(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021707
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20220127BHJP
F16L 37/084 20060101ALI20220127BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/084
A62C33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125471
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】上原 一輝
(72)【発明者】
【氏名】荒井 匠
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
【テーマコード(参考)】
2E189
3J106
【Fターム(参考)】
2E189LA02
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE26
3J106CA02
3J106EA03
3J106EC06
3J106ED14
3J106EF15
(57)【要約】
【課題】 受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制する。
【解決手段】 押し輪および係止部が設けられた差し金具と爪が設けられた受け金具とを備える差込式の結合金具において、押し輪は、先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含む。受け口は、第1面と対向する端面を有するしめ輪と、しめ輪の外周面に取り付けられた本体からしめ輪の端面に沿って突出する第1凸部を有する可撓性部材とを備える。結合状態において、可撓性部材は、第1凸部が第1面としめ輪の端面の間に介在する第1形状と、第1凸部が第1面としめ輪の端面の間に介在しない第2形状との間で弾性変形可能である。可撓性部材が第1形状である場合に押し輪が押されると、第1凸部が第1面としめ輪の端面の双方に接触して係止部と爪の係合が解除される位置への押し輪の移動が規制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、前記先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含み、
前記受け口は、
前記受け金具に設けられ、前記係止部と前記爪が係合した結合状態において前記第1面と対向する端面を有するしめ輪と、
前記しめ輪の外周面に取り付けられた本体および当該本体から前記軸に向けて前記端面に沿って突出する第1凸部を有する可撓性部材と、
を備え、
前記結合状態において、前記可撓性部材は、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の間に介在する第1形状と、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の間に介在しない第2形状と、の間で弾性変形可能であり、
前記可撓性部材が前記第1形状である場合に前記押し輪が前記爪と前記外周面の間に向けて押されると、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の双方に接触して前記係止部と前記爪の係合が解除される位置への前記押し輪の移動が規制される、
結合金具。
【請求項2】
前記本体は、前記第1凸部と前記軸方向に並ぶ位置に、前記半径方向に貫通するか或いは前記半径方向における厚さが低減された領域を有している、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記領域は、前記第1凸部から前記軸方向に離れるに連れて先細る形状を有している、
請求項2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記軸を中心とした周方向における前記第1凸部の幅は、前記周方向における前記爪の幅よりも小さい、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項5】
前記第1凸部は、前記軸の方向を向く第1内面を有し、
前記第1内面は、前記軸を中心とした周方向に沿う曲面である、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項6】
前記可撓性部材は、前記第1凸部とともに前記軸を中心とした周方向に並ぶ少なくとも1つの第2凸部をさらに有し、
前記半径方向における前記第2凸部の幅は、前記半径方向における前記第1凸部の幅よりも小さい、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項7】
前記第2凸部は、前記軸の方向を向く第2内面を有し、
前記第2内面は、前記結合状態において前記フランジ部よりも前記半径方向の外側に位置している、
請求項6に記載の結合金具。
【請求項8】
前記可撓性部材は、前記周方向において隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部の間に位置する凹部を有し、
前記受け金具に前記差し金具が挿し込まれ且つ前記押し輪により前記爪と前記係止部の係合が解除された状態において、前記フランジ部の前記第2面が前記凹部の底面よりも前記第1凸部の先端側に位置している、
請求項6または7に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の凸部である係止部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と係止部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消防活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1,2においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)のフランジ部よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させてフランジ部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-14477号公報
