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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022312
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ダイヤモンドコーティング工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20220127BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
B23B27/14 A
B23B27/20
B23B27/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196007
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2019040859の分割
【原出願日】2019-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】社本 英二
(57)【要約】
【課題】ダイヤモンド被覆層が工具母材から剥離することを抑制する構造を提供する。
【解決手段】ダイヤモンドコーティング工具3において、工具母材1の逃げ面20は、刃先2に連なる第1逃げ面21と、第1逃げ面21よりも刃先2から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1逃げ面よりも外側に位置する第2逃げ面23と、第1逃げ面21と第2逃げ面23とを接続する逃げ面側段差部22とを備える。ダイヤモンド被覆層30は、第1逃げ面21および逃げ面側段差部22に形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具であって、
前記工具母材の前記逃げ面は、前記刃先に連なる第1逃げ面と、前記第1逃げ面よりも前記刃先から離れた位置にあり且つ前記工具母材内部から見て前記第1逃げ面よりも外側に位置する第2逃げ面と、前記第1逃げ面と前記第2逃げ面とを接続する逃げ面側段差部とを備え、
ダイヤモンド被覆層は、前記刃先、前記第1逃げ面および前記逃げ面側段差部に形成される、
ことを特徴とするダイヤモンドコーティング工具。
【請求項2】
前記工具母材の前記すくい面は、前記刃先に連なる第1すくい面と、前記第1すくい面よりも前記刃先から離れた位置にあり且つ前記工具母材内部から見て前記第1すくい面よりも外側に位置する第2すくい面と、前記第1すくい面と前記第2すくい面とを接続するすくい面側段差部とを備え、
前記ダイヤモンド被覆層は、前記第1すくい面および前記すくい面側段差部に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンドコーティング工具。
【請求項3】
すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具であって、
前記工具母材の前記すくい面は、前記刃先に連なる第1すくい面と、前記第1すくい面よりも前記刃先から離れた位置にあり且つ前記工具母材内部から見て前記第1すくい面よりも外側に位置する第2すくい面と、前記第1すくい面と前記第2すくい面とを接続するすくい面側段差部とを備え、
ダイヤモンド被覆層は、前記第1すくい面および前記すくい面側段差部に形成され、前記ダイヤモンドコーティング工具のすくい面は平坦に構成される、
ことを特徴とするダイヤモンドコーティング工具。
【請求項4】
前記ダイヤモンド被覆層は、前記第2すくい面には形成されない、
ことを特徴とする請求項3に記載のダイヤモンドコーティング工具。
【請求項5】
刃先の角度は90度以上である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のダイヤモンドコーティング工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックスや超硬合金、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの硬質材料の切削加工に、超硬合金製インサート母材をダイヤモンドコーティングした工具が使用されている。これらの硬質材料の切削加工には単結晶ダイヤモンド工具や多結晶ダイヤモンド工具も使用されるが、高コストとなるため、ダイヤモンドコーティング工具はコスト面で大きなメリットを有する。
