(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022366
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/36 20060101AFI20220127BHJP
H01Q 5/42 20150101ALI20220127BHJP
H01Q 1/32 20060101ALN20220127BHJP
H01Q 1/22 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
H01Q9/36
H01Q5/42
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199149
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2019508663の分割
【原出願日】2018-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2017072310
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】寺下 典孝
(72)【発明者】
【氏名】横田 勇介
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 和也
(57)【要約】
【課題】アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】ケース内に設けられた第1アンテナ及び第2アンテナを備え、第1周波数帯用の前記第1アンテナは、容量装荷素子8を有し、前記第2アンテナは、第2周波数帯用であり、前記第2周波数帯は、前記第1周波数帯よりも高く、前記第2アンテナは、その後端が容量装荷素子8の前端部よりも後方に位置し、その前端が前記容量装荷素子の前記前端部よりも前方に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に設けられた第1アンテナ及び第2アンテナを備え、
第1周波数帯用の前記第1アンテナは、容量装荷素子を有し、
前記第2アンテナは、第2周波数帯用であり、
前記第2周波数帯は、前記第1周波数帯よりも高く、
前記第2アンテナは、その後端が前記容量装荷素子の前端部よりも後方に位置し、その前端が前記容量装荷素子の前記前端部よりも前方に位置する、
アンテナ装置。
【請求項2】
第1基板と、前記第1基板とは別体の第2基板を備え、
前記第1基板は第1給電点を有し、前記第2基板は第2給電点を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1基板は、前記容量装荷素子に対向する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記容量装荷素子は板金部品である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量装荷素子を備えるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シャークフィンアンテナと呼ばれる車載用アンテナ装置が開発されている。車載用アンテナ装置には、AM/FM放送受信用アンテナに加え、DAB(Digital Audio Broadcast)用アンテナを搭載する動きがある(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように共通のケース内に複数のアンテナを設ける動きがある一方で、小型化の要求もあり、アンテナの利得を確保することが困難となっている。
【0005】
本発明は、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、アンテナ装置である。このアンテナ装置は、ケース内に設けられた第1アンテナ及び第2アンテナを備え、
第1周波数帯用の前記第1アンテナは、容量装荷素子を有し、
前記第2アンテナは、第2周波数帯用であり、
前記第2周波数帯は、前記第1周波数帯よりも高く、
前記第2アンテナは、その後端が前記容量装荷素子の前端部よりも後方に位置し、その前端が前記容量装荷素子の前記前端部よりも前方に位置する。
【0007】
第1基板と、前記第1基板とは別体の第2基板を備え、
前記第1基板は第1給電点を有し、前記第2基板は第2給電点を有するとよい。
【0008】
前記第1基板は、前記容量装荷素子に対向するとよい。
【0009】
前記容量装荷素子は板金部品であるとよい。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1の、アウターケース2を省略した斜視図。
【
図4】
図3のL-Band素子16を右前方から見た斜視図。
【
図6】
図3のBandIII容量装荷素子8を左前方から見た斜視図。
【
図8】BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有するアンテナ装置1と、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有さないアンテナ装置と、の各々における、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図9】BandIII容量装荷素子8が金属ベース19に対して配置され頂部8bの側部8aの反対側に接続される追加側部を有するアンテナ装置と、追加側部を有さないアンテナ装置1と、の各々における、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図10】BandIII容量装荷素子8の第1変形例を示す斜視図。
【
図11】BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有する場合(
図6)と頂部8dを有する場合(
図10)の各々におけるアンテナ装置1の、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図12】
図11と同じ各場合におけるアンテナ装置1の、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図13】BandIII容量装荷素子8の第2変形例を示す左前方から見た斜視図。
