(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021840
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】プレス成形用ワークの段積方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/22 20060101AFI20220127BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B21D43/22 Z
B21D22/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125688
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】片桐 崇
(72)【発明者】
【氏名】三好 秀雄
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA17
4E137AA18
4E137BB01
4E137CA03
4E137CA21
4E137CA24
4E137EA01
4E137GA01
4E137GA15
(57)【要約】
【課題】コストをかけずに段差面を有する各ワークを傾かないように積み重ねて荷崩れや取出し不良が発生し難い段積体にする。
【解決手段】張出高さがパッチワーク12の板厚と同じに設定された断面円形状の張出凸部13をパッチワークブランク10のブランク材11の一方の面におけるその外周縁部に沿って所定の間隔をあけた位置に複数成形した後、パッチワークブランク10を載置する。次に積み上げるパッチワークブランク10のパッチワーク12の一方の面におけるその外周縁部に沿って張出凸部13を先に載置したパッチワークブランク10の各張出凸部13とはそれぞれ異なる位置となるように同数成形した後、成形した各張出凸部13の張出側が既に載置したパッチワークブランク10の各張出凸部13の張出側と同じ側に向く姿勢で先に載置したパッチワークブランク10の上に載置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域より板厚が薄くて一方の面に上記第1領域との段差面を有する第2領域が設けられたシート状をなすプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法であって、
張出高さが上記第1領域と上記第2領域との間の板厚差と同じに設定された断面円形状、若しくは、断面長円形状の張出凸部を、上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って所定の間隔をあけた位置に複数成形した後、上記ワークを上記各張出凸部の張出側が上向く姿勢か、或いは、下向く姿勢で所定の位置又は先に載置されている上記ワークの上に載置し、
次に積み上げる上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って上記張出凸部を先に載置した上記ワークの各張出凸部とはそれぞれ異なる位置となるように同数成形した後、成形した各張出凸部の張出側が既に載置した上記ワークの各張出凸部の張出側と同じ側に向く姿勢で先に載置した上記ワークの上に載置することを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形用ワークの段積方法において、
上記ワークは、金属製ブランク材に金属製パッチワークをとりつけたパッチワークブランクであり、
上記張出凸部は、上記ブランク材の重心部を中心として上記パッチワークブランクにおける一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部で形成される三角形の内方に上記ブランク材の重心部を含むように位置していることを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプレス成形用ワークの段積方法において、
上記張出凸部は、上記パッチワークの重心部を中心として上記パッチワークブランクにおける一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部で形成される三角形の内方に上記パッチワークの重心部を含むように位置していることを特徴とするプレス成形用ワークの段積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差面を有するプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ホットプレス成形を行う生産ラインでは、プレス成形用のワークをパレットに多数積み上げて段積体にした状態で搬入し、搬入した段積体のワークを上から順番に取り出してプレス成形機でプレス成形を行うようになっている。
【0003】
