(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022208
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】荷受台昇降装置、荷受台昇降装置を備えた車両、及びその車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60P 1/44 20060101AFI20220127BHJP
【FI】
B60P1/44 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021153907
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良彦
(57)【要約】
【課題】僅かでも地上高の増加もしくは荷台下方領域における架装物のコンパクト化に貢献する荷受台昇降装置、車両、及び製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】車体枠に固定される固定支持部材と、固定支持部材を連結する車両幅方向が長手方向の連結支持部材と、連結支持部材に取り付けられた取付支持部材と、基端部が取付支持部材に回動自在に連結された回動アームと、回動アーム先端部が軸支された連結軸支部材と、連結軸支部材に支持された荷受台とを備える。回動アームの下アーム同士を連結するアーム連結部材が設けられ、連結支持部材が、車両荷台下方のマフラよりも高い位置に設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向を長手方向とする左右一対の車体枠のそれぞれに固定される左右一対の固定支持部材と、
当該左右一対の固定支持部材を連結する車両幅方向を長手方向とする連結支持部材と、
当該連結支持部材の左右端部のそれぞれに取り付けられた取付支持部材と、
基端部が前記取付支持部材のそれぞれに対して回動自在に連結された左右一対の回動アームと、
当該回動アームのそれぞれの先端部が軸支された連結軸支部材と、
当該連結軸支部材に支持された荷受台と
を備え、
前記左右一対の回動アームのそれぞれが上アーム及び下アームを有し、
当該下アーム同士を連結する車両幅方向を長手方向とするアーム連結部材が設けられ、
前記連結支持部材が、車両の荷台下方に取り付けられるマフラよりも高い位置となるように設けられ、当該マフラとの干渉を回避可能となるように前記車両の後部に架装される
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記アーム連結部材が、前記車両の後部に固定されたテールランプを回避可能な状態で前記荷受台の昇降動作に伴って回動され、前記荷受台が前記荷台と略面一状態となる際に前記連結軸支部材の略鉛直下方に位置される
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記車体枠の上に設けられた荷台と、
当該荷台の下方に設けられたマフラと、
前記車体枠の後部に固定されたテールランプと、
を備えてなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷受台昇降装置を備えた車両。
【請求項4】
車両前後方向を長手方向とする左右一対の車体枠の上に荷台を取り付ける荷台取付ステップと、前記荷台の下方の領域で前記車体枠にマフラを取り付ける車体枠装備体取付ステップと、前記荷台取付ステップ及び前記車体枠装備体取付ステップの後に前記車体枠に対して荷受台昇降装置を架装する昇降装置架装ステップと、
を有する前記荷受台昇降装置を備えた車両の製造方法であって、
前記昇降装置架装ステップは、
前記車体枠に対して支持部を取り付ける支持部取付サブステップと、
前記支持部に対して回動自在な左右一対の回動アームを取り付ける回動アーム取付サブステップと、
荷受台が支持された連結軸支部材に対して前記回動アームの先端部を軸支する荷受台取付サブステップと、を有し、
前記支持部材取付サブステップにおいて、前記左右一対の車体枠のそれぞれに固定支持部材を固定し、左右一対の前記固定支持部材に対して車両幅方向を長手方向とする連結支持部材を前記マフラよりも高い位置となるように固定する
ことを特徴とする荷受台昇降装置を備えた車両の製造方法。
【請求項5】
前記支持部取付サブステップにおいて、車両側方から見て前記マフラと前記支持部が重なる位置に前記固定支持部材を固定する
