(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022148
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ラタノプロステン・ブノド及びその中間体の製造方法、並びにそれらを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 405/00 20060101AFI20220127BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20220127BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220127BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C07C405/00 503U
A61K31/5575
A61P27/02
C07F7/18 A CSP
C07F7/18 L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118765
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】16/938,238
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512213583
【氏名又は名称】チャイロゲート インターナショナル インク.
【氏名又は名称原語表記】CHIROGATE INTERNATIONAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シ-イ
(72)【発明者】
【氏名】ス,ミン-クン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ズー-マン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086DA02
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA33
4H006AA02
4H006AD17
4H049VN01
4H049VP03
4H049VR23
4H049VR41
4H049VW02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ラタノプロステン・ブノドの調製方法及び該方法で調製された中間体、また、高純度のラタノプロステン・ブノドを含む、ラタノプロステン・ブノド組成物を提供する。
【解決手段】ラタノプロスト酸を1,4-ブタンジオール・ジニトラートと反応させる、ラタノプロステン・ブノドの製造方法である。好ましくは、粗ラタノプロステン・ブノド中の全ヒドロキシ基を-SiR
aR
bR
c残基を含むシリル化剤でシリル化して下式LB-3Siで示される化合物を形成することによる、粗ラタノプロステン・ブノドの精製方法を含む、製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラタノプロスト酸を1,4-ブタンジオール・ジニトラートと反応させることを含む、ラタノプロステン・ブノドの製造方法。
【請求項2】
・-SiR
aR
bR
c残基を含むシリル化剤で、ラタノプロステン・ブノドの全ヒドロキシ基をシリル化して式LB-3Si
【化1】
(式中、R
a、R
b及びR
cはそれぞれ独立して、C1-8アルキル、フェニル、ベンジル、置換されたフェニル又は置換されたベンジルである)で示される化合物を形成する工程、及び
・式LB-3Siで示される化合物を脱シリル化する工程
によって該ラタノプロステン・ブノドを精製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、式LB-二量体で示される化合物を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項4】
式LB-3Si
【化3】
(式中、R
a、R
b及びR
cはそれぞれ独立してC1-8アルキル、フェニル、ベンジル、置換されたフェニル又は置換されたベンジルである)で示される化合物。
【請求項5】
【請求項6】
残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、請求項5に記載の式LB-二量体で示される化合物を0.1%超5%未満含み、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.1%超3.5%未満含み、15S-ラタノプロステン・ブノドを0.5%未満含む、ラタノプロステン・ブノド組成物。
【請求項7】
残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、請求項5に記載の式LB-二量体で示される化合物を0.1%超5%未満含み、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.01%超0.1%未満含み、15S-ラタノプロステン・ブノドを0.1%未満含む、ラタノプロステン・ブノド組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の式LB-二量体で示される化合物を0%超0.1%未満含み、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.1%超3.5%未満含み、15S-ラタノプロステン・ブノドを0.5%未満含む、ラタノプロステン・ブノド組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の式LB-二量体で示される化合物を0%超0.1%未満含み、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.01%超0.1%未満含み、15S-ラタノプロステン・ブノドを0.1%未満含む、ラタノプロステン・ブノド組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラタノプロステン・ブノド及びその中間体の製造方法、並びにそれらを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式Iで示されるラタノプロステン・ブノドは、開放隅角緑内障又は高眼圧症のための点眼液であるビズルタの活性医薬成分(API)である。
【0003】
【0004】
特許文献1及び特許文献2はともに、工程式1に示すように、ラタノプロスト酸を4-ブロモブチルニトラートと反応させてラタノプロステン・ブノドを調製する方法を開示している。しかしながら、ラタノプロスト酸の異性体、化合物LB-Brや化合物LB-Iのような副生成物を含む種々の不純物が、プロセス中に生成される。
