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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022396
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】進行性心不全の予防
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20220127BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P9/10
A61P9/04
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021200035
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2017533780の分割
【原出願日】2015-12-22
(31)【優先権主張番号】2014905240
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィウ・イテスク
(72)【発明者】
【氏名】リー・ゴールデン
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、進行性心不全を処置または予防する方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を、近位左前下行枝(LAD)病変を有する心筋梗塞の対象に投与することを含む、前記対象における進行性心不全を処置または予防する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋梗塞の対象の進行性心不全を予防するための方法であって、前記方法が、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を、前記対象に投与することを含み、前記対象が、近位左前下行枝(LAD)病変を有する、前記方法。
【請求項2】
前記対象が、70mlを超えるLVESVを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、持続性左室機能不全を有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、約45%未満のLVEFを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、約40%未満のLVEFを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子が、心筋梗塞の約1及び7日後の間に投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子が、心筋梗塞の約3及び5日後の間に投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、正常上限の約4倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニン及び/またはミオグロビンを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、左室の約10~25%の間の梗塞サイズを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、左室の約18.5%を超える梗塞サイズを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記LVEF及び/または梗塞サイズが、心臓血管核磁気共鳴画像法(cMR)で測定される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
STRO-1細胞について富化された間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を投与することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
STRO-1bright細胞について富化された間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を投与することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の前記集団が、全身投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の前記集団が、静脈内投与または鼻腔内投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の前記集団が、複数回投与にわたって投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1×10~8×10細胞を投与することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1.2×10~4×10細胞を投与することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
細胞及び/または子孫細胞の前記集団が、自己若しくは同種異系であり、かつ/または、可溶性因子が、自己若しくは同種異系細胞から誘導される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
細胞及び/またはそれらの子孫の前記集団が、投与前及び/または前記可溶性因子を得る前に、拡大培養されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
間葉系列前駆細胞または幹細胞の前記集団が、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現し、かつ/または、前記子孫細胞及び/若しくは可溶性因子が、TNAPを発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の前記集団が、10細胞当たり少なくとも0.1μgの量のアンジオポイエチン-1(Ang1)を発現し、かつ/または前記子孫細胞及び/若しくは可溶性因子が、10細胞当たり少なくとも0.1μgの量のAng1を発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
間葉系列前駆細胞または幹細胞の前記集団が、10細胞当たり約0.05μg未満の量の血管内皮成長因子(VEGF)を発現し、かつ/または前記子孫細胞及び/若しくは可溶性因子が、10細胞当たり約0.05μg未満の量のVEGF及び/若しくは前記子孫細胞を発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
間葉系列前駆細胞または幹細胞の前記集団が、少なくとも約2:1の比のAng1:VEGFを発現し、かつ/または前記子孫細胞及び/若しくは可溶性因子が、少なくとも約2:1の比のAng1:VEGFを発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫細胞及び/またはそこから誘導される可溶性因子が、前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫細胞及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子ならびに担体及び/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
心筋梗塞(MI)の対象の進行性心不全の処置または予防に使用される間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団であって、前記対象が、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有する、前記集団。
【請求項27】
心筋梗塞(MI)の対象の進行性心不全を処置または予防するための薬品の製造における、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団の使用であって、前記対象が、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有する、前記使用。
【請求項28】
前記対象が、持続性左室機能不全を有する、請求項26に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記対象が、70mlを超えるLVESVを有する、請求項26若しくは28に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27若しくは28に記載の使用。
【請求項30】
前記対象が、約45%未満のLVEFを有する、請求項26、28、若しくは29のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
前記対象が、約40%未満のLVEFを有する、請求項26、28、若しくは29のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子が、心筋梗塞の約1及び7日後の間に投与される、請求項26、28~31のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子が、心筋梗塞の約4及び6日後の間に投与される、請求項26、28~31のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記対象が、正常上限の約4倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニン及び/またはミオグロビンを有する、請求項26、28~33のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記対象が、左室の約10~25%の間の梗塞サイズを有する、請求項26、28~34のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
前記対象が、左室の約18.5%を超える梗塞サイズを有する、請求項26、28~34のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
前記LVEF及び/または梗塞サイズが、心臓血管磁気共鳴映像法(cMR)で測定される、請求項26、28~36のいずれか1項に記載の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の集団、または請求項27~36のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、持続性左室(LV)機能不全を有する対象の進行性心不全を予防するための方法に関する。このような方法は、近位左前下行枝(LAD)病変及び持続性左室機能不全を有する対象において進行性心不全を処置または予防するために使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞(MI)は依然として、先進国における死亡率及び罹患の主要な原因の1つである。事象後に生きて退院した65歳を超える患者の350,509の急性MIの入院を含むデータを評価した米国メディケア記録の最近の更新が公表された(Schuster et al. (2004) Physiol Heart Circa Physiol., 287(2):525-32)。インデックス事象(index event)後最初の1年以内に、MI患者の25.9%が死亡し、50.5%が再入院した。MI後の月では、死亡の可能性は、一般のメディケア年齢集団の21倍高く、入院の可能性は、これの12倍高かった。
【0003】
MI後により大きい梗塞を有する患者及びより多くの梗塞後のLV機能不全を有する患者は、中長期の心臓事象及び死亡を経験する危険性が大幅に増加する。具体的には、梗塞後の期間に前壁梗塞、より大きな梗塞、及びより多くのLV機能不全を有する対象は、中長期の心臓事象及び死を経験する危険性が大幅に増加する(Eitel et al. (2010) J Am Coll Cardiol., 55:2470-9)。
【0004】
