(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021776
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】車両用モジュール
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20220127BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B60J5/10 R
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125573
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正幸
(57)【要約】
【課題】外観意匠性に優れる車両用モジュールを提供する。
【解決手段】少なくとも窓部を有する透明な樹脂製の一次部材と、一次部材に一体的に設けられた樹脂製の二次部材と、を有する車両用モジュールである。車両用モジュールハードコート層が設けられ、二次部材はその表面から突出した突起部を有する。突起部は、突出方向xに直交する断面において流れ方向zと直交する辺を有さず、かつ流れ方向zの上流側において凹んでいない。さらに突起部は、突出方向xに向かうにつれて先細りになるように、及び/又は突起部の二次部材との境界における突出方向xに直交する断面の形状が、流れ方向zの上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は流れ方向zに長径が沿う楕円形状となるように、設けられている。
【選択図】
図8B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも窓部を有する透明な樹脂製の一次部材と、前記一次部材に一体的に設けられた樹脂製の二次部材と、を有する車両用モジュールであって、
前記車両用モジュールには、前記一次部材および前記二次部材の表面を保護するハードコート層が設けられ、
前記ハードコート層はハートコード層形成剤が流れた流れ方向の下流側に向かうにつれて厚みが厚くなるように設けられ、
前記二次部材はその表面から突出した突起部を有し、
前記突起部は、前記突起部の前記二次部材との境界における突出方向に直交する断面において前記流れ方向と直交する辺を有さず、かつ前記流れ方向の上流側において凹んでおらず、
さらに前記突起部は、
前記表面から前記突出方向に向かうにつれて先細りになるように、及び/又は
前記突起部の前記二次部材との境界における前記突出方向に直交する断面の形状が、前記流れ方向の上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は前記流れ方向に長径が沿う楕円形状となるように、
設けられた、
車両用モジュール。
【請求項2】
前記突起部は、
前記表面から突出方向に向かうにつれて先細りになるように、及び
前記突起部の前記二次部材との境界における前記突出方向に直交する断面の形状が、前記流れ方向の上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は前記流れ方向に長径が沿う楕円形状となるように、
設けられた、
請求項1に記載に車両用モジュール。
【請求項3】
前記突起部は、前記突起部の前記二次部材との境界における前記突出方向に直交する断面の形状が前記流れ方向の上流側および下流側において尖形となるように設けられた、
請求項1に記載に車両用モジュール。
【請求項4】
前記突起部は、
前記表面から突出方向に向かうにつれて先細りになるように、及び
前記突起部の前記二次部材との境界における前記突出方向に直交する断面の形状が前記流れ方向の上流側および下流側において尖形となるように、
設けられた、
請求項1に記載に車両用モジュール。
【請求項5】
前記突起部は、前記突起部の任意の位置における突出方向に直交する断面の形状が、前記突起部の前記二次部材との境界における突出方向に直交する断面の相似形となるように設けられた、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載に車両用モジュール。
【請求項6】
前記二次部材は前記一次部材の周縁を囲うように枠状に設けられ、
前記突起部は、前記二次部材が覆っていない前記一次部材よりも前記流れ方向における下流側に位置する前記二次部材の表面に設けられた、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載に車両用モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クリア部材と着色部材とを有する車両用リアモジュールの製造方法が開示されている。特許文献2には、一次部材と二次部材とを有する車両用モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/181944号