【0005】
【0006】
特許文献3は工程式2に示すように、ラタノプロスト酸と1,4-ジブロモブタンとから調製された化合物LB-BrとAgNO3とを反応させてラタノプロステン・ブノドを調製する方法を開示している。
【0007】
【0008】
しかし、LB-BrとAgNO3とでは、高温で長時間反応させても、未反応の化合物LB-Brが常時一定量存在する。さらに、5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドは、高温、長時間反応中のラタノプロステン・ブノドの異性化によっても生成するであろう。したがって、特許文献3に記載のプロセスには、不純物化合物LB-Brの問題だけでなく、5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドの問題もある。
【0009】
ラタノプロステン・ブノドは油状であるため、その不純物は結晶化精製で除去できないが、クロマトグラフィで除去可能である。それにもかかわらず、化合物LB-Br及び化合物LB-Iの極性はラタノプロステン・ブノドの極性に非常に近く(TLC ΔRf<0.1)、5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドの極性はラタノプロステン・ブノドの極性とほぼ同じであるため、クロマトグラフィによってラタノプロステン・ブノドから不純物化合物LB-Br、化合物LB-I及び5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドを除去することは依然として非常に困難であり、可能であってもコストは非常に高い。
【0010】
特許文献2は、特定のシリカゲルを大量(100倍量)に用いた重力シリカゲルカラムクロマトグラフィで粗ラタノプロステン・ブノドを精製することを開示している。精製後、5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドなどの副生成物を部分的に除去することができる。しかしながら、産業において精製にかかる高コストを削減するためには、ラタノプロステン・ブノドの調製中に除去や分離が困難な化合物LB-Br、化合物LB-I及び5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドなどの不純物の生成を回避又は低減することがより好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開2005/068421号パンフレット
【特許文献2】国際公開2017/093771号パンフレット
【特許文献3】国際公開2019/031774号パンフレット
【発明の概要】
【0012】
一態様において、本発明は、除去又は分離することが困難な、上記の化合物LB-Br又は化合物LB-Iを生成することなく、かつ5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドが最小限である、ラタノプロステン・ブノドの効率的かつ経済的な調製方法を提供する。
【0013】
本発明の一実施形態は、ラタノプロスト酸を1,4-ブタンジオール・ジニトラートと反応させる工程を含む、ラタノプロステン・ブノドを製造するための新規な方法に関する。
【0014】
本発明の一実施形態は、粗ラタノプロステン・ブノド中の全ヒドロキシ基を-SiRaRBRc残基を含むシリル化剤でシリル化して式LB-3Siで示される化合物を形成することによる、粗ラタノプロステン・ブノドの精製方法に関する。
【0015】
【0016】
ここで、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立してC1-8アルキル、フェニル、ベンジル、置換されたフェニル又は置換されたベンジルである。次いで得られる、式LB-3Siで示される化合物を脱シリル化し、ラタノプロステン・ブノドを形成する。これは、粗ラタノプロステン・ブノドよりも純度が高い。
【0017】
一態様では、本発明は、上記の式LB-3Siの新規中間体を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、ラタノプロスト酸を1,4-ブタンジオール・ジニトラートでエステル化して、ラタノプロステン・ブノド及び式LB-二量体の化合物を形成することを含む工程を提供する。
【0019】
【0020】
別の態様では、本発明は、式LB-二量体の新規化合物を提供する。
【0021】
【0022】
別の態様では、本発明は、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、上記で定義したLB-二量体化合物を0.1%超5%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.1%超3.5%未満、15S-ラタノプロステン・ブノドを0.5%未満含む粗ラタノプロステン・ブノド組成物を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、上記で定義したLB-二量体化合物を0.1%超5%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.01%超0.1%未満及び15S-ラタノプロステン・ブノドを0.1%未満含む粗ラタノプロステン・ブノド組成物を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、上記で定義したLB-二量体化合物を0%超0.1%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.1%超3.5%未満、及び15S-ラタノプロステン・ブノドを0.5%未満含む精製ラタノプロステン・ブノド組成物を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、上記で定義したLB-二量体化合物を0%超0.1%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.01%超0.1%未満、及び15S-ラタノプロステン・ブノドを0.1%未満含む精製ラタノプロステン・ブノド組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0026】
ラタノプロスト酸の調製
本発明によれば、ラタノプロスト酸を1,4-ブタノジオール・ジニトラートと反応させることを含むラタノプロステン・ブノドの製造方法が提供される。
【0027】