近位LAD閉塞に起因する梗塞は、進行性LV膨張、リモデリング、及び症状進行性心不全に対する主要な危険因子である状態が続いている。血管形成後の段階では、MI後の3年死亡率は依然として、近位LAD病変についてより高く(遠位のLADに対し10%対3%)(Elsman et al. (2006) Am J Cardiol., 97(8):1137-41)、これは、この解剖学的病変に関連する梗塞サイズが40%大きいことに起因する可能性が最も高い(Elsman et al. (2006) Am J Cardiol., 97(8):1137-41)。18.5%を超える梗塞サイズが、2年以上の心不全関連の主要有害心臓事象(HF-MACE、心不全による入院または死亡と規定される)の30%の発生率をもたらすと将来を見通して示されているので(Wu et al. (2008) Heart, 94:730-736)、これは、近位LAD病変、低駆出率、及び大きな梗塞を有するMI患者の集団が、その後のHF-MACEの危険性が最も高いことを示唆する。
【0005】
明らかに、進行性心不全を処置または予防する必要が、当該技術分野に存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、幹細胞療法が良好に奏効する心筋梗塞(MI)対象の集団の予想外の同定に基づく。
MIから約24時間以内に実施された心臓イメージングのスクリーニングで決定されるような、(正常上限(ULN)の4倍を超える)上昇したトロポニンまたはCK-MB、局所的な心臓壁の異常、及び(45%以下かつ20%以上)低下した全体的な左室収縮機能を有する多数のMI対象は、MIの直後に幹細胞療法またはプラシーボ療法が適用された。
【0007】
本発明者らは、MIの約5日後に、これらの対象の大部分において、正常レベルまで回復した全体的な左室収縮機能を見出した。幹細胞療法の適用は、これらの対象において、プラシーボ療法を超える治療的改善を提供しなかった。
【0008】
驚くべきことに、幹細胞療法の適用は、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有した対象においてプラシーボ治療より顕著な治療的改善を提供した。これらの結果は、幹細胞療法が、MI対象、特に、近位LAD病変を有するMI対象、の部分集団における進行性心不全を処置または予防するのに有用であり得ることを示す。
【0009】
従って、一例では、本開示は、心筋梗塞の対象における進行性心不全を処置または予防する方法を提供し、方法は、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を、対象に投与することを含み、対象は、近位左前下行枝(LAD)病変を有する。
【0010】
別の例では、方法は、i)近位左前下行枝(LAD)病変を有する対象を選択する工程、ならびに、ii)間葉系列幹細胞若しくは前駆細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を対象に投与する工程、を含む。
【0011】
幹細胞療法が良好に奏効した近位LAD病変を有する対象が、MIの約5日後に、持続的な低駆出率も有したことも、本発明者らは確認した。これらの結果は、本開示の方法が、近位LAD病変及び持続的な低駆出率を有する対象の進行性心不全を処置または予防することにも有用であり得ることを示す。
【0012】
従って、別の例では、本開示は、心筋梗塞の対象における進行性心不全を処置する方法を提供し、方法は、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を、対象に投与することを含み、対象は、近位左前下行枝(LAD)病変を有し、持続性左室機能不全を有する。
【0013】
一例では、対象は、70mLを超える上昇した左室収縮末期容積(LVESV)も有する。一例では、LVESVは、80mLを超え、90mLを超え、100mLを超え、110mLを超え、または120mLを超える。別の例では、LVESVは、80mL/mを超え、90mL/mを超え、100mL/mを超え、110mL/mを超え、または120mL/mを超える。
【0014】
ある例では、対象は、約55%未満の左室駆出率(LVEF)を有する。別の例では、対象は、約45%未満のLVEFを有する。別の例では、対象は、約40%未満のLVEFを有する。ある例では、LVEFは、心臓血管磁気共鳴映像法(cMR)で測定される。
【0015】
本発明者は、MI後の投与のタイミングが、対象に有益でもあり得ることも確認している。従って、ある例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、心筋梗塞の約1及び7日後の間に投与される。ある例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、心筋梗塞の約2及び7日後の間に投与される。別の例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、心筋梗塞の約3及び5日後の間に投与される。
【0016】
本発明者らは、正常上限(ULM)と比較した血清バイオマーカーのレベルに基づいて、本開示の方法から恩恵を受け得る対象の集団をさらに特性決定している。ある例では、対象は、正常上限の約2倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニンを有する。別の例では、対象は、正常上限の約4倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニン及び/またはミオグロビンを有する。
【0017】
本発明者らは、梗塞サイズに基づいて、本開示の方法から恩恵を受け得る対象の集団をさらに特性決定している。ある例では、対象は、左室の約10~25%の間の梗塞サイズを有する。別の例では、対象は、左室の約18.5%を超える梗塞サイズを有する。ある例では、梗塞サイズは、cMRで測定される。
【0018】
別の例では、本開示の方法は、STRO-1細胞について富化された間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を投与することを含む。
【0019】
別の例では、本開示の方法は、STRO-1bright細胞について富化された間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団を投与することを含む。
【0020】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現し、かつ/または、子孫細胞及び/若しくは可溶性因子は、TNAPを発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される。
【0021】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり少なくとも0.1μgの量のアンジオポイエチン-1(Ang1)を発現し、かつ/または、子孫細胞及び/若しくは可溶性因子は、10細胞当たり少なくとも0.1μgの量のAng1を発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり少なくとも0.5μgの量のAng1を発現する。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり少なくとも0.7μgの量のAng1を発現する。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり少なくとも1μgの量のAng1を発現する。
【0022】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり約0.05μg未満の量の血管内皮成長因子(VEGF)を発現し、かつ/または、子孫細胞及び/若しくは可溶性因子は、10細胞当たり約0.05μg未満の量のVEGF及び/若しくは子孫細胞を発現する間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞から誘導される。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、10細胞当たり約0.03μg未満の量のVEGFを発現する。
【0023】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、少なくとも約2:1の比のAng1:VEGFを発現し、かつ/または、子孫細胞及び/若しくは可溶性因子は、少なくとも約2:1の比のAng1:VEGFを発現する間葉系列前駆細胞または幹細胞から誘導される。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、少なくとも約10:1の比のAng1:VEGFを発現する。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、少なくとも約20:1の比のAng1:VEGFを発現する。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団は、少なくとも約30:1の比のAng1:VEGFを発現する。
【0024】
一例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団は、全身投与される。ある例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団は、静脈内投与、筋肉内投与、または鼻腔内投与される。例えば、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団は、静脈内投与することができる。
【0025】
一例では、複数回投与の間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団が、投与される。
【0026】
ある例では、本開示の方法は、1×10~8×10の間の細胞を投与することを含む。ある例では、本開示の方法は、1.2×10~4×10の間の細胞を投与することを含む。ある例では、本開示の方法は、少なくとも約1.5×10細胞を投与することを含む。
【0027】
ある例では、細胞及び/若しくは子孫細胞の集団は、自己若しくは同種異系であり、かつ/または、可溶性因子は、自己若しくは同種異系細胞から誘導される。
【0028】
ある例では、細胞及び/またはそれらの子孫の集団は、投与前及び/または可溶性因子を得る前に、拡大培養されている。
【0029】
ある例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫細胞及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫細胞及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子ならびに担体及び/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される。例えば、組成物は、凍結保存剤を含んでもよい。
従って、ある例では、本開示は、心筋梗塞(MI)の対象の進行性心不全の処置または予防に使用される間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団に関し、対象は、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有する。別の例では、本開示は、心筋梗塞(MI)の対象の進行性心不全を処置または予防するための薬品の製造における、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子の集団の使用に関し、対象は、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有する。これらの実施例では、対象は、持続性左室機能不全を有する可能性がある。例えば、対象は、約55%未満のLVEFを有する可能性がある。別の例では、対象は、約45%未満のLVEFを有する。別の例では、対象は、約40%未満のLVEFを有する。これらの実施例では、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、心筋梗塞の約1及び7日後の間に投与することができる。例えば、間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞ならびに/またはそれらの子孫及び/若しくはそこから誘導される可溶性因子は、心筋梗塞の約3及び5日後の間に、投与される。これらの実施例では、対象は、正常上限の約2倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニンを有する可能性がある。別の例では、対象は、正常上限の約4倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/またはトロポニン及び/またはミオグロビンを有する。これらの実施例では、対象は、左室の約10~25%の間の梗塞サイズを有する可能性がある。別の例では、対象は、左室の約18.5%を超える梗塞サイズを有してもよい。これらの実施例では、LVEFまたは梗塞サイズは、cMRで測定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ベースラインの、プラシーボ処置群及びレメステムセル-L(remestemcel-L)処置群の比較。
