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特開2022-22305膵臓に細胞を移植するための薬剤の製造のための混合物の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022305
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】膵臓に細胞を移植するための薬剤の製造のための混合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/39 20150101AFI20220127BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220127BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220127BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220127BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20220127BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20220127BHJP
【FI】
A61K35/39
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/44
A61K45/00
A61K38/19
A61K38/20
A61P1/18
C12N5/071
C12N5/074
C12N5/077
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194048
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2019113597の分割
【原出願日】2011-05-06
(31)【優先権主張番号】61/332,441
(32)【優先日】2010-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509110851
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ターナー, レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ロゾヤ, オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】レイド, ローラ, エム.
(57)【要約】
【課題】膵臓に細胞を移植するための薬剤の製造において、混合物を使用する。
【解決手段】混合物は細胞と生体材料とを含み、細胞は膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞とその間質細胞パートナーとなる細胞との組み合わせを含み、生体材料はチオール化されたカルボキシメチルヒアルロン酸(CMHA-S)とポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)架橋剤とを含む。CMHA-S及びPEGDAは上皮間葉微小環境ニッチを模倣するヒドロゲルを形成し、ヒドロゲルは約25~約520の範囲の剛性率を呈するように調製される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における罹患状態又は機能不全状態の膵臓に細胞を移植するための薬剤の製造のための混合物の使用であって、前記混合物は、
罹患した又は機能不全の膵臓を有する前記対象の前記膵臓上に又は前記膵臓中に導入される、前記細胞及び1種以上の生体材料を含み、
前記細胞は、膵臓幹細胞又は膵臓前駆細胞と、前記膵臓幹細胞又は前記膵臓前駆細胞の間質細胞パートナーとなる1種以上の細胞との1種以上の組み合わせを含み、
前記1種以上の生体材料は、チオール化されたカルボキシメチルヒアルロン酸(CMHA-S)とポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)架橋剤とを含み、CMHA-S及びPEGDAは、上皮間葉微小環境ニッチを模倣するヒドロゲルを形成し、前記ヒドロゲルは約25~約520の範囲の剛性率を呈するように調製され、前記混合物は、前記対象の前記膵臓上に又は前記膵臓中に導入されるものであり、導入された前記細胞の少なくとも一部が、生体内で、前記膵臓の少なくとも一部の上に又は前記膵臓の少なくとも一部の中で定着する、使用。
【請求項2】
前記混合物が、基礎培地、培養液、脂質、シグナリング分子、細胞外基質成分、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記混合物が、サイトカイン、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来増殖因子(SGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、オンコスタチンM、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、トランスフェリン、インスリン、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)、グルカゴン、グルココルチコイド、成長ホルモン(GH)、エストロゲン、アンドロゲン、およびそれらの組み合わせの1種以上から選択される前記シグナリング分子を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記細胞は、無血清培地で培養されたものである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記無血清培地が、インスリン、トランスフェリン、脂質、カルシウム、亜鉛及びセレンを含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記無血清培地が、クボタ培地を含む、請求項4に記載の使用
【請求項7】
前記細胞の少なくとも一部はドナーから得られる、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記ドナーが非自己ドナーである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記ドナーが自己ドナーである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記ドナーが、胎児、新生児、小児又は成人である、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記混合物が、注入を介した導入のためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
細胞を、罹患した又は機能不全の膵臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に局在化させるための薬剤の製造のための混合物の使用であって、前記混合物は、
前記細胞と、1種以上の生体材料とを含み、
前記細胞は、1種以上の膵臓前駆細胞又は膵臓幹細胞と、前記膵臓前駆細胞又は前記膵臓幹細胞のパートナーである間質細胞となる1種以上の細胞との1種以上の組み合わせを含み、
前記1種以上の生体材料は、チオール化されたカルボキシメチルヒアルロン酸(CMHA-S)とポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)架橋剤とを含み、CMHA-S及びPEGDAは、上皮間葉微小環境ニッチを模倣するヒドロゲルを形成し、前記細胞を含む前記ヒドロゲルは前記罹患した又は機能不全の膵臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に形成され、前記ヒドロゲルは約25~約520の範囲の剛性率を呈するように調製される、使用。
【請求項13】
前記細胞が、腫瘍細胞でもなく、癌細胞でもなく、又は罹患した細胞でもない、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ヒドロゲルは約25~約165の範囲の剛性率を呈するように調製される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記混合物は、前記膵臓の表面上に形成されたポケットに導入される、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記ポケットが、網、スパイダーシルク、天然絹糸、またはそれらの混合物から製造される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ヒドロゲルが生体内で形成される、請求項12に記載の使用。
【請求項18】
前記混合物を前記罹患した又は機能不全の膵臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に導入する前に、前記ヒドロゲルを形成させる、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者ら:レイチェル・ターナー(Rachael Turner)、デビッド・ガーバー(David Gerber)、オズワルド・ロゾイヤ(Oswaldo Lozoya)、ローラ・リード(Lola Reid)
[関連特許出願の相互参照]
本出願は、2010年5月7日出願の米国仮特許出願番号61/332,441の権利を主張するものであって、前記出願の全体が本明細書に参照として組み込まれる。
[技術分野]
【0002】
本発明は一般に組織移植分野を対象とするものである。より具体的には、本発明は、細胞移植用の組成物及び細胞の移植方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現行の細胞移植治療方法は、ドナー細胞を血管経路で宿主に導入するものであって、造血治療に倣って作られた方法である。にもかかわらず、造血細胞療法は、これら細胞が懸濁液を形成しかつ特定の標的組織へのホーミングを担う固有の特性をもつことから、比較的容易に行われる。そのため、造血細胞の部分母集団の移植に関する研究の多くは、皮膚又は内臓(例えば、肝臓、肺、心臓)等の実質臓器からの細胞移植とほとんど関連性がない。事実、実質臓器からの細胞を血管経路で移植すると、生着不良が原因で効果が低減し、細胞の生存率も低下し、しかも致命的な塞栓が形成され易い。そのため、大部分の実質臓器の疾患は、代替移植方法を試せば上手く治療されるかもしれないが、未だ上手く処置されていない。
【0004】
したがって、本発明は、有効な様々な方法を用いた移植プロトコルによって、実質臓器からの細胞の移植方法を対象とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様では、罹患状態又は機能不全状態の内臓を持つ対象における前記内臓組織の移植方法が提供される。前記方法は、(a)ドナーから単離された内臓細胞を得る工程と、(b)前記細胞を細胞外基質成分から構成される生体材料に、場合により培養液及び/又はシグナリング分子(増殖因子、サイトカイン、ホルモン)と混合して、埋め込む工程と、c)前記細胞を標的臓器に移植する工程を含み、前記細胞と生体材料との混合物は、生体内の内臓の中若しくはその表面に又はそれらの両方に所定の位置でゲル化又は凝固する方法である。内臓は、肝臓、胆管、膵臓、肺、腸、甲状腺、前立腺、乳房、子宮又は心臓であってよい。好適なシグナリング分子は、増殖因子及びサイトカインであり、例えば、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来増殖因子(SGF)、レチノイド(例えば、ビタミンA)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えばFGF2、FGF10)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、オンコスタチンM、白血病抑制因子(LIF)、トランスフェリン、インスリン、グルココルチコイド類(例えば、ヒドロコルチコイド)、成長ホルモン、いずれかの下垂体ホルモン類(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH))、エストロゲン類、アンドロゲン類及び甲状腺ホルモン類(例えば、T3又はT4)を挙げることができる。