【特許文献2】特開2020-37292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窓部など外観意匠性が要求される部分を含む車両用モジュールには、耐擦傷性の向上などを図るためハードコート層が形成されることがある。ハードコート層の形成方法はいくつか存在するが、原料となるハードコート層形成剤が基材上で流れる方法では、ハードコート層形成の過程で液垂れ跡が車両用モジュールに形成されて外観意匠性を損なう場合がある。例えば、車両用モジュールにインナパネル、その他の部品、車体等に取り付けるために使用するリブやボスなどの突起部が形成されている場合には、その突起部に起因して液垂れ跡が表れやすい。
【0005】
本発明は、外観意匠性に優れる車両用モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用モジュールは、
少なくとも窓部を有する透明な樹脂製の一次部材と、前記一次部材に一体的に設けられた樹脂製の二次部材と、を有する車両用モジュールであって、
前記車両用モジュールには、前記一次部材および前記二次部材の表面を保護するハードコート層が設けられ、
前記ハードコート層はハートコード層形成剤が流れた流れ方向の下流側に向かうにつれて厚みが厚くなるように設けられ、
前記二次部材はその表面から突出した突起部を有し、
前記突起部は、前記突起部の前記二次部材との境界における突出方向に直交する断面において前記流れ方向と直交する辺を有さず、かつ前記流れ方向の上流側において凹んでおらず、
さらに前記突起部は、
前記表面から前記突出方向に向かうにつれて先細りになるように、及び/又は
前記突起部の前記二次部材との境界における前記突出方向に直交する断面の形状が、前記流れ方向の上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は前記流れ方向に長径が沿う楕円形状となるように、
設けられた、
車両用モジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観意匠性に優れる車両用モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両用バックドアを備える車両の後部を示す斜視図である。
【
図2】車両用バックドアの構成を示す模式図である。
【
図3】張出部付車両用リアモジュールの正面図である。
【
図6A】車両用リアモジュールの短手方向がハードコート層形成剤の流れ方向に沿う場合における突起部の配置の例を示す図である。
【
図6B】車両用リアモジュールの長手方向がハードコート層形成剤の流れ方向に沿う場合における突起部の配置の例を示す図である。
【
図8A】突起部が柱状の場合の、断面形状の相違によるハードコート層形成剤の流れに対する効果を説明するための表を示す図である。
【
図8B】突起部が錘台状の場合の、断面形状の相違によるハードコート層形成剤の流れに対する効果を説明するための表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0011】
図1は、車両用バックドア3を備えるハッチバック式の車両1の後部を示す斜視図である。
図2は、車両用バックドア3の構成を示す模式図である。車両用バックドア3は車両1の後部に設けられた開口2を開閉するように、車両1の後部に取り付けられている。車両用バックドア3は、車両用リアモジュール4(車両用モジュールの一例)と、車両用リアモジュール4よりも車両1の内側に設けられたバックドアインナ5と、を有している。
【0012】
車両用リアモジュール4は、車両1の後部の開口2を覆うことのできる大きさで形成されている(
図2)。車両用リアモジュール4は、クリア部材20(一次部材の一例)と着色部材40(二次部材の一例)とを有している。クリア部材20は、無色透明またはスモーク(有色透明の一例)とされた部材である。クリア部材20は、光を透過させるランプ部22と、窓部24とを一体に有している。着色部材40は、クリア部材20と比べて光の透過率が低い部材である。着色部材40は、少なくとも車両1の内部の一部を外部から視覚的に遮蔽するように、着色されている。クリア部材20及び着色部材40は樹脂製であり、例えばポリカーボネート(PC)で構成される。着色部材40は母体となるPC等の樹脂材料に着色材料が混練された材料で構成されている。また、着色部材40はフィラー等の添加材を含有してもよい。
【0013】
バックドアインナ5は、例えばポリプロピレン等の樹脂にガラス繊維等が混練された材料で構成される。ただし、バックドアインナ5を構成する材料は特定の樹脂に限られず、例えば金属であってもよい。バックドアインナ5は、車両用リアモジュール4の外周部の全周に亘るように形成され、ランプ部22と窓部24とに対応する開口部52が設けられている(
図2)。
【0014】
バックドアインナ5が車両用リアモジュール4に接着剤を介して接着されることで、車両用バックドア3は形成されている。車両用バックドア3は、バックドアインナ5に設けられたヒンジ(図示省略)を介して車両後部に取り付けられている。
【0015】
