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特開2022-22124ボンディングウェハ構造及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022124
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ボンディングウェハ構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116239
(22)【出願日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】109125054
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515087558
【氏名又は名称】環球晶圓股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Global Wafers Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8 Industrial East Road 2,Science Park,Hsinchu City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】施 英汝
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 偉立
(72)【発明者】
【氏名】羅 宏章
(57)【要約】
【課題】支持基板と、ボンディング層と、炭化珪素(SiC)層と、を備えるボンディングウェハ構造。
【解決手段】ボンディング層は、支持基板の表面上に形成され、SiC層は、ボンディング層にボンディングされる。SiC層の炭素面は、ボンディング層と直接接触する。SiC層は、1000ea/cmから20000ea/cmの基底面転位(BPD)、支持基板の総厚みばらつき(TTV)よりも大きい総厚みばらつき、支持基板の直径以下の直径を有する。ボンディングウェハ構造は、10μm未満のTTVを有し、30μm未満のボウを有し、60μm未満のワープを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の表面上に形成されるボンディング層と、
前記ボンディング層にボンディングされる炭化珪素層と、
を備えるボンディングウェハ構造であって、
前記炭化珪素層の炭素面は、前記ボンディング層に直接接触し、
前記炭化珪素層は、1000ea/cmから20000ea/cmの基底面転位(BPD)を有し、
前記炭化珪素層は、前記支持基板の総厚みばらつき(TTV)よりも大きい総厚みばらつきを有し、
前記炭化珪素層は、前記支持基板の直径以下の直径を有し、
前記ボンディングウェハ構造は、10μm未満のTTVを有し、30μm未満のボウを有し、60μm未満のワープを有する、
ことを特徴とするボンディングウェハ構造。
【請求項2】
前記炭化珪素層は、500μm未満の厚さを有し、
前記ボンディングウェハ構造は、2000μm未満の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項3】
前記ボンディング層は、50℃から200℃の軟化点、100μm未満の厚さ、10%未満の均一性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項4】
前記支持基板は、3μm未満のTTV、20μm未満のボウ、40μm未満のワープ、160GPaより大きいヤング率を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項5】
前記支持基板は、単層又は多層構造を有し、
前記ボンディング層は、単層又は多層構造を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項6】
前記炭化珪素層及び前記支持基板は、1mm未満の同心度を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項7】
前記炭化珪素層のシリコン面にボンディングされるエピタキシー炭化珪素基板を更に備え、
前記エピタキシー炭化珪素基板は、炭化珪素層のBPDよりも小さいBPDを有し、