いくつかの実施形態において、ラタノプロスト酸は、任意の従来の方法によって調製することができる。例えば、ラタノプロスト酸は工程式3に示すように、ラタノプロスト又はラタノプロスト 1,9-ラクトンの加水分解反応によって調製することができる。
【0028】
【0029】
いくつかの実施形態では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム一水和物などを使用して加水分解反応を実施することができ、特に好ましくは水酸化リチウム一水和物を使用して実施される。このとき、反応溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、水又はこれらの混合溶媒を用いることができ、特にメタノールと水との混合溶媒が好ましい。いくつかの実施形態において、反応温度は好ましくは室温であり、反応時間は好ましくは約1~20時間である。
【0030】
いくつかの実施形態では、ラタノプロスト酸はラタノプロストから調製することができる。典型的には、USPの要件を満たす市販のラタノプロストは5,6-トランス異性体を約3.5%及び15S-異性体を約0.5%含む。したがって、加水分解によって市販のラタノプロストから得られるラタノプロスト酸類は、5,6-トランス異性体を約3.5%及び15S-異性体を約0.5%含む。このようにして調製されたラタノプロスト酸類は、本明細書においてラタノプロスト酸-Aとして示される。
【0031】
いくつかの実施形態では、ラタノプロスト酸がラタノプロスト1,9-ラクトンから調製することができる。本実施形態では、米国特許9,994,543号に開示されているラタノプロスト1,9-ラクトンを用いて、加水分解によりラタノプロスト酸類を調製する。このようにして調製されたラタノプロスト酸類は実質的に異性体を含まず、0.1%未満の5,6-トランス異性体及び0.1%の15S-異性体を含有し、本明細書においてラタノプロスト酸類-Bとして示される。
【0032】
ラタノプロステン・ブノドの調製
本発明によれば、ラタノプロステン・ブノドは工程式4に示すように、ラタノプロスト酸を1,4-ブタンジオール・ジニトラートでエステル化することによって調製される。
【0033】
【0034】
いくつかの実施形態では、反応は塩基の存在下で行うことができる。適切な塩基としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(DBU)、水酸化ナトリウム及び炭酸カリウムが挙げられ、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(DBU)又は炭酸カリウムを使用することが特に好ましいが、これらに限定されない。
【0035】
いくつかの実施形態では、反応は溶媒中で行うことができる。好適な溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトン、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられ、ジメチルホルムアミドを用いて反応を行うことが特に好ましい。
【0036】
本発明において、1,4-ブタンジオール・ジニトラートの使用量は特に限定されない。いくつかの実施形態では、1,4-ブタンジオール・ジニトラートをラタノプロスト酸1重量部当たり約1~100重量部、好ましくは約3~30重量部、又は約5~15重量部、より好ましくは約5~10重量部の範囲の量で使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、反応温度は好ましくは約20~80℃、約20~70℃、約20~60℃、約20~50℃、約20~40℃又は約20~30℃である。反応時間は反応温度によって異なり、1~6時間程度、1~5時間程度、1~4時間程度、1~3時間程度又は1~2時間程度が好ましい。
【0038】
工程式4に示されるように、ラタノプロステン・ブノドの製造工程は、式LB-二量体で示される副生成物を形成することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本方法における出発物質としてラタノプロスト酸-Aを使用すると、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、化合物LB-二量体を約0.1%超約5%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を約0.1%超約3.5%未満、及び15S-ラタノプロステン・ブノドを約0.5%未満含む、粗ラタノプロステン・ブノド組成物Aが提供される。いくつかの実施形態では、15S-ラタノプロステン・ブノド及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体はラタノプロスト酸-Aの出発物質中の15S-異性体及び5,6-トランス異性体からそれぞれ生成される。いくつかの実施形態では、粗ラタノプロステン・ブノド組成物Aは化合物LB-Brも化合物LB-Iも含まない。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法における出発物質としてラタノプロスト酸-Bを使用すると、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、化合物LB-二量体を約0.1%超約5%未満、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を約0.01%超約0.1%未満、15S-ラタノプロステン・ブノドを約0.1%未満含む、粗ラタノプロステン・ブノド組成物Bが提供される。いくつかの実施形態では、15S-ラタノプロステン・ブノド及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体はラタノプロスト酸-Bの出発物質中の15S-異性体及び5,6-トランス異性体からそれぞれ生成される。いくつかの実施形態では、粗ラタノプロステン・ブノド組成物Bは化合物LB-Brも化合物LB-Iも含まない。
【0041】
本方法では粗ラタノプロステン・ブノド組成物A及びBはそれぞれ、過剰量の1,4-ブタンジオール・ジニトラート(TLC ΔRf>0.7、酢酸エチル中33%ヘキサン)及び副生成物である化合物LB-二量体(TLC ΔRf >0.5、100%酢酸エチル)の反応試薬を含むが、過剰量の反応試薬及び副生成物は典型的又は単純なクロマトグラフィによって容易に除去することができる。しかしながら、特許文献1~3に開示されているような先行技術方法ではTLC ΔRfが0.1未満である不純物、例えば化合物LB-Br(TLC ΔRf<0.04、酢酸エチル中33%ヘキサン)、化合物LB-I(TLC ΔRf<0.07、酢酸エチル中33%ヘキサン)、及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体(TLC ΔRf<0.01、酢酸エチル中33%ヘキサン)が生成されるが、典型的なクロマトグラフィでは容易に除去することはできず、困難又は複雑なクロマトグラフィによってのみ除去することができる。したがって、本方法は、先行技術方法のプロセスよりも単純であり、費用効果が高い。
