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特開2022-22023黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級し、該分級したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法
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  • 特開-黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級し、該分級したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022023
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級し、該分級したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/19 20170101AFI20220127BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20220127BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20220127BHJP
   B02C 17/16 20060101ALI20220127BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C01B32/19
B07B1/28 Z
C01B32/194
B02C17/16 B
H05K1/09 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020125965
(22)【出願日】2020-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4D021
4D063
4E351
4G146
【Fターム(参考)】
4D021AC01
4D021CA03
4D063FF13
4D063FF22
4D063FF35
4D063GA10
4D063GB05
4D063GC17
4D063GC40
4D063GD02
4D063GD04
4D063GD19
4D063GD28
4E351AA02
4E351BB01
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD29
4E351DD54
4E351GG20
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB01
4G146AB07
4G146AD15
4G146AD19
4G146AD21
4G146AD26
4G146BA02
4G146BA42
4G146BA43
4G146BA46
4G146BB03
4G146BC01
4G146BC18
4G146BC31B
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB17
4G146CB20
4G146CB22
4G146CB26
4G146CB35
4G146CB36
4G146DA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グラフェンの集まりを複数種類の大きさからなるグラフェンに分級するに当たり、グラフェンの集まりを分級機に投入する際や分級機を稼働した際にグラフェンが飛散せず、分級機に目詰まりが発生せず、分級機にグラフェンが付着しない、分級方法の提供。
【解決手段】n-ブタノール中で黒鉛粒子の集まりに電界を加え、黒鉛粒子の基底面の層間結合の全てを破壊し、グラフェン1の集まりを製造する。また、グラフェンの集まりが分散したn-ブタノール中で、ホモジナイザー装置を稼働させ、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに加工する。さらに、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、振動ふるい機に投入し、複数の金網を同時に振動させ、振動する金網を通過できないグラフェンと、振動する金網を通過するグラフェンとに分級し、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める方法は、
2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、該平行平板電極を、容器に充填されたn-ブタノール中に浸漬させ、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりを介して、ないしは、前記鱗状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させるとともに、該離間させた2枚の平行平板電極を前記n-ブタノール中に浸漬させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に、予め決めた大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該電位差の大きさを前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりに印加され、ないしは、前記鱗状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記鱗状黒鉛粒子を形成する全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙に、前記黒鉛結晶の基底面からなるグラフェンの集まりが析出し、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記鱗状黒鉛粒子の集まりから前記グラフェンの集まりが製造される、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する第一の工程と、
前記2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、該2枚の平行平板電極を前記n-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記2枚の平行平板電極の間隙に析出した前記グラフェンの集まりを、該2枚の平行平板電極の間隙から前記容器内のn-ブタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記2枚の平行平板電極を取り出し、さらに、前記容器内でホモジナイザー装置を稼働させ、前記n-ブタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該グラフェンの集まりを、前記n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離させる、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを容器内に製造する第二の工程と、
互いに異なる目の粗さを持つ複数の金網が、目が粗い金網の順に上段に離散して配置される複数の金網であり、該複数の金網を有する多段式の振動ふるい機に、前記容器内のn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの一定量ずつを、最も上段にある金網の上部から連続して投入し、前記振動ふるい機を稼働させて前記複数の金網を同時に振動させ、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、前記振動する複数の金網と順次接触させる、これによって、該振動する複数の金網の各々の金網を通過できない前記n-ブタノールで覆われたグラフェンが、前記振動ふるい機の機外に放出され、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりが、前記振動する複数の金網の各々の金網を通過できない前記n-ブタノールで覆われたグラフェンと、前記振動する複数の金網を通過する前記n-ブタノールで覆われたグラフェンとに分級され、前記振動する複数の金網の各々の金網を通過できず機外に放出された各々のグラフェンを互いに異なる容器に集め、前記振動する複数の金網を通過したグラフェンを前記容器とは異なる容器に集め、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める第三の工程とからなり、
これら3つの工程を連続して実施することで、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンン集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める方法。
【請求項2】
請求項1に記載した方法で分級した複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、1種類ずつの大きさからなる有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、
第一に融点が室温より高く、第二に吸湿性と吸水性がなく、第三に、n-ブタノールが熱融解した有機化合物に溶解し、第四に、沸点がn-ブタノールの沸点より高く、第五に、粘度がn-ブタノールの粘度より高いこれら5つの性質を兼備する有機化合物を熱融解させ、該熱融解した有機化合物にn-ブタノールを溶解させた溶解液の粘度が15-25mPa・sになるように該有機化合物のn-ブタノール溶解液を作成し、該有機化合物のn-ブタノール溶解液を、請求項1に記載した方法で分級した1種類ずつの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンが集められた各々の容器に充填する、この後、前記各々の容器内でホモジナイザー装置を稼働させ、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液を介して、前記各々の容器内のグラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該有機化合物のn-ブタノール溶解液を介して1枚1枚のグラフェンに分離させ、前記容器内の各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりに加工する、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりに加工する第一の工程と、
前記複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりの1種類ずつの大きさからなる各々のグラフェンの集まりを、前記各々の容器から複数の湿式ビーズミル装置の各々の粉砕室に移し、該各々の粉砕室を前記1種類ずつの大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填する、さらに、前記複数の湿式ビーズミル装置の各々の攪拌部材を稼働させ、前記各々の粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を該各々の粉砕室内に発生させ、該旋回流に依って前記1種類ずつの大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記各々の粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が各々の粉砕室で進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記各々の粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記各々の粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとが分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記各々の粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記各々の粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記各々の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記各々の粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記各々の粉砕室の底部に戻され、該各々の粉砕室の底部に戻された前記ビーズの集まりと、該各々の粉砕室の底部に戻された前記グラフェンの集まりとの衝突が、前記各々の粉砕室内で再度繰り返される、こうした前記衝突を予め決めた時間継続して実施し、前記湿式ビーズミル装置の各々の粉砕室内で、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する第二の工程と、
前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離された該グラフェンを、前記複数の湿式ビーズミル装置の各々の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出した各々のグラフェンを互いに異なる容器に集め、この後、該各々の容器を前記n-ブタノールの沸点に昇温し、さらに、該各々の容器を前記有機化合物の融点より低い温度に冷却させる、これによって、該各々の容器内に、前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりが形成され、この後、該各々の容器に衝撃を繰り返し加え、該各々の容器内の前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりを崩して該各々の容器内に前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりを平坦に並べ、該平坦に並んだ前記グラフェンの集まりから、前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンの集まりを、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す第三の工程とからなり、
これら3つの工程を連続して実施することで、請求項1に記載した方法で分級した複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、1種類ずつの大きさからなる有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す方法。
【請求項3】
請求項2に記載した5つの性質を兼備する有機化合物が、側鎖結晶性ポリオレフィンからなる分子構造を有するαオレフィン誘導体である、請求項2に記載した5つの性質を兼備する有機化合物。
【請求項4】
請求項1に記載した黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級する方法において、黒鉛粒子の集まりとして、70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなる4種類の大きさのn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類のグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する方法は、