【0006】
罹患した又は機能不全の臓器の治療において、細胞の提供者は、罹患していない内臓又は非機能不全の内臓の一部から正常細胞が得られるのであれば、臓器被提供者以外の者(同種移植)であってもよく、或いは罹患状態の内臓又は機能不全状態の内臓を持つ対象(自己移植)であってもよい。疾患を調べるためのモデル系を構築する場合、ドナー細胞は、罹患しているものや、実験宿主に移植されたもの及び/又は実験宿主内の正常組織であってもよい。
【0007】
細胞には、幹細胞、成熟細胞、血管芽細胞、内皮細胞、間充織幹細胞(あらゆる供給源由来のもの)、星細胞、線維芽細胞、又はこれらの混合物を含んでいてよい。また、生体材料には、コラーゲン、接着分子(ラミニン、フィブロネクチン、ナイドジェン)、エラスチン類、プロテオグリカン類、ヒアルロン酸類(HA類)、グリコサミノグリカン鎖、キトサン、アルギン酸塩、並びに合成ポリマー、生分解性ポリマー及び生体適合性ポリマーが含まれ得る。ヒアルロン酸類は望ましい材料の一つである。
【0008】
単離された内臓細胞は、生体外の生体材料内部で凝固してから細胞を宿主に移植されてもよく、或いは液状物質として注入して生体内で凝固されてもよい。細胞は、罹患組織若しくは機能障害性組織に又はそれと近接して移植されるのが好ましく、注入、生分解性被膜又は海綿状物によって移植されてもよい。
【0009】
本発明の別の実施態様では、罹患状態の内臓又は機能不全状態の内臓を患っている対象の内臓組織の修復方法が提供される。前記方法は、(a)ドナーの内臓から正常細胞を得る工程と、(b)前記細胞を1種以上の生体材料と混合する工程と、(c)場合により、前記細胞懸濁液をシグナリング分子(増殖因子、サイトカイン)、追加の細胞、又はこれらの組み合わせと混合する工程と、(d)前記混合物(b)を対象に導入する工程とを含み、混合物は不溶性となって、生体内の内臓に又はその中に移植片が形成される。
【0010】
本発明の更に別の実施態様では、内臓細胞を標的とする内臓の表面上に、その内部に又はそれらの両方に局在化させる方法であって、内臓細胞と1種以上のヒドロゲル形成前駆物質の溶液とを含む調合液を、有効量の架橋剤の存在下で、生体内の標的とする内臓の表面上に、その内部に又はそれらの両方に導入する工程を含み、前記調合液は、標的とする内臓の表面上に、その内部に又はそれらの両方に内臓細胞を含むヒドロゲルを形成する方法が提供される。前記混合物は、培養液、細胞外基質分子及びシグナリング分子を更に含んでいてよい(my further comprise)。ヒドロゲル等の凝固混合物は、標的とする内臓の表面上に、その内部に又はそれらの両方にのいずれかに移植片を提供する。
【0011】
細胞は、標的とする内臓の中に/上に少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも約48時間又は少なくとも約72時間局在化することができ、標的とする内臓は、肝臓、膵臓、胆管、肺、甲状腺、腸、乳房、前立腺、子宮、骨又は腎臓であってよい。患者の治療において、ドナー内臓細胞は、罹患した細胞(例えば、腫瘍細胞又は癌細胞)であってはならない。ただし、実験上の疾患モデル系を構築しようとする場合は、罹患した細胞を移植片とみなしてもよい。
【0012】
ヒドロゲルを形成し得る生体材料、又は類似の不溶性複合体は、グリコサミノグリカン類、プロテオグリカン類、コラーゲン類、ラミニン類、ナイドジェン、ヒアルロン酸類、チオール修飾ヒアルロン酸ナトリウム、これらの変性型(例えば、ゼラチン)又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。凝固のきっかけは、前記マトリックス成分の架橋を誘発するか又はゲル化可能なもののゲル化を誘発する、あらゆる因子であってよい。架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート又はそのジスルフィド含有誘導体を含んでよい。望ましくは、細胞及び生体材料の不溶性複合体は、約0.1~約100kPa、好ましくは約1~約10kPa、より好ましくは約2~約4kPaの粘度、及び最も好ましくは約11~約3500Paの剛性を有する。
【0013】
本発明のまた別の実施態様では、細胞の凍結保存方法であって、(a)単離された細胞を得る工程と、(b)前記細胞を、ゲル形状生体材料と混合する工程、そして場合により1種以上の等張性基礎培地、シグナリング分子(サイトカイン、増殖因子、ホルモン)及び細胞外基質成分(例えば、ヒアルロン酸)とも混合する工程、そして前記細胞混合物を凍結させて-90°Cから180°Cのフリーザ内で保存する工程を含む方法が提供される。前記等張性培地は、CS10(バイオライフ(biolife)製)又は同等の凍結保存緩衝剤であってよい。シグナリング分子はであってよい好適なシグナリング分子は、増殖因子及びサイトカインであって、例えば、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来増殖因子(SGF)、レチノイド類(例えば、ビタミンA)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えばFGF2、FGF10)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、オンコスタチンM、白血病抑制因子(LIF)、トランスフェリン、インスリン、グルココルチコイド類(例えば、ヒドロコルチゾン)、成長ホルモン、任意の下垂体ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH))、エストロゲン類、アンドロゲン類及び甲状腺ホルモン類(例えば、T3又はT4)が挙げられる。細胞外基質成分は、グリコサミノグリシアナ(glycosaminoglcyanas)、ヒアルロン酸類、コラーゲン類、接着分子(ラミニン類、フィブロネクチン類)、プロテオグリカン類、キトサン、アルギン酸塩、並びに合成、生分解性及び生体適合性のポリマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
細胞と生体材料との混合物を凍結乾燥する場合、混合物であるそれらを(i)ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、エチレンジオールエタレンジオール(ethylenediolethalenediol)、1,2-プロパンジオール、2,-3ブテンジオール、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、3-メトキシ-1,2-プロパンジオールからなる群から選択される凍結保護剤の単独及びこれらの組み合わせ、並びに/又は(ii)糖類(sugara)、グリシン、アラニン、ポリビニルピロリドン、ピルビン酸塩、アポトーシス阻害剤、カルシウム、ラクトビオン酸塩、ラフィノース、デキサメタゾン、還元ナトリウムイオン、コリン、抗酸化物質、ホルモン類又はこれらの組み合わせからなる群から選択される添加物と更に混合してもよい。前記糖(sugar)は、トレハロース、フルクトース、グルコース又はこれらの組み合わせであってよく、また、抗酸化物質は、ビタミンE、ビタミンA、βカロチン又はこれらの組み合わせであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、細胞を様々な標的組織へ移植する本発明の方法の概略図である。前記方法には、埋め込み型移植片、注入型移植片、及び標的臓器の表面に接着可能な移植片(「救急絆創膏型の移植片」)が包含される。
図2A-2B】図2は、クボタ培地を用いて調合されたヒアルロン酸(KM-HA類)でのレオロジー測定結果を表す。a)KM-HA類の機械的ゲル剛性測定結果である剛性率|G*|は、一定を保っているが、外的強制力による変形応答遅延測定結果である粘弾性ダンピング|G”/G’|は、試験した各製剤における0.1Hz~10Hz程度の強制的周波数範囲内ではごくわずかである。エラーバー:試験した各周波数での測定値の95%信頼区間。b)KM-HA類は、0.6 1/秒~60 1/秒の実験ずり速度範囲[強制的周波数0.1Hz~10Hz]にわたってずり減粘を示す。言い換えれば、強制的周波数が増加するにつれて粘度が減少する。上限及び下限:べき乗則モデルに基づく95%信頼区間(コックスメルツの経験則に基づいており、全ての製剤に関して0.3 1/秒~30 1/秒のずり速度範囲[強制的周波数0.05Hz~5Hz]でR2>0.993)。粘弾性測定は、表3に示すアルファベット名の付いた製剤に関してのみ行った。
図3図3は、KM-HA類中でのヒト肝幹細胞(hHpSCs)についてのサイズ、形態及び増殖データを表す。hHpSCsのコロニーは、三次元配置を呈しており、a)KM-HA類に播種したときに球状の凝集(左下)又は折り重なり(中央、右上)を示す[画像窓:900μm×1200μm]。hHpSC類を播種したKM-HA類の組織切片に関する共焦点顕微鏡検査からは、培養後1週間後の混合細胞形態の表現型が分かる。ここで、実質細胞での細胞サイズはb)約7μm又はc)最大10~15μmであり[DAPI対比染色によれば、細胞核は青色、EpCAMはb)及びc)ではいずれも赤色、b)CD44又はc)CDH1はいずれも緑色である。画像窓:150μm×150μm。b)及びc)中の白色ハイライト部分:15μm×15μm]。d)KM-HA類中でのhHpSC類の生存率は、アラマーブルー(AlamarBlue)代謝還元法での測定によれば、CMHA-Sを1.6%及びPEGDA0.4%を含むKM-HAヒドロゲル(表3の製剤E)中での培養後1週間で機能が回復して増殖することが分かる。24時間培養後のアラマーブルー(AlamarBlue)還元測定値は、播種2、3日後の測定結果を基準とした。データは平均±標準誤差で表す。
図4図4は、KM-HA類に播種したhHpSC類の、培養後1週間後の分化マーカーのタンパク質発現を示している。hHpSC類のコロニーは、KM-HA類の特性に応じた翻訳レベルで、hHpSC類の分化マーカーの発現レベルの差異を示す。ヒトAFPの代謝分泌量は、KM-HA製剤全域でmRNA発現レベルと相互に関連がある。NCAM発現は、全てのKM-HA類において陽性であるが、CD44発現は、CMHA-S含有量が1.2%以下のKM-HA類において最も高い(アルファベット名A、B、C、Dの付いた製剤、表3)。CDHI発現は、|G*|<200PaのKM-HAヒドロゲルでは陽性であり、|G*|>200PaのKM-HAヒドロゲルでは陰性である。ヒトAFP分泌量に関するデータは、平均±標準誤差で記している。EpCAM、NCAM、CD44及びCDH1に関する免疫組織化学的染色は、15~20μm切片で行って(hHpSCsの厚さ約2~3、hHpSCの直径5~7μm)、蛍光顕微鏡検査法で撮像した[画像窓:100μm×100μm]。KM-HA製剤は、剛性の昇順に並べた(Aは|G*|=25Pa、Bは|G*|=73Pa、Eは|G*|=140Pa、Cは|G*|=165Pa、Dは|G*|=220Pa、そしてFは|G*|=520Pa)。