【特許文献2】特開2018-31464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。例えば、特許文献1,2のいずれに開示された結合金具においても、押し輪が障害物により押される角度や力の程度によっては離脱を十分に抑制できない。
【0009】
そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る結合金具においては、差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪は、前記先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含む。前記受け口は、前記受け金具に設けられ、前記係止部と前記爪が係合した結合状態において前記第1面と対向する端面を有するしめ輪と、前記しめ輪の外周面に取り付けられた本体および当該本体から前記軸に向けて前記端面に沿って突出する第1凸部を有する可撓性部材と、を備えている。前記結合状態において、前記可撓性部材は、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の間に介在する第1形状と、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の間に介在しない第2形状と、の間で弾性変形可能である。前記可撓性部材が前記第1形状である場合に前記押し輪が前記爪と前記外周面の間に向けて押されると、前記第1凸部が前記第1面と前記端面の双方に接触して前記係止部と前記爪の係合が解除される位置への前記押し輪の移動が規制される。
【0011】
前記本体は、前記第1凸部と前記軸方向に並ぶ位置に、前記半径方向に貫通するか或いは前記半径方向における厚さが低減された領域を有してもよい。この場合において、前記領域は、前記第1凸部から前記軸方向に離れるに連れて先細る形状を有してもよい。
【0012】
前記軸を中心とした周方向における前記第1凸部の幅は、前記周方向における前記爪の幅よりも小さくてもよい。前記軸の方向を向く前記第1凸部の第1内面は、前記軸を中心とした周方向に沿う曲面であってもよい。
【0013】
前記可撓性部材は、前記第1凸部とともに前記軸を中心とした周方向に並ぶ少なくとも1つの第2凸部をさらに有してもよい。この場合において、前記半径方向における前記第2凸部の幅は、前記半径方向における前記第1凸部の幅よりも小さくてもよい。さらに、前記軸の方向を向く前記第2凸部の第2内面は、前記結合状態において前記フランジ部よりも前記半径方向の外側に位置してもよい。
【0014】
前記可撓性部材は、前記周方向において隣り合う前記第1凸部と前記第2凸部の間に位置する凹部を有してもよい。さらに、前記受け金具に前記差し金具が挿し込まれ且つ前記押し輪により前記爪と前記係止部の係合が解除された状態において、前記フランジ部の前記第2面が前記凹部の底面よりも前記第1凸部の先端側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る結合金具の概略的な側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した受け口をしめ輪側から軸方向に沿って見た図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した第1凸部の概略的な斜視図である。
【
図4】
図4は、受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
【
図5】
図5は、受け金具に差し金具が挿入され、かつ係止部と爪が係合した状態における結合金具の一部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、受け金具に差し金具が挿入され、かつ係止部と爪の係合が解除された状態における結合金具の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、主に消防分野での使用が想定される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用の流路の結合など種々の用途で利用できる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る結合金具Cの概略的な側面図である。結合金具Cは、受け口Fと、差し口Mとを備えている。受け口Fは、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口Mは、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0019】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。また、軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。
【0020】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。さらに受け金具1は、消防用ホースの端部に挿入される装着部11を第1端部1a側に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。装着部11の外周面には、消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。
【0021】
