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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022056
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】寸法安定性に優れた複合樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20220127BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20220127BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20220127BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20220127BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L55/02
C08K7/04
C08L25/08
C08K7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020196349
(22)【出願日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0090851
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 相 鮮
(72)【発明者】
【氏名】李 ハン ソル
(72)【発明者】
【氏名】徐 敬 培
(72)【発明者】
【氏名】徐 敏 植
(72)【発明者】
【氏名】姜 寅 錫
(72)【発明者】
【氏名】魯 完 起
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰 漢
(72)【発明者】
【氏名】金 東 賢
(72)【発明者】
【氏名】金 惠 麟
(72)【発明者】
【氏名】李 衡 柱
(72)【発明者】
【氏名】洪 承 秀
(72)【発明者】
【氏名】李 東 昶
(72)【発明者】
【氏名】李 炯 ミン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB21Z
4J002BC10Z
4J002BC12Z
4J002BN15Y
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL06X
4J002DA016
4J002DJ006
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD067
4J002FD077
4J002FD097
4J002FD137
4J002FD167
4J002FD177
4J002FD20Z
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】寸法安定性が改善し、且つ長繊維強化プラスチックと同等以上の物性を有する複合樹脂組成物、及びこれを含む成形品を提供する。
【解決手段】複合樹脂組成物は、半晶質ポリアミドと、非晶質ポリアミドと、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene;ABS)樹脂と、相溶化剤と、強度補強剤とからなり、前記半晶質ポリアミド30~59重量%と、前記非晶質ポリアミド5~20重量%と、前記ABS樹脂5~30重量%と、前記相溶化剤0.5~5重量%と、前記強度補強剤30~50重量%とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半晶質ポリアミドと、
非晶質ポリアミドと、
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene;ABS)樹脂と、
相溶化剤と、
強度補強剤と、を含むことを特徴とする複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記半晶質ポリアミド30~59重量%と、
前記非晶質ポリアミド5~20重量%と、
前記ABS樹脂5~30重量%と、
前記相溶化剤0.5~5重量%と、
前記強度補強剤30~50重量%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