70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、請求項1に記載した第一の工程と第二の工程における処理を実施し、前記黒鉛粒子の集まりから、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、さらに、最上段に配置される金網の目の粗さが750μmで、2段目に配置される金網の目の粗さが650μmで、3段目に配置される金網の目の粗さが500μmであり、これら3種類の金網が離散して配置された3段式の振動ふるい機を用い、請求項1に記載した第三の工程における処理を実施し、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなる4種類の大きさのグラフェンの集まりに分級し、
さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、請求項2に記載した第一の工程における処理を実施し、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりに加工し、
さらに、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離するには、
第一に、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第一の湿式ビーズミル装置の粉砕室の40%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が8mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の60%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第一の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、6m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第一の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第一の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
第二に、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第二の湿式ビーズミル装置の粉砕室の50%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が7mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の50%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第二の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、8m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第二の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第二の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
第三に、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第三の湿式ビーズミル装置の粉砕室の60%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が6mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の40%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第三の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、10m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第三の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第三の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
これによって、70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの4種類の大きさのグラフェンの集まりに分級し、さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類のグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する方法。
【請求項5】
請求項4に記載した方法で分級された500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを用い、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法は、
請求項4に記載した方法で分級された500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを容器に充填し、さらに、前記グラフェンの集まりの重量の5倍以上の重量のn-ブタノールを容器に加え、この後、該容器に前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを前記容器内に製造する、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法。
【請求項6】
請求項5に記載したペーストを用い、グラフェン同士が重なり合った部位を摩擦熱で接合した該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体を基材に形成する方法は、
請求項5に記載した方法で製造したペーストを基材に塗布し、該基材に前記ペーストからなる塗膜を形成し、この後、該基材をn-ブタノールの沸点に昇温し、前記塗膜からn-ブタノールを気化させ、グラフェン同士が重なり合った該グラフェンの集まりからなる被膜を前記基材に形成する、この後、該被膜の上方の平面を均等に圧縮する、これによって、前記グラフェン同士が重なり合った部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱によって前記重なり合ったグラフェン同士が接合され、該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、前記基材に形成される、請求項5に記載したペーストを用い、グラフェン同士が重なり合った部位を摩擦熱で接合した該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体を基材に形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級し、該分級したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出す方法に係る。
つまり、黒鉛粒子の集まりから製造したグラフェンの集まりは、黒鉛粒子が比較的小さい粒子であるため、グラフェンンの大きさも小さい。いっぽう、グラフェンの大きさによって、グラフェンの用途が制約される。しかしながら、黒鉛粒子の大きさは分布を持つため、グラフェンの大きさにも分布がある。このため、グラフェンの集まりを、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級し、該分級したグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出すことができれば、用途に応じて取り出したグラフェンを使い分けることができる。本発明は、黒鉛粒子から製造したグラフェンであっても、グラフェンの集まりを分級し、様々な用途にグラフェンが適応できることを明らかにする。
【背景技術】
【0002】
2004年に英国マンチェスター大学の物理学者が、セロハンテープを使用して、グラファイトから1枚の結晶子、すなわち、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する基底面を引きはがし、炭素原子の大きさを厚みとする平面状の物質を取り出すことに初めて成功した。この新たな物質をグラフェンと呼んだ。この研究成果に対して、2010年のノーベル物理学書が授与されている。
【0003】
グラフェンは、厚みが炭素原子の大きさに相当する極めて薄い物質で、かつ、質量をほとんど持たない全く新しい炭素材料である。このため、従来の物質とは大きくかけ離れた物性を持ち、幅広い用途に応用できる材料として注目されている。
例えば、厚みが0.332nmからなる最も薄い材料である。また、単位質量当たりの表面積が3000m/gである最も広い表面積を持つ。さらに、ヤング率が1020GPaと大きな値を持ち、最も伸長でき、折り曲げができる材料である。また、せん断弾性率が440GPaという大きな数値を持つ最も強靭な物質である。さらに、熱伝導率は19.5W/Cmで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。また、電流密度は銅の1000倍を超える。さらに、電子移動度が15000cm/ボルト・秒であり、シリコーンの移動度の1400cm/ボルト・秒より一桁高い値を持つ。さらに、融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱性が極めて高い材料である。
【0004】
いっぽう、グラフェンは様々な方法で製造される。例えば、前記したマンチェンスター大学の教授は、人の手でグラファイトからグラフェンを物理的に引きはがした。この方法は、大量のグラフェンを短時間に引き剥がすことは困難で、また、剥がされたものが黒鉛結晶の単一層、つまり、グラフェンになるとは限らない。
また、特許文献1に、炭化ケイ素の単結晶を熱分解することでグラフェンを製造する方法が記載されている。つまり、炭化ケイ素を不活性雰囲気で加熱し、表面を熱分解させる。この際、昇華温度が相対的に低いケイ素が優先して昇華され、残存した炭素によってグラフェンが生成される。しかし、炭化ケイ素の単結晶が非常に高価な材料である。さらに、1600℃を超える高温で、かつ、真空度が高い雰囲気でケイ素を昇華させるが、ケイ素が僅かでも残存した場合は、熱分解後の残渣物としてグラフェンが生成されない。このため、炭化ケイの単結晶の生成と、単結晶の熱分解処理に係わる費用は非常に高価になる。また、大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
さらに、特許文献2に、シート状の単結晶のグラファイト化金属触媒に、炭素系物質を接触させ、還元性雰囲気で熱処理することで、グラフェンを製造する方法が記載されている。しかしながら、この製造方法も、安価な製造方法とは言えず、かつ、量産性に優れた製造方法ではない。第一に、単結晶のグラファイト化金属触媒を製造する製造コストは、炭化ケイ素の単結晶よりさらに高い。第二に、単結晶のグラファイト化金属触媒を炭素系物質に接触させる方法は量産性に劣る。第三に、水素ガスを含む窒素ガスがリッチな雰囲気で、1000℃を超える高温度で、グラファイト化金属触媒を還元処理する方法は、熱処理費用が高価になる。大量のグラフェンを製造するには、さらに高価な費用が掛かる。
【0005】
現在までのグラフェンの製造方法はいずれも、第一に、安価な製造方法で大量のグラフェンを同時に製造する方法ではない。第二に、製造したグラフェンが必ずしもグラフェンでない。つまり、グラフェンは、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する炭素原子の集まりからなる単結晶材料であり、不純物が全くない雰囲気で、炭素原子の結晶成長ができなければ、グラフェンが生成されない。さらに、生成したグラフェンの厚みが極薄く、極軽量であるため、グラフェンであることを確認する方法が困難を極める。
このため、本発明者は、製造したグラフェンが全て完全なグラフェンで、かつ、極めて簡単な方法で大量のグラフェンを同時に製造する方法を見出した(特許文献3)。すなわち、黒鉛の単結晶のみからなり、黒鉛の結晶化が100%進み、さらに、最も安価な炭素材料である、天然の黒鉛結晶の塊を破砕し、該破砕した黒鉛結晶から鱗片状黒鉛粒子ないしは鱗状黒鉛粒子の集まりを選別した黒鉛粒子の集まりを、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰め、該2枚の平行平板電極に電界を印加し、該電界の印加によって黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる全ての基底面の層間結合を同時に破壊し、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンを大量に製造する方法である。この製造方法に依れば、鱗片状黒鉛粒子ないしは鱗状黒鉛粒子の僅か1gから、1.62×1013個に及ぶグラフェンの集まりが瞬時に得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-110485号公報
【特許文献2】特開2009-143799号公報
【特許文献3】特許第6166860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いっぽう、グラフェンの驚異的な物性を活かし、様々な製品にグラフェンを適応させることができる。しかし、グラフェンの用途によって、グラフェンの大きさが制限される。ここで、グラフェンの用途とグラフェンの大きさとの関係について説明する。
第一の用途は、様々な電子デバイスへの適応である。グラフェンの電子移動度が、シリコーンの電子移動度より一桁高い値を持つため、垂直方向の外部電場に対して高い応答性が得られ、グラフェンを電界効果トランジスタに適応できる。さらに、この技術の延長線上に、グラフェンを不揮発メモリに適応できる。また、グラフェンが高いキャリア移動度や低雑音性や高い熱安定性を持つため、グラフェンを集積回路に適応できる。
さらに、グラフェンを官能基化させ、ガスセンサーに適応でき、特に化学プラントや放射線の環境下のガスセンサーとして、グラフェンの高耐食性や高温耐久性が生かされる。また、グラフェンが、テラヘルツ波や赤外光の光の吸収に適していることから、高速で応答する赤外センサーに適応できる。さらに、グラフェンのフェルミ準位を調整することで、光の吸収性を変化させることができ、光変調器に適応できる。
こうした様々な電子デバイスにグラフェンを適応する場合は、グラフェンをチップとして用いるため、一定以上の大きさ、例えば、500μm以上の大きさが必要になる。
第二の用途は様々な機能材料への適応である。つまり、グラフェンが高い透明性と高い導電性を兼ね備えていることから、透明電極や透明導電性フィルムに適応でき、薄膜太陽電池、有機EL照明器具、タッチパネルなどへの応用がある。また、グラフェンの優れた熱伝導性と電流密度を利用し、熱伝導性と導電性とを兼ねた電子材料、放熱材料、ないしは、合成樹脂、ゴム、あるいはセラミックスと複合化した熱伝導性と導電性とを兼ねた複合材料に適応する。さらに、グラフェンをペーストにすることができれば、ペーストを様々な基材や部品に塗布ないしは印刷し、基材ないしは部品に熱伝導性と導電性と透明性とを兼備した膜が形成できる。いっぽう、グラフェン同士を直接接合し、グラフェン接合体が形成できれば、グラフェン接合体は、グラフェンのみで構成されるため、グラフェンに近い性質を持つ。こうした様々な機能材料に適応する場合は、グラフェンは、必ずしも一定以上の大きさを持つ必要はない。
