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<図1>
  • -飛灰処理装置及び飛灰処理方法 図1
  • -飛灰処理装置及び飛灰処理方法 図2
  • -飛灰処理装置及び飛灰処理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021636
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】飛灰処理装置及び飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20220127BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20220127BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
B01D53/40 200
F23J15/00 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125340
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
4D004
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA32
3K070DA35
4D002AA02
4D002AB01
4D002AC04
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA01
4D002CA11
4D002DA01
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA35
4D002EA02
4D002FA08
4D002GA01
4D002GB03
4D004AA37
4D004AB03
4D004CA15
4D004CA32
4D004CA34
4D004CB04
4D004CB08
4D004CB31
4D004CB37
4D004CC01
4D004CC03
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA06
(57)【要約】
【課題】廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰からの重金属類溶出を効率よく抑制するための飛灰処理装置及び方法を提供することを課題とする。
【解決手段】廃棄物焼却炉1の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理装置において、集塵後の飛灰を乾燥状態で受け入れ二酸化炭素と反応させる反応装置8と、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温して反応装置に供給する排ガス減温供給装置とを備え、排ガス減温供給装置が、除塵後の排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温装置、または、除塵後の排ガスを間接的に減温する間接減温装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理装置において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で受け入れ二酸化炭素と反応させる反応装置と、
廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温して反応装置に供給する排ガス減温供給装置とを備えることを特徴とする飛灰処理装置。
【請求項2】
排ガス減温供給装置は、除塵後の排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温装置、または、除塵後の排ガスを間接的に減温する間接減温装置であることとする請求項1に記載の飛灰処理装置。
【請求項3】
直接減温装置は、減温用の流体として冷却水、アルカリ水溶液、及び空気のうち、いずれかを接触させることとする請求項2に記載の飛灰処理装置。
【請求項4】
間接減温装置は、排ガスと冷媒との熱交換器を備え、冷媒としての冷却水または空気を用いることとする請求項2に記載の飛灰処理装置。
【請求項5】
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理装置において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で受け入れ二酸化炭素と反応させる反応装置と、
廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温するとともに該排ガスから酸性ガスを除去した後に反応装置に供給する排ガス減温・酸性ガス除去装置とを備え、
排ガス減温・酸性ガス除去装置が、除塵後の排ガスに水あるいはアルカリ水溶液を噴霧する減温洗浄装置、酸性ガスを吸収する組成の吸収液を上記除塵後の排ガスに接触させる吸収装置、及び上記除塵後の排ガスを酸性ガスの露点温度以下に減温し酸性ガスを凝縮させる酸性ガス結露除去装置とのうちのいずれか1つであることを特徴とする飛灰処理装置。
【請求項6】
廃棄物焼却炉の排ガスの除塵により集塵した飛灰を処理する飛灰処理方法において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ二酸化炭素と反応させる反応工程と、
除塵後の排ガスを減温装置で100℃未満に減温してから反応装置へ供給する排ガス減温工程とを有することを特徴とする飛灰処理方法。
【請求項7】
排ガス減温工程は、除塵後の排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温工程、または、除塵後の排ガスを間接的に冷媒と接触させて減温する間接減温工程であることとする請求項6に記載の飛灰処理方法。
【請求項8】
直接減温工程は、減温用の液体として冷却水、アルカリ水溶液、及び空気のうち、いずれかを接触させることとする請求項7に記載の飛灰処理方法。
【請求項9】
間接減温工程は、排ガスを冷媒と熱交換させ、冷媒として冷却水または空気を用いることとする請求項7に記載の飛灰処理方法。
【請求項10】
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理方法において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ二酸化炭素と反応させ、
排ガス減温・酸性ガス除去装置としての減温洗浄装置で除塵後の排ガスに水あるいはアルカリ水溶液を噴霧して該排ガスを減温すること、排ガス減温・酸性ガス除去装置としての吸収装置にて、酸性ガスを吸収する組成の吸収液を上記除塵後の排ガスに接触させること、及び排ガス減温・酸性ガス除去装置としての酸性ガス結露除去装置で上記除塵後の排ガスを酸性ガスの露点温度以下に減温し酸性ガスを凝縮させることのうちのいずれか1つにより、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温するとともに該排ガスから酸性ガスを除去した後に反応装置に供給することを特徴とする飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物焼却炉から排出され集塵された飛灰中の重金属類の溶出を抑制する飛灰処理装置及び飛灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉から排出される排ガスには多量の煤塵(飛灰)が含まれており、飛灰はバグフィルタ等の集塵装置で集塵され、排ガスは除塵される。集塵された飛灰には鉛、カドミウム等の重金属類が含まれており、埋立処分する際には重金属類の溶出量が規制値以下となるように、重金属類を固定し安定化処理して重金属類の溶出抑制処理を施すことが定められている。なお、飛灰に含まれている重金属類のうち、特に鉛の含有量が多いため、処理の対象になっている重金属類は主として鉛である。
【0003】
一般的な重金属類の安定化処理として、安定化剤を飛灰に混合し重金属類を固定し安定化することが行われている。しかしながら、安定化剤は高価であるため飛灰の安定化処理コストが嵩むという問題があった。
【0004】
上述の安定化処理の他にも、重金属類の溶出を抑制するための方策が種々検討されている。排ガスに含まれる酸性ガスを除去するためにバグフィルタ等の集塵装置の上流側で排ガスにアルカリ剤を供給し、アルカリ剤と酸性ガスとを中和反応させる際、バグフィルタで集塵された飛灰は未反応のアルカリ剤を含むため強アルカリ性を示し「アルカリ飛灰」と呼ばれている。アルカリ飛灰のpHは高く、重金属類が溶出し易い。例えば、このアルカリ飛灰を安定化剤により重金属類安定化処理する前又は処理中に、炭酸ガスを供給して飛灰中のアルカリ成分を炭酸化してアルカリ飛灰のpHを低くする炭酸化処理を行い重金属類の溶出を抑制して、重金属安定化剤の使用量を低減し飛灰処理コストを低減することが検討されている。
【0005】