図2】ベースラインからの6ヶ月目の変化の、プラシーボ処置群及びレメステムセル-L処置群の比較。
図3】左室拡張末期容積の変化が6ヶ月後に-10ml未満である患者の%の、プラシーボ処置群及びレメステムセル-L処置群の比較。ベースラインからの測定された変化。
図4】70mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
図5】80mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
図6】90mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
図7】100mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
図8】110mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
図9】120mLを超えるLVESVにより層別化されたプラシーボ(対照)及びMPC(1億5000万の細胞)が投与された対象における6ヶ月のLVESV値の変化を示す。
【0031】
一般的な技術及び定義
別途具体的な明示のない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、(例えば、分子遺伝学、分子生物学、細胞培養、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学において)当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0032】
別途表記のない限り、本開示で利用される幹細胞、細胞培養、及び外科技術は、当業者らに周知の標準的な手順である。このような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (editors), and F.M. Ausubel et al. (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, including all updates until present), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988)、及びJ.E. Coligan et al. (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (including all updates until present)などの出典中の文献の全体にわたって記載及び説明される。
【0033】
本明細書の全体にわたって、別途具体的な記載がない限り、または文脈が別途必要としない限り、単一の工程、物質の組成物、工程の群、または物質の組成物の群への言及は、1つ及び複数(すなわち、1つ以上)のそれらの工程、物質の組成物、工程の群、または物質の組成物の群を包含すると解釈されるべきである。
【0034】
本開示は、本明細書に記載される具体的な実施形態により範囲が限定されるべきではなく、これらは、例示のみを目的とするものである。機能上同等の製品、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本開示の範囲内である。
【0035】
本明細書に開示された任意の例は、別途具体的な記載のない限り、他の任意の例に準用すると解釈されるべきである。
【0036】
用語「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」あるいは「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、両方の意味またはいずれかの意味に対し、明示的なサポートを提供すると解釈されるべきである。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、反対の記載がない限り、所定の値の±10%、より好ましくは、プラスマイナス5%を指す。
【0038】
本明細書の全体にわたって、単語「を含む(comprise)」、または「を含む(comprises)」若しくは「を含む(comprising)」などの語尾変化は、記載される要素、整数、若しくは工程、または要素、整数、若しくは工程の群を包含するが、他のいかなる要素、整数、若しくは工程、または要素、整数、若しくは工程の群も除外しないことを意味すると理解されるであろう。
【0039】
間葉系列前駆細胞
本明細書で使用される場合、用語「間葉系列前駆細胞または幹細胞」は、多分化能ならびに間葉起源、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞、及び腱、または、非中胚葉起源、例えば、肝細胞、神経細胞、及び上皮細胞、のいずれかの多数の細胞型に分化する能力を維持しながら自己更新能力を有する未分化の多分化能細胞を指す。誤解を避けるために、「間葉系列前駆細胞」は、骨細胞、軟骨組織細胞、及び脂肪細胞などの間葉系細胞、ならびに線維性結合組織に分化することができる細胞を指す。
【0040】
用語「間葉系列前駆細胞または幹細胞」は、親細胞及びそれらの未分化子孫の両方を含む。用語は、間葉系前駆細胞、多分化能間質細胞、間葉系幹細胞(MSC)、血管周囲の間葉系前駆細胞、及びそれらの未分化子孫も含む。
【0041】
間葉系列前駆細胞または幹細胞は、自己、異種、同系、または同質遺伝子系である。自己細胞は、それらが再移植されるべき同じ個体から単離される。同種異系細胞は、同じ種のドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系または同質遺伝子細胞は、遺伝的に同一な生体、例えば、双子、クローン、または高度な近交系研究動物モデルにから単離される。
【0042】
間葉系列前駆細胞または幹細胞は、主に骨髄に存在するが、例えば、臍帯血及び臍帯、成人末梢血、脂肪組織、小柱骨、ならびに歯髄を含む多種多様な宿主組織に存在することも示されている。
【0043】
一例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、STRO-1+間葉系前駆細胞である。本明細書で使用される場合、語句「STRO-1+多能性細胞」は、多能性細胞コロニーを形成することができるSTRO-1+及び/またはTNAP+前駆細胞を意味すると解釈されるべきである。
【0044】
STRO-1+多能性細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜に見出される細胞であり、中胚葉及び/または内胚葉及び/または外胚葉などの生殖系列に分化することができる。従って、STRO-1+多能性細胞は、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織、及び線維性結合組織を含むがこれらに限定されない多数の細胞型に分化することができる。これらの細胞が入る具体的な系列分化決定及び分化経路は、機械的影響ならびに/または内在性生物活性因子、例えば、成長因子、サイトカイン、及び/若しくは宿主組織により確立される局所微環境条件、からの種々の影響に依存する。
【0045】
間葉系列前駆細胞または幹細胞は、宿主組織から単離し、STRO-1+細胞の選択により富化することができる。例えば、対象由来の骨髄吸引液は、間葉系列前駆細胞または幹細胞の選択を可能にするために、STRO-1またはTNAPに対する抗体でさらに処置されてもよい。一例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、(Simmons及びTorok-Storb、1991)に記載されるSTRO-1抗体を使用することにより、富化することができる。
【0046】
用語「富化された」、「富化」、またはそれらの語尾変化は、本明細書では、細胞の未処置の集団(例えば、それらの天然環境における細胞)と比較した場合に、1つの特定の細胞型の集団細胞の集団または多数の特定の細胞型の集団が増加する細胞の集団を記載するために使用される。一例では、STRO-1+細胞について富化された集団は、少なくとも約0.1%または0.5%または1%または2%または5%または10%または15%または20%または25%または30%または50%または75%のSTRO-1+細胞を含む。この点に関しては用語「STRO-1+細胞について富化された細胞の集団」は、用語「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞の集団」に対し明示的なサポートを提供し、X%は本明細書に列挙されるようなパーセンテージであると解釈されるであろう。STRO-1+細胞は、一部の実施例では、クローン化コロニー、例えば、CFU-F(線維芽細胞)を形成することができ、または、それらのサブセット(例えば、50%若しくは60%若しくは70%若しくは70%若しくは90%若しくは95%)は、この活性を有することができる。
【0047】
一例では、細胞の集団は、選択可能な形式のSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から富化される。この点に関しては、用語「選択可能な形式」は、STRO-1+細胞の選択を可能にする細胞がマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解されるであろう。マーカーは、STRO-1であることができるが、そうである必要はない。例えば、STRO-2及び/またはSTRO-3(TNAP)及び/またはSTRO-4及び/またはVCAM-1及び/またはCD146及び/または3G5を発現する細胞(例えば、間葉系前駆細胞)は、STRO-1も発現する(かつSTRO-1brightであることができる)。従って、細胞がSTRO-1+であるという表示は、細胞が、STRO-1発現により選択されるということを意味しない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらは、STRO-3+(TNAP+)である。
【0048】
細胞またはその集団の選択についての言及は、具体的な組織源からの選択を必ずしも必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様の供給源から選択または単離若しくは富化することができる。一部の実施例では、それは、これらの用語が、STRO-1+細胞(例えば、間葉系前駆細胞)を含む任意の組織若しくは血管新生した組織若しくは周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、または本明細書に列挙される組織の任意の1つ以上からの選択に対しサポートを提供する。
【0049】
一例では、本開示に使用される間葉系列前駆細胞または幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のマーカーを個別または集合的に発現する。
【0050】
用語「個別に」の使用は、本開示が、列挙されるマーカーまたはマーカーの群を別々に包含すること、及び、その個々のマーカーまたはマーカーの群が、本明細書に個別に記載されないことがあるにも関わらず、添付の特許請求の範囲は、このようなマーカーまたはマーカーの群を、別々にかつ互いに可分的に規定することがあることを意味する。
【0051】
用語「集合的に」の使用は、本開示が、列挙されるマーカーまたはマーカーの群の任意の数または組み合わせを包含すること、及び、マーカーまたはマーカーの群のこのような数字または組み合わせが、具体的に本明細書に記載されないことがあるにも関わらず、添付の特許請求の範囲は、このような組み合わせまたは部分組み合わせ(sub-combinations)を別々にかつマーカーまたはマーカーの群の他の任意の組み合わせから可分的に規定することがあることを意味する。
【0052】