【0008】
ところで、黒鉛粒子の製造は、天然黒鉛を物理的に粉砕し、次いで浮選機で黒鉛を回収し、黒鉛の純度を98%まで高める。さらに、アルカリと酸を用いて、シリカ、アルミナ、酸化鉄などの不純物を溶解させ、黒鉛の純度を99.9%まで高める。その後、乾燥・分級して黒鉛粒子を製造する。こうした黒鉛粒子に、外観が薄く鱗状の鱗片状黒鉛を原料とする鱗片状黒鉛粒子と、外観が塊である塊状黒鉛を原料とする鱗状黒鉛粒子(塊状黒鉛粒子とも言う)とがある。なお、外観が塊状ないしは砂状の土状黒鉛鱗を原料とする土状黒鉛粒子は、土状黒鉛鱗に含まれる不純物の粒子が小さく、かつ、黒鉛粒子に分散しているため、黒鉛の純度は95%が限度になる。従って、土状黒鉛粒子はグラフェンの原料として適切でない。
いっぽう、鱗片状黒鉛粒子と鱗状黒鉛粒子における粒径分布は、原料の鱗片状黒鉛と塊状黒鉛とを粉砕する際に用いる粉砕機によって大きく依存する。このため、黒鉛粒子の粒径分布に応じて、黒鉛粒子の用途を変えている。例えば、粒径が5-20μmからなる黒鉛粒子の集まりは粒径が小さく、潤滑性と成形性とを活かした粉末冶金、鉛芯、小型ブラシ、電池などの原料に用いられている。粒径が20-90μmからなる黒鉛粒子の集まりは、ブラシ、ブレーキパッド、粉末冶金、軸受などの原料に用いられている。粒径が70-850μmからなる黒鉛粒子の集まりは、粒径が大きく、潤滑性、耐酸化性、離型性を活かしたブレーキパッドやパッキンなどの原料に用いられている。従って、黒鉛粒子の集まりから製造したグラフェンの大きさは、黒鉛粒子の粒径分布に基づく分布を持つ。
いっぽう、大きさの分布を持つグラフェンの集まりに対し、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級できれば、用途に応じて分級したグラフェンの集まりを使い分けることが可能になる。例えば、70-850μmからなる粒径分布を持つ黒鉛粒子について、500μm以上の大きさからなるグラフェンと、500μm以下のグラフェンとの2種類のグラフェンに分級する。これによって、500μm以上の大きさからなるグラフェンを、電子デバイスを構成するチップとして用いる。
さらに、500μm以上の大きさからなるグラフェンを、500-650μmの間にあるグラフェンと、650-750μmの間にあるグラフェンと、750μm以上の大きさからなるグラフェンとの3種類のグラフェンに分級する。これによって、500μm以上の大きさからなるグラフェンの3種類を、電子デバイスの用途に応じて使い分ける。
また、500μm以下の大きさからなるグラフェンの集まりに対し、250-500μmの間にあるグラフェンと、150-250μmの間にあるグラフェンと、150μm以下の大きさからなるグラフェンとの3種類のグラフェンに分級する。これによって、500μm以下の大きさからなるグラフェンの3種類を、機能材料として用いるグラフェンを用途に応じて使い分ける。
しかしながら、黒鉛粒子を原料として用い、莫大な数のグラフェンの集まりを製造し、このグラフェンの集まりから、グラフェンを分級するに当たり、グラフェンが質量を殆ど持たない極めて軽量な物質であるため、多くの課題が発生する。
第一に、グラフェンの集まりを分級機に投入する際に、グラフェンが飛散する。
第二に、グラフェンの集まりを分級機に投入できたとしても、分級機を稼働すると、分級機の内部でグラフェンが飛散し、グラフェンが分級機を通過できない。
第三に、グラフェンが分級機を通過したとしても、分級機に目詰まりが発生し、グラフェンを連続して分級できない。
第四に、分級機にグラフェンが付着し、分級機を通過するグラフェンの大きさが経時変化する。
第五に、分級機を定期的に洗浄しないと、分級機を通過するグラフェンの大きさが経時変化する。
本発明が解決しようとする課題は、上記の5つの課題を解決し、互いに異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級する方法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める方法は、
2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、該平行平板電極を、容器に充填されたn-ブタノール中に浸漬させ、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりを介して、ないしは、前記鱗状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させるとともに、該離間させた2枚の平行平板電極を前記n-ブタノール中に浸漬させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に、予め決めた大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該電位差の大きさを前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりに印加され、ないしは、前記鱗状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記鱗状黒鉛粒子を形成する全ての黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙に、前記黒鉛結晶の基底面からなるグラフェンの集まりが析出し、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記鱗状黒鉛粒子の集まりから前記グラフェンの集まりが製造される、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する第一の工程と、
前記2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、該2枚の平行平板電極を前記n-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に左右、前後、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記2枚の平行平板電極の間隙に析出した前記グラフェンの集まりを、該2枚の平行平板電極の間隙から前記容器内のn-ブタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記2枚の平行平板電極を取り出し、さらに、前記容器内でホモジナイザー装置を稼働させ、前記n-ブタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該グラフェンの集まりを、前記n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離させる、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを容器内に製造する第二の工程と、
互いに異なる目の粗さを持つ複数の金網が、目が粗い金網の順に上段に離散して配置される複数の金網であり、該複数の金網を有する多段式の振動ふるい機に、前記容器内のn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの一定量ずつを、最も上段にある金網の上部から連続して投入し、前記振動ふるい機を稼働させて前記複数の金網を同時に振動させ、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、前記振動する複数の金網と順次接触させる、これによって、該振動する複数の金網の各々の金網を通過できない前記n-ブタノールで覆われたグラフェンが、前記振動ふるい機の機外に放出され、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりが、前記振動する金網の各々の金網を通過できない前記n-ブタノールで覆われたグラフェンと、前記振動する複数の金網を通過する前記n-ブタノールで覆われたグラフェンとに分級され、前記振動する複数の金網の各々の金網を通過できず機外に放出された各々のグラフェンを互いに異なる容器に集め、前記振動する複数の金網を通過したグラフェンを前記容器とは異なる容器に集め、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める第三の工程とからなり、
これら3つの工程を連続して実施することで、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりからグラフェンン集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、該分級した各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める方法である。
【0010】
最初に、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する第一の工程を説明する。2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりを、n-ブタノール中に浸漬させ、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合を破壊し、グラフェンの集まりを製造する。つまり、n-ブタノールは、比誘電率が17.5の絶縁体であるため、2枚の平行平板電極対に直流の電位差を印加させると、電位差を2枚の平行平板電極対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界が鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは鱗状黒鉛粒子の集まりに印加されると、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、黒鉛結晶からなる基底面の集まり、すなわち、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。この際、2枚の平行平板電極対がn-ブタノール中に浸漬しているため、グラフェンはn-ブタノール中に析出し、グラフェンは飛散しない。また、一部のグラフェンは、電極間隙に析出する際に、互いに重なり合う。なお、液体の有機化合物は、極めて特殊な有機化合物、例えば、イオン液体のような特殊な有機化合物を除いて、殆どの有機化合物は絶縁体である。
ここで、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合が、電界によって破壊される現象を説明する。2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた黒鉛粒子の全てに対し、電界が印加されると、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力が、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面の集まり、すなわち、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。
さらに、黒鉛粒子から製造されるグラフェンの数を算出する。全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×10kg/mであるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10-8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個の基底面、すなわち、グラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、基底面の層間結合の全てを破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。このグラフェンの重量は、僅かに6.17×10-14gになる。
以上に説明したように、安価な黒鉛粒子の集まりに、電界を加えるだけで、莫大な数のグラフェンの集まりが得られる。
次に、n-ブタノールに分散したグラフェンの集まりを製造する第二の工程を説明する。2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、n-ブタノール中で傾斜させ、さらに、容器に左右、前後、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、2枚の平行平板電極の間隙に析出したグラフェンの集まりを、容器内のn-ブタノール中に移動させる。この後、容器から2枚の平行平板電極を取り出す。さらに、グラフェンの集まりが析出したn-ブタノール中で、ホモジナイザー装置を稼働させる。つまり、ホモジナイザー装置によって、低密度のn-ブタノールに加えた衝撃エネルギーは、n-ブタノールの分子振動に消費される割合は少なく、多くの衝撃エネルギーがグラフェンの集まりに加わる。この結果、n-ブタノール中で短時間に確実に、重なり合ったグラフェンが、n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離される。なお、n-ブタノールは、25℃で3mPa・sからなる粘度を有し、メタノールの粘度の5倍である。このため、n-ブタノールの粘度に応じた吸着力で、1枚1枚に分離したグラフェンにn-ブタノールが吸着し、n-ブタノールで覆われたグラフェンからなるグラフェンの集まりが容器内に製造される。いっぽう、グラフェンは殆ど質量を持たず、また、厚みに対する面の比率であるアスペクト比が極めて大きい。従って、グラフェンに吸着したn-ブタノールは、容易にグラフェンから剥離しない。なお、n-ブタノールの密度は0.805g/cmである。
さらに、大きさが互いに異なる複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級する第三の工程を説明する。最初に、振動ふるい機の動作について説明する。駆動用モーターの振動モーターシャフトの両端に取り付けたアンバランスウェイトの動作によって、水平・垂直・傾斜の3次元の運動を振動モーターシャフトに発生させる。この動きを、ふるい面を構成する金網に伝え、振動する金網で試料を分級する。金網における試料の流れは、ウェイトの位相角度を変えることで自在に変えられる。本発明では、位相角を35度とし、金網の面上にあるグラフェンに渦巻き運動を起こさせ、金網の面上にあるグラフェンが金網の面上で滞留する時間を延ばした。振動する金網とグラフェンが接触すると、金網の目開きより小さいグラフェンは、振動する金網を通過し、金網の目開きより大きいグラフェンは、振動する金網から振動ふるい機の機外に排出される。この結果、金網の目開きの大きさによって、グラフェンが分級される。