次に、飛灰の炭酸化処理について説明する。飛灰に含まれる鉛は溶出液のpHによって溶解度が大きく異なり、アルカリ飛灰の溶出液は高pHであるため鉛が容易に溶出する。炭酸化処理は飛灰中のアルカリ成分であるCaOやCa(OH)を炭酸ガスと反応させ炭酸化し、CaCOとすることで溶出液のpHを低くして、鉛が難溶性を示す難溶性領域として鉛の溶出を抑える処理である。アルカリ飛灰の場合、酸性ガス除去を目的に吹き込まれ未反応で存在する消石灰Ca(OH)が主なアルカリ成分である。また、飛灰に含まれる鉛が炭酸ガスと反応して鉛の形態が易溶性のPbClやPbOから難溶性のPbCOに変化して鉛の溶出が抑制される鉛の炭酸化反応も行われる。
【0006】
飛灰の安定化処理コストを低減するための炭酸化処理を行う飛灰と炭酸ガスとの反応装置、方法が特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献1では、重金属類を含むアルカリ飛灰に水を供給し水とアルカリ飛灰が十分に混合するように混錬し、水と混錬したアルカリ飛灰に炭酸ガスを通気する。その際、アルカリ飛灰と炭酸ガスとの反応前、反応中、反応後のいずれかに重金属安定化剤を供給し混合し重金属類を固定化し溶出防止処理を行う。
【0008】
特許文献2では、アルカリ飛灰に水分を添加し湿り灰状態として反応室に供給し、水分の存在下で、水分の蒸発を抑制できる90℃以下の加熱雰囲気下で飛灰と炭酸ガスとを反応させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-224640
【特許文献2】特開2003-033748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、特許文献2では、アルカリ飛灰に水を供給してから炭酸化処理を行う場合、アルカリ飛灰粒子同士が水分によって結合しアルカリ飛灰粒子と炭酸ガスとの接触が悪くなるため、炭酸化処理効率を向上させることに限界があった。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑み、廃棄物焼却炉から排出され集塵された飛灰からの重金属類溶出を抑制するための、飛灰の炭酸化処理を効率よく進めることができる、飛灰処理装置及び飛灰処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題は、本発明に基づく次の飛灰処理装置及び飛灰処理方法により解決される。
【0013】
[飛灰処理装置]
本発明の飛灰処理装置は、次の第一発明もしくは第二発明として構成される。
【0014】
<第一発明>
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理装置において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で受け入れ二酸化炭素と反応させる反応装置と、
廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温して反応装置に供給する排ガス減温供給装置とを備えることを特徴とする飛灰処理装置。
【0015】
第一発明において、排ガス減温供給装置は、除塵後の排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温装置、または、除塵後の排ガスを間接的に減温する間接減温装置とすることができる。さらに、直接減温装置は、減温用の流体として冷却水、アルカリ水溶液、及び空気のうち、いずれかを接触させることができる。また、間接減温装置は、排ガスと冷媒との熱交換器を備え、冷媒として冷却水または空気を用いることができる。
【0016】
<第二発明>
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理装置において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で受け入れ二酸化炭素と反応させる反応装置と、
廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温するとともに該排ガスから酸性ガスを除去した後に反応装置に供給する排ガス減温・酸性ガス除去装置とを備え、
排ガス減温・酸性ガス除去装置が、除塵後の排ガスに水あるいはアルカリ水溶液を噴霧する減温洗浄装置、酸性ガスを吸収する組成の吸収液を上記除塵後の排ガスに接触させる吸収装置、及び上記除塵後の排ガスを酸性ガスの露点温度以下に減温し酸性ガスを凝縮させる酸性ガス結露除去装置とのうちのいずれか1つであることを特徴とする飛灰処理装置。
【0017】
[飛灰処理方法]
本発明の飛灰処理方法は、次の第三発明もしくは第四発明として構成される。
【0018】
<第三発明>