前記エピタキシー炭化珪素基板は、前記炭化珪素層の応力よりも小さい応力を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項8】
前記エピタキシー炭化珪素基板内に形成されるイオン注入領域を更に備え、
前記イオン注入領域は、前記エピタキシー炭化珪素基板と前記炭化珪素層とのボンディング面から1μm以内に位置する、
ことを特徴とする請求項7に記載のボンディングウェハ構造。
【請求項9】
支持基板の表面にコーティングを行い、ボンディング層を形成することと、
前記ボンディング層に炭化珪素層の炭素面をボンディングすることであって、前記炭化珪素層は、前記支持基板のTTVより大きいTTVを有し、前記炭化珪素層は、前記支持基板の直径以下の直径を有し、前記炭化珪素層は、1000ea/cmから20000ea/cmのBPDを有し、ボンディング前の前記炭化珪素層は、75μmより大きいボウを有し、150μmより大きいワープを有する、前記ボンディング層に炭化珪素層の炭素面をボンディングすることと、
前記炭化珪素層の厚みを低減するために、前記炭化珪素層のシリコン面を研削することと、
ボンディングウェハ構造を得るために、前記研削の後に前記炭化珪素層の前記シリコン面を研磨することであって、前記ボンディングウェハ構造は、10μm未満のTTVを有し、30μm未満のボウを有し、60μm未満のワープを有する、前記研削の後に前記炭化珪素層の前記シリコン面を研磨することと、
ことを特徴とするボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項10】
前記ボンディング層上に前記炭化珪素層の前記炭素面をボンディングすることは、前記支持基板の平面を前記炭化珪素層の平面と位置合わせする、ことを含む、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項11】
前記ボンディング層上に前記炭化珪素層の前記炭素面のボンディングすることの負荷は、8kgfから10kgfである、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項12】
前記ボンディング層上に前記炭化珪素層の前記炭素面をボンディングした後、前記ボンディング層の残留物を除去し、前記支持基板をクリーニングする、ことを更に含む、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項13】
前記研削によって低減された後の前記炭化珪素層の厚さは、5μmから12μmである、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項14】
前記ボンディング前の前記炭化珪素層及び前記研削後の前記ボンディングウェハ構造は、ボウの変化(Δボウ)が80μmより大きく)、ワープの変化(Δワープ)が160μmより大きい、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項15】
前記コーティングを行い、前記ボンディング層を形成することは、110℃から130℃の温度で、前記支持基板の表面にワックスをスピンコーティングすることを含む、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項16】
前記炭化珪素層の前記シリコン面を研削する前に、
共にボンディングされる前記支持基板、前記ボンディング層、及び前記炭化珪素層のTTVを測定し、
前記測定したTTVが10μm未満であることに応じて、続くステップを行う、あるいは前記測定したTTVが10μm以上であることに応じて、前記ボンディング層と前記炭化珪素層とを除去し、次に、前記支持基板の表面にコーティングを行い、ボンディング層を形成することを再度行う、ことを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【請求項17】
前記研磨は、粗い研磨と微細研磨と、を含む、ことを特徴とする請求項9に記載のボンディングウェハ構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体ボンディング技術に関し、具体的には、ボンディングウェハ構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシーは、半導体層を形成するため、ウェハ上に新しい結晶を成長させる技術を指す。エピタキシャル処理によって形成されたフィルムは、高純度及び良好な厚み制御等の利点を有するので、エピタキシーは、無線周波数(RF)装置又は電源装置の製造において広く用いられている。