ところで、テーラードブランクの如き板厚差を有する領域によって一方の面に部分的に段差面が形成されるプレス成形用ワークの場合、そのままの状態で順に重ねていくと、板厚の薄い領域の段積み箇所と板厚の厚い領域の段積み箇所との間において段積高さに大きな差が生じてしまい、段積体の各ワークが上段に行くにつれて板厚の薄い領域側に傾いた姿勢になってしまう。そうすると、段積体が荷崩れしたり、或いは、取出し装置を用いて段積体からプレス成形機へとワークを取り出す際に失敗してしまうおそれがある。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1では、テーラードブランクの一方の面における板厚の薄い領域に張出凸部を複数形成している。該張出凸部は、張出高さがテーラードブランクの一方の面における板厚の厚い領域以上に設定された第1張出部と、該第1張出部の周りに等間隔に設けられ、平面視で十字形状をなす4つの第2張出部とを備え、各第2張出部の張出高さは、テーラードブランクの一方の面における板厚の厚い領域と同じに設定されている。そして、先に載置したテーラードブランクに対して、次に積み上げるテーラードブランクの一方の面に先に載置したテーラードブランクの各張出凸部と同じ位置となるように、且つ、先に載置したテーラードブランクの各張出凸部を平面視で第1張出部の中心線周りに45度回転させた形状となるように各張出凸部を同数成形した後、成形した各張出凸部の張出側が先に載置したテーラードブランクと同じとなる姿勢で当該テーラードブランクの上に載置して下段のテーラードブランクにおける張出凸部の各第2張出部の上に上段のテーラードブランクにおける張出凸部の各第2張出部が載るようにすることで段積体になった状態の各テーラードブランクを傾かせないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1においてテーラードブランクに成形する各張出凸部は、その形状が複雑であるとともに、テーラードブランクに張出凸部を成形する度に当該張出凸部を成形する金型を45度回転させる機構が必要であり、金型及び成形装置にかかる費用やメンテナンス費用が嵩んでしまうおそれがある。このことは、ブランク材の所定の位置にパッチワークを取り付けてなるパッチワークブランクの如き段差面を有するその他のワークにおいても段積みする場合に同様のことが言える。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コストをかけずに段差面を有する各ワークを傾かないように積み重ねて荷崩れや取出し不良が発生し難い段積体にすることができるプレス成形用ワークの段積方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、張出凸部を簡単な形状にするとともに、張出凸部を成形する金型を回転させずに各ワークを安定した段積み姿勢となるよう工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、第1領域より板厚が薄くて一方の面に上記第1領域との段差面を有する第2領域が設けられたシート状をなすプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、張出高さが上記第1領域と上記第2領域との間の板厚差と同じに設定された断面円形状、若しくは、断面長円形状の張出凸部を、上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って所定の間隔をあけた位置に複数成形した後、上記ワークを上記各張出凸部の張出側が上向く姿勢か、或いは、下向く姿勢で所定の位置又は先に載置されている上記ワークの上に載置し、次に積み上げる上記ワークの上記第2領域の一方の面におけるその外周縁部に沿って上記張出凸部を先に載置した上記ワークの各張出凸部とはそれぞれ異なる位置となるように同数成形した後、成形した各張出凸部の張出側が既に載置した上記ワークの各張出凸部の張出側と同じ側に向く姿勢で先に載置した上記ワークの上に載置することを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記ワークは、金属製ブランク材に金属製パッチワークをとりつけたパッチワークブランクであり、上記張出凸部は、上記ブランク材の重心部を中心として上記パッチワークブランクにおける一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部で形成される三角形の内方に上記ブランク材の重心部を含むように位置していることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、上記張出凸部は、上記パッチワークの重心部を中心として上記パッチワークブランクにおける一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部で形成される三角形の内方に上記パッチワークの重心部を含むように位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、各ワークを段積みした際に同じ張出高さである各張出凸部の頂点がワークの外周縁部において隣り合うワークの各張出凸部が形成されていない場所に接触するようになる。また、ワークにおける各張出凸部が形成されていないその他の領域においては、各張出凸部の頂点と同じ高さに位置する第1領域の一方の面が隣り合うワークに接するようになる。したがって、隣り合う各ワークの間隔が各張出凸部と第1領域とで一定に保たれるようになるので、各ワークを安定した段積み状態にすることができる。また、張出凸部の形状を金型構造がシンプルである断面円形状、若しくは、断面長円形状にするとともに、段積み状態の隣り合うワークの各張出凸部の成形位置を異なるようにすることで段積み状態の各パッチワークブランクを傾かないようにしているので、特許文献1の如き複雑な形状の張出凸部にする必要が無く、さらには、張出凸部を成形する金型を回転させる機構も必要が無いので、金型及び成形装置の費用やメンテナンス費用が嵩むのを回避して、コストをかけずに段差面を有する各ワークの段済み作業を行うことができる。