図5図5は、培養後1週間後のKM-HAで増殖させたhHpSC類中の肝前駆細胞マーカーに関する、qRT-PCRによる遺伝子の発現レベルを示している。hHpSCs及びその直接子孫であるhHBsに関するマーカー(肝臓特異的なAFP、EpCAM、NCAM、CD44及びCDH1)のmRNA発現レベルの比較からは、KM-HAで増殖させたhHpSCsがhHB特性を培養後1週間後に転写レベルで早期取得することが分かる。hHpSCs及び新たに単離されたhHBsにおいて、CD44発現範囲は同程度であるが、残りのマーカーの発現レベルは、hHpSC類がhHBへ分化するときにEpCAMは約2倍低下し、CDH1は3倍低下し、NCAMの発現は抑制され、そしてAFPは増強されることで統計上はっきりと区別できる。いずれのKM-HA類においても、播種されたhHpSCsのAFP、NCAM及びCDH1の平均発現レベルは、hHpSC領域からhHB領域へ推移したが、EpCAMの発現は培養後1週間後でも終始高い。KM-HA製剤は、剛性の昇順に並べた(Aは|G*|=25Pa、Bは|G*|=73Pa、Eは|G*|=140Pa、Cは|G*|=165Pa、Dは|G*|=220Pa、そしてFは|G*|=520Pa)。発現レベル(平均±標準誤差)は、GAPDHを基準とした。アルファベット名を付けたKM-HA製剤の測定結果(表3)は、hHpSCコロニー(緑色)及び新たに単離されたhHB(赤色)と有意性について比較した(スチューデントt-検定)。
図6図6は、開示する凍結保存方法及び解凍方法の一実施態様の概略図である。
図7図7は、ヒアルロン酸と共に移植したルシフェリン生成細胞から生じた発光信号と細胞懸濁液として注入されたルシフェリン生成細胞から生じた発光信号との、インビボ実時間撮像による対比結果を表す。
図8図8は、健全なモデル及びCCl4肝臓損傷モデルの両者における、移植片と細胞懸濁液の中の移植後7日目の血中ヒトアルブミンの対比を表す。
図9図9は、肝幹細胞の表現型マーカーの遺伝子発現を表している。発現レベルはGAPDH発現を基準とし、また、倍率変化はコロニー内での初期発現を基準とした。*は、実験条件と初期のコロニー発現との間の有意差p<0.05%を示す。**は、実験条件と初期のコロニー発現との間の有意差p<0.05%だけでなく、2つの実験条件間の発現が顕著であることも示す。
図10A-10C】図10は、肝機能の経時的な機能分析データを示している。経時的な三次元ヒアルロン酸培養におけるA)アルブミン、B)トランスフェリン及びC)尿素の濃度を、細胞ごとに正規化した。
図11A-11B】図11は、KM-HA類の機械的特性測定データを表す。a)KM-HA類の剛性は制御可能で、しかもCMHA-S含有量及びPEGDA含有量によって決まる。平均剛性率|G*|は、べき乗則の特性にを受けてCMHA-S含有量及びPEGDA含有量が増加するにつれて増大するので、初期のヒドロゲル混合中にKM-HA類の最終機械的特性を直接制御することができる。レオロジー的測定は、表3に示すアルファベット名を付けた製剤でのみ行った。エラーバーは、0.05Hz~5Hzの強制的周波数域での測定において±1の標準偏差である。b)KM-HA類中での拡散。FRAP(70kDaのフルオレセイン標識デキストラン)によるKM-HA類内での拡散性の測定結果は、クボタ培地単独の場合とほとんど変わらない。拡散性の測定は、表3に示す全製剤で行った。エラーバー:測定値の95%信頼区間。
図12図12は、KM-HA類に播種したhHpSC類による、ヒトAFP、ヒトアルブミン及び尿素の分泌を表している。KM-HA類中のhHpSC類のコロニーは、播種後7日目まで、培地(KM)に含まれるヒトASP及びヒトアルブミンの濃度の増大並びに尿素合成の平衡化に伴って、肝機能を多少発現する。ヒトAFP、ヒトアルブミン及び尿素の代謝分泌量は、播種後7日目まではKM-HA製剤間でそれぞれ異なるが、CMHA-Sを1.6%及びPEGDAを0.4%含むKM-HA中ではAFP及びアルブミンの速度が最少となりかつ尿素合成が低下する(表3の製剤E)。左欄:アルファベット名を付けた各製剤(表3)における24時間培養後に毎日採取した培地中の代謝産物濃度。右欄:24時間培養後の、培地中のhHpSC 1コロニー当たりの代謝産物質量の分泌速度。培地中の代謝産物の総質量は、アラマーブルー(AlamarBlue)還元法を用いた生存可能性分析試験で算出される、各期間毎の機能性hHpSCコロニーの数を基準にしている(試料当たりの播種されたコロニーの概数:12個)。データは全て、平均±標準誤差で記録した。
図13A-13B】図13は、速度制御型凍結プログラムによって液-氷相エントロピーを最少化することで、氷による内部損傷を防止し、しかも凍結の繰り返しを可能にさせることを表している。A)グラフは、チャンバー温度を試料温度(10%DMSO)と関連付けながら表している。B)クライオメッド(Cryomed)1010システムで使用した凍結速度プログラミム。
図14A-14B】図14は、新たに採取した試料を基準にした、(A)凍結保存された胎児肝細胞の解凍後の細胞生存率(%)及び(B)各条件で3週間培養した後のコロニー数の双方を表している。結果は、平均±平均の標準誤差で記録している。KM=DMSOを10%及びFBSを10%含むクボタ培地。CS10=クライオスター(cryostor)、CS10+sup=KMを補充したクライオスター(cryosto)10。0.05%及び0.10%は、各試料に補充したHA(%)を指す。
図15図15は、GAPDH発現を基準とした相対的なmRNA発現量を表す。平均±平均の標準誤差。*新たに採取した試料に対する有意性p>0.05。KM=DMSOを10%及びFBSを10%含むクボタ培地。CS10=クライオスター(cryostor)、CS10+sup=KMを補充したクライオスター(cryosto)10。0.05%及び0.10%は、各試料に補充したHA(%)を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
現在、実質臓器由来細胞を利用した細胞移植は一般に血管経路を通じて行われているが、その結果、一般に成熟細胞では約20~30%程度及び幹細胞では5%未満の移植不備を示す確かな証拠が常に生じる。この移植のばらつきは、肝臓内での寸法が、幹細胞にとしては小さく(一般には10μ以下)かつ成熟細胞としては大きい(一般に>18μm)ことに起因している。我々の研究でもこの所見を確認している。ある試験では、例えば、ヒト肝幹細胞(hHpSCs)及び肝芽腫(hHBs)を、当該細胞類を免疫不全のマウスの脾臓へ注入することによって投与した。脾臓は肝臓と直接繋がっているので、前記細胞は、移植する予定の肝臓に流れ込んだ。しかし、大部分の細胞は、移植前に死滅しているか、又は標的以外の組織(異所)に留まっていた。
【0017】
細胞が目標に適切に到達した場合であっても、完全に機能的な細胞への転化は、脈管化不足、(成熟細胞を移植した場合の)成長不能、及び成熟細胞を用いて長期間免疫抑制する必要がある場合の細胞の高度な免疫抗原性によって妨げられた。それ以外の障害としては、臨床グレードの高品位の細胞の供給源や、凍結保存障害が原因で、新たに単離された細胞を使用する必要があることが挙げられる。
【0018】
前記の非効率や問題に加えて、血管経路を通じて実質臓器から細胞を移植するのには危険も伴う。実質臓器からの細胞は表面分子(細胞接着分子、密着結合タンパク質)を有しており、これらが細胞同士を迅速に結合させて凝集(aggregation)を高める。この凝集現象(clumping phenomenon)は、致命的な肺動脈塞栓をもたらす可能性がある。
【0019】
これらの障害及び懸念の幾つかに対処するために、本発明は、移植した細胞を凝集体として、罹患した組織へ局在化させることができる足場に又はその足場の中に送達することで、必要な増殖及び生着(engraftment)を促すことを含む、移植技術を目的としている。したがって、本発明は、移植される細胞型だけでなく、細胞型と、最も高効率でしかも最も成功を収めている移植療法に適した生体材料及び移植法との組み合わせにも配慮している。本発明の移植技術は、患者における治療上の使用と置き換えることもでき、また、罹患組織又は機能障害性組織を再構成させる再生医療のための代替療法を提供する。
【0020】
細胞供給源
本発明によれば、好ましい細胞集団は、「正常で」「健全な」組織及び/又は細胞を有するドナーから入手してよい 誘導されてよく、ここで、前記組織及び/又は細胞は、罹患していない又は機能障害に冒されていない組織及び/又は細胞を指す。当然、このような細胞集団は、罹患した又は機能不全の臓器に苦しんでいる人から入手してもよいが、このような状態ではない臓器の一部から入手してもよい。細胞は、年齢にかかわらず、胎児、新生児、小児及び成人の組織を含むあらゆる適切な哺乳動物の組織から入手可能である。病状の実験モデルを構築しようとする場合、罹患した細胞を、好適な実験宿主へ移植するための移植片に利用してもよい。
【0021】
より具体的に言えば、細胞は、治療の必要性に基づいて「系譜の段階で分類された」集団とは異なる治療に利用されてもよい。例えば、後期「成熟」段階の細胞は、後期の細胞系譜でしか得られない機能を迅速に取得する必要がある場合又は臓器被提供者が、C型肝炎若しくはパピローマウィルスを併発するような、幹細胞及び/又は前駆細胞を優先的に感染させる系譜依存ウィルスを有している場合に好ましい可能性がある。いずれにせよ、「前駆」細胞は、その各組織の系譜のどの段階を確立するのに使用されてもよい。
【0022】
系譜の段階で分類された肝細胞集団及びその単離方法の解説については、米国特許出願番号11/560,049及び12/213100を参照し、これら開示内容はその全てが参照として本明細書に組み込まれる。簡潔にいえば、肝臓内には少なくとも8段階の成熟細胞系譜が存在する。前記段階及びそれらについての略述を以下に記載する。
【0023】
系譜の1段階:ヒト肝幹細胞(hHpSCs)は多能性細胞であって、胎児及び新生児の肝臓の胆管内部並びに小児及び成人の肝臓のヘーリング菅内部に存在する。これらの細胞の直径は通常7~10μm程度であり、高い核/細胞質比を有する。それらは、虚血耐性があり、心収縮期性の死から48時間超経って、死体の肝臓で見つかることもあり、また、成熟細胞へ分化可能なhHpSCのコロニーを形成する可能性もある。前記細胞は、あらゆる年齢のドナーの肝臓の柔組織の約0.5~2%を占める。
【0024】
系譜の2段階:肝芽腫(hHBs)は、hHpSCの直系の細胞であって、肝臓の推定中継点の増殖期細胞である。これらは、正確には幹細胞ニッチのすぐ外側に位置する。前記細胞は、細胞質の量が多いほど大きく(10~12μm)、生体内では胎児及び新生児の肝臓の柔組織全体、並びに小児及び成人の肝臓のへーリング菅の端部付近に又は前記へーリング菅のすぐ近くに見受けられる。肝芽腫の数は、年齢とともに、乳児の肝臓の実質細胞の<0.01%まで減少する。この細胞集団は、再生過程、特に肝硬変等の特定の疾患と関わりのある過程で大きくなることが分かっている。肝芽腫は、肝細胞(H)又は胆管上皮とも呼ばれる胆管細胞(B)となる。
【0025】
系譜の3H及び3B段階:関与する(分化単能)肝細胞(3H)、及び胆管細胞前駆細胞、すなわち胆管前駆細胞(3B)は、肝臓内に含まれている。これら分化単能前駆細胞は、成人の細胞型を1種のみ生じさせるものであって、幹細胞の遺伝子を発現することはない(例えば、CD133/1や(ソニック/インディアン)ヘッジホッグタンパクの発現量は少量であるか又は全くない)が、胎児組織内の細胞に特有の遺伝子を発現する。
【0026】