ことを特徴とする請求項4に記載の荷受台昇降装置を備えた車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行リンク機構を備えた荷受台昇降装置、その荷受台昇降装置を備えた車両、及びその車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部に備えられて地面と荷台との間で荷受台が昇降される荷受台昇降装置としては、平行リンク機構を構成する上下2本のアームを用いたものが知られている。こうしたアームは、それぞれの基端部が車両の荷台の下方に設けられた支持部を介して車体枠に回動可能となっている。
【0003】
荷受台昇降装置(例えば特許文献1)の荷受台97は、
図5(a)から(c)で示す順に上昇される。支持部93は、左右一対の車体枠91に架設された連結パイプ93aと、このパイプ93aの両端に固定されたブラケット93bとで構成されている。ブラケット93bの下方部には下アーム95の基端部が下軸支部95aで軸支され、上方部には上アーム94の基端部が上軸支部94aで軸支されている。また、上アーム94及び下アーム95の先端部は、プレート状の連結部材96の上連結部94b及び下連結部95bに連結されている。なお、上アーム94と下アーム95の基端部側には油圧シリンダ98が配されている。
【0004】
支持部93、上アーム94、下アーム95、及び連結部材96によって平行リンク機構が構成され、油圧シリンダ98が伸長すると、連結部材96に支持された荷受台97が水平状態を保ちながら上昇する。なお、車両幅方向において左右一対の状態で設けられている下アーム95は、互いが車両幅方向を長手方向とするアーム用連結パイプ99を介して所定の耐久性及び荷受台97に対する保持力を有している。
【0005】
この荷受台昇降装置90では、
図5(c)のように、荷受台97が荷台92の床面高さと略面一の状態になったときに、車両前方側の上アーム前面部94c、下アーム前面部95c、連結部材96の前面部96cが荷台92に当接又は近接するように配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の平行リンク機構による荷受台97を昇降可能に構成された荷受台昇降装置は、車両に搭載される他の部品との関係で未だ改善の余地がある。
【0008】
先ず、荷台下方の支持部を介して支持される荷受台昇降装置は、同様に荷台下方に設けられた各種機能部材と限られたスペースを相互に活用し合う必要がある。しかし、荷受台昇降装置の車両への架装は、車両メーカ(シャシメーカ)から納入された車両に対し、架装メーカが自社の工場内で行う作業となる。そのため、架装メーカとしては、既に車両レイアウトがほぼ決定済みの中で既設の他の部材の機能を阻害しない適切な位置に荷受台昇降装置を架装する必要がある。
【0009】
車両の前後方向に関しては、例えば、ガス排出装置(マフラ)やテールランプなどと干渉しない位置とする場合、マフラよりも後方でテールランプよりも前方位置に支持部材を設けることが慣習的に採られている。
【0010】
次に上下方向に関しては、既設のマフラなどを基準に荷受台昇降装置の地上高が決定される。具体的には、こうした基準となるマフラなどの高さ位置よりも荷受台昇降装置が大幅に低い位置にならない限り、車両全体における最低地上高も所定の大きさが確保される。そのため、上下方向に関しても慣習的にマフラなどと同程度の地上高となるように荷受台昇降装置は架装される。
【0011】
しかし、近年の環境負荷低減に関する期待度の高まりを踏まえると、荷受台昇降装置を駆動するための電動化装置が新たに追加されることが想定される。また、既設のマフラなどに関しても、排気ガスの改質を図るための機能改善やサイズ拡大も生じ得る。こうした状況は、これまで以上に荷台下方のスペース活用や地上高に余裕ある荷受台昇降装置の設置に取り組む必要性が出てくると考える。
【0012】
本発明は、これらを鑑みてなされており、慣習的に採られる位置だけに基づくことなく、今後の変化し得る車両機能に対して、僅かでも地上高の増加もしくは荷台下方領域における架装物のコンパクト化に貢献する荷受台昇降装置、同装置を備えた車両、及びその車両の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る解決手段は以下のとおりとなる。
先ず荷受台昇降装置は、車両前後方向を長手方向とする左右一対の車体枠のそれぞれに固定される左右一対の固定支持部材と、当該左右一対の支持部材を連結する車両幅方向を長手方向とする連結支持部材と、当該連結支持部材の左右端部のそれぞれに取り付けられた取付支持部材と、基端部が前記取付支持部材のそれぞれに対して回動自在に連結された左右一対の回動アームと、当該回動アームのそれぞれの先端部が軸支された連結軸支部材と、当該連結軸支部材に支持された荷受台とを備える。また、前記左右一対の回動アームのそれぞれが上アーム及び下アームを有し、当該下アーム同士を連結する車両幅方向を長手方向とするアーム連結部材が設けられ、前記連結支持部材が、車両の荷台下方に取り付けられるマフラよりも高い位置となるように設けられる。その結果、マフラとの干渉を回避可能となるように前記車両の後部に架装される荷受台昇降装置とすることができる。