いっぽう、前記した第二の工程において、グラフェンの集まりを、ホモジナイザー装置によって、n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離させた際に、n-ブタノールの粘度に応じた吸着力で、アスペクト比が極めて大きいグラフェンに、n-ブタノールが吸着する。このため、n-ブタノールを介して、グラフェン同士が吸着する。また、n-ブタノールの分子はグラフェンの厚みより十分に大きいため、グラフェンの表面をn-ブタノールが常時覆う。こうしたグラフェンの集まりの一定量ずつを、複数の金網を有する多段式の振動ふるい機に連続して投入する。振動ふるい機にグラフェンの集まりを投入する際に、n-ブタノールを介してグラフェン同士が吸着したグラフェンの集まりは飛散しない。また、振動ふるい機に投入されたグラフェンの集まりは、n-ブタノールを介してグラフェン同士が吸着した一定量のグラフェンの集まりになる。従って、振動ふるい機を稼働しても、グラフェンが飛散しない。この後、グラフェンの集まりは、最も目が粗い1段目の振動する金網と接触し、金網の目開きより粒径が大きいグラフェンは、金網を通過することができず、金網の周辺部に押しやられ、さらに、金網の周辺部から振動ふるい機の外に連続して放出される。これによって、1段目の金網の目開きより粒径が大きいグラフェンが連続して分級される。例えば、最も目が粗い1段目の金網の目の粗さが750μmであれば、750μm以上の大きさのグラフェンが連続して分級される。いっぽう、金網は一定の大きさの面を持つため、複数のグラフェンが同時に連続して分級され、分級されたグラフェン同士が接触し、n-ブタノールを介してグラフェン同士が吸着し複数のグラフェンになり、放出の過程でグラフェンは飛散しない。
いっぽう、グラフェンの集まりが1段目の金網と接触した際に、金網の目の粗さより粒径が大きいグラフェンは、最も長い時間金網と接触し、金網の振動を最も長い時間受け、金網の振動によって、n-ブタノールを介して吸着した複数のグラフェンが、再びn-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離される。また、グラフェンに吸着したn-ブタノールも振動し、この振動によって、余分なn-ブタノールがグラフェンから剥離する。この結果、金網で分級されたグラフェンは、サブミクロンの厚みからなるn-ブタノールで覆われる。これによって、1段目の金網で分級されるグラフェンの大きさは抑制される。しかし、金網は一定の面積を持ち、多数の目を持つ。このため、複数のグラフェンが同時に連続して一段目の金網で分級され、分級されたグラフェン同士が接触し、n-ブタノールを介してグラフェン同士が再度吸着する。分級されたグラフェンの集まりを容器に集める。
1段目の金網を通過したグラフェンの集まりは、次に目が粗い2段目の振動する金網と接触し、金網の目開きより粒径が大きいグラフェンは、2段目の金網を通過することができず、金網の周辺部に押しやられ、金網の周辺部から振動ふるい機の外に放出される。これによって、2番目に粒径が大きいn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりが分級される。分級されたグラフェンの集まりを別の容器に集める。例えば、2番目に目が粗い金網の目の粗さが650μmであれば、650-750μmの大きさのグラフェンが分級される。この結果、2段目の金網の目開きより粒径が小さいグラフェンは、2段目の金網を通過し、振動ふるい機の底部に集まり、650μm以下のn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを振動ふるい機の底部から回収し、別の容器に充填する。この結果、750μm以上の大きさのグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさのグラフェンの集まりと、650μm以下の大きさのグラフェンの集まりからなる、3種類の大きさのグラフェンに分級され、各々のグラフェンの集まりを、互いに異なる容器に集める。
なお、多段式の振動ふるい機が、振動する3枚の金網からなる3段で構成される場合は、3番目に粒径が大きいグラフェンの集まりは、3番目に目が粗い振動する金網を通過することができず、金網の周辺部に押しやられ、金網の周辺部から振動ふるい機の外に放出される。分級されたグラフェンの集まりを別の容器に集める。例えば、3番目に目が粗い金網の目の粗さが500μmであれば、500-650μmの大きさのグラフェンが分級される。多段式の振動ふるい機が、振動する4枚の金網からなる4段で構成される場合は、同様に、4番目に粒径が大きいグラフェンの集まりは、4番目に目が粗い振動する金網を通過することができず、金網の周辺部に押しやられ、金網の周辺部から振動ふるい機の外に放出される。例えば、4番目に目が粗い金網の目の粗さが400μmであれば、400-500μmの大きさのグラフェンが分級される。
いっぽう、振動ふるい機の金網に、n-ブタノールで覆われたグラフェンが常時接触し、金網が振動することで、金網の表面でn-ブタノールの吸着と脱落が繰り返される。この金網の表面でのn-ブタノールの移動によって、金網が洗浄され、金網に目詰まりが発生せず、また、金網に異物が付着しない。さらに、金網を定期的に洗浄する必要もない。n-ブタノールの沸点が117℃で、室温より十分に高いため、金網のみならず、振動ふるい機の内側は、常時n-ブタノールが吸着し、振動ふるい機の洗浄は不要になる。
なお、第一の工程から第三の工程において、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造する過程で入り込む不純物として、水蒸気が考えられる。いっぽう、20℃で100ccのn-ブタノールに対し、最大7.7gの水が溶解する。従って、第一の工程から第三の工程において、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造する過程で、溶解する水蒸気はごくわずかである。また、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに水蒸気が溶解しても、グラフェンが化学的に極めて安定な物質であるため、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造するうえで、支障が出ることはない。また、分級したグラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出すための処理をその後実施するが、その際に、n-ブタノールの沸点に昇温し、溶解した水蒸気の全てが気化され、有機化合物の微細結晶で覆われたグラフェンの集まりに水分は残留しない。
この結果、8段落に記載した5つの課題を解決し、互いに異なる大きさからなる複数種類の大きさのn-ブタノールが吸着したグラフェンの集まりに分級することができた。
なお、グラフェンの集まりを、異なる大きさからなる複数種類のグラフェンの集まりに分級する処理は、振動ふるい機を稼働させるだけの極めて簡単な処理である。また、グラフェンの集まりは、安価な黒鉛粒子を原料として用い、黒鉛粒子に電界を加えるだけの極めて簡単な処理である。また、n-ブタノールは汎用的な工業用アルコールである。従って、莫大な数からなるグラフェンの集まりが安価に製造で、グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級する処理も、安価にでき、グラフェンの粒径の大きさが互いに異なる複数種類のn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりが、安価に得られる。この結果、安価なグラフェンを、安価に分級し、グラフェンの大きさに応じて、7段落に記載した様々な用途にグラフェンを用いることが可能になる。
【0011】
ここで、第一の工程において、2枚の平行平板電極対の間隙に印加した電界によって、2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた黒鉛粒子において、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが、同時に破壊される現象を説明する。
黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面を形成する炭素原子は4つの価電子を持つ。このうちの3つの価電子は、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンを形成するσ電子である。このσ電子は、基底面上で隣り合う3つの炭素原子が持つσ電子と互いに120度の角度をなして共有結合し、六角形の強固な網目構造を2次元的に形成する。残り一つの価電子はπ電子であり、基底面に垂直な方向に伸びるπ軌道上に存在する。このπ電子は、基底面に垂直な上下方向で隣り合う炭素原子が持つπ電子と弱い結合力で結合し、この弱い結合力に基づいて基底面同士が層状に積層される。つまり、基底面、すなわち、グラフェンは、弱い結合力であるπ軌道の相互作用によって互いに層状に結合されている。このため、黒鉛粒子は、黒鉛結晶からなる基底面で剥がれ易い性質、すなわち、機械的な異方性を持つ。この機械的な異方性は、黒鉛粒子の潤滑性として知られている。
こうした黒鉛粒子に電界を印加させると、全てのπ電子に電界によるクーロン力が作用する。π電子に作用するクーロン力が、π電子に作用しているπ軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に作用すると、π電子はπ軌道上の拘束から解放される。この結果、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。これによって、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子がπ軌道上にいなくなるため、全ての基底面の層間結合は同時に破壊される。すなわち、π電子がクーロン力Fによって黒鉛結晶の層間距離bの距離を動く際に、π電子は仕事W(W=b・F)を行う。この仕事Wが、π電子に作用する1原子当たりのπ軌道の相互作用の大きさである35ミリエレクトロンボルト (エレクトロンボルトは電子が持つエネルギーの大きさを表す単位で、1エレクトロンボルトは1.62×10-19ジュールに相当する)を超えると、π電子はπ軌道の相互作用の拘束から解放されて自由電子になる。例えば、2枚の平行平板電極対の間隙を100μmで離間させ、この電極間に10.6キロボルト以上の直流の電位差を印加させると、黒鉛結晶からなる全ての基底面の層間結合が瞬時に破壊される。このように、安価な黒鉛粒子の集まりに電界を印加するという極めて簡単な手段によって、大量のグラフェンが安価に製造できる。また、全ての基底面の層間結合が同時に破壊するため、得られる微細な物質は、確実に黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンである。
なお、ここで言う黒鉛粒子の集まりとは、1gから100g程度の比較的少量の黒鉛粒子の集まりを言う。つまり、鱗片状黒鉛粒子ないしは鱗状黒鉛粒子は、嵩密度が0.2-0.5g/cmで、粒子の大きさが1-300ミクロンの分布を持つ微細な粒子である。従って、黒鉛粒子の集まりを2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰めることは容易で、2枚の平行平板電極対に電位差を印加することも容易である。2枚の平行平板電極対の間隙に電位差を印加すると、黒鉛粒子が引きつめられた全ての領域に電界が発生する。この電界が、π軌道の相互作用より大きなクーロン力としてπ電子に作用し、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、自由電子になる。この結果、黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンの集まりが製造される。
ここで、グラフェンの数を算術で求める。ここでは、全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×10kg/mであるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10-8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個の基底面、すなわち、グラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、基底面の層間結合の全てを破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。従って、本製造方法によって、僅かな量の黒鉛粒子の集まりから、莫大な数からなるグラフェンの集まりが得られる。
【0012】
9段落に記載した方法で分級した複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、1種類ずつの大きさからなる有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す方法は、
第一に融点が室温より高く、第二に吸湿性と吸水性がなく、第三に、n-ブタノールが熱融解した有機化合物に溶解し、第四に、沸点がn-ブタノールの沸点より高く、第五に、粘度がn-ブタノールの粘度より高いこれら5つの性質を兼備する有機化合物を熱融解させ、該熱融解した有機化合物にn-ブタノールを溶解させた溶解液の粘度が15-25mPa・sになるように該有機化合物のn-ブタノール溶解液を作成し、該有機化合物のn-ブタノール溶解液を、9段落に記載した方法で分級した1種類ずつの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンが集められた各々の容器に充填する、この後、前記各々の容器内でホモジナイザー装置を稼働させ、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液を介して、前記各々の容器内のグラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、該有機化合物のn-ブタノール溶解液を介して1枚1枚のグラフェンに分離させ、前記容器内の各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりに加工する、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりに加工する第一の工程と、
前記複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりの1種類ずつの大きさからなる各々のグラフェンの集まりを、前記各々の容器から複数の湿式ビーズミル装置の各々の粉砕室に移し、該各々の粉砕室を前記1種類ずつの大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填する、さらに、前記複数の湿式ビーズミル装置の各々の攪拌部材を稼働させ、前記各々の粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を該各々の粉砕室内に発生させ、該旋回流に依って前記1種類ずつの大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記各々の粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が各々の粉砕室で進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記各々の粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記各々の粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとが分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記各々の粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記各々の粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記各々の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記各々の粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記各々の粉砕室の底部に戻され、該各々の粉砕室の底部に戻された前記ビーズの集まりと、該各々の粉砕室の底部に戻された前記グラフェンの集まりとの衝突が、前記各々の粉砕室内で再度繰り返される、こうした前記衝突を予め決めた時間継続して実施し、前記湿式ビーズミル装置の各々の粉砕室内で、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する第二の工程と、
