IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルプレヒト−カールス−ウニヴェルジテート ハイデルベルクの特許一覧

特開2022-22455環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用
<>
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図1
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図2A
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図2B
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図3
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図4
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図5
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図6
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図7
  • 特開-環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022455
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20220127BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220127BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20220127BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20220127BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
A61P31/20
A61P31/14
A61P1/16
A61P35/00
A61P9/00
A61P3/06
A61K38/12
A61K38/16
A61K47/64
A61K51/08 200
C07K14/575
C12N7/01
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201748
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018530570の分割
【原出願日】2016-12-15
(31)【優先権主張番号】15200494.1
(32)【優先日】2015-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509161141
【氏名又は名称】ルプレヒト-カールス-ウニヴェルジテート ハイデルベルク
【氏名又は名称原語表記】Ruprecht-Karls-Universitaet Heidelberg
【住所又は居所原語表記】Grabengasse 1, D-69117 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ウルバン
(72)【発明者】
【氏名】イー ニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ミア
(57)【要約】
【課題】環状NTCP標的化ペプチドおよび侵入阻害剤としてのその使用の提供。
【解決手段】本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)のpreS由来ペプチドである、環状NTCP標的化ペプチドに関する。本発明は、さらに、少なくとも1種の環状ペプチドを含む医薬組成物に関する。本発明は、さらに、肝臓疾患または状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害における等、前記環状ペプチドおよび医薬組成物の医学的使用に関する。本発明は、さらに、肝臓疾患または状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害の方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Ia
【化42】



の環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩であって、式中、
Pは、アミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、Xaaは、FまたはLであり、
Xは、m個のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列であり、
Yは、n個のアミノ酸の長さを有するアミノ配列であり、
(X) -P-(Y) は、配列番号8、11、14、17および25のいずれか1つのアミノ酸配列からなり、
前記環状ペプチドは、Xおよび/またはYのアミノ酸側鎖に少なくとも1つの疎水性修飾を保有し、
前記環状ペプチドは、配列番号1のPのアミノ酸配列内で環化されておらず、
前記疎水性修飾は、アシル化または疎水性部分の付加である、
環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記疎水性修飾が、C8~C22脂肪酸によるアシル化であるか、
または前記疎水性部分(単数または複数)が、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体から選択される、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
前記疎水性修飾が、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)によるアシル化である、請求項1または2に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
(a)前記ペプチドに含まれる2個のシステイン(C)のジスルフィド架橋形成、
(b)2個のアミノ酸側鎖のアミド縮合、
(c)ヘッドトゥーテール環化、
(d)骨格環化、および/または
(e)チオエーテル形成、
により環化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項5】

【化44】



を有し、式中、Hは、前記疎水性修飾である、請求項1~4のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
さらなる部分(単数または複数)を含む、請求項1~5のいずれかに記載の環状ペプチドであって、前記さらなる部分(単数または複数)が、
薬物またはそれぞれのプロドラッグ、
タグ、
標識、
組換えウイルスまたはその派生物、
薬物、プロドラッグまたは標識のための担体またはデポー、
免疫原性エピトープ、
ホルモン、
阻害剤、
毒素
から選択される、環状ペプチド。
【請求項7】
前記標識が、蛍光色素、放射性同位元素または造影剤である、請求項6に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
前記さらなる部分(単数または複数)が、リンカー、スペーサーおよび/またはアンカー基を介して共有結合される、請求項6または7のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
前記リンカーが、切断可能なリンカーである、請求項8に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
阻害剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項11】
前記阻害剤が、カプシド阻害剤である、請求項10に記載の環状ペプチド。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の少なくとも1種の環状ペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬における使用のための、請求項1~11のいずれかに記載の環状ペプチドを含む組成物、または請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
- HBVおよび/またはHDV感染の阻害における使用、
- 原発性HBVおよび/またはHDV感染の予防における使用、
- HBVおよび/またはHDV侵入阻害剤としての使用
のための請求項1から11のいずれかに記載の環状ペプチドを含む組成物、または請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
HBVのいずれかの遺伝子型のHBV感染が、阻害または予防される、請求項15に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項17】
肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置における使用のための、請求項1から11のいずれかに記載の環状ペプチドを含む組成物、または請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記肝臓疾患または状態が、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシスから選択される、請求項17に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項19】
前記肝炎が、A、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスに起因する肝炎、またはウイルスに起因する随伴性肝炎である、請求項18に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項20】
前記肝臓疾患または障害が、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期が関与する疾患である、請求項17に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項21】
前記ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期が関与する疾患が、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、またはウィルソン病である、請求項20に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項22】
前記肝臓疾患または障害が、肝臓腫瘍である、請求項17に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項23】
前記肝臓腫瘍が、肝細胞癌(HCC)である、請求項22に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項24】