【0003】
特許文献1は、チップ母材にダイヤモンドをコーティングしたスローアウェイチップを開示する。このスローアウェイチップでは、コーティングしたすくい面をクランプ手段で抑える際にコーティング層の刃先を損傷しないように、チップ母材のすくい面において、刃先近傍の部位を、すくい面の中央部位より段下がり状に低く形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-335806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、従来のダイヤモンドコーティング工具50の刃先周辺の構造を示す。ダイヤモンドコーティング工具50は、超硬合金製の工具母材51の刃先53の近傍にダイヤモンドをコーティングすることで作製され、ダイヤモンド被覆層52が工具母材51の刃先53、すくい面54および逃げ面55に形成される。図1においてX軸方向は、ダイヤモンドコーティング工具50による切削工程における切取り厚さ方向を、Y軸方向は、切削工程における切削方向を示す。
【0006】
ダイヤモンドコーティング工具50における工具母材51とダイヤモンド被覆層52との密着性は高くなく、被削材が非常に高硬度である場合や刃先の損耗が進んで切削力が増大した場合に、工具母材51からダイヤモンド被覆層52が剥離しやすいという課題がある。この課題を解決するため、超硬合金の成分を調整(たとえば結合剤であるCoの割合を減少する)したり、母材表面の粗さを増大してアンカー効果を生じさせるなどの対策が講じられているが、十分な解決策にはなっておらず、依然として剥離の問題が残っている。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みてなされており、ダイヤモンドコーティング工具においてダイヤモンド被覆層が工具母材から剥離することを抑制する構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具に関する。この態様のダイヤモンドコーティング工具において、工具母材の逃げ面は、刃先に連なる第1逃げ面と、第1逃げ面よりも刃先から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1逃げ面よりも外側に位置する第2逃げ面と、第1逃げ面と第2逃げ面とを接続する逃げ面側段差部とを備える。ダイヤモンド被覆層は、刃先、第1逃げ面および逃げ面側段差部に形成される。
【0009】
本開示の別の態様は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具に関する。この態様のダイヤモンドコーティング工具において、工具母材のすくい面は、刃先に連なる第1すくい面と、第1すくい面よりも刃先から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1すくい面よりも外側に位置する第2すくい面と、第1すくい面と第2すくい面とを接続するすくい面側段差部とを備える。ダイヤモンド被覆層は、第1すくい面およびすくい面側段差部に形成され、ダイヤモンドコーティング工具のすくい面は平坦に構成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ダイヤモンドコーティング工具においてダイヤモンド被覆層が工具母材から剥離することを抑制する構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来のダイヤモンドコーティング工具の刃先周辺の構造を示す図である。
図2】実施形態の工具母材の形状を示す図である。
図3】逃げ面側段差部の断面を拡大した図である。
図4】ダイヤモンドコーティング工具の構造を示す図である。
図5】ダイヤモンドコーティング工具の構造の別の例を示す図である。
図6】ダイヤモンドコーティング工具の構造の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態のダイヤモンドコーティング工具について説明する。
図2は、実施形態の工具母材1の形状を示す。工具母材1は、すくい面10と、逃げ面20と、すくい面10と逃げ面20の境界をなす刃先2とを有する。ダイヤモンドコーティング工具は、工具母材1の刃先2の近傍にダイヤモンドをコーティングすることで作製される。