【
図15】BandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10の共振周波数をFM周波数帯とし、AM/FM容量装荷素子3及びAM/FMヘリカル素子5の共振周波数帯をBandIII周波数帯とする、周波数の入替を行ったアンテナ装置と、周波数の入替を行わないアンテナ装置1と、の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図16】BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3を
図2と略同形状としたアンテナ装置1の簡易左側面図。
【
図17】
図16と比較してBandIII容量装荷素子8の後方下部を後方に延長してAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲内に入り込ませたアンテナ装置の簡易左側面図。
【
図18】BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲が重複しないアンテナ装置1(
図16)と、重複するアンテナ装置(
図17)と、の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図19】
図16と比較してAM/FM容量装荷素子3の前方下部を斜めカットしたアンテナ装置1の簡易左側面図。
【
図20】
図16と比較してBandIII容量装荷素子8の後方下部を斜めカットしたアンテナ装置1の簡易左側面図。
【
図21】AM/FM容量装荷素子3を
図19と同形状とし、BandIII容量装荷素子8を
図20と同形状とした、アンテナ装置1の簡易左側面図。
【
図22】
図16~
図21の各アンテナ装置1における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図23】
図16と比較してAM/FM容量装荷素子3の前方上部を斜めカットしたアンテナ装置の簡易左側面図。
【
図24】
図16のアンテナ装置1と
図23のアンテナ装置の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図25】BandIII容量装荷素子8とBandIIIヘリカル素子10とを接続するLC並列回路の回路図。
【
図26】BandIII容量装荷素子8とBandIIIヘリカル素子10とを接続するコンデンサCの回路図。
【
図27】本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置1Aの、アウターケース2を省略した斜視図。
【
図28】本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置1Bの、アウターケース2を半断面とした斜視図。
【
図33】アンテナ装置1BにおいてBandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後方下部を円弧カットにした場合の、アウターケース2を省略した右側面図。
【
図36】BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後方下部をいずれも斜めカットした場合と、いずれも円弧カットした場合と、の各々におけるアンテナ装置1Bの、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図37】アンテナ装置1Bにおいて、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bを互いの上縁同士を渡す頂部によって連結すると共に非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつ非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつミアンダ形状とした場合(
図28~
図33)と、の各々における、GNSSアンテナ24の仰角と利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図38】アンテナ装置1Bにおいて、GNSSアンテナ24をSXM(Sirius-XM)アンテナに置き換えた場合の、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bを互いの上縁同士を渡す頂部によって連結すると共に非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつ非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつミアンダ形状とした場合(
図28~
図33)と、の各々における、SXMアンテナの仰角と利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1の、アウターケース2を省略した斜視図である。
図2は、同左側面図である。
図3は、アンテナ装置1の分解斜視図である。
図1及び
図3により、アンテナ装置1の互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。上下方向は、金属ベース19及び樹脂ベース20に対して垂直な方向である。金属ベース19及び樹脂ベース20に対して取付け先(例えば車両)の存在する方向が下方向である。前後方向は、アンテナ装置1の長手方向である。左右方向は、アンテナ装置1の幅方向である。前方向は、アンテナ装置1を車両に取り付けた場合の進行方向である。左右方向は、進行方向である前方を見た状態を基準に定める。
【0015】
アンテナ装置1は、車載用シャークフィンアンテナであり、車両のルーフ等に取り付けられる。アンテナ装置1は、アウターケース2内に、第1アンテナとしてのAM/FM容量装荷素子3及びAM/FMヘリカル素子5、第2アンテナとしてのBandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10、並びに第3アンテナとしてのL-Band素子16、を備える。また、他にGPS(Global Positioning System)やSXM(衛星ラジオ放送)アンテナ等を備えてもよい。