前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離された該グラフェンを、前記複数の湿式ビーズミル装置の各々の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出した各々のグラフェンを互いに異なる容器に集め、この後、該各々の容器を前記n-ブタノールの沸点に昇温し、さらに、該各々の容器を前記有機化合物の融点より低い温度に冷却させる、これによって、該各々の容器内に、前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりが形成され、この後、該各々の容器に衝撃を繰り返し加え、該各々の容器内の前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりを崩して該各々の容器内に前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりを平坦に並べ、該平坦に並んだ前記グラフェンの集まりから、前記有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンの集まりを、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す第三の工程とからなり、
これら3つの工程を連続して実施することで、9段落に記載した方法で分級した複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、1種類ずつの大きさからなる有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりに加工し、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す方法である。
【0013】
つまり、グラフェンの厚みが0.332nmと極めて薄く、殆ど質量を持たないため、9段落に記載した方法で分級したn-ブタノールで覆われた複数種類の大きさからなるグラフェンの集まりについて、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出すことは困難である。このため、1種類ずつの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚に分離したグラフェンの集まりに加工する。さらに、このグラフェンの集まりからn-ブタノールを気化し、さらに、有機化合物の融点より低い温度に冷却すれば、1枚1枚に分離したグラフェンが有機化合物の微細結晶の集まりで覆われ、該グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出すことが可能になる。このためには、次の3つの工程における処理が必要になる。
第1の工程で、n-ブタノールで覆われた複数種類の大きさからなるグラフェンの集まりについて、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりを、一定の粘度を持つ有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりに加工する。第2の工程で、第1の工程で作成したグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。第3の工程で、第2の工程で作成したグラフェンから、n-ブタノールを気化させ、さらに、有機化合物の融点より低い温度に冷却させる。これによって、1枚1枚に分離されたグラフェンが、有機化合物の微細結晶で覆われる。この結果、グラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶で覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出すことが可能になる。
最初に、第一の工程で用いる有機化合物を説明する。1枚1枚に分離したグラフェンを覆う有機化合物が、第一に融点が室温より高く、第二に吸湿性と吸水性がない。これによって、有機化合物の微細結晶で覆われた1枚1枚のグラフェンが室温で長期保管ができる。いっぽう、9段落に記載した方法で分級した複数種類の大きさからなるグラフェンは、n-ブタノールで覆われている。このため、第三に、熱融解した有機化合物にn-ブタノールを溶解させる。さらに、n-ブタノールを気化させた後に、有機化合物の微細結晶でグラフェンを覆うには、第四に、有機化合物の沸点がn-ブタノールの沸点より高い。また、第二の工程において、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する際に、有機化合物のn-ブタノール溶解液が適切な粘度を持つことが必要になる。つまり、有機化合物のn-ブタノール溶解液の粘度が低すぎると、グラフェンの集まりを、1枚1枚のグラフェンに分離する処理を行った際に、有機化合物のn-ブタノール溶解液がグラフェンの表面から剥離する。いっぽう、有機化合物のn-ブタノール溶解液の粘度が高すぎると、グラフェンの集まりを、1枚1枚のグラフェンに分離する処理時間が長くなる。このため、第五に、有機化合物はn-ブタノールより高い粘度を持つ。
なお、グラフェンの集まりを1枚1枚のグラフェンに分離する第二工程の処理で、湿式ビーズミル装置を用い、ビーズとグラフェンを衝突させることで、1枚1枚のグラフェンに分離させた。つまり、微細なビーズであっても、ビーズの重量がグラフェンより著しく大きいため、グラフェンがビーズと衝突する際に、グラフェンに大きな衝撃力が印加され、グラフェンの集まりを、1枚1枚のグラフェンに分離する処理時間が短くなる。湿式ビーズミル装置によって、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離するには、有機化合物のn-ブタノール溶解液の粘度が15-25mPa・sが適切であることが実験で分かった。以上に説明したように、有機化合物は5つの性質を兼備する必要がある。
次に、第二の工程で用いる湿式ビーズミル装置を説明する。微細なビーズの重量が、有機化合物のn-ブタノール溶解液が吸着した1枚のグラフェンの重量より著しく大きいため、ビーズと衝突する際に受けるグラフェンの衝撃力が、グラフェン同士が衝突する際に受ける衝撃力より著しく大きい。このため、グラフェンがビーズと衝突することで、グラフェンの集まりが1枚1枚のグラフェンに分離される処理時間が短くなる。いっぽう、グラフェンは、せん断弾性率が440GPaという大きな数値を持つ強靭な物質である。従って、高速で粉砕室を旋回するビーズがグラフェンに繰り返し衝突しても、グラフェンは破壊しない。いっぽう、高速で粉砕室を旋回するビーズが、グラフェンに繰り返し衝突しても、有機化合物のn-ブタノール溶解液が吸着した1枚のグラフェンの重量が極めて軽いため、ビーズが受ける衝撃力はビーズの破断強度より小さく、ビーズは破壊しない。これに対し、グラフェンがビーズと衝突すると、グラフェンを覆う粘稠性の有機化合物のn-ブタノール溶解液が瞬間的に変形するが、溶解液がグラフェンの全体を覆っているため、直後に、有機化合物のn-ブタノール溶解液は元に戻ってグラフェンを覆う。いっぽう、高速で粉砕室を旋回するビーズ同士が衝突した際に、コンタミが発生する。このため、耐摩耗性、破壊強度に優れ、コンタミが発生しにくいジルコニアからなるビーズを用いる。
すなわち、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚のグラフェンの重量に比べ、粒径が小さいビーズ1個の重量は1万倍をこえる。このため、湿式ビーズミル装置の粉砕室における旋回流によって、グラフェン同士が衝突する際に、グラフェンが受ける衝撃力に比べ、グラフェンがビーズと衝突する際に、グラフェンが受ける衝撃力のほうが著しく大きい。このため、グラフェンがビーズと衝突することで、グラフェンの集まりが1枚1枚のグラフェンに分離される処理時間は短くなる。
つまり、ソーダガラスからなるビーズの密度は2.5g/cmで、アルミナからなるビーズの密度は3.9g/cmで、ジルコニアからなるビーズの密度は6.0g/cmで、スチール(高炭素クロム軸受鋼鋼材SUJ-2)からなるビーズの密度は7.85g/cmである。いっぽう、直径が5mmからなる微小なビーズ1個の重さは、ソーダガラスで1.64×10-1g、アルミナで2.55×10-1g、ジルコニアで3.93×10-1g、スチールで5.14×10-1gになる。これに対し、直径が250μmの円盤状のグラフェンに、密度が0.9g/cmの有機化合物のn-ブタノール溶解液が0.2μmの厚みで覆ったとすると、被膜の重さは、1.44×10-5gになる。従って、密度が最も小さいソーダガラスからなり、直径が5mmからなるビーズ1個の重さは、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの重さの1.14×10倍になる。この結果、グラフェン同士が衝突する際に、グラフェンが受ける衝撃力に比べ、グラフェンがビーズと衝突する際に、グラフェンが受ける衝撃力が1万倍を超える。従って、湿式ビーズミル装置におけるビーズとグラフェンとの衝突を利用すると、溶解液を介してグラフェン同士が重なり合った該グラフェンが、効率よく1枚1枚のグラフェンに分離される。なお、ビーズの材質の中で、ジルコニアのビーズは、ガラス、アルミナ及びスチールより、耐摩耗性、破壊強度に優れ、ビーズ同士の衝突によってコンタミが発生しにくい。また、ジルコニアからなるビーズの密度は6.0g/cmで、スチールからなるビーズに次いで密度が大きく、ビーズがグラフェンと衝突する際に、グラフェンにより大きな衝撃力が加わる。さらに、ジルコニアのビーズは粒径の均一性に優れ、グラフェンが受ける衝突の際に受ける負荷が均等に近づき、再現性を持って、重なり合ったグラフェンの集まりを1枚1枚のグラフェンに分離できる。これらの理由から、ジルコニアからなるビーズを用いた。なお、周速度が12m/sを超えると、ジルコニアからなるビーズであっても、ビーズ同士の衝突でコンタミが発生し始めたため、旋回流の周速度は12m/s以下とした。
ここで、3つの工程の各々の工程における処理と処理に伴う現象を説明する。
第一の工程は、最初に、9段落に記載した方法で分級した1種類ずつの大きさからなるn-ブタノールで覆われた各々のグラフェンの集まりを、異なる容器にそれぞれ充填する。次に、有機化合物を熱融解させ、熱融解した有機化合物にn-ブタノールを混合して攪拌し、溶解液の粘度が15-25mPa・sになるように、有機化合物のn-ブタノール溶解液を作成する。この有機化合物のn-ブタノール溶解液を、グラフェンの集まりが充填された各々の容器に混合し攪拌する。これによって、グラフェンを覆っていたn-ブタノールが、有機化合物のn-ブタノール溶解液に置き換わり、15-25mPa・sの粘度に応じた吸着力で、有機化合物のn-ブタノール溶解液がグラフェンに吸着する。また、有機化合物のn-ブタノール溶解液がグラフェンに吸着する厚みは、粘度がn-ブタノールの5倍以上高いため、n-ブタノールの厚みの5倍以上厚い。なお、9段落に記載した方法で分級した全てのグラフェンが、n-ブタノールで覆われていたが、n-ブタノールの膜厚がサブミクロンと薄く、また、15-25mPa・sの粘度からなる溶解液に占めるn-ブタノールの体積割合が高く、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに、有機化合物のn-ブタノール溶解液を混合した際に、有機化合物のn-ブタノール溶解液の粘度が若干低下する程度である。次に、各々の容器内でホモジナイザー装置を稼働させ、有機化合物のn-ブタノール溶解液を介してグラフェンの集まりに衝撃を繰り返し加え、グラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液覆われた1枚1枚のグラフェンに分離させる。いっぽう、第二の工程でグラフェンがビーズに衝突する。しかし、有機化合物のn-ブタノール溶解液は、一定の厚みと一定の吸着力を持ってグラフェンを覆うため、ビーズがグラフェンに衝突した際に、グラフェンを覆う溶解液の被膜が瞬間変形するだけで、もとに戻って、溶解液がグラフェンを覆う。このため、有機化合物のn-ブタノール溶解液は、グラフェンの表面から解離しない。これによって、1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンは、有機化合物のn-ブタノール溶解液で継続して覆われる。
第二の工程は、湿式ビーズミル装置を用い、グラフェンをビーズと衝突させることで、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。この際、有機化合物のn-ブタノール溶解液の粘度を、15-25mPa・sの粘度とすると、グラフェン同士が有機化合物のn-ブタノール溶解液を介して重なり合ったグラフェンにビーズが衝突し、該グラフェンが1枚1枚のグラフェンに分離する際に、溶解液を伴って1枚1枚のグラフェンに分離される。
つまり、溶解液の粘度が高すぎると、グラフェンが大きいほど、溶解液とグラフェンとの粘着力が大きくなり、1枚1枚のグラフェンに分離しにくくなり、1枚1枚のグラフェンに分離する処理時間が長くなる。また、1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンが、高い粘度からなる溶解液を介してグラフェン同士が再び重なり合う。これとは反対に、溶解液の粘度が低すぎると、グラフェンが小さいほど、溶解液とグラフェンとの粘着力が小さくなり、1枚1枚のグラフェンに分離しやすくなるが、1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンがビーズと再び衝突すると、グラフェンから溶解液が剥離し、グラフェン同士が再度直接重なり合う。このような実験を繰り返し、処理した試料を電子顕微鏡で繰り返し観察し、有機化合物がn-ブタノールに溶解した溶解液の粘度は、15-25mPa・sが適正であることが分かった。
