IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-回転電機 図1
  • 特開-回転電機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021598
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20220127BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
H02K21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125268
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
【テーマコード(参考)】
5H605
5H621
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605CC04
5H621JK10
(57)【要約】
【課題】軸部材及び遮蔽部に作用する応力を抑制でき、且つ軸部材に対する遮蔽部の滑りを抑制できる回転電機を提供すること。
【解決手段】回転電機10は、永久磁石17と、永久磁石17と一体回転する第1軸部材19及び第2軸部材20を有する軸部材18と、を備えるロータ15を備えている。回転電機10は、第1軸部材19の外周面19c及び第2軸部材20の外周面20cから第1軸部材19及び第2軸部材20の径方向の外側に突出する板状の遮蔽部30と、を備えている。軸部材18及び遮蔽部30は、同一の磁性材料により構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体と、前記磁性体と一体回転する軸部材と、を備えるロータと、
前記軸部材の外周面から前記軸部材の径方向の外側に突出する板状の遮蔽部と、を備え、
前記軸部材及び前記遮蔽部は、同一の磁性材料により構成されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記ロータは、筒部材を備え、
前記筒部材の内周面には、前記磁性体が固定され、
前記軸部材は、前記筒部材の軸線方向の両端に設けられるとともに前記軸線方向で前記磁性体と隣り合った状態で前記筒部材の内周面に固定される第1軸部材及び第2軸部材を有し、
前記遮蔽部は、前記第1軸部材及び前記第2軸部材それぞれの外周面から前記第1軸部材及び前記第2軸部材の径方向の外側に突出するとともに前記第1軸部材及び前記第2軸部材と一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ロータの外周を囲むように設けられる筒状のステータコア、及び前記ステータコアに巻回されるとともに前記ステータコアの軸線方向の両端にコイルエンドを有するコイル、を備えるステータと、
前記回転電機を収容するハウジングに対して前記軸部材を回転可能に支持する軸受と、を備え、
前記ハウジングには、前記回転電機に向けて突出するとともに前記軸部材が挿通され、且つ前記軸受が収容される収容部が設けられ、
前記収容部及び前記軸受は、前記軸部材の径方向において、前記コイルエンドの一部と重なる位置に配置され、
前記遮蔽部は、前記軸部材の径方向において、前記コイルエンドの一部と重なる位置に配置され、且つ前記軸部材の軸線方向において、前記軸受と隣り合う位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される回転電機が知られている。
上記の回転電機は、ロータと、磁性材料により構成される遮蔽部と、を備えている。ロータは、ロータ鉄心と、ロータ鉄心の外周面に設けられる磁性体である永久磁石と、ロータ鉄心及び永久磁石と一体回転する軸部材と、を備えている。遮蔽部は、軸部材の外周面に固定されている。上記の回転電機では、遮蔽部によりロータの回転のバランスを保ちつつ、永久磁石の磁束洩れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-176530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、軸部材及び遮蔽部が異なる材質で構成されている場合、軸部材と遮蔽部の熱膨張係数が異なる。そのため、軸部材及び遮蔽部それぞれが熱膨張又は熱収縮するとき、軸部材及び遮蔽部に応力が作用する、又は軸部材と遮蔽部との間に隙間が形成され、遮蔽部が軸部材の外周面を滑る虞がある。
【0005】
本発明の目的は、軸部材及び遮蔽部に作用する応力を抑制でき、且つ軸部材に対する遮蔽部の滑りを抑制できる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する回転電機は、磁性体と、前記磁性体と一体回転する軸部材と、を備えるロータと、前記軸部材の外周面から前記軸部材の径方向の外側に突出する板状の遮蔽部と、を備え、前記軸部材及び前記遮蔽部は、同一の磁性材料により構成される。