【0003】
しかしながら、普及しているエピタキシャル成長ウェハ又はインゴットにおいて、種結晶に隣接するエピタキシャル構造は、欠陥及び高ストレスのために、通常、廃棄され、比較的良質なエピタキシャル構造のみが維持される。その結果、無駄なコストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、コストを削減でき、ボンディングのための基板において低質な炭化珪素ウェハを使用可能なボンディングウェハ構造を提供する。
【0005】
本開示は、また、無線周波数装置又は電源装置のエピタキシャル処理のためのボンディングウェハ構造が製造される、ボンディングウェハ構造の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のボンディングウェハ構造は、支持基板と、ボンディング層と、炭化珪素層と、を備える。ボンディング層は、支持基板の表面上に形成され、炭化珪素層は、ボンディング層にボンディングされる。炭化珪素層の炭素面は、ボンディング層に直接接触する。炭化珪素層は、1000ea/cmから20000ea/cmの基底面転位(BPD)、支持基板の総厚みばらつき(TTV)よりも大きい総厚みばらつき、及び支持基板の直径以下の直径を有する。ボンディングウェハ構造は、10μm未満のTTV、30μm未満のボウ、及び60μm未満のワープを有する。
【0007】
本開示の一の実施の形態においては、前記ボンディング層は、50℃から200℃の軟化点、100μm未満の厚さ、10%未満の均一性を有する。
【0008】
本開示の一つの実施の形態において、支持基板は、3μm未満のTTV、20μm未満のボウ、40μm未満のワープ、及び160GPaより大きいヤング率を有する。
【0009】
本開示の一つの実施の形態において、支持基板は、単層又は多層構造を有し、ボンディング層は、単層又は多層構造を有する。
【0010】
本開示の一つの実施の形態において、炭化珪素層及び支持基板は、1mm未満の同心度を有する。
【0011】
本開示の一つの実施の形態において、ボンディングウェハ構造は、炭化珪素層のシリコン面にボンディングされるエピタキシー炭化珪素基板を更に備える。エピタキシー炭化珪素基板は、炭化珪素層のBPDよりも小さいBPDを有し、炭化珪素層の応力よりも小さい応力を有する。
【0012】
本開示の一つの実施の形態において、ボンディングウェハ構造は、エピタキシー炭化珪素基板内に形成されるイオン注入領域を更に備える。イオン注入領域は、エピタキシー炭化珪素基板と炭化珪素層とのボンディング面から約1μm以内に位置する。
【0013】
本開示の一つの実施の形態において、炭化珪素層は、500μm未満の厚さを有し、ボンディングウェハ構造は、2000μm未満の厚さを有する。
【0014】
本開示のボンディングウェハ構造の製造方法は、以下を含む。支持基板の表面にコーティングを行い、ボンディング層を形成する。ボンディング層に炭化珪素層の炭素面をボンディングする。炭化珪素層は、支持基板のTTVより大きいTTV、支持基板の直径以下の直径、及び1000ea/cmから20000ea/cmのBPDを有する。ボンディング前の炭化珪素層は、75μmより大きいボウを有し、150μmより大きいワープを有する。次に、炭化珪素層の厚みを低減するため、炭化珪素層のシリコン面を研削する。ボンディングウェハ構造を得るため、研削の後に炭化珪素層のシリコン面を研磨する。ボンディングウェハ構造は、10μm未満のTTV、30μm未満のボウ、及び60μm未満のワープを有する。
【0015】
本開示の別の実施の形態において、ボンディング層上への炭化珪素層の炭素面のボンディングする方法は、以下を含む。支持基板の平面を炭化珪素層の平面と位置合わせする。
【0016】
本開示の別の実施の形態において、ボンディング層上への炭化珪素層の炭素面のボンディングの負荷は、8kgfから10kgfである。
【0017】
本開示の別の実施の形態において、ボンディング層上に炭化珪素層の炭素面をボンディングした後、ボンディング層の残留物を除去し、支持基板をクリーニングする、ことを更に含む。
【0018】
本開示の別の実施の形態において、研削によって低減された炭化珪素層の厚さは、5μmから12μmである。
【0019】
本開示の別の実施の形態において、ボンディング前の炭化珪素層及び研削後のボンディングウェハ構造は、ボウの変化(Δボウ)が80μmより大きく、ワープの変化(Δワープ)が160μmより大きい。
