが終わった時点であれば可能であり、前記LC共振回路に流れる共振電流が零に戻るまでの一定の期間幅の正負対称波形の方形波電圧を発生させれば、LC共振周期幅だけでなく2倍、3倍、、、と整数倍の周期幅単位の一定の期間幅の正負電圧の方形波電圧を発生させれば零電流スイッチング動作を実現することができる。
【0025】
図3(b)は、LC共振回路の共振周期の2倍の周期幅を少し超える期間を半周期とする方形波電圧を発生させたときの動作波形を示しており、スイッチ素子にかかる電圧eswと素子に流れる電流iswの波形から、零電流スイッチング動作ができていることがわかる。
【0026】
こ絶縁型DC-DCコンバータは、出力電圧の制御においてインバータから出力する電圧波形の正負の対称性が崩れると、変圧器が偏磁して大きな直流電流が流れることが懸念される。
【0027】
この問題を解決する手段として、1)電圧形方形波インバータで正負対称の方形波電圧を変圧器に加えた後、出力電圧の制御に対しては、別のスイッチ回路で共振制御で必要な一定期間幅の電圧を出力制御する手法と、2)電圧形方形波インバータで、出力電圧の制御に対して共振制御で必要とされる一定期間幅の正負対称波形の方形波電圧を出力制御する手法が考えられる。
【0028】
図4は、図1に示す共振制御DC-DCコンバータの基本回路において、ダイオード全波整流回路の直流出力に直流スイッチを介してから共振回路に接続する絶縁形DC-DCコンバータの主回路構成を示している。
【0029】
同図において、追加した直流スイッチの出力端に破線で示すフリーフォイーリングダイオードDfは、共振インダクタに流れる電流が零のときに直流スイッチを切るために通常は不要であるが、そうでない動作になったときの共振インダクタの電流をバイパスさせ、過電圧の発生を抑えるための保護用として必要に応じて接続する場合の回路図を示している。
【0030】
また、交流ラインにインダクタがある場合、直流スイッチに流れる電流が零でないときに直流スイッチを切ると、過電圧を発生するので、ダイオード全波整流回路の出力端子に小さなキャパシタを接続することが考えられ、この場合は直流スイッチに共振キャパシタからの逆電圧がかからないように、逆流防止用直列ダイオードを保護用として必要に応じて接続することもある。
【0031】
これにより、変圧器には出力電圧制御とは関係なく正負電圧の対称性が保たれるために、変圧器の偏磁の問題は解消する事ができる。
【0032】
ここで、図4の回路による共振絶縁形DCDCコンバータの具体的な出力電圧法を説明する。
【0033】
図5は、電圧制御を行っていないほぼ100%出力のときの直流スイッチング動作波形である。
【0034】
電圧形インバータは直流スイッチング信号P1,P2により方形波電圧が出力され、偏磁の問題を生じることなく変圧器を介して方形波電圧eaがダイオード全波整流回路の交流入力に加えられ、図示するようなスイッチング信号Pswにより共振電流が流れる期間TW後に直流スイッチSWをオフさせることにより、図示する共振電流irが流れ、交流電流iaは、共振電流irが半周期毎に正負に切り換わった波形の電流となる。
【0035】
方形波インバータおよび直流スイッチは、この共振電流が零になってからオフ動作に移るため零電流スイッチング動作が実現できる。
【0036】
図6は、同じ共振回路定数で、スイッチング信号Pswのパルス幅Twは一定のもとで方形波インバータのスイッチング周期Tsを長く、周波数fsを低くしたときの動作波形を示している。
【0037】
このとき、変圧器には正負対称の方形波電圧が印加されているため、正負電圧波形の非対称性による偏磁の問題はなく、スイッチング信号Pswで直流スイッチSwがオンオフ制御されるため、共振電流irが流れるが、パルス間の間隔が広くなり、交流電流iaの周期も長くなることを示している。
【0038】
図7は、これらの動作波形を拡大表示したものであり、同図(a)のほぼ100%出力時の動作波形に対して、同図(b)はパルス幅Twは一定のもとで一定のスイッチング周期Tsを長くしたときの動作波形である。
