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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022258
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】眼科用製品、およびその利用
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/00 20060101AFI20220127BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B65D41/00
A61J1/05 311
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189512
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2021516230の分割
【原出願日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019085606
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】柿内 剛
(72)【発明者】
【氏名】河畑 昌宏
(57)【要約】
【課題】保存中に眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下を抑制する。
【解決手段】本発明の眼科用製品(A)は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有するヨウ素原液(I)が、容器(10)に収容されてなり、容器(10)が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物が、容器に収容されてなる眼科用製品であって、
前記容器が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される、眼科用製品。
【請求項2】
前記眼科用組成物と接触している前記容器の一部または全部が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される、請求項1に記載の眼科用製品。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、請求項1または2に記載の眼科用製品。
【請求項4】
前記フッ素系樹脂は、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項5】
前記眼科用組成物は、ヨウ化カリウムをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項6】
前記眼科用組成物は、液体状、流動粘体状、又は半固形状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項7】
前記眼科用組成物中のヨウ素の含有量が、前記眼科用組成物1mLあたり、0.01mg~100mgである、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項8】
前記容器は、容器本体と蓋部とを備え、
前記容器本体および前記蓋部が、前記眼科用組成物と接触する部分である、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項9】
前記容器は、容器本体と蓋部とを備え、
前記蓋部は、中栓部と外キャップ部とを備え、
前記容器本体および前記中栓部が、前記眼科用組成物と接触する部分である、請求項1~8のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項10】
前記容器本体の一部または全部が透明である請求項8または9に記載の眼科用製品。
【請求項11】
前記眼科用製品は、眼疾患の治療又は予防のために使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の眼科用製品。
【請求項12】
ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物が、容器に収容されてなる眼科用製品であって、
前記容器は、容器本体と、蓋部とを備え、
前記容器本体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成され、
前記蓋部は、中栓部と外キャップ部とを備え、
前記中栓部は、高密度ポリエチレン(HDPE)から構成される、眼科用製品。
【請求項13】
容器に収容されてなる、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物であって、
前記容器が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される、眼科用組成物。
【請求項14】
ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物を容器に収容して保存する方法であって、
前記容器において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される、眼科用組成物の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用製品、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヨウ素及びポリビニルアルコールを含むヨウ素含有製剤が、殺菌、洗浄等を目的とした眼科用薬剤として使用されている。例えば、特許文献1は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを含有する点眼薬を開示している。
