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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021718
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】後発泡性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220127BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20220127BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20220127BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 8/30 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61K8/02
B01F17/00
C09K3/30 J
C09K3/00 111B
A61K8/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125487
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福積 京子
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC811
4C083AC812
4C083AD492
4C083DD08
4C083DD27
4C083DD41
4C083DD47
4C083EE07
4C083FF05
4C083FF06
4D077AA09
4D077AC03
4D077AC07
4D077CA04
4D077CA12
4D077DC72X
(57)【要約】
【課題】発泡剤として沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含有しても、吐出時には発泡剤の発泡を抑制してゲル状に吐出することができ、吐出したゲルに指などで剪断を加えることによって発泡させることのできる後発泡性組成物を製造するための、後発泡性組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】水と界面活性剤とを含む水性原液と、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤とを含む、後発泡性組成物の製造方法であり、発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす脱気工程と、脱気した発泡剤と水性原液とを混合して乳化する乳化工程と、得られた乳化物を吐出容器に充填する充填工程と、を有する、後発泡性組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と界面活性剤とを含む水性原液と、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤とを含む、後発泡性組成物の製造方法であり、
前記発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす脱気工程と、
脱気した前記発泡剤と前記水性原液とを混合して乳化する乳化工程と、
得られた乳化物を吐出容器に充填する充填工程と、を有する、後発泡性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記脱気工程は、前記発泡剤を沸点以上に加温する加温工程を含む、請求項1記載の後発泡性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記乳化工程は、前記水性原液を前記発泡剤の沸点以上に加温し、加温した前記水性原液と、加温した前記発泡剤とを混合する工程である、請求項2記載の後発泡性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記加温工程は、前記発泡剤を収容している容器内や配管内の気体を外部に排出する排出工程を含む、請求項2または3記載の後発泡性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記乳化工程は、30~80℃で、前記水性原液と前記発泡剤とを乳化する工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載の後発泡性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後発泡性組成物の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、発泡剤として沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含有しても、吐出時には発泡剤の発泡を抑制してゲル状に吐出することができ、吐出したゲルに指などで剪断を加えることによって発泡させることのできる後発泡性組成物を製造するための、後発泡性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エアゾール用の水性原液と低沸点溶液とをそれぞれ定量圧送手段を用いて混合手段に送り込んで混合し、混合物を容器内に充填するエアゾール製品の製造方法が開示されている。特に、特許文献1には、水性原液と低沸点溶剤とを定量圧送手段に送る前に、熱交換によって加熱あるいは沸点以下の温度に冷却することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-251261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、低沸点溶液としてイソペンタンが使用されている。イソペンタンは可燃性である。そのため、引火性を抑えるために、低沸点溶液を、燃焼性の低いハイドロフルオロオレフィンに代替することが考えられる。しかしながら、ハイドロフルオロオレフィンは、イソペンタンよりも沸点が低い。そのため、ハイドロフルオロオレフィンを含むエアゾール製品は、吐出時に気化しやすい。その結果、吐出物は、吐出時に発泡しやすく、ゲル状に吐出することが困難である。