耐光性安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、滑剤、核剤、離型剤、金属イオン安定化剤、難燃剤、染料、及び顔料からなる群から選択された1種以上を含む添加剤0.1~10重量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記半晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が2.0~2.7であることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記半晶質ポリアミドは、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記非晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が1.7~2.4であることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記ABS樹脂は、220℃、10kg荷重の条件の下でメルトフローインデックス(Melt Flow Index)が15~40g/minであることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記相溶化剤は、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記強度補強剤は、平板形ガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項10】
前記平板形ガラス繊維の断面の縦横比が2~4:1であることを特徴とする請求項9に記載の複合樹脂組成物。
【請求項11】
前記平板形ガラス繊維は、SiO、及びAlからなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合樹脂組成物。
【請求項12】
前記強度補強剤は、カップリング剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の複合樹脂組成物を含んで製造されることを特徴とする成形品。
【請求項14】
自動車パノラマサンルーフフレームであることを特徴とする請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寸法安定性及び剛性に優れた複合樹脂組成物に係り、より詳しくは、軽量化が可能な複合樹脂組成物及びこれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野では、高強度、高機能性の高分子素材が要求される分野が拡大しており、これに応えて難燃性、寸法安定性、耐衝撃性、軽量化、耐トラッキング性などが改善したプラスチック素材の需要が増加している。
一方、熱可塑性樹脂としてポリアミド(Polyamide)はエンジニアリングプラスチックの一種であり、熱安定性及び機械的剛性が高いという利点があるため、多様な産業分野に使われてきた。しかし、湿った環境での加水分解による物性低下、及び射出加工後の寸法安定性が悪く、使用範囲が制限されてきた。
【0003】
このようなポリアミド樹脂の寸法安定性を改善するために、近年には長繊維強化プラスチック(LFT)工法をポリアミドに適用した機能性樹脂が生産されている。ただ、長繊維強化プラスチックは、機能性添加剤を添加した1次押出加工の後、2次的に長繊維にプラスチックを含浸させる追加の工程を経なければならないので、工程の費用が高騰する欠点を有している。また、LFT工法が適用された素材は溶融状態で流動性が非常に低く、高分子素材を高熱で溶融する過程が繰り返されるため、素材の劣化によって最終成形製品でガスが発生する虞がある。
このような従来技術を克服するために、寸法安定性が改善した上、長繊維強化プラスチックと同等以上の性能を有する樹脂組成物及びその成形品の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0055223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、寸法安定性が改善しながらも長繊維強化プラスチックと同等以上の物性を有する、半晶質ポリアミド、非晶質ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene;ABS)樹脂、相溶化剤、及び強度補強剤を含む複合樹脂組成物及びこれを含む成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例による複合樹脂組成物は、半晶質ポリアミドと、非晶質ポリアミドと、ABS樹脂と、相溶化剤と、強度補強剤とを含むことを特徴とする。
【0007】
前記複合樹脂組成物は、前記半晶質ポリアミド30~59重量%と、前記非晶質ポリアミド5~20重量%と、前記ABS樹脂5~30重量%と、前記相溶化剤0.5~5重量%と、前記強度補強剤30~50重量%とを含むことが好ましい。
前記複合樹脂組成物は、耐光性安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、滑剤、核剤、離型剤、金属イオン安定化剤、難燃剤、染料、及び顔料からなる群から選択された1種以上を含む添加剤0.1~10重量%をさらに含むことができる。
【0008】
前記半晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が2.0~2.7であることがよい。
前記半晶質ポリアミドは、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0009】