【0007】
これによれば、軸部材と遮蔽部とが同じ磁性材料により構成されるため、軸部材と遮蔽部の熱膨張係数が同じである。そのため、軸部材が熱膨張するときには遮蔽部も同様に熱膨張し、軸部材が熱収縮するときには遮蔽部も同様に熱収縮する。よって、軸部材及び遮蔽部に応力が作用し難くなり、且つ軸部材と遮蔽部との間に隙間が形成され難くなる。したがって、軸部材及び遮蔽部に作用する応力を抑制でき、且つ軸部材に対する遮蔽部の滑りを抑制できる。
【0008】
上記の回転電機において、前記ロータは、筒部材を備え、前記筒部材の内周面には、前記磁性体が固定され、前記軸部材は、前記筒部材の軸線方向の両端に設けられるとともに前記軸線方向で前記磁性体と隣り合った状態で前記筒部材の内周面に固定される第1軸部材及び第2軸部材を有し、前記遮蔽部は、前記第1軸部材及び前記第2軸部材それぞれの外周面から前記第1軸部材及び前記第2軸部材の径方向の外側に突出するとともに前記第1軸部材及び前記第2軸部材と一体形成されているとよい。
【0009】
これによれば、遮蔽部と第1軸部材及び第2軸部材とが一体形成されているため、第1軸部材及び第2軸部材が熱膨張するときには遮蔽部も同時に熱膨張し、第1軸部材及び第2軸部材が熱収縮するときには遮蔽部も同時に熱収縮する。よって、軸部材及び遮蔽部に応力が作用することがなく、且つ軸部材に対して遮蔽部が滑ることがなくなる。
【0010】
上記の回転電機において、前記ロータの外周を囲むように設けられる筒状のステータコア、及び前記ステータコアに巻回されるとともに前記ステータコアの軸線方向の両端にコイルエンドを有するコイル、を備えるステータと、前記回転電機を収容するハウジングに対して前記軸部材を回転可能に支持する軸受と、を備え、前記ハウジングには、前記回転電機に向けて突出するとともに前記軸部材が挿通され、且つ前記軸受が収容される収容部が設けられ、前記収容部及び前記軸受は、前記軸部材の径方向において、前記コイルエンドの一部と重なる位置に配置され、前記遮蔽部は、前記軸部材の径方向において、前記コイルエンドの一部と重なる位置に配置され、且つ前記軸部材の軸線方向において、前記軸受と隣り合う位置に配置されているとよい。
【0011】
これによれば、収容部のハウジングからの突出長さを一定とした場合、収容部及び軸受を軸部材の径方向においてコイルエンドと重ならない位置に配置する構成と比較して、軸部材の軸線方向におけるハウジングの長さを短くすることができ、軸部材の長さも短くできる。よって、収容部及び軸受を軸部材の径方向においてコイルエンドと重ならない位置に配置する構成と比較して、軸部材の軸線方向において回転電機を小型化できる。
【0012】
また、軸部材の軸線方向において回転電機を小型化できる一方で、軸受が軸部材の軸線方向において磁性体に近接する。すなわち、磁性体の磁束が軸受を通過し易くなり、軸受が磁束により加熱されることが考えられるが、遮蔽部が軸受と隣り合うように配置されるため、軸受に磁性体の磁束が通過し難くなり、軸受の発熱を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、軸部材及び遮蔽部に作用する応力を抑制でき、且つ遮蔽部の軸部材に対する滑りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態における回転電機の概略断面図。
図2】第2の実施形態における回転電機の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、回転電機を具体化した一実施形態を図1にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11に収容されている。ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される板状の第2ハウジング構成体13と、を有している。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0016】
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外縁から第2ハウジング構成体13に向けて筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける底壁12aとは反対側に位置する開口を閉塞した状態で第1ハウジング構成体12に連結されている。
【0017】
第1ハウジング構成体12の底壁12aの内面には、円筒状の第1ボス部12cが設けられている。第1ボス部12cは、第1ハウジング構成体12から回転電機10に向けて突出している。第1ボス部12cの軸線は、第1ハウジング構成体12の軸線と一致している。また、第2ハウジング構成体13の内面には、円筒状の第2ボス部13cが設けられている。第2ボス部13cは、第2ハウジング構成体13から回転電機10に向けて突出している。第2ボス部13cの軸線は、第2ハウジング構成体13の軸線と一致している。第1ボス部12cの軸線及び第2ボス部13cの軸線は、一致している。