【0003】
ところで、ヨウ素は、光、熱、空気のいずれに対しても非常に不安定であるだけでなく、容器内壁に吸着しやすい。このため、ヨウ素含有製剤は、その保存期間中に、ヨウ素の含有率が低下しやすいという問題がある。そこで、ヨウ素含有製剤は、ヨウ素を吸着しづらく、遮光可能な硝子製の褐色ビンにて、保冷保管、保冷流通されることが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭56-42562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、硝子製容器は、製造時、輸送時、または希釈混合時に、硝子破損のリスクが生じる。このため、硝子製容器は、使用に際し、破損による使用者の怪我だけでなく、硝子片混入等を引き起こす危険があり、十分な配慮が必要であった。また、硝子製容器の場合、篏合性の高い複雑な形状の小型容器を作ることが難しく、仮にできても製品不良が多いという問題もある。このため、ヨウ素含有製剤の容器として、硝子製容器に代わる新たな技術の開発が必要であると、本発明者らは考えた。
【0006】
本発明の一態様は、保存中に眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下が抑制された眼科用製品およびその利用を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の材質からなる容器に眼科用組成物を収容することにより、保存中にヨウ素含有量が低下することを抑制できるという新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る眼科用製品は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物が、容器に収容されてなる眼科用製品であって、前記容器が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される。
【0009】
また、本発明のさらに他の態様に係る眼科用製品は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物が、容器に収容されてなる眼科用製品であって、前記容器は、容器本体と、蓋部とを備え、前記容器本体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成され、前記蓋部は、中栓部と外キャップ部とを備え、前記中栓部は、高密度ポリエチレン(HDPE)から構成される。
【0010】
また、本発明のさらに他の態様に係る眼科用組成物は、容器に収容されてなる、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物であって、前記容器が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される。
【0011】
また、本発明のさらに他の態様に係る眼科用組成物の保存方法は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物を容器に収容して保存する方法であって、前記容器において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、保存中に眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下が抑制された眼科用製品およびその利用を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る眼科用製品を側方から見た構成を示す半断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るキットの概略構成を示し、201は斜視図であり、202は、眼科用組成物と希釈液とを用事混合した状態を示す半断面図であり、203は、用事混合後の状態を示す斜視図である。
図3】試験例1の結果を示すグラフである。
図4】試験例2の結果を示すグラフである。
図5】試験例3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。本明細書において使用される用語「約」とは、記載された量の±10%の範囲内を意味する。
【0015】
本発明において、眼科用製品とは、眼科用組成物が容器に収容された眼科用の製品、より具体的には、眼科医薬用の製品のことをいう。本実施形態に係る眼科用製品は、眼科用組成物が収容される容器の材料に特徴がある。従来の技術では、眼科用組成物が収容される容器は、硝子製であった。
【0016】
本発明者は、プラスチック製の容器が、割れにくく、小型であり、かつ自由な形状のものを精度よく製造できる点に着目し、眼科用組成物の収容に適したプラスチック材料を鋭意検討した。その結果、本発明者は、硝子製のものに比べて同等か、またはそれ以上のヨウ素吸着抑制効果を持つ容器の材質を見出した。
【0017】
具体的には、眼科用組成物の収容容器として、眼科用組成物との接触部分がPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、HDPE(高密度ポリエチレン)及びPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料で構成されている容器を採用することにより、眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下が抑制されることを、本発明者は見出した。
【0018】
