(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022030
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】土質改良材および土質改良方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/02 20060101AFI20220127BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20220127BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20220127BHJP
C09K 3/00 20060101ALN20220127BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C09K17/02 P ZAB
C09K17/06 P
E02D3/12 103
C09K3/00 S
C09K103:00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126000
(22)【出願日】2020-07-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】516213482
【氏名又は名称】株式会社リュウクス
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【復代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】謝花 一成
(72)【発明者】
【氏名】岸田 好雄
(72)【発明者】
【氏名】南出 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大嶺 薫
【テーマコード(参考)】
2D040
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB11
2D040AC05
2D040CA03
2D040CA04
2D040CA05
2D040CA10
2D040CB01
4H026CA02
4H026CA05
4H026CA06
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】環境にやさしく高い土質改善効果を有する土質改良材を提供する。
【解決手段】少なくとも燃焼したパームヤシ殻であるパームヤシ殻燃焼灰を含有し、前記パームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウムおよび二酸化ケイ素を含有する土質改良材とした。また、前記パームヤシ殻燃焼灰は、前記酸化カルシウムを15~50重量%含有し、前記二酸化ケイ素を30~60重量%含有し、前記酸化カルシウムおよび前記二酸化ケイ素の合計含有量が90重量%以下とした。さらに、パームヤシ殻燃焼灰は、パームヤシ殻をボイラで燃焼させる火力発電設備から排出されたものであり、前記ボイラは、砂を流動媒体とする流動層を備えて600℃よりも高温で燃焼させるものであり、前記二酸化ケイ素は、前記ボイラ内で前記パームヤシ殻とともに燃焼される前記流動媒体としての前記砂由来であるものとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも燃焼したパームヤシ殻であるパームヤシ殻燃焼灰を含有し、
前記パームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウムおよび二酸化ケイ素を含有する
土質改良材。
【請求項2】
前記パームヤシ殻燃焼灰は、
前記酸化カルシウムを15~50重量%含有し、
前記二酸化ケイ素を30~60重量%含有し、
前記酸化カルシウムおよび前記二酸化ケイ素の合計含有量が90重量%以下である
請求項1記載の土質改良材。
【請求項3】
前記パームヤシ殻燃焼灰は、
パームヤシ殻をボイラで燃焼させる火力発電設備から排出されたものであり、
前記ボイラは、砂を流動媒体とする流動層を備えて600℃よりも高温で燃焼させるものであり、
前記二酸化ケイ素は、前記ボイラ内で前記パームヤシ殻とともに燃焼される前記流動媒体としての前記砂由来である
請求項1または2記載の土質改良材。
【請求項4】
高炉スラグ微粉末を含有する
請求項1、2、または3記載の土質改良材。
【請求項5】
ペーパースラッジ灰を含有する
請求項1から4いずれか1つに記載の土質改良材。
【請求項6】
請求項1から4いずれか1つに記載の土質改良材の製造方法であって、