【0042】
1,4-ブタンジオール・ジニトラートの反応試薬の過剰量及び副生成物(化合物LB-二量体)に加えて、粗ラタノプロステン・ブノドは、試薬又は溶媒から生成される少量の高極性非プロスタグランジン類不純物及び低極性非プロスタグランジン類不純物をさらに含む。本方法において、粗ラタノプロスタテン・ブノドは典型的なクロマトグラフィを用いて1回だけ精製することができ、その結果、過剰量の1,4-ブタンジオール・ジニトラート、化合物LB-二量体、高極性非プロスタグランジン類不純物及び低極性非プロスタグランジン類不純物を同時に除去することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、低極性である保護ラタノプロステン・ブノドとするために、粗ラタノプロステン・ブノドの全ヒドロキシ基をシリル保護基で保護することができる。次いで、低極性である保護ラタノプロステン・ブノドは高極性の非プロスタグランジン類不純物を除去するために、典型的なクロマトグラフィによって任意に精製することができる。その後、保護ラタノプロステン・ブノドを脱シリル化して、高極性の非プロスタグランジン類不純物を全く含まない、高極性の粗ラタノプロステン・ブノドを得る。次いで、低極性非プロスタグランジン類不純物を除去するために、高極性の粗ラタノプロステン・ブノドは典型的なクロマトグラフィでもう1回だけ精製することができる。
【0044】
本発明の方法で使用するのに適した典型的なクロマトグラフィは当技術分野で知られており、広く一般的に使用されている。本方法では、典型的なクロマトグラフィを使用して、粗ラタノプロステン・ブノド又は粗保護ラタノプロステン・ブノドを精製することができる。例えば、63~200μm又は50~150μmの共通粒子径を有するコスト節約型不規則シリカゲルクロマトグラフィを用いたカラムクロマトグラフィを用いて、過剰量の反応試薬、副生成物及び非プロスタグランジン類不純物を効率的に除去することができる。さらに、シリカゲルの使用量が分離する材料の量の約3倍(又はそれ以上)である限り、上記不純物は、約0.1%未満まで除去することができる。シリカゲルの使用量は、分離する物質の量の約5~50倍であることが好ましい。より好ましくは、シリカゲルの使用量は分離する材料の量の約5~20倍である。
【0045】
いくつかの実施形態では、非極性溶媒と極性溶媒との二成分混合物を、様々な組成物中の溶出剤として使用することができる。二成分混合物における非極性溶媒としては炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素及びエーテル型溶媒があり、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン及びジイソプロピルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。二成分混合物における極性溶媒としては直鎖又は分岐鎖アルキル基を含有するアルコール型、エステル型又はケトン型溶媒が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態では、粗ラタノプロステン・ブノドをシリル化及び脱シリル化することによって精製することができる。いくつかの実施形態では、ラタノプロステン・ブノド中の全ヒドロキシ基を、-SiRaRbRc残基を含むシリル化剤でシリル化して式LB-3Siで示される粗化合物とすることによって、粗ラタノプロステン・ブノドを精製することができる。
【0047】
【0048】
ここで、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立してC1-8アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルである。いくつかの実施形態において、シリル化剤はXSiRaRbRcの式を有し、XはF、Cl又はBrなどのハロゲンであり、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立してC1-8アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニル又は置換ベンジルである。本発明の一実施形態によれば、精製反応に適したシリル化剤は、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、ジメチル(オクチル)シリルクロリド、及びtert-ブチルジメチルシリルクロリドからなる群から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、式LB-3Siで示される粗化合物を典型的なクロマトグラフィによって精製することができる。式LB-3Siで示される化合物は極性が非常に低いので、それよりも極性が高い不純物、例えばDMFのような溶媒から、及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートのような試薬から生成される不純物は、単純なクロマトグラフィを用いて容易に除去することができる。次に、得られた式LB-3Siの化合物を脱シリル化して、別の粗ラタノプロステン・ブノドとする。次いで、別の粗ラタノプロステン・ブノドを典型的なクロマトグラフィによって精製して、より高い純度を有するラタノプロステン・ブノドを形成することができる。いくつかの実施形態では、シリル化及び脱シリル化反応を実施するための条件は当業者に明らかなものである。
【0050】