眼科用組成物の収容容器は、容器本体と、容器本体を閉塞する蓋部とを備えた構成であれば、従来公知の収容容器を採用し得る。その収容容器の容量は、適宜設定可能であり、例えば、1mL~50mL、好ましくは1mL~20mLであり、より好ましくは1mL~10mLであり、さらに好ましくは5mL~10mLである。また、収容容器における眼科用組成物の内容量は、収容容器の構成等に応じて適宜設定可能であり、例えば、0.1mL~50mL、好ましくは1mL~20mLであり、より好ましくは1mL~10mLであり、さらに好ましくは1mL~5mLであり、特に好ましくは1mLである。例えば、収容容器の使用形態として、収容容器中の眼科用組成物を原液として使用し、予め希釈液が収容された点眼容器と前記収容容器とを嵌合させることにより、眼科用組成物の原液と希釈液とを混合して使用することが挙げられる。
【0019】
本実施形態に係る眼科用製品では、前記収容容器の前記容器本体における、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料(以下、便宜上、ヨウ素吸着抑制材料とも称する)により構成されている。前記容器本体における、ヨウ素吸着抑制材料により構成される部分は、眼科用組成物と接触する部分であれば、特に限定されず、前記容器本体の構成、寸法等に応じて適宜設定可能である。また、容器本体において、全体がヨウ素吸着抑制材料で構成されていてもよく、一部がヨウ素吸着抑制材料で構成されていてもよい。ただし、収容容器の製造のしやすさの観点から、容器本体は、全体がヨウ素吸着抑制材料で構成されていることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態に係る眼科用製品は、好ましくは、前記蓋部における、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される。このように前記容器本体に加え、前記蓋部における前記眼科用組成物と接触する部分がヨウ素吸着抑制材料で構成されるので、眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下がより一層抑制される。
【0021】
(ヨウ素吸着抑制材料)
上述のように、ヨウ素吸着抑制材料は、前記収容容器における眼科用組成物と接触する部分を構成し、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料である。
【0022】
前記フッ素系樹脂は、従来公知の材料が挙げられ、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)等が挙げられる。これらの中で、フッ素系樹脂は、好ましくは、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)である。
【0023】
また、前記ポリエチレン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂は、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0024】
(眼科用組成物)
本実施形態に係る眼科用製品に含まれる眼科用組成物は、眼疾患の治療又は予防のための製剤として使用され、ヨウ素およびポリビニルアルコールを必須成分として含有する。また、当該眼科用組成物は、水を基剤として含有する水性組成物であることが好ましい。特に、当該眼科用組成物は、有効成分としてヨウ素およびポリビニルアルコールを含有し、添加物としてヨウ化カリウムおよび水のみを含有することが好ましい。当該眼科用組成物は、ヨウ素原液として使用され、さらに希釈液と混合することにより、眼科治療に適用可能な調製物に変換される。
【0025】
また、眼科用組成物中のヨウ素の含有量は、従来公知の量を採用し得、例えば、前記眼科用組成物1mLあたり、0.01mg~100mg、好ましくは0.1mg~10mg、より好ましくは1mg~3mg、特に好ましくは2mgである。
【0026】
また、眼科用組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、従来公知の量を採用し得、例えば、前記眼科用組成物1mLあたり、1mg~2000mg、好ましくは10mg~200mg、より好ましくは50mg~110mg、さらに好ましくは70mg~90mg、特に好ましくは80mgである。
【0027】
また、眼科用組成物には、必要に報じて、ヨウ素の溶解を補助する溶解補助剤が含まれていてもよい。溶解補助剤は、ヨウ素の溶解を補助する機能を有する従来公知の補助剤を採用し得る。前記融解補助剤としては、例えば、ヨウ化カリウムが挙げられる。眼科用組成物中のヨウ化カリウムの含有量は、従来公知の量を採用し得、例えば、前記眼科用組成物1mLあたり、0.01mg~100mg、好ましくは0.1mg~10mg、より好ましくは1mg~5mg、さらに好ましくは1.5mg~3mg、特に好ましくは1.9mg~2.7mgである。
【0028】
また、眼科用組成物のpHは、有効成分であるヨウ素およびポリビニルアルコールが安定的に薬学的活性を示すpHであればよく、例えば、2~9、好ましくは3~7、より好ましくは4~6である。
【0029】
また、眼科用組成物と混合する前記希釈液は、薬学的に許容されるものであれば特に限定されない。好ましくは、前記希釈液は、生理食塩水(0.9%食塩水)または精製水である。また、眼科用組成物と希釈液とを混合した前記調製物中のヨウ素の濃度は、眼科治療に適用可能な濃度であれば特に限定されない。前記調製物は、ヨウ素の濃度が、0.0001~5%(w/v)であり、好ましくは0.01~0.5%(w/v)、より好ましくは0.0225~0.055%(w/v)である。このような調製物は、前記眼科用組成物を前記希釈液で2~20倍、好ましくは4~8倍、より好ましくは5倍に希釈することにより得られる。
【0030】