廃棄物焼却炉の排ガスの除塵により集塵した飛灰を処理する飛灰処理方法において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ二酸化炭素と反応させる反応工程と、
除塵後の排ガスを減温装置で100℃未満に減温してから反応装置へ供給する排ガス減温工程とを有することを特徴とする飛灰処理方法。
【0019】
第三発明において、排ガス減温工程は、除塵後の排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温工程、または、除塵後の排ガスを間接的に冷媒と接触させて減温する間接減温工程とすることができる。さらに、直接減温工程は、減温用の液体として冷却水、アルカリ水溶液、及び空気のうち、いずれかを接触させることができる。また、間接減温工程は、排ガスを冷媒と熱交換させ、冷媒として冷却水または空気を用いることができる。
【0020】
<第四発明>
廃棄物焼却炉の排ガスから集塵した飛灰を処理する飛灰処理方法において、
集塵後の飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ二酸化炭素と反応させ、
排ガス減温・酸性ガス除去装置としての減温洗浄装置で除塵後の排ガスに水あるいはアルカリ水溶液を噴霧して該排ガスを減温すること、排ガス減温・酸性ガス除去装置としての吸収装置にて、酸性ガスを吸収する組成の吸収液を上記除塵後の排ガスに接触させること、及び排ガス減温・酸性ガス除去装置としての酸性ガス結露除去装置で上記除塵後の排ガスを酸性ガスの露点温度以下に減温し酸性ガスを凝縮させることのうちのいずれか1つにより、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温するとともに該排ガスから酸性ガスを除去した後に反応装置に供給することを特徴とする飛灰処理方法。
【発明の効果】
【0021】
以上述べた本発明の第一発明および第三発明によれば、廃棄物焼却炉から排出される飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温して供給し、飛灰を排ガスに含まれる二酸化炭素と反応させるため、二酸化炭素との接触の低下の要因となる水による飛灰同士の結合を回避でき、反応効率の高い飛灰の炭酸化処理を進めることができる。
【0022】
また、第二発明および第四発明によれば、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを100℃未満に減温するとともに酸性ガスを除去して反応装置に供給する排ガス減温・酸性ガス除去装置を備え、排ガスに含まれる酸性ガスを除去することにより、反応装置や反応装置へ排ガスを導入する配管内で酸性ガスが結露凝縮して酸性液が生じ装置や配管に腐食が生じることを防止でき、腐食損傷による不具合の発生を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態に係る廃棄物焼却設備の概要構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る廃棄物焼却設備の概要構成の他の例を示す図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る廃棄物焼却設備の概要構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態を説明するが、それに先立ち、発明の原理について説明する。
【0025】
<<発明の原理>>
<飛灰のpHと鉛の溶出量に対する基準>
【0026】
飛灰の鉛の溶出量に対する基準値は、埋立処分する場合、鉛の溶出量が0.3mg/1であり、資源として有効利用する場合、鉛の溶出量が0.01mg/1である。このため、飛灰を埋立処分あるいは資源として有効利用する場合には、飛灰を上記の基準値以下の性状にするための処理をしなければならない。
【0027】
飛灰中の重金属のうち、特に含有量が多い鉛は両性金属であり、pHが12を下回る領域においては、溶解度が大幅に低下し難溶出性となるので、飛灰と二酸化炭素との反応による炭酸化処理により飛灰のpHを12以下にすることにより、鉛の溶出量を極度に減少させることができる。また、鉛などの重金属が炭酸化され不溶出性物となる反応も進行して、重金属の溶出が抑制される。
【0028】
<飛灰処理の手順>