受け口Fは、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面を覆う可撓性部材4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。可撓性部材4は例えばゴムなどの弾性材料で形成され、その外周面は受け口Fおよび差し口Mにおいて最も半径方向Drに突出している。
【0022】
可撓性部材4は、しめ輪3の外周面に取り付けられた円筒形の本体40と、本体40の端部に設けられた第1凸部41および複数の第2凸部42とを有している。第1凸部41および第2凸部42は、しめ輪3の端面31よりも軸方向Dxに突出している。
【0023】
図1の例においては、第1凸部41の軸方向Dxにおける高さH1と、第2凸部42の軸方向Dxにおける高さH2とが等しい(H1=H2)。これにより、第1凸部41および第2凸部42を下方に向けて受け口Fを置く際に、これら凸部41,42によって受け口Fが安定的に支持される。
【0024】
本体40は、第1凸部41と軸方向Dxに並ぶ位置に、半径方向Drに貫通した開口である領域43を有している。領域43は、第1凸部41から軸方向Dxに離れるに連れて先細る形状を有している。領域43は、後述するように可撓性部材4の第1凸部41付近の変形を容易化する。なお、領域43は、周囲よりも半径方向Drにおける厚さが低減された薄肉部であってもよい。この場合であっても同様に、可撓性部材4の第1凸部41付近の変形が容易化される。
【0025】
一般的な差込式の結合金具は、受け口の最外周に環状のバンドを備えている。バンドはゴムなどの弾性材料で形成され、保護部材やタイヤと呼ばれることもある。本実施形態においては、可撓性部材4がバンドとしての役割を兼ねている。他の例として、可撓性部材4とは別途のバンドが受け口Fに設けられてもよい。
【0026】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。さらに差し金具2は、受け金具1側の消防用ホースとは異なる他の消防用ホースの端部に挿入される装着部21を第1端部2a側に有するとともに、係止部22を第2端部2b側に有している。係止部22は、例えば周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の凸部である。装着部21の外周面には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。
【0027】
差し口Mは、装着部21と係止部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の止め輪5と、係止部22と止め輪5の間に設けられた押し輪6とをさらに備えている。止め輪5は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0028】
押し輪6は、外周面2cを囲う円筒部61と、止め輪5側の円筒部61の端部に設けられたフランジ部62とを有している。フランジ部62の反対側に位置する円筒部61の先端6aは、軸方向Dxにおいて係止部22の側面と対向している。係止部22および止め輪5により、押し輪6が差し金具2に対し抜け止めされている。押し輪6は、係止部22と止め輪5の間において軸方向Dxにスライド可能である。
【0029】
フランジ部62は、先端6a側の第1面62aと、第1面62aの反対側の第2面62bとを有している。第1面62aおよび第2面62bは、例えば軸方向Dxと直交する平面である。ただし、第1面62aおよび第2面62bは、軸方向Dxと90°以外の角度で交わる平面であってもよいし、少なくとも一部が曲面であってもよい。
【0030】
図2は、受け口Fを軸方向Dxに沿って第1凸部41および第2凸部42側から見た図である。
図3は、第1凸部41の概略的な斜視図である。
図2に示すように、軸AX1(AX2)を中心とした周方向Dθを定義する。
【0031】
受け口Fの内部には、3つの爪7A,7B,7Cが配置されている。爪7A,7B,7Cは、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。なお、受け口Fが備える爪の数は3つに限られない。
【0032】
図2の例においては、1つの第1凸部41と3つの第2凸部42が均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。ただし、可撓性部材4が有する第1凸部41の数は1つに限られず、2つ以上であってもよい。また、可撓性部材4が有する第2凸部42の数は3つに限られず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
図2の例においては各第2凸部42が同一の形状を有しているが、各第2凸部42は異なる形状を有してもよい。さらに他の例として、可撓性部材4が第2凸部42を有さなくてもよい。
【0033】
可撓性部材4は、隣り合う第1凸部41と第2凸部42の間および隣り合う第2凸部42同士の間にそれぞれ形成された凹部44を有している。凹部44の底面44a(本体40の端面)の軸方向Dxにおける位置は、例えばしめ輪3の端面31と略一致する(
図1参照)。
【0034】
第1凸部41は、軸AX1の方向を向く第1内面41aと、半径方向Drにおいて第1内面41aの反対側に位置する第1外面41bと、周方向Dθにおける一対の第1側面41c,41dと、軸方向Dxにおける第1先端面41eとを有している。同じく、第2凸部42は、軸AX1の方向を向く第2内面42aと、半径方向Drにおいて第2内面42aの反対側に位置する第2外面42bと、周方向Dθにおける一対の第2側面42c,42dと、軸方向Dxにおける第2先端面42eとを有している。
【0035】
図2および
図3の例において、第1内面41a、第1外面41b、第2内面42aおよび第2外面42bは、いずれも周方向Dθに沿う曲面である。第1外面41bおよび第2外面42bは、本体40の外周面と一致している。また、第1側面41c,41dおよび第2側面42c,42dは、軸方向Dxに沿う平面である。第1側面41c,41dは互いに平行であり、第2側面42c,42dは互いに平行である。第1先端面41eおよび第2先端面42eは、軸方向Dxと直交する平面である。なお、ここで例示したものに限らず、第1凸部41および第2凸部42には種々の形状を適用し得る。