系譜の4H及び4B段階:成人の門脈周辺実質細胞には、比較的小さな肝細胞(4H)と肝内の胆管上皮(4B)とが含まれる。肝細胞は二倍体細胞であって、直径が約18μmであり、PEPCKやコネキシン26及び32のように糖新生作用を伴う複数の因子/酵素を発現する。
【0027】
この段階の胆管細胞(4B)は二倍体細胞であって、直径約6~7μmであり、ヘーリング管の一部を拘束してアクアポリン1及び4、MDR1、セクレチン受容体等の様々な遺伝子を発現するが、CL-/HC03-交換輸送体又はソマトスタチン受容体を発現しない。
【0028】
系譜の5H及び5B段階:この段階の細胞には、比較的大きな肝細胞(5H)及び胆管細胞(5B)の両方が含まれており、いずれも二倍体細胞である。肝細胞のサイズは直径約22~25μmであり、それらは腺房中心領域に含まれている。腺房中心肝細胞は、高濃度のアルブミン及びチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)を発現する。特にこれらは、トランスフェリンをタンパク質として発現するという特徴を有する(それに対し、系譜の段階1~4はそれをmRNAとしてのみ発現する)。
【0029】
系譜の段階5B:胆管細胞の直径は約14μmであり、小葉内管の内部に含まれており、CFTR、セクレチン受容体、ソマスタチン受容体、MDR1及びMDR3、並びにCL-/HC03-交換輸送体を発現する。
【0030】
系譜の6H段階:6段階目の二倍体の周皮肝細胞は、培養液中でコロニーを形成することはあるが、限られた伸長能を有しており、また、本質的に継代培養能を持っていない。この割合は、年齢と共に(4倍体の周皮細胞の割合が増加するにつれて)低下する。アルブミン、TAT及びトランスフェリンのほかに、それらはP450-3A等の多くのP450類、グルタミン合成酵素(GT)、ヘパリンプロテオグリカン類、及び尿素形成に関与する遺伝子も積極的に発現する。
【0031】
系譜の7H段階:この段階には四倍体の周皮実質細胞が含まれるが、これはもはや完全な細胞分裂を行うことはできない。それらは、DNA合成を行うことはが可能だが、細胞質分裂能力は限られている。それらは、非常に大きな細胞であり(直径>30m)、また、遺伝子を大量に発現し、このことは系譜の段階5~6で明らかとなる。
【0032】
系譜の8段階:アポトーシス細胞:様々なアポトーシスマーカーを発現し、しかもDNA断片化を明示する。
【0033】
罹患した又は機能不全の内臓の「機能」自体を付与するのに必要な細胞のほかに、移植片は、あらゆる組織の細胞原種である、上皮細胞-間充織細胞間の関係を含む細胞分類を好ましく模倣する追加の細胞成分を好ましく包含する。上皮細胞-間充織細胞間の相関は、成熟系譜の段階毎に異なる。上皮幹細胞は間充織幹細胞と組んで、前記細胞が組織内のあらゆる成人細胞型へと成熟するようにそれらの成熟を互いに調整する。2種間の相互作用は、水溶性シグナル(例えば、増殖因子)及び細胞外基質成分を含むパラクリンシグナルによってもたらされる。
【0034】
肝臓内において、例えば、肝幹細胞(HpSCs)は、肝細胞と胆管細胞を生じさせる。HpSCの間葉パートナーは、血管芽細胞である。血管芽細胞は、内皮前駆細胞と肝星細胞の前駆細胞の両者であって、肝臓内の系譜の段階2の柔細胞である肝芽腫(HB)のための間充織細胞パートナーを生じさせることが証明されている。内皮前駆細胞は、その後の系譜の段階で内皮細胞へと成熟し、内皮細胞が、肝細胞の系譜の段階において間葉パートナーとなる。星細胞の前駆細胞は、星細胞を形成してから、間質細胞を形成し、そしてその後、胆管細胞のための間充織細胞パートナーである筋線維芽細胞を形成する。
【0035】
肝臓の形成は、肝形成ともいい、心臓と関連付けられる胎児間葉内の血管芽細胞からのシグナルで制御される。肝臓発生の初期段階において、線維芽細胞増殖因子(FGFs)が心臓前方の中胚葉から分泌されると同時に、骨形成タンパク質(BMPs)が間充織細胞から与えられる。その後、これら新たな特定の肝細胞は、分離して、周囲の間充織細胞へ移動し、そして内皮前駆細胞と間質前駆細胞の両方と相互作用する。間葉細胞は、発達中ずっと肝細胞と接触し続ける。
【0036】
ヒト肝幹細胞(hHpSCs)が生存するためには、間葉細胞と接触する必要がある。それらは自己複製することができ、血管芽細胞のフィーダー細胞上にある場合はhHpSCとして残る。肝星細胞のフィーダー細胞で培養する場合、それらの系譜は肝芽腫に限定される。それらは、成熟内皮細胞上で培養すると成長して成人肝細胞になり、また、成熟間質細胞(例えば、成熟星細胞又は筋線維芽細胞)上で培養すると胆管細胞になる。フィーダー細胞による幹細胞の運命制御は、系譜における上皮-間充織間の関係それぞれで生じるパラクリンシグナルを的確に組み合わせた結果ですることが分かっている。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、単離された細胞集団を、既知のパラクリンシグナル(以下で説明する)及び「天然の」上皮間葉パートナーと混合し、そして必要に応じて移植片を最適化する。そのため、移植片には、上皮幹細胞や肝幹細胞が、天然の間葉細胞パートナーである血管芽細胞と混合されて含まれている。一過性増殖細胞ニッチ移植片では、肝芽腫を肝星細胞及び内皮細胞前駆細胞と組み合わせることがある。ある移植片では、肝幹細胞、肝芽腫、血管芽細胞、内皮前駆細胞、肝星細胞の前駆細胞からなる2組の配合物を作製することで、宿主組織内での肝臓細胞の確立を最適化することもある。細胞が播種される移植片の微小環境には、移植に用いられる適切な系譜の段階で産生されるパラクリンシグナル、基質及び水溶性シグナルを含むことができる。
【0038】
また、移植片は、病状を管理するように調整することも可能である。例えば、細胞系譜の初期段階に感染した後、宿主細胞と同時に成熟する系譜依存ウィルス(例えば、特定の肝炎ウィルス)の影響を最小限に抑えるために、ウィルス感染を許容しない細胞系譜の後期段階の移植片(例えば、肝細胞、及びその天然パートナーである類洞内皮細胞)を製造してもよい。さらに、移植片は、移植片中の罹患細胞を用いて疾患モデルを構築するのにも利用でき、それを実験動物モデル内の標的臓器の中/その上に移植してもよい。
【0039】
肝細胞療法をモデルとして用いた幹細胞移植片の一例には、肝幹細胞、血管芽細胞及び肝星細胞の前駆細胞が含まれている。これに対し、「成熟した」肝細胞の移植片には、肝細胞、成熟した内皮細胞及び周皮細胞が含まれており、これらは成熟した星細胞である。肝臓の上皮細胞-間充織細胞間の相関の考察については、米国特許出願番号11/753,326を参照し、この開示内容はその全てが参照として本明細書に組み込まれる。
【0040】
血管新生問題は、全ての移植片にとって重要なので、血管新生を招く位置(例えば、肝臓)に注入すべきである。大抵の病状では、その増殖可能性、あらゆる型の成人細胞に至るその成熟能力、その虚血耐性、死体組織からのその供給可能性、そしてもしあるなら、その最小限の免疫原性を考慮して、肝細胞移植片が好ましい。
【0041】
移植材料
本発明のゲル形成生体材料を使用すると、細胞支持体用の足場、並びに移植工程及び再生工程の成功に役立つシグナルが付与される。生物内の実質臓器の組織が一定の再構築を経ると、解離細胞が、その自然構造を好適な環境条件下で再生成する傾向がある。細胞は、培養液(例えば、RPM1640)、シグナリング分子(例えば、インシュリン、トランスフェリン、VEGF)及び1種以上の細胞外基質成分(例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、ナイドジェン、プロテオグリカン)のうちの1つ以上と混合してもよい。
【0042】
どの組織においても、パラ分泌シグナル伝達には、可溶性のもの(多種多様な増殖因子及び成長ホルモン)と不溶性のもの(細胞外基質(ECM)シグナル)が両方含まれている。可溶性の基質因子と(不溶性)の基質因子との間の相乗効果は、移植された細胞による生長反応及び分化応答に影響を及ぼす可能性がある。基質成分は、付着、生存、細胞形状(並びに細胞骨格系の機構)、そして特定の細胞外シグナルに応答する細胞を刺激するのに必要な細胞表面レセプターの安定化といった一次決定因子である。
【0043】
ECMは、細胞形態、成長、及び細胞の遺伝子の発現を制御することが知られている。生体内のものと同様の組織特異性化学物質は、精製されたECM成分を用いて細胞外で形成されてもよい。これらのうちの多くは市販されており、また、生体内でそれを模倣する細胞行動を招く。
【0044】
好適な基質成分としては、コラーゲン、接着分子(例えば、細胞接着分子(CAMs))、密着結合(カドヘリン)、基底接着分子(ラミニン、フィブロネクチン)、ギャップ結合タンパク質(コネキシン)、エラスチン類、並びにプロテオグリカン類(PGs)及びグリコサミノグリカン類(GAGs)を形成する硫酸化炭化水素が挙げられる。これらの分類はそれぞれ分子の種属を定義している。例えば、少なくとも25種類のコラーゲンが存在し、それぞれが異なる遺伝子によって、特異的な制御及び機能でコードされている。追加の生体材料としては、無機材料、キトサン及びアルギン酸塩等の天然材料、並びに多数の合成生分解性ポリマー及び生体適合性ポリマーが挙げられる。これらの材料は多くの場合、熱ゲル化、光硬化又は化学的架橋、或いは微小環境(高塩濃度)への暴露を含む、材料の不溶性を誘発する方法で「凝固」する(例えば、ゲル又は不溶性材料となる)。しかし、それぞれの方法を用いた場合、細胞傷害(例えば、過度温度範囲、UV露光によるもの)の理由を説明する必要がある。生体材料、特にヒアルロン酸ヒドロゲルの使用に関する更に詳細な考察については、米国特許出願番号12/073,420を参照し、この開示内容はその全てが参照として本明細書に組み込まれる。
【0045】
基質成分の特定の選択は、生体内の勾配であって、例えば、幹細胞区画に伴って発見される成分から、細胞系譜の後期段階に伴って発見される成分へ移行するものによって導かれてもよい。移植生体材料は、移植片に求められる特定の系譜の段階の基質の構造を模倣することが好ましい。選択された基質成分混合物の有効性は、生成された基質の構造及び溶解性シグナルを用いた生体外実験で測定することができ、前記実験の多くは、製造管理および品質管理に関する基準(good manufacturing practice:GMP)のプロトコルに準じて市販されている。移植片に選択された生体材料は、移植を成功させるために細胞に求められる適切な生育反応及び分化応答を導き出すことが好ましい。
【0046】
肝臓に関して言えば、肝実質細胞と関連付けられかつ幹細胞及び一過性増殖細胞ニッチの外側にある基質の構造は、デッセ腔の中、つまり、柔組織と間葉細胞の内皮又は他の形態との間にする区域の中にも存在する。肝臓の様々な領域では、細胞の成熟時の変化に加えて、基質の構造の変化も認められる。ゾーン1内の門脈周辺の基質の構造は、胎児肝臓に含まれているものと類似しており、III型コラーゲン及びIV型コラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、ラミニン及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの形態からなる。このゾーンは、I型コラーゲン、フィブロネクチン、並びに特異型ヘパリン及びヘパラン硫酸プロテオグリカンを含有する、中心域のゾーン3内の別の基質の構造へと移行する。
【0047】
肝臓の幹細胞ニッチは、部分的に特徴が明らかになっており、ヒアルロン酸、α6β4-インテグリンと結合するラミニン型(例えば、ラミニン5)、III型コラーゲン、及び特異型の最小限硫酸化コンドロイチン硫酸プロテオグリカン類(CS-PGs)を含むことが分かっている。このニッチ内には、限定量のIV型コラーゲンは存在するが、I型コラーゲンは存在しない。
【0048】