いくつかの実施形態では、式LB-3Siの粗化合物の精製を任意に行うことができる。本発明の方法では、典型的なクロマトグラフィを用いて粗ラタノプロステン・ブノドを単に精製する場合であっても、すなわち式LB-3Siの化合物を精製することなく、規制要件を満たすために、より極性が高い不純物を0.1%未満に減少させることができる。いくつかの実施形態では、典型的なクロマトグラフィを使用して式LB-3Siの化合物をさらに精製することによって、より極性が高い不純物を、0.1%未満、又は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の検出限界未満に減少させることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、約0%超約0.1%未満、及び約0.5%未満の量のラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を、約0.1%超約3.5%未満、及び約0.5%未満の量で含む、ラタノプロステン酸-Aを出発材料として使用することによる精製ラタノプロステン・ブノド組成物Cが得られる。いくつかの実施形態では、精製ラタノプロステン・ブノド組成物Cは粗ラタノプロステン・ブノド組成物Aを精製することによって得られ、いくつかの実施形態では、精製ラタノプロステン・ブノド組成物Cは化合物LB-Brも化合物LB-Iも含まない。
【0052】
いくつかの実施形態では、ラタノプロステン・ブノドの0%超0.1%未満、5,6-トランス異性体0.01%超0.1%未満、及び0.1%未満の量で化合物LB-二量体を含む出発物質としてラタノプロステン酸類-Bを使用することによる精製ラタノプロステン・ブノド組成物Dが得られる。いくつかの実施形態では、精製ラタノプロステン・ブノド組成物Dは化合物LB-Brも化合物LB-Iも含まない。
【0053】
本明細書に記載された特定の実施形態は例として示されており、本発明を限定するものではないことが理解されるだろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態で使用することができる。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書中に記載される特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、又は確認することができる。そのような均等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲に含まれる。
【0054】
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技術レベルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に示されたかのように、同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
「a」又は「an」という語は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語と併せて使用される場合、「1つ」を意味することができるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを参照するように明示的に示されているか、又は選択肢が相互に排他的である場合を除き、「及び/又は」を意味するために使用される。ただし、開示は、選択肢及び/又は「及び/又は」のみを参照する定義の裏付けとなる。本出願全体を通して、「約」という語は、値が装置の誤差に付随する変動を含むことを示すのに使用され、この方法は、研究対象間に存在する値又は変動を決定するのに採用される。
【0056】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「含む」(「含む」及び「含む」などの任意の形を含む)、「有する」(「有する」及び「有する」などの任意の形を含む)、「含む」(「含む」及び「含む」などの任意の形を含む)又は「含む」(「含む」及び「含む」などの任意の形を含む)は、包含的又はオープンエンドであり、追加の、非記載の要素又は方法ステップを除外しない。
【0057】
本明細書に開示及び特許請求される化合物及び/又は方法の全ては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製及び発明することができる。本発明の化合物及び方法を好ましい実施形態に関して説明したが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法の組成物及び/又は方法ならびに工程又は工程の順序に変形を適用することができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような同様な置換及び修飾は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【0058】
本明細書中に開示され、特許請求される化合物及び/又は方法の全ては、本開示に照らして過度の実験をすることなく、作製及び実行され得る。本発明の化合物及び方法を好ましい実施形態に関して説明したが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物及び/又は方法に、並びに本明細書に記載の方法のステップ又はステップの順序で、変形形態を適用することができることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換及び修正はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内にあると考えられる。
【実施例0059】
実施例1 ラタノプロスト酸-Aの調製
ラタノプロスト(5,6-トランス異性体を2.38%及び15S-異性体を0.05%含む)(1.0g、2.31mmol)のイソプロピルアルコール(8mL)溶液を3N水酸化カリウム水溶液(3.85mL)で処理した。混合物を50~55℃で2時間撹拌し、冷却後、3N塩酸水溶液でpH8.0~8.3に調整した。その後、溶媒の大部分を減圧下で除去した。残渣を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5mL)及び酢酸エチル(2mL)で希釈した。次いで、混合物を室温で5分間撹拌し、有機層及び水層を別々に収集した。水層を室温で、3N塩酸水溶液でpH3.0~3.2に調整し、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム(3g)で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗ラタノプロスト酸-A(1.1g)を得た。生成物をHPLC分析した結果、5,6-トランス異性体を2.34%及び15S-異性体を0.05%含んでいた。
【0060】
実施例2 ラタノプロスト酸-Bの調製