車両用リアモジュール4のクリア部材20のランプ部22の前方向の位置には、左右一対のリアコンビネーションランプが配置されている(図示省略)。本実施形態におけるランプ部22は、リアコンビネーションランプのストップランプ及びターンシグナルランプの光を透過させる。なお、リアコンビネーションランプは、車両用リアモジュール4に直接搭載されていてもよく、バックドアインナ5に搭載されていてもよく、車両用リアモジュール4及びバックドアインナ5の両方で支持されるように搭載されていてもよい。また、車体にリアコンビネーションランプを設けて車両用リアモジュール4のクリア部材20のランプ部22によりリアコンビネーションランプが覆われるようにしてもよい。
【0016】
ここで、
図3~
図5を参照して、本実施形態に係る車両用リアモジュール4を具体的に説明する。
図3は金型により成形された直後の(トリミング前の)車両用リアモジュール(以下、張出部付車両用リアモジュール400とする。)の正面図である。
図4は
図3のA-A’断面図であり、
図5は
図3のB-B’断面図である。
【0017】
張出部付車両用リアモジュール400は、車両用リアモジュール4の端部(着色部材40の端部)から外側に向かって延びる張出部410を備えている(
図3~
図5)。別の言い方をすると、クリア部材20の窓部24の主平面が延びる方向に張出部410は延びている。張出部410には、樹脂射出口跡420が形成されている。張出部410を除去することで、車両用リアモジュール4が形成される。張出部付車両用リアモジュール400は、クリア部材20と着色部材40とを二色成形することにより形成される。なお、張出部付車両用リアモジュール400及び車両用リアモジュール4のクリア部材20及び着色部材40については、説明の便宜上、同一の符号を付して同様の部材として説明する。
【0018】
クリア部材20は、前述のように窓部24とランプ部22とを一体に(monolithically)有し、さらにスポイラ部26(屈曲部の一例)を有してもよい(
図3~
図5)。窓部24はクリア部材20の左右方向の中心部分から左右方向に向かうにしたがって、緩やかに湾曲している。ランプ部22は、クリア部材20の左右の位置に一対で形成されており、クリア部材20の主曲面から後方向に向かって張り出るように構成されている(
図1及び
図2)。クリア部材20の左右方向の端部の一部(上下方向の略中央部分)は車両1の略前後方向に向かって延びており、ランプ部22の側面部を形成している(
図1、
図2及び
図4参照)。なお、ランプ部22におけるクリア部材20の厚みが薄く形成されていると、ランプの光を十分に透過させることができ好ましい。スポイラ部26は、クリア部材20の上部において左右方向に延びるように形成されており、クリア部材20の主曲面から後方向に向かって張り出るように屈曲して構成されている(
図3および
図5)。スポイラ部26は、窓部24を平面視した時に、左右方向の中心部分から左右方向に延びるにつれて下方向に湾曲するように形成されている(
図3)。
【0019】
着色部材40は、車両1に搭載された際にクリア部材20よりも車両1の内側に位置するように設けられている(
図4及び
図5)。着色部材40はクリア部材20のスポイラ部26における背面(車両1の前方向の面)にも設けられている。
【0020】
クリア部材20の窓部24及びランプ部22の車両1の後方向の面上にはクリア部材20の傷つきを防止するためのハードコート層が設けられている(図示省略)。また、張出部付車両用リアモジュール400の車両1の前方向の面状(クリア部材20および着色部材40の表面)にも傷つきを防止するためのハードコート層が設けられている(図示省略)。ハードコート層は、クリア部材20よりも耐擦傷性が優れている層であり、シリコーン系ポリマーで構成されるものでもよい。ハードコート層はハートコード層形成剤が流れた流れ方向の下流側に向かうにつれて厚みが厚くなるように設けられている。
【0021】
本実施形態に係る車両用リアモジュール4は、例えば対向方式の二色成形用金型を用いてクリア部材20と着色部材40とを2色成形することにより製造できる。当該金型による成形直後は、張出部付車両用リアモジュール400が製造されるようにしてもよい。この場合は、最終的に張出部付車両用リアモジュール400の樹脂射出口跡420を含む張出部410を取り除く(トリミングする)ことで、車両用リアモジュール4を得ることができる。ハードコート層は、張出部付車両用リアモジュール400から張出部410を取り除く前および後のいずれかにおいて形成する。ハードコート層は、フローコート法やディップコート法によりハードコート層形成剤をクリア部材20および着色部材40の表面に塗布して硬化させることで、形成できる。
【0022】
また、本実施形態に係る車両用リアモジュール4は、着色部材40がその表面から前方向に突出した突起部42を有する(
図6A、
図6Bおよび
図7)。ここで、
図6A、
図6B、
図7、
図8Aおよび
図8Bを基に、突起部42を説明する。
図6Aおよび
図6Bは、車両用リアモジュール4における突起部42の配置の例を示す図である。
図7は、突起部42の形状を説明するための図である。
図8Aは、突起部42が柱状の場合の、断面形状の相違によるハードコート層形成剤の流れに対する効果を説明するための表を示す図である。
図8Bは、突起部42が錘台状の場合の、断面形状の相違によるハードコート層形成剤の流れに対する効果を説明するための表を示す図である。突起部42は、車両用リアモジュール4を他の部材や車体本体と締結するための部分や、車両用リアモジュール4を他の部材や車体本体と締結する際の位置決めをする部分として機能する、リブやボスである。