【0020】
本開示の別の実施の形態において、コーティングを行い、ボンディング層を形成する方法は、以下を含む。110℃から130℃の温度で、支持基板の表面にワックスをスピンコーティングする。
【0021】
本開示の別の実施の形態においては、以下を更に含んでよい。炭化珪素層のシリコン面を研削する前に、共にボンディングされる支持基板、ボンディング層、及び炭化珪素層のTTVを測定する。測定したTTVが10μm未満である場合、続くステップを行う。測定したTTVが10μm以上である場合、以下を含んでよい。ボンディング層と炭化珪素層とを除去し、次に、支持基板の表面にコーティングを行い、ボンディング層を再び形成する。
【0022】
本開示の別の実施の形態において、研磨は、粗い研磨と微細研磨と、を含む。
【発明の効果】
【0023】
以上に基づき、本開示のボンディングウェハ構造は、低質(高応力)の炭化珪素層が既存の支持基板の一部を置き換えるように設けられる、3層構造を有する。この炭化珪素層は、エピタキシャル成長の後に除去される廃棄物である。ボンディング構造において炭化珪素層を用いることで、支持基板の材料コスト及び無駄なコストを削減することができるのみならず、炭化珪素層をエピタキシー炭化珪素基板に直接ボンディングできるので、ウェハボンディングの歩留まりを向上させることができる。本開示のボンディングウェハ構造は、電源装置又は無線周波数(RF)装置の製造プロセスへの適用に好適である。
【0024】
以上の説明をより具体的なものとするため、以下に実施の形態を添付の図面とともに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の第1の実施の形態に係るボンディングウェハ構造の概略的な断面図である。
【0026】
図2】本開示の第1の実施の形態に係る別のボンディングウェハ構造の概略的な断面図である。
【0027】
図3】本開示の第2の実施の形態に係るボンディングウェハ構造の製造フローチャートである。
【0028】
図4】第2の実施の形態のステップS302についての概略的な立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の例示的な実施の形態を、図面を参照して以下に包括的に説明するが、本開示は様々な態様で実施可能であり、本明細書に開示する実施の形態に限定されるべきものではない。明確化のため、領域、部分及び層の寸法や厚みは、実際のスケールに基づいて描かれたものではない。本開示に対する理解を容易にするため、同一の構成要素には、以下、同一の参照番号を付す。
【0030】
図1は、本開示の第1の実施の形態に係るボンディングウェハ構造の概略的な断面図である。
【0031】
図1を参照すると、第1の実施の形態のボンディングウェハ構造100は、基本的に、支持基板102と、ボンディング層104と、炭化珪素層106と、を備える。支持基板102は、高い剛性を有し、処理中に容易に変形せず、曲げられず、又は破損しない強固な材料から形成された基板である。強固な材料の例は、160GPaより大きいヤング率を有する材料、好ましくは、180GPaより大きいヤング率を有する材料である。一つの実施の形態において、支持基板102は、例えば、3μm未満、好ましくは、1μm未満の総厚みばらつき(TTV)を有する。支持基板102は、例えば、20μm未満、好ましくは、15μm未満のボウを有する。支持基板102は、例えば、40μm未満、好ましくは、30μm未満のワープを有する。例えば、支持基板102は、シリコン基板、サファイヤ基板、セラミック基板又はこれらの組み合わせである。換言すると、支持基板102は、単層又は多層構造を有してよい。ボンディング層104は、支持基板102の表面上に形成される。ボンディング層104は、例えば、50℃から200℃、好ましくは、80℃から150℃の軟化点を有する。ボンディング層104の軟化点を上記の範囲内に設定することで、支持基板102及び炭化珪素層106を、単に高温方法によってその後に容易に互いに分離することができる。ボンディング層104は、例えば、100μm未満、好ましくは、10μmから20μmの厚さを有する。ボンディング層104は、例えば、10%未満、好ましくは、5%未満の均一性を有する。例えば、ボンディング層104の材料は、ワックス又は固定接着剤であってよい。ボンディングにおいて支持基板102及び炭化珪素層106を調整して位置合わせする必要があるという点を考慮し、好ましくは、比較的高い流動性を有するワックスがボンディング層104の材料と用いられる。しかしながら、本開示はこの場合に限定されない。支持基板102及び炭化珪素層106が正確に位置合わせされた場合、UV接着剤等の固定接着剤がボンディング層104の材料として用いられてよい。また、ボンディング層104は、単層又は多層構造を有してよい。