【0013】
工具母材1の逃げ面20は、刃先2に連なる第1逃げ面21と、第1逃げ面21よりも刃先2から離れた位置にある第2逃げ面23と、第1逃げ面21と第2逃げ面23とを接続する逃げ面側段差部22とを備える。工具母材1の内部から見て、第2逃げ面23は第1逃げ面21よりも外側に位置する。換言すると、工具母材1の内部から第1逃げ面21と第2逃げ面23とをそれぞれ直交する方向に見た場合に、第2逃げ面23は、第1逃げ面21よりも刃物の厚みを増やす側に位置する。第1逃げ面21および第2逃げ面23は平坦面として形成され、実質的に平行であってよい。たとえば第1逃げ面21および逃げ面側段差部22は、刃先まで平坦面を構成していた第2逃げ面23を切り欠くことで形成されてよい。
【0014】
工具母材1のすくい面10は、刃先2に連なる第1すくい面11と、第1すくい面11よりも刃先2から離れた位置にある第2すくい面13と、第1すくい面11と第2すくい面13とを接続するすくい面側段差部12とを備える。工具母材1の内部から見て、第2すくい面13は第1すくい面11よりも外側に位置する。換言すると、工具母材1の内部から第1すくい面11と第2すくい面13とをそれぞれ直交する方向に見た場合に、第2すくい面13は、第1すくい面11よりも刃物の厚みを増やす側に位置する。第1すくい面11および第2すくい面13は平坦面として形成され、実質的に平行であってよい。たとえば第1すくい面11およびすくい面側段差部12は、刃先まで平坦面を構成していた第2すくい面13を切り欠くことで形成されてよい。
【0015】
図3は、逃げ面側段差部の断面を拡大した図である。図示のように、逃げ面側段差部22と第1逃げ面21との境界P、逃げ面側段差部22と第2逃げ面23との境界Qを定義する。逃げ面側段差部22の傾斜面は、境界Pと境界Qを繋ぐ平面であってもよいが、図3に示すように、工具母材1の外部から見て、境界Pと境界Qを繋ぐ平面よりも奥側に位置してよい(つまり工具母材1の外部から見て、境界Pと境界Qを繋ぐ平面に対して、逃げ面側段差部22の傾斜面が凹部を形成してよい)。
【0016】
第1逃げ面21を工具母材1内部に延長した仮想面に、境界Qから垂線を下ろしたときの交点をRとすると、境界Pと交点Rとの間の距離Wは、境界Qと交点Rとの間の距離H以下であることが好ましい。つまり図3において、線分PRと線分PQのなす角度が45度以上となることが好ましい。また逃げ面側段差部22の傾斜面が境界Pと境界Qを繋ぐ平面に対して凹部を形成する場合に、線分PRと凹形状の境界Qに近い側での接線がなす角度が約90度となることが好ましい。なお境界Pは交点R近傍に位置して、線分PRと線分PQのなす角度が約90度となり、逃げ面側段差部22が、第1逃げ面21に対して略垂直な壁面として構成されてもよい。
【0017】
なお図3は、逃げ面20に形成された逃げ面側段差部22の構造を示すが、すくい面10に形成されたすくい面側段差部12も、図3に示す逃げ面側段差部22と同一の構造を有してよい。
【0018】
図4は、工具母材1にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具3の構造を示す。ダイヤモンド被覆層30は、工具母材1の刃先2、すくい面10および逃げ面20に形成される。工具母材1の刃先2には、層厚程度の半径をもつ切れ刃部31が形成される。ダイヤモンド被覆層30の層厚は、距離H(図3参照)以下であることが好ましい。図4においてX軸方向は、ダイヤモンドコーティング工具3による切削工程における切取り厚さ方向を、Y軸方向は、切削工程における切削方向を示す。
【0019】
逃げ面20において、ダイヤモンド被覆層30は、少なくとも第1逃げ面21および逃げ面側段差部22に形成される。ここで第1逃げ面21および逃げ面側段差部22にダイヤモンド被覆層30が形成されることは、第1逃げ面21および逃げ面側段差部22にダイヤモンド被覆層30が密着することを意味する。
【0020】
ダイヤモンドコーティング工具3を用いた切削工程中、切れ刃部31が被削材から切削力を受けると、逃げ面20に形成されたダイヤモンド被覆層30は、第1逃げ面21の延在方向に切削力による剪断荷重を受ける。このとき逃げ面側段差部22は、ダイヤモンド被覆層30に作用する剪断荷重を受け止めることで、第1逃げ面21とダイヤモンド被覆層30との剪断剥離を抑制する剥離抑制構造として機能する。
【0021】