一例では、STRO-1+細胞は、STRO-1bright(同義語STRO-1bri)である。別の例では、STRO-1bri細胞は、STRO-1dimまたはSTRO-1intermediate細胞と比較して優先的に富化される。別の例では、STRO-1bri細胞はさらに、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/またはCD146+のうちの1つ以上である。例えば、細胞は、上述のマーカーのうちの1つ以上について選択され、及び/または上述のマーカーのうちの1つ以上を発現することが示される。この点に関しては、マーカーを発現することが示される細胞は、具体的に試験される必要はなく、むしろ、以前に富化または単離された細胞は、試験することができ、続いて使用、単離、または富化された細胞は、同じマーカーを発現することも合理的に仮定することができる。
【0053】
一例では、間葉系前駆細胞は、血管周囲のマーカー3G5の存在により特性決定される、WO2004/85630に規定されるような血管周囲の間葉系前駆細胞である。
【0054】
所与のマーカーに対し「陽性」であると言及される細胞は、マーカーが細胞表面に存在する度合いに依存するそのマーカーを、低い(lo若しくはdim)または高い(bright、bri)レベルのいずれかで発現することがあり、用語は、細胞の選別プロセスで使用される蛍光または他のマーカーの強度に関する。lo(またはdim若しくはdull)及びbriの区別は、選別される特定の細胞集団に使用されるマーカーとの関連で理解されるであろう。所与のマーカーに対し「陰性」と言及される細胞は、必ずしもその細胞には全く見られないわけではない。この用語は、マーカーが、その細胞により比較的非常に少ないレベルで発現されること、及び、検出可能に標識され、またはバックグラウンドレベル、例えば、アイソタイプ対照抗体を使用して検出されるレベル、を超えて検出されない場合に、それは非常に低いシグナルを生じることを意味する。
【0055】
本明細書で使用される用語「bright」または「bri」は、検出可能に標識される場合、比較的大きいシグナルを生ずる細胞表面上のマーカーを指す。理論により制限されることを望むものではないが、「bright」細胞は、サンプル中の他の細胞よりも、標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1により認識される抗体)をより多く発現することが提唱される。例えば、STRO-1bri細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析で測定されるようなFITC-コンジュゲートSTRO-1抗体で標識される時に、明るくない細胞(STRO-1dull/dim)よりも、大きい蛍光シグナルを生成する。一例では、「bright」細胞は、出発サンプルに含有される最も明るく標識される骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の実施例では、「bright」細胞は、出発サンプルに含有される最も明るく標識される骨髄単核細胞の少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成する。ある例では、STRO-1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわち、STRO-1-である細胞、と比較して、STRO-1表面発現の2log(大きさ)高い発現を有する。比較すると、STRO-1dim及び/またはSTRO-1intermediate細胞は、STRO-1表面発現の2log(大きさ)未満、通常は、約1logまたは「バックグラウンド」未満、高い発現を有する。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含するように意図される。例えば、用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)、及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPは、BAPである。一例では、本明細書で使用されるTNAPは、寄託アクセッション番号PTA-7282でブダペスト条約の規定に基づき、2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されるSTRO-3抗体に結合することができる分子を指す。
【0057】
さらに、一例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
【0058】
一例では、有意な割合のSTRO-1+多能性細胞は、少なくとも2つの異なる生殖細胞系列への分化が可能である。多能性細胞が分化決定され得る系列の非限定例は、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び幹細胞への多分化能がある幹細胞前駆細胞;オリゴデンドロサイト及びアストロサイトに進行するグリア細胞前駆体を生じることができる神経限定細胞(neural restricted cells);ニューロンに進行する神経前駆体;心筋及び心筋細胞に対する前駆体、グルコース応答性インスリン分泌膵β細胞株を含む。他の系列は、象牙芽細胞、象牙質産生細胞、及び軟骨細胞、ならびに次の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛嚢細胞、腎管上皮細胞、平滑筋細胞及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱細胞、靱帯細胞、軟骨組織細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄基質細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、周皮細胞、血管細胞、グリア細胞、神経細胞、アストロサイト細胞、ならびにオリゴデンドロサイト細胞を含むが、これらに限定されない。
【0059】
本開示の態様では、本明細書中に記載する間葉系列前駆細胞または幹細胞は、MSCである。MSCは、均質組成物であってよく、またはMSCが富化された混合細胞集団であってよい。均質MSC細胞組成物は、付着性骨髄細胞または骨膜細胞を培養することにより得られてもよく、MSCは、独特のモノクローナル抗体で同定される具体的な細胞表面マーカーにより同定されてもよい。MSCが富化された細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許第5,486,359号に記載される。MSCに対する代替源は、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜を含むが、これらに限定されない。
【0060】
別の例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、CD29+、CD54+、CD73+、CD90+、CD102+、CD105+、CD106+、CD166+、MHC1+MSC(例えば、レメステムセル-L)である。
【0061】
単離または富化された間葉系列前駆細胞または幹細胞は、培養によりインビトロで拡大することができる。単離または富化された間葉系列前駆細胞または幹細胞は、凍結保存し、解凍し、続いて、培養によりインビトロで拡大することができる。
【0062】
一例では、単離または富化された間葉系列前駆細胞または幹細胞は、培地(無血清または血清補充)、例えば、5%のウシ胎児血清(FBS)及びグルタミンが補充されたα最小必須培地(αMEM)、に50,000生存細胞/cmで播種され、培地容器に、37度、20%のOで一晩接着させる。続いて、培地は、必要に応じて交換及び/または変更され、細胞は、さらに68~72時間、37℃で、5%のOで培養される。
【0063】
当業者らに理解されるように、培養された間葉系列前駆細胞または幹細胞は、インビボの細胞と表現型が異なる。例えば、一実施形態では、それらは、1つ以上の次のマーカー、CD44、NG2、DC146、及びCD140bを発現する。培養された間葉系列前駆細胞または幹細胞はまた、インビボの細胞と生物学的に異なり、インビボの主に非サイクリング(休止)細胞と比較して、高い増殖率を有する。
【0064】
間葉系列前駆細胞または幹細胞はまた、対象に投与する前に、凍結保存されてもよい。
【0065】
Ang1及び/またはVEGFの発現
本開示の間葉系列前駆細胞または幹細胞は、遺伝的に改変し、または遺伝的に未改変であることができ、高いレベルのAng1を発現する。例えば、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、10細胞当たり少なくとも0.1μgの量のAng1を発現することができる。他の例では、細胞は、10細胞当たり少なくとも0.2μg、10細胞当たり0.3μg、10細胞当たり0.4μg、10細胞当たり0.5μg、10細胞当たり0.6μg、10細胞当たり0.7μg、10細胞当たり0.8μg、10細胞当たり0.9μg、10細胞当たり1μg、10細胞当たり1.1μg、10細胞当たり1.2μg、10細胞当たり1.3μg、10細胞当たり1.4μg、10細胞当たり1.5μgの量のAng1を発現してもよい。
【0066】
別の例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞の集団が、10細胞当たり約0.05μg未満の量のVEGFを発現する。他の例では、細胞は、10細胞当たり約0.05μg、10細胞当たり0.04μg、10細胞当たり0.03μg、10細胞当たり0.02μg、10細胞当たり0.01μg、10細胞当たり0.009μg、10細胞当たり0.008μg、10細胞当たり0.007μg、10細胞当たり0.006μg、10細胞当たり0.005μg、10細胞当たり0.004μg、10細胞当たり0.003μg、10細胞当たり0.002μg、10細胞当たり0.001μg未満の量のVEGFを発現する。
【0067】
別の例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、少なくとも約2:1の比のAng1:VEGFを発現する。他の例では、細胞は、少なくとも約10:1、15:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1の比のAng1:VEGFを発現する。
【0068】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、遺伝的に未改変であり、上述のレベルのAng-1若しくはVEGF、または上記のAng-1:VEGF比を発現する。本明細書で使用される場合、用語「遺伝的に未改変の」は、核酸のトランスフェクションにより改変されていない細胞を指す。誤解を避けるために、本開示との関連では、Ang1をコードする核酸をトランスフェクションされた間葉系列前駆細胞または幹細胞は、遺伝的に改変されたと解釈されるであろう。
【0069】
培養中に発現され、または間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の組成物中に存在する細胞のAng1及び/またはVEGFの量は、当業者らに既知の種々の方法で測定されてもよい。このような方法は、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)、競合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、フロースルーイムノアッセイ、電気化学発光アッセイ、比濁分析に基づくアッセイ、濁度に基づくアッセイ、間葉系列前駆細胞または幹細胞を培養するために使用される培地におけるAng-1またはVEGFの検出に関する蛍光活性化細胞選別(FACS)に基づくアッセイ、及び表面プラズモン共鳴(SPRまたはBiacore)を含むが、これらに限定されない。
【0070】