【0023】
図6Aおよび
図6Bは、車両1の後側から見た車両用リアモジュール4を示す。
図6Aおよび
図6Bに示される矢印は、フローコート法またはディップコート法によりハードコート層を形成した際のハードコート層形成剤が流れた方向(流れ方向)を示す。
図6Aは車両用リアモジュール4の短手方向に流れ方向が沿うようにして、フローコート法またはディップコート法によりハードコート層を形成した例を示す。
図6Bは車両用リアモジュール4の長手方向に流れ方向が沿うようにして、フローコート法またはディップコート法によりハードコート層を形成した例を示す。
【0024】
図6Aおよび
図6Bに示すように、着色部材40がクリア部材20の周縁を囲うように枠状に設けられている車両用リアモジュール4において、突起部42は、着色部材40が覆っていないクリア部材20よりもハードコート形成剤が流れた流れ方向における下流側に位置する着色部材40の表面に設けられてもよい。
図6Aおよび
図6Bの例では、流れ方向の最も上流側の着色部材40に突起部42が設けられていない。なお、
図6Aおよび
図6Bで示される突起部42の形状は便宜上簡略化して示しているものであり、本実施形態の突起部42の形状を示すものではない。突起部42が、着色部材40が覆っていないクリア部材20(着色部材40が積層されていないクリア部材20)よりも流れ方向における下流側に位置する着色部材40の表面に設けられたことで、ハードコート層形成の過程で突起部42に溜まったハードコート層形成剤が、着色部材40が覆っていないクリア部材20に流れて液垂れ跡が発生して外観意匠性が損なわれることを抑制できる。また、
図6Aおよび
図6Bに示すように、流れ方向に沿って着色部材40が設けられている部分に突起部42を設けても良い。
【0025】
図7は、本実施形態の突起部42の形状を説明するための図である。
図7中、符号xで示される矢印は着色部材40の表面から突起部42が突出する突出方向を示す。
図7中、符号zで示される矢印はハードコート層形成剤の流れ方向(鉛直方向)を示す。
図7中、符号yで示される矢印は突出方向xおよび流れ方向zに直交し、着色部材40の表面に沿う方向(着色部材40の面方向)を示す。
図7中、符号AAで示される突起部42の点は、突起部42の根元部分のうちの流れ方向zにおける最も上流側の部分を示す。
図7中、符号BBで示される突起部42の点は、突起部42の先端部分のうちの流れ方向zにおける最も上流側の部分を示す。
図7中、符号CCで示される突起部42の点は、突起部42の根元部分のうちの流れ方向zにおける最も下流側の部分を示す。
図7中、符号DDで示される突起部42の点は、突起部42の先端部分のうちの流れ方向zにおける最も下流側の部分を示す。
【0026】
本実施形態の突起部42は、突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面において流れ方向zと直交する辺を有さず、かつ流れ方向zの上流側において凹んでいない。さらに突起部42は、着色部材40の表面から突出方向xに向かうにつれて先細りになるように、及び/又は突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の形状が、流れ方向zの上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は流れ方向zに長径が沿う楕円形状となるように、設けられている。
【0027】
図8Aおよび
図8Bは、
図7の突起部42の点AA、点BB、点CCおよび点DDにおいて、ハードコート層形成剤が突出方向x、流れ方向z、面方向yにおいて分かれる程度を、突出方向x成分+流れ方向z成分+面方向y成分=10として分類した表を示す。
図8Aおよび
図8Bにおいて、断面形状として、真円、流れ方向zに長径が沿う楕円、流れ方向zに長手方向が沿う流線形(水滴状)、流れ方向zに長径が沿って長軸の両端が尖形の楕円、流れ方向zに辺が直交する四角形、および流れ方向zに対角線が沿う菱形が示される。
図8Aは、各断面形状を有する柱状の突起部42の分類の表を示す。
図8Bは、各断面形状を有する錘台状の突起部42の分類の表を示す。なお、錘台状は突出方向に向かうにつれて先細りとなる形状の一例である。
【0028】
ハードコート層形成剤が垂れる時に生じる現象は、例えば以下のものに分解できる:(1)上部(点AAより流れ方向zにおいて負(
図7における上側)の位置)から流れてきたハードコート層形成剤を突起部42が堰き止める;(2)突起部42の上部(点AA)でハードコート層形成剤の流れ方向zの速度成分が小さくなり、ハードコート層形成剤が突起部42から落ちるまでに時間を要する;(3)突起部42の下部(点CC)でハードコート層形成剤が再び合流する。液垂れ跡は突起部42の着色部材40との境界において生じやすい。上記のことを基に、点AAおよび点CCにおける流れ方向zにおけるハードコート層形成剤の挙動に着目し、
図8Aおよび
図8Bにおいて、点CCにおける流れ方向z成分(Cz)と点AAにおける流れ方向z成分(Az)との差を評価した。当該差が小さい程ハードコート層形成剤が流れやすく液垂れが生じ難いとの仮説に基づいて、Cz-Azが1~2の場合にA判定、3~4の場合にB判定、5~6の場合にC判定、7~8の場合にD判定、9~10の場合にE判定とした。