本実施形態では、飛灰に安定化剤を混合し重金属を固定・安定化して飛灰を基準値以下の性状にする安定化処理の前に、飛灰に廃棄物焼却炉から排出される排ガスを接触させることにより、飛灰中に含まれるCa(OH)、CaOなどのアルカリ成分に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩化させ、飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制するとともに、飛灰中の鉛に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩を生成せしめ不溶出化する。このように飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制する処理と鉛の炭酸塩を生成せしめ不溶出化する処理を行うことにより、重金属類の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減でき飛灰処理コストを低減できる。
【0029】
また、廃棄物焼却炉から排出される飛灰を乾燥状態で反応装置に受け入れ、廃棄物焼却炉から排出され除塵された排ガスを反応装置に供給して、飛灰を排ガスに含まれる二酸化炭素と反応させるため、二酸化炭素との接触効率低下の要因である、水による飛灰粒子同士の結合を回避でき、反応効率の高い飛灰の炭酸化処理を進めることができる。
【0030】
<排ガス温度と反応効率>
飛灰と排ガスに含まれる二酸化炭素とを反応させる際の排ガス温度と反応効率との関係を検討した。
【0031】
都市ごみ焼却炉から排出されバグフィルタで集塵された飛灰を反応装置に充填し、この飛灰にバグフィルタから排出された排ガスを減温装置により種々の温度に減温(冷却)して通気する試験を行った。供試した飛灰の溶出液のpHが12.6であった。また、通気した排ガスの組成は二酸化炭素が10~15vol%、水分が10~20vol%であった。
【0032】
表1に、種々の温度の排ガスを通気した後の飛灰の溶出液のpHを示す。排ガス温度を100℃未満とする場合にpHが12.0以下となり、排ガス温度を60℃以下とする場合にpHが11.0以下となり、温度が低いほどpHが低くなり炭酸化反応が促進され反応効率が高くなることが判明した。排ガスを100℃未満に減温(冷却)して供給し、より好ましくは60℃以下に減温(冷却)して供給し、排ガスに含まれる二酸化炭素を飛灰と反応させることにより、飛灰の炭酸化反応の進行を促進させることができるため、反応効率の高い飛灰の炭酸化処理を進めることができる。また、排ガス温度の下限は、好ましくは、排ガスを減温する流体(水や空気等)の温度との兼ね合いで常温(概ね20℃)以上になっているとよい。
【0033】
【表1】
【0034】
図1に本発明の第一実施形態としての飛灰処理装置を有する廃棄物焼却設備の概要構成に係る一の例を示す。
【0035】
図1に示される廃棄物焼却設備は、廃棄物焼却炉1、該廃棄物焼却炉1からの燃焼排ガスの廃熱を回収するボイラ2、廃熱回収後の排ガスを除塵するバグフィルタ等の集塵装置3、該集塵装置3の上流側の煙道Aを流通する燃焼排ガスにアルカリ剤を供給するアルカリ剤供給装置4、集塵装置3から排出される排ガスの一部を冷却し後述の反応装置8へ供給する排ガス減温供給装置としての減温装置5、排ガスを下流側へ送る送風機6、煙突7、さらには飛灰の反応装置8を備えている。
【0036】
上記ボイラ2、集塵装置3、送風機6は、廃棄物焼却炉1と煙突7とを結ぶ煙道Aに、排ガスの流れに沿って上流側から下流側へ向け順次配されている。上記アルカリ剤供給装置4は、煙道A中の燃焼排ガスへアルカリ剤を供給するように、煙道Aに対して接続されている。また、減温装置5は、集塵装置3の下流側で煙道Aから分岐された分岐管Bに接続されており、該分岐管Bから煙道A中の排ガスの一部を受けて減温するようになっている。該分岐管Bは、さらに減温装置5の出口側と上記反応装置8を接続しており、上記減温された排ガスを反応装置8へ供給する。該反応装置8は集塵装置3とも接続されていて、集塵装置3から飛灰を受けるようになっている。また、反応装置8はボイラ2と集塵装置3との間の位置で煙道Aに接続されていて、反応装置8から排出された排ガスが煙道Aに戻されるようになっている。
【0037】
次に、アルカリ剤供給装置4、減温装置5、反応装置8について、さらに詳しく説明する。
【0038】
<アルカリ剤供給装置>
このアルカリ剤供給装置4は、ボイラ2から排出された排ガスにアルカリ剤(例えば消石灰)を供給し、排ガス中の酸性ガスとアルカリ剤とを反応させ反応生成物を生成して酸性ガスを除去して、集塵装置3で煤塵とともに反応生成物と未反応のアルカリ剤が集塵される。ここで、集塵装置3で集塵された飛灰には未反応のアルカリ剤が含まれており、溶出液のpHが高い。
【0039】
<減温装置>
減温装置5は、その形式に限定はなく、排ガスに減温用の流体としての水(冷却水)あるいはアルカリ水溶液を直接噴霧して、もしくは空気を吹込んで該排ガスを100℃未満の所定温度、より好ましくは60℃以下の所定温度にまで減温(冷却)する直接減温装置として形成されている。