【0039】
同図より、スイッチング周期Tsを長くすることにより、共振キャパシタの端子電圧の放電期間が長くなるため、平均電圧が下げられ、出力電圧が制御できることがわかる。
【0040】
なお、共振キャパシタ電圧を下げて出力電圧制御をかけるときは、共振回路の共振周波数が同じであっても、共振キャパシタCrのキャパシタンス値が大きいと、スイッチング周期を長くした時の共振キャパシタの電圧低下が小さくなると共に、共振インダクタLrのインダクタンス値が小さいため、直流スイッチを再投入したときに大きな電流が流れ込むこととなる。
【0041】
これとは逆に、共振キャパシタCrのキャパシタンス値が小さく、共振インダクタLrのインダクタンス値を大きくすると、無給電期間におけるキャパシタ電圧の低下が大きくなり、電圧制御が容易になると共に、直流スイッチを再投入したときの電源からの電流を小さく抑える事ができる。
【0042】
直流出力電圧は、共振キャパシタ電圧に対してLC平滑回路を通すことにより、平滑インダクタで負荷電流変動が抑制できるとともに、平滑キャパシタにより共振キャパシタの電圧変動が抑えられた脈動の少ない電圧波形を得ることができる。
【0043】
図8は、この制御原理に基づく共振絶縁形DCDCコンバータの主制御部を電圧型方形波インバータと直流スイッチ回路で構成した主回路構成に対する制御システムの構成例を示している。
【0044】
同図に示すように、スイッチング信号発生部でスイッチングパルスP1およびP2を方形波インバータのスイッチング制御信号とし、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twのスイッチング信号Pswを直流スイッチSwのスイッチング信号とし、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより、直流出力電圧を制御することができる。
【0045】
一方、直流スイッチ回路を接続しない図1または図2の主回路構成において、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの正負対称の電圧波形を出力するスイッチング信号で電圧形方形波インバータを働かせ、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより直流出力電圧を制御することができる。
【0046】
電圧形方形波インバータで一定のスイッチングパルス幅Twの正負対称の電圧波形を出力する期間以外はスイッチ信号をオフにするか、方形波スイッチング信号に零電圧を出力するスイッチング信号を付加することで共振動作に必要な電圧波形を発生させる事ができる。
【0047】
図9は、この制御原理に基づく共振絶縁形DCDCコンバータの主制御部を電圧型方形波インバータのみで構成した主回路構成に対する制御システムの構成例を示している。
【0048】
同図では、電圧形方形波インバータへの信号として、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの期間を有する正負の対称電圧が出力できるように、スイッチング信号発生部で零電圧期間を付加したスイッチングパルスP1SWおよびP2swを方形波インバータのスイッチング制御信号とし、スイッチング周波数あるいはスイッチング周期を変えることにより、直流出力電圧を制御する制御システムの動作波形と共に示している。
【発明の効果】
【0049】
以上、本発明の共振絶縁形DCDCコンバータは、共振動作が負荷電流に応じた大きさで共振電流を流すことができ、共振電流が零の時点で、スイッチのオン、オフ制御ができるため、スイッチング損失及びスイッチングノイズの低減ができる(
【特許文献10】)の大きな特徴を有している。
【0050】

【特許文献10】)で課題となっていた、変圧器を用いることによる偏磁が懸念されることに対しては、本発明では、電圧形方形波インバータで正負対称の方形波電圧を変圧器に加えた後、直流スイッチを介して共振回路に加える電圧を制御することにより、変圧器の偏磁の問題を解消しながら、スイッチング周波数制御により出力電圧が容易に制御することができる。