【0016】
AM帯の周波数は522kHz~1710kHzであり、FM帯の周波数は76MHz~108MHzである。第1アンテナは、AM帯及び第1共振周波数帯としてのFM帯の受信用である。DABには、周波数が1452MHz~1492MHzのL-Band周波数帯と、周波数が174MHz~240MHzであるBandIII周波数帯と、がある。第2アンテナは、第2共振周波数帯としてのBandIII周波数帯の受信用であり、第3アンテナは、第3共振周波数帯としてのL-Band周波数帯の受信用である。
【0017】
アウターケース2は、電波透過性の合成樹脂製(PCやPET、ABS樹脂等の樹脂製の成型品)であり、両側面が内側に湾曲したシャークフィン形状とされている。アウターケース2と共に各素子を収容する内部空間を構成するベースは、金属ベース19及び樹脂ベース20を組み合わせたものである。金属ベース19は、樹脂ベース20より小面積であり、樹脂ベース20上にネジ止め等により取り付けられる(固定される)。樹脂ベース20は、アウターケース2にネジ止め等により取り付けられる(固定される)。パッド13は、エラストマーやゴム等の環状の弾性部材であり、アウターケース2と樹脂ベース20とにより全周に渡って挟持され(押圧され)、アウターケース2と樹脂ベース20との間を水密封止する。シール部材21は、エラストマーやウレタンやゴム等の環状の弾性部材であり、樹脂ベース20の下面とアンテナ装置1の取付け先の車体(例えば車両ルーフ)との間に挟持され、両者の間を水密封止する。導体であるボルト(車体取付用ネジ)23は、導体であるキャプチャーファスナー22を介して金属ベース19に螺合し、アンテナ装置1を車両のルーフ等に固定する。キャプチャーファスナー22及びボルト23を介して、車両のルーフ等と金属ベース19とが互いに電気的に接続される。
【0018】
ホルダ4は、電波透過性の合成樹脂製(PCやPET、ABS樹脂等の樹脂製の成型品)であり、アウターケース2の内側にネジ止め等により取り付けられる(固定される)。ホルダ4は、第1容量装荷素子としてのAM/FM容量装荷素子3がネジ止め等により取り付けられる(固定される)と共に、BandIII素子保持部4aに第2容量装荷素子としてのBandIII容量装荷素子8を保持し、BandIII基板保持部4bにBandIII基板9を保持する。
【0019】
AM/FM容量装荷素子3は、例えば錫めっき鋼板(導体板)を加工して形成される板状部品である。AM/FMヘリカル素子5は、AM/FMヘリカル素子ホルダ6に巻き付けられた導線である。AM/FMヘリカル素子ホルダ6は、ホルダ4にスナップフィット等で取り付けられる(固定される)。AM/FMヘリカル素子5の上方の端末5aは、AM/FM容量装荷素子3に半田付け等により電気的に接続される。AM/FMヘリカル素子ホルダ6の前方下部には、AM/FM接続金具7が取り付けられる。AM/FMヘリカル素子5の下方の端末は、AM/FM接続金具7に巻き付けられて半田付けされる、又はカシメられることで電気的に接続される。AM/FM接続金具7は、AM/FM導体板バネ15に係合保持される(挟持される)。AM/FM導体板バネ15は、AM/FMアンプ基板14に設けられる。AM/FMアンプ基板14は、金属ベース19上にネジ止め等により取り付けられ(固定され)、金属ベース19に略平行とされる。AM/FM容量装荷素子3及びAM/FMヘリカル素子5は、全体としてFM周波数帯で共振する構成となっており、AM/FM接続金具7とAM/FM導体板バネ15との接点が給電点となっている。給電点では、AM/FMヘリカル素子5のインダクタンスを高くする(巻数を多くする)ことでBandIII周波数帯におけるインピーダンスを高くして、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8との結合を緩和している。このため、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8とを互いに近づけてもBandIII周波数帯の平均利得を確保することができる。
【0020】
BandIII基板9には、BandIII容量装荷素子8が半田付けされる。BandIII容量装荷素子8は、例えば錫めっき鋼板等の金属からなる。板金とすることで、特許文献1のように基板の導体パターンとする場合と比較して、生産性が高く低コストである。BandIII基板9には、
図25に示すコンデンサC及びコイルLを並列に接続したLC回路、又は
図26に示すコンデンサCが設けられている。
図25に示すLC回路はFM周波数帯の信号を通過させないフィルタとして作用し、
図26に示すコンデンサCは、AM/FM周波数帯の信号を通過させないフィルタとして作用し、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8との結合を緩和する。BandIIIヘリカル素子10は、BandIIIヘリカル素子ホルダ11に巻き付けられた導線である。BandIIIヘリカル素子ホルダ11は、BandIII基板9の下面にネジ止めされる。BandIIIヘリカル素子10は、BandIII容量装荷素子8の下面且つ左右方向略中心に配置される。このような構造とすることにより、アウターケース2のデザインの略中心となる位置にBandIIIヘリカル素子10が配置されるため、ケースデザインを細くできる。BandIIIヘリカル素子10の上方の端末は、BandIII基板9に巻き付けられてはんだ付けされ、BandIII基板9に設けられたLC回路(
図25)又はコンデンサC(
図26)に電気的に接続される。BandIIIヘリカル素子ホルダ11の前方下部には、BandIII接続金具12が取り付けられる。BandIII接続金具12がBandIIIヘリカル素子ホルダ11の前方下部に取り付けられる事によって、AM/FMヘリカル素子5とBandIIIヘリカル素子10との離間が大きくとれるため、さらに結合を低減でき、互いの性能劣化を防止することができる。BandIIIヘリカル素子10の下方の端末は、BandIII接続金具12に巻き付けられて半田付けされる、またはカシメられることで電気的に接続される。BandIII接続金具12は、BandIII導体板バネ18に係合保持される(挟持される)。BandIII導体板バネ18は、DABアンプ基板17に設けられる。DABアンプ基板17は、金属ベース19上にネジ止め等により取り付けられ(固定され)、金属ベース19に略平行とされる。BandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10並びに