一例では、培養により発現され、または間葉系列前駆細胞若しくは幹細胞の組成物中に存在するAng1及び/またはVEGFのレベルは、ELISAアッセイで測定される。例えば、間葉系列前駆細胞または幹細胞の培養からの細胞溶解物は、ELISAプレートのウェルに加えられる。ウェルは、Ang1またはVEGFに対する一次抗体、モノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体(複数可)のいずれかでコーティングされてもよい。ウェルは、洗浄され、次に、一次抗体に対する二次抗体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(複数可)のいずれかと接触させる。二次抗体は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの適切な酵素にコンジュゲートされる。適切なインキュベーション期間後に、ウェルは洗浄され、次に、1つ以上の色原体などの二次抗体にコンジュゲートされた酵素に対する適切な基質と接触させる。用いられ得る色原体は、過酸化水素及びテトラメチルベンジジンを含むが、これらに限定されない。基質(複数可)が加えられた後に、ウェルは、適切な期間インキュベーションされる。インキュベーションの完了後に、「停止」溶液は、酵素の基質(複数可)との反応を停止させるために、ウェルに加えられる。次に、サンプルの光学密度(OD)が測定される。試験されている間葉系列前駆細胞または幹細胞の培養物により発現されるAng1またはVEGFの量を決定するためのサンプルの光学密度は、既知の量のAng1またはVEGFを含有するサンプルの光学密度と相関する。Ang1:VEGF発現比を決定するための方法も、当業者に明らかであろう。例えば、Ang1及びVEGFのレベルを定量化した後に、Ang1及びVEGFの定量化されたレベルに基づいた比は、(Ang1のレベル/VEGFのレベル)=Ang1:VEGF比として表すことができる。
【0071】
進行性心不全を処置する方法
心不全は、心臓が身体のニーズを満たす血流量を維持するために十分にポンプすることができない時に起こる。心不全の1つの原因は、心筋梗塞(MI)後の収縮機能不全である。MIは、血液が心臓の一部に適切に流れなくなる時に起こる。血液供給の不足は、梗塞または梗塞症と称される局所範囲の心筋壊死をもたらす。梗塞した心臓は、身体のニーズを満たす血液量を維持するために十分にポンプすることができずに、複数の病態生理学的応答、最終的に心不全がもたらされる。MI後に、心拍出量の低下を緩衝するのに役立ち、かつ重要な器官を灌流するための十分な血圧を維持するのを助ける一連の代償機構が開始される。その結果、心不全を有する患者は、長時間進行しないことがある。しかし、代償機構が最終的に、損傷した心臓を代償し損ねて、「進行性心不全」と称される心拍出量の漸進的な低下がもたらされる。本開示の文脈では、用語、慢性心不全、うっ血性心不全、うっ血性心不全、収縮機能不全、及び進行した心不全は、「進行性心不全」と同じ意味で使用することができる。
【0072】
本開示の方法は、心進行性心不全に特徴的な心拍出量の漸進的な低下の処置に関する。従って、本開示との関連では、「処置する」及び「処置」は、治療的処置及び防止的または予防的手段の両方を指す。
【0073】
ある例では、処置は、心臓関連死若しくは蘇生した心臓死と規定される心不全関連の有害心臓事象(HF-MACE)または非致命的な非代償性心不全事象の可能性または危険性を低減させる。ある例では、HF-MACEの可能性または危険性は、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも36ヶ月にわたって低減する。ある例では、処置は、全死因死亡の可能性または危険性を低減させる。
【0074】
心筋梗塞対象
用語「心筋梗塞(MI)対象」は、心筋梗塞を有している対象を規定するために使用される。本開示の方法は、MI対象の具体的な集団において進行性心不全を処置するために使用することができる。処置の必要な対象は、進行性心不全を既に有する対象及び進行性心不全が予防、遅延、または停止されるべき対象を含む。
【0075】
本開示の方法で処置されたMI対象は、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有する。当業者に理解されるように、LAD動脈は、心臓の前部で、右心室及び左室を分ける前室間溝を進む。対角(Dx)枝は、LADから出て、前壁を横切って外面または外側部分へ走る。従って、Dxは、血液を、左室の前外側部分に供給する。対象は、1つまたはいくつかのDx枝を有することがある。第1のDx枝は、LADの近位部及び中間部の間の境界として機能する。従って、Dxの起点の前の動脈の部分は、「近位LAD」として知られている一方、セグメントは、枝の第1の主要な側面に隣接している。LADの遠位セグメントは、動脈の末端の3分の1である。
【0076】
本開示との関係では、用語「動脈病変」は、心臓のLADを閉塞する閉塞性病変、または、例えば、血管形成術としても知られている経皮的冠動脈インターベンション(PCI)により処置されていたLADを以前に閉塞した動脈病変を包含する。
【0077】
ある例では、本開示の方法で処置された対象は、虚血症状から約1時間以内にPCIを受けた。他の例では、対象は、虚血症状から約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間以内にPCIを受けた。ある例では、対象は、虚血症状から約12時間以内にPCIを受けた。他の例では、対象は、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、またはそれ以上の時間内にPCIを受けた。再発性の胸の痛み及び/またはECG変化を有する、血栓溶解療法で処置された対象は、虚血症状の発症後少なくとも24時間までにPCIに移行されないことがある。従って、他の例では、対象は、虚血症状から約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約35時間、約40時間、約48時間以内にPCIを受けた。
【0078】
MI対象は、左室収縮末期容積(LVESV)を上昇させる可能性がある。ある例では、本開示の方法を使用して処置されたMI対象は、70mLを超える上昇したLVESVを有する。ある例では、対象は、80mLを超え、90mLを超え、100mLを超え、110mLを超え、または120mLを超える上昇したLVESVを有する。別の例では、対象は、80mL/mを超え、90mL/mを超え、100mL/mを超え、110mL/mを超え、または120mL/mを超える上昇したLVESVを有する。
【0079】
MIは、持続性左室機能不全を引き起こす可能性がある。従って、別の例では、MI対象は、近位LAD動脈病変及び持続性左室機能不全を有する。左室機能不全は、心筋収縮性の減少を特徴とする。左室内の心筋収縮性が減少する時に、左室駆出率(LVEF)の低減が生じる。従って、LVEFは、左室機能不全を判定する1つの手段を提供する。
【0080】
LVEF及びLVESVは、心エコー図、単一光子放射断層撮影(SPECT)、または心臓核磁気共鳴画像法(cMRI)などの当該技術分野で既知の多数の方法で測定することができる。
【0081】
ある例では、約60%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。他の例では、約55%、54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%、46%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。別の例では、約45%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。他の例では、約44%、43%、42%、41%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。別の例では、約40%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。他の例では、約39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%未満のLVEFを有する対象は、左室機能不全を有する。
【0082】
本開示の文脈では、用語「持続性左室機能不全」は、一定の期間または一連の測定にわたって持続する左室機能不全を規定するために使用される。例えば、「持続性左室機能不全」は、MIの約1~約14日後の間またはそれより長く持続する左室機能不全を含むことができる。例えば、持続性左室機能不全は、MIの約1~約10日後の間、約1~約9日後の間、約2~約8日後の間、約2~約7日後の間持続する左室機能不全を含むことができる。別の例では、「持続性左室機能不全」は、約1~10回またはそれ以上の測定にわたって持続する左室機能不全を含むことができる。
【0083】
MI後の心筋壊死のサイズまたは量は、臨床的に梗塞サイズと呼ばれる。本開示の方法は、大きい梗塞サイズを有するMI対象の処置に関する。例えば、本開示の方法を使用して処置された対象は、左室の約10~35%を超える梗塞サイズを有することができる。他の例では、対象は、左室の約11~34%、約12~33%、約13~32%、約14~31%、約15~30%、約16~29%、約17~28%を超える梗塞サイズを有する。別の例では、対象は、左室の約18.5%を超える梗塞サイズを有する。他の例では、対象は、左室の約19~27%、約20~26%、約21~25%、約22~24%、約23%を超える梗塞サイズを有する。
【0084】
梗塞サイズは、当該技術分野で既知の多数の方法で測定することができる。このような方法の例は、クレアチンキナーゼ(CK)、CK-MB、トロポニンI、及び脳性ナトリウム利尿ペプチドトロポニンなどの血清マーカーの使用を含む。
【0085】
ある例では、本開示の方法で処置された対象は、正常上限(ULM)の少なくとも約2倍のトロポニンレベルを有する。別の例では、対象は、ULMの少なくとも約3倍、約4倍、約5倍、約6倍のトロポニンレベルを有する。
【0086】
ある例では、本開示の方法で処置された対象は、ULMの少なくとも約2倍のクレアチンキナーゼ-MBレベルを有する。別の例では、対象は、ULMの少なくとも約3倍、約4倍、約5倍、約6倍のクレアチンキナーゼ-MBレベルを有する。
【0087】
梗塞サイズを測定する他の例は、Sestamibi単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、心筋血流イメージング、核磁気共鳴画像法を含む。一例では、梗塞サイズは、cMRIを使用して測定される。いくつかのcMRI技術は、梗塞サイズの診断に使用することができる。最も正確で最もよく検証された技術の1つは、遅延造影心臓核磁気共鳴画像法(DE-CMR)である。従って、ある例では、cMRIは、DE-CMRを含む。
【0088】
DE-CMRに対する適切な設定が使用される時、正常な心筋は、黒く、または何もないように見えるが、生存できない領域は、明るく、または高度に増強されたように見える。従って、ある例では、梗塞サイズは、明るく高度に増強された領域の視覚的評価により測定することができる。梗塞サイズを判定する他の例は、当該技術分野で既知である(Sievers et al. (2007), Circulation, 115, 236-244; Kim et al. (2000), N Engl J Med, 343, 1445-1453)。簡単に言うと、高度増強は、各セグメントに対し、5ポイントスケールを用いる17セグメントモデルでスコア化される(0=高度増強なし、1=1%~25%、2=26%~50%、3=51%~75%、4=76%~100%)。高度に増強された心筋内に完全に包含される暗い領域は、微小血管損傷(ノーリフロー(no-reflow))の領域と解釈され、梗塞の一部として含まれる。パーセントLV心筋としての梗塞サイズは、領域スコアを合計すること、それぞれ、高度増強範囲の中間点で重み付けされること(すなわち、1=13%、2=38%、3=63%、4=88%)、及び17で除することにより計算される。別の例では、梗塞サイズは、短軸画像のスタック上の、高度に増強されたエリアの面積測定により定量化することができる。
【0089】
ある例では、梗塞サイズは、MIの約1~40日後の間に測定される。他の例では、梗塞サイズは、MIの約1~40日後の間、約2~35日後の間、約3~30日後の間、約4~25日後の間、約5~20日後の間、約6~15日後の間に測定される。例えば、梗塞サイズは、MIの約30日後に測定することができる。
【0090】
本開示の文脈では、「梗塞サイズ」は、左室梗塞サイズを指す。換言すれば、左室梗塞サイズは、梗塞している左室の量を指す。
【0091】
本開示の方法は、種々のステージまたは心不全の分類のMI対象の進行性心不全を処置するために使用することができる。例えば、対象は、ステージA、B、C、またはDの心不全を有することができる。ある例では、対象は、ステージBまたはCの心不全を有する。これらの実施例では、心不全のステージングは、American College of Cardiology(ACC)及びAmerican Heart Association(AHA)のステージング基準に基づく。
【0092】
別の例では、対象は、クラスI、II、III、またはIVの心不全を有することができる。ある例では、対象は、クラスIIまたはIIIの心不全を有する。これらの実施例では、心不全分類は、New York Heart Association(NYHA)の分類スケールに基づく。