前記非晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が1.7~2.4であることがよい。
前記ABS樹脂は、220℃、10kg荷重の条件の下でメルトフローインデックス(Melt Flow Index)が15~40g/minであることがよい。
前記相溶化剤は、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体を含むことができる。
【0010】
前記強度補強剤は、平板形ガラス繊維を含むことができる。
前記平板形ガラス繊維の断面の縦横比が2~4:1であることが好ましい。
【0011】
前記平板形ガラス繊維は、SiO、及びAlからなる群から選択された1種以上を含むことができる。
前記強度補強剤は、カップリング剤をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例による成形品は、前記複合樹脂組成物を含んで製造されることを特徴とする。
前記成形品は、自動車パノラマサンルーフフレームであることがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、本発明の複合樹脂組成物及びこれを含む成形品は、従来の長繊維強化プラスチックに比べ、剛性が同等以上に優れるだけでなく、寸法安定性に特に優れているので、自動車部品、電機電子、産業材の分野で広く活用可能であり、特に、自動車部品の中でパノラマサンルーフフレームのように高剛性及び寸法安定性が要求され、美麗な外観が要求される大型射出成形製品の部品に使用される。また、本発明による複合樹脂組成物及びこれを含む成形品は、既存にスチールが適用されていた部品も代替することが可能であり、この場合、軽量化効果は約30%の水準に重さを減らすことができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例による複合樹脂組成物は、半晶質ポリアミド、非晶質ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene;ABS)樹脂、相溶化剤、及び強度補強剤を含むことができ、添加剤をさらに含むことができる。好ましくは、前記複合樹脂組成物は、前記半晶質ポリアミド30~59重量%、前記非晶質ポリアミド5~20重量、前記ABS樹脂5~30重量、前記相溶化剤0.5~5重量%、及び前記強度補強剤30~50重量%を含むことができ、添加剤0.1~10重量%をさらに含むことができる。
【0015】
すなわち、本発明の一実施例による複合樹脂組成物は前記成分を前記含量で含むことにより、これから製造された成形品は、従来の長繊維強化プラスチックに比べ、剛性が同等な水準以上に優れるだけでなく、寸法安定性に特に優れるので、自動車部品、電機電子、産業材の分野で広く活用可能となる利点がある。
【0016】
本発明の一実施例による半晶質ポリアミドはベース樹脂であり、骨格に結晶可能な部分及び非晶質部分を含むポリアミドであれば特に制限されない。
前記非晶質部分は非晶質重合体物質が無作為にもつれた鎖を含むことができ、前記結晶可能な部分は結晶質物質が重合体鎖の秩序ある配列にパッキングされた領域を含むことができる。ここで、このような結晶質領域は非晶質重合体マトリックスに埋め込まれる。
【0017】
本発明の一実施例による半晶質ポリアミドは、本発明で使える通常の半晶質ポリアミド樹脂、すなわちカプロラクタムを単量体から重合することができ、-[CONH]-のアミド結合によって主鎖を構成する半結晶性の線状高分子であり、好ましくは脂肪族ポリアミド、例えばポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド8、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12及びこれらの任意の組合せからなる群から選択された1種以上を含むことができ、より好ましくは粘度が低く大型部品に対する射出成形性及び表面特性に優れた相対粘度(Relative viscosity)が2.4以下であるポリアミド6を含むことである。
【0018】
本発明の一実施例による半晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が2.0~2.7である。前記半晶質ポリアミドの相対粘度が2.0未満であれば半晶質ポリアミドを含む複合樹脂組成物を含む成形品の機械的強度が低下する虞があり、相対粘度が2.7を超えれば非晶質ポリアミドとABS樹脂との流動性差によって複合樹脂の合金(Alloy)特性が低下して成形品の外観が低下する虞がある。
【0019】
本発明の一実施例による半晶質ポリアミドの含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、30~59重量%である。前記半晶質ポリアミドの含量が30重量%未満であればこれを含む複合樹脂組成物から成形品を製造するときに成形性に問題が生じて正常に成形できなくなる虞があり、59重量%を超えればこれを含む成形品の機械的物性が低下し構造部材として使えなくなる虞がある。