前記肝臓疾患または障害が、胆汁経路内の胆汁酸塩蓄積に関する肝臓移植の後の移植後合併症である、請求項17に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項25】
前記肝臓疾患または状態が、肝細胞への化合物のナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)媒介性輸送に関するか、または前記疾患または状態の部位もしくは場所への化合物の送達を必要とし、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患、
高脂血症、
肝後性胆汁うっ滞、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
糖原病
から選択される肝臓が関与する代謝疾患であり、
NTCPにより肝細胞へと輸送される前記化合物が、胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸塩に共有結合された化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である、請求項17に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項26】
心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置における使用のための、請求項1から11のいずれかに記載の環状ペプチドを含む組成物、または請求項12もしくは13に記載の医薬組成物。
【請求項27】
コレステロールレベルまたはコレステロール取り込みの制御または修飾を含む、請求項26に記載の使用のための組成物または医薬組成物であって、
前記コレステロールレベルまたは取り込みが、前記環状ペプチドによってNCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより制御または修飾される、組成物または医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、前記環状ペプチドの治療有効量で投与される、請求項15から27のいずれか一項に記載の使用のための環状ペプチドを含む組成物、または医薬組成物。
【請求項29】
前記環状ペプチドの治療有効量が、患者当たり0.01mg~50mgの範囲内であるか、または体重1kg当たり10pmol~1kg当たり20μmolの範囲の前記環状ペプチドの用量で患者に適用される、請求項28に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項30】
前記環状ペプチドの治療有効量が、患者当たり1mg~20mgの範囲内である、請求項29に記載の使用のための組成物または医薬組成物。
【請求項31】
投与経路が、経口、皮下、静脈内、鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐薬から選択される、請求項15から28のいずれか一項に記載の使用のための環状ペプチドを含む組成物、または医薬組成物。
【請求項32】
前記環状ペプチドが、ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)を標的とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)のpreS由来ペプチドである、環状NTCP標的化ペプチドに関する。本発明は、さらに、少なくとも1種の環状ペプチドを含む医薬組成物に関する。本発明は、さらに、肝臓疾患または状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害における等、前記環状ペプチドおよび医薬組成物の医学的使用に関する。本発明は、さらに、肝臓疾患または状態の診断、予防および/もしくは処置、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、約20億人が、HBVの血清学的マーカーを保有する。そのうち約4億人が、HBVに慢性的に感染している。疾患管理センター(center of disease
control;CDC)によると、慢性的にHBV感染した者の15~25%は、適切な処置を受けない場合、十年間以内に肝細胞癌(HCC)を発症する傾向がある(Shephardら、2006年)。HBV関連HCCは、予後不良であり、したがってHBVは、世界保健機関(WHO)によって、最も重要な天然に存在するヒト発癌物質として分類された。予防的ワクチンの存在にもかかわらず、増加している世界人口および貧しい国々における予防法の限界のため、感染数は、向こう数十年間で上昇すると予想される。
【0003】
HBVは、非経口的経路を介して主に伝染する。急性に感染した免疫応答性の個体の90~95%は、ウイルスを排除し、これにより、生涯にわたる免疫保護を得る。感染者の約5~10%は、慢性B型肝炎を発症する(ドイツにおける300,000~500,000人)。対照的に、高度流行地域、特に、中央アフリカおよび東アジアでは、主な伝染様式は、母から子への周産期である。残念ながら、十分に免疫応答性とは言えない子供の感染は、この疾患の90~98%慢性経過をもたらす。したがって、B型肝炎関連HCCは、これらの国々の多くにおいて最も一般的な悪性疾患である。
【0004】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染の処置のために現在承認されている治療レジメンは、既に確立された感染後にウイルスゲノムの複製ステップに対処するもの(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル)、または免疫系のモジュレーターとして作用するもの(インターフェロンアルファ)のいずれかである。残念ながら、患者の10~25%しか、斯かる治療法の後に持続したウイルス学的応答を保たない。したがって、ウイルスの除去および感染の治癒に役立ち得る、これまでに影響を受けていない複製ステップ(例えば、ウイルス侵入)を標的とする新規治療薬を開発することは、最大限に重要である。
【0005】
予防的ワクチンおよび逆転写酵素(RT)阻害剤の利用能にもかかわらず、世界的なHBV感染者の数およびHBV関連死の数(現在、年間約500,000人)は、増加しつつある。原発性肝臓がんの約3分の2は、持続性HBV感染に起因し得る(ChanおよびSung、2006年)。
【0006】
ウイルス侵入の特異的阻害は、異なるウイルスによる急性および慢性感染を制御し、最終的に除去するための魅力的な治療概念である。侵入阻害は、近年、HCV感染のマウスモデルにおいて実証されたため、治癒的潜在力を有する(Maillyら、2014年)。
【0007】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)は、ヘパドナウイルス科(hepadnaviridae)のメンバーである。ヘパドナウイルスは、pgRNA中間体の逆転写により複製する、最小のエンベロープを持ったDNAウイルスである。アセンブリの際に、ヌクレオカプシドは、大(L)、中(M)および小(S)と命名された3種のウイルスエンベロープタンパク質を獲得する。これらは、1個のオープンリーディングフレーム中にコードされ、膜アンカリングに必要とされるS-ドメインを共有する。S-ドメインに加えて、Mは、55アミノ酸のN末端親水性伸長部(preS2)を含有する一方、Lは、preS1と命名される107、117または118アミノ酸(遺伝子型依存性)によってさらに伸長される(Urbanら、2014年)。D型肝炎ウイルス(HDV)は、肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するサテライトウイルソイドである。Lのミリストイル化preS1-ドメインは、HBVおよびHDV感染性において重要な役割を果たすことが公知である。
【0008】
本発明者らは、PHHおよびHepaRG細胞のHBVおよびHDV感染を遮断する、HBV L-タンパク質由来リポペプチドを以前に同定した(Griponら、2005年、Schulzeら、2010年、WO2009/092611(A1))。これは、HBV遺伝子型DのpreS1-ドメインのN末端47アミノ酸(HBVpreS/2-48myr)に由来し、ミリスチン酸による天然に存在する修飾を含む。
【0009】
その内容全体を参照により本明細書に組み込むWO2009/092612およびWO2012/107579において、本発明者らは、HBVの疎水性修飾preS由来ペプチド、および肝臓への化合物の特異的送達のためのビヒクルとしてのそれらの使用について記載する。
本発明者らは、さらに、このようなHBV L-タンパク質由来リポペプチドの結合の原因となる受容体、すなわち、ナトリウム・タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP/SLC10A1)を以前に同定した(WO20014/072526、WO2014/072524およびWO2015/014830)。Niら(2014年)およびYanら(2012年)も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/092611号
【特許文献2】国際公開第2009/092612号
【特許文献3】国際公開第2012/107579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、HBVおよびHDV受容体としてのNTCP、ならびに天然基質および生体異物のNTCP媒介性輸送の阻害のための方法および手段を改善することを目標とする。
【0012】
よって、本発明の目的は、NTCP媒介性輸送に関係する肝臓疾患等、肝臓疾患の診断、予防および/または処置のための改善された手段および方法を提供することである。
【0013】
本発明は、さらに、先行技術に見られるHBV感染および他のHBV関連疾患の阻害、予防および/または処置のための方法および手段を改善することを目標とすることから、本発明の目的は、HBV感染および関連する疾患の標的化された有効な阻害、予防ならびに/または処置を可能にする、改善された方法および手段を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、HDV感染およびHDV関連疾患の阻害、予防ならびに/または処置のための改善された手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にしたがって、この目的は、一般式I
【化1】
の環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩であって、式中、
Pは、アミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、Xaaは、FまたはLであり、
Xは、m個のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列であり、
mは、0または少なくとも1であり;
Yは、n個のアミノ酸の長さを有するアミノ配列であり、
nは、0または少なくとも1であり;
m+nは、0または少なくとも1である、
環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を提供することによって解決される。
【0016】