【0093】
細胞組成物
本開示の方法を実施することにおいて、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、組成物の形態で投与することができる。一例では、このような組成物は、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を含む。
【0094】
用語「担体」及び「賦形剤」は、活性化合物の貯蔵、投与、及び/または生物活性を促進にするために、当該技術分野で従来使用される物質の組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., Mac Publishing Company (1980)を参照のこと)。担体は、活性化合物の任意の望ましくない副作用を低減させることもある。好適な担体は、例えば、安定であり、例えば、担体中の他の成分と反応することができない。一例では、担体は、処置に用いられる投薬量及び濃度で、レシピエントに局所または全身性有害反応を生じない。
【0095】
本開示に対する好適な担体は、従来使用されるものを含み、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、ラクトース、リンガー液、緩衝液、ヒアルロナン、及びグリコールは、特に溶液の場合(等張性の場合)例示的な液体担体である。好適な薬学的担体及び賦形剤は、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。
【0096】
別の例では、担体は、例えば、細胞が成長し、または中断する培地組成物である。このような培地組成物は、それが投与される対象に任意の有害な影響を引き起こさない。
【0097】
例示的な単体及び賦形剤は、細胞の生存、及び/または、細胞が、進行性心不全を低減させ、予防し、若しくは遅延させる能力、に悪影響を与えない。
【0098】
一例では、担体または賦形剤は、細胞を維持するための緩衝活性及び/または生物活性好適なpHの可溶性因子を提供して、それにより、生物活性が発揮され、例えば、担体または賦形剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。PBSは、魅力的な担体または賦形剤を表す。細胞及び因子と最小限に相互作用し、細胞及び因子の速放性を可能にするので、この場合では、本開示の組成物は、例えば、注射により、血流にあるいは、組織または組織を取り囲み、若しくは隣接する領域に、直接適用するための液体として製造されてもよい。
【0099】
それらの幹細胞及び/または子孫細胞は、レシピエントに適合性があり、かつレシピエントに有害でない製品に分解する足場に組み込み、または埋め込むこともできる。これらの足場は、レシピエント対象に移植されるべき細胞にサポート及び保護を提供する。このような足場の例は、天然及び/または合成の生分解性足場である。
【0100】
種々の異なる足場は、本開示の実施において、うまく使用されてもよい。例示的な足場としては、生物学的分解可能な足場が挙げられるが、これらに限定されない。天然の生分解性足場は、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニン足場を含む。細胞移植足場に好適な合成材料は、広範な細胞成長及び細胞機能をサポートすることができるべきである。このような足場はまた、再吸収可能であってよい。好適な足場は、(例えば、Vacanti, et al. J. Ped. Surg. 23:3-9 1988; Cima, et al. Biotechnol. Bioeng. 38:145 1991; Vacanti, et al. Plast. Reconstr. Surg. 88:753-9 1991により記載されるように)ポリグリコール酸足場;またはポリ無水物(polyanhydrides)、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの合成ポリマーを含む。
【0101】
別の例では、細胞は、ジェル足場(例えば、Gelfoam from Upjohn Company)中で、投与されてもよい。
【0102】
本明細書に記載の細胞組成物は、単独で、または他の細胞との混合物として投与されてもよい。異なるタイプの細胞は、直ちに、若しくは投与直前に本開示の組成物と混合されてもよく、または、それらは、投与前の一定期間に、一緒に共培養されてもよい。
【0103】
一例では、組成物は、有効量または治療的若しくは予防的有効量の細胞を含む。例えば、組成物は、約1×10細胞~約1×10細胞または約1.25×10細胞~約1.25×10細胞を含む。投与される細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、及び性別、ならびに処置される障害の程度及び重症度を含む種々の要因に依存する。
【0104】
例示的な投薬量は、少なくとも約1.2×10~約8×1010細胞、例えば、約1.3×10~約8×10細胞、約1.4×10~約8×10細胞、約1.5×10~約7.2×10細胞、約1.6×10~約6.4×10細胞、約1.7×10~約5.6×10細胞、約1.8×10~約4.8×10細胞、約1.9×10~約4.0×10細胞、約2.0×10~約3.2×10細胞、約2.1×10~約2.4×10細胞の間を含む。例えば、投与量は、少なくとも約1.5×10細胞を含むことができる。例えば、投与量は、少なくとも約2.0×10細胞を含むことができる。
【0105】
換言すれば、例示的な投与量は、(80kgの対象)1kg当たり少なくとも約1.5×10細胞を含む。ある例では、投与量は、1kg当たり少なくとも約2.5×10細胞を含むことができる。他の例では、投与量は、1kg当たり約1.5×10~約1×10細胞、1kg当たり約1.6×10~約1×10細胞、1kg当たり約1.8×10~約1×10細胞、1kg当たり約1.9×10~約9×10細胞、1kg当たり約2.0×10~約8×10細胞、1kg当たり約2.1×10~約7×10細胞、1kg当たり約2.3×10~約6×10細胞、1kg当たり約2.4×10~約5×10細胞、1kg当たり約2.5×10~約4×10細胞、1kg当たり約2.6×10~約3×10細胞の間を含むことができる。
【0106】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%を占める。
【0107】
本開示の組成物は、凍結保存されてもよい。間葉系列前駆細胞または幹細胞の凍結保存は、当該技術分野で既知の低速冷却方法または「高速」凍結プロトコールを使用して実施することができる。好ましくは、凍結保存の方法は、未凍結細胞と比較して、凍結保存細胞の類似の表現型、細胞表面マーカー、及び成長速度を維持する。
【0108】
凍結保存組成物は、凍結保存溶液を含んでもよい。凍結保存溶液のpHは通常、6.5~8、好ましくは7.4である。
【0109】
凍結保存溶液は、例えば、PlasmaLyte A(商標)などの滅菌非発熱性等張溶液を含んでもよい。100mLのPlasmaLyte A(商標)は、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C11NaO);368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(CNaO・3HO);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl・6HO)を含有する。それは、抗菌剤を含有しない。pHは、水酸化ナトリウムで調整される。pHは、7.4(6.5~8.0)である。
【0110】
凍結保存溶液は、Profreeze(商標)を含んでもよい。凍結保存溶液は、培地、例えば、αMEM、を追加的または代替的に含んでもよい。
【0111】
凍結を促進するために、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの凍結防止剤は通常、凍結保存溶液に加えられる。理想的には、凍結防止剤は、細胞及び対象に対し無毒であり、非抗原性であり、化学的に不活性であり、解凍後の高い生存率を提供し、洗浄せずに移植が可能であるべきである。しかし、最も一般に使用された凍結保護剤、DMSOは、若干の細胞障害を示す。ヒドロキシエチルデンプン(HES)は、凍結保存溶液の細胞傷害性を低減させるために、代用品として、またはDMSOと組み合わせて使用されてもよい。
【0112】
凍結保存溶液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清構成成分、及び他のタンパク質充填剤のうちの1つ以上を含んでもよい。一例では、凍結保存された溶液は、約5%のヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%のDMSOを含む。凍結保存溶液は、メチルセルロース(methycellulose)、ピロリドン(PVP)、及びトレハロースのうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0113】
一実施形態では、細胞は、42.5%のProfreeze(商標)/50%のαMEM/7.5%のDMSOに懸濁され、制御された速度の冷凍庫中で冷却される。
【0114】
凍結保存組成物は、解凍されて対象に直接投与され、または例えば、HAを含む別の溶液に加えられてもよい。あるいは、凍結保存された組成物は、解凍されてもよく、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、投与前に代わりの担体に再懸濁されてもよい。
【0115】
ある例では、本明細書に記載の細胞組成物は、MIの約1及び約10日後の間に投与されてもよい。他の例では、本明細書に記載の細胞組成物は、MIの約1及び9日後の間、約1及び8日後の間、約2及び7日後の間、約2及び6日後の間、約3及び5日後の間に投与されてもよい。例えば、本明細書に記載の細胞組成物は、MIの約5日後に投与されてもよい。
【0116】
ある例では、本明細書に記載の細胞組成物は、PCIの約1及び約10日後の間に投与されてもよい。他の例では、本明細書に記載の細胞組成物は、PCIの約1及び9日後の間、約1及び8日後の間、約2及び7日後の間、約2及び6日後の間、約3及び5日後の間に投与されてもよい。例えば、本明細書に記載の細胞組成物は、PCIの約5日後に投与されてもよい。
【0117】
ある例では、本明細書に記載の細胞組成物は、単回投与として投与されてもよい。別の例では、細胞組成物は、複数回投与にわたって投与される。例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10回投与。
【0118】
一例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、投与前に拡大培養することができる。間葉系列前駆細胞または幹細胞培養の種々の方法は、当該技術分野で既知である。ある例では、間葉系列前駆細胞または細胞は、投与前に、血清不含培地中で拡大培養される。
【0119】
間葉系列前駆細胞または幹細胞は、例えば、静脈内投与、動脈内投与、または腹腔内投与などにより全身投与されてもよい。間葉系列前駆細胞または幹細胞はまた、経鼻投与、筋肉内投与、または心臓内投与により投与されてもよい。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、心筋に直接投与される。例えば、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、左室の心筋に直接投与することができる。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞はJ&J Myostar(商標)注射カテーテルなどの心内膜心筋カテーテルにより投与される。
【0120】
ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、生存心筋に投与される。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、冬眠心筋に投与される。当業者は、当該技術分野で既知の方法を使用して、生存及び/または冬眠心筋を同定することができるであろう。例えば、NOGASTAR(商標)マッピングカテ-テルシステムなどのマッピングカテ-テルシステムは、生存及び/または冬眠心筋を同定するために使用することができる。
【0121】