車両幅方向の左右端部に位置する回動アームと、それらの間にある連結支持部材との構成を備える荷受台昇降装置にとって、連結支持部材が車両幅全体にわたって位置するために車両荷台の下方領域の多くを占有する点に注目し、回動アームに挟まれつつも連結支持部材の無い領域を巧く活用することができる点に着目している。この領域にマフラが位置するように組み合わせることで、荷受台昇降装置と車両に既設のマフラなどとの互いのデッドスペースを活用し合うことが可能となる。その結果、荷受台昇降装置の地上高の拡大化、もしくは荷台下方領域において荷受台昇降装置の架装領域のコンパクト化を果たすことができる。したがって、荷台下方領域が特に限定される荷台高さの低い車両などで優位性を得ることもできる。
【0014】
加えて、前記アーム連結部材が、前記車両の後部に固定されたテールランプを回避可能な状態で前記荷受台の昇降動作に伴って回動され、前記荷受台が前記荷台と略面一状態となる際に前記連結軸支部材の略鉛直下方に位置される構成としても良い。
【0015】
次に、上述した荷受台昇降装置が、前記車体枠の上に設けられた荷台と、当該荷台の下方に設けられたマフラと、前記車体枠の後部に固定されたテールランプとを備えてなる車両に架装された構成としても良い。
【0016】
また、本発明では、以下の荷受台昇降装置を備えた車両の製造方法も対象となる。
【0017】
車両前後方向を長手方向とする左右一対の車体枠の上に荷台を取り付ける荷台取付ステップと、前記荷台の下方の領域で前記車体枠にマフラを取り付ける車体枠装備体取付ステップと、前記荷台取付ステップ及び前記車体枠装備体取付ステップの後に前記車体枠に対して荷受台昇降装置を架装する昇降装置架装ステップとを有する前記荷受台昇降装置を備えた車両の製造方法を採っている。前記昇降装置架装ステップは、前記車体枠に対して支持部を取り付ける支持部取付サブステップと、前記支持部に対して回動自在な左右一対の回動アームを取り付ける回動アーム取付サブステップと、荷受台が支持された連結軸支部材に対して前記回動アームの先端部を軸支する荷受台取付サブステップとを有する。そして、前記支持部材取付サブステップにおいて、前記左右一対の車体枠のそれぞれに固定支持部材を固定し、左右一対の前記固定支持部材に対して車両幅方向を長手方向とする連結支持部材を前記マフラよりも高い位置となるように固定することを特徴とする。
【0018】
さらに、前記支持部取付サブステップにおいて、車両側方から見て前記マフラと前記支持部が重なる位置に前記固定支持部材を固定する製造方法としても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両幅方向を長手方向として荷台下方の領域における占有率の高い連結支持部材に着目して荷受台昇降装置全体の設置高さを上側に移動(地上高の大きさを増加)した構成を実現できる。荷台下方に設けられた他の部材(例えば既設のマフラに関して)生じやすいデッドスペースを活用するので、従来では取組困難であった架装高さの増加に役立ち、車両全体で見ても今後生じ得る機能変化にも柔軟に対応可能な発明となっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷受愛昇降装置が架装された車両後部の斜視図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置の側面図であり、(b)は同じ荷受台昇降装置の後面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置の荷受台の昇降動作を示す側面図である。
【
図4】(a)は本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置、車両に備えられたマフラ、及びテールランプを示す要部側面図、(b)は本発明の実施形態に係る変形例を示す要部側面図である。
【
図5】従来形態に係る荷受台昇降装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
【0022】
図1(a)は、本実施形態の荷受台昇降装置100が架装された車両の斜視図である。荷受台昇降装置100は、車両後部となる位置で荷台1の下方において架装されており、回動アーム2によって荷受台3が地面と荷台高さとの間を昇降される構成を有している。