本発明にしたがって、この目的は、
(i)本発明の少なくとも1種の環状ペプチド、
(ii)任意選択で、薬学的に許容される担体および/または賦形剤
を含む、医薬組成物を提供することによって解決される。
【0017】
本発明にしたがって、この目的は、医薬における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0018】
本発明にしたがって、この目的は、HBVおよび/またはHDV感染の阻害における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0019】
本発明にしたがって、この目的は、原発性HBVおよび/またはHDV感染の予防における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0020】
本発明にしたがって、この目的は、HBVおよび/またはHDV侵入の阻害剤としての使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0021】
本発明にしたがって、この目的は、肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0022】
本発明にしたがって、この目的は、心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供することによって解決される。
【0023】
本発明にしたがって、この目的は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害、ならびに/または原発性HBVおよび/もしくはHDV感染の予防のための方法であって、治療有効量の本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含む、方法によって解決される。
【0024】
本発明にしたがって、この目的は、肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置のための方法であって、治療有効量の本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含む、方法によって解決される。
【0025】
本発明にしたがって、この目的は、心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置のための方法であって、治療有効量の本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含む、方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明についてより詳細に下に記載する前に、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコールおよび試薬は変動し得るため、本発明が、これらに限定されないことを理解されたい。本明細書に使用されている用語法が、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、本発明の範囲を限定するとは意図されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると予想されることも理解されたい。他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的のため、本明細書に引用されているあらゆる参考文献は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0027】
濃度、量および他の数値的データは、本明細書において、範囲形式で表現または提示される場合がある。斯かる範囲形式が、単に便利さおよび簡潔さのために使用されており、よって、範囲の境界として明確に列挙された数値を含むだけではなく、あたかも各数値および部分的範囲(sub-range)が明確に列挙されているかのように、該範囲内に包含されるあらゆる個々の数値または部分的範囲も含むものと柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。説明として挙げると、「7~49」の数値的範囲は、明確に列挙された値の4~19を含むだけではなく、示されている範囲内の個々の値および部分的範囲も含むものと解釈されるべきである。したがって、個々の値、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16・・・37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および部分的範囲、例えば、7~10、10~15、15~25、28~39、35~47、35~49などがこの数値範囲に含まれる。この同じ原理は、「少なくとも1」または「少なくとも1個のアミノ酸」等、1つの数値のみを列挙する範囲に適用する。さらに、斯かる解釈は、範囲の幅または記載されている特徴に関係なく適用するべきである。
【0028】
環状NTCP標的化ペプチド
上に概要を述べる通り、本発明は、環状ペプチドを提供する。
【0029】
前記環状ペプチドは、B型肝炎ウイルス(HBV)のpreS由来ペプチドである。
本発明の環状ペプチドは、一般式I
【化2】
(式中、
Pは、アミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、Xaaは、FまたはLであり、
Xは、m個のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列であり、
mは、0または少なくとも1であり;
Yは、n個のアミノ酸の長さを有するアミノ配列であり、
nは、0または少なくとも1であり;
m+nは、0または少なくとも1である)
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
好ましくは、m+nは、0~42であり、
および/またはm=0~8であり、および/またはn=0~34であり、ただし、m+nは、0または少なくとも1である。
【0030】
ある実施形態では、
m+n=0であり、ペプチドは、7アミノ酸の長さを有する/を含む(すなわちP);
m+n=1であり、ペプチドは、8アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=2であり、ペプチドは、9アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=3であり、ペプチドは、10アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=4であり、ペプチドは、11アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=5であり、ペプチドは、12アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=6であり、ペプチドは、13アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=7であり、ペプチドは、14アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=8であり、ペプチドは、15アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=15であり、ペプチドは、22アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=40であり、ペプチドは、47アミノ酸の長さを有する/を含む;
m+n=42であり、ペプチドは、49アミノ酸の長さを有する/を含む。
【0031】
- 環化
本発明の環状ペプチドは、異なる方法で環化することができ、好ましくは、
(a)ペプチドに含まれる2個のシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)、
例えば、(環化前のペプチド配列の)N末端におけるまたはその付近のCおよびC末端におけるまたはその付近のCを介したチオール酸化;
(b)2個のアミノ酸側鎖のアミド縮合(ラクタム)、
例えば、リシン(K)側鎖およびアスパラギン酸(D)側鎖を介したアミド縮合、
例えば、(環化前のペプチド配列の)N末端におけるまたはその付近のK側鎖およびC末端におけるまたはその付近のD側鎖を介したアミド縮合;
(c)ヘッドトゥーテール(head-to-tail)環化、
例えば、(環化前のペプチド配列の)N末端、すなわちN末端アミノ酸のアミノ基およびC末端、すなわちC末端アミノ酸のカルボキシル基を介したヘッドトゥーテール環化、
例えば、N末端およびC末端におけるリシン(K)(環化前のペプチド配列の)を介した、ヘッドトゥーテール環化、
(d)骨格環化、
(e)チオエーテル形成、
および/または
(f)アミノ酸の、例えばトリプトファンジッパーを形成するアミノ酸の水素結合形成および/または結合形成誘導体
により環化することができる。
【0032】
好ましくは、本発明の環状ペプチドは、Pのアミノ酸配列内(すなわち、配列番号1(NPLGFXaaP(Xaa=FまたはL))の7アミノ酸のファーマコフォア内)に、すなわち、Pのアミノ酸側鎖により、環化されたペプチドを含まない。
【0033】
しかし、P配列は、ヘッドトゥーテール環化により環化することができる。
【0034】
例えば、一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、mおよびnは、それぞれ0である。ペプチドは、N末端、すなわち、N末端アスパラギン(N)のアミノ基およびC末端、すなわち、C末端アミノ酸プロリン(P)のカルボキシル基によるヘッドトゥーテール環化により環化される。
【0035】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、X=Cysであり、Y=Cysであり、mおよびnは、それぞれ1である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0036】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、X=Cysであり、Y=Asp-Cysであり、m=1であり、n=2である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0037】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、X=Cysであり、Y=His-Asp-Cysであり、m=1であり、n=3である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0038】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、X=Cys-Proであり、Y=Asp-Cysであり、m=2であり、n=2である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0039】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を含み、X=Cys-Proであり、Y=His-Asp-Cysであり、m=2であり、n=3である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0040】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を有するMyrcludex B配列を含み、m=7であり、n=33である。ペプチドは、N末端、すなわち、N末端グリシン(G)のアミノ基、およびC末端、すなわち、C末端アミノ酸グリシン(G)のカルボキシル基によるヘッドトゥーテール環化により環化することができる。