本発明の一実施例による半晶質ポリアミドは、前記相対粘度で、及び前記含量で全体複合樹脂組成物に含まれることにより、これを含む成形品の剛性及び寸法安定性の特性が保存され、低粘度による合金(Alloy)特性の向上によって成形品の優れた品質を維持することができる。
【0020】
本発明の一実施例による非晶質ポリアミドは、これを含む複合樹脂組成物及び成形品の結晶化速度を遅延させて最終産物である成形品の優れた表面外観をもたらすことができるものであれば特に制限されない。
本発明の一実施例による非晶質ポリアミドは、本発明で使える通常の非晶質ポリアミドであり、すなわち優れた透明性、ガス、例えばO及びCO、水、溶媒などに対する優れた障壁特性を有するもので、例えばポリフタルアミドは、テレフタル酸モノマーがイソフタル酸に置換された形態を有する高分子であり、好ましくは非晶質特性を有し、半結晶性樹脂と混合して使用するとき、射出成形品の表面特性と寸法安定性を劇的に向上させることができる特性を有するPA6Iである。
【0021】
本発明の一実施例による非晶質ポリアミドは、98%硫酸溶媒で測定した相対粘度(Relative viscosity)が1.7~2.4であり、ガラス転移温度が100~130℃である。前記非晶質ポリアミドの相対粘度が1.7未満であればこれを含む成形品の機械的な剛性が低下する虞があり、相対粘度が2.4以上であれば本発明による非結晶質ポリアミド及びABS樹脂との流動性差によって合金(Alloy)特性が落ちて成形品の外観が低下する虞がある。また、前記非晶質ポリアミドのガラス転移温度が100℃未満であれば射出サイクルタイム(Cycle Time)に影響を与えて生産効率が低下する虞があり、130℃を超えれば射出成形品の外観品質を低下させる虞がある。
【0022】
本発明の一実施例による非晶質ポリアミドの含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、5~20重量%、好ましくは5~15重量%である。前記非晶質ポリアミドの含量が5重量%未満であれば寸法安定性及び外観改善の効果が小さく、20重量%を超えれば成形品に射出するときに冷却速度が遅く、サイクルタイム(Cycle Time)の増加によって生産性が落ちる虞がある。
本発明の一実施例による非晶質ポリアミドは、前記の相対粘度及び前記含量で全体複合樹脂組成物に含まれることにより、これを含む成形品の寸法安定性を向上させることができるので、射出加工された成形品の反りが発生するなどの問題点を解決することができる。また、半晶質ポリアミドと複合樹脂組成物を製造するとき、半晶質ポリアミドの結晶化の制御によって成形品の外観を改善することができる。
【0023】
本発明の一実施例によるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-butadiene-styrene;ABS)樹脂はアクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)及びスチレン(Styrene)の3単量体から重合された三元共重合体であり、好ましくはポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)である。
本発明の一実施例によるABS樹脂は、220℃、10kg荷重の条件の下でメルトフローインデックス(Melt Flow Index)が15~40g/min、好ましくは20~35g/minである。前記ABS樹脂のメルトフローインデックスが15g/min未満であれば樹脂の射出表面の外観特性が低下する虞があり、40g/minを超えれば素材の機械的物性が減少する虞がある。
【0024】
本発明の一実施例によるABS樹脂の含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、5~30重量%、好ましくは10~30重量%である。前記ABS樹脂の含量が5重量%未満であれば寸法安定性の効果が小さく、30重量%を超えれば機械的物性及び耐熱性が低下する虞がある。
本発明の一実施例による相溶化剤は、前記半晶質ポリアミド、非晶質ポリアミド、及びABS樹脂の間の合金(Alloy)特性を向上させるものであれば特に制限されない。すなわち、本発明の一実施例によるポリアミド樹脂は、基本的に主鎖上に-[CONH]-の極性のアミド結合を有するが、ABS樹脂は非極性樹脂であり、互いに相溶特性が低いので、相溶化剤なしには剛性、製品外観及び寸法安定性が低下する虞がある。
【0025】
本発明の一実施例による相溶化剤は本発明で使える通常の相溶化剤であり、例えばスチレン-N-フェニルマレイミド共重合体、マレイン酸がグラフトされたポリスチレン、及びマレイン酸がグラフトされたポリエチレンなどからなる群から選択された1種以上を含むことができ、特定の成分を含むものに制限されないが、好ましくはABSを合金して樹脂の耐熱性が低下することを改善したスチレン-N-フェニルマレイミド共重合体を含むことがよい。