【0051】
また、本発明では、電圧形方形波インバータで、出力電圧の制御に対して共振制御で必要とされる一定期間幅の正負対称波形の方形波電圧を加える手法により、主回路構成を変更することなく、変圧器の偏磁の問題を解消しながら、スイッチング周波数制御により出力電圧を制御することができる。
【0052】
そして、本発明では、共振キャパシタの電圧制御することにより出力電圧を制御する場合、共振回路の定数として、共振キャパシタCrのキャパシタンス値を小さくし、共振インダクタLrのインダクタンス値を大きく選ぶと、無給電期間におけるキャパシタ電圧の低下が大きくなるので、電圧制御が容易になると共に、直流スイッチを再投入したときの電源からの電流を小さく抑える事ができることを明らかにした。
【0053】
さらに、本発明では、零電流ソフトスイッチング動作は、共振電流が流れる期間TWが終わった時点であれば可能であり、前記LC共振回路に流れる共振電流が零に戻るまでの一定の期間幅の正負対称波形の方形波電圧を発生させれば、LC共振周期幅だけでなく2倍、3倍、、、と整数倍の周期幅単位の一定の期間幅の正負電圧の方形波電圧を発生させれば零電流スイッチング動作を実現することができることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】電流共振型ソフトスイッチン制御の基本回路例1
図2】電流共振型ソフトスイッチン制御の基本回路例2
図3】スイッチング制御の基本動作波形と共振周波数
図4】直流スイッチを付加した電流共振型ソフトスイッチン制御回路
図5】直流スイッチとの組み合わせ制御動作波形
図6】直流スイッチとの組み合わせ周波数制御動作波形
図7】共振キャパシタ電圧制御による直流電圧制御動作波形
図8】直流スイッチとの組み合わせソフトスイッチング制御システム(Aタイプ )
図9】基本回路のみによるソフトスイッチング制御システム(Bタイプ )
図10】直流電圧制御システム(Aタイプ )
図11】直流電流制御システム(Aタイプ )
図12】直流電圧電流制御システム(Aタイプ )
図13】直流電圧制御システム(Bタイプ )
図14】直流電流制御システム(Bタイプ )
図15】直流電圧電流制御システム(Bタイプ )
図16】変圧器偏磁抑制付き直流電圧制御システム(Bタイプ )
図17】Aタイプのシミュレーション解析回路
図18】Aタイプにおけるソフトスイッチング動作波形
図19】Aタイプにおける周波数制御動作波形
図20】Aタイプの直流電圧制御動作波形
図21】Aタイプの直流電流制御動作波形
図22】Bタイプのシミュレーション解析回路
図23】Bタイプにおけるソフトスイッチング動作波形
図24】2倍の共振周期幅制御時のソフトスイッチング動作波形
図25】Bタイプにおける周波数制御動作波形
図26】Bタイプの直流電圧制御動作波形
図27】Bタイプの直流電流制御動作波形
図28】Bタイプの直流電流制御時における偏磁抑制特性
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明を実施するためのDCDCコンバータの制御システムとして、1)スイッチ制御部を付加して主回路構成で制御するAタイプ(図8)と、2)基本回路のみで構成制御するBタイプ(図9)の2つの基本制御システムに対する具体的な周波数制御システムの構成例を以下に示す。
【0056】
図10は、Aタイプによる直流電圧制御システムの構成例であり、直流出力電圧を検出し、その平均電圧eoが直流基準電圧Edrと一致するように電圧制御器を介してスイッチング周波数を制御するもので、電圧制御発振器からのクロックで電圧形インバータを働かせるとともに、直流スイッチ回路で共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの電圧を共振回路に加えることで具体的な制御システムを構成する事ができる。
【0057】
