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特開2022-22296ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ経路バイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022296
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ経路バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20220127BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220127BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220127BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220127BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20220127BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20220127BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K31/337
A61K31/4196
A61K31/436
A61K31/475
A61K31/513
A61K31/517
A61K31/565
A61K31/675
A61K31/704
A61K31/7068
A61K38/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
G01N33/53 Y
C12N9/99
C12Q1/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192872
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2020119091の分割
【原出願日】2010-12-08
(31)【優先権主張番号】61/285,821
(32)【優先日】2009-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/287,872
(32)【優先日】2009-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】309040701
【氏名又は名称】ワイス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アナ バーケンブリット
(72)【発明者】
【氏名】クリスティナ マリエ コグリン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ マーシャル ファインゴールド
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ステファン ジョンストン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ルイス ストラフス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ マイケル ザチャーチャック
(57)【要約】
【課題】乳癌、特に1種または複数の既知の乳癌治療薬による治療に耐性である癌を治療する方法、ならびに、薬物療法に対する患者の反応を予測するための患者選択戦略を提供する。
【解決手段】乳癌、特に1種または複数の既知の乳癌治療薬による治療に耐性である癌を治療する方法、および薬物療法に対する患者の反応を予測するための関連する患者選択戦略であって、そのような戦略は、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を患者において検出するステップ、ならびにpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤を対象に投与することによって、それらの1つまたは複数の存在に関して陽性である患者を治療するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された方法または組成物または阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年12月11日出願の米国特許出願第61/285,821号、および2009年12月18日出願の米国特許出願第61/287,872号の特典を主張するものであり、いずれも全体を参照により本明細書の一部とする。
【0002】
本開示は、乳癌を治療する方法に関する。この癌は、1種または複数の既知の乳癌治療薬による治療に耐性であり得る。本開示はまた、薬物療法に反応する患者を予測するための患者選択戦略を提供する(すなわち、「PI3K活性化」腫瘍を有する患者を同定する)。本開示はまた、pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤で乳癌患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒト癌における構成的PI3K活性化は、標的薬剤および標準細胞毒性療法に対する薬物耐性の一因であると考えられている。活性化機序およびPI3Kノードから発出する複数の下流カスケードの組合せが、バイオマーカーとしてのPI3K活性化の測定を困難にする一因である。
【0004】
ネラチニブは、経口で利用できる、潜在的な抗腫瘍活性を有するHER-2受容体チロシンキナーゼの6,7-二置換-4-アニリノキノリン-3-カルボニトリル不可逆性阻害剤である。ネラチニブは、不可逆的にHER-2受容体に結合し、それによって、おそらく受容体のATP結合ポケットにおいてシステイン残基を標的にすることにより、細胞の自己リン酸化を減少させる。この薬剤による細胞の処置は、下流シグナル伝達事象および細胞周期調節経路の阻害をもたらし、細胞分裂周期をG1-S(Gap1/DNA合成)相転移で停止させ、最終的に細胞増殖を減少させる。ネラチニブはまた、上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼおよびEGFR依存性細胞の増殖を阻害する。