【0032】
再度図1を参照すると、炭化珪素層106は、ボンディング層104にボンディングされる、つまり、炭化珪素層106は、ボンディング層104を介して支持基板102上に固定される。炭化珪素層106の炭素面106aは、ボンディング層104と直接接触する。炭化珪素層106のシリコン面106bは、露出され、他のエピタキシー基板(図示せず)との後のボンディングに用いられてよい。炭化珪素層106は、1000ea/cmから20000ea/cm、例えば、4000ea/cmから10000ea/cmの基底面転位(BPD)を有する。炭化珪素層106は、支持基板102の総厚みはらつき(TTV)よりも大きなTTVを有する。炭化珪素層106は、支持基板102の直径以下の直径を有する。例えば、ボンディング前の炭化珪素層106は、10μm未満、好ましくは、5μm未満のTTVを有する。しかしながら、ボンディング前の炭化珪素層106は、例えば、75μmより大きい又は100μmより大きいボウを有し、150μmより大きい、又は200μmより大きいワープを有する。ボンディング前の炭化珪素層106が、ボウ及びワープの両方において比較的大きい理由は、種結晶に隣接する高応力高炭化珪素ウェハを採用するからである。しかしながら、ボンディング後のボンディングウェハ構造100は、10μm未満のTTV、30μm未満のボウ及び60μm未満のワープを有するので、ボンディングウェハ構造100は、電源装置線周波数(RF)装置用のエピタキシャル処理に用いることができる。一つの実施の形態において、ボンディングウェハ構造100は、3μm未満のTTV、20μm未満のボウ、及び40μm未満のワープを有し得る。本実施の形態においては、炭化珪素層106は、例えば、500μm未満、好ましくは、400μm未満の厚さを有する。ボンディングウェハ構造100は、例えば、2000μm未満、好ましくは、1000μm未満の厚さを有する。また、炭化珪素層106及び支持基板102の同心度は、例えば、1mm未満、好ましくは、0.5mm未満である。
【0033】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る別のボンディングウェハ構造の概略的な断面図である。図1内の参照番号と同一の参照番号は、同一又は類似の要素を示し、同一又は類似の要素については、図1の説明を参照することで理解可能であり、重複した説明を省略する。
【0034】
図2において、ボンディングウェハ構造200は、炭化珪素層106のシリコン面106bにボンディングされたエピタキシー炭化珪素基板202を備えてよい。エピタキシー炭化珪素基板202は、炭化珪素層106のBPDよりも低いBPD、及び炭化珪素層106の応力よりも小さな応力を有する。また、イオン注入領域204(つまり、破線によって示された領域)は、エピタキシー炭化珪素基板202内に形成されてよい。イオン注入領域204は、エピタキシー炭化珪素基板202と炭化珪素層106との間でボンディング面206に近接する。一つの実施の形態において、イオン注入領域204とボンディング面206との間の距離sは、例えば、1μm以内である。イオン注入領域204がエピタキシー炭化珪素基板202内において比較的脆い構造を生じさせるので、エピタキシー炭化珪素基板202及び炭化珪素層106は、その後に容易にイオン注入領域204から互いに分離することができる。
【0035】
図3は、本開示の第2の実施の形態に係る、ボンディングウェハ構造を製造するフローチャートである。
【0036】
図3を参照すると、最初に、コーティングを行い、支持基板の表面上にボンディング層を形成するステップS300が行われる。ボンディング層は、例えば、50℃から200℃、好ましくは、80℃から150℃の軟化点を有する。ワックスがボンディング層の材料として用いられる場合、液体ワックスが、110℃から130℃の温度で支持基板の表面にスピンコーティングされてよい。支持基板は、例えば、160GPaより大きい、好ましくは、180GPaより大きいヤング率、例えば、3μm未満、好ましくは、1μm未満のTTV、例えば、20μm未満、好ましくは、15μm未満のボウ、及び例えば、40μm未満、好ましくは、30μm未満のワープを有する。支持基板は、例えば、シリコン基板、サファイヤ基板、セラミック基板、又はそれらの組み合わせである。また、支持基板は、単層又は多層構造を有してよい。ボンディング層は、例えば、100μm未満、好ましくは、10μmから20μmの厚さと、例えば、10%未満、好ましくは、5%未満の均一性とを有する。