また、前記眼科用組成物は、収容容器に収容された状態で2~8℃の空間に保存される。このように保存された状態では、眼科用組成物は、高粘度の半固形状である。そして、加温又は室温放置した際、例えば2~8℃の空間から室温の空間に戻したとき、前記眼科用組成物は、流動粘体状に変化し、さらに時間が経過すると液体状に変化する。前記眼科用組成物は、2~8℃の空間で前記収容容器に収容されていてもよく、室温の空間で前記収容容器に収容されていてもよい。すなわち、前記収容容器に収容される前記眼科用組成物は、液体状、流動粘体状、又は半固形状である。なお、室温とは、例えば、1~30℃を指し、8℃超乃至30℃以下であってもよい。
【0031】
(眼科用組成物の保存方法)
本実施形態に係る眼科用組成物の保存方法は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを含有する眼科用組成物を容器に収容して保存する方法である。眼科用組成物を収容する収容容器は、上述のように、容器本体と、蓋部とを備え、前記容器本体において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される。これにより、保存中に、眼科用組成物中のヨウ素の含有率の低下を抑制することができる。
【0032】
なお、眼科用組成物の保存方法は、眼科用組成物の安定化方法、または眼科用組成物におけるヨウ素の吸着抑制方法と表現することができる。すなわち、本発明の一実施形態には、次の発明も含まれ得る;(i)ヨウ素及びポリビニルアルコールを含有する眼科用組成物を容器内にて安定化する方法であって、前記容器は、容器本体と、蓋部とを備え、前記容器本体において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される、眼科用組成物の安定化方法、(ii)ヨウ素及びポリビニルアルコールを含有する眼科用組成物を容器に収容した際に、容器へのヨウ素の吸着を抑制する方法であって、前記容器は、容器本体と、蓋部とを備え、前記容器本体において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される、眼科用組成物におけるヨウ素の吸着抑制方法。
【0033】
(本実施形態に係る眼科用製品の具体的構成)
本実施形態に係る眼科用製品の具体的構成について、以下に説明する。図1は、本実施形態に係る眼科用製品Aを側方から見た構成を示す半断面図である。
【0034】
図1に示されるように、本実施形態に係る眼科用製品Aは、眼科用組成物(以下、ヨウ素原液Iとも称する)が、容器10に収容された構成となっている。容器10は、容器本体1と、容器本体1を閉塞する蓋部2と、を備えている。また、蓋部2は、中栓部3と、外キャップ部4と、を備えている。外キャップ部4における中栓部3と対向する部分には、中栓部3が装着される装着部4aが形成されている。
【0035】
なお、本明細書において上下方向とは、容器10の正立状態を基準とし、容器の中心軸線Oに沿って蓋部2が配置される側(すなわち、図1における上側)を上方、蓋部2と反対側を下方とする。また、径方向外側とは、図1における容器10の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って外側に向かう方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を指すものとする。
【0036】
容器本体1は、ボトル形状である。より具体的には、容器本体1は、円筒形状を有する口部1aと、該口部1aの下端に連なり該口部1aよりも拡径された胴部1bと、胴部1bの下部を閉塞する底部1cとからなる形状となしている。口部1aの外周には、外キャップ部4をねじ係合により装着するための雄ねじ部1dが形成されている。また、容器本体1の一部または全部は、透明である。
【0037】
中栓部3は、容器本体1の口部1aを上方から覆い閉塞する部材である。また、中栓部3には、下方へ突出したリング状突起部3aが形成されている。リング状突起部3aは、中心軸線Oを中心とした円をなすように突出しており、その外周面が容器本体1の口部1aの内壁面に接触するように形成されている。口部1aの内壁面にリング状突起部3aが接触された状態で蓋部2が容器本体1に装着されたとき、容器本体1および蓋部2は、各中心軸が中心軸線Oに位置合わせされた適正位置となる。
【0038】
外キャップ部4は、中栓部3をさらに上方から覆うとともに、容器本体1の口部1aを径方向外側から覆う部材である。外キャップ部4の装着部4aに中栓部3が装着されることによって、蓋部2が構成される。外キャップ部4は、略円筒形状であり、装着部4aが形成された天壁部4bと、当該天壁部4bに連結した周壁部4cとから構成されている。周壁部4cは、容器本体1の口部1aを径方向外側から取り囲むように構成されている。周壁部4cの内周面には、雌ねじ部4dが設けられている。雌ねじ部4dは、容器本体1の口部1aの雄ねじ部1dとねじ係合する。
【0039】
眼科用製品Aでは、容器本体1において、ヨウ素原液Iと接触する部分は、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される。より具体的には、容器本体1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂から構成されている。
【0040】
また、蓋部2においては、中栓部3および外キャップ部4のうち中栓部3がヨウ素原液Iと接触する部分となっている。そして、中栓部3は、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される。より具体的には、中栓部3は、高密度ポリエチレン(HDPE)から構成される。
【0041】
このように構成された眼科用製品Aによれば、容器10におけるヨウ素原液Iと接触する部分が上述したヨウ素吸着抑制材料で構成されている。このため、保存中にヨウ素原液I中のヨウ素の含有率の低下を抑制することが可能な眼科用製品Aを実現できる。