第二の工程は、最初に、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1種類ずつの大きさからなる各々のグラフェンの集まりを、湿式ビーズミル装置の各々の粉砕室に投入し、この後、ジルコニアからなるビーズの集まりを各々の粉砕室に投入し、各々の粉砕室を1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填する。さらに、湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、各々の粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、各々の粉砕室内に発生させる。該旋回流に依って、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりとビーズの集まりが攪拌され、攪拌された1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりとビーズの集まりが、各々の粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する。これによって、グラフェンの集まりとビーズの集まりとの衝突が繰り返され、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、旋回流によって、グラフェンの集まりとビーズの集まりが各々の粉砕室の上部に移動する。グラフェンの集まりとビーズの集まりが各々の粉砕室の最上部に到達すると、最上部に配置された遠心分離装置によって、グラフェンの集まりとビーズの集まりが互いに分離され、分離されたグラフェンの集まりは、湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、粉砕室の底部に戻される。いっぽう、各々の粉砕室の最上部に達した旋回流は、湿式ビーズミル装置の容器の内壁と粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わる。該下方に向かって移動する流れによって、分離されたビーズの集まりが粉砕室の底部に戻される。各々の粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと、各々の粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、各々の粉砕室内で再度繰り返される。この衝突を予め決めた時間実施し、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。
第三の工程は、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離された1種類ずつの大きさからなる各々のグラフェンンを、湿式ビーズミル装置の各々の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出したグラフェンを互いに異なる容器に集める。この後、各々の容器をn-ブタノールの沸点に昇温し、1枚1枚に分離されたグラフェンを熱融解した有機化合物で覆う。さらに、各々の容器を有機化合物の融点より低い温度に冷却させ、1枚1枚に分離されたグラフェンを有機化合物の微細結晶で覆い、該グラフェンの集まりを、各々の容器内に作成する。この後、各々の容器に負荷を繰り返し加え、各々の容器内のグラフェンの集まりを崩してグラフェンの集まりを平坦に並べ、該平坦に並んだグラフェンの集まりから、有機化合物の微細結晶の集まりで覆われた1枚1枚のグラフェンを取り出す。
これによって、取り出した1枚のグラフェンから、有機化合物の微細結晶の集まりを脱落させれば、1枚のグラフェンが得られる。この結果、異なる大きさからなる1枚1枚のグラフェンが取り出すことができ、取り出したグラフェンを用途に応じて使い分ける。
【0014】
12段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物が、側鎖結晶性ポリオレフィンからなる分子構造を有するαオレフィン誘導体である、12段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物。
【0015】
つまり、側鎖結晶性ポリオレフィンからなる分子構造を有するαオレフィン誘導体は、側鎖の長さを規定することで低融点が実現し、融点が室温より高い42-76℃で、熱融解したαオレフィン誘導体の粘度は、100℃で100-130mPa・sと高い。また、ポリオレフィン系の材料であるため、耐熱性が高く、熱分解が始まった5%重量減少温度が320℃であり、沸点はn-ブタノールの沸点である117℃より著しく高い。さらに、融点が室温より高く、固体のαオレフィン誘導体は吸湿性と吸水性がなく、化学的に安定なため、固体のαオレフィン誘導体の微細結晶の集まりで覆ったグラフェンの長期保管が可能になる。なお、固体の密度は0.920g/cmである。いっぽう、固体のαオレフィン誘導体に、n-ブタノールは殆ど溶けないが、熱融解したαオレフィン誘導体にn-ブタノールは溶解する。さらに、αオレフィン誘導体の熱融解時の粘度は、n-ブタノールの粘度の33-43倍と高い。従って、熱融解させたαオレフィン誘導体にn-ブタノールを溶解させた溶解液の粘度を、15-25mPa・sにするには、n-ブタノールを82-90%の体積割合で溶解させればよい。以上に説明したように、αオレフィン誘導体12段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。
【0016】
9段落に記載した黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、複数種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級する方法において、黒鉛粒子の集まりとして、70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなる4種類の大きさのn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級し、さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類のグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する方法は、
70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、9段落に記載した第一の工程と第二の工程における処理を実施し、前記黒鉛粒子の集まりから、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、さらに、最上段に配置される金網の目の粗さが750μmで、2段目に配置される金網の目の粗さが650μmで、3段目に配置される金網の目の粗さが500μmであり、これら3種類の金網が離散して配置された3段式の振動ふるい機を用い、9段落に記載した第三の工程における処理を実施し、前記n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなる4種類の大きさのグラフェンの集まりに分級し、
さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、12段落に記載した第一の工程における処理を実施し、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりに加工し、
さらに、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離するには、
第一に、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第一の湿式ビーズミル装置の粉砕室に投入し、さらに、ビーズ径が8mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の60%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第一の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、6m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第一の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第一の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
第二に、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第二の湿式ビーズミル装置の粉砕室に投入し、さらに、ビーズ径が7mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の50%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第二の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、8m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第二の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第二の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、650-750μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
第三に、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第三の湿式ビーズミル装置の粉砕室に投入し、さらに、ビーズ径が6mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、前記粉砕室の40%の体積を占める割合で投入し、該粉砕室を前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりで充填する、この後、該第三の湿式ビーズミル装置の攪拌部材を稼働させ、前記粉砕室において、該粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流を、10m/sの周速度で発生させ、該旋回流に依って前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが攪拌され、該攪拌された前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが、前記粉砕室の上部に向かって旋回されながら移動する、これによって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりとの衝突が繰り返され、該衝突によって、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりが、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離される現象が進むとともに、前記旋回流によって、前記グラフェンの集まりと前記ビーズの集まりが前記粉砕室の上部に移動し、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが前記粉砕室の最上部に到達すると、該最上部に配置された遠心分離装置によって、該グラフェンの集まりと該ビーズの集まりが互いに分離され、該分離されたグラフェンの集まりは、前記第三の湿式ビーズミル装置の機外に一度排出された後に、再度、前記粉砕室の底部に戻される、いっぽう、前記粉砕室の最上部に達した前記旋回流は、前記第三の湿式ビーズミル装置の容器の内壁と前記粉砕室の外壁との間隙を下方に向かって移動する流れに変わり、該下方に向かって移動する流れによって、前記分離されたビーズの集まりが前記粉砕室の底部に戻され、該粉砕室の底部に戻されたビーズの集まりと前記粉砕室の底部に戻されたグラフェンの集まりとの衝突が、前記粉砕室内で再度繰り返される、こうした衝突を予め決めた時間継続させ、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、500-650μmの大きさからなる前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する、
これによって、70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを製造し、該グラフェンの集まりを、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの4種類の大きさのグラフェンの集まりに分級し、さらに、500μm以上の大きさからなる前記n-ブタノールで覆われた3種類のグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、前記有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する方法である。
【0017】
つまり、500μm以上の大きさからなるグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさのグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさのグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさのグラフェンの集まりとの3種類の大きさからなるグラフェンの集まりに分級できれば、500μm以上の大きさからなるグラフェンを、電子デバイスの用途に応じてグラフェンを使い分けられる。このため、こうした3種類の大きさからなるグラフェンの集まりについて、次の3つの工程によって、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離した該グラフェンの集まりを製造した。さらに、グラフェンの集まりからn-ブタノールを気化し、さらに、有機化合物の融点以下に冷却すれば、有機化合物の微細結晶で覆われた1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりが得られる。このグラフェンの集まりから1枚1枚のグラフェンを取り出し、取り出したグラフェンから有機化合物の微細結晶を脱落させれば、1枚のグラフェンが得られる。これによって、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンが取り出すことができ、取り出したグラフェンを用途に応じて使い分けることができる。
第一の工程は、最初に、70-850μmに及ぶ粒径分布を持つ黒鉛粒子の集まりを用い、9段落に記載した第一の工程と第二の工程とに従って、黒鉛粒子の集まりを、n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離した該グラフェンの集まりを製造する。次に、9段落に記載した第三の工程に従って、金網の目の粗さが750μmと650μmと500μmの3種類の金網からなる3段式の振動ふるい機を用い、n-ブタノールを介して1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンの集まりを、750μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、650-750μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500-650μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりとの4種類の大きさからなるグラフェンの集まりに分級する。