砂を流動媒体とする流動層を備えたボイラにより600℃よりも高温でパームヤシ殻を前記流動媒体と共に燃焼させ、
前記燃焼により得られる前記砂由来の前記二酸化ケイ素と、前記パームヤシ殻由来の酸化カルシウムとを含有する前記パームヤシ殻燃焼灰を得、
当該パームヤシ殻燃焼灰を主成分とする土質改良材を得る
土質改良材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載の土質改良材を、土砂に混合または散布する土質改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土砂に混合または散布して使用する土質改良材および土質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場等において、地盤として利用したい土砂が非常に軟弱である、建築中に雨が降る等して地盤が水を含むなどした場合、ひどいときには汚泥とも言えるような土質を固化しなければならない。このような場合には、土砂に混合または散布することで軟弱になった土砂を固化する土質改良材が使用されてきた。
【0003】
このような、土質改良材として、2型無水石膏に少量のセメントを加えてなる土質改良固化材が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1のような大量の石膏にセメントを混合したような土質改良材は、土質改善までに時間がかかり、土砂内部に水分が残留するため再泥化しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑みて、環境にやさしく、高い土質改善効果を有する土質改良材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、少なくとも燃焼したパームヤシ殻であるパームヤシ殻燃焼灰を含有し、前記パームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウムおよび二酸化ケイ素を含有する土質改良材および土質改良方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、環境にやさしく高い土質改善効果を有する土質改良材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】パームヤシ殻から土質改良材を作製するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
出願人は、火力発電所から排出される燃焼灰の有効利用をするべく、鋭意研究している。例えば、石炭灰を加熱改質して高品質のフライアッシュにする加熱改質装置の開発も行い、特許権も取得している。
ここで、従来、火力発電においては、エネルギー効率の点から一般的には石油等の化石燃料が使用されていた。しかし、化石燃料は燃焼した際に発生する二酸化炭素量が多く、地球温暖化が進行するとして、環境負荷が低い別の燃料が検討されてきた。その中でも、植物を燃料として使用するバイオマス発電は、植物の成長過程で吸収する二酸化炭素が、燃料使用時に燃焼させた際に発生する二酸化炭素よりも多い(カーボンニュートラル)という考えの元、環境負荷が低い火力発電として普及が進んでいる。
【0011】
しかし、バイオマス発電は燃料に植物を使用することから、一定量の燃焼灰が発生する。発生する燃焼灰は産業廃棄物として扱われ、一般に埋め立て処理がされているが、広大な埋め立て地の確保が必要という問題があった。
このようなバイオマス発電で発生する燃焼灰の有効利用について、出願人は鋭意研究した。そして、パームヤシ殻を用いた火力発電にて排出されるパームヤシ殻燃焼灰(PKS灰)を用いた土質改良材を発明した。
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0012】
本発明の土質改良材は、原料としてパームヤシ殻燃焼灰を使用する。パームヤシ殻燃焼灰は、パームヤシ殻を高温で燃焼して灰化させたものであって、主にパームヤシ殻を燃料とする火力発電(バイオマス発電)の副産物として生成される。
【0013】
パームヤシ殻を燃料とした火力発電は、様々な種類のボイラを採用できるが、本発明で使用するパームヤシ殻燃焼灰の取得先火力発電施設は、流動媒体として砂を使用する流動層(床)を備えるボイラを使用していることが好ましく、さらにボイラが流動媒体として砂を強制的に循環させる機構を備えていることがより好ましく、その中でも循環流動層(床)ボイラを使用していることが好適である。
【0014】
図1は、循環流動層ボイラ10の構成を示す概略構成図である。