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、発泡剤として沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含有しても、吐出時には発泡剤の発泡を抑制してゲル状に吐出することができ、吐出したゲルに指などで剪断を加えることによって発泡させることのできる後発泡性組成物を製造するための、後発泡性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)水と界面活性剤とを含む水性原液と、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤とを含む、後発泡性組成物の製造方法であり、前記発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす脱気工程と、脱気した前記発泡剤と前記水性原液とを混合して乳化する乳化工程と、得られた乳化物を吐出容器に充填する充填工程と、を有する、後発泡性組成物の製造方法。
【0008】
このような構成によれば、脱気工程によって、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンに溶解していた圧縮ガス(空気)が脱気される。その結果、吐出された後発泡性組成物は、溶解していた空気を起点とする発泡が抑制されやすい。したがって、後発泡性組成物は、ゲル状に吐出され得る。ゲル状に吐出された後発泡性組成物は、指などで剪断を加えることによって容易に発泡させることができる。
【0009】
(2)前記脱気工程は、前記発泡剤を沸点以上に加温する加温工程を含む、(1)記載の後発泡性組成物の製造方法。
【0010】
このような構成によれば、後発泡性組成物の製造方法は、発泡剤中に溶解している空気の溶解量を調整しやすい。
【0011】
(3)前記乳化工程は、前記水性原液を前記発泡剤の沸点以上に加温し、加温した前記水性原液と、加温した前記発泡剤とを混合する工程である、(2)記載の後発泡性組成物の製造方法。
【0012】
このような構成によれば、乳化工程において、水性原液と発泡剤との混合物は、ゆっくりと粘度上昇する。そのため、水性原液と発泡剤とは、均一に混合されやすい。その結果、得られる後発泡性組成物は、安定して吐出されやすい。
【0013】
(4)前記加温工程は、前記発泡剤を収容している容器内や配管内の気体を外部に排出する排出工程を含む、(2)または(3)記載の後発泡性組成物の製造方法。
【0014】
このような構成によれば、排出工程において、発泡剤に溶解していた空気が外部に排出され得る。これにより、発泡剤への空気の再溶解を防ぐことができる。その結果、得られる後発泡性組成物は、吐出時の発泡を抑制しやすく、ゲル状に吐出されやすい。
【0015】
(5)前記乳化工程は、30~80℃で、前記水性原液と前記発泡剤とを乳化する工程である、(1)~(4)のいずれかに記載の後発泡性組成物の製造方法。
【0016】
このような構成によれば、乳化工程において、水性原液と発泡剤との混合物の粘度が上昇しにくい。そのため、混合物の温度を維持しやすく、吐出容器に充填しやすい。充填された混合物(後発泡性組成物)は、その後、粘度上昇しやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡剤として沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含有しても、吐出時には発泡剤の発泡を抑制してゲル状に吐出することができ、吐出したゲルに指などで剪断を加えることによって発泡させることのできる後発泡性組成物を製造するための、後発泡性組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<後発泡性組成物および後発泡性組成物の製造方法>
本発明の一実施形態の後発泡性組成物の製造方法は、水と界面活性剤とを含む水性原液と、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤とを含む、後発泡性組成物の製造方法である。後発泡性組成物の製造方法は、発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす脱気工程と、脱気した発泡剤と水性原液とを混合して乳化する乳化工程と、得られた乳化物を吐出容器に充填する充填工程と、を有する。以下、それぞれについて説明する。なお、以下の説明では、説明の明瞭化のため、目的物である後発泡性組成物を先に説明する。
【0019】
本実施形態の後発泡性組成物は、水と界面活性剤とを含む水性原液と、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤とを含む。
【0020】
(水性原液)
水性原液は、水と界面活性剤を含む。
【0021】
・水
水は、水性原液の主溶媒として用いられる。水が含まれることにより、水性原液は、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤と乳化して安定な後発泡性組成物となる。後発泡性組成物は、吐出時はゲル状物となり、ゲル状物はその後徐々に発泡して、または、ゲル状物に指などでせん断を加えると発泡してフォームを形成することができ、顔、頭髪、腕、手、脚等の適用箇所において塗り拡げやすい。
【0022】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0023】
水の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、水は、後発泡性組成物中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、水は、後発泡性組成物中、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、水性原液はハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤と乳化して安定な後発泡性組成物となり、吐出時はゲル状となり、その後発泡してフォームを形成しやすい。
【0024】
・界面活性剤