【0040】
<反応装置>
反応装置8は、飛灰を乾燥状態で受け入れて、かつ、集塵装置3から排出され減温装置5で減温された排ガスの一部を導入して、飛灰と排ガス中の二酸化炭素とを接触させ反応させる構成となっている。反応を効果的に行なうよう、例えば反応装置8内に飛灰の固定層又は移動層が形成されるようになっている。かくして、飛灰は反応装置8で排ガス中の二酸化炭素と反応し炭酸化処理がなされて、処理飛灰として排出される。処理飛灰は、重金属安定化剤と混合され、重金属を固定・安定化して飛灰を基準値以下の性状とする処理がなされる。
【0041】
反応装置8には、飛灰を反応装置8内に滞留させて固定層を形成するため、あるいは移動層を構成するための飛灰受入れ手段と飛灰排出手段が備えられている(ともに図示せず)。さらに、上記分岐管Bを経て、反応装置8内の飛灰に廃棄物焼却炉1の排ガスの一部を通気するための、排ガスを導入して飛灰内に分散させる手段も接続されている(図示せず)。このため、反応装置8内には、例えばガス分散管(図示せず)が設けられている。ガス分散管は格子状にしたり、多数本を並列に配置したりして形成される。また、反応装置8内の飛灰を撹拌して排ガスとの接触を促進するための撹拌手段(図示せず)を設けてもよい。
【0042】
廃棄物焼却炉の排ガスの一部を分岐管Bを経て減温装置5から反応装置8へ導入する際には、上記排ガスの一部を減温装置5にて100℃未満の所定温度、より好ましくは60℃以下の所定温度に減温(冷却)する。このため、減温装置5としては、排ガスに減温用の流体を直接接触させる直接減温装置を用いており、減温用の流体として冷却水、アルカリ水溶液、及び空気のうち、いずれかを接触させる排ガスは所定温度に減温(冷却)された後に反応装置8へ導入される。減温装置としては、直接減温装置形式の減温装置5に代えて、排ガスを熱交換用冷媒(減温用の流体)に間接的に接触させる熱交換器や他の減温手段を備える間接減温装置を用いてもよい。間接減温装置として熱交換器を用いる場合、熱交換用冷媒として、例えば、冷却水や空気を用いることとしてもよい。
【0043】
かくして、集塵装置3で集塵された飛灰は乾燥状態のまま反応装置8へ供給され、固定層を形成するか、所定量を受け入れるとともに抜き出されて移動層を形成する。飛灰には別途水分を供給することはせず、飛灰は乾燥状態のままとして、反応装置8へ導入される排ガスに含まれる二酸化炭素と水蒸気とを飛灰粒子表面に良好に接触させ炭酸化反応を進める。飛灰粒子同士が水分によって結合していないため、飛灰粒子表面での二酸化炭素との接触効率が高く、炭酸化反応が効率よく進行する。
【0044】
次に、上述のように構成された本実施形態における廃棄物焼却設備の操作要領について説明する。
【0045】
<操作要領>
先ず、廃棄物が廃棄物焼却炉1に供給され燃焼し、燃焼排ガスはボイラ2へ導入されて熱回収される。次いで、排ガスは必要に応じてボイラ2とアルカリ剤供給装置4との間に位置して設けられた減温塔(図示せず)で水が噴霧されて150℃~200℃程度に急冷された後、アルカリ剤供給装置4によりアルカリ剤の供給を受け、バグフィルタ等の集塵装置3へ送られて除塵処理される。除塵された排ガスの一部が分岐管Bを経て減温装置5で減温された後に反応装置8へ供給され、排ガスの残部は送風機6により煙突7に送られ大気放散される。
【0046】
集塵装置3で集塵された未反応のアルカリ剤を含む飛灰が、乾燥状態で反応装置8へ送られ、該反応装置8内に飛灰層を形成し、その飛灰層に、廃棄物焼却炉1の排ガスが通気される。本実施形態では、上述のように、集塵装置3から排出される排ガスの一部が排ガス供給送風機(図示せず)により減温装置5に取り入れられ、100℃未満の範囲内の所定温度になるように、減温用の流体と接触して減温(冷却)された後、その減温(冷却)された排ガスがこの飛灰層に通気する排ガスとして、反応装置8に導入される。飛灰層を通過した排ガスは集塵装置3の上流側の煙道Aに戻される。
【0047】
反応装置8内に滞留している飛灰は、移動層を構成して順次抜き出されるようにして、その際には反応装置8内における飛灰の滞留時間が所定時間に維持されるように、適宜、抜き出し量の調整が行われる。また、反応装置8内に飛灰を所定時間滞留させ固定層を形成して反応終了後排出するバッチ処理方式としてもよい。滞留時間は飛灰粒子表面に廃棄物焼却炉1からの排ガス中の二酸化炭素が接して十分反応が進行するように設定される。
【0048】