循環流動層ボイラ10は、燃料を供給する燃料供給口11と、ケイ砂により構成されたベッド材12と、燃料およびベッド材12の燃焼を行う火炉13と、火炉13内に空気を流入する空気流入路14と、火炉13の上部側面に設けられた火炉出口15と、火炉13内での燃焼により発生した燃焼ガス中に含まれる灰とその灰と共に流動してきた一部のベッド材12とを捕集および分離するサイクロン16と、燃焼ガスを微粉末とともに排気する排気路17と、サイクロン16の底部および火炉13の下部側面に連通した灰戻し管18とを備える。
【0015】
本実施例において燃料供給口11から投入される燃料は、パームヤシ殻である。パームヤシ殻は、パームヤシと呼ばれるヤシの種子殻であって、パーム油を生産する過程で発生する残渣である。パームヤシ殻にはカルシウム成分と抽出されずに残った微量のパーム油とが含まれることから燃焼効率が高く、バイオマス発電の農業系バイオマス燃料として好適である。
【0016】
ベッド材12は、例えばケイ砂で構成される。ベッド材12は、火炉13の下部から吹き込まれる空気によって火炉内で上下に流動する。ベッド材12には、ケイ砂に加えて排煙脱硫のための石灰石を使用してもよい。
【0017】
火炉13は、備え付けの加熱装置によって内部が高温に加熱される。このときの火炉13内の温度は、十分な熱量の確保と、灰の発生量の観点から、600~1100℃とすることができ、700~900℃とすることが好ましい。
【0018】
空気流入路14は、火炉13の下部に備えられている。空気流入路14を通して火炉13の内部に空気を吹き込む。吹き込まれた空気によってベッド材12(ケイ砂)および燃料(パームヤシ殻)が火炉13内を上下に流動し、火炉13内の温度をできるだけ均等に保持する。
【0019】
火炉出口15は、火炉13の上部側面に備えられている。火炉出口15が備えられる高さとしては、パームヤシ殻およびベッド材12が流動している高さよりも高い位置とすることが好ましい。パームヤシ殻およびベッド材12は、火炉13内で燃焼され、燃料時よりも粒度が小さく重量が軽いパームヤシ殻燃焼灰となり、燃焼によって発生した燃焼ガスとともに火炉出口15から連通するサイクロン16に運搬される。
【0020】
サイクロン16は、火炉13から火炉出口15を通して運搬されたパームヤシ殻燃焼灰について、比較的粗粒なパームヤシ殻燃焼灰を沈降させ、粗粒なパームヤシ殻燃焼灰と微細なパームヤシ殻燃焼灰とを分離する。粗粒なパームヤシ殻燃焼灰はサイクロン16の底部に連通した灰戻し管18を通して、再び火炉13の底部に供給される。一方、微細なパームヤシ殻燃焼灰は、燃焼ガスとともに排気路17に導入される。
【0021】
排気路17に導入された燃焼ガスおよびパームヤシ殻燃焼灰は、図示省略する対流伝熱部を経てバグフィルターまたは電気集塵機を使用して燃焼ガスとパームヤシ殻燃焼灰とを分離される。分離された燃焼ガスは、含有する硫黄酸化物を脱硫処理によって取り除かれ、排煙として大気中に放出される。脱硫処理の方法としては石灰を用いる方法が一般的に用いられている。ベッド材12に石灰石を含有していた場合は、燃焼段階で脱硫処理が完了しているため、燃焼ガスの脱硫処理は行わなくてもよい。
【0022】
分離されたパームヤシ殻燃焼灰は産業廃棄物として回収され、一般には指定された埋め立て地にて埋め立て処理される。
【0023】
図2は、パームヤシ殻から土質改良材を作製するフローのフローチャートである。
【0024】
循環流動層ボイラ10は、火力発電の燃料として、パームヤシ殻が火力発電施設内に備えられたボイラに投入され、このパームヤシ殻をベッド材とともに燃焼する(ステップS1)。このとき、燃料としてパームヤシ殻に加えて木質系バイオマス燃料を使用してもよい。木質系バイオマス燃料としては、例えばウッドペレットが使用できる。燃料に含まれる木質系バイオマスの量は、混焼比率として50%以下とすることが好ましく、10重量%以下とすることがより好ましく、3~5重量%とすることが好適である。
【0025】
循環流動層ボイラ10は、パームヤシ殻燃焼灰を排出する。この排出されたパームヤシ殻燃焼灰を作業員が火力発電の施設から回収する(ステップS2)。このとき、排出される全てのパームヤシ殻燃焼灰を回収することが好ましい。パームヤシ殻燃焼灰の粒度は、40μm以下とすることができ、分級機を使用して15μm以下に調整することが好ましく、1~10μmとすることがより好ましい。
【0026】