界面活性剤は、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化させて安定な後発泡性組成物を形成するために配合される。また、界面活性剤は、吐出時はハイドロフルオロオレフィンを安定に保持してゲル状とし、ハイドロフルオロオレフィンの気化により水性原液を発泡させてフォームを形成する等の目的で配合される。
【0025】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤:(アクリル酸/イタコン酸ステアレス)コポリマー、(アクリル酸/イタコン酸セテス)コポリマー、アクリル酸/アミノアクリレート/C10-30アルキルPEG-20イタコン酸)コポリマーなどの会合型増粘剤;アルキルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの陽イオン型界面活性剤;アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグルタミン酸、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤等である。界面活性剤は、併用されてもよい。
【0026】
これらの中でも、界面活性剤は、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化する乳化工程においてゆっくりと粘度上昇して均一な組成を形成しやすくする、後発泡性組成物を吐出容器に充填しやすくする、吐出容器に充填された後で粘度上昇して安定な後発泡性組成物となりゲル状に吐出しやすい点から、脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましく、脂肪酸石鹸であることがより好ましい。脂肪酸石鹸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等を含む脂肪酸とアルカリの鹸化物であることが好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸とトリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどの有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリの鹸化物であることがより好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、後発泡性組成物の発泡性が優れ、キメ細かい泡を形成しやすい点と、後述する固形油を含有して、吐出直後の発泡を抑制し、ゲル状に吐出しやすくした際に固形油の析出を防止できる点から、HLB値が10以上であるものを用いることが好ましい。
【0027】
界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、後発泡性組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、後発泡性組成物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、乳化工程において乳化物はゆっくりと粘度上昇して均一な組成を形成しやすく、吐出容器への充填が容易になる。
【0028】
・任意成分
後発泡性組成物は、上記水、界面活性剤のほかに、適宜、有効成分、油剤、アルコール、単糖類、水溶性高分子、パウダー等の任意成分を含んでもよい。
【0029】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルアミド-アクリル酸ヒドロキシアルキル-メタクリル酸アルキルアミノアルキル共重合体などの両性型樹脂、およびたとえばアクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョン、ビニルピロリドン-スチレン共重合体エマルジョン、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシエステル共重合体エマルジョンなどのエマルジョン系樹脂などのスタイリング剤;l-メントール、カンフル、ハッカ油などの清涼剤;レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類;アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;コラーゲン、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノールなどの防腐剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ローヤルゼリーエキス、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液;酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸などの収斂剤;アラントイン、グリシルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、緑茶エキスなどの消臭剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤;アルブチン、コウジ酸などの美白剤;クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤;サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤等である。
【0030】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、後発泡性組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、後発泡性組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、有効成分を配合することによる効果が得られやすく、かつ、後発泡性組成物は、有効成分によって発泡性が低下しにくい。
【0031】
・油剤
油剤は、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化する工程において、ゆっくりと粘度上昇して均一な組成を形成しやすくする、乳化物を充填しやすくする等の目的で配合される。また、油剤は、吐出時のハイドロフルオロオレフィンの気化を抑えてゲル状に吐出しやすくする等の目的で配合される。