【0042】
なお、容器本体1と蓋部2との係合構成は、図1に示された構成に限定されない。例えば、蓋部2は、中栓部3および外キャップ部4が一体となった1つの部材として構成されていてもよい。
【0043】
容器本体1と蓋部2との係合構成は、好ましくは、図1に示されるように、容器本体1の口部1aと外キャップ部4の周壁部4cとがねじ係合された螺嵌構造(スクリューキャップ構造)である。図1に示された構成では、口部1aの外周に雄ねじ部1dが形成され、周壁部4cの内周面に雌ねじ部4dが形成されているので、使用者は、中心軸線Oを軸として蓋部2を回転させることで容器10を開封することになる。それゆえ、図1に示された構成によれば、容器本体1を開封時に、ヨウ素原液Iが容器本体1から飛び散るのを防止することができる。
【0044】
(キット)
本実施形態に係るキットは、上述の眼科用製品と、薬学的に許容される希釈液が希釈容器に収容されてなる希釈剤品と、を備えた構成となっている。希釈容器の材質は問わないが、樹脂製であることが好ましい。本実施形態に係るキットでは、眼科用製品の眼科用組成物は、前記希釈液で希釈することにより、眼科治療に適用可能な調製物に変換されるようになっている。なお、実使用においては、本実施形態に係るキットには、例えば、眼科治療に適用可能な前記調製物の調製手順が記載された医薬品の添付文書等が添付される。
【0045】
従来のヨウ素含有製剤は、希釈混合前の原液が硝子アンプルや硝子バイアル等の硝子製容器に収容された形態であった。それゆえ、眼科治療に適用可能な調製物を、医師、看護師等の医療従事者が患者に配布するためには、別途、滅菌済の希釈液および滅菌済の前記調製物の収容容器(例えば点眼容器)を用意する必要が生じた。さらには、無菌環境下でヨウ素含有製剤と希釈液とを希釈混合することが推奨されていた。このため、眼科治療に適用可能な調製物の調製に際し、医療従事者にとって、(a)事前準備が必要である、(b)煩雑になりやすい、(c)無菌環境下で操作するといった配慮が必要である、といった課題があった。
【0046】
本実施形態に係るキットによれば、前記眼科用製品と前記希釈剤品とがセットになっているので、上記(a)~(c)の課題に対応できるだけでなく、前記希釈混合の作業がより簡便になる。このため、希釈混合の実施者を医療従事者から患者に変更することも可能になり得る。
【0047】
以下、本実施形態に係るキットの一例について説明する。以下では、眼科用組成物と希釈液とを用事混合する形態の点眼又は洗眼用のキットについて説明する。図2は、本実施形態に係るキット100の概略構成を示し、図2の201は斜視図であり、図2の202は、眼科用組成物と希釈液とを用事混合した状態を示す半断面図であり、図2の203は、用事混合後の状態を示す斜視図である。
【0048】
図2の201~203に示されるように、本実施形態に係るキット100は、眼科用製品Aと、希釈剤品Bと、パッケージ30と、を備えている。キット100は、パッケージ30中に、眼科用製品Aと希釈剤品Bとが内包された構成となっている。眼科用製品Aは、図1に示される構成と同一である。
【0049】
パッケージ30は、眼科用製品Aの遮光性の観点から、プラスチック材料、紙又は厚紙製である。これにより、パッケージ30内の眼科用製品Aの遮光性が良好になり、眼科用製品Aの保存安定性が向上する。
【0050】
希釈剤品Bは、薬学的に許容される希釈液Dが点眼容器20(希釈容器)に収容されてなる構成となっている。点眼容器20は、点眼又は洗眼に使用される従来公知の点眼容器であれば、特に限定されない。例えば、点眼容器20は、容器本体21と、中栓部22と、キャップ23と、を備えている。中栓部22は、図2の202に示す容器本体21の口部21aを上方および径方向外側から覆い閉塞する部材である。容器本体21の口部21aと中栓部22とは互いにネジ係合された螺嵌構造(スクリューキャップ構造)である。中栓部22には、中心軸線Oに沿って上方に伸びるように、容器本体21の内容物を吐出する吐出ノズル(不図示)が設けられている。キャップ23は、中栓部22の吐出ノズルを上方および径方向外側から覆い閉塞する部材である。中栓部22とキャップ23とは互いにネジ係合された螺嵌構造(スクリューキャップ構造)である。
【0051】
また、図2の202に示されるように、本実施形態に係るキット100では、眼科用製品Aにおける容器本体1の口部1aは、希釈剤品Bにおける点眼容器20の容器本体21の口部21aと嵌合するように構成されている。より具体的には、口部1aの内壁面と口部21aの外壁面とは、互いに嵌合するように構成されている。この嵌合により、容器本体1と容器本体21とは互いに位置固定される。ヨウ素原液Iと希釈液Dとを用事混合は、容器本体1の口部1aおよび容器本体21の口部21aが互いに嵌合された状態で行われる。図2の203に示されるように、用事混合により調製された、眼科治療に適用可能な調製物Pは、点眼容器20に収容される。
【0052】
次に、キット100を用いた調製物Pの調製方法について説明する。まず、調製物Pの調製方法では、ヨウ素原液Iが収容された容器10の蓋部2を開け、容器本体1から蓋部2を取り外す。また、希釈液Dが収容された点眼容器20の中栓部22を開け、容器本体21から中栓部22およびキャップ23を取り外す。次いで、容器本体21中の希釈液Dをこぼさないように、容器本体21の口部21aを容器本体1の口部1aに差し込み、容器本体21の口部21aを容器本体1の口部1aに嵌合固定する(図2の202に示す状態)。そして、互いに嵌合固定された容器本体1および容器本体21を振って、ヨウ素原液Iおよび希釈液Dを混合させ、調製物Pを調製する。そして、調製物Pを容器本体21の方に移し、容器本体21から容器本体1を取り外す。そして、取り外しておいた中栓部22およびキャップ23を容器本体21にセットして、点眼容器20に調製物Pを収容する。
【0053】