前記スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体は、好ましくは化学式1で表示される化合物を含むものである。
【化1】
ここで、前記xは10重量%~30重量%、yは50重量%~90重量%、zは0.5重量%~5重量%である。
【0026】
すなわち、前記スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体は、ABS樹脂との複合性を向上させるスチレンとポリアミド樹脂との複合性に優れたマレイン酸を単量体として含ませて製造したので、ポリアミド樹脂とABS樹脂の相溶特性を向上させることができる。
本発明の一実施例による相溶化剤は、相溶化剤全体100重量%を基準に、スチレン単量体50~90重量%、イミド単量体10~30重量%、及びマレイン酸単量体0.5~5重量%の含量で製造することができる。スチレン単量体の含量が50重量%未満であればABSとの相溶性が低下して射出品の外観及び機械的物性が低下する虞があり、90重量%を超えればイミド単量体の含量が減少し、耐熱性及び粘度特性が低下して合金特性が減少する虞がある。また、イミド単量体の含量が10重量%未満であれば耐熱性が低下する虞があり、30重量%を超えれば相溶化剤の耐熱性があまりにも上昇して加工が制限される虞がある。また、マレイン酸単量体の含量が0.5重量%未満であればポリアミド樹脂との相溶性が落ちて機械的物性が低下する虞があり、5重量%を超えれば素材の粘度があまりにも高くなって射出品の外観が低下し、射出の際にガスが発生する虞がある。
【0027】
本発明の一実施例による相溶化剤の含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、0.5~5重量%である。前記相溶化剤の含量が0.5重量%未満であれば相溶性が落ちて素材の機械的物性及び射出品の外観が低下する虞があり、5重量%を超えれば過多な相溶化剤の含量によってむしろ機械的物性が低下し、射出の際にガスを発生させる虞がある。
本発明の一実施例による強度補強剤は、これを含む成形品の寸法安定性を改善させることができるものであれば、特に制限されない。
【0028】
本発明の一実施例による強度補強剤は、本発明で使える通常の強度補強剤、例えばガラス繊維、炭素繊維、及び玄武岩系繊維(Basalt fiber)からなる群から選択された1種以上を含むことができ、特定の成分を含むものに制限されないが、好ましくは剛性に優れ価格で競争力があるガラス繊維を含むことである。
前記ガラス繊維の断面は平板形及び円形からなる群から選択された一つ以上の断面を含むことができ、特定の断面に制限されないが、前記円形は射出流動方向に対するx-y-z軸の収縮率差によって射出された成形品で反り(Warpage)が発生し易いので、反りを改善させることができる平板形を有することが好ましい。前記断面が平板形であるガラス繊維は任意の非円形横断面、例えば楕円形断面、長円形(oblong-circular)断面、長方形断面、半円が長方形の2短辺に連結された断面、及び繭型(cocoon)断面を有することができ、特定の平板形断面に制限されない。
【0029】
前記平板形ガラス繊維の断面の縦横比(横/縦)は2~4:1、好ましくは4:1である。前記平板形ガラス繊維の断面の縦横比(横/縦)は、平板形を有するガラス繊維の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して得た像を分析し、平板形有するガラス繊維の断面に外接する長方形を描くことによって測定することができる。縦横比は横(Raの長さ)/縦(Rbの長さ)(ここで、横及び縦は観察された各像で平板形を有するガラス繊維の断面に外接するように描かれた長方形の横(Ra)及び縦(Rb)の長さ)を計算することによって得ることができる。
前記平板形ガラス繊維は、Eガラス、Tガラス、NEガラス、Cガラス、Sガラス、S2ガラス、Rガラスなどを含むことができ、特定の性質を含むものに制限されない。また、前記平板形ガラス繊維はSiO、Al、CaO及びBからなる群から選択された1種以上を含むことができ、特定の成分を含むものに制限されないが、好ましくは前記4成分を全部含むことが好ましく、より好ましくはこれを含んでいる複合樹脂組成物間の接着力を向上させて剛性及び分散性を増大させるためにカップリング剤をさらに含むことが好ましい。
【0030】
本発明の一実施例による強度補強剤の含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、30~50重量%である。前記強度補強剤の含量が30重量%未満であれば機械的物性が低下する虞があり、50重量%を超えれば射出製品の外観が低下し、射出製品の重さが増加して軽量化の効果が落ちる虞がある。
すなわち、本発明の一実施例による複合樹脂組成物及び成形品に前記強度補強剤を含ませることにより、剛性と寸法安定性と比重の均衡を取ることができ、好ましくは平板形ガラス繊維を含ませることにより、これを含む成形品の寸法安定性をより向上させることができる。