別の例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、冠動脈内注入により投与される。例えば、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、左前下行枝(LAD)動脈に投与することができる。ある例では、間葉系列前駆細胞または幹細胞は、PCIによるLAD血管再生の直後にLAD動脈に投与される。
【0122】
ある例では、細胞は、細胞が対象の循環に出て行くことを可能にしないが、細胞により分泌される因子が循環に入ることを可能にするチャンバ内に含有される。このように、可溶性因子は、細胞が因子を対象の循環に分泌することを可能にすることにより対象に投与されてもよい。このようなチャンバは、可溶性因子の局所レベルを増加させるために、対象の部位に等しく移植され、例えば、心臓の中または近くに移植されてもよい。
【0123】
広く記載されるような本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく具体的な実施形態に示されるように、本発明に対する多数の変形及び/または変更がなされ得ることは、当業者らに理解されるであろう。それ故、本実施形態は、全ての点は、例示的であって制限ではないと解釈されるべきである。
【0124】
本明細書で検討及び/または参照される全ての刊行物は、全体として本明細書に組み込まれている。
【0125】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などのあらゆる検討は、単に本発明のための背景を提供することを目的とするものである。これらの事項のいずれかまたは全てが、先行技術ベースの一部を形成し、または本出願の各請求項の優先日の前に存在していたような本発明に関連する分野における共通の一般的な知識であったことを容認するものと解釈されるべきでない。
【0126】
本出願は、2014年12月23日に出願されたAU 2014905240からの優先権を主張し、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0127】
実施例1
臨床フェーズ2a/2b IV AMIにおけるMSC
ST上昇型MI(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)及び低減した心臓駆出率を有する患者の、2~7日に投与された2億の間葉系幹細胞(MSC)の単回静脈内(IV)投与を評価するために、無作為のプラシーボ対照フェーズ2a/2b治験を開始した。
【0128】
急性心筋梗塞後の、レメステムセル-L(エクスビボで培養された成人ヒト間葉系幹細胞)の静脈内注入の安全性及び有効性を評価するために、フェーズIIa/IIbの多施設無作為二重盲検プラシーボ対照研究を設計した。
【0129】
研究は、急性心筋梗塞(MI)を最近経験していた220人の対象のフェーズIIの多施設無作為二重盲検プラシーボ対照研究であった。本研究に適格である急性MI患者は、
1)陽性バイオマーカー(ULNの4倍を超えるトロポニンまたはCK-MB);
2)局所壁運動異常;
3)急性事象の最初の発症後約24時間以内に実施されたスクリーニング心臓イメージングで判定される45%以下かつ20%以上の全体的な左室収縮機能の低下をもたらす任意の急性冠動脈症候群を有する患者を含んでいた。
【0130】
最初に発生したものはどれでも、死亡、中断、または治験薬(IA)注入の60ヶ月後までの安全性及び有効性について、対象を評価した。処置ウィンドウは、急性MIの最初の発症の2日後~7日後であった。
【0131】
対象を、プラシーボまたは処置群(1注入当たり、レメステムセル-Lを200×10細胞)に対して無作為化した。各コホートのほぼ等しい数の対象を、2群のそれぞれに割り当てた(1:1無作為化)。
【0132】
24ヶ月を通した全研究データ
全ての静脈内の間葉系幹細胞(MSC)治療は、十分に許容され、研究は、急性心筋梗塞時のIV MSCの使用が安全であったことを実証した。急性MI対象の全有害事象(90.9%対90.9%)及び重大な有害事象(32.7%対33.6%)におけるレメステムセル-L及びプラシーボの間に明らかな差異はなかった。本研究中に5人:レメステムセル-L群の2人、プラシーボ群の3人の死亡者があった。1人の対象の死亡だけが、場合により研究の処置に関係していると考えられ、その対象は、プラシーボを受けた。
【0133】
元の研究設計では、研究参加に対する主要な試験対象患者基準は、急性事象の約24時間後に心臓イメージングにより判定される45%未満のLVEFであり、スクリーニング時に適格の対象の70%以上は、MIの5.4日後の平均時点で投与された研究製品の静脈内投与の直前のcMRにより、45%を超えるLVEFを有すると見出された。これは、MI及び血管形成手順後の心筋回復の自然経過に起因する可能性が最も高い。それ故、登録患者の30%未満が、レメステムセル-L注入時に、持続性左室(LV)機能不全の研究設計基準を実際満たし、従って、この研究のほとんどの患者は実際に、処置を受けた時点で正常なLV機能を有していた。
【0134】
66人の患者は、スクリーニング時に低駆出率を伴う左前下行枝(LAD)病変を有していた。3ヶ月時の左室収縮末期容積のcMRから得られた変化の主要有効変数に対し、レメステムセル-L群の対象は、数値的な、統計的に有意でない変化を示した(+3.31mL対-0.35,p=0.17)。類似した重要でない数値的変化はまた、ESVならびに平均梗塞サイズ及び駆出率において6ヶ月時に明らかであった。
【0135】
次に、注入直前にcMRで測定された場合の、持続性LV機能不全及び近位LAD病変を有する患者の部分集合におけるレメステムセル-L療法の効果を評価した。
【0136】
事後有効性分析
本研究に対する中心的な理論的根拠は、レメステムセル-Lが、持続性LV機能不全を有するMI後の患者に有効であろうことであった。しかし、70%を超える患者集団全体では、MIの24時間後での治験含有物の選択及び2~7日目(平均処置適用は5.4日目)での処置の間に、駆出率が正常化した。これが、PCIによる再灌流後数日以内に気絶心筋の早期回復を反映し、処置適用前にLV収縮機能の改善がもたらされることがある。研究参加及び処置適用の間のLVEFデータの相違は、研究の根底にある仮説を適切に試験する元の治験の性能を大きく否定した。
【0137】
従って、事後分析を設計し、MI後に最も広範な疾患を有すると予想されるであろう患者、具体的には、処置適用時に近位LAD責任病変及び45%以下のcMR LVEFを有する対象、の部分集合におけるレメステムセル-Lの潜在的な効果をさらに調査するものとした。
【0138】
最も高い危険性の進行性心不全を有する患者において、単回投与(200×10細胞)の静脈内投与されたMSCが、左室心不全の反転及びインデックスAMIの6ヶ月後の進行性の有害なLVリモデリングの予防に対し、プラシーボよりも有効であるかどうか答を出すように、事後分析を設計した。次の通り研究参加のために、危険性の最も高い患者を選択した。
近位LAD責任病変に起因する最初の前壁急性心筋梗塞;
責任冠状動脈病変を、虚血症状の発症から12時間以内にPCI手順でうまく処置した。
持続性LV収縮機能不全(すなわち、cMRによる45%未満のPCI後のLVEF)は、インデックスAMIの2~7日後に存在する。
【0139】
全治験に無作為化された220人の患者のうち、合計25人の対象が、近位LADに局在するMI、12時間未満の虚血時間、成功した経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、45%未満のベースラインcMR LVEF、インデックスAMIの2及び7日後の間の治験製品での処置、からなる基準を満たした。
【0140】
これらの25人の対象は、事後分析に対する評価集団を構成し、レメステムセル-L群に10人の対象及びプラシーボ群に15人の対象、のように分配された。フェーズ2のレメステムセル-LのAMI治験に対し実施された事後分析では、奏効者インデックスアプローチを使用して、有害なLVリモデリングにおける細胞療法の効果を評価した。LVESVのベースラインからの変化の評価を行い、レメステムセル-Lで処置された患者とプラシーボの間に、臨床的に有意義な差異がAMIの6ヶ月後に存在したかどうかを判定した事後研究のプライマリーエンドポイントを、このアプローチを使用して評価した。
【0141】
LV収縮機能の一般に評価された測定値のうち、LVESVは、急性心筋梗塞からの回復後の長期生存の強力な予測因子であることが以前に示されている(White et al. (1987) Circulation,76:44-51)。
【0142】
実際のところ、LVESVは、LV収縮機能に関連する心不全の発症/進行の危険性がある患者における有害なLVリモデリング及び関連MACEの発症と関連するので、生物学的及び臨床的に有意義な変化の有用な代用有効性エンドポイントであることが現在十分に認められている。この分析モデルは、フェーズ2の遺伝子療法治験におけるMACE転帰と十分に相関すると示されている(Hajjar et al. (2008) J Card Fail., 14(5):355-67; Jaski et al. (2009) Card Fail., 15(3):171-81; Jessup et al. (2011) Circulation, 124:304-313)。
【0143】
プライマリー及びセカンダリーエンドポイントの現在の分析では、成功のために予め指定された閾値境界を使用して、処置奏効者を判定した。6ヶ月からベースラインを減じたデータとして計算されたこれらの値を利用して、間隔の変化が、通常の測定誤差の範囲外、及び潜在的臨床的有意の両方であったことを確認した。
【0144】
【表1】
【0145】
事後集団の有効性の結果
ベースラインでは、LVESV、LVEDV、LVEF、またはLV梗塞容積に関して、処置群間に有意な差異はなかった。しかし、興味深い傾向は、6ヶ月の経過観察訪問に対するベースラインデータからの変化内で明らかであった。
【0146】
LV梗塞容積;
ベースラインで、プラシーボ群及びレメステムセル-L群の間の平均梗塞容積は、類似しており、非常に高く、それぞれ、40.9+13.75g(平均値+標準偏差)及び40.76+17.82g(平均値+標準偏差)であった。これらの患者において総平均心筋質量を約130gと仮定すると(Stone et al.(2012)JAMA.、307:17、1817-26)、これらの値は、治療的介入時に約30%の梗塞サイズを有する非常なハイリスク集団を表す。18.5%を超える梗塞の大きさが、2年を超える不全に関連する主要有害心臓事象(HF-MACE、心不全入院または死亡と規定される)の30%の発生率をもたらすことが将来を見通して示されているので、これは、この事後分析で評価されたAMI患者の集団が、その後のHF-MACEの危険性が最も高かった。
【0147】
6ヶ月の終わりに、レメステムセル-L群における対象は、ベースライン値の40.76+17.82gから26.6+12.94g(平均値+標準偏差)までのLV梗塞容積の減少を示した。これは、-14.14+13.94gの変化を表した。一方、プラシーボ対象は、ベースライン値の40.9+13.75g(平均値+標準偏差)から31.59+12.70gまでのLV梗塞容積の名目上より小さい減少を示した。これは、-7.74+10.84gの変化を表した。プラシーボ補正差は、-6.40gであった(p=0.187)。
【0148】
これらの結果は、レメステムセル-Lが、プラシーボと比較して、6ヶ月にわたって2倍の梗塞容積低減、平均LV質量を130gと仮定した)ベースラインの約30%の梗塞サイズから6ヶ月の約20%の梗塞サイズまで、の自然の内因性治癒過程を増強したことを示す。
【0149】
LVESV:
6ヶ月の終わりに、レメステムセル-L群の対象は、ベースライン値の85.0+15.89mLから73.0+24.24mL(平均値+標準偏差)までのLVESVの減少を示した。これは、-12.0+16.57mLの変化を表した。一方、プラシーボ対象は、ベースライン値の90.5+23.54mL(平均値+標準偏差)から92.8+35.40mLまでのLVESVの増加を示した。これは、2.2+28.53mLの変化を表した。プラシーボ補正差は、-14.2mLであった(p=0.174)。
【0150】
【表2】
【0151】
特に、レメステムセル-L群に見られたような、(平均LV質量を130gと仮定した)ベースラインの約30%から6ヶ月の約20%までの梗塞サイズの変化は、この期間にわたってLVESVを少なくとも10mL低減させる(Wu et al. (2007) Stem Cells, 25:26, 48-59)と予想されるであろう。発明者らの結果は、一貫しており、発明者らのデータセットの一致を確認する。