このように、本実施形態に係るキット100によれば、容器10の容器本体1と点眼容器20の容器本体21とを嵌合固定して振るだけで、眼科治療に適用可能な調製物Pを調製することが可能である。それゆえ、ヨウ素原液Iの希釈混合作業が簡便になる。
【0054】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る眼科用製品Aは、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物(ヨウ素原液I)が、容器10に収容されてなる眼科用製品Aであって、前記容器10が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される構成である。
【0056】
本発明の態様2に係る眼科用製品Aは、態様1において、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)と接触している前記容器10の一部または全部が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される構成であってもよい。
【0057】
本発明の態様3に係る眼科用製品Aは、態様1または2において、前記ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)を含む構成である。
【0058】
本発明の態様4に係る眼科用製品Aは、態様1~3のいずれかにおいて、前記フッ素系樹脂は、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)を含む構成である。
【0059】
本発明の態様5に係る眼科用製品Aは、態様1~4のいずれかにおいて、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)は、ヨウ化カリウムをさらに含む構成である。
【0060】
本発明の態様6に係る眼科用製品Aは、態様1~5のいずれかにおいて、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)は、液体状、流動粘体状、又は半固形状である構成である。
【0061】
本発明の態様7に係る眼科用製品Aは、態様1~6のいずれかにおいて、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)中のヨウ素の含有量が、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)1mLあたり、0.01mg~100mgである構成である。
【0062】
本発明の態様8に係る眼科用製品Aは、態様1~7のいずれかにおいて、前記容器10は、容器本体1と蓋部2とを備え、前記容器本体1および前記蓋部2が、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)と接触する部分である。
【0063】
本発明の態様9に係る眼科用製品Aは、態様1~8のいずれかにおいて、前記容器10は、容器本体1と蓋部2とを備え、前記蓋部2は、中栓部3と外キャップ部4とを備え、前記容器本体1および前記中栓部3が、前記眼科用組成物と接触する部分である構成である。
【0064】
本発明の態様10に係る眼科用製品Aは、態様8または9において、前記容器本体1の一部または全部が透明である構成である。
【0065】
本発明の態様11に係る眼科用製品Aは、態様1~10のいずれかにおいて、前記眼科用製品Aは、眼疾患の治療又は予防のために使用される構成である。
【0066】
本発明の態様12に係る眼科用製品Aは、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物(ヨウ素原液I)が、容器10に収容されてなる眼科用製品Aであって、前記容器10は、容器本体1と、蓋部2とを備え、前記容器本体1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成され、前記蓋部2は、中栓部3と外キャップ部4とを備え、前記中栓部3は、高密度ポリエチレン(HDPE)から構成される構成である。
【0067】
本発明の態様13に係る眼科用組成物(ヨウ素原液I)は、容器10に収容されてなる、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物(ヨウ素原液I)であって、前記容器10が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料により構成される構成である。
【0068】
本発明の態様14に係る眼科用組成物の保存方法は、ヨウ素及びポリビニルアルコールを有効成分として含有する眼科用組成物(ヨウ素原液I)を容器10に収容して保存する方法であって、前記容器10において、前記眼科用組成物と接触する部分が、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種の材料で構成される方法である。
【0069】
本発明の態様15に係るキット100は、態様1~11のいずれかの眼科用製品Aと、薬学的に許容される希釈液Dが希釈容器(点眼容器20)に収容されてなる希釈剤品Bと、を備えた構成である。
【0070】
本発明の態様16に係るキット100は、態様15において、前記希釈液Dは、生理食塩水または精製水である構成である。
【0071】
本発明の態様17に係るキット100は、態様15または16において、前記眼科用組成物(ヨウ素原液I)は、前記希釈液Dと混合することにより、眼科治療に適用可能な調製物Pに変換される構成である。
【0072】
本発明の態様18に係るキット100は、態様17において、前記調製物Pは、ヨウ素の濃度が0.0001~5%(w/v)である構成である。
【0073】