図11は、Aタイプによる直流電流制御システムの構成例であり、直流負荷電流または平滑用インダクタの電流を検出し、その平均電流が直流基準電流Idrと一致するように電流制御器を介してスイッチング周波数を制御するものである。
【0058】
図12は、Aタイプによる直流電圧電流制御システムの構成例であり、直流出力電圧を検出し、その平均電圧eoが直流基準電圧Edrと一致するように電圧制御器を介して直流基準電流Idrを発生させ、直流負荷電流または平滑用インダクタの電流の平均電流がこの直流基準電流Idrと一致するように電流制御器を介してスイッチング周波数を制御するものである。
【0059】
なお、この制御システムに於いては、制御可能範囲であれば、直流電圧および直流電流がそれぞれの基準値と一致するように制御できると共に、また基準電流を発生させる量にリミッタを設けることにより電流制限をかけることができる。
【0060】
図13は、Bタイプによる直流電圧制御システムの構成例であり、Aタイプと同様に直流出力電圧を検出し、その平均電圧eoが直流基準電圧Edrと一致するように電圧制御器を介してスイッチング周波数を制御する事ができる。
【0061】
なお、Bタイプでは、共振回路定数で決まる一定のスイッチングパルス幅Twの期間を有する正負の対称電圧が出力できるように、零電圧期間を付加したスイッチングパルスP1SWおよびP2swがスイッチング信号発生部で発生してインバータのドライブ信号として入力される。
【0062】
図14は、Bタイプによる直流電流制御システムの構成例であり、Aタイプと同様に構成制御する事ができる。
【0063】
図15は、Bタイプによる直流電圧電流制御システムの構成例でありAタイプと同様に構成制御する事ができる。
【0064】
図16は、Bタイプによる直流電圧制御システムで、インバータから変圧器への一次電流を検出して、直流成分電流が流れないようにスイッチングパルス信号P1SWあるいはP2swのスイッチングパルス幅Twの期間を調整する変圧器の偏磁を抑制部を付加した制御システムを示している。
【実施例0065】
本発明の共振絶縁形DCDCコンバータの実施例として、先ず、Aタイプの電圧電流制御システムの基本制御動作をシミュレーション解析結果より確認する。
【0066】
図17は、Aタイプの電圧電流制御システムのシミュレーション回路であり、同図(a)は、共振インダクタをダイオード全波整流回路の直流出力側に接続した回路、同図(b)はダイオード全波整流回路の交流側に接続した回路を示している。
【0067】
図18は、本発明によるAタイプにおけるソフトスイッチング制御動作波形であり、変圧器を介したインバータの交流電圧波形eaとスイッチング信号pswで直流スイッチとの組み合わせスイッチ制御による電圧が共振回路に印加したときの共振インダクタの電流ir、共振キャパシタの電圧erの動作波形と、方形波インバータのスイッチ素子にかかる電圧esw1と電流isw1および直流スイッチにかかる電圧vsと流れる電流ieの波形を示している。
【0068】
同図(a)は直流負荷抵抗値がR=10Ω、同図(b)は直流負荷抵抗値がR=50Ωのときの各動作波形であり、いずれの場合も図中○で囲んだスイッチ素子にかかる電圧と電流波形から、零電流スイッチング動作が確認される。
【0069】
なお、キャパシタの端子電圧波形eoより、負荷が軽くなると共振キャパシタ電圧変動が小さく、直流成分を有するようになった結果、共振電流の大きさが負荷状態に応じて小さくなっていることがわかる。
【0070】
図19は、スイッチング動作の周波数を40kHzから20kHzへと半減させたときの動作波形であり、共振キャパシタ電圧erが低下し、その平均値となる直流出力電圧eoも低下しており、スイッチング周波数によって直流電圧が制御できることが確認できる。
【0071】
図20は、Aタイプによる直流電圧制御システムにおける解析動作波形であり、同図(a)は、直流出力電圧が100%となる基準電圧としてEdr=50Vの場合、同図(b)は、基準電圧を30Vに設定した場合の動作波形を示している。