【0041】
一実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=F、すなわち、NPLGFFP(配列番号2)である)を有するMyrcludex B配列、および2つの追加のシステインを含み、m=8であり、n=34である。ペプチドは、2つのシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)により環化することができる。
【0042】
別の実施形態では、環状ペプチドは、それぞれ、P NPLGFXaaP(Xaa=L、すなわち、NPLGFLP(配列番号3)である)、ならびに任意選択で上記の通りのさらなる追加のアミノ酸を含む。
【0043】
- 疎水性修飾
好ましい実施形態では、本発明の環状ペプチドは、疎水性修飾されている、すなわち、少なくとも1個の共有結合された疎水性修飾を保有する。
【0044】
疎水性修飾の位置は、ペプチド配列内で変動し得る。
【0045】
好ましくは、疎水性修飾は、Xおよび/またはYのアミノ酸側鎖に存在する。
【0046】
一実施形態では、疎水性修飾は、Pのアミノ酸側鎖に存在する。
好ましくは、疎水性修飾は、アシル化および/または疎水性部分の付加であり、
より好ましくは、
ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)、
さらにより好ましくは、ミリストイル(C14)等、
C8~C22脂肪酸によるアシル化であるか、
または疎水性部分(単数または複数)は、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体から選択される。
【0047】
本発明の環状ペプチドは、同じであっても異なっていてもよい、1個より多くの、例えば2、3、4個またはそれよりも多くの疎水性修飾を保有することができる。
【0048】
例えば、本発明の環状ペプチドは、1個のミリストイル基(C14)および1個のステアロイル(C18)基を保有する。
【0049】
好ましくは、本発明の環状ペプチドは、1または2個の疎水性修飾を保有する。
【0050】
一実施形態では、本発明の環状ペプチドは、一般式Ia
【化3】
を有し、Xおよび/またはPのアミノ酸側鎖に少なくとも1個の疎水性修飾を保有する。
一般式Iaは、次式のように示すこともできる
【化4】
【0051】
一般式Iaを有する環状ペプチドは、ヘッドトゥーテール環化により得ることができ、例えば、
- ペプチドに含まれる2個のシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)、
すなわち、(環化前のペプチド配列の)N末端におけるシステインおよびC末端におけるまたはその付近のシステインのチオール酸化、
- N末端におけるリシン(K)またはN末端それ自体およびC末端(環化前のペプチド配列の)
によるヘッドトゥーテール環化により得ることができる。
【0052】
例えば、一般式Iaを有する環状ペプチドは、次式:
【化5】
例えば、
【化6】
(式中、Hは、疎水性修飾、好ましくは、ミリストイル(C14)である)となることができる。
例えば、
【化7】
【0053】
- NTCP標的化
本発明の環状ペプチドは、好ましくは、NTCP(遺伝子名SLC10A1)、ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチドの標的化に適している。
【0054】
ヒトナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチドNTCP/SLC10A1は、HBV preS1特異的受容体であり、これは、本発明者らによって近年同定された通り(例えば、WO2014/072526、WO2014/072524およびWO2015/014830を参照)、B型肝炎ウイルス(HBV)および/またはD型肝炎ウイルス(HDV)感染において重要な役割を果たす。この受容体またはある特定の非ヒト対応物の発現は、以前はHBVおよび/もしくはHDVに特異的に結合することができなかった、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染に対して非感受性であった細胞を、HBVおよび/もしくはHDV結合適格性である、ならびに/またはHBVおよび/もしくはHDV感染に対して感受性である細胞へと形質転換することを可能にする。分化後にHBVおよび/またはHDV感染に対して感受性となった細胞(HepaRG細胞)は、NTCPの発現時に有意に増加した感受性を示す。
【0055】
NTCPは、HepG2、HuH7において発現されず、DMSO処理後にHepaRG細胞において誘導され(Kotaniら、2012年)、脱分化の際に初代肝細胞において下方モジュレートされる(Doringら、2012年)、内在性膜貫通タンパク質である。
【0056】
本明細書において、「NTCPを標的化すること」または「NTCP標的化」は、好ましくは、宿主(対象または患者)内の、それぞれの肝臓細胞/肝細胞における、また同様に、感染を支持しないが、結合適格性NTCPを発現する一部の動物(例えば、マウス、ラット、イヌ)における、NTCP受容体への本発明の環状ペプチドの特異的結合を指す。
【0057】
一実施形態では、胆汁酸のNTCP媒介性輸送は、本発明の環状ペプチドによって減少または遮断される(NTCPが、環状ペプチドで飽和されている場合)。
【0058】
しかし、NTCPが、環状ペプチドで飽和されていない場合であっても、NTCPのHBV/HDV受容体機能は既に遮断され、ウイルス阻害または基質輸送の阻害に必要とされる異なる薬理学的用量を示す。
【0059】
- アクセサリードメイン
一実施形態では、本発明の環状ペプチドは、(アクセサリー)ドメインをさらに含む。
【0060】
斯かるアクセサリードメインは、本発明の環状ペプチドの機能性を増加させる。
【0061】
好ましくは、前記アクセサリードメインは、HBVおよびHDVに対する追加的な中和能力により抗体応答を誘発するエピトープを提供する。
【0062】
例えば、十分に特徴付けされたアミノ酸配列モチーフ19-LDPAFG-24の導入が挙げられる。
【0063】
斯かるアクセサリードメインは、環状ペプチドの一部であってもよいし、または非環式であってもよい。
【0064】
例えば、環状アクセサリードメインの実施形態では、環状ペプチドは、preS配列のアミノ酸残基8~16と、加えて、例えば、preS配列のアミノ酸残基20~26または20~48をアクセサリードメインとして含有する。
【0065】
非環式アクセサリードメインの一実施形態では、アクセサリードメインは、リシン側鎖等、Xおよび/またはYのアミノ酸側鎖に連結/結合されている。
【0066】
好ましくは、アクセサリードメインは、Pのアミノ酸側鎖に連結/結合されていない。
好ましくは、本発明の環状ペプチドは、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
(式中、P、配列番号1は下線を引き、アクセサリードメインはイタリックである)
-アミノ酸残基9~15 (配列番号2)
【化8】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=Cysであり、Y=Cysであり、m=1であり、n=1である
【化9】
例えば、C末端D-Tyr
【化10】
-アミノ酸残基9~16
【化11】
および、例えば、追加のアミノ酸、例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=Cysであり、Y=Asp-Cysであり、m=1であり、n=2である
【化12】
例えば、C末端D-Tyr
【化13】
-アミノ酸残基8~16
【化14】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=Cys-Proであり、Y=Asp-Cysであり、m=2であり、n=2である
【化15】
例えば、C末端D-Tyr
【化16】
-アミノ酸残基9~17
【化17】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=Cysであり、Y=Asp-His-Cysであり、m=1であり、n=3である
【化18】
例えば、C末端D-Tyr
【化19】
-アミノ酸残基8~17
【化20】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=Cys-Proであり、Y=Asp-His-Cysであり、m=2であり、n=3である
【化21】
例えば、C末端D-Tyr
【化22】
-アミノ酸残基2~21
【化23】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=CGTNLSVPであり、Y=DHQLDPCであり、m=8であり、n=7である
【化24】
例えば、C末端D-Tyr
【化25】
-遺伝子型Cのアミノ酸残基2~48
【化26】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=CGTNLSVPであり、Y=DHQLDPAFGANSNNPDWDFNPNKDHWPEANQVGCであり、m=8であり、n=34である
【化27】
例えば、C末端D-Tyr
【化28】
-Myrcludex Bのアミノ酸残基
【化29】
および、例えば、追加のアミノ酸、
例えば、N末端およびC末端システインを含む(環化前のペプチド配列中)
X=CGTNLSVPであり、Y=DHQLDPAFGANSNNPDWDFNPNKDHWPEANKVGCであり、m=8であり、n=34である
【化30】
例えば、C末端D-Tyr
【化31】
【0067】
本発明の好ましい環状ペプチドの例は、
【化32】
または
【化33】
である。
【0068】
好ましくは、上記は、C末端D-アミノ酸、例えば、D-チロシン、例えば、
【化34】
を含む。
N末端疎水性修飾(例えば、ミリストイル化)を有する、本発明の好ましい環状ペプチドの好ましい例の例は、
【化35】
である。
【0069】
別の実施形態では、環状ペプチドは、P NPLGFXaaP(Xaa=L、すなわち、NPLGFLP(配列番号3)である)を含む。
本発明の好ましい環状ペプチドのそれぞれの例は、
【化36】
である。
【0070】
一実施形態では、本発明の環状ペプチドは、さらなる部分(単数または複数)を含む。
斯かるさらなる部分(単数または複数)は、
- 薬物またはそれぞれのプロドラッグ;
- タグ;
- 蛍光色素、放射性同位元素および造影剤等、
標識;
- 組換えウイルスまたはその派生物;
- 薬物、プロドラッグまたは標識のための担体またはデポー;
- 免疫原性エピトープ;
- ホルモン;
- 阻害剤;
- 毒素
であってもよい。
斯かるさらなる部分(単数または複数)は、好ましくはリンカー、スペーサーおよび/またはアンカー基、例えば切断可能なリンカー等を介して共有結合される。