【0014】
第2の発明では、ブランク材において離れた位置に設けられた3つの張出凸部が隣り合うパッチワークブランクのブランク材に接触するようになるので、各パッチワークブランクは安定した段積み状態になり、各パッチワークブランクが傾くことによる段積体の荷崩れやパッチワークブランクの取出し不良を確実に防ぐことができる。
【0015】
第3の発明では、パッチワークを取り囲むように設けられた3つの張出凸部が隣り合うパッチワークブランクのパッチワークに対応するブランク材の領域に接触するようになるので、段積み状態において各パッチワークブランクにおける重量の重いパッチワークが取り付けられた領域側が沈み込んで傾くのを確実に防いで各パッチワークブランクを安定した段積み状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るワークの段積方法が適用された生産ラインのブロック図である。
【
図2】パッチワーク取付工程において、パッチワークをブランク材に取り付けてパッチワークブランクを形成した後、各パッチワークブランクを段積みしている状態を示す概略斜視図である。
【
図3】2種類のパッチワークブランクの一方の平面図である。
【
図5】2種類のパッチワークブランクの他方の平面図である。
【
図8】
図7のXIII-XIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の生産ライン1を示す。該生産ライン1は、パッチワークブランク10(ワーク、
図3乃至
図6参照)を形成した後、当該パッチワークブランク10をプレス成形してプレス部品を得ることができるようになっていて、生産ライン1の上流側から順に、シート状をなす金属製ブランク材11とパッチワーク12とを得るブランキング工程S1と、ブランク材11にパッチワーク12を取り付けて複数のパッチワークブランク10を得た後、各パッチワークブランク10を段積みするパッチワーク取付工程S2と、各パッチワークブランク10をプレス成形するプレス成形工程S3とが順に配置されている。
【0019】
ブランキング工程S1は、ブランク用金型が装着されたプレス成形装置(図示せず)を備え、
図3乃至
図6に示すように、プレス成形装置を用いてコイル材から平面視で緩やかに湾曲する弓形状をなすブランク材11を得るようになっている。
【0020】
ブランク材11の長手方向一端の両側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第1膨出縁部11a及び第2膨出縁部11bが設けられる一方、長手方向他端の一側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第3膨出縁部11cが設けられている。
【0021】
また、ブランク材11の長手方向中途部の一側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第4膨出縁部11dが設けられ、長手方向他端寄りの他側方には、外側方に膨らむとともに平面視でブランク材11の長手方向に幅広な形状をなす第5膨出縁部11eが設けられている。
【0022】
そして、ブランク材11の幅方向中途部には、長手方向に所定の間隔をあけて円形状をなす4つの第1~第4孔H1~H4が形成されている。
【0023】
さらに、ブランク材11の一方の面には、当該ブランク材11の一方の面側に張り出す水平方向の断面が略円形状をなす同形状の張出凸部13が外周縁部に沿って所定の間隔をあけて5つ形成されている。
【0024】
ブランキング工程S1では、ブランク材11を成形するブランク金型が2種類存在しており、生産ロット毎にブランク型を切り替えることにより、張出凸部13の成形位置の異なる2種類のブランク材11が形成されてそれぞれ段積みされるようになっている。尚、以下では、一方をブランク材11A(
図3及び
図4参照)と呼び、他方をブランク材11B(
図5及び
図6参照)と呼ぶことにする。
【0025】
ブランク材11Aの5つの張出凸部13は、第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向一端寄りにそれぞれ形成されている。
【0026】
一方、ブランク材11Bの5つの張出凸部13は、第1~第5膨出縁部11a~11eにおける長手方向他端寄りにそれぞれ形成されている。
【0027】
すなわち、張出凸部13は、ブランク材11A,11Bの重心部X1を中心として一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部13で形成される三角形の内方にブランク材11A,11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0028】