図25に示すLC回路又は
図26に示すコンデンサCは、全体としてBandIII周波数帯で共振する構成となっており、BandIII接続金具12とBandIII導体板バネ18との接点が給電点となっている。
図25に示すLC回路又は
図26に示すコンデンサCを設けることにより、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8とを例えば10mm以内まで互いに近づけてもAM/FM周波数帯の平均利得を確保することができる。
【0021】
DABアンプ基板17には、L-Band素子16が配置される。
図1~
図3では図示を省略したが、L-Band素子16は、
図4及び
図5に示すように、基板16aの両面に印刷(形成)された導体パターンである。基板16aの一方及び他方の面のL-Band素子16及び導体パターンは、スルーホールにより互いに電気的に接続される。L-Band素子16の一部である導体パターン16bは、L-Bandアンテナの給電点であり、L-Band素子16の下端部に設けられると共に、DABアンプ基板17に半田付け等により電気的に接続される。L-Band素子16の一部である導体パターン16cは、インピーダンス調整用に設けられる。導体パターン16cの一部である接続部16eは、半田付け等によりDABアンプ基板17のグランドに電気的に接続される。導体パターン16cは省略してもよい。L-Band素子16とは別に基板16aの両面に印刷された導体パターン16fは、DABアンプ基板17に対する基板16aの固定用であり、L-Band素子16とは接続されず、DABアンプ基板17に半田付け等により固定される。基板16aは、導体パターン16b、16e、16fのDABアンプ基板17への半田付けにより、DABアンプ基板17の上面且つ左右方向の略中心に固定され、DABアンプ基板17に対し垂直に、すなわち金属ベース19に対し垂直に配置される。このような構造とすることにより、金属ベース19に対して左右対称となる位置にL-Band素子16が配置されるため、指向性が略等方性を有し受信性能に適したものとなる。また、アウターケース2のデザインの略中心となる位置にL-Band素子16が高さを確保して配置されるため利得を劣化させずにケースデザインを細くできる。
【0022】
L-Band周波数帯の平均利得を向上させるために、AM/FM容量装荷素子3及びAM/FMヘリカル素子5の高調波の周波数と、BandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10の高調波の周波数と、の少なくとも一方は、L-Band周波数帯に存在しないことが望ましい。
【0023】
(BandIII容量装荷素子8の形状)
図6は、
図3のBandIII容量装荷素子8を左前方から見た斜視図である。
図7は、同右後方から見た斜視図である。BandIII容量装荷素子8は、好ましくは1つの板金部品からなり、金属ベース19の上方に配置される。BandIII容量装荷素子8は、第1部分としての側部8aと、第2部分としての頂部8bと、を有する。側部8aは、好ましくは、金属ベース19に垂直な平面であり、かつAM/FM容量装荷素子3の左右側面と非平行である。AM/FM容量装荷素子3の左右側面に対して側部8aを非平行とすることで、側部8aとAM/FM容量装荷素子3の左右側面との前後方向離間距離が同じであれば、側部8aとAM/FM容量装荷素子3の左右側面が平行である場合と比較して、BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3との結合が緩和される。側部8aは、好ましくは前方から後方に向かって金属ベース19に対する高さが高くなる形状であり、例えば三角形である。頂部8bは、AM/FMアンプ基板14に対向する(金属ベース19及び樹脂ベース20に対向する)平面であり、側部8aの上端(金属ベース19の反対側)から屈曲した(折れ曲がった)部分である。側部8aの上縁(金属ベース19の反対側の縁)と、頂部8bの左縁とが、互いに接する。頂部8bは、側部8aと比較して、金属ベース19に対する角度が小さい。頂部8bの右縁は、BandIII容量装荷素子8の外縁である。BandIII容量装荷素子8の高さは例えば70mm以下であり、頂部8bの左右幅寸法は例えば2~15mmである。BandIII容量装荷素子8は、容量値が例えば2~4pFになるように寸法及び形状が設定される。
【0024】
図8は、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有するアンテナ装置1と、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有さないアンテナ装置と、の各々における、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図8に示すように、アンテナ装置1は、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有するため、頂部8bを有さない場合と比較して、BandIII容量装荷素子8の面積が大きくなるため、BandIII周波数帯の平均利得が向上する。
【0025】
図9は、BandIII容量装荷素子8が金属ベース19に対して配置され頂部8bの側部8aの反対側に接続される追加側部を有するアンテナ装置と、追加側部を有さないアンテナ装置1と、の各々における、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図9に示すように、BandIII容量装荷素子8が追加側部を有する場合は、追加側部を有さない場合と比較してBandIII周波数帯の平均利得が向上する。これは、追加側部を設ける構成により、BandIII容量装荷素子8の面積が大きくなるためである。なお、BandIII容量装荷素子8の形状は、容量値等の設計条件を満たす形状であれば、どのような形状であっても良い。