【0032】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、エステル油、炭化水素油、油脂、シリコーンオイル、液状の高級脂肪酸、液状の高級アルコール、固形の炭化水素、固形の高級脂肪酸、固形の高級アルコール、アルキルグルコシド等である。これらは併用されてもよい。
【0033】
なお、乳化工程においてゆっくりと粘度上昇して均一な組成を形成しやすくする、乳化物を充填しやすくするために、また、吐出時においてハイドロフルオロオレフィンの気化を抑制し、ゲル状に吐出しやすくするために、エステル油、炭化水素油、油脂、シリコーンオイル、液状の高級脂肪酸、液状の高級アルコール等の25℃において液状である液状油が配合されることが好ましい。
【0034】
エステル油は特に限定されない。一例を挙げると、エステル油は、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシル等である。これらの中でも、エステル油は、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化して均一相を形成しやすい点から、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等の直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル等の多塩基酸エステル等であることがより好ましい。
【0035】
炭化水素油は特に限定されない。一例を挙げると、炭化水素油は、流動パラフィン、ケロシン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィン等である。これらの中でも、炭化水素油は、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化して均一な組成を形成しやすい点から、流動パラフィン等であることが好ましい。
【0036】
油脂は特に限定されない。一例を挙げると、油脂は、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油等である。
【0037】
シリコーンオイルは特に限定されない。一例を挙げると、シリコーンオイルは、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシクロシロキサン等である。
【0038】
液状の高級脂肪酸は特に限定されない。一例を挙げると、液状の高級脂肪酸は、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等である。
【0039】
液状の高級アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、液状の高級アルコールは、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等である。
【0040】
また、吐出容器に充填した後の後発泡性組成物の粘度を高くして、吐出時にハイドロフルオロオレフィンの気化をより抑制するために、固形の炭化水素、固形の高級脂肪酸、固形の高級アルコール、アルキルグルコシド等の25℃において固形である固形油が配合されることが好ましい。固形油が用いられる場合、固形油は、液状油に溶解させて液状にしてから用いられることが好ましい。
【0041】
固形の炭化水素は特に限定されない。一例を挙げると、固形の炭化水素は、パラフィン、ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、カルナウバロウ等である。これらの中でも、固形の炭化水素は、液状油と調製しやすく、取り扱いやすい点から、パラフィン等であることが好ましい。
【0042】
固形の高級脂肪酸は特に限定されない。一例を挙げると、高級脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等である。
【0043】
固形の高級アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、高級アルコールは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコールなどの直鎖アルコール、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分枝鎖アルコール等である。
【0044】
アルキルグルコシドは特に限定されない。一例を挙げると、アルキルグルコシドは、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8-16)グルコシド、アルキル(C12-20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等である。アルキルグルコシドは、併用されてもよい。これらの中でも、アルキルグルコシドは、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとを乳化して均一相を形成しやすい点から、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8-16)グルコシド、アルキル(C12-20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド等であることが好ましく、ヤシ油グルコシドであることがより好ましい。
【0045】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、後発泡性組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、後発泡性組成物中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、乳化工程において、ゆっくりと粘度上昇して均一な組成を形成しやすく、乳化物を充填しやすくなる。また、吐出時のハイドロフルオロオレフィンの気化を抑えてゲル状に吐出しやすくなる。
【0046】