米国特許第9,994,543号に開示された方法によって得られたラタノプロスト 1,9-ラクトン(30.0g、0.08mol)のイソプロピルアルコール(240mL)溶液を3N水酸化カリウム水溶液(100mL)で処理した。50~55℃で2時間撹拌し、冷却後、3N塩酸水溶液でpH8.0~8.3に調整した。その後、溶媒の大部分を減圧下で除去した。残渣を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150mL)及び酢酸エチル(60mL)で希釈した。次いで、混合物を室温で5分間撹拌し、有機層及び水層を別々に収集した。水層を室温にて3N塩酸水溶液でpH3.0~3.2に調整し、酢酸エチル(500mL)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウム(60g)で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗ラタノプロスト酸-B(36.2g)を得た。生成物をHPLC分析した結果、異性体は検出されなかった。
【0061】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.253-7.282(m, 2H), 7.157-7.194(m, 3H), 5.455-5.506(m, 1H), 5.342-5.394(m, 1H), 4.142-4.152(m, 1H), 3.936(m, 1H), 3.664-3.711(m, 1H), 2.754-2.813(m, 1H), 2.618-2.678(m, 1H), 2.327(t, 2H), 2.241(t, 2H), 2.133(q, 2H), 1.496-1.892(m, 10H), 1.307-1.382(m, 2H)
【0062】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 177.395, 142.122, 129.454, 129.416, 128.392, 128.376, 125.788, 78.386, 74.234, 71.509, 52.139, 51.433, 42.461, 38.749, 35.228, 33.201, 32.070, 29.049, 26.575, 26.408, 24.662
【0063】
比較例3 4-ブロモブチル・ニトラートとラタノプロスト酸-Bによるラタノプロステン・ブノドの合成
粗ラタノプロスト酸-B(213mg、0.54mmol)のDMF(5mL)溶液を、K2CO3(206mg、1.49mmol)、KI(77mg、0.46mmol)及び4-ブロモブチル・ニトラート(805mg、塩化メチレン中25%w/w、1.02mmol)で処理した。次いで、45~50℃で2時間、窒素雰囲気下で撹拌した(TLCモニタリング)。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、ブライン(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、0.43gの粗ラタノプロステン・ブノドを得た。粗ラタノプロステン・ブノドをHPLC分析した結果、4.59%の化合物LB-Brと0.91%の化合物LB-Iを含有し、5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドと15S-ラタノプロステン・ブノドは検出されなかった。
【0064】
ラタノプロステン・ブノド:
【0065】
TLC:Rf 0.205(酢酸エチル中33%ヘキサン);Rf 0.705(100%酢酸エチル)
【0066】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.245-7.281(m, 2H), 7.146-7.192(m, 3H), 5.445-5.490(m, 1H), 5.331-5.427(m, 1H), 4.451(t, 2H), 4.130(m, 1H), 4.078(t, 2H), 3.927(m, 1H), 3.637(m, 1H), 3.073(s, 1H), 2.613-2.781(m, 3H), 2.263-2.341(m, 3H), 2.027-2.208(m, 4H), 1.495-1.862(m, 14H), 1.294-1.391(m, 2H)
【0067】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 173.877, 142.113, 129.514, 129.331, 128.390, 125.810, 78.676, 74.592, 72.619, 71.298, 63.473, 52.733, 51.799, 42.494, 39.025, 35.762, 33.583, 32.103, 29.583, 26.889, 26.600, 24.938, 24.824, 23.617
【0068】
化合物LB-Br:
【0069】
TLC:Rf 0.239(酢酸エチル中33%ヘキサン)
【0070】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.162-7.298(m, 5H), 5.351-5.478(m, 2H), 4.158(m, 1H), 4.091(t, 2H), 3.946(m, 1H), 3.664(m, 1H), 3.422(t, 2H), 2.634-2.829(m, 3H), 2.299-2.361(m, 4H), 2.091-2.227(m, 3H), 1.510-2.227(m, 15H), 1.252-1.419(m, 2H)
【0071】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 173.877, 142.052, 129.468, 129.430, 128.413, 128.390, 125.832, 78.797, 74.744, 71.313, 63.442, 52.907, 51.883, 42.532, 39.063, 35.784, 33.614, 33.052, 32.111, 29.629, 29.287, 27.299, 26.942, 26.631, 24.839
【0072】
化合物LB-I:
【0073】
TLC:Rf 0.273(酢酸エチル中33%ヘキサン)
【0074】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.150-7.286(m, 5H), 5.355-5.474(m, 2H), 4.136(m, 1H), 4.069(t, 2H), 3.930(m, 1H), 3.644-3.661(m, 1H), 3.185(t, 2H), 2.619-2.805(m, 3H), 2.268-2.324(m, 3H), 2.808-2.214(m, 4H), 1.501-1.910(m, 15H), 1.350-1.373(m, 2H)
【0075】