【0005】
トラスツズマブ(Herceptin)は、HER2/Neu 受容体を妨げるモノクローナル抗体である。HER受容体は、細胞膜に埋め込まれたタンパク質であり、細胞外から細胞内に分子シグナルを伝達し、遺伝子をオンおよびオフにする。HERタンパク質は、細胞成長、生存、接着、移動、および分化を調節する-癌細胞において増幅または弱化される機能である。一部の癌、特に一部の乳癌では、HER2受容体が不全であり、「オン」の位置に固定されており、乳房細胞を制御不能に増殖させ、乳癌を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象において乳癌を治療する方法であって、対象からサンプルを得るステップ、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を検出するステップ、ならびにpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤を投与することによって、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である患者を治療するステップを含む方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、pan-ErbB阻害剤は、不可逆性であり、PIK3CAがErbB受容体の細胞内部分に結合するのを妨げ、いくつかの実施形態において、ErbB受容体チロシンキナーゼの細胞内阻害剤は、ネラチニブである。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、PIK3CA遺伝子の変異が、エクソン9において、成熟タンパク質配列の542位でEがKで置換される点変異、アミノ酸545でEがKまたはDで置換される点変異、およびエクソン20において、成熟タンパク質配列のアミノ酸1047でHがRで置換される点変異の1つまたは複数を含む、本明細書に記載の治療方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、PIK3CA遺伝子の変異の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、またはPIK3CA遺伝子に特異的な核酸プローブによる直接核酸配列決定もしくはハイブリダイゼーションを含む。いくつかの実施形態において、PTEN発現の検出は、逆相タンパク質アレイ、ウェスタンブロッティング、半定量的または定量的IHCの1つまたは複数を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象において乳癌を治療する方法であって、対象からサンプルを得るステップ、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を検出するステップ、ならびにpan-ErbB阻害剤を投与することによって、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である患者を治療するステップを含み、対象がPIK3CA遺伝子増幅に関して陽性である場合、対象に1種または複数の組成物または療法を投与するステップをさらに含み、それらの組成物または療法が乳癌の治療に有用である方法を提供する。追加治療は、手術、放射線、またはレトロゾール(Femara)、アナストロゾール(Arimidex)、フルベストラント(Faslodex)、およびエキセメスタン(Aromasin)を含めたアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン(Zoladex);ドキソルビシン(Adriamycin)、エピルビシン(Ellence)、およびリポソーム化ドキソルビシン(Doxil)を含めたアントラサイクリン;ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル(Taxol)、およびタンパク質結合パクリタキセル(Abraxane)、シクロホスファミド(Cytoxan)を含めたタキサン;カペシタビン(Xeloda)および5フルオロウラシル(5FU);ビノレルビン(Navelbine);ゲムシタビン(Gemzar);トラスツズマブ(Herceptin)、ラパチニブ、BIBW2992、PI3K阻害剤(たとえば、XL147、PX-866)、mTOR阻害剤(たとえば、テムシロリムス、エベロリムス)、およびデュアルPI3K-mTOR阻害剤(たとえば、BEZ235)の1種または複数から選択される追加の化学療法剤の1種または複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明は、対象において乳癌を治療する方法であって、対象からサンプルを得るステップ、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を検出するステップ、ならびにトラスツズマブによって、これら3つすべてのバイオマーカーに関して陰性である患者を治療するステップを含む方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、乳癌対象を治療する方法であって、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を検出するステップを含み、対象がPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少に関して陰性である場合、対象にトラスツズマブを投与する方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、乳癌を有する対象がpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤による治療の候補であるかどうかを判定する方法であって、対象からサンプルを得るステップ、PIK3CA遺伝子増幅の存在または不在を検出するステップを含み、対象がPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である場合、対象をpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤による治療の候補として同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、pan-ErbB阻害剤は、不可逆性であり、PIK3CAがErbB受容体の細胞内部分に結合するのを妨げ、いくつかの実施形態において、ErbB受容体チロシンキナーゼの細胞内阻害剤は、ネラチニブである。