アルコールは、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。また、アルコールは、発泡性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0047】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0048】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、後発泡性組成物中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、後発泡性組成物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、アルコールを配合することによる効果が得られやすく、かつ、後発泡性組成物は、アルコールによって発泡性が低下しにくい。
【0049】
単糖類は、発泡性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0050】
単糖類は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類は、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、ガラクチトール、グルシトール、マルチトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコール;エリトリトール、D-エリトロース、D-トレオースなどのテトロース類;D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リキソース、D-リボース、D-キシルロース、L-キシルロース、D-リブロース、L-リブロースなどのペントース類;D-アルトロース、L-アルトロース、D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-グルコース、D-タロース、D-マンノース、L-ソルボース、D-タガトース、D-プシコース、D-フルクトースなどのヘキソース類などである。
【0051】
単糖類が配合される場合、単糖類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、単糖類の含有量は、後発泡性組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、単糖類の含有量は、後発泡性組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。単糖類の含有量が上記範囲内であることにより、単糖類を配合することによる効果が得られやすい。
【0052】
水溶性高分子は、後発泡性組成物の発泡性を高くする目的や、フォームの保持力、硬さ、弾性、伸展性等を調整する等の目的で好適に配合される。
【0053】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム4)、塩化ジメチルジアクリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリオクタニウム7)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム10)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム22)、塩化-O-[2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリオクタニウム24)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム39)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液(ポリクオタニウム51)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(ポリクオタニウム52)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム61)、メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ナトリウム(ポリクオタニウム65)などのカチオン性ポリマー;セルロースナノファイバー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0054】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、後発泡性組成物中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、後発泡性組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、後発泡性組成物の粘度が高くなり過ぎず、発泡性が低下しにくい。
【0055】
パウダーは、滑りを良くするなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0056】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0057】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、後発泡性組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、後発泡性組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、パウダーを配合することによる効果が得られやすく、かつ、後発泡性組成物は、吐出される際に、吐出通路において詰まりを生じにくい。
【0058】
水性原液の調製方法は特に限定されない。水性原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、水性原液は、界面活性剤と、有効成分やアルコールなどの任意成分を水や温水に添加することで調製され得る。また、油剤を含有する場合は、水性原液を乳化物にしてもよい。
【0059】