【0023】
荷台1は、車両前後方向を長手方向とする左右一対の車体枠4(メインフレーム41にサブフレーム42が積載されてなる構成)上に搭載されている。それぞれの車体枠4には左右一対の回動アーム2を支持する支持部5が連結されている。支持部5は、左右一対のメインフレーム41のそれぞれの下方に固着されて僅かに下方に垂設された固定支持部材(フレームブラケット)51と、左右のフレームブラケット51に架設されて車両幅方向を長手方向とする連結支持部材(第1の連結パイプ)52と、第1の連結パイプ52の両端に固定されて上下に張り出した取付支持部材(取付部材)53とで構成されている。なお、第1の連結パイプ52は図示のとおり、荷台1の幅方向における全長と略同等の長さを有している。
【0024】
左右一対の取付部材53のそれぞれには、2つのアーム(リフトアーム21、コンプレッションアーム22)からなり回動自在な回動アーム2が軸支されている。上側のリフトアーム21は基端部が枢軸21aで枢支され、下側のコンプレッションアーム22は基端部が枢軸22aで枢支されている。これらの枢軸21a、22aはいずれも第1の連結パイプ52に対して前側となる位置に設けられている。左右一対のコンプレッションアーム22には、車両幅方向を長手方向とするアーム連結部材(第2の連結パイプ)8が架設されており、当該パイプ8によって所望する左右の同調性及び耐久性を確保している。また、各アーム21、22の先端部は3枚のプレートが溶接されてなる連結軸支部材(連結部材)6に対して枢軸21b、22bでそれぞれ枢支されている。
【0025】
荷受台3は、その基端部が連結部材6の下端に回動自在に支持されている。荷受台3は、取付部材53、リフトアーム21、コンプレッションアーム22及び連結部材6で構成される平行リンク機構を用いて、図示する水平状態を維持したまま昇降作動が行われる。上記の平行リンク機構は、取付部材53に設けられた油圧シリンダ7の伸縮を利用して駆動される。
【0026】
したがって、車両幅方向において左右両端部に位置する左右一対の回動アーム2の間には、荷受台3を除くと第1のパイプ52と第2のパイプ8が車両幅方向にわたって荷台1の下方領域に設けられた構成となる。一方で、左右の取付部材53の間においては、その前側位置(枢軸21a、22aが設けられてなる領域)などには車両幅方向にわたって占有する部材は設けられていない構成となっている。
【0027】
次に、平行リンク機構の構成及び油圧シリンダ7の配設について、
図2を用いて具体的に説明する。
図2は荷台高さ位置に荷受台3が達した後、手動で荷受台3を起立させた状態を示している。なお、起立した荷受台3は、荷受台3の側方に設けられた回動レバー3aと、側方ゲート1a上に設けられた係合片1bとで固縛されている。
【0028】
取付部材53に取り付けられた油圧シリンダ7は、2枚で1組の取付部材53の間に配されており、油圧シリンダ7のバレル側7aが取付部材53に軸支され、ロッド側7bが作動アーム23に軸支されている。作動アーム23は、一端部が油圧シリンダ7のロッド側7bに軸支され、他端部がリフトアーム21の基端部を枢支している枢軸21aに軸支されて、リフトアーム21と一体の構成を有している。リフトアーム21及びコンプレッションアーム22の基端部における枢軸21a、22aは略鉛直方向に並んで設けられており、先端部における枢軸21b、22bも同様に略鉛直方向に並んで設けられている。また、コンプレッションアーム22はリフトアーム21に対して車両幅方向の内側に並設配されており、図示のとおり、荷受台3が床面高さまで達したときには両アーム21、22は側方から見た重畳面積がほぼ最大になるように設定されている。両アームにおける端部は、いずれも図示の状態で荷台1に近接する側の端部を意味している。
【0029】
そして、平行リンク機構の作動について
図3を用いて説明する。
図3では、荷受台3が荷台1の床面高さまで上昇した状態が実線で示し、荷受台3の上昇途中の状態が一点鎖線で示されている。
【0030】
油圧シリンダ7は荷受台3が床面高さに位置するときに最伸長されている。つまり、荷受台3が最下降(接地)状態では油圧シリンダ7が最収縮されており、油圧シリンダ7が伸長することで作動アーム23が反時計回りに回動する。作動アーム23の回動に伴い、平行リンク機構を構成するリフトアーム21及びコンプレッションアーム22も回動する。
【0031】