【0014】
いくつかの実施形態において、対象がpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤、またはたとえばネラチニブによる治療の候補であるかどうかを判定する方法は、エクソン9において、タンパク質配列の542位でEがKで置換されている点変異、エクソン9において、アミノ酸545でEがKまたはDで置換されている点変異、およびエクソン20において、アミノ酸1047でHがRで置換されている点変異から選択されるPIK3CA遺伝子の変異を検出するステップを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、対象がpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤、またはたとえばネラチニブによる治療の候補であるかどうかを判定する方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、直接PIK3CA遺伝子配列決定、患者のサンプルから生じるcDNAの配列決定を含む、PIK3CA遺伝子の変異の検出を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、対象がpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤、またはたとえばネラチニブによる治療の候補であるかどうかを判定する方法は、逆相タンパク質アレイ、ウェスタンブロッティング、半定量的または定量的IHCの1つまたは複数による、PTEN発現の検出を含む。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
対象において乳癌を治療する方法であって、
a)対象からサンプルを得るステップ、
b)PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在を検出するステップ、ならびに
pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤を対象に投与することによって、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である対象を治療するステップを含む方法。
(項目2)
pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤が、不可逆性であり、PIK3CAがErbBの細胞内部分に結合するのを妨げる、項目1に記載の方法。
(項目3)
不可逆性pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤が、ネラチニブである、項目2に記載の方法。
(項目4)
PIK3CA遺伝子の変異が、エクソン9において、成熟タンパク質配列の542位でEがKで置換されている点変異、アミノ酸545でEがKまたはDで置換されている点変異、およびエクソン20において、成熟タンパク質配列のアミノ酸1047でHがRで置換されている点変異の1つまたは複数を含む、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
PIK3CA遺伝子の変異を検出する方法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、またはPIK3CA遺伝子に特異的な核酸プローブによる直接核酸配列決定もしくはハイブリダイゼーションを含む、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
PTEN発現の検出が、逆相タンパク質アレイ、ウェスタンブロッティング、半定量的または定量的免疫組織化学(IHC)法の1つまたは複数を含む、項目1から5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
対象がPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である場合、対象に1種または複数の組成物または療法:手術、放射線、またはレトロゾール(Femara)、アナストロゾール(Arimidex)、フルベストラント(Faslodex)、およびエキセメスタン(Aromasin)を含めたアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン(Zoladex);ドキソルビシン(Adriamycin)、エピルビシン(Ellence)、およびリポソーム化ドキソルビシン(Doxil)を含めたアントラサイクリン;ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル(Taxol)、およびタンパク質結合パクリタキセル(Abraxane)、シクロホスファミド(Cytoxan)を含めたタキサン;カペシタビン(Xeloda)および5フルオロウラシル(5FU);ビノレルビン(Navelbine);ゲムシタビン(Gemzar);トラスツズマブ(Herceptin)、ラパチニブ、BIBW2992、PI3K阻害剤(たとえば、XL147、PX-866)、mTOR阻害剤(たとえば、テムシロリムス、エベロリムス)、およびデュアルPI3K-mTOR阻害剤(たとえば、BEZ235)の1種または複数から選択される追加の化学療法剤を投与するステップをさらに含む、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
対象のサンプルが、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少に関して陰性である場合、対象にトラスツズマブを投与する、項目1に記載の方法。
(項目9)