【0071】
好ましい放射性同位元素は、131I、125I、99mTc、18F、68Ga、111In、90Y、177Luである。
【0072】
一実施形態では、アミノ酸残基リシンは、DOTA[68Ga]に結合/カップリングすることができる(すなわち、K(DOTA[68Ga])。
【0073】
好まれる蛍光色素は、Alexa色素、ローダミンおよびフルオレセインの誘導体、Cy-色素である。
【0074】
一実施形態では、アミノ酸残基リシンは、蛍光色素Atto488に結合/カップリングすることができる(すなわち、K(Atto488))。
【化37】
【0075】
好ましい造影剤は、ガドリニウム(Gd)錯体、超常磁性(supramagnetic)鉄(Fe)錯体および粒子、コンピューター断層撮影法(CT)のための原子番号が大きい原子すなわち、ヨウ素を含有する化合物、マイクロバブル、およびこれらの造影剤を含有するリポソーム等の担体である。
【0076】
一実施形態では、環状ペプチドは、好ましくは共有結合された、カプシド阻害剤等の阻害剤を含む。
【0077】
斯かる阻害剤は、HBVゲノムを含有するヌクレオカプシドの不安定化によりHBV感染に干渉し、したがって、例えば、細胞内ヌクレオカプシド輸送およびヌクレオカプシドの成熟化の妨害により、侵入後ステップに干渉することが示された(Wangら、2015年;Choら、2013年;Strayら、2006年)。
【0078】
環状ペプチドおよびカプシド阻害剤は、
(i)NTCPに対処し、これを阻害すると共に、
(ii)NTCPとの相互作用による肝臓の標的化と、その後、その第2の活性ドメインによりヌクレオカプシドに影響することによりウイルス複製に干渉する、
組み合わせ阻害剤として作用することができる。
【0079】
HBVのエンベロープは、L(大)、M(中)およびS(小)と命名された3種のタンパク質を封入する。これらは、4個の膜貫通領域を有するC末端S-ドメインを共有する。M-およびL-タンパク質は、55個および遺伝子型依存性の、107または118個のアミノ酸の追加的なN末端伸長部を保有する(preS2およびpreS1)。
【0080】
よって、本発明にしたがうHBVの「preS由来」ペプチドという表現は、HBVのL-タンパク質のN末端伸長部、preS1に、好ましくは、種および遺伝子型A~Hの、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)、チンパンジーおよびゴリラB型肝炎ウイルスのコンセンサス配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドを指すが、これは、N末端および/またはC末端でトランケートされた改変体、アミノ酸置換改変体等、これらの改変体も指す。
【0081】
好ましくは、ペプチドまたはアミノ酸配列(a)は、好ましくは、遺伝子型A~Hの、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)、オランウータン、チンパンジーおよびゴリラB型肝炎ウイルスならびに近年記載されたコウモリB型肝炎ウイルスの、HBVのL-タンパク質のN末端伸長部、preS1に対応するまたはこれに基づくアミノ酸配列を有するペプチドを指すが、これは、これらの改変体、好ましくはC末端でトランケートされた改変体、アミノ酸置換改変体も指す。
【0082】
不可欠なまたは必須の配列として、P=配列番号1(NPLGFXaaP)内に提示される、本発明の環状ペプチドの結合に重要なアミノ酸残基が、本発明の環状ペプチドのペプチド/アミノ酸配列に存在する。
【0083】
特に、ペプチドは、次の配列に基づく(一文字コードでのアミノ酸;必須ドメインまたはファーマコフォアに下線を引く)。
必須ドメイン/ファーマコフォア (配列番号l):
NPLGFXP(式中、XまたはXaaは、任意のアミノ酸、好ましくは、FまたはL、より好ましくは、Fである)
【化38-1】
【化38-2】
【化38-3】
HBV preSコンセンサス配列((-11)位~48位のアミノ酸について)も存在する。
(配列番号46):
【化39】
【0084】
さらに、ペプチドまたはアミノ酸配列は、好ましくは、L-アミノ酸配列であるが、D-アミノ酸も含んでよいし、またはD-アミノ酸配列である。
【0085】
さらに、ペプチドまたはアミノ酸配列は、好ましくは環化に使用される非天然アミノ酸を含むこともできる。
【0086】
本発明において、一般式I
【化40】
を有する本発明の環状ペプチドは、配列番号1(P)の配列を有する少なくとも7アミノ酸を含むまたはこれからなる。
さらに、また、上述の通り、好ましくは、m+nは、0~42であり、
および/またはm=0~8であり、および/またはn=0~34であり、ただし、m+nは、0または少なくとも1である。
【0087】
本発明の環状ペプチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49アミノ酸を含むか、またはからなることができる。
【0088】
- 環状ペプチドの合成
本発明のペプチドは、当業者であれば容易に分かる種々の手順によって、一般に、合成化学手順によって調製することができる。
【0089】
合成化学手順は、より具体的には、固相逐次およびブロック合成を含む(EricksonおよびMerrifield、1976年)。固相逐次手順は、自動ペプチド合成機の使用による等、確立された自動方法を使用して行うことができる。この手順において、α-アミノ保護されたアミノ酸は、樹脂支持体に結合される。用いられる樹脂支持体は、(ポリ)ペプチドの固相調製のために本技術分野で従来用いられているいずれか適した樹脂となることができ、好ましくは、ポリオキシエチレンと共重合されて、最初に導入されたo-アミノ保護されたアミノ酸によるエステル形成のための部位をもたらす、ポリスチレンとなることができる。本発明者らによって適用されたこの最適化された方法は、明確に記載されている(例えば、Gausepohlら、1989年を参照)。アミノ酸は、1個ずつ導入される(段階的)。1個のアミノ酸の導入に対応する各合成サイクルは、脱保護ステップ、逐次的洗浄ステップ、アミノ酸の活性化によるカップリングステップ、およびその後の洗浄ステップを含む。これらのステップのそれぞれに続いて、濾過が行われる。カップリングのための反応性作用物質は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール(benzotriazil)-1-イル-オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートおよびジフェニルホスホリルアジド等、(ポリ)ペプチド合成のための古典的反応性作用物質である。樹脂におけるポリペプチドの合成後に、ポリペプチドは、アニソール、エタンジチオールまたは2-メチルインドールの存在下で、トリフルオロ酢酸等の強酸による処理によって樹脂から分離される。次いで化合物は、古典的精製技法によって、特にHPLCによって精製される。
【0090】
本発明のペプチドは、選択的に保護された(ポリ)ペプチド断片のカップリングによって得ることもでき、このカップリングは、例えば、溶液において引き起こされる。
【0091】
Myrcludex Bの合成については、Schieckら、2010年も参照されたい。
【0092】
ペプチド環化戦略
一般に、共有結合ペプチド環化は、いずれかの化学結合の形成によって達成することができる。従うことになる主な戦略は、ジスルフィド結合またはアミド結合の形成による環化である。ペプチド環化の一般的態様は、WhiteおよびYudin(2011年)によって包括的に概説されている。
【0093】
ペプチド環化のため、先ず直鎖状ペプチドが合成される(多くの場合、固相ペプチド合成(SPPS)により)。
【0094】
WhiteおよびYudin(2011年)によって記載されている通り、アミド結合形成-ヘッドトゥーテール環化は、適切な収束性保護基を含むカルボン酸部分、すなわち、アリルエステルに連結されたカルバメート(Alloc基)の利用能を必要とする。環化は、HBTU等の活性化作用物質を使用して、固体支持体上または溶液中のいずれかにおいて達成される。ジスルフィド結合によって連結されたペプチドの場合、環化は、トリチル-保護基等の適切な収束性保護基を含む2個のチオール基の利用能を必要とする。環化は、過酸化水素等の作用物質を使用した酸化または空気酸化によって利用できるより穏和な条件によって達成される。
【0095】
医薬組成物
上述の通り、本発明は、医薬組成物を提供する。
本発明にしたがう医薬組成物は、
(i)本発明の少なくとも1種の環状ペプチド、
(ii)任意選択で、薬学的に許容される担体および/または賦形剤
を含む。
【0096】
本発明にしたがう医薬組成物は、本明細書に記載されているあらゆる使用および方法に非常によく適する。
【0097】
上に概要を述べる通り、本発明は、免疫原性エピトープを含有する/含む、本発明の少なくとも1種の環状ペプチドと、任意選択で、薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む、ワクチン組成物を提供する。
【0098】
本発明にしたがうワクチン組成物は、本明細書に記載されている使用および方法に非常によく適する。
【0099】
「薬学的に許容される担体または賦形剤」は、その中にまたはそれと共に本発明にしたがう医薬組成物またはワクチン組成物が製剤化されていてよい、いずれかのビヒクルを指す。これは、リン酸緩衝食塩水等、食塩水溶液を含む。一般に、希釈剤または担体は、投与の様式および経路ならびに標準的な薬学的実施に基づいて選択される。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明にしたがう医薬組成物は、経口投与のために製剤化され、よって、経口投与に適した薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む。
【0101】
薬学的に許容される担体および/または賦形剤の例は、また、リポソームである。
【0102】
医学的適用
上述の通り、本発明は、医薬における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
【0103】
よって、本発明の環状ペプチドまたは本発明にしたがう医薬組成物は、疾患の診断、予防および/または処置に適しており、したがってこれらのために提供される。
【0104】
上述の通り、本発明は、HBVおよび/またはHDV感染の阻害における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
【0105】
上述の通り、本発明は、原発性HBVおよび/またはHDV感染の予防における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
上述の通り、本発明は、HBVおよび/またはHDV侵入阻害剤としての使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
【0106】
好ましくは、HBVのいずれかの遺伝子型のHBV感染は、阻害または予防される。
【0107】
好ましくは、侵入阻害は、ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP/SLC10A1)の標的化、「NTCP標的化」による。