このニッチ基質の構造は、一価性増殖細胞区画と関連付けられかつIV型コラーゲンと、他のインテグリン類(αβ1)と結合するラミニン型と、高硫酸化されたCS-PG型であるデルマタン硫酸PGを包含するGAG型及びPG型から構成されるものへ、そして特異型のヘパラン硫酸PG類(HS-PGS)へと移行する。
【0049】
一過性増殖細胞区画は系譜の更に後期の段階へ移行し、基質の構造は、次の段階に移るごとに安定化し(例えば、よい高度に安定なコラーゲン)、代謝回転が低下して、より高硫酸化された状態のGAG類及びPG類を含有するようになる。大部分の成熟細胞は、ヘパリンPG類(HP-PG類)型と関連付けられており、このことが、多種多様なタンパク質(例えば、増殖因子及びホルモン、凝固タンパク質、様々な酵素)が基質と結合し、そしてGAG類の別個の特異的な硫酸化パターンと結合することでそこに安定なまま保持できることを表している。したがって、基質の構造は、高い代謝回転と最低限の硫酸化(そしてその結果、細胞と近接して位置する安定な形状のシグナルとの最低限の結合)に関連した不安定な基質の構造を有する幹細胞ニッチ内のその出発点から、硫酸化量の多い(そしてその結果、さらに高度にシグナルと結合して、細胞と近接して保持された)安定な基質の構造へと移行する。
【0050】
つまり、本発明は、基質分子の化学的性質が、成熟段階を経るにつれて宿主の年齢とともに、病状によって変化することを考慮している。適切な材料による移植は、組織内に移植された細胞の生着を最適化し、細胞が異所へ分散するのを防ぎ、塞栓問題を最小限に抑え、しかも細胞が組織内にできるだけ早く溶け込む能力を高めなければならない。さらには、移植片内の因子もまた免疫原性問題を最小限にとどめるように選択され得る。
【0051】
ヒト肝臓の場合、細胞は、無血清条件下で培養されてよい。ヒト肝幹細胞又は肝芽細胞(hHpSC又はhHB)は、単独で移植されてもよく、又は血管芽細胞/内皮前駆細胞及び星細胞の前駆細胞と組み合わせて移植されてもよい。細胞は、培地(HA-M)を含むチオール化されかつ化学修飾されたHA(CMHA-S、又はユタ州ソルトレイクシティのグリコサン・バイオシステムズ(Glycosan BioSystems)製のグリコシル(Glycosil))やKM(クボタ培地(Kubota's Medium))に懸濁して、一組のシリンジ対のうちの一方のシリンジに充填してもよい。もう一方のシリンジには、KMで(又は生体材料の不溶性を誘発するのに必要な条件で)調合された架橋剤、例えばポリ(エチレングリコール)ジアクリレート若しくはPEGDAを充填してもよい。これら2本のシリンジを針で連結し、それを2つのルアーロック接続部へ展開する。こうすることで、、ヒドロゲル中の細胞と架橋剤とが1本の針を通って現れて、CMHA-Sを素早く架橋させて、注入時にゲルを形成してもよい(又は別の手段で生体材料を不溶化してもよい)。
【0052】
CMHA-S中の細胞懸濁液と架橋剤は、網組織を用いて肝臓へ直接注入又は移植することで、パウチを形成してもよい。あるいは、細胞は、大気中で一晩放置して懸濁させることによって、PEGDA架橋剤を用いずにグリコシル(Glycosil)中に封入し、ジスルフィド結合の架橋を引き起こすことで、柔軟で粘稠なヒドロゲルを形成してもよい。また、前記以外のチオール修飾マクロモノマー、例えばゼラチン-DTPH、ヘパリン-DTPH、コンドロイチン硫酸-DTPHを添加することで、生体内の特定のニッチの基質特性を模倣する共有ネットワークを形成してもよい。別の具現化手段では、システイン又はチオール残基含有ポリペプチドをPEGDAと結合させてから、当該PEGDAをグリコシル(Glycosil)に添加することで、特定のポリペプチドシグナルをヒドロゲル中に組み込ませてもよい。あるいは、いずれかのポリペプチド、増殖因子又は基質成分、例えばイソ型コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブロネクチン等をグリコシル(Glycosil)と細胞溶液に添加してから架橋することで、重要なポリペプチド成分をヒドロゲル中に受動的に捕獲させてもよい。
【0053】
ヒアルロン酸;ヒアルロン酸類(HAs)は、6つの大きなグリコサミノグリカン(GAG)族炭化水素のうちの1つの構成員であり、いずれもウロン酸とアミノ糖とのポリマーである[1~3]。他のグリコサミノグリカン族炭化水素には、コンドロイチン硫酸(CS、[グルクロン酸-ガラクトサミン]x)、デルマタン硫酸(DS、より高度に硫酸化された[グルクロン酸-ガラクトサミン]x)、ヘパラン硫酸(HS、[グルクロン酸-グルコサミン]x)、ヘパリン(HP、より高度に硫酸化された[グルクロン酸-グルコサミン]x)及びケラタン硫酸(KS、[ガラクトース-N-アセチルグルコサミン]x)が含まれている。
【0054】
HAは、グルコサミンとグルロン酸(gluronic acid)とをβ1-4型やβ1-3型の結合で結合した二糖類単位から構成される。生物学的には、ポリマーグリカンは、数百から多くて20,000以上の二糖類単位の線形の繰り返しから構成される。HAの分子量は一般に、血清中では100,000DAから、滑液中では2,000,000程度まで、臍帯及びガラス体液中では8,000,000程度までである。HAは、負の電荷密度が高いため、陽イオンを攻撃して水中に誘引する。この水和反応によって、HAは非常に圧縮力のある支持荷重を有することができる。HAは、あらゆる組織及び体液に含まれ、最も豊富には柔軟な結合組織に含まれており、また、その天然の保水力は、組織の形状や機能に及ぼす影響等の他の役割を推測するのに役立つ。それは、細胞外基質に、細胞表面に、また、細胞内部にも含まれている。
【0055】
天然型HAの構造は多種多様である。最も一般的な変数は鎖長である。あるものは、長い炭化水素鎖を有するために高分子量であり(例えば、家禽のとさかの中及び臍帯中のもの)、また、あるものは、短鎖のため低分子量である(例えば、バクテリア培養由来のもの)。HA類の鎖長は、誘発される生物学的機能において重要な役割を果たす。低分子量HA(3.5×104kDa未満)は、基質の代謝回転に関連しかつ組織の炎症に関連することが分かっているサイトカイン活性を誘発する可能性がある。高分子量のもの(2×105kDa超)は、細胞増殖を抑制する可能性がある。1~4kDaの小さなHA断片は、血管新生を増強することが分かっている。
【0056】
天然型HAは、所望の特性を導き出すように改良されてきた(例えば、HA類を改良してチオール基を持たせると、そのチオールが、他の基質成分又はホルモンの結合又は新たな架橋形式に利用できる)。また、自然に発生する架橋形式(例えば、酸素で制御されるもの)や、さらには、天然型HA類及び改良型HA類を特定の試薬(例えば、アルキル化試薬)で処理することによって又は先に述べたような、新たな架橋形式を容認させる改良型HA類の構築(例えば、チオール修飾HAにおけるジスルフィド架橋の形成)によって人工的に導き出したものもある。
【0057】
本発明によれば、チオール修飾HA、及びそのために用いられるその場重合法が好ましい。これらの方法は、CMHA-S又はグリコシル(Glycosil)として知られる、チオール化したカルボキシメチル化HAのジスルフィド架橋を伴う。生体内での実験では、低分子量(例えば、70~250kDa)のHAを使用することがある。これは、ジスルフィド又はPEGDAのいずれかを架橋することで、非常に高分子量のヒドロゲルが生成されるためである。チオール反応性リンカーであるポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)架橋剤は、細胞の封入及びin vivo注入の両方に適している。このグリコシル(Glycosil)-PEGDA混合材は共有反応によって短時間で架橋するものであり、生体適合性を有し、しかも細胞を成長及び増殖することができる。
【0058】
ヒドロゲル材料であるグリコシル(Glycosil)は、生体内での幹細胞の再生医療につながるゲル特性を考慮したものである。グリコシル(Glycosil)は、ユタ州ソルトレイクシティのグリコサン・バイオサイエンシズ(Glycosan Biosciences)から入手可能な半合成細胞外基質(sECM)技術の一部である。エクストラセル(Extracel)及びハイステム(HyStem)といった商標ラインで様々な製品が販売されている。これら材料は、生体適合性及び生分解性を有し、しかも非免疫原性である。
【0059】
さらに、グリコシル(Glycosil)及びエクストラリンク(Extralink)は、再生医療用途のための他のECM材料と容易に混合できる。HAは、多くの市販元から入手可能であり、ストレプトマイセス種(例えば、ジェンザイム社(Genzyme)、ライフコア社(LifeCore)、ノヴァマトリクス(NovaMatrix)社等)を用いた細菌発酵法、又はISO9001:2000工程で宿主として枯草菌を用いた細菌発酵法(ノヴァザイムズ(Novazymes)に特有のもの)が好ましい。
【0060】
細胞集団の理想比率は、生体内及び組織の細胞懸濁液中に含まれているものを再現しなければならない。細胞混合物は、前駆細胞の成熟及び/又は成人細胞型の維持と同時に、必要とされる血管新生の展開も可能にする。この方法では、複数の基質成分を含有する複合体用の基礎としてのヒアルロン酸と、溶解性シグナル伝達因子とを用い、しかも上皮細胞及び間葉細胞によって産生されるパラクリンシグナルの特異的集合から構成された特異的な微小環境ニッチを模倣するように設計された複合微小環境が得られる。例を以下に挙げる。
【表1】

【表2】
【0061】
肝臓内の幹細胞ニッチの微小環境は、肝幹細胞と血管芽細胞との間のパラクリンシグナルから成る。それは、ヒアルロン酸、III型コラーゲン、特定の型のラミニン(例えば、ラミニン5)、ほとんど硫酸化されていない新型コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CS-PG)、及び肝前駆細胞用に展開された培地である「クボタ培地」に近いか又はまさにその通りの溶解性シグナル/培地組成物で構成されている。これ以上の因子は厳密には必要ではないが、幹細胞因子、白血病抑制因子(LIF)及び/又は特定のインターロイキン(例えば、IL6、IL11及びTGF-β1)を補充することによって効果が認められることもある。幹細胞ニッチ形態のCS-PGは未だ入手できていない。
【0062】
肝臓内の一過性増殖細胞微小環境は、形態学的には肝芽細胞と肝星細胞との間にある。この微小環境の成分としては、ヒアルロン酸、IV型コラーゲン、β1-インテグリンと結合する特定の型のラミニン、より高度に硫酸化されたCS-PG類、ヘパラン硫酸プロテオグリカン型(HS-PG類)、並びに上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、間質細胞由来増殖因子(SGF)及びレチノイド類(例えば、ビタミンA)を補充したクボタ培地を包含する溶解性シグナルが挙げられる。
【0063】
移植方法
組織型に応じて、適切な移植方法を選択してよい。移植片と罹患組織又は欠損組織(例えば、骨)とを置換する組織の場合、植え込み型移植片が好適である。次に、選択された方法に応じて、適切な生体材料を選択することで方法を褒めてよい(compliment)。様々な方法が必要となるであろう。例えば、骨の例では、固体基質は、細胞を、必要な増殖因子と共に当該基質に播種し、培養した後、患者に移植することができる。図1
【0064】