乳癌を有する対象がネラチニブによる治療の候補であるかどうかを判定する方法であって、
a)対象からサンプルを得るステップ、
b)PIK3CA遺伝子増幅の存在または不在を検出するステップを含み、
対象がPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在に関して陽性である場合、
対象をpan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤による治療の候補として同定する方法。
(項目10)
pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤が、不可逆性であり、PIK3CAがErbBの細胞内部分に結合するのを妨げる、項目9に記載の方法。
(項目11)
不可逆性pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤が、ネラチニブである、項目10に記載の方法。
(項目12)
PIK3CA遺伝子の変異が、エクソン9において、タンパク質配列の542位でEがKで置換されている点変異、エクソン9において、アミノ酸545でEがKまたはDで置換されている点変異、およびエクソン20において、アミノ酸1047でHがRで置換されている点変異から選択される、項目9から11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
PIK3CA遺伝子の変異の検出が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、直接PIK3CA遺伝子配列決定、患者のサンプルから生じるcDNAの配列決定を含む、項目9から12のいずれかに記載の方法。
(項目14)
PTEN発現の検出が、逆相タンパク質アレイ、ウェスタンブロッティング、半定量的または定量的IHCの1つまたは複数を含む、項目9から13のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、「PI3K活性化」腫瘍を正確に特徴付けるために、遺伝子、ゲノム、およびタンパク質バイオマーカーの複合的手法を用いて、経路活性化を判定するアッセイを提供する。そのような経路状態の複合的手法は、各群の治療効果を比較するために、無作為化試験において「経路オン」および「経路オフ」サブセットへの患者の統計的層別化を用いて評価することができる。さらに、経路オンと経路オフ状態の判定は、乳癌を罹患している患者の治療プロトコルを選択する一助となり得る。いくつかの実施形態において、選択された治療プロトコルは、乳癌患者にネラチニブを投与することを含む。
【0018】
患者を同定する現行の戦略は通常、対象となる患者集団を同定するための単一のバイオマーカー、すなわちHer2+またはKRAS変異体を用いる。しかしながら、PI3Kノードにおいて、このシグナル伝達ノードに依存する患者の腫瘍の同定は単純ではなく、これは2つの異なるタンパク質複合体がこの「スイッチ機序」に関与し(たとえば、PI3K複合体およびPTENタンパク質)、したがって同じ表現型を生じる、すなわち内部膜表面に蓄積し、PDK1およびAkt/PKBの結合/ドッキング部位を形成し、次いで細胞に導かれる増殖および抗アポトーシスシグナルをもたらすセカンドメッセンジャーであるPIPを蓄積する、活性化(PIK3CA)および不活性化(PTEN)の複数の機序を有する2つの関与遺伝子が存在するためである。
【0019】
個々のバイオマーカーの予測能力を考慮する代わりに、この戦略は、特定の治療的経路阻害剤の投与から臨床的利益を得るであろう、具体的な「経路オン」患者集団を同定する一群のバイオマーカーの使用を開示する。
【0020】
たとえば変異解析、DNAコピー数、メチル化状態、および遺伝子またはタンパク質発現パターンによる腫瘍の分類が利用可能である。トラスツズマブの承認以来、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)によって承認されたすべての新しい腫瘍治療化合物のほぼ半数は、何らかの形態の患者選択バイオマーカーに関連するものである。これらの例は主として、腫瘍サンプルの標的生物学を測定することを対象としている。患者選択におけるさらに最近の進歩は、特定の薬剤から臨床的利益を得る患者を、利益を得ない患者と区別するための、薬物耐性機序の同定である(たとえば、V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫[KRAS]変異状態は、結腸癌において抗体に基づく上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤の添加から利益を得ない患者を同定する(1))。
【0021】
ErbB RTKファミリーのメンバー(EGFR、HER2、HER3、HER4)は、遺伝子的事象を受け、ヒト癌の複数の型でシグナル伝達活性化をもたらし、乳癌においてもっとも頻繁に言及されるものには、増幅、変異、およびより最近では、転写活性化で役割を有するイントロン反復が含まれる(2~4)。PI3Kは、膜における腫瘍形成RTK複合体が関与するいくつかのシグナル伝達カスケードの1つであり、重要な治療標的である可能性がある(近年(5)に概説されている)。癌におけるこのシグナル伝達ノードの重大な役割は、カスケードの成分、すなわちPIK3CA、PTEN、PDK1、およびAKTをコードする遺伝子の遺伝子損傷を伴うヒト悪性腫瘍の割合によって明らかにされる。
【0022】
種々の腫瘍で構成的経路活性化をもたらす遺伝子損傷は、反対の局面にある。たとえば、PIK3CA遺伝子のp110αサブユニットの機能獲得型もしくは活性化変異または増幅は一部の腫瘍で観察され、シグナル伝達カスケードの「アクセル」として作用するのに対し、機能喪失型事象(すなわち、欠失、プロモータメチル化、または変異)は一般にPTENに関して認められ、系の「ブレーキ」として作用する。
【0023】