また、原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウム成分を15~50重量%含んでいる。含まれる酸化カルシウムは、火力発電の燃料としたパームヤシ殻に元来含まれているカルシウム成分由来の酸化物質である。なお、土質改良材を使用する対象の土砂状態や、パームヤシ殻に含まれているカルシウム成分の量に応じて、上記範囲内に収まるよう適宜酸化カルシウムの由来物質を添加しても良い。使用できる酸化カルシウムの由来物質としては、例えば脱硫処理の際に使用する石灰石が挙げられる。この場合、脱硫処理に使用された石灰石から放出される酸化カルシウムを適宜収集して使用することができる。循環流動層ボイラ10の形式によっては、この脱硫処理時に生じた酸化カルシウムが混合されたパームヤシ殻燃焼灰が排出されるため、この石灰石由来の酸化カルシウムが混合されたパームヤシ殻燃焼灰をそのまま利用してもよい。
【0027】
また、原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、二酸化ケイ素成分を30~60重量%含んでいる。含まれる二酸化ケイ素は、火力発電のベッド材としたケイ砂由来の成分である。そして、パームヤシ殻燃焼灰に含まれる酸化カルシウム成分および二酸化ケイ素成分は、その合計割合がパームヤシ殻燃焼灰全体の90重量%以下とすることができる。
【0028】
作業員は、回収したパームヤシ殻燃焼灰に、高炉スラグ微粉末を添加し、均一となるよう混合する(ステップS3)。高炉スラグ微粉末はブレーン比表面積を2000cm2/g以上とすることが好ましく、4000cm2/g以上とすることがより好ましい。
【0029】
さらに、作業員は、パームヤシ殻燃焼灰にペーパースラッジ灰を添加し、均一となるよう混合する(ステップS4)。ペーパースラッジ灰は、製紙工程(紙の製造工程)で発生する紙製廃棄物を燃焼して多孔質な灰としたものである。
【0030】
ステップS3とステップS4は、その順序を自由に設定できる。また、同時に行ってもよい。すなわち、高炉スラグ微粉末とペーパースラッジ灰は、どちらから添加および混合してもよいし、同時に添加および混合してもよい。しかし、作業手順の簡略化の観点から、高炉スラグ微粉末とペーパースラッジ灰を同時に添加および混合することが好ましい。
【0031】
なお、ステップS4では、ペーパースラッジ灰に代わり、セメント、石膏、石灰、またはフライアッシュ(石炭燃焼灰)を使用してもよい。しかし、優れた土質改良材を得られることから、ペーパースラッジ灰を使用することが好ましい。
【0032】
高炉スラグ微粉末の添加量は、全添加物添加後の重量割合を30重量%以下となるよう添加することが好ましく、5~20重量%となるよう添加することがより好ましく、10重量%となるよう添加することが好適である。また、ペーパースラッジ灰の添加量は、全添加物添加後の重量割合を40重量%以下となるよう添加することが好ましく、10~40重量%となるよう添加することがより好ましく、20重量%となるよう添加することが好適である。
【0033】
このようにして、パームヤシ殻燃焼灰に適宜の素材を混合したパームヤシ殻燃焼灰混合粉が得られ、これを土質改良材とすることができる。
作製した土質改良材は、地盤として利用したいが水分を含んで軟弱な土砂や、建築中に雨が降る等して水を含んだ土砂に3重量%以上となるよう混合または散布して使用できる。土質改良材の土砂への混合量は、対象とした土砂に含まれる水分量によって適宜調整できる。例えば、土砂の含水量が40%であった場合は、土質改良材を20重量%となるように混合することが好ましい。なお、土質改良材を使用する現場への運搬の際は、降雨等まとまった水分に接触しないように注意することが好ましい。
【0034】
以上の構成により、環境にやさしく高い土質改善効果を有する土質改良材を提供することができる。すなわち、得られた土質改良材は、適宜の土砂や土等に混合させて使用しても固形を維持することができ、雨等の水分によって再泥化することもなく、高い土質改善効果を発揮できる。
【0035】
本発明の土質改良材は、燃焼したパームヤシ殻であるパームヤシ殻燃焼灰を原料としている。パームヤシ殻は火力発電の中でも環境負荷が小さいバイオマス発電の燃料となり、本発明の土質改良材の原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、パームヤシ殻を燃料としたバイオマス発電の発電工程で発生する副産物を使用できる。この構成により、廃棄物削減を実現でき、環境にやさしい土質改良材を提供できる。
【0036】
また、本発明の土質改良材の原料とするパームヤシ殻燃焼灰には、酸化カルシウムが含まれている。この構成により、本発明の土質改良材を土砂に対して使用した際に高い固化および造粒作用を発揮できる。すなわち、酸化カルシウムが土中に含まれる水分を容易に吸収して反応して水酸化カルシウム(消石灰)となり、さらに水酸化カルシウムが炭酸化して硬化反応を起こすため、この反応を利用して固化および造粒作用を発揮できる。これは、炭酸化硬化反応によるものと考えられる。