水性原液の含有量は、後発泡性組成物中、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。また、水性原液の含有量は、後発泡性組成物中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。水性原液の含有量が上記範囲内であることにより、後発泡性組成物は、均一な乳化物を形成しやすくなり、ゲル状に吐出しやすくなる。
【0060】
・沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィン
沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンは、水性原液と乳化して後発泡性組成物を形成する。沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンは、吐出容器から外部に吐出されると、気化して水性原液を発泡させる発泡剤として用いられる。
【0061】
沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)であることが好ましい。沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンが吐出時には気化が抑制されてゲル状となり、その後に徐々に気化して発泡することにより、得られるフォームは塗り伸ばしやすく、ハイドロフルオロオレフィンの気化熱により効率よく冷却されて冷たくなりやすい。
【0062】
また、沸点が5~25℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、後発泡性組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5~25℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量は、後発泡性組成物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~25℃のハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、後発泡性組成物は、より安定したゲル状に吐出されやすく、吐出後に徐々に発泡し、適度な冷却感が得られやすい。
【0063】
本実施形態の後発泡性組成物は、発泡剤として、沸点が5~25℃のハイドロフルオロオレフィン以外に他の低沸点溶剤が併用されてもよい。このような低沸点溶剤としては、たとえば、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze、沸点-19℃)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf、沸点-29℃)などの沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)などの沸点が25℃を超えるハイドロフルオロオレフィン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタンおよびこれらの混合物からなる炭素数3~5個の脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物等の液化ガス等である。
【0064】
低沸点溶剤が配合される場合、低沸点溶剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、低沸点溶剤の含有量は、後発泡性組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、低沸点溶剤の含有量は、後発泡性組成物中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。低沸点溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、後発泡性組成物は、発泡状態を調整しやすい。
【0065】
(圧縮ガス)
圧縮ガスは、後発泡性組成物を吐出するための加圧剤として配合されてもよい。圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。
【0066】
圧縮ガスが使用される場合、圧縮ガスは、25℃における吐出容器内の圧力が0.2MPa以上となるよう充填されることが好ましく、0.3MPa以上となるよう充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における吐出容器内の圧力が0.8MPa以下となるよう充填されることが好ましく、0.7MPa以下となるよう充填されることがより好ましい。圧力が上記範囲内になるよう圧縮ガスが充填されることにより、ハイドロフルオロオレフィンは、吐出容器内においても水性原液との均一な乳化状態が維持されやすい。そのため、後発泡性組成物は、ゲル状に吐出されやすい。
【0067】
次に、上記水性原液および発泡剤を含む後発泡性組成物の製造方法について説明する。後発泡性組成物の製造方法は、発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす脱気工程と、脱気した発泡剤と水性原液とを混合して乳化する乳化工程と、得られた乳化物を吐出容器に充填する充填工程と、を有する。
【0068】
(脱気工程)
脱気工程は、発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らす工程である。脱気工程において、発泡剤中に溶解している空気を25℃における飽和溶解量以下に減らすための具体的方法は特に限定されない。一例を挙げると、脱気工程は、発泡剤(ハイドロフルオロオレフィン)を加温する工程(加温工程)、ハイドロフルオロオレフィンを貯蔵しているタンク内を減圧する工程(減圧工程)、ハイドロフルオロオレフィンを超音波処理する工程(超音波処理工程)、などの工程を採用することにより実施され得る。以下、一例として、加温工程を採用する場合を例示する。
【0069】
(加温工程)
加温工程は、発泡剤を沸点以上に加温する工程であり、脱気工程において好適に実施される。加温工程は、たとえば、ハイドロフルオロオレフィンを含む発泡剤をタンクなどの貯蔵容器に充填してハイドロフルオロオレフィンの沸点以上に加温する、または、貯蔵容器から乳化機に連結される配管内でハイドロフルオロオレフィンの沸点以上に加温する、等の方法により実施され得る。これにより、ハイドロフルオロオレフィンに溶解している空気が脱気されて除去される。