第二の工程は、500μm以上の大きさからなる1種類ずつの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、12段落に記載した第一の工程に従って、1種類ずつの大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、互いに異なる容器の底面に該底面の形状として形成し、該グラフェンの集まりを、互いに異なる容器から取り出す。
第三の工程は、3種類の大きさからなる有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりについて、1種類ずつの大きさからなる各々のグラフェンの集まりを互いに異なる湿式ビーズミル装置の粉砕室内で、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりとビーズの集まりとの衝突条件を変え、予め決めた時間衝突を継続させ、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。この際、グラフェンの大きさが異なるため、グラフェンの集まりとビーズの集まりが衝突する条件を変えた。
つまり、湿式ビーズミル装置の粉砕室における旋回流で、重なり合ったグラフェンを、効率よく1枚1枚のグラフェンに分離するには、次の3つの条件を適正化することが必要であることが実験の結果で分かった。
第一の条件は、ビーズを粉砕室に投入する際のビーズの占める体積割合である。つまり、ビーズが粉砕室を占める体積割合を高め過ぎると、ビーズ同士の衝突の頻度が増えるが、ビーズとグラフェンとの衝突する頻度が低下し、グラフェンの集まりを、1枚1枚のグラフェンに分離する現象が抑制される。実験の結果、ビーズが粉砕室を占める体積割合を60%以下にすれば、相対的に面積が大きいグラフェンの集まりが、1枚1枚のグラフェンに分離されることが分かった。いっぽう、ビーズが粉砕室を占める体積割合が多くなるほど、グラフェンの集まりが粉砕室を占める割合が少なくなるが、グラフェンが大きければ、ビーズとグラフェンとが衝突する頻度は確保できる。このため、グラフェンの大きさに応じて、粉砕室に投入する際のビーズの占める体積割合を変えた。すなわち、750μm以上の大きさからなるグラフェンの集まりは、粉砕室の60%の体積を占める割合でビーズを投入した。650-750μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、粉砕室の50%の体積を占める割合でビーズを投入した。500-650μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、粉砕室の40%の体積を占める割合でビーズを投入した。
第二の条件は、ビーズの大きさである。つまり、ビーズとグラフェンとの衝突の頻度は、グラフェンの大きさのみならず、ビーズの大きさにも依存する。従って、効率的に1枚1枚のグラフェンに分離するために、グラフェンの大きさに応じて、ビーズの大きさを変える必要がある。いっぽう、ビーズが小さくなるほど、ビーズの充填率が同じでも、ビーズの数が増え、グラフェンとビーズとの衝突が確保される。
つまり、ビーズの集まりがグラフェンの集まりと衝突する際に、面積が大きいグラフェンが優先して、1枚1枚のグラフェンに分離される。いっぽう、ビーズの粉砕室内での充填率が同じでも、ビーズの粒径が小さくなるほど、ビーズの数が増える。これによって、ビーズがグラフェンと衝突する頻度が高まる。このため、750μm以上の大きさからなるグラフェンの集まりは、ビーズ径が8mmからなるビーズの集まりを用いた。650-750μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、ビーズ径が7mmからなるビーズの集まりを用いた。500-650μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、ビーズ径が6mmからなるビーズの集まりを用いた。なお、同一のビーズ径からなるビーズの集まりを用い、グラフェンの受ける負荷を均等に近づけ、1枚1枚のグラフェンに分離される処理の再現性が得られるようにした。
第三の条件は、ビーズとグラフェンとが粉砕室で旋回する周速度である。つまり、ビーズ径が小さくなるほど、ビーズの質量が低下し、グラフェンと衝突する際にグラフェンに与える衝撃力が低下する。この理由から、750μm以上の大きさからなるグラフェンの集まりは、6m/sの周速度で旋回流を発生させた。650-750μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、8m/sの周速度で旋回流を発生させた。500-650μmの大きさからなるグラフェンの集まりは、10m/sの周速度で旋回流を発生させた。これによって、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンを、効率的に1枚1枚のグラフェンに分離させた。
なお、ビーズの材質の中で、ジルコニアのビーズは、ガラス、アルミナ及びスチールより、耐摩耗性、破壊強度に優れ、ビーズ同士の衝突によってコンタミが発生しにくい。また、ジルコニアからなるビーズの密度は6.0g/cmで、スチールからなるビーズに次いで密度が大きく、ビーズがグラフェンと衝突する際に、グラフェンにより大きな衝撃力が加わる。さらに、ジルコニアのビーズは粒径の均一性に優れ、グラフェンが受ける衝突の際に受ける負荷が均等に近づき、再現性を持って、重なり合ったグラフェンの集まりを1枚1枚のグラフェンに分離できる。これらの理由から、ジルコニアからなるビーズを用いた。なお、周速度が12m/sを超えると、ジルコニアからなるビーズであっても、ビーズ同士の衝突でコンタミが発生し始めたため、旋回流の周速度は12m/s以下とした。
これらの3条件を、粉砕室におけるビーズとグラフェンとの衝突に反映し、重なり合ったグラフェンを、1枚1枚のグラフェンに分離する処理時間を短くした。この結果、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりについて、有機化合物のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離した。1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりからn-ブタノールを気化させ、次いで、有機化合物の融点以下に冷却させれば、有機化合物の微細結晶で覆われた1枚1枚に分離したグラフェンの集まりになる。これによって、グラフェンの集まりから、1枚1枚のグラフェンを取り出すことができる。
さらに、1枚のグラフェンから有機化合物の微細結晶を脱落させれば、1枚のグラフェンが得られる。これによって、1種類ずつの大きさからなるグラフェンの集まりから、1枚のグラフェンが取り出すことができ、取り出した1枚のグラフェンを様々な電子デバイスの用途に応じて使い分ける。
なお、複数種類の大きさからなるグラフェンを、750μm以上の大きさからなるグラフェンと、650-750μmの大きさからなるグラフェンと、500-650μmの大きさからなるグラフェンで構成したが、必ずしも、グラフェンの大きさの区分けは、本事例に限定されない。例えば、750μm以上の大きさからなるグラフェンと、700-750μmの大きさからなるグラフェンと、500-700μmの大きさからなるグラフェンで構成してもよい。あるいは、黒鉛粒子が100-900μmに及ぶ粒径分布を持てば、800μm以上の大きさからなるグラフェンと、700-800μmの大きさからなるグラフェンと、600-700μmの大きさからなるグラフェンで構成してもよい。
【0018】
16段落に記載した方法で分級された500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを用い、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法は、
16段落に記載した方法で分級された500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを容器に充填し、さらに、前記グラフェンの集まりの重量の5倍以上の重量のn-ブタノールを容器に加え、この後、該容器に前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを前記容器内に製造する、グラフェン同士がn-ブタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法である。
【0019】
つまり、16段落に記載した方法で分級された500μm以下の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりは、グラフェンを覆うn-ブタノールの厚みがサブミクロンと薄く、ペーストとしての流動性がない。このため、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの重量の5倍以上の重量のn-ブタノールを、追加してグラフェンの集まりに加えた。この後、容器に前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加えると、追加して加えたn-ブタノールは、3方向の振動加速度によって、n-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりに入り込み、より多い量のn-ブタノールを介してグラフェン同士が重なり合ったグラフェンの集まりになり、ペーストとしての流動性を持つ。つまり、グラフェンが、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が極めて大きく、また、極めて軽量であるため、3方向の振動加速度を繰り返し加えると、グラフェンが、面を上にして振動加速度の方向に容器内を移動し、n-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりが、容器全体に広がる。これによって、n-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりからなるペーストが容器内に製造される。すなわち、0.3G程度の3方向の振動加速度を容器に繰り返し加え、最後に上下方向の振動加速度を加え、容器への振動加速度を停止すると、追加して容器に加えたn-ブタノールが、n-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりに入り込み、より多い量のn-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりからなるペースが容器内に製造される。なお、n-ブタノールは、25℃で3mPa・sからなる粘度を有する。いっぽう、グラフェンは殆ど質量を持たず、また、厚みに対する面の比率であるアスペクト比が極めて大きい。このため、n-ブタノールの粘度に応じた吸着力で、グラフェンにn-ブタノールが吸着し、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなるペーストが容器内に製造される。このペーストは、n-ブタノールの粘度を持つ。
【0020】
18段落に記載したペーストを用い、グラフェン同士が重なり合った部位を摩擦熱で接合した該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体を基材に形成する方法は、
18段落に記載した方法で製造したペーストを基材に塗布し、該基材に前記ペーストからなる塗膜を形成し、この後、該基材をn-ブタノールの沸点に昇温し、前記塗膜からn-ブタノールを気化させ、グラフェン同士が重なり合った該グラフェンの集まりからなる被膜を前記基材に形成する、この後、該被膜の上方の平面を均等に圧縮する、これによって、前記グラフェン同士が重なり合った部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱によって前記重なり合ったグラフェン同士が接合され、該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、前記基材に形成される、18段落に記載したペーストを用い、グラフェン同士が重なり合った部位を摩擦熱で接合した該接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体を基材に形成する方法である。
【0021】
つまり、18段落に記載した方法で製造したペーストを基材に塗布すると、基材にn-ブタノールの粘度に応じた厚みで塗膜が形成される。なお、ペーストを塗布する方法として、刷毛塗り、ローラー塗り、ロールコーター、浸漬塗りなどの方法があり、グラフェン接合体を形成する基材に合わせて、塗布の方法を選択する。この後、基材をn-ブタノールの沸点に昇温し、塗膜からn-ブタノールを気化させると、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンの集まりからなる被膜が基材に形成される。この被膜の上方の平面を均等に圧縮すると、グラフェン同士が重なり合った部位に摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって重なり合った部位が接合され、グラフェン同士が接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が基材に形成される。
つまり、グラフェンは、破断強度が42N/mであり、鋼の100倍を超える強度を持つため、過大な圧縮応力を加えても、グラフェンは破断しない。また、グラフェンはヤング率が1020GPaと極めて大きいため、過大な圧縮応力を加えても、グラフェンは変形も破壊もしない。従って、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンの集まりからなる被膜の上方の平面に、金属板を重ね、この金属板の上に、例えば、100kgからなる重りを載せる。これによって、グラフェンの集まりからなる被膜が均等に圧縮される。この際、グラフェン同士が重なり合った部位に摩擦熱が発生し、この摩擦熱によって重なり合った部位が接合され、グラフェン同士が接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が基材に形成される。この後、重りと金属板を取り除く。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】グラフェンがαオレフィン誘導体の微細結晶で覆われた状態を拡大して模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例1
本実施例は、1枚1枚に分離したグラフェンの集まりを、n-ブタノール中に分散する。
すなわち、2枚の平行平板電極対の間隙に電界が発生する電極の有効面積を1m×1mとし、2枚の平行平板電極対を100μmの間隙で組み合わせる。この電極間に、鱗状黒鉛粒子の集まりを満遍なく平らに引き詰めた場合、黒鉛粒子を粒径が25μmの球とし、黒鉛粒子の厚みの平均値が10μmと仮定し、2枚の平行平板電極対で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子が満遍なく一列に整列したと仮定した場合、6.4×10個の黒鉛粒子が存在する。この黒鉛粒子の集まりに、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すれば、黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面の全ての層間結合が同時に破壊される。黒鉛粒子の形状と大きさを前記の条件とし、さらに、1個の黒鉛粒子が持つグラフェンの数を297,265個とした場合、1.9×1013個のグラフェンの集まりを得ることができる。この時に用いた鱗片状黒鉛粒子の集まりは、わずかに1.18gである。