すくい面10において、ダイヤモンド被覆層30は、少なくとも第1すくい面11およびすくい面側段差部12に形成される。ここで第1すくい面11およびすくい面側段差部12にダイヤモンド被覆層30が形成されることは、第1すくい面11およびすくい面側段差部12にダイヤモンド被覆層30が密着することを意味する。
【0022】
ダイヤモンドコーティング工具3を用いた切削工程中、すくい面10に形成されたダイヤモンド被覆層30は、第1すくい面11の延在方向に切削力による剪断荷重を受ける。このとき、すくい面側段差部12は、ダイヤモンド被覆層30に作用する剪断荷重を受け止めることで、第1すくい面11とダイヤモンド被覆層30との剪断剥離を抑制する剥離抑制構造として機能する。
【0023】
なお高硬度な被削材を切削する際、刃先強度の問題から、通常は、コーティング層の厚みより小さな(つまり一般のコーティング工具では刃先の丸み半径より小さな)切取り厚さで加工することが行われる。このような切削加工では実質的なすくい角は刃先の丸み半径と切取り厚さによって決まることが多いが、実施形態のダイヤモンドコーティング工具3は、設定上のすくい角が負の角度となるように形成されてよい。設定上のすくい角が正の角度である場合(図1参照)、切れ刃部31にかかる切削力の方向とすくい面10の延在方向が近いため、切削力による剪断荷重は大きくなる。一方、設定上のすくい角が負の角度になると、切削力の方向と、すくい面10の延在方向の角度の開きが大きくなることから、切削力による剪断荷重は小さくなる。そのため実施形態のダイヤモンドコーティング工具3では、工具母材1の刃先角度(刃物角度)を90度以上とすることで、設定上のすくい角を負にして、すくい面10と平行にダイヤモンド被覆層30と工具母材1の間にかかる剪断荷重を小さくしている。
【0024】
実施形態のダイヤモンドコーティング工具3において、剥離抑制構造は、少なくとも逃げ面20側に設けられる。逃げ面20側に剥離抑制構造を設けることで、逃げ面20におけるダイヤモンド被覆層30の剪断剥離を抑制できる。剥離抑制構造が逃げ面20側のみに設けられる場合、上記したように、設定上のすくい角が負の角度となるようにダイヤモンドコーティング工具3が使用されることが好ましい。なお剥離抑制構造は、すくい面10側にも設けられてよい。
【0025】
図5は、ダイヤモンドコーティング工具3の構造の別の例を示す。ダイヤモンド被覆層30は、工具母材1の刃先2、すくい面10および逃げ面20に形成される。図5においてX軸方向は、ダイヤモンドコーティング工具3による切削工程における切取り厚さ方向を、Y軸方向は、切削工程における切削方向を示す。
【0026】
逃げ面20において、ダイヤモンド被覆層30は、第1逃げ面21および逃げ面側段差部22に形成されて、第2逃げ面23には形成されない。図4を参照して、第2逃げ面23にダイヤモンドコーティングを施すと、逃げ面側段差部22と第2逃げ面23の境界付近で、切取り厚さ方向側に突き出たダイヤモンド被覆層30の凸部が形成される。この凸部は被削材の仕上げ面に干渉する可能性があるため、図5に示すダイヤモンドコーティング工具3では、第2逃げ面23にダイヤモンド被覆層30を設けないことで、凸部が形成されないようにしている。
【0027】
そのためダイヤモンドコーティング工具3の作製工程において、コーティング工程の実施前に、第2逃げ面23にダイヤモンドがコーティングされないよう所定の前処理を行ってよい。また別の作製手順として、コーティング工程で逃げ面20にダイヤモンド被覆層30を形成した後、第2逃げ面23に形成したダイヤモンド被覆層30を除去してもよい。この除去工程では、ダイヤモンド被覆層30が被削材の仕上げ面に干渉しない程度に除去すればよく、第2逃げ面23に形成したダイヤモンド被覆層30の全てを除去しなくてもよい。
【0028】
図6は、ダイヤモンドコーティング工具3の構造の別の例を示す。ダイヤモンド被覆層30は、工具母材1の刃先2、すくい面10および逃げ面20に形成される。図6においてX軸方向は、ダイヤモンドコーティング工具3による切削工程における切取り厚さ方向を、Y軸方向は、切削工程における切削方向を示す。
【0029】