具体的な一例を挙げると、ブランク材11Aの第1~第5膨出縁部11a~11eにそれぞれ形成された張出凸部13を張出凸部13A~13Eと呼び、ブランク材11Bの第1~第5膨出縁部11a~11eにそれぞれ形成された張出凸部13を張出凸部13A’~13E’と呼ぶと、張出凸部13A、張出凸部13B及び張出凸部13Cで形成される三角形の内方にブランク材11Aの重心部X1が含まれる一方、張出凸部13A’、張出凸部13B’及び張出凸部13C’で形成される三角形の内方にブランク材11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0029】
また、異なる具体例を挙げると、張出凸部13A、張出凸部13C及び張出凸部13Eで形成される三角形の内方にブランク材11Aの重心部X1が含まれる一方、張出凸部13A’、張出凸部13C’及び張出凸部13E’で形成される三角形の内方にブランク材11Bの重心部X1が含まれるようになっている。
【0030】
また、ブランキング工程S1では、プレス成形装置を用いてコイル材から平面視で緩やかに湾曲する弓形状をなすパッチワーク12を得るようになっている。
【0031】
該パッチワーク12は、ブランク材11A,11Bの外形より小さな外形をなしている。パッチワーク12の長手方向一端側には、円形状の第1孔h1が形成される一方、長手方向他端寄りの位置には、長孔形状の第2孔h2が形成され、第1孔h1及び第2孔h2は、ブランク材11A,11Bにパッチワーク12を重ねた際、ブランク材11A,11Bの第3孔H3及び第4孔H4にそれぞれ対応する位置になっている。
【0032】
パッチワーク取付工程S2は、
図2に示すように、ブランク材11A又はブランク材11Bを取り出す第1作業エリアW1と、ブランク材11A又はブランク材11Bにパッチワーク12を取り付けてパッチワークブランク10にする第2作業エリアW2と、複数のパッチワークブランク10を段積みにする第3作業エリアW3とが直線状に設けられている。
【0033】
第1作業エリアW1には、ブランク材11Aの段積体14を載置する第1パレット2aと、ブランク材11Bの段積体15を載置する第2パレット2bとが並設されている。
【0034】
第1作業エリアW1と第2作業エリアW2との間には、アーム先端に第1マテリアルハンドリング3aが取り付けられた第1搬送ロボット3が配置され、該第1搬送ロボット3は、ブランク材11Aとブランク材11Bとを第1パレット2aと第2パレット2bとから順に取り出して第2作業エリアW2へと搬送するようになっている。
【0035】
第2作業エリアW2には、ブランク材11A又はブランク材11Bとパッチワーク12とを重ねた状態で位置決めする溶接治具4と、該溶接治具4の一側方に位置し、アーム先端に第2マテリアルハンドリング5aが取り付けられた第2搬送ロボット5と、溶接治具4の他側方に位置し、アーム先端にスポット溶接用ガン6aが取り付けられた溶接ロボット6と、第2搬送ロボット5の側方に位置し、且つ、パッチワーク12の段積体16を載置する第3パレット7とが配設されている。
【0036】
第2搬送ロボット5は、パッチワーク12を第3パレット7から取り出して溶接治具4に載置するようになっている。
【0037】
溶接ロボット6は、溶接治具4に位置決めされたブランク材11A又はブランク材11Bとパッチワーク12とをスポット溶接用ガン6aによりスポット溶接で繋いでパッチワークブランク10を得るようになっている。
【0038】
パッチワーク12は、ブランク材11A又はブランク材11Bにおける長手方向他端側で、且つ、各張出凸部13の張出側に取り付けられ、パッチワーク12をブランク材11A又はブランク材11Bに取り付けると、各張出凸部13の張出高さがパッチワーク12の一方の面と同じ位置となるようになっている。
【0039】
すなわち、パッチワークブランク10におけるパッチワーク12の領域(第1領域)は、パッチワークブランク10のパッチワーク12を除く領域(第2領域)より板厚が厚くて一方の面に段差面が形成されていて、その板厚差と同じになるように各張出凸部13の張出高さが設定されている。
【0040】
尚、以下では、便宜上、ブランク材11Aから得られたパッチワークブランク10をパッチワークブランク10Aと呼び、ブランク材11Bから得られたパッチワークブランク10をパッチワークブランク10Bと呼ぶことにする。すなわち、パッチワークブランク10は、張出凸部13の成形位置の異なる2種類が形成されるようになっている。
【0041】
パッチワークブランク10A,10Bにおける張出凸部13は、パッチワーク12の重心部X2を中心として一方側の2箇所と他方側の1箇所との計3箇所に少なくとも設けられ、当該3箇所の張出凸部13で形成される三角形の内方にパッチワーク12をの重心部X2が含まれるようになっている。
【0042】
具体的な一例を挙げると、張出凸部13C、張出凸部13D及び張出凸部13Eで形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれる一方、張出凸部13C’、張出凸部13D’及び張出凸部13E’で形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれるようになっている。
【0043】