また、本発明の一実施例による複合樹脂組成物は添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、本発明で使える通常の添加剤、例えば、耐光性安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、分散剤、滑剤、核剤、離型剤、金属イオン安定化剤、難燃剤、染料、及び顔料からなる群から選択された1種以上を含むことができ、特定の成分を含むものに制限されない。
【0031】
本発明の一実施例による添加剤の含量は、全体複合樹脂組成物100重量%を基準に、0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%である。前記添加剤の含量が0.1重量%未満であれば加工の際及び製品成形の後に外部要素による劣化によって物性が低下するか耐光性などの性能が低下する虞があり、10重量%を超えれば加工の際に低分子量物質が多くなって機械的物性が低下し、製品成形の際にガスが発生するなどの虞がある。
すなわち、本発明の一実施例による複合樹脂組成物は前記成分を前記含量で含むことにより、従来の長繊維強化プラスチックに比べ、剛性が同等な水準以上に優れるだけでなく、寸法安定性が特に優れるという利点がある。
【0032】
本発明の一実施例による成形品は、前記複合樹脂組成物を含ませて製造することができる。すなわち、前記複合樹脂組成物を通常に使うブレンド方法で混合した後、200~260℃の温度で2軸溶融混練押出機で押出しして製造することができ、さらに射出成形、ブロー成形、押出し成形、熱成形、プレス成形などのさまざまな工程によって追加加工し、好ましくは射出成形で成形品を製造することができる。
すなわち、本発明の一実施例による複合樹脂組成物、及びこれから製造した成形品は自動車部品、電機電子、産業材の分野で広く活用可能であり、特に、自動車部品のうちパノラマサンルーフフレームのように高剛性と寸法安定性が要求され、美麗な外観が要求される大型射出成形製品の部品に使われることができる。また、本発明による複合樹脂組成物及びこれを含む成形品は、既存のスチールからなる部品も代替することが可能であり、この場合、軽量化効果は約30%の水準に重さを減らすことができる利点がある。
【0033】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎなく、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
〔実施例1~実施例4及び比較例1~比較例6:複合樹脂組成物を含む成形品試片の製造〕
下記の表1に示した成分及び組成を含む複合樹脂組成物をリボンミキサーで均一に混合した後、L/D40及び40mmの2軸押出機で200~260℃の温度で押出成形してペレットを製造した後、250~270℃の温度で試片を射出成形して実施例1~実施例4及び比較例1~比較例6の複合樹脂組成物を含む成形品試片をそれぞれ製造した。
【0034】
【表1】
【0035】
〔測定方法〕
製造された各試片の物性は下記のような方法で測定した。
引張強度及び伸び率:ASTM D635
屈曲強度:ASTM D790
衝撃強度:ASTM D256
収縮率:ASTM D955、樹脂流動方向MD、樹脂流動方向の垂直方向TD
射出反り高さ:下記平板形金型で最も高く撓む部分の高さを測定
射出外観:肉眼観察で光沢があり、G/F突出現象なし
〔実験例:複合樹脂組成物から製造された成形品試片の寸法安定性及び物理的特性の比較〕
本発明の一実施例によって製造された前記表1に記載の実施例1~実施例4、比較例1~比較例6、及び比較群としてポリアミド6にガラス繊維40重量%を含む製品である長繊維強化プラスチック(LFT)素材の寸法安定性及び物理的特性、引張強度などを前記測定方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
前記表2に示したとおり、本発明による実施例1~実施例4の複合樹脂組成物から製造した成形品はいずれも優れた機械的剛性及び射出外観、寸法安定性を現したが、比較例1~比較例6の複合樹脂組成物から製造した成形品、又はLFT素材は機械的強度が低いか成形品の寸法安定性及び射出製品の外観が低下する結果であることを確認することができた。すなわち、本発明による複合樹脂組成物及びこれを含む成形品は、従来の長繊維強化プラスチックに比べ、剛性が同等な水準以上に優れるだけでなく、寸法安定性が特に優れているので、自動車部品、電機電子、産業材の分野で広く活用可能であり、特に、自動車部品の中でパノラマサンルーフフレームのように高剛性と寸法安定性が要求され、美麗な外観が要求される大型射出成形製品の部品に使用することが可能である。また、本発明による複合樹脂組成物及びこれを含む成形品は既存にスチールからなる部品にも代替することが可能であり、この場合、軽量化効果は約30%の水準に重さを減らすことができる。