図示のとおり、コンプレッションアーム22はリフトアーム21に近接するように上方に回動する。荷受台3が最上位置となった際には、荷受台3が床面高さ位置になる際、左右のコンプレッションアーム22を連結支持する第2の連結パイプ8が枢軸21b、22b(連結部材6)と鉛直方向に沿って略一直線状に並ぶ。このとき、荷受台3の荷物載置面が荷台1の床面と連続した略面一状態となる。
【0032】
本実施形態に係る荷受台昇降装置100は、荷台1の下方の限られたスペースにおいて架装されて上述した動作が行われる。そこで、本実施形態に係る荷受台昇降装置100の車両に対する取り付け位置について
図4を用いて具体的に説明する。
【0033】
荷台1の後部で下方となる領域には、車体枠4に固定されて排気ガスを排出するマフラM1や取付部材53に対して立ち上げ形状の取付ステー401を介して固定されたテールランプR1などが設けられている。本実施形態のマフラM1は、車両の前後方向において荷台1の下方領域を大きく占有する状態となっている。なお、図示していないが、マフラM1と車体枠4との間のスペースS1にはスペアタイヤが固定される。
【0034】
支持部5は、車両側面から見てマフラM1、テールランプR1、及びスペアタイヤが配置されるスペースS1で囲まれた領域に設けられている。具体的には、第1の連結パイプ52がマフラM1の配管M11に対して鉛直方向にH1の大きさだけ上方となる位置に設けられている。つまり、従来の構成のように前後に並ぶ構成ではなく、車両側面から見てマフラM1と車両前後方向において重なる位置としつつも、左右の取付部材53(
図1又は
図2参照)の前側位置でマフラM1が挟まれてなる状態とし、そのマフラM1よりも高位置となるように、車両幅方向にわたって設けられて荷台1の下方領域を大きく占有する第2の連結パイプを設けることで、荷受台昇降装置100の地上高を大きくしている。
【0035】
本実施形態に係る荷受台昇降装置100及び同装置100を備える車両は主に次のようにして製造される。
【0036】
先ず、左右一対の車体枠4の上に荷台1を取り付ける荷台取付ステップと、荷台1の下方領域で車体枠4にマフラM1を取り付ける車体枠装備体取付ステップとを行う。両ステップは既知の作業であり、架装メーカの工場に納品される際に既に完了していることが多い。なお、いずれのステップが先に行われても構わない。また、車体枠装備体取付ステップにおいて、車両後端部となる位置にテールランプR1を取り付ける作業を含めても良い。
【0037】
次に、荷台取付ステップ及び車体枠装備体取付ステップの後に、車体枠4に対して荷受台昇降装置100を架装するための昇降装置架装ステップを有し、架装メーカの工場内で行う。昇降装置架装ステップは、車体枠4に対して支持部5を取り付ける支持部取付サブステップと、支持部5に対して回動自在な左右一対の回動アーム2を取り付ける回動アーム取付サブステップと、荷受台3が支持された連結軸支部材(連結部材)6に対して回動アーム2の先端部を軸支する荷受台取付サブステップとを有する。
【0038】
支持部材取付サブステップにおいては、左右一対の車体枠4のそれぞれに固定支持部材(フレームブラケット)51を固定し、左右一対のフレームブラケット51に対して車両幅方向を長手方向とする連結支持部材(第1の連結パイプ)52をマフラM1よりも高い位置となるように固定する。既設のマフラM1に対して鉛直方向上側にH1だけ離れた位置に第1の連結パイプ52が位置するように固定する。
【0039】
このとき(支持部取付サブステップにおいて)、車両側方から見てマフラM1と支持部5が重なる位置にフレームブラケット51を固定する。具体的には、取付支持部材(取付部材)53の前側位置となる領域にマフラM1が含まれるようにする。また、本実施形態では支持部取付サブステップの前に既にテールランプR1が車体枠4の後端部に取り付けられた状態としているが、支持部5を設置した後にテールランプR1を取り付けるようにしても良い。いずれの場合であっても、支持部5がマフラM1、テールランプR1、さらにスペアタイヤが配置されるスペースS1で囲まれてなる領域に適切に互いに干渉しない状態で設置することができる。
【0040】
本実施形態では、支持部5の構成を巧みに利用してなされている。車体枠4の下方に垂設されたフレームブラケット51によって、車両中央寄りの車体枠4の下面近くにスペアタイヤを収納できるスペースが確保できる。また、このフレームブラケット51の連結される第1の連結パイプ52の高さを上述のとおりにすることで、荷台1の下方領域のうちの前後方向において大きなスペースを占めるマフラM1との干渉も回避できる。さらに、テールランプR1よりも第1の連結パイプ52を低い位置に設けているので同様に干渉を回避できる。車両幅方向にわたって設けられる第1の連結パイプ52が、支持部5において後部となる位置に設けられた構成とし、支持部5における前側位置には車両幅方向にわたって幅広い開放領域を確保することで、支持部5よりも車両前方側に設けられるマフラM1やスペアタイヤなどとの相対位置関係を最大限に活用することができる。