また、異なる具体例を挙げると、張出凸部13A、張出凸部13C及び張出凸部13Eで形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれる一方、張出凸部13A’、張出凸部13C’及び張出凸部13E’で形成される三角形の内方にパッチワーク12の重心部X2が含まれるようになっている。
【0044】
第2作業エリアW2と第3作業エリアW3との間には、アーム先端に第3マテリアルハンドリング8aが取り付けられた第3搬送ロボット8が配置され、該第3搬送ロボット8は、溶接治具4において順に形成されるパッチワークブランク10Aとパッチワークブランク10Bとを溶接治具4から取り出して交互に第3作業エリアW3へと搬送するようになっている。
【0045】
第3作業エリアW3には、パッチワークブランク10Aとパッチワークブランク10Bとが順に段積みしてなる段積体17を載置する第4パレット9が配設されている。
【0046】
プレス成形工程S3は、パッチワークブランク10A,10Bを加熱する加熱炉(図示せず)とプレス金型が装着されたホットプレス装置(図示せず)とを備え、ホットプレス装置を用いて加熱炉で加熱したパッチワークブランク10A,10Bからプレス成形品を得るようになっている。
【0047】
次に、実施形態に係るパッチワークブランク10の製造について詳述する。
【0048】
まず初めに、ブランキング工程S1において、コイル材からブランク材11を形成する。このとき、ブランク材11の外周部分に5つの張出凸部13を成形する。
【0049】
ブランキング工程S1において使用するブランク用金型は、張出凸部13の成形位置の異なる2つの種類が存在しており、生産ロット毎に金型を切り替えてブランク材11Aとブランク材11Bとをそれぞれ形成する。そして、第1パレット2aに各ブランク材11Aを段積みして段積体14にし、第2パレット2bに各ブランク材11Bを段積みして段積体15にする。段積体14が載置された第1パレット2aと段積体15が載置された第2パレット2bとは、それぞれパッチワーク取付工程S2に運搬される。
【0050】
次に、パッチワーク取付工程S2において、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第1パレット2aからブランク材11Aを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11A及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11A及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Aを得る。
【0051】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Aを取り出して第4パレット9に載置する。このとき、同じ張出高さである各張出凸部13A~13Eの頂点が第4パレット9の上面に接触するとともに、パッチワーク12が第4パレット9の上面に接触してパッチワークブランク10Aが水平に延びる姿勢になる。
【0052】
溶接治具4からパッチワークブランク10Aが取り出されると、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第2パレット2bからブランク材11Bを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11B及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11B及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Bを得る。
【0053】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Bを取り出して第4パレット9に載置されたパッチワークブランク10Aの上に重ねる。このとき、同じ張出高さである各張出凸部13A’~13E’の頂点がブランク材11Bの外周縁部において先に載置したパッチワークブランク10Aのブランク材11Aにおける各張出凸部13A~13Eが形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワーク12の一方の面が先に載置したパッチワークブランク10Aのブランク材11Aに接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔のバラつきが生じ難くなり、パッチワークブランク10Bが水平に延びる姿勢になる。
【0054】
溶接治具4からパッチワークブランク10Bが取り出されると、第2搬送ロボット5が第3パレット7の段積体16からパッチワーク12を取り出して溶接治具4に載置した後、第1搬送ロボット3が第1パレット2aからブランク材11Aを取り出して溶接治具4に載置し、ブランク材11A及びパッチワーク12を重ねた状態で溶接治具4に位置決めする。その後、溶接ロボット6が溶接治具4に位置決めされたブランク材11A及びパッチワーク12をスポット溶接により一体にしてパッチワークブランク10Aを得る。
【0055】