【0108】
上述の通り、一実施形態では、環状ペプチドおよびカプシド阻害剤は、
(i)NTCPに対処し、これを阻害すると共に、
(ii)NTCPとの相互作用による肝臓の標的化と、その後、その第2の活性ドメインによりヌクレオカプシドに影響することによりウイルス複製に干渉する、
組み合わせ阻害剤として作用することができる。
【0109】
上述の通り、本発明は、肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
【0110】
一実施形態では、肝臓疾患または状態は、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくは、A、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスに起因する肝炎、またはウイルスに起因する随伴性肝炎から選択される。
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病(Morbus Wilson)等、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期(liver stadium)が関与する疾患である。
【0111】
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、肝臓腫瘍、好ましくは、肝細胞癌(HCC)である。
【0112】
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、胆汁経路(biliary pathway)内の胆汁酸塩蓄積/移植後関連肝臓機能障害に関する、肝臓移植の後の移植後合併症である。
一実施形態では、肝臓疾患または状態は、肝細胞への化合物のナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)媒介性輸送に関するか、または疾患または状態の部位もしくは場所への薬物または標識等、化合物の送達を必要とする。
好ましくは、前記肝臓疾患または状態は、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患、
高脂血症、
肝後性胆汁うっ滞(posthepatic cholestasis)、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
糖原病
から選択される肝臓が関与する代謝疾患である。
好ましくは、NTCPにより肝細胞へと輸送される化合物は、好ましくは、胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸塩に共有結合した化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である。
【0113】
本発明者らは、標的としての、ならびに肝細胞への化合物(胆汁酸等々)のNTCP媒介性輸送に関する肝臓疾患または状態、好ましくは、肝臓が関与する代謝疾患(例えば、肝内胆汁うっ滞、肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患、高脂血症等)および心血管疾患等、ある特定の肝臓疾患または状態の予防および/または処置における使用のための、ナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)を同定し、これについて記載した。その全体が本明細書により包含される、WO2014/072524およびPCT/EP2014/066262を参照されたい。
【0114】
「肝臓が関与する代謝疾患」は、本明細書で使用される場合、脂質および胆汁酸の肝臓代謝によって影響される、内臓型肥満(visceral obesity)、真性糖尿病および脂質異常症を含む代謝障害を指す。
【0115】
一般に、「胆汁うっ滞」は、胆汁構成物が、肝細胞から胆樹へと分泌され得ない、または胆汁が、肝臓から十二指腸へと流れることができず、肝細胞内の肝細胞胆汁酸蓄積をもたらす状態である。
【0116】
「胆汁うっ滞」または「肝内胆汁うっ滞」は、本明細書で使用される場合、胆管側膜における胆汁酸塩ポンプ(BSEPまたはMRP等)の不十分な発現および/または活性に関する肝細胞胆汁酸蓄積の肝内毒性効果を指す。
【0117】
「肝後性胆汁うっ滞」は、本明細書で使用される場合、大きい胆管の閉塞による胆汁うっ滞性肝臓疾患を指す。
【0118】
「肝臓の中毒」または「肝毒性」または「毒性肝臓疾患」は、本明細書で使用される場合、胆汁酸蓄積に依存しない薬物の毒性効果を指す。このような薬物は、NTCP媒介性輸送により肝細胞に浸透し、ミトコンドリアを損傷することにより、またはチトクロムP-450系における酵素を活性化して酸化ストレスをもたらすことにより、いくつかの直接的な毒性効果を引き起こす。
【0119】
「薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患」は、本明細書で使用される場合、胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)における薬物効果による、肝細胞からの胆汁酸の排出の阻害を指す。
【0120】
薬物誘導性胆汁うっ滞は、リファンピシン、シクロスポリンA、リファマイシンSV、ボセンタン、トログリタゾン、エリスロマイシンエストレートおよびグリベンクラミド等、BSEPを阻害するいくつかの薬物に起因し得る(Fattingerら、2001年;Funkら、2001年;Funkら、2001年;Stiegerら、2000年;Dawsonら、2012年;Morganら、2010年;Ogimuraら、2011年)。BSEPは、輸送体のATP結合カセット(ABC)ファミリーのメンバーであり(BSEPは、ABCB11としても同定される)、肝細胞から胆汁酸を排出する過程に関与し、これにより、これらの細胞に対するそれらの毒性を低減させる。上述の薬物は、BSEPによる胆汁酸の排泄が無効になるため、過剰胆汁酸蓄積の毒性効果を引き起こす。リポペプチドに基づく化合物(MyrB等)によるNTCP媒介性胆汁酸取り込みの阻害、そしてNTCPがBSEP阻害の均衡をとることにより、肝毒性を予防する、または処置および/または診断に適している。
【0121】
「高脂血症」(または高リポ蛋白血症または高脂血症)は、血液中のいずれかまたは全ての脂質および/またはリポタンパク質の異常に上昇したレベルが関与する。
高脂血症は、原発性および続発性サブタイプに分けられる。原発性高脂血症は通常、遺伝的原因(受容体タンパク質における変異等)によるものであるが、一方、続発性高脂血症は、糖尿病等、他の根底にある原因により生じる。脂質およびリポタンパク質異常は、一般集団において一般的であり、アテローム性動脈硬化に対するそれらの影響に起因して心血管疾患の修飾可能なリスク因子とみなされる。
【0122】
「高コレステロール血症(hypercholesterolemiaまたはhypercholesterolaemia)」は、血液における高レベルのコレステロールの存在である。これは、「高脂血症」の一形態である。
【0123】
「高脂血症」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、高血圧、心血管疾患(CVD)、心臓発作および脳卒中をもたらす、上昇したLDLコレステロール、低減したHDLコレステロール、上昇したトリグリセリド、詰まった動脈を含む高コレステロール血症を指す。
【0124】
「メタボリックシンドローム」は、次の医学的状態5種のうち3種の共起性(co-occurrence)によって診断される、エネルギー利用および貯蔵の障害を指す:腹部(中心性)肥満、上昇した血圧、上昇した空腹時血漿グルコース、高い血清トリグリセリド、および低い高密度コレステロール(HDL)レベル。メタボリックシンドロームは、心血管疾患、特に心不全および糖尿病の発症リスクを増加させる。メタボリックシンドロームは、メタボリックシンドロームX、心血管メタボリックシンドローム、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、リーベン(Reaven)症候群およびCHAOSとしても公知である。
【0125】
「非アルコール性脂肪性肝疾患」(NAFLD)は、過剰なアルコール使用によるものではなく、肝臓に脂肪が沈着した場合に発生する(脂肪過多症)、脂肪肝の一原因を指す。これは、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームに関する。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、最も極端な形態のNAFLDであり、未知の原因の肝臓硬変の主原因とみなされる。
【0126】
好ましくは、NTCP媒介性輸送は、本発明の環状ペプチドによって減少または遮断される。
【0127】
上述の通り、一実施形態では、環状ペプチドおよびカプシド阻害剤は、
(i)NTCPに対処し、これを阻害すると共に、
(ii)NTCPとの相互作用による肝臓の標的化と、その後、その第2の活性ドメインによりヌクレオカプシドに影響することによりウイルス複製に干渉する、
組み合わせ阻害剤として作用することができる。
【0128】
上述の通り、本発明は、心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置における使用のための、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物を提供する。
好ましくは、心血管疾患は、コレステロールレベルまたはコレステロール取り込みの制御または修飾を含み、
コレステロールレベルまたは取り込みは、好ましくは、(環状ペプチドによって)NCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより、制御または修飾される。
【0129】
コレステロールレベルまたは取り込みは、本発明の環状ペプチドによってNCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより、制御または修飾される。
前記使用は、コレステロールレベルまたはコレステロール取り込みの制御または修飾を含み、
コレステロールレベルまたは取り込みは、本発明の環状ペプチドによってNCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより、制御または修飾される。
【0130】
心血管疾患(CVD)は、西洋社会における病的状態および死亡の主原因である。高レベルのコレステロールは、リスク因子の1種としてCVDに関連付けられてきた。冠動脈におけるコレステロールおよびコレステロールリッチなリポタンパク質の異常沈着が、臨床的にとりわけ重要である。アテローム性動脈硬化を最終的にもたらす斯かる沈着は、冠動脈の疾患における主な寄与因子である。この場合、CVDの管理は、脂質低下療法に決定的に依存する。別個の経路によってコレステロールのレベルを低減させることにより作用する、スタチン、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸樹脂、フィブレートおよびニコチン酸等、異なるクラスの薬物をこの目的のために利用することができる(SchmitzおよびLangmann、2006年)。これらの薬物は、いくつかの副作用を有し、心血管薬物において作用する代謝酵素および輸送体の相対レベルに依存する。