【0018】
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15と、を備えている。ステータ14は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定されるとともにロータ15の外周を囲むように設けられる円筒状のステータコア14aと、ステータコア14aに巻回されるコイル14bと、を備えている。コイル14bは、ステータコア14aの軸線方向の両端にコイルエンド14cを有している。
【0019】
ロータ15は、筒部材16と、磁性体である永久磁石17と、軸部材18と、を備えている。筒部材16は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材16は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成されている。
【0020】
永久磁石17は、円柱状である。永久磁石17は、径方向に着磁されている。永久磁石17は、筒部材16の内側に圧入されることにより筒部材16の内周面16aに固定されている。永久磁石17の外周面17aは、筒部材16の内周面16aに押し付けられている。永久磁石17の軸線方向の長さは、筒部材16の軸線方向の長さよりも短い。
【0021】
軸部材18は、円柱状の第1軸部材19と、円柱状の第2軸部材20と、を有している。第1軸部材19及び第2軸部材20は、磁性材料である鉄材により形成されている。
第1軸部材19の第1端部19aは、筒部材16の第1端部16bの内部に固定され、第1軸部材19の第2端部19bは、第2ボス部13cの内側を通過するとともに第2ハウジング構成体13を厚さ方向に貫通してハウジング11の外部に位置している。第1軸部材19の第1端部19aは、永久磁石17の第1端部17bに当接している。よって、第1軸部材19は、筒部材16の軸線方向で永久磁石17と隣り合った状態で筒部材16の内周面16aに固定されている。
【0022】
第2軸部材20の第1端部20aは、筒部材16の第2端部16cの内部に固定され、第2軸部材20の第2端部20bは、第1ボス部12cの内部に位置している。第2軸部材20の第1端部20aは、永久磁石17の第2端部17cに当接している。よって、第2軸部材20は、筒部材16の軸線方向で永久磁石17と隣り合った状態で筒部材16の内周面16aに固定されている。
【0023】
このように構成された第1軸部材19及び第2軸部材20は、筒部材16の第1端部16b及び第2端部16cそれぞれの内側に固定され、永久磁石17を挟み込んでいる。第1軸部材19及び第2軸部材20は、永久磁石17と一体回転する。
【0024】
次に、第1ボス部12c及び第2ボス部13cの構成について詳細に説明する。
第2ボス部13cの先端は、第1軸部材19の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の一端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。第2ボス部13cは、2段円筒孔である。第2ボス部13cは、小径孔131と、大径孔132と、を有している。小径孔131は、環状の底面131aと、底面131aの外縁から円筒状に延びる側面131bと、を有している。底面131aは、第2ハウジング構成体13のうちハウジング11の内部に位置する内面の一部である。第2ハウジング構成体13には、第1軸部材19が厚さ方向に貫通するための貫通孔13aが形成されており、底面131aは、貫通孔13aを囲むように設けられている。
【0025】
大径孔132は、第1軸部材19の軸線方向において、小径孔131よりもハウジング11の内部寄りに設けられている。大径孔132は、環状の底面132aと、底面132aの外縁から円筒状に延びる側面132bと、を有している。底面132aの内縁は、小径孔131の側面131bの一端と連続している。底面132aは、側面131bの一端から第1軸部材19の径方向の外側に向けて延びている。大径孔132は、第1軸部材19の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の一端に位置するコイルエンド14cの一部と重なっている。第2ボス部13cは、側面131b、底面132a、及び側面132bにより第1軸部材19の軸線方向に段差をなすように小径孔131と大径孔132とが並ぶ2段円筒孔である。
【0026】