【0070】
なお、ハイドロフルオロオレフィンに溶解している空気を脱気して除去する理由は、以下のとおりである。すなわち、ハイドロフルオロオレフィンは、空気等の圧縮ガスの溶解量が多い。そのため、空気が多く溶解したハイドロフルオロオレフィンは、外部に吐出されると、溶解していた空気が気化・膨張し、これが起点となってハイドロフルオロオレフィンの気化も促進され、吐出物が泡立ち易くなる。そのため、従来、ハイドロフルオロオレフィンを含む吐出物を、ゲル状に吐出し、その後、剪断等によって後発泡させることは不可能であった。しかしながら、本実施形態では、このような脱気工程(加温工程)を採用することにより、ハイドロフルオロオレフィンを沸点以上に加温して、空気の溶解量を減らしている。その結果、ハイドロフルオロオレフィンは、外部に吐出されても、溶解していた空気が脱気しない場合と比較して少ないため、気化が促進されにくい。その結果、本実施形態の製造方法により作製された後発泡性組成物は、吐出時の泡立ちが抑制されて、ゲル状に吐出することができる。
【0071】
また、加温工程が採用されていることにより、本実施形態の製造方法は、発泡剤中に溶解している空気の溶解量を調整しやすい。また、水性原液と発泡剤との混合物は、後述する乳化工程においてゆっくりと粘度が上昇する。そのため、水性原液と発泡剤とは、均一に混合されやすい。その結果、得られる後発泡性組成物は、安定して吐出されやすい。
【0072】
加温工程は、発泡剤を収容している容器(貯蔵容器)内や、配管内の気体を外部に排出する排出工程を含んでもよい。このような排出工程が実施されることにより、発泡剤に溶解していた空気は、外部に排出されやすい。これにより、発泡剤への空気の再溶解を防ぐことができる。その結果、得られる後発泡性組成物は、吐出時の発泡を抑制しやすく、ゲル状に吐出されやすい。なお、排出工程は、公知のベント機構等によって実施され得る。
【0073】
(乳化工程)
乳化工程は、脱気した発泡剤と水性原液とを混合して乳化する工程である。乳化工程は、たとえば、加温されたハイドロフルオロオレフィンと水性原液とが、それぞれバッチ式乳化機や連続式乳化機に送られて混合されることにより実施され得る。
【0074】
なお、脱気工程において加温工程が採用される場合、水性原液もハイドロフルオロオレフィンの沸点以上に加温されることが好ましい。これにより、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとの混合物は、ゆっくりと粘度上昇し得るため、均一に混合されやすい。その結果、得られる後発泡性組成物は、安定して吐出されやすい。
【0075】
特に、水性原液とハイドロフルオロオレフィンとは、30~80℃の条件下で乳化されることが好ましく、35~70℃の条件下で乳化されることがより好ましい。これにより、乳化工程において、水性原液と発泡剤との混合物の粘度がより上昇しにくい。そのため、混合物の温度を維持しやすく、吐出容器に充填しやすい。充填された混合物(後発泡性組成物)は、その後、吐出容器内で粘度上昇しやすい。
【0076】
(充填工程)
充填工程は、得られた乳化物を吐出容器に充填する工程である。これにより、後発泡性組成物を充填した吐出製品が得られる。
【0077】
吐出容器は特に限定されない。一例を挙げると、吐出容器は、開口部を有する容器本体と、開口部を密封するバルブと、バルブを吐出操作する吐出部材とからなる。
【0078】
容器本体は、後発泡性組成物が充填される耐圧容器である。容器本体は、1つの容器であってもよく、外部容器と、外部容器内に収容される可撓性を有する内部容器とからなる二重容器であってもよい。
【0079】
1つの容器や外部容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。内部容器は特に限定されない。一例を挙げると、内部容器は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エバール、ナイロンなどの合成樹脂を単層または多層の袋状にブロー成形した内袋、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウムなどのシートを貼り合わせ、製造したパウチなど可撓性を有する容器等である。ハイドロフルオロオレフィンは圧縮ガスが溶解することにより発泡しやすくなる。そのため、内部容器は、エバールやナイロンなどのガスバリア性を有する合成樹脂を用いた多層の内袋やアルミニウムなどの軽金属のシートを用いた積層状のパウチであることが好ましい。
【0080】
バルブは、容器本体の開口を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、ハウジングと、容器本体の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムを収容する。ステムは、略円筒状の部位であり、吐出時にハウジング内に取り込まれた後発泡性組成物が通過するステム内通路が形成されている。ステム内通路の下端近傍には、ハウジング内の空間とステム内通路とを連通するステム孔が形成されている。ステムの上端には、後発泡性組成物を吐出するための吐出部材が取り付けられる。ステムラバーは、ステム孔の周囲に取り付けられ、ハウジングの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバーは、円盤状の部材であり、非吐出時において、内周面をステムのステム孔が形成された外周面と密着させて、ステム孔を閉止する。
【0081】
吐出部材は、バルブの開閉を操作して後発泡性組成物を吐出するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。吐出部材は、ノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。ノズル部は、略円筒状の部位であり、後発泡性組成物が通過する吐出通路が形成されている。吐出通路の先端には開口(吐出孔)が形成されている。吐出孔からは、後発泡性組成物が吐出される。吐出孔の数および形状は特に限定されない。吐出孔は、複数であってもよい。また、吐出孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0082】