この経路を標的にする乳癌の現行の治療的手法には、ErbB経路阻害剤(たとえば、トラスツズマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、BIBW2992)、PI3K阻害剤(たとえば、XL147、PX-866)、mTOR阻害剤(たとえば、テムシロリムス、エベロリムス)、およびデュアルPI3K-mTOR阻害剤(たとえば、BEZ235)が含まれる。PI3K経路の活性化は、乳癌のErbB2標的療法に対する耐性、ならびに細胞毒性剤に対する耐性と関連付けられている。複数の治療選択肢が存在し、PI3K活性が多くの設定で薬物耐性を予測することを考えると、臨床開発のために、保存されたヒト腫瘍組織サンプルで「PI3K経路活性化」の予測を可能にするアッセイを開発できるかどうかという問題が提起される。単一のPI3K経路活性化バイオマーカーの開発における課題は、主として2つの主要な問題に起因する。第一に、腫瘍形成経路活性化を特異的に測定する単一の主要なバイオマーカーが同定されていないことである。いくつかのそのようなバイオマーカーが提示されているが、それぞれ特定の課題を伴っている。たとえば、(1)Aktリン酸化は、PI3Kにおいてこのシグナル伝達ノードに関して完全に特異的なマーカーではなく、すべての腫瘍サンプルで完全にはPI3K活性化を捕捉しない可能性があり(6、7)、(2)もっとも直接的な経路マーカーであるPIPの腫瘍特異的レベルは、リン酸化脂質の正確な測定がリン酸化タンパク質の測定より困難であり得る保存組織の設定で課題を提起する可能性がある(8)。
【0024】
遺伝子発現プロファイリングなど、経路活性化の基礎にある生物学を捕捉することを目的とした新規なバイオマーカーは、経路活性化を測定する有望な手法である。生検のタイミングおよび臨床開発パラダイムにおけるゲノム手法の可能性に関する問題を解決するための臨床戦略が開発中であり、近い将来、これらの主要な問題の一部を解決する一助となるであろう。それにもかかわらず、そのような手法は現在、グローバル第3相試験の状況において実施が困難なままである。この設定において、保存された腫瘍試料に適用可能であり、一様な方法および標準化された条件下(すなわち、優良試験所基準)でグローバルに実行されるアッセイのパネルの開発が急務である。
【0025】
前臨床設定における標的経路阻害剤のバイオマーカーの発見には、いくつかの個別の手法を用いることができ、これには(1)その薬物に曝露された異種移植モデルもしくは細胞株のパネルを用いる薬物耐性のモデリング、または(2)分子レベル(たとえば、siRNA)での前臨床モデル系の経路攪乱後の経路活性化のモデリングが含まれる。そのようなモデルから導かれたバイオマーカーは、ヒト腫瘍組織で経路マーカーを測定することによってさらに評価できる。
【0026】
クラスIホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)は、2つのサブユニット、p110α触媒ドメインおよびp85調節ドメインを有するヘテロ二量体脂質キナーゼ複合体である。リガンド結合および受容体チロシンキナーゼ(RTK)自己リン酸化により、PI3Kは細胞膜に動員され、RTKの細胞内アームに結合し、ホスファチジルイノシトール(4,5)-二リン酸(PIP)のホスファチジルイノシトール(3,4,5)-三リン酸(PIP)への変換を触媒する。
【0027】
正常な生理条件下、PI3Kは、増殖、移動、およびアポトーシスなどの細胞過程の調節において重要な役割を果たす。Akt/PKBおよびホスホイノシチド依存キナーゼ-1(PDK1)は膜に動員され、蓄積されたPIPプールに直接結合することによって活性化される。活性PDK1は、基質(Akt/PKB、SGK3)のリン酸化によってシグナル伝達を増強する。Akt/PKBは、PDK1(T308位)およびPDK2/哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)C2(S473位)の両方でリン酸化され、Akt/PKB下流シグナル伝達の完全な活性化をもたらし、これによりAkt/PKBはmTORの上流および下流の両方に残される(6、9~11)。
【0028】
PI3K-PTENノードでの簡潔(elegant)なシグナル伝達「スイッチ」機序において、PI3K複合体のキナーゼ活性は、PIPをPIPに変換し、PI3Kの活性の「抑止(check)」として本質的に機能する、PTEN(phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10)として知られるデュアルホスファターゼによって対抗される。
【0029】
ネラチニブは(HKI-272とも称される)、ErbB受容体および下流基質のリン酸化を阻害し、前臨床モデルにおいてこの活性により、ネラチニブはPI3K複合体のリン酸化および活性化を阻害することが示されている(たとえば、WO09/052264、page6~7;US2007/0104721の段落7および21;ならびに米国特許第7,399,865号参照)。
【0030】
PTENタンパク質発現および/またはPIK3CA遺伝子の減少は、トラスツズマブによる乳癌の治療に対する耐性と関連付けられている。半定量的免疫組織化学(IHC)アッセイを用いることによって、これらの変化は乳癌におけるトラスツズマブ耐性と関連付けられている。Berns K.等、Cancer Cell.2007 Oct;12(4):395~402(12)。
【0031】
ヒト悪性腫瘍におけるPI3K経路活性化のパターン
PI3K経路異常は、乳癌患者の診断時に著しい割合で存在し、これらは標準的療法に対するデノボ耐性機序であることをデータは示している。重要なことに、新規な標的療法(pan-ErbB阻害剤など)の導入は、一部の標準的療法に対する感受性を回復させる可能性がある。この種のバイオマーカー戦略のコンセプトは、標準的治癒療法に耐性であることが予測される患者の生物学的サブセットを同定することであり、新規な経路阻害剤の追加または代替は、その耐性機序を克服することによって、より高い治療有効性を示すことが予期されよう。たとえば、Her2+乳癌において、PI3K経路活性化は、トラスツズマブに対する耐性を予測する(12~15)。標準的なトラスツズマブ療法に反応することが予測される患者(「PI3Kオフ」)および臨床反応を得るために新規な経路阻害剤(たとえば、「PI3Kオン」の設定でpan-ErbB阻害剤)による治療を必要とする可能性のある患者を同定するために、患者の2つのサブセットを識別する(たとえば、「PI3Kオン」および「PI3Kオフ」)PI3K経路活性化のバイオマーカーが用いられる(49)。
【0032】