第2ボス部13cの大径孔132には、第1軸受21が収容されている。第1軸受21は、転がり軸受である。大径孔132の底面132aには、第1軸受21の外輪21aが載置されている。外輪21aの外周面は、大径孔132の側面132bに固定されている。第1軸受21の内輪21bは、大径孔132の底面132aに載置されず、第1軸部材19の軸線方向において、小径孔131の内部に臨んでいる。内輪21bの内周面には、第1軸部材19の外周面19cが固定されている。外輪21aと内輪21bとの間には、複数の玉21cが配置されている。第1軸受21は、回転電機10を収容するハウジング11に対して第1軸部材19を回転可能に支持している。第1軸受21は、第1軸部材19の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の一端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。
【0027】
第1ボス部12cの先端は、第2軸部材20の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の他端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。第1ボス部12cは、2段円筒孔である。第1ボス部12cは、小径孔121と、大径孔122と、を有している。小径孔121は、円形の底面121aと、底面121aの外縁から円筒状に延びる側面121bと、を有している。底面121aは、底壁12aのうちハウジング11の内部に位置する内面の一部である。
【0028】
大径孔122は、第2軸部材20の軸線方向において、小径孔121よりもハウジング11の内部寄りに設けられている。大径孔122は、環状の底面122aと、底面122aの外縁から円筒状に延びる側面122bと、を有している。底面122aの内縁は、小径孔121の側面121bの一端と連続している。底面122aは、側面121bの一端から第2軸部材20の径方向の外側に向けて延びている。大径孔122は、第2軸部材20の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の他端に位置するコイルエンド14cの一部と重なっている。第1ボス部12cは、側面121b、底面122a、及び側面122bにより第2軸部材20の軸線方向に段差をなすように小径孔121と大径孔122とが並ぶ2段円筒孔である。
【0029】
第1ボス部12cの大径孔122には、第2軸受22が収容されている。第2軸受22は、転がり軸受である。大径孔122の底面122aには、第2軸受22の外輪22aが載置されている。外輪22aの外周面は、大径孔122の側面122bに固定されている。第2軸受22の内輪22bは、大径孔122の底面122aに載置されず、第2軸部材20の軸線方向において、小径孔121の内部に臨んでいる。内輪22bの内周面には、第2軸部材20の第2端部20bが固定されている。内輪22bの内周面には、第2軸部材20の外周面20cが固定されている。外輪22aと内輪22bとの間には、複数の玉22cが配置されている。第2軸受22は、回転電機10を収容するハウジング11に対して第2軸部材20を回転可能に支持している。第2軸受22は、第2軸部材20の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の他端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。
【0030】
第1軸受21及び第2軸受22は、回転電機10を収容するハウジング11に対して軸部材18を回転可能に支持する軸受である。第1軸受21及び第2軸受22は、軸部材18の径方向において、コイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。第1ボス部12c及び第2ボス部13cは、ハウジング11から回転電機10に向けて突出するとともに軸部材18が挿通され、且つ第1軸受21及び第2軸受22が収容される収容部である。第1ボス部12c及び第2ボス部13cは、軸部材18の径方向において、コイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。
【0031】
回転電機10は、第1軸部材19及び第2軸部材20それぞれの外周面19c,20cから第1軸部材19及び第2軸部材20の径方向の外側に突出する板状の遮蔽部30を備えている。遮蔽部30は、第1軸部材19及び第2軸部材20と一体形成されている。遮蔽部30は、第1軸部材19及び第2軸部材20の全周に延び、環状をなしている。遮蔽部30は、第1軸部材19及び第2軸部材20と同じ磁性材料である鉄材により形成されている。
【0032】
第1軸部材19に設けられている遮蔽部30は、第1軸部材19の軸線方向において、第1軸受21よりもハウジング11の内部寄りに第1軸受21と隣り合うように配置され、且つステータコア14aの軸線方向の一端よりも第1軸受21寄りに配置されている。第1軸部材19に設けられている遮蔽部30は、第1軸部材19の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の一端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。
【0033】