【0029】
本実施形態の突起部42は、
図8Aおよび
図8BにおいてC判定以上となる形状を有する。突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面において流れ方向zと直交する辺を有さず、かつ流れ方向zの上流側において凹んでいない突起部42を、着色部材40の表面から突出方向xに向かうにつれて先細りになるように、及び/又は突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の形状が、流れ方向zの上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は流れ方向zに長径が沿う楕円形状となるように、設けることで、フローコートやディップコートによるハードコート層の形成時に液垂れ跡が車両用リアモジュール4に形成されることを抑制できる。より詳細には、突起部42の側面では、流れ方向zのハードコート層形成剤の流れを突出方向xや面方向yに分散させることができ、ハードコート層形成剤の滞留を抑制できる。これにより、外観意匠性に優れる車両用リアモジュール4を提供できる。
【0030】
また、突起部42は、着色部材40の表面から突出方向xに向かうにつれて先細りになるように、及び突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の形状が、流れ方向zの上流側および下流側の少なくとも一方において尖形となるように、又は前記流れ方向に長径が沿う楕円形状となるように、設けられているとよい(
図8Bの「流れ方向zに長径が沿う楕円」、「流線形(水滴状)」、「両端が尖形の楕円」および「菱形」)。
【0031】
また、突起部42は、突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の形状が流れ方向zの上流側および下流側において尖形となるように設けられているとよい(
図8Aおよび
図8Bの「両端が尖形の楕円」および「菱形」)。
【0032】
また、突起部42は、着色部材40の表面から突出方向xに向かうにつれて先細りになるように、及び突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の形状が流れ方向zの上流側および下流側において尖形となるように、設けられているとよい(
図8Bの「両端が尖形の楕円」および「菱形」)。
【0033】
また、突起部42は、突起部42の任意の位置における突出方向xに直交する断面の形状が、突起部42の着色部材40との境界における突出方向xに直交する断面の相似形となるように、設けられているとよい。
【0034】
以上特定の態様を示して本発明を説明したが、以下その他に取り得る、または好ましい態様について説明する。
【0035】
上記の実施形態において、バックドアインナを介して車両用リアモジュールが車両に取り付けられる態様を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バックドアインナを介さずに車両用リアモジュールに直接ヒンジが設けられて車両に取り付けられる態様もあり得る。
【0036】
上記の実施形態において、車両用リアモジュールを例に特定の態様を説明したが、車両用フロントモジュールとしても適用可能であるし、車両の側部(サイド)のモジュールとしても適用可能である。また、車両用モジュールには、ランプ、クリーナー、ワイパー、センサ、デフォッガー等の部材を搭載してもよい。ランプとしては、車両用リアモジュールの場合であれば、例えばストップランプ、ターンシグナルランプ、バックランプ、テールランプ、リアフォグランプ、デイタイムランプ等が挙げられる。また、これらのランプの任意の組合せから構成されるリアコンビネーションランプを搭載してよい。またセンサとしては例えばLiDAR、カメラ、レーダ等が挙げられる。
【0037】
上記の実施形態において、クリア部材がPCで構成されている態様を説明したが、本発明はこれに限定されず透明性を有し窓部を構成することが可能な材料であれば代替可能である。ただし、クリア部材がPCまたはアクリル樹脂で構成されていると好ましい。少なくとも窓部を有する一次部材を強度および透明性に優れるPCまたはアクリル樹脂で構成することにより、窓部としての視認性を確保しつつ、車両用モジュール全体の強度を高めることができる。また、二次部材を一次部材と同様の材料としなくてもよい。
【0038】
また、車両用モジュールは、車両の開口を開閉する態様と、嵌め殺しの態様とを含む。車両の開口を開閉する態様では、回転軸を中心に回転する態様や、スライド式の態様を含む。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1:車両、2:開口、3:車両用バックドア、4:車両用リアモジュール、5:バックドアインナ、20:クリア部材、22:ランプ部、24:窓部、26:スポイラ部、40:着色部材、42:突起部、52:開口部、400:張出部付車両用リアモジュール、410:張出部、420:樹脂射出口跡