しかる後、第3搬送ロボット8が溶接治具4のパッチワークブランク10Aを取り出して第4パレット9に載置されたパッチワークブランク10Bの上に重ねる。このとき、同じ張出高さである各張出凸部13A~13Eの頂点がブランク材11Aの外周縁部において隣り合うブランク材11Bの各張出凸部13A’~13E’が形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワーク12の一方の面が隣り合うパッチワークブランク10Bのブランク材11Bに接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔のバラつきじ難くなり、パッチワークブランク10Aが水平に延びる姿勢になる。
【0056】
このように、溶接治具4において、交互にパッチワークブランク10A,10Bを製造するとともに、第4パレット9に順次段積みすることにより、
図7及び
図8に示すように、第4パレット9上にパッチワークブランク10A,10Bが交互に段積みされてなる段積体17が得られる。
【0057】
この段積体17は、同じ張出高さである各張出凸部13の頂点がブランク材11A,11Bの外周縁部において隣り合うブランク材11A,11Bの各張出凸部13が形成されていない場所に接触するようになる。また、パッチワークブランク10における各張出凸部13が形成されていないその他の領域においては、各張出凸部13の頂点と同じ高さに位置するパッチワーク12の一方の面が隣り合うパッチワークブランク10に接するようになる。したがって、隣り合う各パッチワークブランク10A,10Bの間隔が各張出凸部13とパッチワーク12とで一定に保たれるようになるので、各パッチワークブランク10A,10Bを安定した段積み状態にすることができる。
【0058】
その後、段積体17を載置する第4パレット9がプレス成形工程S3に運搬される。
【0059】
そして、プレス成形工程S3では、段積みされたパッチワークブランク10A,10Bを順次取り出して、図示しないプレス成形機を用いてプレス成形品が順次成形される。
【0060】
以上より、本発明の実施形態によると、段差面を有するパッチワークブランク10A,10Bを多数積み上げる際に、安定した段積み状態にすることができる。
【0061】
また、張出凸部13の形状を金型構造がシンプルである断面円形状のものにするとともに、段積み状態の隣り合うパッチワークブランク10A,10Bの各張出凸部13の成形位置を異なるようにすることで段積み状態のパッチワークブランク10A,10Bを傾かないようにしているので、特許文献1の如き複雑な形状の張出凸部にする必要が無く、さらには、張出凸部を成形する金型を回転させる機構も必要が無いので、金型及び成形装置の費用やメンテナンス費用が嵩むのを回避して、コストをかけずに段差面を有する各パッチワークブランク10A,10Bの段済み作業を行うことができる。
【0062】
また、ブランク材11において離れた位置に設けられた3つの張出凸部13が隣り合うパッチワークブランク10のブランク材11に接触するようになるので、各パッチワークブランク10は安定した段積み状態になり、各パッチワークブランク10が傾くことによる段積体17の荷崩れやパッチワークブランク10の取出し不良を確実に防ぐことができる。
【0063】
さらに、パッチワーク12を取り囲むように設けられた3つの張出凸部13が隣り合うパッチワークブランク10のパッチワーク12に対応するブランク材11の領域に接触するようになるので、段積み状態において各パッチワークブランク10における重量の重いパッチワーク12が取り付けられた領域側が沈み込んで傾くのを確実に防いで各パッチワークブランク10を安定した段積み状態にすることができる。
【0064】
尚、本発明の実施形態では、パッチワークブランク10を段積みする際の段積み方法について説明したが、本発明は、その他の段差面を有するワークを段積みする際にも適用することが可能であり、例えば、テーラードブランクを段積みする際に本発明の方法を適用することができる。
【0065】
また、本発明の実施形態では、各張出凸部13をブランキング工程S1にてブランク材11を形成する際に同時に成形しているが、これに限らず、例えば、パッチワーク取付工程S2においてブランク材11とパッチワーク12とを溶接により一体にしてパッチワークブランク10を得た後、所定の成形装置を用いてパッチワークブランク10の所定の位置に張出凸部13を成形するようにしてもよい。
【0066】
また、本発明の実施形態では、各パッチワークブランク10A,10Bにそれぞれ5つの張出凸部13を設けたが、各パッチワークブランク10A,10Bを段積みした際にそれぞれが水平な姿勢になるのであれば、張出凸部13を3つ乃至4つにしてもよいし、6つ以上設けるようにしてもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態では、各パッチワークブランク10A,10Bに設ける張出凸部13を水平方向の断面が円形状をなすものにしたが、これに限らず、水平方向の断面が長円形状をなすものにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、段差面を有するプレス成形用ワークを多数積み上げて段積みにするプレス成形用ワークの段積方法に適している。
【符号の説明】
【0069】
10 パッチワークブランク(ワーク)
11 ブランク材
12 パッチワーク
13 張出凸部
17 段積体
X1 ブランク材の重心部
X2 パッチワークの重心部