注入用移植片は、どのような欠損形状又は欠損空間(例えば、損傷した臓器又は組織)をも補うことができる点で有利である。本発明の方法によれば、細胞を同時培養して、ゲル形成生体材料に埋め込まれた細胞懸濁液に注入し、それを様々な架橋方法を利用してその場で凝固させる。混合物はそのまま宿主の組織又は臓器(たとえば、肝臓)に注入してもよく、臓器若しくは組織を被覆する任意の膜である臓器カプセルを使って注入してもよく、或いは網の一部を折り畳んで接着することでパウチを形成することにより、又は外科用接着剤を用いて別の材料(例えば、スパイダーシルク)を臓器の表面に貼付することでパウチを形成し、そこへ混合物を注入することに注入してもよい。
【0065】
直接注入は、肝臓のグリソン鞘の下の複数の部位の柔組織へ注入することから成るが、肝臓組織へ損傷を与える可能性のあるヒドロゲルからの水圧を避けてできるだけ少なくするように注入することから成る。肝幹細胞ニッチ移植片の肝臓への注入は、上述の二重バレルのシリンジを用いて行われる。簡単にいえば、細胞-基質-培地混合物を片方のシリンジに充填し、針で連結されたもう一方のシリンジには、架橋剤であるPEGDAを入れる。混合物を25ゲージの針から肝臓へ直接注入して、直ちに架橋することで、ヒドロゲルを形成することができる。CMHA-SをPEGDAと共にpH7.4で使用することで、細胞の封入と同時に、in vivo注入が可能となる。これは、架橋反応が、架橋剤の濃度に応じて数分以内又は10~20分までのタイムフレームで生じるためである。
【0066】
注入用生体材料としては、キトサンのような無機天然素材、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、フィブリン、ゼラチン、並びに多数の合成ポリマーで十分である。これら材料は、多くの場合、熱ゲル化、光架橋又は化学的架橋等の方法で凝固する。細胞懸濁液には、溶解性シグナル又は特定の基質成分を補充してもよい。これら移植片は標的部位に比較的容易に注入できるので、外科手術は全く(わずかしか)必要とせず、経費、患者の不快感、感染の危険性及び傷跡の形成が抑えられる。また、CMHAは、その長続きする効果に加えて、生体適合性も保持されるので、再生医療のための注入用材料としても使用できる。さらには、架橋方法は材料の生体適合性も維持し、しかもそれが広範な再生可能部位又は幹細胞/前駆細胞ニッチ内に存在すると、魅力的な注入用材料となる。
【0067】
一部の実施態様では、移植片は、臓器又は組織の表面に配置するように設計されてもよく、その場合、移植片は、生体適合性を有しかつ生分解可能な被膜(「救急絆創膏(band aid)」)と共に所定の位置に適用される。一部の腹部臓器では、この被膜は、自己由来組織であってよい。例えば、肝臓表面への肝臓細胞(例えば、肝前駆細胞)の移植は、宿主の網を用いて注入用パウチを形成することによって行うことができる。網を腹腔内のその位置から引き上げて、外科用接着剤(例えば、フィブリングルー、ダーマボンド(dermabond))を用いて肝臓に接着することで、移植材料用のパウチが形成される。二重バレルのシリンジを再び用いて、基質材料を、肝臓の外側に付けたパウチの中に注入してよい。
【0068】
なお、移植片は、標的組織とは無関係に、網のパウチ内に形成してもよい。例えば、標的組織の中又はその上に移植片を移植する代わりに、異所性移植方法を利用してもよい。移植片は網のパウチ内に定着することができ、パウチはフィブリングルー(又は同等物)で形成することができる。この方法は、宿主の肝臓が過度に瘢痕化されている場合又は組織自体に移植の成功を妨げる他のパラメータがある場合の肝臓移植に特に好適であり得る。別の例は、血管の供給を利用できることを基本的要件とする内分泌細胞(例えば、島細胞(islets))から成る。島細胞等の内分泌細胞から成る移植片は、網のパウチになる可能性がある。
【0069】
本発明者らは、KM-HAヒドロゲルの剛性、粘弾性及び粘度がCMHA-S含有量及びPEGDA含有量に依存する可能性があることを習得していた。KM-HAヒドロゲルは、例えば、広範な強制的周波数域にわたって剛性を一定に保つと同時に、完全な弾性的挙動(図2a)及びずり減粘を示し、その粘度は強制的周波数が増加するにつれて低下する(図2b)。このKM-HAヒドロゲルは、緩衝用蒸留水に混合したときに、様々なPEGDA及びCMHA-S濃度で11~3500Pa程度の剛性率をもたらすが、前記値は、クボタ培地のような様々な基礎培地を利用して調節することができる(図2及び図11)。
【0070】
移植しようとする細胞が播種されるECMの力学的性質は、シグナル伝達や輸送に対して、そして合わせて機械的シグナル伝達として知られる機序を用いた機械力への細胞の反応能力に対して、絶大な影響を及ぼす可能性がある。例えば、ヒト肝前駆細胞、例えば肝幹細胞は、緩衝用蒸留水に混合したときに様々なPEGDA濃度及びCMHA-S濃度で11~3500Pa程度の剛性率を有する剛性HAヒドロゲル等の力学的に硬い移植片に播種されると、分化する可能性がある(図2)。
【0071】
肝幹細胞コロニーは、それらを受け入れるKM-HAヒドロゲルの組成に準じて異なる代謝活性を示す。絶対分泌は、培養中の肝機能指示薬(AFP、アルブミン及び尿素)用のKM-HA製剤全体で同程度であるが、代謝効率と連動する絶対分泌は、HA含有量によって決まる選定プロセスを表している(図12)。このプロセスにおいて、分泌速度は、CMHA-S含有量1.2%未満のKM-HAヒドロゲルでは代謝強要を受けて増大する。これに対し、CMHA-S(1.6%)が多くかつ代謝機能が高いKM-HAヒドロゲルの分泌速度は比較的低く、しかも製剤Eのように生存率も高い(図3d)。hHpSCs及びhHBsは様々な代謝能力を示することから、KM-HAヒドロゲルは、肝前駆細胞が生長又は分化するように選択されてもよい。
【0072】
肝前駆細胞における分化マーカーの発現解析からは、プラスチック製プレートでのhHpSCコロニーにおける既存レベルを超えてEpCAMの遺伝子発現全体が増大すること(図5)、並びにコロニー全域で外側境界方向に向かう、外側細胞の表層側での不均一なNCAM発現とが既存レベルを超えて増大することから明らかなように(図4)、分化がKM-HAヒドロゲル内で生じることが立証された。CD44は、hHpSCs及びhHBsの両者においてmRNA発現レベルで発現することが分かった(図5)。NCAMとは異なり、CMHA-S含有量1.2%以下のKM-HAヒドロゲル中ではCD44発現量がより多いことが認められた(図4)。
【0073】
mRNA発現レベルは、KM-HAヒドロゲルの剛性によって決まり(図5)、この剛性依存が2つの領域を画定している(一方の低剛性の移植片では、遺伝子発現は剛性の増大とともに低下し、そしてもう一方の高剛性の移植片では、遺伝子発現は|G*|>200Paで回復する)。この効果は、上皮型カドヘリンではなおさら激しく、|G*|=約200Paの分岐点を超えると、上皮型カドヘリンのタンパク質の発現が存在する軟性ヒドロゲルに匹敵する強いmRNA発現にもかかわらず、タンパク質の発現は見られない(図4)。したがって、外部からの機械力に直接晒されている細胞は、コロニーの外部表面で隣接する細胞にシグナルを伝達することが可能であると考えられる。
【0074】
この方法では、上皮型カドヘリン発現の翻訳制御が周囲の剛性に左右されることを示すことによって、その基質の剛性と合わせて適応する能力を持ったhHpSCsのシグナル伝達機構を関連付けてもよい。したがって、hHpSCsにおける遺伝子-タンパク質間の転換プロセスは、剛性依存性の分岐基準に従う。
【0075】
KM-HAヒドロゲル内で培養されたhHpSCコロニーにおける遺伝子発現の変化は、その3D環境下での段階的な分化を意味する。特に、本発明の培養モデルにおける分化は、生化学物質を補充しないと生じる可能性がある。この結果からは、様々なKM-HAヒドロゲルに埋め込まれたhHpSCが、静置培養後1週間以内に中間のhHB系譜への分化を発現することが示された。
【0076】
凍結保存
本発明のもう一つの実施態様では、HAゲルを従来の凍結保存法と併用することで、優れた保存性と解凍時の生存率が得られる可能性がある。本方法の概略を図6に示す。理論にとらわれたり束縛されるものではないが、HAの混入は、細胞の培養及び解凍後の機能保全を促す接着機序(例えば、β1-インテグリンの発現)を刺激することによって保存性を向上させるものと考えられる。好ましくは、HA濃度は0.01~1重量%程度、より好ましくは0.5~0.10%程度である。
【0077】
特に定義のない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はいずれも、本発明の属する技術分野における当業者が一般に理解しているのと同様の意味を表す。本明細書で挙げる刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献はいずれも、その全体が参照として組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めた本明細書に準拠するものとする。また、材料、方法及び実施例は、単に例示的なものであり、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明を以下の代表的な実施例によって詳細に説明するが、本発明の範囲は以下に例示される実施態様に限定されるものではなく、また、それらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
マウス肝前駆細胞は、宿主であるC57/BL6マウス(4~5週齢)から、報告されたプロトコルに従って単離した。「移植」実験において、GFPレポーターを肝前駆細胞に導入した。次に、前記細胞を、ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルと混合し、このHAをポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)で架橋してから対象マウスに導入した。導入/移植のために、マウスをケタミン(90~120mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔して開腹した。その後、前記細胞を、HAと共に又はHAを用いずに、前側肝葉に徐々に注入した。切開部を閉じ、そして動物に、ブプレノルフィン0.1mg/kgを12時間毎に48時間与えた。48時間後、動物を安楽死させ、組織を取り出して固定して、組織学的検査用の薄片を作製した。
【0080】
マウスモデル体内での細胞の位置を確認するために、「対照」肝前駆細胞を、50 POIのルシフェラーゼ発現アデノウィルスベクターに37℃で4時間感染させた。移植手術を上述と同様にして行い、そして細胞(1~1.5E6個)は、HAと共に又はHAを用いずに前記肝葉へ直接注入した。撮像直前に、マウスにルシフェリンを皮下注射して、移植された細胞から発光シグナルを生じさせた。IVIS動力学的光学画像装置(Kinetic optical imager)を用いて、マウス体内での細胞の位置を確かめた。
【0081】
結果
24時間後では、HAを用いずに移植片を注入した「対照」細胞は、肝臓と肺の両方で見つかった。しかし、72時間後では、前記「対照」細胞はほとんど存在しておらず、肝臓内には、識別可能な「対照」細胞がほんの少量残存していた。これとは対照的に、本発明に従って移植された細胞では、肝臓に上手く融合した細胞群が24時間後及び72時間後にいずれも認められ、2週間後もまだ残存していた。また、この幹細胞ニッチ移植によって移植された細胞は、ランダム化組織試料アッセイでの分析によれば、ほとんど肝臓組織にだけ位置していることが分かり、しかも他の組織では見つからなかった(図7)。
【0082】
実施例2