本実施形態の吐出製品は、吐出部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器本体(内部容器)内と外部とが連通する。容器本体内と外部とが連通すると、容器本体内の圧力と外部との圧力差によって、後発泡性組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、吐出部材に送られ、その後、吐出孔から吐出される。
【0083】
以上、本実施形態の後発泡性組成物の製造方法によれば、脱気工程によって、沸点が5~25℃であるハイドロフルオロオレフィンに溶解していた圧縮ガス(空気)が脱気される。その結果、吐出された後発泡性組成物は、溶解していた空気を起点とする発泡が抑制されやすい。したがって、後発泡性組成物は、ゲル状に吐出され得る。ゲル状に吐出された後発泡性組成物は、指などで剪断を加えることによって容易に発泡させることができる。
【実施例0084】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0085】
(実施例1)
以下の処方(単位:質量%)に従って、水性原液を乳化タンク内で調製し、水性原液を50℃に加温調整した。発泡剤として沸点が19℃であるハイドロフルオロオレフィン(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HFO-1233zd(E))を用い、気密タンクに充填して、50℃に加温調整した。気密タンクのベント機構により気相部を外部に排出してハイドロフルオロオレフィンに溶解している空気濃度を下げた(加温工程、脱気工程)。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が後発泡性組成物中20質量%になるように乳化タンクに注入し、水性原液と混合し、乳化させた(乳化工程)。多層構造のパウチ(ポリエチレン/アルミ/ポリエチレン)を備えているバルブと容器本体を用いて、容器本体とパウチとの間を窒素で加圧し、バルブを固定して密閉した二重容器を準備した。乳化タンクから乳化物(後発泡性組成物)を、バルブのステムからパウチに充填した(充填工程)。吐出容器内の圧力は、0.7MPa(25℃)であった。
【0086】
<水性原液>
流動パラフィン(*1) 2.0
パラフィン(*2) 2.0
精製水 61.9
オレス-20(*3) 2.0
コカミドDEA(*4) 5.0
パルミチン酸(*5) 6.8
ミリスチン酸(*6) 1.0
グリセリン(*7) 10.0
ソルビトール/水(*8) 5.0
メチルパラベン(*9) 0.1
トリエタノールアミン(*10) 4.2
合計 100.0(質量%)
*1:ハイコールK-350(商品名)、カネダ(株)製
*2:Paraffin Wax-125(商品名)、日本精蝋(株)製
*3:BO-20V(商品名)、日光ケミカルズ(株)製
*4:アミゾール CDE(商品名)、川研ファインケミカル(株)製
*5:ルナックP-95(商品名)、花王(株)製
*6:ルナックMY-98(商品名)、花王(株)製
*7:濃グリセリン(商品名)、花王(株)製
*8:ソルビトール花王(商品名)、花王(株)製
*9:メッキンスM(商品名)、上野製薬(株)製
*10:トリエタノールアミン-S(商品名)、(株)日本触媒製
【0087】
(実施例2)
ハイドロフルオロオレフィンの温度を40℃に加温調整し、水性原液の温度を40℃に加温調整して製造したこと以外は、実施例1と同様にして後発泡性組成物を充填し、吐出製品を作製した。
【0088】
(実施例3)
ハイドロフルオロオレフィンの温度を30℃に加温調整し、水性原液の温度を30℃に加温調整して製造したこと以外は、実施例1と同様にして後発泡性組成物を充填し、吐出製品を作製した。
【0089】
(実施例4)
ハイドロフルオロオレフィンの温度を60℃に加温調整し、水性原液の温度を60℃に加温調整して製造したこと以外は、実施例1と同様にして後発泡性組成物を充填し、吐出製品を作製した。
【0090】
(実施例5)
ハイドロフルオロオレフィンの温度を50℃に加温調整し、水性原液の温度を25℃に加温調整して製造したこと以外は、実施例1と同様にして後発泡性組成物を充填し、吐出製品を作製した。
【0091】
(比較例1)
ハイドロフルオロオレフィンの温度を15℃に冷却調整し、水性原液の温度を15℃に冷却調整して製造したこと以外は、実施例1と同様にして後発泡性組成物を充填し、吐出製品を作製した。
【0092】
実施例1~5および比較例1において調製した吐出製品を用いて、以下の評価方法により、後発泡性組成物の吐出状態、せん断を加えたときの発泡状態を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
<吐出時の吐出物の状態>
吐出製品を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、後発泡性組成物を25℃に調整した。恒温水槽から吐出製品を取り出し、手のひら上に1g吐出した。吐出時の後発泡性組成物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:後発泡性組成物は、透明なゲル状で吐出された。
○:後発泡性組成物は、わずかに濁っていたがゲル状で吐出された。
×:後発泡性組成物は、一部が発泡したゲル状で吐出された。
【0094】
<せん断後の吐出物の状態>
手のひらに吐出された後発泡性組成物を指でかき混ぜた。かき混ぜた後発泡性組成物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:後発泡性組成物は、ゆっくり発泡して均一できめ細かい粒の泡になった。
○:後発泡性組成物は、ゆっくり発泡してきめ細かい粒の泡になった。
×:後発泡性組成物は、ゆっくり発泡したが泡の粒の大きさにムラができた。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示されるように、実施例1~5の製造方法により得られた後発泡性組成物は、透明なゲル状に吐出され、指でかき混ぜることにより、ゆっくりと発泡させることができ、きめ細かい粒の泡が得られた。一方、加温工程(脱気工程)を実施しなかった比較例1の製造方法により得られた後発泡性組成物は、吐出時に発泡し、指でかき混ぜることにより、ゆっくりと発泡したが、泡の粒の大きさにムラがあった。