すくい面10において、ダイヤモンド被覆層30は、第1すくい面11およびすくい面側段差部12に形成されて、第2すくい面13には形成されない。図5を参照して、第2すくい面13にダイヤモンドコーティングを施すと、すくい面側段差部12の付近で、ダイヤモンド被覆層30が、外側に突き出た形状をもつ。この形状は切屑の流出を妨げる可能性があるため、図6に示すダイヤモンドコーティング工具3では、第2すくい面13にダイヤモンド被覆層30を形成せず、第1すくい面11およびすくい面側段差部12においてダイヤモンド被覆層30が第2すくい面13と平坦になるように形成される。なおダイヤモンド被覆層30と第2すくい面13が平坦であるとは、切屑の流出を妨げない程度にダイヤモンド被覆層30と第2すくい面13とが繋がっていればよく、実質的に平坦である場合を含む。
【0030】
ダイヤモンドコーティング工具3の作製工程では、すくい面10にダイヤモンド被覆層30を形成した後、ダイヤモンドコーティング工具3のすくい面を平坦に構成するために、ダイヤモンド被覆層30を除去してよい。このとき図6に示すように、第2すくい面13に形成したダイヤモンド被覆層30の全てを除去してもよいが、ダイヤモンド被覆層30の除去は、ダイヤモンドコーティング工具3のすくい面に、切屑の流出を妨げない平坦面を形成することを目的としているため、第2すくい面13にダイヤモンド被覆層30が残存していても構わない。
【0031】
以上、本開示を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0032】
本開示の態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具に関する。このダイヤモンドコーティング工具において、工具母材の逃げ面は、刃先に連なる(接する)第1逃げ面と、第1逃げ面よりも刃先から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1逃げ面よりも外側に位置する第2逃げ面と、第1逃げ面と第2逃げ面とを接続する逃げ面側段差部とを備える。ダイヤモンド被覆層は、刃先、第1逃げ面および逃げ面側段差部に形成されてよい。
【0033】
この態様によると、逃げ面側段差部が、剥離抑制構造として機能することで、逃げ面側におけるダイヤモンド被覆層の剥離を抑制できる。
【0034】
工具母材のすくい面は、刃先に連なる(接する)第1すくい面と、第1すくい面よりも刃先から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1すくい面よりも外側に位置する第2すくい面と、第1すくい面と第2すくい面とを接続するすくい面側段差部とを備える。ダイヤモンド被覆層は、第1すくい面およびすくい面側段差部に形成されてよい。この構造により、すくい面側段差部が、剥離抑制構造として機能することで、すくい面側におけるダイヤモンド被覆層の剥離を抑制できる。
【0035】
本開示の別の態様は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面の境界をなす刃先とを有する工具母材にダイヤモンドをコーティングしたダイヤモンドコーティング工具に関する。このダイヤモンドコーティング工具において、工具母材のすくい面は、刃先に連なる(接する)第1すくい面と、第1すくい面よりも刃先から離れた位置にあり且つ工具母材内部から見て第1すくい面よりも外側に位置する第2すくい面と、第1すくい面と第2すくい面とを接続するすくい面側段差部とを備える。ダイヤモンド被覆層は、第1すくい面およびすくい面側段差部に形成され、ダイヤモンドコーティング工具のすくい面は平坦に構成される。
【0036】
この態様によると、すくい面側段差部が、剥離抑制構造として機能することで、すくい面側におけるダイヤモンド被覆層の剥離を抑制できるとともに、ダイヤモンドコーティング後のすくい面を平坦に構成することで、切屑をスムーズに流出できる。ダイヤモンド被覆層は、第2すくい面に形成されなくてよい。
【0037】
刃先の角度は90度以上とし、設定上のすくい角を負の角度にすることで、すくい面側のダイヤモンド被覆層にかかる剪断荷重を低減してよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・・工具母材、2・・・刃先、3・・・ダイヤモンドコーティング工具、10・・・すくい面、11・・・第1すくい面、12・・・すくい面側段差部、13・・・第2すくい面、20・・・逃げ面、21・・・第1逃げ面、22・・・逃げ面側段差部、23・・・第2逃げ面、30・・・ダイヤモンド被覆層、31・・・切れ刃部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6