【0152】
LVEDV:
6ヶ月の終わりに、レメステムセル-L群の対象は、ベースライン値の142.9+24.01mLから154.4+37.52mL(平均値+標準偏差)までのLVEDVの増加を示した。これは、11.5+27.91mLの変化を表した。一方、プラシーボ対象は、ベースライン値の151.2+35.98mL(平均値+標準偏差)から167.8+41.66mLまでのLVEDVの増加を示した。これは、16.6+27.30mLの変化を表した。プラシーボ補正差は、-5.1mLであった(p=0.618)。
【0153】
LVEF:
6ヶ月の終わりに、レメステムセル-L群の対象は、ベースライン値の40.6+4.23%から53.1+8.71%(平均値+標準偏差)までのLVEFの増加を示した。これは、12.5+8.88のLVEF単位変化を表した。一方、プラシーボ対象は、ベースライン値の40.3+3.47%(平均値+標準偏差)から45.8+9.08%までのLVEFの増加を示した。これは、5.6+9.48のLVEF単位変化を表した。プラシーボ補正差は、6.9LVEF単位であった(p=0.066)(図1及び2を参照のこと)。
【0154】
【表3】
【0155】
奏効者分析
インデックスAMIの6ヶ月後の処置奏効者であったレメステムセル-L患者対プラシーボ患者のパーセントの間の差異に関し、統計的優位性(p=0.095)への重要な傾向があった。具体的には、プラシーボ患者の27%と比較して、レメステムセル-Lで処置された患者の60%は、処置奏効者であった。これは、プラシーボ群と比較して、レメステムセル-L群に対する奏効者率の2.2倍の増加を表した(図3)。
【0156】
「奏効者」対「非奏効者」のサブグループのコホート分析
LVESVの減少に対する奏効者率が、プラシーボ群よりも、レメステムセル-L群において2.2倍高かったが、LVリモデリング及び全体的なLV収縮機能のパラメータに対する6ヶ月の平均変化は、レメステムセル-L及びプラシーボ非奏効者(LVESVの名目上の増加、LVEDVの大きな増加、及びLVEFの最小限の増加)と比較して、レメステムセル-L及びプラシーボ奏効者(LVESVの減少、LVEDVの変化なし、及びLVEFの増加)について類似していた。
【0157】
一方、レメステムセル-L処置奏効者対象は、他の任意のサブグループに対し認められたよりも、ベースラインから6ヶ月目(-18.8g)までのLV梗塞容積のより大きな減少を実証した(レメステムセル-L非奏効者=-7.1g、プラシーボ奏効者=-4.8g、及びプラシーボ非奏効者=-9.1g)。後者の3群に含まれた17人の患者に対するLV梗塞容積の平均変化は、-7.6gであった。レメステムセル-L処置奏効者に対するLV梗塞容積におけるこの差異は、LVESV、LVEDV、及びLVEF分析のために生成されたデータと著しく対照的であり、処置奏効者データは一般に、レメステムセル-L及びプラシーボ対象について類似していた。
【0158】
近位LAD閉塞後の大きな閉塞を有する患者における平均左室質量を130gと仮定すると(Stone et al. (2012) JAMA., 307:17, 1817-26)、これは、レメステムセル-L奏効者における、ベースラインの約30%から、6ヶ月の約17%まで梗塞サイズの変化を表す。梗塞容積のこの低減は、この群において、2年にわたるHF-MACE事象率に対する主要な影響を有する可能性がある(Wu et al. (2007) Stem Cells, 25:26, 48-59)。
【0159】
従って、レメステムセル-L奏効者は、
1)LVESVに関連するプライマリー有効性エンドポイントの2.2倍高い達成率(p=0.095);
2)LVリモデリングの改善、全体的なLV収縮機能の改善、及びLV梗塞容積の低減の間のより高いレベルの一致;
3)すなわち、梗塞容積の低減により、LVESV及び有害LVリモデリングが、改善されている独自の機序を実証した。
【0160】
【表4】
【0161】
全てのレメステムセル-L群(n=10)対プラシーボ群(n=15)の場合、ベースラインの患者背景、虚血性MI症状の発症からPCI時までの時間、またはPCI後のTIMI灌流フローグレード3の発生率に関し有意差はなかった。プラシーボ群と比較して、レメステムセル-L群について、PCIから治験製品の注入までの時間及び最初の虚血性MI症状から治験製品の注入までの時間がより短くなる傾向があった。
【0162】
結論として、AMIの2~7日後のレメステムセル-Lの静脈内投与は、インデックス事象の6ヶ月後に、LV梗塞サイズを減少させ、有害なLVリモデリングを減弱させ、かつ全体的なLV収縮機能を改善するのに役立った。レメステムセル-Lのプラシーボと比較した有益な効果は、梗塞領域(梗塞容積の減少)及び遠隔心筋領域(LVESVの減少はLVEFの増加をもたらす)の両方において明白であったことが明らかである。これらの知見は、この条件に対し危険性が高いAMI後の患者における心不全の発症の発生率の低減と最終的には同等であろうことが予想される。
【0163】
実施例2
LVESVにおけるMPCの疾患重症度及び治療上の効果の間の相関
図4~9は、プラシーボ(対照)またはMPC(1.5×10の間葉系前駆細胞)の投与の6ヶ月後に評価された対象におけるLVESVの変化を示す。LVESVの低減は、(ベースラインLVESVの測定で判定されるような)心不全のレベルと相関した。対象を、以下に示すようなLVESVにより層別化した。
【0164】
【表5】
【0165】
これらのデータは、左室収縮機能不全に起因する慢性心不全を有する対象におけるベースラインの左室収縮異常の大きさが大きいほど、6ヶ月の経過観察期間にわたって観察されたMPC関連心臓保護効果がより有益であることを実証する。データは、進行性慢性心不全と関連する進行性の有害な自然史は、MPCでの処置により有益に変化させることができることをさらに実証する。理論に拘束されることを望むものではないが、知見は、組織レベルの生化学的/生理学的障害が、有益なパラクリンメディエーターのMPC放出を促進する局所環境を作り出すパラクリンクロストーク仮説をサポートする。それにより、心不全対象におけるMPCの投与により達成される最適な効果は、疾患増悪の危険性が最も高い対象、すなわち、70mLを超えるベースラインのLVESVを有する対象に見られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左室(LV)心筋梗塞を有するヒト対象の、心不全関連の有害心臓事象(HF-MACE)の危険性の低減における使用のための医薬組成物であって、
前記対象が、HF-MACEの影響を受けやすく、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有し、70mlを超える左室収縮末期容積(LVESV)を有し、持続性左室機能不全を有し、且つ、45%未満の左室駆出率(LVEF)を有し、
患者のLV収縮機能を改善し、それにより対象のHF-MACEの危険性を低減させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、医薬組成物
【請求項2】
前記対象が、心臓血管核磁気共鳴画像法(cMR)で測定した、40%未満のLVEFを有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
対象のLV梗塞のサイズを減少させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記対象が、心臓血管核磁気共鳴画像法(cMR)で測定した、左室の18.5%を超える梗塞サイズを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項5】
患者のLV収縮機能を改善し、それにより対象のHF-MACEの危険性を少なくとも6か月の期間低減させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、心筋梗塞の1及び7日後の間に投与されるための組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、心筋梗塞の3及び5日後の間に投与されるための組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記対象が、正常上限の約4倍を超えるクレアチンキナーゼ-MB及び/又はトロポニン及び/又はミオグロビンを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、STRO-1細胞について富化された間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団から培養増殖させたものである、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、全身投与のための組成物中に存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、静脈内投与のための組成物中に存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、複数回投与にわた投与のための組成物中に存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、1.2×10~4×10細胞を含む組成物中に存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、自己若しくは同種異系である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現す間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団から培養増殖させたものである、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記培養増殖させた間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞が、アンジオポイエチン-1(Ang1)及び血管内皮成長因子(VEGF)を、2:1の比で発現する、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項17】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、アンジオポイエチン-1(Ang1)及び血管内皮成長因子(VEGF)を、2:1及び30:1の間の比で発現する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
左室(LV)心筋梗塞を有するヒト対象の、心不全関連の有害心臓事象(HF-MACE)の危険性の低減のための医薬の製造における、間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団の使用であって、
前記対象が、HF-MACEの影響を受けやすく、近位左前下行枝(LAD)動脈病変を有し、70mlを超える左室収縮末期容積(LVESV)を有し、持続性左室機能不全を有し、且つ、45%未満の左室駆出率(LVEF)を有し、
前記医薬が、患者のLV収縮機能を改善し、それにより対象のHF-MACEの危険性を低減させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、使用。
【請求項19】
前記対象が、心臓血管核磁気共鳴画像法(cMR)で測定した、40%未満のLVEFを有する、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬が、対象のLV梗塞のサイズを減少させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項21】
前記対象が、心臓血管核磁気共鳴画像法(cMR)で測定した、左室の18.5%を超える梗塞サイズを有する、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項22】
前記医薬が、患者のLV収縮機能を改善し、それにより対象のHF-MACEの危険性を少なくとも6か月の期間低減させるのに有効な量で間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団が、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現する間葉系前駆細胞又は間葉系幹細胞の集団から培養増殖させたものである、請求項18~22のいずれか1項に記載の使用。
【外国語明細書】