反応装置8内の飛灰に廃棄物焼却炉1から排出される排ガスを通気することにより、飛灰中に含まれるCa(OH)、CaOなどのアルカリ成分に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩化させ、飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制する炭酸化処理がなされる。さらに、飛灰中の鉛に排ガス中の二酸化炭素を反応させて炭酸塩を生成せしめ不溶出化する処理がなされる。
【0049】
さらに、炭酸化処理がなされ反応装置8から排出された処理飛灰に重金属安定化剤を混合し、重金属を固定・安定化して飛灰を基準値以下の性状とする処理がなされる。このように飛灰のpHを低下させ重金属類の溶出を抑制する処理と鉛の炭酸塩を生成せしめ不溶出化する処理を行うことにより、重金属類の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減でき飛灰処理コストを低減できる。
【0050】
なお、反応装置8の制御を行うために制御装置を設け、この制御装置によって処理済み飛灰のpH測定値に基づいて、反応装置8に供給する排ガスの温度、排ガスの供給量、反応装置8での滞留時間、反応装置8からの焼却灰の抜出速度のうちの何れか、又は複数を調節するようにしてもよい。
【0051】
この第一実施形態としては、図1の例の変形例として、図2のごとくの構成としてもよい。
【0052】
この図2に示される変形例の場合は、図1の減温装置5に代えてバグフィルタ等の集塵装置3と送風機6とを接続する煙道Aに排ガス減温供給装置として、直接減温装置であって水又はアルカリ水溶液を噴霧する湿式洗煙装置9を備えており、煙道Aを通る全排ガスがこの湿式洗煙装置9で処理される。また、湿式洗煙装置9と送風機6とを接続する煙道Aには、排ガスを再加熱するための加熱装置10が備えられている。これらの点以外は図1の場合と同じである。
【0053】
図2に示される変形例では、アルカリ剤供給装置4によるアルカリ剤の供給と集塵装置3による反応生成物の捕集により酸性ガスの除去処理がなされた排ガスを湿式洗煙装置9に導入し、排ガスを水またはアルカリ水溶液(洗浄水)と接触させて残存する酸性ガスを除去する処理を行う。
【0054】
また、湿式洗煙装置9により、排ガス中に残存する酸性ガスを除去するとともに、排ガス温度を100℃未満に低下させる。
【0055】
湿式洗煙装置9から排出される排ガスの一部は反応装置8へ供給され、残部は加熱装置10で温度が酸露点以上になるまで再加熱された後、煙突7から大気へ排出される。
【0056】
湿式洗煙装置9により排ガス温度を低下させるとともに、排ガスに残存する酸性ガスを除去することにより、好適な温度の排ガスを反応装置8に供給するとともに、反応装置8や反応装置8へ排ガスを導入する分岐管B内で酸性ガスが結露凝縮して酸性液が生じ装置や配管に腐食が生じることを防止でき、腐食損傷による不具合の発生を防ぐことができる。
【0057】
次に、本発明の第二実施形態を図3に示す。
【0058】
この第二実施形態では、図1の第一実施形態における減温装置5に代え、分岐管Bに排ガス減温・酸性ガス除去装置11が配置されており、他は図1に示される第一実施形態と同じである。
【0059】
廃棄物焼却炉1から排出され除塵された排ガスの一部は、分岐管Bを経て上記排ガス減温・酸性ガス除去装置11で100℃未満に減温(冷却)されるとともに酸性ガスが除去されて反応装置8に供給される。この排ガス減温・酸性ガス除去装置11では、排ガス温度を低下させることで効率的に炭酸化を進めるので、重金属の固定・安定化処理のための安定化剤の使用量を低減でき、飛灰処理コストを低減できる。また排ガスに含まれる酸性ガスを除去することにより、反応装置8や反応装置8へ排ガスを導入する分岐管B内で酸性ガス(例えば亜硫酸ガス)が結露凝縮して酸性液(例えば硫酸)が生じ装置や配管に腐食が生じることを防止でき、腐食損傷による不具合の発生を防ぐことができる。
【0060】
排ガス減温・酸性ガス除去装置としては、次のうちのいずれかの装置とすることができる。
・排ガスに水又はアルカリ水溶液を噴霧して排ガス中の酸性ガスを水に溶解させ、又はアルカリ水溶液と中和反応させ除去する減温洗浄装置。
・排ガス中の酸性ガスを吸収する組成の吸収液を排ガスに接触させ、吸収液中に排ガスを通気し、又は排ガスに吸収液を噴霧して排ガスから酸性ガスを除去する吸収装置。
・熱交換器又は冷却装置により排ガスを酸性ガスの露点温度以下に減温(冷却)し酸性ガスを凝縮させる酸性ガス結露除去装置。
【符号の説明】
【0061】
1 廃棄物焼却炉
5 減温装置(排ガス減温供給装置)
8 反応装置
9 湿式洗煙装置(排ガス減温供給装置)
11 排ガス減温・酸性ガス除去装置
図1
図2
図3