腫瘍細胞の複数の遺伝子事象およびエピジェネティック事象は共通の道筋、すなわち下流シグナル伝達の増強をもたらす細胞膜でのPIPレベルの蓄積に至る。PI3K活性化を組み入れるバイオマーカー戦略の目標は、(1)PI3Kによる下流シグナル伝達に駆動されるか、もしくは下流シグナル伝達に依存する、または(2)このシグナル伝達経路に依存しない腫瘍の存在に基づいて患者を識別し、個別のサブセットに分類することのできる一連のアッセイを開発することである。PIK3CA変異およびPTEN消失の複合評価は、PI3K経路活性化が、転移性ErbB2+乳癌患者のトラスツズマブ療法に対する耐性機序であることを実証している(12)。臨床開発および治療パラダイムにそのような手法を適用するために、単独または乳癌を治療するための別の薬剤との組合せによる療法の選択として、ならびに乳癌を治療するための一実施形態において、ネラチニブ使用の適切性を評価する個別の戦略が提供される。
【0033】
PI3K活性化
経路活性化をもたらすPIK3CA遺伝子の原発性乳癌サンプルで観察される既知の遺伝子事象は、エクソン9もしくは20のホットスポット変異、遺伝子増幅、または両方の組合せからなる。
【0034】
PTEN消失
PTEN消失は、典型的に短縮型タンパク質を産生し得る変異に起因するC末端タンパク質エピトープを認識する抗体を用い、標準的なIHC手法を使用して臨床で日常的に研究されてきた。IHCによる既知の遺伝子消失事象とPTEN発現との間の一致と不一致の様々な例が文献に存在し、これは基礎にある生物学の解釈にいくつかの課題を生じ得る(16~17)。遺伝子損傷を有する患者の割合とタンパク質レベルの低下した患者との間の不一致に関して、可能性のあるいくつかの説明が存在する。理論に縛られるものではないが、IHC法は定量的または半定量的であることができ、解釈の相違は異なる結果を導き出すことがある。IHC法は、すべての種の全長タンパク質(機能性または機能不全)を検出し、タンパク質レベルの「低減」は、不安定化変異、miRNA発現、または共発現安定化タンパク質に由来する可能性があるのに対し、PTENタンパク質の完全補体はホスファターゼドメインの点変異によって認められることがある(18~19)。
【0035】
いくつかの実施形態において、ネラチニブは、1日当たり100から500mg、1日当たり200から400mgの用量、および1日当たり約250mgの用量で対象に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明は、乳癌の別の治療と併用してネラチニブによって乳癌を治療する方法を提供する。1種または複数の追加治療は、手術、放射線、またはレトロゾール(Femara)、アナストロゾール(Arimidex)、フルベストラント(Faslodex)、およびエキセメスタン(Aromasin)を含めたアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン(Zoladex);ドキソルビシン(Adriamycin)、エピルビシン(Ellence)、およびリポソーム化ドキソルビシン(Doxil)を含めたアントラサイクリン;ドセタキセル(Taxotere)、パクリタキセル(Taxol)、およびタンパク質結合パクリタキセル(Abraxane)、シクロホスファミド(Cytoxan)を含めたタキサン;カペシタビン(Xeloda)および5フルオロウラシル(5FU);ビノレルビン(Navelbine);ゲムシタビン(Gemzar);ならびにトラスツズマブ(Herceptin)の1種または複数から選択される追加の化学療法剤を含むことができる。
【0037】
PI3K活性の「阻害」は、複合体の基質との結合を防ぐ、かつもしくは酵素の隔離による場合のように直接的であることができ、またはPIK3CA遺伝子の転写もしくは翻訳を防ぐ場合のように間接的であることができる。いくつかの実施形態において、PI3K活性の阻害は、pan-ErbBチロシンキナーゼ阻害剤、たとえばネラチニブを投与することを含む。本明細書では、PI3Kの「細胞内阻害」は、たとえばトラスツズマブによる阻害の場合のように、膜貫通細胞受容体の結合遮断または不活性化によって起こる阻害とは対照的に、細胞内部でPI3K経路が直接妨害されることによって、PI3K複合体の活性が妨げられることを示す。
【0038】
本明細書では、「治療する(treating)」という用語は、別段の指示のないかぎり、そのような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つまたは複数の症状を逆転する、緩和する、その進行を抑制する、または予防することを意味する。本明細書では、「治療(treatment)」という用語は、別段の指示のないかぎり、治療する行為を指し、「治療する」は直前に定義したとおりである。本明細書では、「対象」および「患者」は、同じ意味で用いられる。
【0039】
PTENタンパク質発現の定量的評価:PTENタンパク質発現に関して腫瘍を染色するために、標準的なIHC法が用いられる。デジタル画像を得て、正常組織(たとえば、間質または内皮細胞)PTENならびに腫瘍PTEN画分の両方のODスコアを得る。サンプルのPTENスコアは、腫瘍PTEN OD/正常組織PTEN ODとして算出される。一連の腫瘍PTENスコアは、正常組織(たとえば、間質)PTEN発現のわずかな相違を伴って示される。正規化によって内部標準として染色の相違を補正できる。PTEN:phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10、OD:光学密度。
【0040】
本明細書に言及したすべての参考文献は、その全体を本明細書の一部とする。
【実施例0041】
本発明は、例示として提供され、本発明を限定するものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0042】
(実施例1)
PIK3CA遺伝子の変異
PIK3CA遺伝子(クラスIPI3K複合体のp110αサブユニットをコードする)活性化変異が、乳癌、卵巣癌、肺癌、食道癌、子宮内膜癌、および甲状腺癌を含む、いくつかのヒト悪性腫瘍で見出されている。
【0043】