【0037】
次に、炭化珪素層の炭素面をボンディング層上にボンディングするステップS302が行われる。炭化珪素層は、支持基板のTTVよりも大きいTTVを有する。炭化珪素層は、支持基板の直径以下の直径を有する。炭化珪素層は、1000ea/cmから20000ea/cm、例えば、4000ea/cmから10000ea/cmのBPDを有する。炭化珪素層は、例えば、500μm未満、好ましくは、400μm未満の厚さを有する。ボンディング前の炭化珪素層は、10μm未満、好ましくは、5μm未満のTTVを有するが、75μmより大きい、例えば、100μmより大きいボウ、及び150μmより大きい、例えば、200μmより大きいワープを有する。本実施の形態において、炭化珪素層をボンディングする方法は、図4に示す通りである。支持基板102の平面102aは、炭化珪素層106平面106cと位置合わせされ、それによって続く処理において平面に生じるチッピングを低減する。明確化のため、図4においてボンディング層を省略する。上記のボンディングの負荷は、例えば8kgfより大きく、好ましくは、8kgfから10kgfである。ステップS302の後、炭化珪素層と支持基板との同心度は、例えば、1mm未満であり、好ましくは、0.5mm未満である。
【0038】
続いて、炭化珪素層の厚さを低減するため、炭化珪素層のシリコン面を研削するステップS304が行われる。研削によって低減された炭化珪素層の厚さは、例えば、5μmから12μmであり、好ましくは、8μmから12μmである。従って、シリコン面は、5μm未満、好ましくは、1μm未満のTTVを有し、研削後のウェハは、全体として、比較的平坦で比較的良好な形状を有する。
【0039】
次に、ボンディングウェハ構造を得るため、研削後の炭化珪素層のシリコン面を研磨するステップS306が行われる。研磨は、粗い研磨及び微細研磨を含む。従って、シリコン面は、2μm未満、好ましくは、1μm未満の幾何学的なTTVを有する。一つの実施の形態において、粗い研磨及び微細研磨後の粗さRaは、以下のとおりである。
【0040】
1.粗い研磨の後、4.67の曇り、及び0.1nmから0.19nmのRaが得られる。
【0041】
2.微細研磨の後、4.16から4.19の曇り、及び0.13nmから0.062nmのRaが得られる。
【0042】
ステップS306の後、ボンディングウェハ構造は、10μm未満(例えば、3μm未満)のTTV、30μm未満(例えば、20μm未満)のボウを有し、また、ワープは、60μm未満(例えば、40μm未満)である。換言すると、ボンディングの前の炭化珪素層及び研磨後のボンディングウェハ構造は、ボウについて、45μm、好ましくは、80μmより大きい変化(Δボウ)を有する。ボンディングの前の炭化珪素層及び研磨の後のボンディングウェハ構造は、ワープについて、90μm、好ましくは、160μmより大きい変化(Δワープ)を有する。ボンディングウェハ構造は、例えば、2000μm未満、好ましくは1000μm未満の厚さを有する。
【0043】
また、ステップS302の後、最初に、ボンディング層の残留物を除去し、支持基板をクリーニングにするステップS308が行われる。
【0044】
続くエピタキシャル処理の歩留まりを考慮し、ステップS304の前に、共にボンディングされる支持基板、ボンディング層及び炭化珪素層のTTVを測定するステップS310が行われてよい。続いて、ステップS312において、TTVが10μm未満である場合、続くステップS304が行われる。あるいは、TTVが10μm以上である場合、最初に、ボンディング層と炭化珪素層とが除去されるステップS314が行われる。次に、処理はステップS300に戻り、コーティングが行われ、別のボンディング層がオリジナルの支持基板の表面上に形成される。ステップS310は、ステップS302又はステップS308の後に行われてよい。
【0045】
以下は、本開示の効果の検証のためのいくつかの実験についての説明である。しかしながら、本開示は以下の内容に限定されない。