13C-NMR (100MHz, CDCl3): δ 173.915, 142.105, 129.476, 129.400, 128.398, 125.810, 78.691, 74.592, 71.298, 63.237, 52.756, 51.814, 42.532, 39.033, 35.762, 33.636, 32.118, 29.986, 29.583, 29.538, 26.889, 26.623, 24.847, 5.918
【0076】
比較例4 化合物LB-Brと硝酸銀によるラタノプロステン・ブノドの合成
化合物LB-Br(0.5g、0.95mmol)をアセトニトリル(7.5mL)に溶解し、硝酸銀(0.29g、1.71mmol)を添加し、次いで混合物を加熱し、約35~40℃で約55時間撹拌した。反応の進行をHPLCで観察し、表1に示す。
【0077】
【0078】
表1に示すように、反応55時間後でも依然未反応の化合物LB-Brが0.35%あるが、ラタノプロステン・ブノドの異性化から0.77%の5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドが生成している。5,6-トランス ラタノプロステン・ブノドは、化合物LB-Brよりもクロマトグラフィによる除去が困難であるので、反応を継続しても収量は増加せず、精製コストが高くなるだけである。
【0079】
実施例5 ラタノプロスト酸-Aと1,4-ブタンジオール・ジニトラートによるラタノプロステン・ブノドの合成
粗ラタノプロスト酸-A(5-トランス異性体>2%)(1.1g、2.82mmol)のDMF(6mL)溶液をK2CO3(1.17g、8.47mmol)と1,4-ブタンジオール・ジニトラート(7.61g、42.25mmol)で処理した。その後、60~65℃で2.5時間、窒素雰囲気下で撹拌後(TLCモニタリング)、室温まで冷却した。反応混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、氷水(2×15mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(3g)で乾燥し、減圧下で濃縮して、9.8gの粗ラタノプロステン・ブノド及び過剰の1,4-ブタンジオール・ジニトラートを得た。粗ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC分析した結果、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、化合物LB-二量体を1.4%、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を2.38%、及び15S-ラタノプロステン・ブノドを0.05%含んでいた。過剰の1,4-ブタンジオール・ジニトラート及び化合物LB-二量体を、5倍量のシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィによって除去し、次いで減圧下で濃縮して、精製ラタノプロステン・ブノド(1.2g、83.9%収率)を得た。精製ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC分析した結果、化合物LB-二量体を0.001%、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を2.4%、及び15S-ラタノプロステン・ブノドを0.06%含んでいた。
【0080】
ラタノプロステン・ブノド:
【0081】
TLC:Rf 0.205(酢酸エチル中33%ヘキサン);Rf 0.705(100%酢酸エチル)
【0082】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.245-7.282(m, 2H), 7.146-7.192(m, 3H), 5.446-5.491(m, 1H), 5.331-5.427(m, 1H), 4.452(t, 2H), 4.130(m, 1H), 4.079(t, 2H), 3.927(m, 1H), 3.639(m, 1H), 3.042(s, 1H), 2.610-2.801(m, 3H), 2.264-2.343(m, 3H), 2.059-2.209(m, 4H), 1.495-1.863(m, 14H), 1.294-1.393(m, 2H)
【0083】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 173.870, 142.113, 129.514, 129.331, 128.390, 125.810, 78.683, 74.600, 72.619, 71.298, 63.465, 52.740, 51.807, 42.501, 39.025, 35.762, 33.583, 32.103, 29.583, 26.889, 26.600, 24.938, 24.824, 23.625
【0084】
化合物LB二量体:
【0085】
TLC:Rf 0.0(酢酸エチル中33%ヘキサン);Rf 0.193(100%酢酸エチル)
【0086】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.240-7.277(m, 2H), 7.142-7.190(m, 3H), 5.421-5.483(m, 1H), 5.325-5.387(m, 1H), 4.068-4.117(m, 3H), 3.919(m, 1H), 3.604-3.663(m, 1H), 2.611-2.816(m, 3H), 2.264-2.342(m, 4H), 2.030-2.210(m, 4H), 1.465-1.902(m, 12H), 1.228-1.381(m, 2H)
【0087】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 174.014, 142.151, 129.536, 129.347, 128.390, 125.787, 78.622, 74.463, 71.268, 63.921, 52.649, 51.739, 42.524, 39.010, 35.739, 33.629, 32.118, 29.538, 26.858, 26.593, 25.272, 24.839
【0088】
実施例6 ラタノプロスト酸-Bと1,4-ブタンジオール・ジニトラートによるラタノプロストテン・ブノドの合成