ヒト肝前駆細胞は、胎児肝臓組織(16~20週齢)から、報告されたプロトコルに従って単離した。肝前駆細胞にルシフェラーゼ発現アデノウィルスベクターを導入した。次いで、前記細胞を、チオール修飾カルボキシメチルHA(CMHA-S)と、架橋剤であるポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)の存在下で混合してから、対照マウスに導入した。より具体的には、ヒドロゲルは、HA乾燥試薬をKMに溶解して2.0(重量/容量)%溶液とすることで構築し、また、架橋剤は、KMに溶解して4.0重量/容量%溶液とした。その後、試料を37℃の水浴内でインキュベートして完全に溶解させた。III型コラーゲン及びラミニンは、1.0mg/mlの濃度に調整して、架橋剤/ヒドロゲルと1:4の割合で混合した。
【0083】
導入/移植のために、マウスをケタミン(90~120mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔して開腹した。その後、細胞を、HAと共に又はHAを用いずに、前側肝葉に徐々に注入した。切開部を閉じ、そして動物に、ブプレノルフィン0.1mg/kgを12時間毎に48時間与えた。肝障害モデルでは、1回用量の四塩化炭素を0.6ul/gで腹腔内(IP)投与した。48時間後、動物を安楽死させ、組織を取り出して固定して、組織学的検査用の薄片を作製した。
【0084】
マウスモデル体内での細胞の位置を確認するために、「対照」肝前駆細胞を、50 POIのルシフェラーゼ発現アデノウィルスベクターに37℃で4時間感染させた。移植手術を上述と同様にして行い、そして細胞(1~1.5E6個)は、HAと共に又はHAを用いずに前記肝葉へ直接注入した。撮像直前に、マウスにルシフェリンK塩(150mg/kg)を皮下注射し、移植された細胞から発光シグナルを生じさせた。IVIS動力学的光学画像装置(Kinetic optical imager)を用いて、その10~15分後にマウス体内での細胞の位置を確かめた(図7)。
【0085】
7日目に、マウス血清中のヒトアルブミン分泌濃度レベルを測定して、移植されたヒト肝前駆細胞の機能を求めた。アルブミンの生成は、西洋ワサビペルオキシダーゼ接合蛍光プローブを用いたELISAによって、450nmでの比色吸光度を求め(図8)。7日目に、組織試料をマウスから摘出して、4%PFAに2日間固定して、70%エタノール中で保存した。5μm厚の薄片を着色させて組織学的検査を行った。
【0086】
結果
7日目に、血液試料を採取し、また、組織を摘出して固定して組織学的検査を行った。健全なモデルと対比して障害モデルでは、血清アルブミンに僅かな増加が認められ、また、HA移植法により、HAを含まない細胞懸濁液からの結果と比較して増殖していることが分かった(図8)。
【0087】
CCl4処理済マウスからの組織は、ヒトアルブミンに関しては着色した。HAを用いた移植法によって移植された細胞は、一団となって、しかも移植された細胞から成る大きな細胞集団を宿主細胞内に保持されていることが分かった。しかしながら、細胞懸濁液を用いて移植された細胞は、小さな集団を形成して肝臓全体に分散していた。
【0088】
実施例3
ヒト膵臓前駆細胞を膵臓から単離する。前記前駆細胞に、ルシフェラーゼ発現アデノウィルスベクターを導入する。次いで、前記細胞を、実施例2の記載と同様にして、チオール修飾されたカルボキシメチルHA(CMHA-S)と、架橋剤であるポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)の存在下で混合する。
【0089】
導入/移植のために、マウスをケタミン(90~120mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)で麻酔して開腹する。その後、細胞を、HAと共に又はHAを用いずに、膵臓に徐々に注入する。切開部を閉じ、そして動物に、ブプレノルフィン0.1mg/kgを12時間毎に48時間与える。48時間後、動物を安楽死させ、組織を取り出して固定して、組織学的検査用の薄片を作製する。
【0090】
マウスモデル体内での細胞の位置を確認するために、「対照」膵臓細胞を、50 POIのルシフェラーゼ発現アデノウィルスベクターに37℃で4時間感染させる。移植手術を上述と同様に行い、そして細胞(1~1.5E6個)は、HAと共に又はHAを用いずに膵臓へ直接注入する。撮像直前に、マウスにルシフェリンK塩(150mg/kg)を腹腔内(IP)注射し、移植された細胞から発光シグナルを生じさせる。IVIS動力学的光学画像装置(Kinetic optical imager)を用いて、その10~15分後にマウス体内での細胞の位置を確かめる。
【0091】
結果
24時間後では、HA移植を用いずに移植片を注入した「対照」細胞は、幾つかある臓器の中でも特に膵臓で見つかる。しかし、72時間後では、前記「対照」細胞はほとんど存在しておらず、膵臓内には、識別可能な「対照」細胞がほんの少量残存している。これとは対照的に、本発明によって移植された細胞は、膵臓に上手く融合した細胞群として24時間及び72時間の両者で認められ、そして2週間後でもまだ残存している。
【0092】
実施例4
ヒドロゲルに播種した肝幹細胞の生存率及び機能を評価するために実験を行った。生存率は、モレキュラー・プローブズ・カルセインAM(Molecular Probes Calcein AM)生細胞生存率測定キット(オレゴン州ユージーンのモレキュラー・プローブズ(Molecular Probes))を用いて評価した。膜浸透性カルセインAM(Calcein AM)が生細胞内のエステラーゼによって割裂されると、細胞質の緑色蛍光が生じた。分泌されたアルブミン、トランスフェリン及び尿素の培地中での濃度レベルを培養後1週間測定した。簡単に言えば、培地の上澄部を回収して、分析するまで-20℃で冷凍保存した。アルブミンの産生は、ELISAによって、ヒトアルブミンELISA定量セットを用いて測定した。尿素の産生は、血中尿素窒素比色試薬を用いて分析した。分析結果はいずれも、細胞蛍光分析器スペクトラマックス250(Spectramax 250)多穴プレートリーダーで別個に求めた。
【0093】
結果
結果を図9及び10に記載する。3週間培養後に、細胞の遺伝子発現を調べた。mRNA発現量は、GAPDHを基準とした。測定結果はいずれも、ヒアルロン酸ヒドロゲルでの三次元培養前の初期の肝幹細胞コロニーと比較した倍率変化として表している。どちらのヒアルロン酸培養実験条件(HA、及びHA+III型コラーゲン+ラミニン)でも、初期コロニー発現に比べてEpCAM(7.72±1.42、9.04±1.82)及びアルブミン(5.57±0.73、4.84±0.84)が著しく増加している。また、両方の条件では、肝芽細胞分化マーカーであるAFPも著しく低下した(0.55±0.11、0.17±0.03)。さらに、HA+III型コラーゲン+ラミニン(HA+CIII+Lam)条件では、基準のHA培養に比べてAFP発現が著しく低下することも分かった。
【0094】
実施例5
無血清培地で培養した植え込み型hHpSCsに対する、様々な濃度のHA及びPEGDAを有するHAヒドロゲルの機械的性質の影響を調べた。使用した製剤を以下の表3にまとめる。
【表3】
【0095】
各製剤の最終KM-HAヒドロゲル組成は、チオール修飾されたカルボキシメチルHA(CMHA-S)溶液とポリ(エチレングリコール)ビスアクリレート(PEGDA)溶液とを4:1の割合で混合することで達成された。特定の濃度のCMHA-S乾燥試薬及びPEGDA乾燥試薬をpH7.4のKMに特定のCMHA-S濃度及びPEGDA濃度で別個に混合し、そして37℃で30分間温めて乾燥試薬の溶解を促進させた。最大ヒドロゲル架橋は、培地を追加せず、無菌状態で、5%CO2/空気混合物及び37℃の恒温槽において1時間で生じた。その後、ヒドロゲルにKM培地を2.5ml供給して、一晩培養してから試験を行った。
【0096】
拡散試験のために、ヒドロゲル製剤を撹拌して均質化して、約1mmの厚さにプレーティングした。ヒドロゲルは、培地を追加せず、無菌状態で、5%CO2/空気混合物及び37℃の恒温槽において培養することで、混合後に最大架橋が生じた。次に、試料に、2.5mg/ml(0.036mM)のフルオレセイン結合させた70kDaのデキストラン分子を補充した等量のKMを更に供給し、試料に一晩培養しながら拡散させてから、試験を行った。
【0097】
HAヒドロゲルの拡散係数は、光退色後の蛍光回復を調べる(FRAP)システムを用いて測定した。「ウェルプレートでの(In-well)」試験は、撮像のために室温に平衡させた試料において、D70を補充したKMの事前吸引を行わずに行った。1試料にあたり合計5か所の、30秒間ずつ光退色させたスポット(13.5mW、458/488nm励起アルゴンレーザ、退色形状:直径35umの円)を試験し、そして単一チャネル(LP505nm、緑色発光チャネル)での後処理において、退色前の単発読み取り1方向スキャン画像、光退色直後の単発読み取り1方向スキャン画像、及びその後、4秒間隔で28枚の1方向スキャン時系列画像を得た(フレームサイズ256×256ピクセル、解像度0.9um/ピクセル)。
【0098】
結果
KM-HAヒドロゲルの剛性、粘弾性及び粘度は、CMHA-S含有量及びPEGDA含有量によって決まる。KM-HAヒドロゲルは、強制周波数が増加するにつれてその粘度が低下したため、広範な強制周波数域にわたって一定の剛性を維持すると同時に完全な弾性的挙動を示し、そしてずり減粘を示した。CMHA-S含有量及びPEGDA含有量が、KM-HAヒドロゲルの機械的性質を支配していた(図11a)。一方で、KM-HAヒドロゲルの拡散特性は、クボタ培地単独の拡散特性と同程度であるため、最適である(図11b)。
【0099】
肝幹細胞コロニーは、KM-HAヒドロゲルと混合すると、凝集を支持するその平坦な立体構造から、いずれも分化の兆候である、球状の構造又は折り畳まれた複雑な3D構造へと変化し始めた。培養後1週間で細胞の形態は多種多様となり、一部の細胞は、hHBの特徴であるサイズが約15umまで拡張した。hHpSCs、並びにEpCAM、CD44及びCDH1等のhHBでは、細胞表面マーカー検出用抗体による免疫染色によって分化を確認した。
【0100】
培養期間中、KM-HAヒドロゲルでは、試験組成中のhHpSCがAFP及びアルブミンを高濃度で分泌したが、尿素合成は、7日目までは全てのKM-HAヒドロゲルで同程度に平衡を保っていた(図12)。培養後1週間で、KM-HAヒドロゲルに播種されたhHpSCのコロニー細胞中のEpCAMによるmRNA発現量は、2次元的に増殖したhHpSCのコロニー又は新たに単離されたhHBよりもかなり多い。KM-HAヒドロゲル中のhHpSCでは、NCAM、AFP及び上皮型カドヘリン(CDH1)によるmRNA発現量もまた、2次元的に増殖したhHpSCコロニーとはかなり相違していた(図5)。
【0101】
hHpSCs検出用の分化マーカー(NCAM、AFP及びCDH1)並びにhHpSCsとhHBsに共通のマーカー(CD44、EpCAM)の遺伝子発現に関する定量的測定結果からは、KM-HAヒドロゲルの剛性が|G*|<200Paで増加するにつれて段階的に低下すること、そしてその後回復することが分かる(図5)。ヒドロゲル製剤からの細胞はEpCAM、NCAM及びCD44タンパク質を発現した。ただし、CD44は、CMHA-Sを1.2%以下含むKM-HA製剤で大量に発現したのに対し、NCAMは、全てのKM-HAヒドロゲルで豊富なままであった(図4)。
【0102】
実施例6
細胞の培養を促しかつ解凍後の機能保全を高める可能性がある、HAの接着機序の保全増強効果を評価した。新たに単離されたhHpSCs及び肝芽細胞は、胎児の肝臓から単離して、ヒアルロン酸(HA)を0.5%又は0.10%補充した或いはヒアルロン酸を補充していない多数の様々な凍結保存緩衝液のうちの1種で凍結保存した。より具体的には、試料を、10%DMSO又はクライオストア(Cryotor)TM-CS10(バイオライフ・ソリューションズ(Biolife Solutions))と0重量%、0.05重量%又は0.10重量%のHAとを補充した培地を含む凍結保存溶液中に細胞数2×106個/mlで凍結させた。前記細胞は、凍結保存溶液中に4℃で10分間平衡させてから、非架橋のHA中に、図13に示す制御された方法で凍結させた。