【0131】
コレステロール代謝の主な制御は、コレステロール恒常性の重要な調節因子としての胆汁酸に起因する。胆汁酸およびコレステロールのレベルは、コレステロール代謝および吸収の調節によって関係づけられる。コレステロール利用の最終産物は胆汁酸であるため、胆汁酸の合成は、哺乳動物におけるコレステロール異化の主要経路である。胆汁酸合成の主要経路は、コレステロール7α-ヒドロキシラーゼ(CYP7A1)の作用による、7位におけるコレステロールのヒドロキシル化により開始される。
【0132】
これは、胆汁酸の合成が、過剰コレステロールの排泄のための支配的な機構の1種であることを意味する。生理的条件下では、この調節は、コレステロールの過剰摂取を補償するには不十分である。しかし、肝細胞への胆汁酸取り込みが遮断される場合、胆汁酸の形態でのコレステロールの排泄は、コレステロールの過剰な食事性摂取の補償に十分と予想される。本発明にしたがうリポペプチドに基づく化合物およびNTCPによる胆汁酸取り込みの遮断は、増加したコレステロール代謝および吸収によって補償される、胆汁酸の細胞内欠乏をもたらす。
【0133】
よって、本発明において、本発明の環状ペプチドは、CVDを予防するための脂質低下療法に適している。
【0134】
投与経路
好ましくは、本発明の環状ペプチドまたは医薬組成物の投与経路は、経口、皮下、静脈内、鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐薬から選択される。
【0135】
投与または適用の好ましい経路は、経口である。
【0136】
鼻投与または適用のための好ましい実施形態は、鼻スプレーである。
【0137】
治療有効量
治療有効量の環状ペプチドまたは医薬組成物を含むように、本発明の環状ペプチドまたは医薬組成物が提供される。
【0138】
本発明の環状ペプチドまたは医薬組成物の「治療有効量」は、NTCP受容体機能の阻害に十分な量を指す。さらに、前記「治療有効量」は、阻害、処置またはワクチン接種のそれぞれの適用および所望の成績に依存する。
【0139】
(ii)例えば胆汁酸、薬物等のNTCP媒介性輸送の阻害のためにNTCPの飽和を必要とする使用(例えば、患者当たり1mgまたは1~2mg/患者)
と比較して、
(i)抗ウイルス使用または侵入阻害には異なる治療有効量(例えば、患者当たり0.01~0.5mg、好ましくは0.1~1mg/患者)
が必要とされる。
【0140】
一実施形態では、本発明の環状ペプチドまたは医薬組成物の前記「治療有効量」は、HBVおよび/またはHDV感染の阻害;原発性HBVおよび/またはHDV感染の予防;Bおよび/もしくはD型肝炎の処置、ならびに/またはワクチン接種、ならびに/またはin vivoでのHBVおよび/もしくはHDVの侵入の阻害に十分な量を指す。
【0141】
好ましい治療有効量は、体重1kg当たり10μg~1mg、好ましくは、10μg~100μgの範囲内である。
【0142】
好ましくは、治療有効量は、患者当たり1日当たり約0.01mg~約50mg、好ましくは患者当たり1日当たり約1mg~約20mgの範囲内であるか、あるいは、1日当たり1kg当たり100nmol~1kg当たり2μmolの範囲の用量で患者に適用される/または体重1kg当たり10pmol~1kg当たり20μmolの範囲の用量で患者に適用される。
【0143】
約10nMの使用される環状ペプチドのIC50値の場合、好ましい治療有効量は、体重1kg当たり約100μgであるか、または患者当たり1~5mgの範囲内である。患者当たり1~5mgの範囲内の好ましい治療有効量は、1日1回投与することができる、または他の実施形態では、2~3日毎に1回のみ投与することができる。
【0144】
当業者は、適した治療有効量を決定することができると予想される。
【0145】
疾患の診断、予防および/または処置の方法
上述の通り、本発明は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害、ならびに/または原発性HBVおよび/もしくはHDV感染の予防のための方法を提供する。
【0146】
前記方法は、治療有効量の、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含み、好ましくは、HBVのいずれかの遺伝子型のHBV感染が、阻害または予防される。
【0147】
上述の通り、本発明は、肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置のための方法を提供する。
【0148】
前記方法は、治療有効量の、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0149】
一実施形態では、肝臓疾患または状態は、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくは、A、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスに起因する肝炎、またはウイルスに起因する随伴性肝炎から選択される。
【0150】
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病(Morbus Wilson)等、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期(liver stadium)が関与する疾患である。
【0151】
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、肝臓腫瘍、好ましくは、肝細胞癌(HCC)である。
【0152】
一実施形態では、肝臓疾患または障害は、胆汁経路(biliary pathway)内の胆汁酸塩蓄積に関する、肝臓移植の後の移植後合併症である。
【0153】
一実施形態では、肝臓疾患または状態は、肝細胞への化合物のナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)媒介性輸送に関するか、または疾患または状態の部位もしくは場所への薬物または標識等、化合物の送達を必要とし、
好ましくは、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患、
高脂血症、
肝後性胆汁うっ滞(posthepatic cholestasis)、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
糖原病
から選択される肝臓が関与する代謝疾患であり、
ここで、NTCPにより肝細胞へと輸送される化合物は、好ましくは、胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸塩に共有結合した化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である。
【0154】
上述の通り、一実施形態では、環状ペプチドおよびカプシド阻害剤は、
(i)NTCPに対処し、これを阻害すると共に、
(ii)NTCPとの相互作用による肝臓の標的化と、その後、その第2の活性ドメインによりヌクレオカプシドに影響することによりウイルス複製に干渉する、
組み合わせ阻害剤として作用することができる。
【0155】
上述の通り、本発明は、心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置のための方法を提供する。
【0156】
前記方法は、治療有効量の、本発明の環状ペプチドまたは本発明の医薬組成物の投与を含む。
前記方法は、好ましくは、コレステロールレベルまたはコレステロール取り込みの制御または修飾を含み、
コレステロールレベルまたは取り込みは、好ましくは、(環状ペプチドによって)NCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより、制御または修飾される。
【0157】
本発明の方法では、上記で議論したように、前記「治療有効量」は、阻害、処置またはワクチン接種のそれぞれの適用および所望の成績に依存する。
【0158】
(ii)NTCPの飽和を必要とする使用(例えば、患者当たり1mgまたは1~2mg/患者)
と比較して、
(i)抗ウイルス使用または侵入阻害には異なる治療有効量(例えば、患者当たり0.01~0.5mg、好ましくは0.1~1mg/患者)
が必要とされる。
【0159】
一実施形態では、上記で議論したように、治療有効量は、好ましくは、患者当たり約0.01mg~約50mg、好ましくは患者当たり約1mg~約20mgの範囲内であるか、
あるいは、環状ペプチドは、好ましくは、体重1kg当たり10pmol~1kg当たり20μmolの範囲の用量で患者に適用される。
【0160】
本発明の方法において、また、上述の通り、投与経路は、好ましくは、経口、皮下、静脈内、鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐薬から選択される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
一般式I
【化42】

の環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩であって、式中、
Pは、アミノ酸配列NPLGFXaaP(配列番号1)であり、Xaaは、FまたはLであり、
Xは、m個のアミノ酸の長さを有するアミノ酸配列であり、
mは、0または少なくとも1であり;
Yは、n個のアミノ酸の長さを有するアミノ配列であり、
nは、0または少なくとも1であり;
m+nは、0または少なくとも1である、
環状ペプチドまたはその薬学的に許容される塩。
(項目2)
疎水性修飾されている、項目1に記載の環状ペプチドであって、
前記疎水性修飾が、好ましくは、Xおよび/またはYのアミノ酸側鎖に存在し、
前記疎水性修飾が、好ましくは、アシル化および/または疎水性部分の付加であり、
より好ましくは、C8~C22脂肪酸(ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)またはステアロイル(C18)、より好ましくは、ミリストイル(C14)等)によるアシル化であるか、
または前記疎水性部分(単数または複数)が、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体から選択される、環状ペプチド。
(項目3)
(a)前記ペプチドに含まれる2個のシステイン(C)のチオール酸化(ジスルフィド架橋形成)、
(b)2個のアミノ酸側鎖のアミド縮合(ラクタム)、
(c)ヘッドトゥーテール環化、
(d)骨格環化、
(e)チオエーテル形成、
および/または
(f)アミノ酸の水素結合形成および/または結合形成誘導体
により環化されている、項目1または2に記載の環状ペプチド。
(項目4)
m+nが、0~42であり、
および/またはm=0~8であり、および/またはn=0~34であり、ただし、m+nが、少なくとも1である、先行する項目のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
(項目5)
前記環状ペプチドの一部であるかまたは非環式である、(アクセサリー)ドメインをさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