【0026】
図10は、BandIII容量装荷素子8の第1変形例を示す斜視図である。本変形例のBandIII容量装荷素子8は、
図6の頂部8bが頂部8dに置き換わったものである。頂部8dは、頂部8bと比較して、自身の左右方向中間部(図示の例では中央部)において側部8aと接続される点で相違し、その他の点で一致する。
【0027】
図11は、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有する場合(
図6)と頂部8dを有する場合(
図10)の各々におけるアンテナ装置1の、BandIII周波数帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図11に示すように、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有する場合と頂部8dを有する場合とでは、BandIII周波数帯の平均利得はほとんど変わらない。
【0028】
図12は、
図11と同じ各場合におけるアンテナ装置1の、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。ここでは日本以外の国のFM周波数帯88MHz~108MHzにおける結果を示す。
図12に示すように、BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有する場合と頂部8dを有する場合とでは、FM周波数帯の平均利得はほとんど変わらない。
【0029】
図6と
図10のBandIII容量装荷素子8を比較すると、
図6の方は1枚の金属板を折り曲げて形成することができる。したがって、生産性の観点では、
図10のBandIII容量装荷素子8よりも
図6のBandIII容量装荷素子8のほうが優れている。
【0030】
図13は、BandIII容量装荷素子8の第2変形例を示す左前方から見た斜視図である。
図14は、同右後方から見た斜視図である。これらの図に示すように、BandIII容量装荷素子8は、上方に行くにつれて金属ベース19に対する角度が小さくなるように部分的に又は全体的に湾曲した形状であってもよい。
【0031】
(L-Band、BandIII、及びAM/FMの前後位置関係)
図1~
図3に示すように、アンテナ装置1の前方から後方に向かって、L-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に位置している。ここで、周波数の高い周波数帯から順にL-Band周波数帯、BandIII周波数帯、AM/FM周波数帯であることから、長さの短い順(高さの低い順)にL-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3となる。すなわち、BandIII容量装荷素子8はL-Band素子16より長い必要があり、AM/FM容量装荷素子3はBandIII容量装荷素子8より長い必要がある。このため、
図1~
図3に示すようにL-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に前方から配置することで、そうでない順に前方から配置した場合と比較して、前方から後方に向かって高くなる形状のアウターケース2の上下方向の高さが高くなるのを抑制することができる。また、共振するのに必要となるインダクタンスが小さい順(インダクタンスを構成するために必要なエリアが小さい順)に、L-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3であることから、L-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に前方から配置することで、アウターケース2の上下方向の高さが高くなるのを抑制することができる。
【0032】
図15は、BandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10の共振周波数をFM周波数帯とし、AM/FM容量装荷素子3及びAM/FMヘリカル素子5の共振周波数帯をBandIII周波数帯とする、周波数の入替を行ったアンテナ装置と、周波数の入替を行わないアンテナ装置1と、の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。周波数の入替は、BandIII容量装荷素子8及びAM/FM容量装荷素子3の形状は変更せず、BandIIIヘリカル素子10及びAM/FMヘリカル素子5のインダクタンス値を調整することで行った。
図15に示すように、周波数の入替を行うと、FM周波数帯の平均利得が著しく低下する。これは、容量装荷素子の高さが低くなり、面積も小さくなるためである。このため、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に前方から位置するのが望ましい。L-Band素子16の共振周波数帯をFM周波数帯又はBandIII周波数帯にしても同様なので、L-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に前方から位置しているのが望ましい。
【0033】
図16は、BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3を
図2と略同形状としたアンテナ装置1の簡易左側面図である。
図17は、
図16と比較してBandIII容量装荷素子8の後方下部を後方に延長してAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲内に入り込ませたアンテナ装置の簡易左側面図である。BandIII容量装荷素子8の後縁は、下方に行くほど後方に行くように斜めになっている。BandIII容量装荷素子8の後部形状が異なる他は、
図16及び
図17の構成は互いに一致する。
【0034】
図18は、BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲が重複しないアンテナ装置1(BandIII容量装荷素子8後方延長無し(