【0036】
第1内面41aおよび第2内面42aは、しめ輪3の外周面よりも軸AX1側に位置している。すなわち、第1凸部41および第2凸部42は、本体40から軸AX1に向けてしめ輪3の端面31に沿って突出している。
【0037】
第1凸部41は、半径方向Drにおいて幅W11を有している。第2凸部42は、半径方向Drにおいて幅W21を有している。幅W21は、幅W11よりも小さい(W11>W21)。
【0038】
図2中には、
図1に示したように軸AX1,AX2が一致した状態におけるフランジ部62の外形を破線で示している。この破線から分かるように、第1凸部41は、フランジ部62と軸方向Dxにおいて重なる。一方、第2凸部42は、フランジ部62と軸方向Dxにおいて重ならない。幅W11,W21は、このような条件が成立する範囲内で適宜に定め得る。
【0039】
第1凸部41は、周方向Dθにおいて幅W12を有している。第2凸部42は、周方向Dθにおいて幅W22を有している。爪7A,7B,7Cは、周方向Dθにおいて幅W3を有している。
図2の例においては、幅W12,W22が同じである(W12=W22)。さらに、幅W12,W22が幅W3よりも小さい(W12,W22<W3)。ただし、幅W12,W22が異なってもよいし、幅W12,W22が幅W3以上であってもよい。
【0040】
図4は、受け口Fと差し口Mが連結された状態(結合状態)における結合金具Cの部分断面図である。断面視した部分には、第2凸部42と爪7Aが含まれる。受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する端部3aを有している。端部3aは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。上述の端面31は、端部3aに形成されている。結合状態において、端面31は、フランジ部62の第1面62aと軸方向Dxに対向する。
【0041】
受け口Fは、拡径部12の内側に配置されたシール材8と、爪7A,7B,7Cを保持する爪座9とをさらに備えている。シール材8は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座9は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと端部3aの間に配置されている。
【0042】
爪7Aは、爪座9と第2端部1bの間において、半径方向Drと平行に移動可能である。爪7Aは、例えば板ばねである弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。なお、爪7B,7Cも爪7Aと同じく爪座9と第2端部1bの間において半径方向Drと平行に移動可能であり、弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0043】
受け口Fと差し口Mを結合する際には、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、係止部22が弾性部材70の付勢力に抗して爪7A,7B,7Cを半径方向Drに押し上げる。これにより、
図4に示すように第2端部2bと拡径部12の内面とが接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0044】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材8のリップが係止部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。
【0045】
さらに、爪7A,7B,7Cが弾性部材70の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪7A,7B,7Cのそれぞれの一部が係止部22と軸方向Dxに対向する。すなわち、係止部22と爪7A,7B,7Cが軸方向Dxに係合するために、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0046】
爪7A,7B,7Cは、外周面2cと対向する傾斜面71を有している。受け金具1と差し金具2を離脱させる際に、作業者は、押し輪6を爪7A,7B,7Cに向けて押す。このとき、押し輪6の先端6aと傾斜面71が接触し、爪7A,7B,7Cが半径方向Drに押し上げられ、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される。
【0047】
第2凸部42の第2内面42aは、フランジ部62よりも半径方向Drの外側に位置しているため、上述したようにフランジ部62と軸方向Dxにおいて重ならない。したがって、第2凸部42は押し輪6の移動を妨げない。
【0048】
図4の例においては、第2凸部42がしめ輪3の端面31と接触している。他の例として、第2凸部42と端面31の間に隙間が設けられてもよい。
【0049】
図5は、受け金具1に差し金具2が挿入され、かつ係止部22と爪7A,7B,7Cが係合した状態における結合金具Cの一部を示す断面図である。
図6は、受け金具1に差し金具2が挿入され、かつ係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除された状態における結合金具Cの一部を示す断面図である。これら断面図は、いずれも第1凸部41および爪7Bを含む。
【0050】
図5においては、第1凸部41がフランジ部62の第1面62aとしめ輪3の端面31の間に介在している。以下、このような可撓性部材4の形状を第1形状と呼ぶ。第1形状は、第1凸部41付近に半径方向Drへの外力が加えられていない状態(自然状態)における可撓性部材4の形状に相当する。
【0051】
図5の例においては、第1内面41aと押し輪6の円筒部61の間に隙間が形成されている。また、第1先端面41eがフランジ部62の第1面62aと対向し、第1凸部41が押し輪6の端面31と接触している。
【0052】