粗ラタノプロスト酸-B(35.00g、0.09mol)のDMF(175mL)溶液をK2CO3(37.16g、0.27mol)と1,4-ブタンジオール・ジニトラート(242.15g、1.34mol)で処理した。次いで、60~65℃で2.5時間、窒素雰囲気下で撹拌し(TLCモニタリング)、次いで室温に冷却した。反応混合物を酢酸エチル(600mL)で希釈し、氷水(2×530mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム(30g)で乾燥させ、減圧下で濃縮して、268gの粗ラタノプロステン・ブノド及び過剰の1,4-ブタンジオール・ジニトラートを得た。粗ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC分析した結果、化合物LB-二量体を1.4%及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.02%含み、残留溶媒及び1,4-ブタンジオール・ジニトラートとは別に、15S-ラタノプロステン・ブノドは検出されなかった。過剰の1,4-ブタンジオール・ジニトラート及び化合物LB-二量体を、5倍量のシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィによって除去し、次いで減圧下で濃縮して、精製ラタノプロステン・ブノド(40.94g、90.0%収率)を得た。精製ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC分析した結果、化合物LB-二量体を0.0003%及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.03%含み、15S-ラタノプロステン・ブノドは検出されなかった。純度:>99.90%。
【0089】
実施例7 ラタノプロスト酸-Bと1,4-ブタンジオール・ジニトラートによる、ラタノプロステン・ブノド-3TESを経由した、ラタノプロステン・ブノドの合成
粗ラタノプロスト酸-B(30.0g,76.8mmol)のDMF(150mL)溶液をK2CO3(31.85g,0.23mol)及び1,4-ブタンジオール・ジニトラート(207g)で処理した。次いで、60~65℃で2.5時間、窒素雰囲気下で撹拌した(TLCモニタリング)。反応混合物を室温に冷却した。反応混合物を酢酸エチル(500mL)で希釈し、氷水(2×500mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗ラタノプロステン・ブノドを得た。塩化トリエチルシリル(47.60g、0.32mol)を、粗ラタノプロステン・ブノド及びイミダゾール(26.83g、0.39mol)の酢酸エチル(400mL)溶液に室温で添加し、混合物を0.5時間撹拌した(TLCモニタリング)。反応混合物に飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を注ぎ、混合物を5分間撹拌した。有機層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、固体をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、粗化合物LB-3Siを得た。粗化合物LB-3Siをカラムクロマトグラフィによって精製して、化合物LB-3Siを65.2g得た。
【0090】
化合物LB-3Si:
【0091】
(Z)7-((1R,2R,3R,5S)-2-((R)-5-フェニル-3-((トリエチルシリル)オキシ)ペンチル)-3,5-ビス(((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタ-5-エノエート
【0092】
1H-NMR (400MHz, CDCl3):δ 7.250-7.286(m, 2H), 7.147-7.181(m, 3H), 5.422-5.484(m, 1H), 5.308-5.371(m, 1H), 4.457(t, 2H), 4.069-4.108(m, 3H), 3.665-3.758(m, 2H), 2.566-2.718(m, 2H), 2.224-2.314(m, 3H), 2.061-2.183(m, 4H), 1.745-1.822(m, 8H), 1.590-1.697(m, 2H), 1.458-1.520(m, 2H), 1.254-1.412(m, 3H), 0.930-0.987(m, 27H), 0.535-0.634(m, 18H)
【0093】
13C-NMR (100MHz, CDCl3):δ 173.566, 142.675, 130.295, 128.739, 128.299, 128.269, 125.620, 76.186, 72.566, 72.338, 71.746, 63.199, 50.281, 48.103, 44.194, 39.124, 34.471, 33.743, 31.716, 28.065, 26.722, 25.864, 24.991, 24.931, 23.625, 6.988, 6.881, 6.866, 5.166, 4.954, 4.923\
【0094】
p-トルエンスルホン酸一水和物(1g)を、化合物LB-3Siをメタノール(250mL)中で撹拌した溶液に加えた。混合物を室温で2時間撹拌した(TLCモニタリング)。次いで、反応混合物に飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、メタノールを減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルで抽出した。有機層を分離した。水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を併合し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過後減圧下で濃縮し、粗ラタノプロステン・ブノドを得た。粗ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC(Phenomenex Luna 5μmシリカ)で分析した結果、化合物LB-二量体を0.8%、ラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.02%含み、15S-ラタノプロステン・ブノドは検出されなかった。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィによってさらに精製し、34.8gの生成物を得た。精製ラタノプロステン・ブノド組成物をHPLC分析した結果、化合物LB-二量体を0.0001%及びラタノプロステン・ブノドの5,6-トランス異性体を0.02%含み、15S-ラタノプロステン・ブノドは検出されなかった。純度:>99.95%。