【0041】
テールランプR1に対しては、後部に位置する第1の連結パイプ52が近接するため、第2の連結パイプ8が荷受台3の昇降動作において干渉しないように、コンプレッションアーム22も構成されており、左右のコンプレッションアーム22に架設された第2の連結パイプ8が枢軸22aを中心に矢印A1に沿って昇降可能となっている。枢軸22aは、第1の連結パイプ52に対して前側にオフセットした位置に設けられているので、その分だけアーム長さを確保することができる。テールランプR1は、照射範囲及び照射角度を有用な大きさで確保する必要があるため、照射光が阻害されないように図示のとおりほぼ車両後端部に設けた状態となっており、この位置であっても第2の連結パイプ8と干渉することないコンプレッションアーム22の長さを確保することができる。その上で、荷受台3が荷台1の床面高さに達する際には荷台1の床面と隙間なく接近した状態となるように、上述した枢軸21b,22bと第2の連結パイプ8が鉛直方向に並ぶ位置、具体的にはテールランプR1の略鉛直方向上側となる位置とすることもできる。
【0042】
したがって、本実施形態に係る荷受台昇降装置100は、荷台1の下方領域において、地上高の拡大、前後方向の空いた領域の活用、テールランプR1の照射性能の最大限確保、さらには荷受台3の安定した回動動作によって荷台1の床面と荷受台3とを略面一状態にすることを充たす構成となっている。
【0043】
また、本実施形態では第1の連結パイプ52は、マフラM1の配管M11の上方位置に設けられている。排気ガスによってテールランプR1やその他の機器が高温化することを回避するため、マフラM1の配管M11が先端側に向かって下方側に傾斜し、排気ガスを車両後方で下側となる向きに排気する構成となっており、その配管の下がり勾配で生じたスペース(鉛直方向の高さH1の位置)に第1の連結パイプ52を設けることで、マフラM1に対する干渉の余裕代を高めている。なお、本実施形態では、第1の連結パイプ52が配管M11のうちの排気口付近に位置しているが、配管M11の車両前方寄りに位置する構成、又はさらに前方に位置する構成としても良い。
【0044】
以上のとおり、本実施形態に係る構成や製造方法は、荷台取付ステップ及び車体枠装備体取付ステップの後に昇降装置架装ステップを行う架装メーカにとって、昇降装置架装ステップ開始時点で上述した囲まれた領域が既に限定された領域となっている中、支持部5の前側位置の開放領域をマフラM1との重畳領域に活用し、第1の連結パイプ52をマフラM1の上方に位置することで地上高確保を果たすなど、非常に高い効果を奏している。こうした構成や製造方法は、荷受台昇降装置100の架装スペースのコンパクト化にもつながり、地面から荷台までの高さが限定的な低床型タイプの車両において特に有用である。
【0045】
また、本実施形態に係る荷受台昇降装置100は、
図4(a)だけでなく、
図4(b)のように車両側方から見てマフラM101と重複しない位置、つまりはマフラM101よりも後方となる位置であってもマフラM101よりも鉛直方向において上側となる高さに設けられた構成としても良い。このような高さ位置とすることで、マフラM101と同じ高さに設けていた従来の構成と比較して荷受台昇降装置100の地上高を高めることができる。また、将来的な新たな電動化装置などとも巧くスペースを活用し合って車両に取り付けられた状態とすることにも役立つ。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、第1の連結パイプ52のように車両幅方向を長手方向として設けられた支持部を有する荷受台昇降装置、及びその荷受台昇降装置を備えた車両であれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、平行リンク機構を有する荷受台昇降装置に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 荷台
2 回動アーム
3 荷受台
4 車体枠
5 支持部
6 連結部材(連結軸支部材)
7 油圧シリンダ
8 第2の連結パイプ(アーム連結部材)
21 リフトアーム(上アーム)
22 コンプレッションアーム(下アーム)
41 メインフレーム
42 サブフレーム
51 フレームブラケット(固定支持部材)
52 第1の連結パイプ(連結支持部材)
53 取付部材(取付支持部材)
M1 マフラ(ガス排出装置)
M11 配管(ガス排出装置)
R1 テールランプ