第2軸部材20に設けられている遮蔽部30は、第2軸部材20の軸線方向において、第2軸受22よりもハウジング11の内部寄りに第2軸受22と隣り合うように配置され、且つステータコア14aの軸線方向の他端よりも第2軸受22寄りに配置されている。第2軸部材20に設けられている遮蔽部30は、第2軸部材20の径方向において、ステータコア14aの軸線方向の他端に位置するコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置されている。
【0034】
第1軸部材19に設けられている遮蔽部30と、第2軸部材20に設けられている遮蔽部30とは、軸部材18の軸線方向において、ロータ15を基準として対称的な位置に配置されている。なお、第1軸部材19に設けられている遮蔽部30と、第2軸部材20に設けられている遮蔽部30とは、軸部材18の軸線方向において、ロータ15の回転バランスを保つことができる位置に配置されている。なお、遮蔽部30の外径、遮蔽部30の第1軸受21及び第2軸受22からの距離、及び遮蔽部30の永久磁石17からの距離は、永久磁石17から第1軸受21及び第2軸受22に向けて洩れる磁束を遮蔽部30により十分に吸収できる程度となるように回転電機10の設計時に大きさが設定されている。
【0035】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)第1軸部材19及び第2軸部材20と遮蔽部30とが同じ磁性材料により構成され、且つ一体形成されているため、第1軸部材19及び第2軸部材20と、遮蔽部30との熱膨張係数が同じである。そのため、第1軸部材19及び第2軸部材20が熱膨張するときには、遮蔽部30も同時に熱膨張し、第1軸部材19及び第2軸部材20が熱収縮するときには遮蔽部30も同時に熱収縮する。よって、軸部材18及び遮蔽部30に応力が作用することなく、且つ軸部材18と遮蔽部30との間に隙間が形成されない。したがって、軸部材18及び遮蔽部30に作用する応力を抑制でき、且つ軸部材18に対する遮蔽部30の滑りを無くすことができる。
【0036】
(2)本実施形態では、第1ボス部12c、第1軸受21、第2ボス部13c、及び第2軸受22を軸部材18の径方向においてコイルエンド14cの一部と重なる位置に配置している。第1ボス部12c及び第2ボス部13cのハウジング11からの突出長さを一定とした場合、第1ボス部12c、第1軸受21、第2ボス部13c、及び第2軸受22を軸部材18の径方向においてコイルエンド14cと重ならない位置に配置する構成と比較して、軸部材18の軸線方向におけるハウジング11の長さを短くすることができ、軸部材18の長さも短くできる。よって、第1ボス部12c、第1軸受21、第2ボス部13c、及び第2軸受22を軸部材18の径方向においてコイルエンド14cと重ならない位置に配置する構成と比較して、軸部材18の軸線方向において回転電機10を小型化できる。
【0037】
また、軸部材18の軸線方向において回転電機10を小型化できる一方で、第1軸受21及び第2軸受22が軸部材18の軸線方向において永久磁石17に近接する。すなわち、永久磁石17の磁束が第1軸受21及び第2軸受22を通過し易くなり、第1軸受21及び第2軸受22が磁束により加熱されることが考えられるが、遮蔽部30が第1軸受21及び第2軸受22と隣り合うように配置されるため、第1軸受21及び第2軸受22に永久磁石17の磁束が通過し難くなり、第1軸受21及び第2軸受22の発熱を抑制できる。
【0038】
(3)永久磁石17から第1軸受21及び第2軸受22に向けて洩れる磁束は、遮蔽部30に吸収され、第1軸部材19及び第2軸部材20を介して永久磁石17側に戻される。そのため、永久磁石17の磁束洩れを抑制でき、且つ第1軸受21及び第2軸受22における鉄損を抑制できる。
【0039】
(4)仮に、1本の軸部材を円筒状の永久磁石に挿通する構成を採用する場合、永久磁石を挟み込むように軸部材の外周面に遮蔽部が設けられることが好ましい。しかし、遮蔽部のうち一方が軸部材と一体形成されていても、遮蔽部のうち他方は、軸部材と別体として形成する必要がある。そのため、1本の軸部材を磁性体に挿通した後に、軸部材の外周面に別体の遮蔽部を取り付ける工数が増える虞がある。
【0040】
その点、本実施形態では、軸部材18が第1軸部材19及び第2軸部材20を有し、遮蔽部30が第1軸部材19及び第2軸部材20と一体形成されている。そのため、筒部材16の内周面16aに永久磁石17を固定し、第1軸部材19及び第2軸部材20を筒部材16の第1端部16b及び第2端部16cそれぞれに固定するだけで遮蔽部30の配置も完了する。よって、1本の軸部材を円筒状の磁性体に挿通する構成と比較すると、遮蔽部30を取り付ける工数を削減できる。さらに、遮蔽部30と第1軸部材19及び第2軸部材20とが別体で構成される場合と比較しても、軸部材18に遮蔽部30を取り付ける工数を削減できる。
【0041】
(5)遮蔽部30を第1軸部材19及び第2軸部材20と別体とする場合と比較して、回転電機10の部品点数を少なくできる。