乳癌では、PIK3CAの変異は、試験を行った様々なコホートの約4分の1の患者で観察された(範囲、8%~40%)。乳癌のほとんどの変異は、PIK3CA遺伝子のエクソン9および20のキナーゼまたはヘリカルドメインに集中することが見出された。これらの機能獲得型変異は、p110αユニットおよびp110αとp85サブユニットの界面において折りたたみ相互作用を乱し、キナーゼドメインの構造変化を引き起こし、酵素活性の増大をもたらす。
【0044】
PIK3CAエクソンのグローバルスクリーニングで検出された他の変異は、乳癌集団ではそれほど頻繁には観察されず、同じPI3K活性化生物学を有することが示されていない。乳癌で同定された変異の80%超は、エクソン9(E542K、E545K、E545D)およびエクソン20(H1047R)のある種のホットスポット変異のアッセイによって検出できる(20)。
【0045】
エクソン9および20のヘリカルおよびキナーゼドメイン変異はいずれも、PI3Kシグナル伝達活性の獲得をもたらす。乳癌患者の研究は、全体として、またはエクソン9もしくは20変異を有する特定の群において、PIK3CA変異が陰性の予後値を有することを示した。ヘリカルおよびキナーゼドメイン変異は、異なる予後値を有する可能性もあり、エクソン9変異単独では、ネオアジュバント設定でエベロリムスとレトロゾールの組合せに対して(レトロゾール単独と比較)増強された感受性が予測される。
【0046】
エクソン9および20(E542K、E545D、E545K、およびH1047R)の活性化変異は、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって測定される。
【0047】
(実施例2)
PIK3CA遺伝子の増幅
PIK3CA遺伝子(遺伝子座3q26.3)もいくつかの腫瘍において増幅を受けることが示されており、機能獲得型変異と同様に、増幅は予後不良と相関する(21~24)。PIK3CA増幅は、卵巣癌および子宮内膜癌におけるPI3K経路活性化の重要な機序の1つであり、これらの患者では、増幅は遺伝子量の増大および経路活性の増大をもたらし、標準的療法に対する耐性および予後不良と相関する(21、22、25、26)。PIK3CA増幅は、乳癌ではそれほど頻繁には観察されない。初期診断サンプルにおいて、8.7%の患者が、3q26(この遺伝子座のPIK3CA)で染色体増加を有することが見出され、それらの患者の半数はPIK3CA変異も保有していた(27)。発現プロファイリングによって基底サブタイプと同定された乳癌サンプル群で、高レベルの増幅が観察された(28)。乳癌細胞株はPIK3CA増幅を保有することが見出され、PIK3CA遺伝子の増幅と変異の共存は、Aktリン酸化の増強によって測定される経路活性化の増大をもたらす。
【0048】
遺伝子増幅は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いて判定することができる(20)。
【0049】
(実施例3)
PTEN発現
腫瘍抑制因子PTENは、PI3Kシグナル伝達複合体に対して抑止(または「ブレーキ」)として機能する、二重特異性ホスファターゼ(脂質およびタンパク質)である。PTENは、PIPからPIPへの脱リン酸化を媒介して、PDK1およびAkt/PKBの膜結合部位を除去し、それによってPI3Kの活性に拮抗する。PTEN遺伝子(遺伝子座10q23)は、乳癌、脳癌、子宮内膜癌、腎臓癌、および前立腺癌を含む、いくつかのヒト悪性腫瘍で不活性化されている(29~32)。PTENの不活性化は、疾患の進行および予後不良と相関しており、腫瘍形成における重要な役割が示唆される(16、33~34)。実験系において、PTENの不活性化は、抑止されないAkt/PKB活性化を引き起こし、続いてアポトーシスの阻害によって腫瘍形成表現型をもたらすことが示されているのに対して、PTEN-null系でのPTEN発現の回復は、腫瘍形成表現型の消失を招く(32、35)。抑止されないAkt/PKB活性は、アポトーシスの阻害、細胞成長、および増殖の増強を引き起こす[36]。
【0050】
乳癌において、PTEN機能喪失の複数の機序が実証されており、これには変異、遺伝子欠失、およびmiRNAまたはエピジェネティックサイレンシングによる転写ダウンレギュレーションが含まれる。乳癌におけるPTENタンパク質レベルの低下は、免疫組織化学(IHC)法を用いて観察され、様々な研究が15%から48%の患者のPTEN低下を報告している(34、37~40)。不活性化の機序としての一連のPTEN変異、遺伝子欠失、およびエピジェネティック事象は、腫瘍生物学の興味深い研究を提起し、これらの不活性化機序の可変的な組合せは、観察されたPTEN発現の低下に関して公表された文献の多様性の一因となりそうである。PTEN遺伝子の変異は、子宮内膜癌腫および膠芽腫などの悪性腫瘍では非常に一般的であるが、しかしながら、そのような変異は、乳癌では比較的まれである(患者の約5%のみに見出され、ほとんどは不安定化タンパク質を生じることのあるフレームシフト変異である)(30、41~42)。対照的に、乳癌におけるPTEN不活性化の主要な機序は、PTEN遺伝子欠失であると考えられる(37)。遺伝子消失または変異以外のPTEN消失の複数のさらなる機序が同定されている。転写レベルでは、プロモータメチル化によるエピジェネティックサイレンシングまたはmiRNA発現(たとえば、miR-21)が記載されている(43~45)。PTEN発現低下のさらなる機序には、PTENをリン酸化し、それによってユビキチン介在性分解からPTENを保護する、Rakなどの安定化タンパク質の消失が含まれる(19)。本明細書では、「PTENタンパク質発現低下の存在に関して陽性」とは、非腫瘍形成組織(たとえば、非腫瘍形成間質または内皮組織)と比較して、PTEN発現レベルが低下していることを意味する。
【0051】
本発明の実施に用いるための、PTENタンパク質発現を評価する別の方法が企図される。逆相タンパク質マイクロアレイ技法または定量的IHC法などの定量的方法によって、標準的なIHCでは検出されないタンパク質レベルの微小な変化の検出が可能になる。これらの方法は、PTENタンパク質レベルの解釈と遺伝学との間のより良好な一致を示している(19、46、47)。これらの新規な定量的タンパク質測定は、保存サンプルに適用可能であり、そのようなアッセイは、標準的な免疫組織細胞化学法と比較して、基礎にある経路生物学の研究において潜在的により信頼できる。