本発明の態様19に係るキット100は、態様15~18のいずれかにおいて、前記希釈容器(点眼容器20)は、容器本体21と、蓋部(中栓部22)とを備え、前記眼科用製品Aにおける前記容器本体1の口部1aは、前記希釈剤品Bにおける前記希釈容器(点眼容器20)の前記容器本体21の口部21aと嵌合するように構成されている構成である。
【0074】
本発明の態様20に係るキット100は、態様15~19のいずれかにおいて、さらに、プラスチック材料、紙又は厚紙製のパッケージ30を備え、前記パッケージ30中に、前記眼科用製品Aと前記希釈剤品Bとが内包される構成である。
【0075】
本発明の態様21に係るキット100は、態様15~20のいずれかにおいて、点眼又は洗眼用である構成である。
【実施例0076】
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0077】
試験例1:ヨウ素の残存率(非接液状態、容器材質が及ぼす影響の検討)の評価
下記表1に示す各成分を溶解撹拌することによって、ヨウ素原液Iを調製した。具体的には、ヨウ素2.0g、ポリビニルアルコール80.0g、ヨウ化カリウム2.3gを精製水に溶かし、全量を1,000mLとした。
【0078】
得られたヨウ素原液I 2mLを10mL容量の褐色透明な硝子アンプル内に充填した。その後、ヨウ素原液Iと接触させないように様々な樹脂片を硝子アンプル内に固定した状態で、硝子アンプル口部を溶閉した。なお、使用した各樹脂片の表面積は約311mmである。そして、この硝子アンプルを、紙製の箱に入れ、温度25℃、相対湿度60%の環境下で保管した。そして、14日後、35日後に、各樹脂片が固定された硝子アンプルに収納されているヨウ素原液Iのヨウ素残存率を測定した。当該測定は、下記<ヨウ素残存率の測定>に従って行った。その際、下記式1に従って、ヨウ素原液Iのヨウ素残存率(%)を確認した。なお、ヨウ素及びヨウ化カリウムは第十七改正日本薬局方の規格に適合するものであり、ポリビニルアルコールは医薬品添加物規格2018の規格に適合するものであった。
【0079】
<ヨウ素原液Iの組成>
使用されるヨウ素原液Iの組成は、以下の表1の通りである。
【0080】
【表1】
【0081】
<ヨウ素残存率の測定>
ヨウ素残存率は、以下のように測定した。
1)ヨウ素原液I 約0.5gを三角フラスコに採取し、採取量を記録した。
2)1)のサンプルに約30mLの精製水を加え、三角フラスコを振り撹拌した。
3)2)のサンプルに約2mLのデンプン試液を添加し、軽く撹拌した。
4)3)のサンプルを撹拌しながら、0.0005mol/Lのチオ硫酸ナトリウム液で滴定した。
5)4)のサンプルが透明になった時点を滴定終点とし、ヨウ素原液I中に含まれるヨウ素量を算出した。
6)保管前後のヨウ素原液Iについて上記1)~5)の測定方法にてヨウ素原液I中に含まれるヨウ素量を算出した。そして、下記式1のように、保管後のヨウ素原液Iに含まれるヨウ素量を保管前のヨウ素原液Iに含まれるヨウ素量で除することにより、ヨウ素残存率(%)を算出した。
【0082】
(式1)
ヨウ素残存率(%)={(保管後のヨウ素濃度)/(保存前のヨウ素濃度)}×100
本試験例において、樹脂片はフッ素系樹脂である四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、および環状オレフィンコポリマー(COC)を使用した。また、比較例として、硝子アンプル内に樹脂片を含まない状態でのヨウ素残存率も確認した。
【0083】
表2は、試験例1の結果を示す表である。また、図3は、試験例1の結果を示すグラフである。
【0084】
【表2】
【0085】
図3に示されるように、樹脂片として、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた場合、ヨウ素残存率が、比較例に比べて同等か、またはそれ以上であった。一方、樹脂片として、ポリ塩化ビニル(PVC)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、および環状オレフィンコポリマー(COC)を用いた場合、ヨウ素残存率が、比較例に比べて低かった。
【0086】
これらの結果から、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)は、硝子に比べて同等か、またはそれ以上ヨウ素を吸着しないことがわかった。
【0087】
試験例2:ヨウ素の残存率(接液状態、容器材質が及ぼす影響の検討)の評価
上記表1に示す各成分を溶解撹拌することによって、ヨウ素原液Iを調製した。具体的には、ヨウ素2.0g、ポリビニルアルコール80.0g、ヨウ化カリウム2.3gを精製水に溶かし、全量を1,000mLとした。
【0088】
得られたヨウ素原液I 2.0mLを8mL容量の青色透明なポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルに充填後、ボトル口部を溶閉した。そして、このボトルを、紙製の箱に入れ、温度25℃、相対湿度60%の環境下で保管し、7日後、14日後、35日後に、各ボトルに収納されているヨウ素原液Iを前記試験例1と同様の方法にて測定した。その際、上記式1に従って、ヨウ素原液Iのヨウ素残存率(%)を確認した。
【0089】
また、比較例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルの代わりに、10mL容量の褐色透明な硝子アンプルを用いてヨウ素残存率を確認した。
【0090】
得られたヨウ素原液I 2mLを10mL容量の褐色透明な硝子アンプル内に充填後、硝子アンプル口部を溶閉した。そして、温度25℃、相対湿度60%の環境下で保管し、各ボトルについて、7日後、14日後、35日後にヨウ素残存率を確認した。
【0091】
なお、ヨウ素及びヨウ化カリウムは第十七改正日本薬局方の規格に適合するものであり、ポリビニルアルコールは医薬品添加物規格2018の規格に適合するものであった。