【0103】
解凍後、前記細胞は、1ug/cm2のIII型コラーゲン被膜で覆われた組織培養プレートにプレーティングして、幹細胞の接着を促した。
【0104】
結果
試験した緩衝液ではいずれも、解凍時の生存率は高かった(80~90%)。また一方、HAを補充することで、保存された細胞の、組織培養表面へ付着して培養される能力がかなり向上することが分かった。最良の測定結果は、少量のヒアルロン酸(0.05%又は0.10%)を補充したCS10等張培地で凍結保存された細胞であった。これらの発見は、新たに単離されたヒト肝前駆細胞を無血清条件下で凍結保存する際の改良方法を示しており、研究用途及び潜在的な治療用途の両方において幹細胞をより効率良く保存する方法を提供するものである。
【0105】
細胞-細胞間及び細胞-基質間の接着因子の発現を測定した。凍結保存試料中での細胞接着分子の遺伝子発現プロファイルの概要は、図15で確かめることができる。CS10+0.05%HA中に凍結させた試料では、β1-インテグリンの最高発現量が認められた(0.130±0.028、n=28)。これは、新たに採取した試料で認められた発現量(0.069±0.007、n=24、p<0.01)に比べると有意差がある。同様に、CS10+0.1%HA中で凍結させた細胞におけるCDH-1(上皮型カドヘリン)の発現量(0.049±0.006、n=20)及びCS10+0.05%HA中で凍結させた細胞におけるCDH-1の発現量(0.064±0.003、n=16)からも、新たに採取した試料(0.037±0.005、n=36、p<0.05)に比べて、発現が著しく増加したことが分かる。
【0106】
本発明は、その特定の実施態様に関連して説明してきたが、本発明は更に修正することが可能であるものと解することができ、また、本出願は、本発明のあらゆる変化、用途又は変更を網羅するものであって、一般に、本発明の原理に従い、本開示内容から逸脱するような、本発明の属する技術における既知の方法又は慣用の方法、及び上述の本質的な特徴に当てはめまるもの、並びに添付の特許請求の範囲の範疇に入るものも網羅するものとする。なお、本発明の好ましい実施態様は以下の通りである。
[実施の態様]
(1) 罹患状態又は機能不全状態の内臓を持つ対象における内臓細胞の移植方法であって、
(a)ドナーの内臓から正常細胞を得る工程と、
(b)前記細胞を、1種以上のゲル形成生体材料と混合して混合物を生成する工程と、
(c)場合により、前記混合物を、培養液、シグナリング分子、細胞外基質タンパク質又はこれらの組み合わせと混合する工程と、
(d)工程(b)の前記混合物を前記対象に導入する工程と
を含み、前記工程(d)において導入された前記細胞の実質部分は、生体内で前記内臓の少なくとも一部の中で又はその上に定着する方法。
(2) 前記正常細胞が、幹細胞、関連前駆細胞、又は成熟細胞である、請求項1に記載の方法。
(3) 前記内臓が、肝臓、肺、消化管、腸、心臓、腎臓、胆管、甲状腺、胸腺、甲状腺、脳又は膵臓である、請求項1に記載の方法。
(4) 前記内臓が肝臓である、請求項3に記載の方法。
(5) 前記細胞懸濁液が、肝幹細胞、肝芽細胞、胆管上皮若しくは肝細胞の関連前駆細胞、又は成熟した肝細胞若しくは胆管細胞によるものである、請求項3に記載の方法。
(6) 前記ドナーが、罹患状態又は機能不全状態の内臓を有する前記対象であり、そして前記正常細胞が、罹患していない又は機能不全状態にない内臓の一部から得られる、請求項1に記載の方法。
(7) 前記ドナーが、非自己移植ドナーである、請求項1に記載の方法。
(8) 前記ドナーが、胎児、新生児、小児又は成人である、請求項1に記載の方法。
(9) 前記追加の細胞が、血管芽細胞、内皮細胞、星細胞の前駆細胞、星細胞、間質細胞、上皮幹細胞、成熟実質細胞又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
(10) 前記1種以上の生体材料が、コラーゲン、ラミニン、接着分子、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン鎖、キトサン、アルギン酸塩、並びに合成、生分解性及び生体適合性のポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
(11) 前記シグナリング分子が、線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、オンコスタチンM、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、HGF、トランスフェリン、インスリン、トランスフェリン/fe、トリヨードチロニン、T3、グルカゴン、グルココルチコイド、成長ホルモン、エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺ホルモン及びこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
(12) 前記インターロイキンが、IL-6、IL-11、IL-13又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
(13) 前記細胞が、無血清培地で培養される、請求項11に記載の方法。
(14) 前記培地が、インスリン、トランスフェリン、脂質、カルシウム、亜鉛及びセレンを含む、請求項13に記載の方法。
(15) 前記内臓の前記細胞懸濁液が、前記細胞を前記対象に導入する前に細胞外で生体材料内で凝固される、請求項1に記載の方法。
(16) 前記細胞懸濁液が、前記罹患組織又は機能障害性組織に又はそれと近接して導入される、請求項1に記載の方法。
(17) 前記細胞懸濁液が直接組織に導入される、請求項16に記載の方法。
(18) 前記組織が、網又は肝臓である、請求項17に記載の方法。
(19) 前記細胞懸濁液が、注入、生分解性被膜又はスポンジを介して導入される、請求項1に記載の方法。
(20) 対象における内臓の組織の修復方法であって、前記内臓が罹患状態又は機能不全の状態にあるものであり、
(a)ドナーから内臓の正常細胞懸濁液を得る工程と、
(b)前記細胞懸濁液を、1種以上の生体材料と混合する工程と、
(c)場合により、前記細胞懸濁液を、増殖因子、サイトカイン、追加細胞又はこれらの組み合わせと混合する工程と、
(d)工程(b)又は(c)の前記懸濁液を前記対象に導入する工程と
を含み、前記工程(d)において導入された前記細胞の実質部分は、生体内で前記内臓の少なくとも一部の中で又はその上に定着する方法。
(21)(a)移植しようとする細胞を得る工程と、
(b)前記細胞を、ゲル形成生体材料と混合して混合物を形成する工程と、
(c)場合により、1種以上の等張性培養液、シグナリング分子及び細胞外基質成分と混合する工程と、
(d)前記混合物を凍結させる工程と
を含む細胞の凍結保存方法。
(22) 前記1種以上の生体材料が、コラーゲン、ラミニン、接着分子、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン鎖、キトサン、アルギン酸塩、並びに合成、生分解性及び生体適合性のポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
(23) 前記生体材料がヒアルロン酸を含む、請求項22に記載の方法。
(24) 前記細胞懸濁液が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、エタエジオール(ethaediol)、1,2-プロパエンジオール(1,2-propaendiol)、2,-3ブテンジオール、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、3-メトキシ-1,2-プロパンジオールの単体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される凍結保護剤と更に混合される、請求項21に記載の方法。
(25) 前記細胞懸濁液が、糖、グリシン、アラニン、ポリビニルピロリドン、ピルビン酸塩、アポトーシス阻害剤、カルシウム、ラクトビオン酸塩、ラフィノース、デキサメタゾン、還元ナトリウムイオン、コリン、抗酸化物質、ホルモン類又はこれらの組み合わせと更に混合される、請求項21に記載の方法。
(26) 前記糖が、トレハロース、フルクトース、グルコース又はこれらの組み合わせである、請求項25に記載の方法。
(27) 前記抗酸化物質が、ビタミンE、ビタミンA、βカロチン又はこれらの組み合わせである、請求項25に記載の方法。
(28) 1種以上の生体材料と混合されて移植片を形成する細胞を含む組織移植片であって、前記移植片の前記要素の剛性率が25~520Pa程度である組織移植片。
(29) 内臓細胞を、標的とする内臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に局在化させる方法であって、前記内臓細胞と1種以上のヒドロゲル形成前駆物質の溶液とを含む調合液を有効量の架橋剤の存在下で、生体内で前記標的とする内臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に導入する工程を含み、前記調合液は、前記標的とする内臓の表面に、その内部に又はそれらの両方に、前記内臓細胞を含むヒドロゲルを形成する方法。
(30) 前記内臓細胞が、前記標的とする内臓の表面に、その内部に又はその両方に少なくとも12時間、少なくとも24時間若しくは少なくとも約48時間又は少なくとも72時間局在化される、請求項29に記載の方法。
(31) 前記内臓細胞が、腫瘍細胞でもなく、癌細胞でもなく、又は異常細胞でもない、請求項29に記載の方法。
(32) 前記内臓細胞が、正常細胞、腫瘍細胞若しくは癌細胞、又はウィルス、細菌、マラリアからなる群から選択される病原体に感染した細胞である、請求項29に記載の方法。
(33) 前記1種以上のヒドロゲル形成前駆物質が、グリコサミノグリカン類、ヒアルロン酸類、プロテオグリカンド(proteoglycand)、ゼラチン類、コラーゲン類、ラミニン類、他の付着タンパク質、植物由来基質成分、これらの変性型、又はこれらの組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
(34) 前記1種以上のヒドロゲル形成前駆物質が、チオール修飾ヒアルロン酸ナトリウム及びチオール修飾ゼラチンを含む、請求項29に記載の方法。
(35) 前記架橋剤が、ポリエチレングリコールジアクリレート又はそのジスルフィド含有誘導体を含む、請求項29に記載の方法。
(36) 前記ヒドロゲルの粘度が約0.1~約100kPa程度、好ましくは約1~約10kPa程度、より好ましくは約2~約4kPa程度である、請求項29に記載の方法。
(37) 前記調合液が、有効量の前記架橋剤の存在下で、前記標的とする内臓の表面に形成されたポケットに導入される、請求項29に記載の方法。
(38) 前記ポケットが、網、スパイダーシルク及び/又は天然絹糸から製造される、請求項37に記載の方法。
(39) 前記標的とする内臓が、肝臓、膵臓、胆管、甲状腺、腸、肺、前立腺、乳房、脳、子宮、骨又は腎臓からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
(40) 前記ヒドロゲルが現場で形成される、請求項29に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15