図16))と、重複するアンテナ装置(BandIII容量装荷素子8後方延長有り(
図17))と、の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。BandIII容量装荷素子8の後方下部を後方に延長してAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲内に入り込ませることは、BandIII容量装荷素子8の面積を大きくする効果を有するが、
図18に示すようにFM周波数帯の平均利得低下の要因となる。このため、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8とは、前後方向における存在範囲が重複しないのが望ましい。L-Band素子16とBandIII容量装荷素子8とについても同様であるので、L-Band素子16とBandIII容量装荷素子8とは、前後方向における存在範囲が重複しないのが望ましい。
【0035】
(BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3の形状)
図19は、
図16と比較してAM/FM容量装荷素子3の前方下部を斜めカットしたアンテナ装置1の簡易左側面図である(AM/FM容量装荷素子3下方カット)。
図19における斜めカットの方向は、AM/FM容量装荷素子3の前縁が、下方に行くほど後方に行く方向である。直線的な斜めカットに替えて、BandIII容量装荷素子8側に凹となるように湾曲するカット(例えば円弧カット)としてもよい。なお、以下において、BandIII容量装荷素子8側(又は、AM/FM容量装荷素子3側)に凹となるように湾曲するとは、AM/FM容量装荷素子3の前縁(又は、BandIII容量装荷素子8の後縁)が、上端部と下端部とを結ぶ直線に対して、BandIII容量装荷素子8側(又は、AM/FM容量装荷素子3側)と反対側に凹むことをいうものとする。さらに、BandIII容量装荷素子8側(又は、AM/FM容量装荷素子3側)に凹となるように湾曲することには、BandIII容量装荷素子8の後縁(又は、AM/FM容量装荷素子3の前縁)の上下方向の中間位置を起点とする円の円弧がAM/FM容量装荷素子3の前縁(又は、BandIII容量装荷素子8の後縁)の少なくとも一部を形成することを含むものとする。
図20は、
図16と比較してBandIII容量装荷素子8の後方下部を斜めカットしたアンテナ装置1の簡易左側面図である(BandIII容量装荷素子8下方カット)。
図20における斜めカットの方向は、BandIII容量装荷素子8の後縁が、下方に行くほど前方に行く方向である。直線的な斜めカットに替えて、AM/FM容量装荷素子3側に凹となるように湾曲するカット(例えば円弧カット)としてもよい。
図21は、AM/FM容量装荷素子3を
図19と同形状とし、BandIII容量装荷素子8を
図20と同形状とした、アンテナ装置1の簡易左側面図である(両者下方カット)。
【0036】
図22は、
図16、
図19~
図21の各アンテナ装置1における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図22に示すように、AM/FM容量装荷素子3の前方下部、及びBandIII容量装荷素子8の後方下部、の少なくとも一方を斜めカットして、AM/FM容量装荷素子3の下部とBandIII容量装荷素子8の下部との前後方向の間隔を長くすることで、FM周波数帯の平均利得を向上させることができる。
図22に示すように、AM/FM容量装荷素子3の前方下部とBandIII容量装荷素子8の方向下部の両者を斜めカットすると、AM/FM容量装荷素子3の下部とBandIII容量装荷素子8の下部との前後方向の間隔が最長となるので、FM周波数帯の平均利得を一番向上させることができる。
【0037】
図23は、
図16と比較してAM/FM容量装荷素子3の前方上部を斜めカットしたアンテナ装置の簡易左側面図である。
図23における斜めカットの方向は、AM/FM容量装荷素子3の前縁が、上方に行くほど後方に行く方向である。
図24は、
図16のアンテナ装置1(AM/FM容量装荷素子3前方上部カット無し)と
図23のアンテナ装置(AM/FM容量装荷素子3前方上部カット有り)の各々における、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図24に示すように、AM/FM容量装荷素子3の前方上部を斜めカットしてAM/FM容量装荷素子3の上部とBandIII容量装荷素子8の上部との前後方向の間隔を長くすると、FM周波数帯の平均利得は低下する。このため、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8との前後方向の間隔を長くするためにカットする場合、上部よりも下部をカットするのが望ましい。
【0038】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0039】
(1) BandIII容量装荷素子8が頂部8b又は頂部8dを有するため、頂部8b及び頂部8dを有さない場合と比較して、同じ高さであればBandIII容量装荷素子8の面積を大きくすることができ、アンテナ装置1のBandIII周波数帯の平均利得を向上させることができる(
図8、
図11)。
【0040】
(2) BandIII容量装荷素子8が、金属ベース19に対して配置され頂部8bの側部8aの反対側に接続される追加側部(側部8aと同じ高さ範囲内において側部8aと対向して頂部8bの右縁に接続される追加側部(容量装荷部))を有する場合、追加側部を有さない場合と比較して、BandIII容量装荷素子8の面積が大きくなるため、BandIII周波数帯の平均利得を向上することができる(
図9)。
【0041】
(3) BandIII容量装荷素子8が頂部8bを有する1つの板金部品である場合(
図6)、1つの板金部品でない場合(
図10)に比べてBandIII容量装荷素子8の生産性が高い。
【0042】
(4) アンテナ装置1の前方から後方に向かって、L-Band素子16、BandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に位置するため(前方から後方に向かって第3アンテナ、第2アンテナ、第1アンテナの順に位置するため)、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化(低背化)を図ることができる。