【0037】
さらに、本発明の土質改良材の原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウムを15~50重量%含有する。この構成により、ほどよい固化および造粒作用を発揮できる。具体的には、降雨等で再泥化することがなく、一方で人の手で握ると簡単にほぐれてサクサクとする感触を実現できる。特に、高温(600℃以上とすることができ、800℃以上とすることが好ましい)で燃焼させたパームヤシ殻燃焼灰であり、かつ、同じく高温(600℃以上とすることができ、800℃以上とすることが好ましい)で燃焼させたケイ砂(流動媒体)由来の二酸化ケイ素が含有されているため、単にパームヤシ殻を燃やした灰と二酸化ケイ素を混合したようなものと異なり格別な土質改良機能を発揮することができる。また、酸性土を中性化することができる。
【0038】
また、土質改良材の原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、二酸化ケイ素が30~60重量%含まれており、二酸化ケイ素と酸化カルシウムの合計重量はパームヤシ殻燃焼灰全体における90重量%以下となっている。この構成により、混合後の土砂に対してほどよい固化および造粒作用を発揮できる。これは、二酸化ケイ素と水酸化カルシウムによるポゾラン反応によるものと考えられる。
【0039】
また、土質改良材の原料とするパームヤシ殻燃焼灰は、粒径が1~10μmとなるよう分級機によって調整しても良い。この構成により、混合先の土砂の固化および造粒速度を向上させ、材齢24~48時間における強度発現性を高めることができる。
【0040】
また、本発明の土質改良材は、パームヤシ殻燃焼灰に含まれる六価クロム等の重金属が土中に溶出することを防止することができる。すなわち、パームヤシ殻燃焼灰は、主に六価クロムといった重金属を0.005~0.3mg/L程度含有している。そのため、土質改良材として使用した際に重金属成分が土中に溶出する恐れがある。これに対して、本発明の土質改良材は、原料であるパームヤシ殻燃焼灰に高炉スラグ微粉末を添加および混合している。この構成により、パームヤシ殻燃焼灰に含まれる六価クロム等の重金属が土中に溶出することを防止することができる。詳述すると、パームヤシ殻燃焼灰のアルカリ刺激により高炉スラグ微粉末の潜在水硬性が活発化し、硬化を促進することで重金属成分を固定化することができ、これによって重金属の溶出を防止できる。
【0041】
また、高炉スラグ微粉末の添加においては、添加後の重量割合が30重量%以下となるよう添加量を調整している。この構成により、混合先の土砂の固化速度の低下を抑制することができる。
【0042】
さらに、添加および混合する高炉スラグ微粉末はブレーン比表面積が2000g/cm2以上とすることができ、4000程度がとすることが望ましい。比表面積を有している。この構成により、高炉スラグ微粉末がほどよい反応性を示し、パームヤシ殻燃焼灰に含まれる重金属成分に対して固定化能力を十分に発揮することができる。
【0043】
また、本発明の土質改良材は、原料であるパームヤシ殻燃焼灰にペーパースラッジ灰を添加および混合している。この構成により、混合先の土砂の固化速度および造粒速度を向上させることができる。これは、ペーパースラッジ灰が多孔質であり、高い吸水性を有するためである。
【0044】
さらに、ペーパースラッジ灰の添加においては、添加後の重量割合が10~40重量%の範囲となるよう添加量を調整している。この構成により、混合先の土砂の固化速度をほどよい速度にすることができる。すなわち、ペーパースラッジ灰の添加量が20重量%より少ないと十分な固化速度とならず、40重量%より多いと固化速度が速すぎて施工性が悪化するが、上記添加量の調整によって適切な固化速度となり良好な施工性が得られる。
【0045】
また、原料であるパームヤシ殻燃焼灰の作製において、パームヤシ殻を燃焼させる際に、混焼比率50重量%以下の範囲で木質系バイオマス燃料を添加できる。この構成により、土質改良材の性能を維持しながら、パームヤシ殻の量に対してより多くの土質改良材を得ることができる。すなわち、使用するパームヤシ殻を節約することができる。
【0046】
また、本発明の土質改良材は、土砂と混合する前にパームヤシ殻燃焼灰、高炉スラグ微粉末、およびペーパースラッジ灰を均一になるよう混合している。この構成により、土質改良材を土砂に混合した際に、固化速度のバラつきを抑えることができる。
【0047】