【0052】
(実施例4)
ネラチニブ療法の患者の選択
乳癌を有する患者からサンプルを得る。このサンプルを、PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数の存在または不在に関して分析する。これら(PIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少)の1つまたは複数の存在によって、患者は「PI3Kオン」である腫瘍を有すると指定される。患者が「PI3Kオン」と指定された場合、その患者はネラチニブで治療される。本明細書では、ネラチニブまたは併用治療に伴う任意の臨床的利益を、標準的治療処置群で認められた利益と比較することができる。これは、各患者群を個別に比較するか、または所与の処置に関して、線形回帰モデルを用いて各患者群間を比較することによって行うことができる。これらの比較によって、(おそらく腫瘍のある程度の経路「依存性」のため)標準的治療よりネラチニブが実質的な改善を示す集団を同定することができる。
【0053】
(実施例5)
患者選択のための予測バイオマーカーとしてのPI3K経路活性化:臨床における統計的考察
臨床試験に本発明のバイオマーカー戦略を組み入れるための仮定は、特定の薬物または薬物の組合せに対して、比較薬剤または標準的治療より優れた臨床的に有意な反応を有することが予期される患者が予め選択されることである。無作為化臨床試験では、選択は治療剤の基礎にある生物学に基づくものであるため、この手法によって、実験群の反応者に関して患者集団が増強されよう。対照的に、純粋に好ましい反応に関して患者集団が増強されると、実験群およびコントロール群の両方がより好ましい結果を有するため、無作為化試験の結果に影響を及ぼさない。さらに、将来の試験において、腫瘍の基礎となる生物学を用いるそのような患者選択手法はまた、それらの患者の腫瘍が特定の薬物または併用治療に対して耐性であることが予測され、所与の試験から除外される患者に、代替となる合理的な治療選択肢を提供する可能性がある。たとえば、PI3K活性化がトラスツズマブ耐性のマーカーであることがわかっているため(12、14、48)、チロシンキナーゼ阻害剤類の薬剤(たとえば、不可逆性pan-ErbB阻害剤、ネラチニブ、または可逆性Her1/Her2阻害剤、ラパチニブ)などの別の治療剤を利用できることが最適であろう(49)。
【0054】
無作為化試験において2つの患者群が生じる。腫瘍サンプルでPI3K経路活性化が明らかである(すなわち、「PI3Kオン」、またはPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の1つまたは複数が存在する患者)1つの患者群、およびPI3K活性化の所見がない(すなわち、「PI3Kオフ」、またはPIK3CA遺伝子増幅、PIK3CAの変異、およびPTENタンパク質発現の減少の3つすべてが不在である患者)もう1つの患者群である。活性PI3K(「PI3Kオン」)は、「PIK3CA変異+」および/または「PIK3CA遺伝子増幅」および/または「PTEN消失」および/または「PTEN低下」と定義することができる。臨床試験前に得られた予備バイオマーカーデータに基づいて(反応の予測可能性を裏付けるため)、そのようなバイオマーカーは、探索エンドポイント、または層別化を伴う副次エンドポイントとみなすことができる。無作為化試験におけるそのような患者の分類は、標準的地理(geographic)または前治療群層別化(帰無仮説では層に相違が存在する)とは異なる帰無仮説によって、試験において個別のレベルの層別化として処置することができる。そのような経路分類層別化では、帰無仮説は治療群に相違は存在しないというものである。
【0055】
研究登録時、各患者の患者選択バイオマーカーを測定する。この実施例では、腫瘍は、PTEN(phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome 10)、免疫組織化学法、PIK3CA変異、およびPIK3CA蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって評価する。ここで「PI3Kオン」として定義される患者群は、「PIK3CA変異」または「PIK3CA増幅」または「PTEN喪失(null)」または「PTEN減少」である。この実施例では、「PI3Kオフ」は、「PIK3CA野生型および非増幅」ならびに「PTEN正常」と定義される。PI3Kオンの患者は、ネラチニブで処置される。その後、線形回帰法を用いて、臨床的利益をこれら2つの集団間で比較することができる。帰無仮説では、「PI3Kオン」群の治療効果差異は、「PI3Kオフ」群の治療効果差異と同じである。
【0056】
この種の患者選択手法において、帰無仮説は、「PI3Kオン」群の治療効果差異は、「PI3Kオフ」群の治療効果差異と同じであるというものである。臨床的利益は、線形回帰法を用いて、これら2つの集団間で比較することができる。この手法は、ある薬物が、所与の経路(ここでPI3Kに関して示されるものなど)の明確な活性化事象を有する患者にもっとも有用であることを示す可能性がある。そのような手法は、存在するサブセット(たとえば、Her2+乳癌の「PI3Kオン」および「PI3Kオフ」サブセット)のさらなる細分化の知覚リスクを伴うが、標準的なレジメンにもかかわらず依然として再発のリスクのある患者の同定を可能にし、初期診断時に基礎となる生物学に基づいて(患者が依然として治癒可能であるとき)アジュバント治療計画を正確に定義することができる。種々のバイオマーカーに関連する基礎となる腫瘍生物学の相違、ならびに下流シグナル伝達相違の主要な報告を考慮すると、バイオマーカーの代替サブセットは、以前に提示された「PI3Kオン」の包括的な定義より正確に反応者集団を同定する可能性がある。たとえば、pan-ErbB阻害剤は、「PTEN消失」または「PTEN低下」と定義された腫瘍を有する患者において極めて有効である可能性があり、PI3K阻害剤は、「PTEN消失」腫瘍に対して活性が低く、PIK3CA変異または増幅を保有する腫瘍では高い有効性を示す可能性がある。
【0057】
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【外国語明細書】