【0043】
(5) BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3の前後方向存在範囲が重複しない(第1及び第2アンテナの前後方向存在範囲が重複しない)ため、アンテナ装置1のFM周波数帯の平均利得の低下を抑制できる(
図18)。同様に、BandIII容量装荷素子8とL-Band素子16の前後方向存在範囲が重複しない(第2及び第3アンテナの前後方向存在範囲が重複しない)ため、アンテナ装置1のBandIII周波数帯の平均利得の低下を抑制できる。
【0044】
(6) AM及びFM周波数帯の受信用にAM/FMヘリカル素子5を有し、BandIII周波数帯の受信用にBandIIIヘリカル素子10を有するため、回路上での分波が不要である。また、AM/FMヘリカル素子5及びBandIIIヘリカル素子10のインダクタンス調整により、一方の共振周波数の整数倍が他方の共振周波数帯に入らないようにすることができ、高感度化に有利である。
【0045】
(7)
図25に示すLC回路によれば、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8との結合が抑制され、FM周波数帯の平均利得低下を抑制できる。
図26に示すコンデンサCによれば、AM/FM容量装荷素子3とBandIII容量装荷素子8との結合が抑制され、AM及びFM周波数帯の平均利得の低下を抑制できる。
【0046】
(実施の形態2)
図27は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置1Aの、アウターケース2を省略した斜視図である。アンテナ装置1Aは、実施の形態1のものと比較して、AM/FM容量装荷素子3の形状をミアンダ状に変更し、かつAM/FM容量装荷素子3が左右二分割された(頂部が分離された)点で相違し、その他の点で一致する。AM/FM容量装荷素子3が
図27のような形状である場合も、前述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。さらに、アンテナ装置1AのAM/FM容量装荷素子3は左右に分割され、頂部が空間を有する構成となるため、AM/FM容量装荷素子3の頂部が結合した構成(頂部が空間を有さない構成)である場合と比較して、BandIII容量装荷素子8とAM/FM容量装荷素子3との結合が緩和される。
【0047】
実施の形態1及び2において、BandIII容量装荷素子8とBandIIIヘリカル素子10とL-Band素子16とを、例えば単一の基板に設けるなどして一体化してもよい。この場合、BandIII容量装荷素子8及びBandIIIヘリカル素子10に相当する部分と、L-Band素子16に相当する部分との間に、L-Band周波数帯の信号を遮断する帯域通過阻止フィルタ(BEF)を挿入することが望ましい。
【0048】
実施の形態1及び2において、L-Band周波数帯を使用しない場合、L-Band素子16を削除してもよい。この場合、L-Band素子16が無いことで小型化に有利である。なお、この場合も上記の理由からBandIII容量装荷素子8、AM/FM容量装荷素子3の順に前方から位置しているのが望ましい。
【0049】
(実施の形態3)
図28は、本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置1Bの、アウターケース2を半断面とした斜視図である。
図29は、同左側面図である。
図30は、
図28のBandIII容量装荷素子81の斜視図である。
図31は、同平面図である。
図32は、同左側面図である。以下、
図27に示すアンテナ装置1Aとの相違点を中心に説明する。
【0050】
アンテナ装置1Bは、L-Band素子16を有さない一方で、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ24を有する。GNSSアンテナ24は、GNSSアンテナ基板25上に設けられる。BandIII容量装荷素子81は、左側素子81a及び第3部分としての右側素子(追加側部)81bを有する。左側素子81a及び右側素子81bは、図示の例では、左右方向と垂直な面について対称となる形状であり、共にミアンダ形状であり、左右方向に対向し、二分割されている(頂部が無い)。左側素子81aは、
図13及び
図14に示すBandIII容量装荷素子8をミアンダ形状としたものに対応する。BandIII容量装荷素子81とGNSSアンテナ24は、前後及び左右方向における位置が少なくとも部分的に重なっている(上方から見ると少なくとも部分的に重なっている)。BandIII容量装荷素子81とGNSSアンテナ24の互いの干渉を防ぐために、左側素子81a及び右側素子81bのホルダ4に沿った上下方向の長さが、GNSSアンテナ24の周波数のλ/2未満であることが望ましい。さらに好ましくは、λ/4以下であることが望ましい。
【0051】
BandIII容量装荷素子81が左側素子81aに加えて右側素子81bを有しているので、前述の
図9に示す結果からも明らかなように、BandIII容量装荷素子81の前後方向の長さを同じにした場合、BandIII周波数帯の周波数におけるアンテナ装置1Bの平均利得は、右側素子81bを有さない場合と比較して高くなる。また、BandIII周波数帯の周波数における平均利得を同じとする場合、右側素子81bを有さない場合と比較して、BandIII容量装荷素子81の前後方向の長さ(ひいてはアンテナ装置1Bの前後方向の長さ)を短くすることができる。
【0052】
BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後縁は、下方(金属ベース19側)に行くほど前方に行く(AM/FM容量装荷素子3から離れる)形状であり、
図28~
図32の例では直線的に斜めカットされている。これにより、AM/FM容量装荷素子3の下部とBandIII容量装荷素子81の下部との前後方向の間隔を長くすることができ、FM周波数帯の平均利得を向上させることができる。
【0053】
BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後縁は、
図28~
図32に示すような直線的に斜めカットの他に、
図33~
図35に示すような円弧カット(AM/FM容量装荷素子3側に凹となる円弧カット)であってもよい。
図36は、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後方下部をいずれも斜めカットした場合と、いずれも円弧カットした場合と、の各々におけるアンテナ装置1Bの、FM帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図36に示すように、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後縁を直線的に斜めカットした場合も円弧カットした場合も、FM帯の周波数の平均利得は大きく変わらない。したがって、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後縁を円弧カットすることにより、円弧カットされずに後縁が側方から見て上下方向に平行な場合と比較して、FM帯の周波数の平均利得を向上させることができる。なお、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bの後縁をAM/FM容量装荷素子3側に凹となるように非円弧状とした場合も、円弧状の場合と同様の効果が得られる。
【0054】
図37は、アンテナ装置1Bにおいて、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bを互いの上縁同士を渡す頂部によって連結すると共に非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつ非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつミアンダ形状とした場合(
図28~
図33)と、の各々における、GNSSアンテナ24の仰角と利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図37の仰角0°は右方向を示し、仰角180°は左方向を示している。
図37より、上方から見てBandIII容量装荷素子81がGNSSアンテナ24を覆う場合において、BandIII容量装荷素子81が左右二分割されていること(左側素子81a及び右側素子81bの上縁同士を渡す頂部が無いこと)が、GNSSアンテナ24の平均利得を高くする効果を奏する。また、
図37より、上方から見てBandIII容量装荷素子81がGNSSアンテナ24を覆う場合において、左側素子81a及び右側素子81bがミアンダ形状であると、非ミアンダ形状であるときに比べて、GNSSアンテナ24の平均利得が高くなる。
【0055】
本実施の形態において、GNSSアンテナ24は、不要であれば省略してもよい。GNSSアンテナ24が無い場合、あるいはGNSSアンテナ24の利得が十分に確保できる場合は、BandIII容量装荷素子81は左右二分割されていなくてもよい(左側素子81a及び右側素子81bの上縁同士が頂部で連結されてもよい)。また左側素子81a及び右側素子81bを非ミアンダ形状としてもよい。FM帯の周波数の平均利得が十分に確保できる場合は、BandIII容量装荷素子81の後縁は側方から見て上下方向と平行であってもよい。また、GNSSアンテナ24の代わりにSXMアンテナを設けてもよい。
図38は、アンテナ装置1Bにおいて、GNSSアンテナ24をSXM(Sirius-XM)アンテナに置き換えた場合の、BandIII容量装荷素子81の左側素子81a及び右側素子81bを互いの上縁同士を渡す頂部によって連結すると共に非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつ非ミアンダ形状とした場合と、左側素子81a及び右側素子81bを非連結かつミアンダ形状とした場合(
図28~
図33)と、の各々における、SXMアンテナの仰角と利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図38の仰角0°は右方向を示し、仰角180°は左方向を示している。
図38より、上方から見てBandIII容量装荷素子81がSXMアンテナを覆う場合において、BandIII容量装荷素子81が左右二分割されていること(左側素子81a及び右側素子81bの上縁同士を渡す頂部が無いこと)、及び左側素子81a及び右側素子81bがミアンダ形状であることが、それぞれSXMアンテナの平均利得を高くする効果を奏する。
【0056】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0057】
図25に示すLC回路又は
図26に示すコンデンサCは、設計上不要であれば省略してもよい。また、
図25に示すLC回路又は
図26に示すコンデンサC以外であっても、BandIII周波数帯の信号を通すフィルタ等であれば、どのような構成であってもよい。実施の形態で示した具体的な数値(周波数や角度)や形状等は一例に過ぎず、要求される仕様に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B アンテナ装置、2 アウターケース(アンテナケース)、3 AM/FM容量装荷素子(第1容量装荷素子)、4 ホルダ、4a BandIII素子保持部、4b BandIII基板保持部、5 AM/FMヘリカル素子、6 AM/FMヘリカル素子ホルダ、7 AM/FM接続金具、8 BandIII容量装荷素子(第2容量装荷素子)、9 BandIII基板、10 BandIIIヘリカル素子、11 BandIIIヘリカル素子ホルダ、12 BandIII接続金具、13 パッド、14 AM/FMアンプ基板、15 AM/FM導体板バネ、16 L-Band素子、17 DABアンプ基板、18 BandIII導体板バネ、19 金属ベース、20 樹脂ベース、21 シール部材、22 キャプチャーファスナー、23 ボルト、24 GNSSアンテナ、25 GNSSアンテナ基板、81 BandIII容量装荷素子(第2容量装荷素子)、81a 左側素子、81b 右側素子