(6)第1軸部材19に設けられている遮蔽部30と、第2軸部材20に設けられている遮蔽部30とは、軸部材18の軸線方向において、ロータ15の回転バランスを保っているため、軸部材18が軸線方向に傾斜するような軸振れを抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 第1ボス部12c及び第2ボス部13cの構成は2段円筒孔でなくてもよい。第1ボス部12cは、大径孔122のみで構成してもよく、第2ボス部13cは、大径孔132のみで構成してもよい。このように変更する場合、大径孔122の底面122aを底壁12aのハウジング11の内部に位置する内面としてもよく、大径孔132の底面132aを第2ハウジング構成体13のハウジング11の内部に位置する内面としてもよい。
【0043】
○ 第1軸受21、第2軸受22、及び遮蔽部30は、軸部材18の径方向において、コイルエンド14cと重なる位置に配置されていたが、これに限らない。第1軸受21、第2軸受22、及び遮蔽部30が軸部材18の径方向において、コイルエンド14cと重ならなくてもよい。
【0044】
○ ロータ15及び遮蔽部30の構成を以下のように変更してもよい。
図2に示すように、ロータ15は、筒部材16と、筒部材16の内周面16aに固定される永久磁石17と、磁性材料である鉄材により形成される1本の軸部材18と、を備えている。永久磁石17は、円筒状をなしている。永久磁石17の外周面17aは、筒部材16の内周面16aに押し付けられ、永久磁石17の内周面17dには、軸部材18が圧入されている。軸部材18の外周面18aは、永久磁石17の内周面17dに押し付けられている。
【0045】
遮蔽部30は、軸部材18の外周面18aから突出するように設けられ、ロータ15を挟み込むように配置されている。遮蔽部30は、軸部材18と同一の磁性材料である鉄材により形成されている。遮蔽部30のうち一方は、軸部材18の外周面18aと一体形成され、遮蔽部30のうち他方は、軸部材18と別体で形成され、軸部材18の外周面18aに固定された環状のリング部材である。
【0046】
このように変更されても、軸部材18が熱膨張するときには遮蔽部30も同様に熱膨張し、軸部材18が熱収縮するときには遮蔽部30も同様に熱収縮する。
よって、遮蔽部30のうち他方においては、軸部材18及び遮蔽部30に応力が作用し難くなり、且つ軸部材18と遮蔽部30のうち他方との間に隙間が形成され難くなる。遮蔽部30のうち一方においては、軸部材18及び遮蔽部30に応力が作用することなく、且つ軸部材18と遮蔽部30との間に隙間が形成されない。したがって、軸部材18及び遮蔽部30に作用する応力を抑制でき、且つ軸部材18に対する遮蔽部30の滑りを抑制できる。なお、遮蔽部30のうち他方であるリング部材を割愛してもよい。また、遮蔽部30のうち一方を割愛してもよい。ただし、遮蔽部30のいずれか一方を割愛する場合、ロータ15の回転バランスを保てるように遮蔽部30のいずれか他方の構成を調整することが好ましい。
【0047】
○ 永久磁石17は、筒部材16の内側に圧入されることにより筒部材16の内周面16aに固定されていたが、永久磁石17を筒部材16の内側に隙間嵌めし、永久磁石17の外周面17aと筒部材16の内周面16aとを接着剤等で固定してもよい。
【0048】
○ 筒部材16は、炭素繊維強化プラスチックに限らず、金属により形成されていてもよい。
図2に示す変更例において、筒部材16を割愛してもよい。
【0049】
○ 本実施形態において、遮蔽部30は、第1軸部材19及び第2軸部材20と別体にしてもよい。また、遮蔽部30を、第1軸部材19及び第2軸部材20のいずれか一方にのみ設けるように変更してもよい。
【0050】
○ 磁性材料として鉄材を採用したが、鋼材であってもよい。また、軸部材18及び遮蔽部30が同一の磁性材料であれば、材質はどのように変更してもよい。
○ ハウジング11が磁性材料である鉄材で構成されていれもよい。このように変更すると、永久磁石17からハウジング11に向けての磁束洩れも遮蔽部30により抑制できる。
【0051】
○ 回転電機10において、経年劣化等でロータ15の回転バランスが保ち難くなる場合が考えられるが、この場合、ロータ15の回転バランスが取れるように遮蔽部30を削ってもよい。
【0052】
○ 磁性体として永久磁石17が採用されたが、磁性体として電磁鋼板を積層した積層コアを採用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…回転電機、11…ハウジング、14…ステータ、14a…ステータコア、14b…コイル、14c…コイルエンド、15…ロータ、16…筒部材、16a…筒部材の内周面、16b…筒部材の第1端部、16c…筒部材の第2端部、17…永久磁石、17b…永久磁石の第1端部、17c…永久磁石の第2端部、18…軸部材、18a…外周面、19…第1軸部材、19c…外周面、20…第2軸部材、20c…外周面、21…第1軸受、22…第2軸受、30…遮蔽部。
図1
図2