【0092】
表3は、試験例2の結果を示す表である。また、図4は、試験例2の結果を示すグラフである。
【0093】
【表3】
【0094】
図4に示されるように、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルは、硝子アンプルと比較して同等か、またはそれ以上ヨウ素吸着しないことがわかった。
【0095】
試験例3:ヨウ素の残存率(接液状態、容器材質及び容器形態が及ぼす影響の検討)の評価
上記表1に示す各成分を溶解撹拌することによって、ヨウ素原液Iを調製した。具体的には、ヨウ素2.0g、ポリビニルアルコール80.0g、ヨウ化カリウム2.3gを精製水に溶かし、全量を1,000mLとした。
【0096】
得られたヨウ素原液I 1.0mLを8mL容量の無色透明なポリエチレンテレフタレート(PET)製のねじ口式スクリューバイアルに充填後、中栓及び外キャップで構成された蓋部で密閉した。そして、この容器を、紙製の箱に入れ、温度25℃、相対湿度60%の環境下で保管し、経時的にヨウ素残存率を確認した。なお、ヨウ素残存率は、前記試験例1の同様の方法にて測定した。その際、上記式1に従って、ヨウ素原液Iのヨウ素残存率(%)を確認した。
【0097】
また様々な構造・材料からなる収容容器について、ヨウ素残存率を確認し、ヨウ素吸着を評価した。具体的には、ヨウ素原液Iを収容する容器本体として硝子製の、蓋押し込み式プッシュバイアルを使用し、容器本体を閉塞する蓋部の構造・材質を変えて、ヨウ素吸着を評価した。
【0098】
具体的には、得られたヨウ素原液I 1.0mLを8mL容量の褐色硝子バイアルに充填後、一重栓または二重栓で密閉した。そして、この容器を、紙製の箱に入れ、温度25℃、相対湿度60%の環境下で保管し、経時的にヨウ素残存率を確認した。
【0099】
なお、ヨウ素及びヨウ化カリウムは第十七改正日本薬局方の規格に適合するものであり、ポリビニルアルコールは医薬品添加物規格2018の規格に適合するものであった。
【0100】
図5は、試験例3の結果を示すグラフである。また、表4は、試験例3の結果を示す表である。図5に示される実施例に対応する収容容器は、図1に示される容器10であり、容器本体1がポリエチレンテレフタレート(PET)製、中栓部3が高密度ポリエチレン(HDPE)製、外キャップ部4がポリプロピレン(PP)製である(表5参照)。外キャップ部4にはヨウ素原液Iが接触しない。
【0101】
また、図5に示される比較例1及び比較例2で採用した収容容器は、硝子製プッシュバイアルを閉塞する蓋部が一重栓である容器である(表5参照)。この蓋部は、ヨウ素原液Iに接触する。比較例1及び比較例2で採用した収容容器は、図1に示されるような、容器本体と外キャップ部とがネジ係合した構造ではない。
【0102】
また、図5に示される比較例3及び比較例4で採用した収容容器は、硝子製プッシュバイアルを閉塞する蓋部が中栓部および外キャップ部からなる二重栓である容器である(表5参照)。比較例3及び比較例4で採用した収容容器は、図1に示されるような、容器本体と外キャップ部とがネジ係合した構造ではない。また、比較例3及び比較例4で採用した収容容器は、中栓部がヨウ素原液Iに接触し、外キャップ部はヨウ素原液Iと僅かに接触する。「二重栓(LLDPE/PET)」は、中栓部がポリエチレンテレフタレート(PET)製、外キャップ部が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)製の容器である。また、「二重栓(HDPE/PET)」は、中栓部がポリエチレンテレフタレート(PET)製、外キャップ部が高密度ポリエチレン(HDPE)製の容器である。
【0103】
【表4】
【0104】
図5に示す結果からわかるように、栓材質として高密度ポリエチレン(HDPE)単独、あるいは高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した実施例、及び比較例2の収容容器について、少なくとも60日経過しても、ヨウ素残存率は、90%以上を維持していた。また、比較例4の収容容器については、少なくとも60日経過しても、ヨウ素残存率は、88%以上を維持していた。一方、栓材質として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)単独、あるいは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した比較例1及び比較例3の収容容器について、60日経過後、著しく低下した。
【0105】
図5から明らかなように、ヨウ素原液Iを、容器本体がポリエチレンテレフタレート(PET)製、中栓部3が高密度ポリエチレン(HDPE)製の収容容器に保存した場合、90日経過後してもヨウ素残存率は95%以上を維持し、ヨウ素の残存率は非常に高かった。
【0106】
【表5】
【0107】
〔製剤例〕
以下、表6に製剤例を挙げて本発明の眼科用組成物をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0108】
【表6】
【0109】
なお、前記処方例1~5におけるヨウ素、ポリビニルアルコール、ヨウ化カリウムの配合量を適宜調整し所望の組成物を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、眼科治療の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
10 容器
1 容器本体
1a 口部
2 蓋部
3 中栓部
4 外キャップ部
20 点眼容器(希釈容器)
21 容器本体
21a 口部
100 キット
A 眼科用製品
B 希釈剤品
I ヨウ素原液(眼科用組成物)
D 希釈液
P 調製物

図1
図2
図3
図4
図5