最初に、電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである平行平板電極の表面に、鱗状黒鉛粒子(日本黒鉛工業株式会社のF#1)の100gを重ねて引き詰めた。この黒鉛粒子は、平均粒径が650μmで、鱗片状黒鉛粒子ないしは鱗状黒鉛粒子として、粒子が大きい黒鉛粒子である。次に、平行平板電極を、容器に充填した1000ccのn-ブタノール中に浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極を前記した平行平板電極の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極対を100μmの間隙で離間させてn-ブタノール中に浸漬させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加え、グラフェンの集まりを製造した。次に、2枚の平行平板電極対の間隙を拡大し、さらに、2枚の平行平板電極対をn-ブタノール中で傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を容器に繰り返し加え、この後、容器から2枚の平行平板電極を取り出した。この後、容器内のn-ブラノールに、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって20kHzの超音波振動を2分間加え、n-ブタノールを介して1枚1枚に分離されたグラフェンの集まりを、n-ブタノール中に分散させた。
【0024】
実施例2
本実施例は、実施例1で作成したグラフェンの集まりを、3段式の振動ふるい機(槙野産業株式会社のFS振動ふるい機)を用い、4種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級した。用いた金網は、ふるいの目の粗さが758μmからなる1段目の金網と、ふるいの目の粗さが677μmからなる2段目の金網と、ふるいの目の粗さが524μmからなる3段目の金網からなる。
実施例1で作成したn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりの10gずつを、振動ふるい機に連続して投入し、振動ふるい機を稼働させ、758μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、677-758μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、524-677μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりと、524μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりからなる4種類の大きさのn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級した。
【0025】
実施例3
本実施例は、実施例2で作成した524μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われた3種類のグラフェンの集まりを、αオレフィン誘導体(豊国製油株式会社の製品HSクリスタ-6100)のn-ブタノール溶解液を介して1枚1枚のグラフェンに分離されたグラフェンの集まりを作成する。用いたαオレフィン誘導体の融点は58℃で、100℃における溶解粘度は110mPa・sである。さらに、3種類のグラフェンの集まりを、湿式ビーズミル装置によって、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する。
αオレフィン誘導体の15gを65℃まで昇温して熱融解させ、これにn-ブタノールの85gを混合し、攪拌して100gのαオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液を作成した。αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液の20gを、758μm以上の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに混合して攪拌し、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを作成した。また、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液の50gを、677-758μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに混合して攪拌し、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを作成した。さらに、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液の30gを、524-677μmの大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに混合して攪拌し、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを作成した。
この後、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われた3種類の大きさからなるグラフェンの集まりの各々のグラフェンの集まりを、湿式ビーズミル装置(株式会社広島メタル&マシナリーの製品UAM-1)を用いて、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離した。
最初に、758μm以上の大きさからなるαオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第一の湿式ビーズミル装置の粉砕室の40%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が8mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、粉砕室の60%の体積を占める割合で投入し、粉砕室をグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填した。この後、粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流の周速度を6m/sに設定し、第一の湿式ビーズミル装置を10分間連続稼働させた。この後、処理したグラフェンを、第一の湿式ビーズミル装置の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出したグラフェンを容器に集めた。
次に、677-758μmの大きさからなるαオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第二の湿式ビーズミル装置の粉砕室の50%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が7mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、粉砕室の50%の体積を占める割合で投入し、粉砕室をグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填した。この後、粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流の周速度を8m/sに設定し、第二の湿式ビーズミル装置を15分間連続稼働させた。この後、処理したグラフェンを、第二の湿式ビーズミル装置の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出したグラフェンを容器に集めた。
さらに、524-677μmの大きさからなるαオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、第三の湿式ビーズミル装置の粉砕室の60%の体積を占める割合で投入し、さらに、ビーズ径が7mmからなる同一径のジルコニアからなるビーズの集まりを、粉砕室の40%の体積を占める割合で投入し、粉砕室をグラフェンの集まりとビーズの集まりで充填する。この後、粉砕室の上部に向かって旋回しながら移動する旋回流の周速度を10m/sに設定し、第三の湿式ビーズミル装置を20分間連続稼働させた。この後、処理したグラフェンを、第三の湿式ビーズミル装置の遠心分離装置から機外に排出させ、該排出したグラフェンを容器に集めた。
【0026】
実施例4
本実施例は、実施例3で作成した3種類の大きさからなる処理したグラフェンの集まりが収納された3つの容器を、n-ブタノールの沸点に昇温し、この後、αオレフィン誘導体の融点である58℃より低い25℃に冷却させた。さらに、3つの容器の各々の側面に、0.4Gからなる衝撃加速度を、繰り返し3回加えた。この後、3つの容器の各々から1枚ずつの試料を任意に10個ずつ取り出し、各々の試料を、電子顕微鏡で観察と分析を行った。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この電子顕微鏡は、100ボルトからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
各々の試料からの反射電子線の900―1000ボルトの間にある2次電子線を取り出し、これを画像として映し出し、各々の試料を観察した。いずれの試料も極めて薄い物質が、有機物の集まりで覆われていた。試料の側面の一部の有機物を脱落させ、試料の側面を観察した。各々の試料は、1-1.5μmの厚みからなる有機物で覆われていた。さらに、各々の試料から有機物を脱落させ、各々の試料を構成する極めて薄い物質を分析した。各々の試料の表面と側面との複数個所からの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、各々の試料を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。炭素原子のみが存在したため、極めて薄い物質はグラフェンである。
なお、第一の試料における10個のグラフェンの大きさは750―850μmであった。第二の試料における10個のグラフェンの大きさは680―750μmであった。第三の試料における10個のグラフェンの大きさは520―670μmであった。
図1に、グラフェンがαオレフィン誘導体の微細結晶で覆われた状態を拡大して模式的に示す。1はグラフェンで、2はαオレフィン誘導体の微細結晶の集まりである。
【0027】
実施例5
本実施例は、実施例2で作成した524μm以下の大きさからなるからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを容器に充填し、さらに、50gのn-ブタノールを加えてペーストを作成した。この後、0.2Gからなる3方向の振動加速度を、容器に繰り返し加え、n-ブタノールを介して重なり合ったグラフェンの集まりからなるペーストを容器内に形成した。
このペーストを、透明フィルムに塗布した。透明フィルムは、フィルム厚が50μmからなるアクリル樹脂の透明フィルム(三菱レイヨン株式会社の製品で品番HBS006)を、10cm×10cmの大きさに切断し、フィルムを10cm×10cmの金属板の上に載せ、フィルム全体に、ペーストを塗布した。この後、試料をn-ブタノールの沸点に昇温し、n-ブタノールを気化させた。さらに、試料の上に、10cm×10cmの別の金属板を載せ、この金属板の上に100kgの重りを載せた。この後、重りと金属板とを取り除き、フィルムが形成された金属板の側面に、0.4Gからなる2方向の振動加速度を加え、金属板からフィルムを取り出した。
次に、フィルムの表面を、実施例4と同様に電子顕微鏡で観察した。フィルム表面に形成された物質は、炭素原子のみが存在したため、グラフェン同士が接合されたグラフェン接合体である。さらに、グラフェン接合体の平面の複数の部位に関わる光学性能を、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計(株式会社島津製作所の製品UV-1280)に依る可視光線の波長領域(380-750nm)での光線透過率は、88-90%と高い値を持った。また、ヘーズメータ(スガ試験株式会社のヘーズメータHZ-V3)によるヘイズ値は1%未満であった。この結果、グラフェン接合体は高い透明性を持った。従って、アクリル樹脂の透明フィルムの表面に、グラフェン接合体からなる透明導電膜が形成された。
【0028】
以上の実施例において、実施例1では、9段落に記載した方法に従って、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを作成した。従って、2枚の平行平板電極の間隙に敷き詰めた黒鉛粒子の集まりに、電界を印加することで、黒鉛粒子における黒鉛結晶の層間結合が同時に破壊され、黒鉛結晶の基底面からなるグラフェンの集まりが製造されることが実証された。また、実施例2では、9段落に記載した方法に従って、n-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりを、4種類の大きさからなるn-ブタノールで覆われたグラフェンの集まりに分級した。これによって、黒鉛粒子から製造したグラフェンであっても、相対的に大きさが大きいグラフェンが選別できることが実証された。従って、粒径がさらに大きい黒鉛粒子を用いれば、大きさがさらに大きいグラフェンが選別できる。実施例3では、3種類の大きさからなるαオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、16段落に記載した方法に従って、湿式ビーズミル装置を用いて、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離した。このため、適切な粘度を持つ有機化合物の溶解液で覆われたグラフェンの集まりを、有機化合物の溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離する手段として、湿式ビーズミル装置が有効であることが実証された。実施例4では、αオレフィン誘導体のn-ブタノール溶解液で覆われた1枚1枚のグラフェンに分離したグラフェンの集まりから、16段落に記載した方法に従って、1枚1枚のグラフェンを取り出した。このため、有機化合物の微細結晶で1枚1枚のグラフェンが覆うことができれば、殆ど質量を持たないグラフェンであっても、1枚1枚のグラフェンを取り出すことが可能であることが実証された。実施例5によって、大きさが小さいグラフェンであっても、ペーストとして用いられることを実証した。さらに、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンの集まりに、過大な圧縮応力を加えることで、グラフェン同士が接合したグラフェン接合体が製造できることを実証した。実施例5の例では、グラフェン接合体が透明導電性の膜を形成したが、グラフェン接合体の実施例は、透明導電性の膜に限らない。大きさが小さいグラフェンであっても、熱伝導性と導電性とを兼ねた電子材料、放熱材料、ないしは、合成樹脂、ゴム、あるいはセラミックスと複合化した熱伝導性と導電性とを兼ねた複合材料としても用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 グラフェン 2 αオレフィン誘導体の微細結晶の集まり
図1