また、本発明の土質改良材は、燃料をパームヤシ殻として、ケイ砂をベッド材として使用する流動層を備えたボイラによって燃焼し、生成したパームヤシ殻燃焼灰を原料としている。この構成により、原料のパームヤシ殻燃焼灰は二酸化ケイ素を30~60重量%含有し、土質改良材の原料として好適に使用できる。
【0048】
また、本発明の土質改良材は、混合先の土砂に対して重量比が3重量%以上となるよう混合または散布される。この構成により、土砂をほどよく固化および造粒させ、土質を十分に改善することができる。
<実施例>
【0049】
燃料としてパームヤシ殻、ベッド材としてケイ砂を使用し、火炉内温度を700~900℃に調整した循環流動層ボイラにおいて、生成したパームヤシ殻燃焼灰を取得した。
【0050】
取得したパームヤシ殻燃焼灰を、分級機を使用して分級し、粒径が1~10μmとなるよう調整した。
【0051】
分級したパームヤシ殻燃焼灰に、ブレーン比表面積4000cm2/gの高炉スラグ微粉末と、ペーパースラッジ灰とを添加および混合し、土質改良材とした。それぞれの添加量は、混合後の重量比がパームヤシ殻燃焼灰70重量%、高炉スラグ微粉末10重量%、ペーパースラッジ灰20重量%となるよう調整した。
【0052】
このようにして作成した土質改良材を、含水比40%の土砂に対して20重量%混合して改良土としたところ、材齢24時間で改良土のコーン指数は800kN/m2以上となった。これにより、土質区分基準による区分が第2種建設発生土(コーン指数800kN/m2以上)となる土質改良材を」得ることができた。また、土質改良材に含まれる重金属の、土中への溶出量は0.05mg/L以下であった。これにより、六価クロム化合物が環境省の土壌環境基準(第2種有害物質)に定められている0.05mm以下となり、さらに、土質改良後の改良土を降雨に晒してみたが再泥化は確認できなかった。
【0053】
なお、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、本実施例におけるパームヤシ殻燃焼灰は、発電所の排煙に含まれる微細な燃焼灰をバグフィルターまたは電気集塵機で回収したものとしたが、サイクロンで沈降した粗粒な燃焼灰に対して分級を行い、粗粒な燃焼灰の中でも比較的微細な燃焼灰を回収してもよい。
また、パームヤシ殻燃焼灰に重金属が含まれていない場合には、高炉スラグを省略してもよい。この場合でも同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、土砂に混合または散布して使用する土質改良材の産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…循環流動層ボイラ
11…燃料供給口
12…ベッド材
13…火炉
14…空気流入路
15…火炉出口
16…サイクロン
17…排気路
18…灰戻し管
【手続補正書】
【提出日】2020-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも燃焼したパームヤシ殻を含むパームヤシ殻燃焼灰を含有し、
前記パームヤシ殻燃焼灰は、
酸化カルシウムを15~50重量%含有し、
二酸化ケイ素を30~60重量%含有し、
前記酸化カルシウムおよび前記二酸化ケイ素の合計含有量が90重量%以下である
土質改良材。
【請求項2】
前記パームヤシ殻燃焼灰は、
パームヤシ殻をボイラで燃焼させる火力発電設備から排出されたものであり、
前記ボイラは、砂を流動媒体とする流動層を備えて600℃よりも高温で燃焼させるものであり、
前記二酸化ケイ素は、前記ボイラ内で前記パームヤシ殻とともに燃焼される前記流動媒体としての前記砂由来である
請求項1記載の土質改良材。
【請求項3】
請求項1または2記載の土質改良材の製造方法であって、
砂を流動媒体とする流動層を備えたボイラにより600℃よりも高温でパームヤシ殻を前記流動媒体と共に燃焼させ、
前記燃焼により得られる前記砂由来の前記二酸化ケイ素と、前記パームヤシ殻由来の酸化カルシウムとを含有する前記パームヤシ殻燃焼灰を得、
当該パームヤシ殻燃焼灰を主成分とする土質改良材を得る
土質改良材の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2、または3記載の土質改良材を、土砂に混合または散布する土質改良方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
この発明は、少なくとも燃焼したパームヤシ殻を含むパームヤシ殻燃焼灰を含有し、前記パームヤシ殻燃焼灰は、酸化カルシウムを15~50重量%含有し、二酸化ケイ素を30~60重量%含有し、前記酸化カルシウムおよび前記二酸化ケイ素の合計含有量が90重量%以下である土質改良材および土質改良方法であることを特徴とする。