【0072】
基準電圧が低くなると、直流スイッチへのスイッチング信号Pswの通流幅が制御された結果、共振キャパシタの電圧が低下し、その平均値となる出力電圧eoが低下し、いずれの場合も、出力電圧は基準値と一致した電圧値で制御できていることがわかる。
【0073】
図21は、Aタイプによる直流電流制御システムにおいて、ここでは共振インダクタを交流側に接続したときの解析動作波形を示している。
【0074】
同図(a)は、直流電流が100%となる基準電流としてIdr=5A の場合、同図(b)は、基準電流を3Aに設定した場合の動作波形であり、いずれの場合も直流電流は基準値と一致した電流値で制御できていることがわかる。
【実施例0075】
次に、本発明の共振絶縁形DCDCコンバータの実施例として、Bタイプの電圧電流制御システムの基本制御動作をシミュレーション解析結果より確認する。
【0076】
図22は、Bタイプの電圧電流制御システムのシミュレーション回路であり、同図(a)は、共振インダクタをダイオード全波整流回路の直流出力側に接続した回路、同図(b)はダイオード全波整流回路の交流側に接続した回路を示している。
【0077】
図23は、 本発明によるBタイプのソフトスイッチング制御動作波形であり、インバータで
一定のスイッチングパルス幅Twの正負対称となる電圧波形を出力しているが、Aタイプと同様の結果が得られている。
【0078】
図24は、スイッチング動作の周波数を40kHzから20kHzへと半減させたときの動作波形であり、Aタイプの場合と同様の結果が得られていることが確認できる。
【0079】
図25は、Bタイプによる直流電圧制御システムにおける解析動作波形であり、直流基準電圧をEdr=50VとEdr=30Vに設定したときの動作波形であり、Aタイプの場合と同様に基準値に一致した出力電圧が得られている。
【0080】
図26は、Bタイプによる直流電流制御システムにおける解析動作波形であり、直流基準電流をIdr=5AとIdr=3Aに設定したときの動作波形であり、Aタイプの場合と同様に基準値に一致した電流制御ができていることがわかる。
【0081】
図27は、Bタイプによる直流電圧制御システムにおいて、変圧器の励磁回路を含めた回路で、変圧器の一次電流の直流成分電流をもとに、インバータの出力電圧のパルス幅の補償制御をかけたときとかけないときのシミュレーション解析結果による動作波形の比較を示している。
【0082】
同図(a)は、変圧器の偏磁補償制御をかけていないとき、同図(b)は、変圧器の偏磁補償制御を付加したときの制結果であり、変圧器の励磁回路電流imは、前者が直流成分電流を含んでいるのに対して、後者では直流成分電流は殆ど見られず、偏磁補償制御効果が確認できる。
【実施例0083】
最後に、図28は、本発明による共振絶縁形DCDCコンバータでスイッチング周波数は40kHz一定として、LC共振回路の共振インダクタンスと共振キャパシタンスをいずれも半分の値とすることにより、共振周期を半分としたときのシミュレーション解析結果を示している。。
【0084】
同図(a)はAタイプ、同図(a)はBタイプにおける動作波形であり、いずれも2倍の周波数で共振電流が流れるが、スイッチングのタイミングでは振動電流は零になっているため、スイッチの電圧と電流波形から零電流ソフトスイッチング制御が実現できていることが確認できる。
【符号の説明】
【0085】
100 … 直流電圧源
200 … 共振絶縁形DCDCコンバータの主回路部
210 … 電圧形方形はインバータ
220 … 変圧器
230 … ダイオード全波整流回路
240 … 直流スイッチ回路
250 … LC共振回路
260 … LC平滑回路
300 … 負荷
400 … 共振絶縁形DCDCコンバータの制御回路部
410 … スイッチング信号発生部
420 … 直流電流制御部
430 … 直流電圧制御部
440 … 方形波パルス幅制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28