【0046】
分析方法
【0047】
1.厚さ:ウェハの厚みを、非接触機器(MX-203/FRT/ADE7000)によって測定した。
【0048】
2.TTV:ボウ及びワープ。測定を非接触機器によって行った。
【0049】
3.BPD:測定を自動光学検査(AOI)によって行い、密度を計算した。
【0050】
(実験例1)
【0051】
ステップ1)ワックスを、室温で炭化珪素層及びシリコン基板の表面上にスピンコートし(厚さは限定されておらず、本処理における固定体に依拠)、得られた結果物を120℃の加熱プレートに配置し、60秒間加熱した。
【0052】
ステップ2)炭化珪素層とシリコン基板とを、シリコン基板の平面が炭化珪素層の平面と位置合わせされるように互いにボンディングし、8kgfより大きい負荷を加えつつ、60秒間放置した。炭化珪素層は、約4048ea/cmのBPDを有した。
【0053】
ステップ3)炭化珪素層のシリコン面を約5μmに研削した。
【0054】
ステップ4)研削後の炭化珪素層のシリコン面を、35℃から60℃で研磨した。温度をこの範囲内に設定することで、ウェハエッジ剥離を防止することができ、十分な除去量が確保できる。研磨による除去量は約1μmであり、ボンディングウェハ構造が得られた。
【0055】
シリコン基板及び炭化珪素層単体(ボンディング前)を、平面特性について測定し、結果を以下の表1に示す。次に、各ステップ2、3、及び4の後、全構造を平面特性について測定し、結果を以下の表1に示す。
【0056】
(実験例2)
【0057】
炭化珪素層が約4002ea/cmのBPDを有したという点を除き、ボンディングウェハ構造を実験例1と同様の方法で準備した。次に、各ステージでの構造を平面特性について測定し、結果を以下の表1に示す。
【0058】
(実験例3)
【0059】
炭化珪素層が約3957ea/cmのBPDを有したという点を除き、ボンディングウェハ構造を実験例1と同様の方法で準備した。次に、各ステージでの構造を平面特性について測定し、結果を以下の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表から明らかなように、ボンディング前の炭化珪素層単体は、ボウ及びワープの両方が比較的大きかった(それぞれ、100より大きい、及び200より大きい)。実験例1から3において、ステップ2のボンディングの後、ボウ及びワープは、大幅に低減された(それぞれ、約20未満及び約40未満)。従って、ボンディングウェハ構造は、電源装置又は無線周波数(RF)装置のエピタキシャル処理に用いることが可能である。
【0062】
要約すると、本開示のボンディングウェハ構造では、低質(高応力)な炭化珪素層が、既存の支持基板の一部と置き換えられるために用いられ、エピタキシー炭化珪素基板に直接ボンディングされる。また、上記のボンディング処理の後のボンディングウェハ構造において、支持基板及び低質な炭化珪素層は、単に高温方法によって互いに分離可能であり、これは、支持基板の再利用を可能にする。従って、支持基板の材料コストだけでなく、低質SiCエピタキシャルウェハを廃棄するコストも削減できる。更に、本開示において、高い平坦度を有するボンディングウェハ構造は、ボンディング処理を行うことを容易にし、ウェハボンディングの歩留まりを向上させ、電源装置又は無線周波数装置のエピタキシャル処理への適用に好適である。
【0063】
本開示の技術的範囲から逸脱せずに、開示した実施の形態の構造に様々な応用及び変更を行うことが可能な点、当業者にとって明らかである。以上に鑑み、本開示は、特許請求の範囲及びその均等の範囲内の応用及び変更も包含することを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るボンディングウェハ構造及びその製造方法は、電源装置又は無線周波数装置のエピタキシャル処理に適用されてよい。
【符号の説明】
【0065】
100、200 ボンディングウェハ構造
102 支持基板
104 ボンディング層
106 炭化珪素層
106a 炭素面
106b シリコン面
106c、102a 平面
202 エピタキシー炭化珪素基板
204 イオン注入領域
206 ボンディング面
S 距離
S300、S302、S304、S306、S308、S310、S312、S314 ステップ
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】