このような状態において、押し輪6が矢印Aで示すように爪7Bに向けて押されると、第1面62aと第1先端面41eが接触する。また、第1凸部41は押し輪6の端面31にも接触しているため、押し輪6が強い力で押されたとしてもフランジ部62を通過させるような形状には変形しない。したがって、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される位置への押し輪6の移動が規制される。
【0053】
なお、第1凸部41と端面31の間に隙間が設けられてもよい。この場合であっても、フランジ部62によって第1凸部41が押された際に第1凸部41と端面31が接触すれば、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される位置への押し輪6の移動が規制される。
【0054】
図6において矢印Bで示すように、作業者が指で第1凸部41を半径方向Drに押す(外側に引っ張る)と、可撓性部材4が弾性変形する。
図6においては、第1凸部41がフランジ部62の第1面62aとしめ輪3の端面31の間に介在していない。以下、このような可撓性部材4の形状を第2形状と呼ぶ。
【0055】
第2形状においてはフランジ部62と第1凸部41が干渉しないため、
図6に示すように押し輪6を爪7A,7B,7Cと差し金具2の外周面2cとの間に差し込むことができる。このとき、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除されるので、受け金具1と差し金具2を離脱させることが可能となる。離脱後に作業者が第1凸部41から指を放せば、可撓性部材4が第1形状に戻る。
【0056】
上述の通り、従来の結合金具においては、可撓性部材4に代えてゴム製のバンドがしめ輪の外周面に装着されている。このバンドには第1凸部41に相当する要素が配置されていない。当該従来の結合金具で結合された消防用ホースを用いた消火活動において、結合金具が何らかの障害物に当たると、押し輪が意図せず押されて差し金具と受け金具が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延に繋がりかねない。
【0057】
これに対し、本実施形態に係る結合金具Cにおいては、受け口Fと差し口Mを結合した状態で
図5に示したように第1凸部41がフランジ部62の第1面62aとしめ輪3の端面31の間に介在するので、意図せず押し輪6が押されても係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除されない。したがって、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制できる。
【0058】
受け金具1と差し金具2を離脱させる際には、可撓性部材4を第2形状に変形させればよい。このとき、可撓性部材4を変形させるための特別なツールは不要であるため、離脱操作に特段の手間はかからない。また、本体40に開口または薄肉部である領域43が設けられていれば、第1形状から第2形状への変形が容易となる。さらに、領域43により、第1凸部41が押されることに伴って可撓性部材4が変形する範囲を限定することができる。特に、
図1に示したように領域43が第1凸部41から軸方向Dxに離れるに連れて先細る形状であれば、領域43よりも左方(第1凸部41側)においては本体40が変形しやすくなり、一方で領域43よりも右方においては本体40が変形しにくくなる。これにより、第2形状においても可撓性部材4としめ輪3との密着を良好に維持できる。
【0059】
また、
図2および
図3に示したように第1凸部41の第1内面41aが周方向Dθに沿う曲面であれば、第1凸部41を半径方向Drに押して可撓性部材4を変形させた際に、フランジ部62と第1凸部41が干渉しにくくなる。すなわち、第1形状から第2形状への変形量を小さくすることができる。
【0060】
なお、受け金具1に差し金具2を挿し込む動作においては、可撓性部材4が第1形状であっても、第1凸部41が押し輪6等の部材と干渉しない。そのため、従来の結合金具と同様の手順で受け金具1と差し金具2を結合することができる。
【0061】
さらに、可撓性部材4には凹部44が設けられているため、作業者は凹部44を通じてフランジ部62を押すことができる。
図6に示した例では、押し輪6により係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除された状態においても、フランジ部62の第2面62bが凹部44の底面44a(破線部)よりも第1凸部41の第1先端面41e側に位置している。このように十分な深さの凹部44が設けられていれば、押し輪6を押す動作が第1凸部41および第2凸部42によって阻害されにくい。
【0062】
本実施形態に係る結合金具Cは、受け口に上述のバンドが装着された既製の結合金具を利用して製造することもできる。すなわち、このような受け口においてバンドに代えて可撓性部材4を装着すれば、受け口の他の部材や差し口に改良を加えることなく結合金具Cを得ることができる。また、可撓性部材4を備える受け口Fは、既製の他の結合金具の差し口と互換性がある。したがって、結合金具Cは、既製の結合金具との結合に用いることが可能である。
【0063】
以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。
【0064】
例えば、上記実施形態においては消防用ホースが受け口Fおよび差し口Mの双方に接続される結合金具Cを例示したが、受け口Fおよび差し口Mの少なくとも一方が消火栓や消防車両などの構造物に設けられてもよい。
【0065】
可撓性部材4およびその周囲の構造は、上記実施形態にて説明した意図せぬ離脱の防止に関する効果が得られる限り、上記実施形態にて例示したものに限られない。
【符号の説明】
【0066】
C…結合金具、F…受け口、M…差し口、1…受け金具、2…差し金具、3…しめ輪、4…可撓性部材、5…止め輪、6…押し輪、62…フランジ部、7A,7B,7C…爪、8…シール材、9…爪座、22…係止部、40…本体、41…第1凸部、42…第2凸部。