(項目6)
一般式Ia
【化43】

を有し、Xおよび/またはPのアミノ酸側鎖に少なくとも1個の疎水性修飾を保有する、例えば、
【化44】

であり、式中、Hは、前記疎水性修飾である、先行する項目のいずれか一項に記載の環状ペプチド。
(項目7)
【化45-1】
【化45-2】

例えば、
【化46】

例えば、
【化47】
例えば、
【化48】

の群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはこれからなる、先行する項目のいずれかに記載の環状ペプチド。
(項目8)
好ましくはリンカー、スペーサーおよび/またはアンカー基、例えば切断可能なリンカー等を介して共有結合された、
薬物またはそれぞれのプロドラッグ、
タグ、
蛍光色素、放射性同位元素および造影剤等の標識、
組換えウイルスまたはその派生物、
薬物、プロドラッグまたは標識のための担体またはデポー、
免疫原性エピトープ、
ホルモン、
阻害剤、
毒素
などのさらなる部分(単数または複数)を含むか、
および/またはカプシド阻害剤等の阻害剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の環状ペプチド。
(項目9)
(i)項目1から8のいずれかに記載の少なくとも1種の環状ペプチド、
(ii)任意選択で、薬学的に許容される担体および/または賦形剤
を含む、医薬組成物。
(項目10)
医薬における使用のための、項目1~8のいずれかに記載の環状ペプチドまたは項目9に記載の医薬組成物。
(項目11)
好ましくはNTCP標的化による、
- HBVおよび/またはHDV感染の阻害における使用、
- 原発性HBVおよび/またはHDV感染の予防における使用、
- HBVおよび/またはHDV侵入阻害剤としての使用
のための項目1から8のいずれかに記載の環状ペプチドまたは項目9に記載の医薬組成物であって、
好ましくは、HBVのいずれかの遺伝子型のHBV感染が、阻害または予防される、環状ペプチドまたは医薬組成物。
(項目12)
肝臓疾患または状態の診断、予防および/または処置における使用のための、項目1から8のいずれかに記載の環状ペプチドまたは項目9に記載の医薬組成物であって、
好ましくは、前記肝臓疾患または状態が、肝炎、硬変、ヘモクロマトーシス、好ましくは、A、B、C、D、E、F、GおよびH型肝炎ウイルスに起因する肝炎、またはウイルスに起因する随伴性肝炎から選択され、
および/または好ましくは、前記肝臓疾患または障害が、熱帯病、マラリア、住血吸虫症、リーシュマニア症、ウィルソン病等、ウイルスまたは非ウイルス病原体の肝臓期が関与する疾患であり、
および/または好ましくは、前記肝臓疾患または障害が、肝臓腫瘍、好ましくは肝細胞癌(HCC)であり、
および/または好ましくは、前記肝臓疾患または障害が、胆汁経路内の胆汁酸塩蓄積に関する肝臓移植の後の移植後合併症であり、
および/または好ましくは、前記肝臓疾患または状態が、肝細胞への化合物のナトリウム・タウロコール酸共輸送体ポリペプチド(NTCP)媒介性輸送に関するか、または前記疾患または状態の部位もしくは場所への薬物または標識等の化合物の送達を必要とし、
好ましくは、
肝内胆汁うっ滞、
肝臓の中毒(肝臓毒素による)/肝毒性、
薬物誘導性胆汁うっ滞性肝臓疾患、
高脂血症、
肝後性胆汁うっ滞、
メタボリックシンドローム、
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
糖原病
から選択される肝臓が関与する代謝疾患であり、
NTCPにより肝細胞へと輸送される前記化合物が、好ましくは、胆汁酸、ステロイド、コンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない甲状腺ホルモン、肝臓毒素、タウロコール酸塩に共有結合された化合物、ブロモスルホフタレイン、薬物である、環状ペプチドまたは医薬組成物。
(項目13)
コレステロールレベルまたはコレステロール取り込みの制御または修飾を好ましくは含む、心血管疾患(CVD)の診断、予防および/または処置における使用のための、項目1から8のいずれかに記載の環状ペプチドまたは項目9に記載の医薬組成物であって、
前記コレステロールレベルまたは取り込みが、好ましくは、(前記環状ペプチドによって)NCTP媒介性胆汁酸塩輸送を減少または遮断することにより制御または修飾される、環状ペプチドまたは医薬組成物。
(項目14)
前記環状ペプチドが、治療有効量で、好ましくは、患者当たり約0.01mg~約50mg、好ましくは、患者当たり約1mg~約20mgの範囲内で投与されるか、
または体重1kg当たり10pmol~1kg当たり20μmolの範囲の用量で患者に適用される、項目11から13のいずれか一項に記載の使用のための環状ペプチドまたは医薬組成物。
(項目15)
投与経路が、経口、皮下、静脈内、鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐薬から選択される、項目11から13のいずれか一項に記載の使用のための環状ペプチドまたは医薬組成物。
【0161】
次の実施例および図面は、発明をこれらに限定することなく本発明を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1図1は、Myrcludex Bおよび誘導体を示す。
【0163】
図2A図2は、Myrcludex Bの共有結合により架橋された環状誘導体が、阻害能力を示すことを示す。A、Myrcludex Bの共有結合により架橋された環状誘導体(Myr-2-48 Cyc)の配列および構造 B、Myr-2-48 Cycの阻害活性は、ペプチド配列内にミリストイル基を有する直鎖状Myrcludex B誘導体(2-Myr-48)およびC末端ミリストイル基を有する直鎖状preS由来ペプチド2-21(2-21-Myr)等、他のMyrcludex B誘導体に匹敵する。
図2B図2は、Myrcludex Bの共有結合により架橋された環状誘導体が、阻害能力を示すことを示す。A、Myrcludex Bの共有結合により架橋された環状誘導体(Myr-2-48 Cyc)の配列および構造 B、Myr-2-48 Cycの阻害活性は、ペプチド配列内にミリストイル基を有する直鎖状Myrcludex B誘導体(2-Myr-48)およびC末端ミリストイル基を有する直鎖状preS由来ペプチド2-21(2-21-Myr)等、他のMyrcludex B誘導体に匹敵する。
【0164】
図3図3は、さらなる環状Myrcludex B誘導体を示す。
【0165】
図4図4は、さらなる環状Myrcludex B誘導体を示す A、合成されたシステイン環化ペプチドおよび対照ペプチドの概要。 B、ペプチドを検査するための実験設定: HepG2 NTCP細胞を24ウェルプレートに播種した。細胞は、60~70%コンフルエンシ―に達したら、HBV感染またはTC取り込みアッセイに付した。HBeAg測定のために5~7日目に細胞上清を収集し、抗HBc抗体による免疫蛍光のために7日目に4%PFAで細胞を固定した。
【0166】
図5図5は、68ガリウム標識ペプチドの注射40~60分後の冠血管PET画像を示す。A、myr-CNPLGFFPDCK(DOTA[68Ga]) B、myr-CNPLGFFPDCK(DOTA[68Ga])注射30分前に1μg/g体重の非放射性(cold)Myrcludex Bによりブロッキングされた肝臓C、Myr-K(DOTA[68Ga])HBVpres3-48y(WTペプチド) D、Myr-K(DOTA[68Ga])HBVpres3-48y Ala11-15(結合不適格性対照ペプチド) Slijepcevicら、2015年も参照されたい。
【0167】
図6図6は、HepG3 NTCP細胞におけるH-タウロコール酸塩取り込みを示す:Myrcludex Bを有する異なる環状ペプチドの比較。
【0168】
図7図7は、HepG3 NTCP細胞におけるH-タウロコール酸塩取り込みを示す:Myrcludex Bを有する異なる環状ペプチドのIC50値および曲線。
【0169】
図8図8は、HepG2 NTCP細胞におけるHBV感染阻害アッセイを示す。 Myrcludex B(GMPグレード)、Myrcludex B-y(自作)および(+H)環状ペプチドによる。A、IC50曲線および値。 B、1:2希釈した上清のHBeAg測定の絶対値。
【実施例0170】
(実施例1 材料および方法)
略語:
COMU (1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウム-ヘキサフルオロホスフェート
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DOTA 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニルクロリド
Ga ガリウム
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HBeAg B型肝炎ウイルス初期抗原
HBcAg B型肝炎コア抗原
HBTU 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBV B型肝炎ウイルス
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC/MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
NHS N-ヒドロキシスクシンイミド
NMP N-メチル-2-ピロリドン
NTCP ナトリウム・タウロコール酸共輸送ポリペプチド
PBS リン酸緩衝食塩水
PET 陽電子断層撮影
PFA パラホルムアルデヒド
TC タウロコール酸塩
TFA トリフルオロ酢酸
TIS トリイソプロピルシラン
【0171】
1. ペプチド合成
1.1 ジスルフィド架橋ペプチド
固相ペプチド合成
ペプチド合成機(Applied Biosystems 443A、Foster City、CA、USA)において、Fmoc/tBu化学を使用して固相(Tentagel R RAM樹脂、容量0.22mmol/g、Rapp Polymere、Tuebingen、ドイツ)においてペプチドを合成した。ペプチド合成を始める前に、樹脂(0.05mmol)をDCMにおいて予め膨潤させた。Fmoc保護アミノ酸は、10倍過剰(0.5mmol)で使用し、NMPにおいてHBTU/DIPEAにより活性化させた。
Schieckら、2010年も参照されたい。
【0172】
ミリストイル化
固体支持体におけるペプチドをDCM中で膨潤させ、NMPで洗浄した。ミリスチン酸(4当量)およびHATUまたはCOMU(4当量)をNMPに溶解し、10当量のDIPEAを添加した。この混合物を樹脂に添加し、30分間インキュベートした。その後、樹脂をNMPで3回、DCMで3回洗浄し、乾燥させた。
【0173】
脱保護および樹脂からの切断
TFA/TIS/HO(95:2.5:2.5)によりペプチドを切断および脱保護した。脱保護されたペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離(3000rpm、5分間)によりペレットにし、新鮮なジエチルエーテルで2回洗浄した。ペプチドを乾燥させた。
【化41】
[配列番号24]
【0174】
ジスルフィド架橋形成
5mgの粗製のペプチドを5mlの80%酢酸に溶解した。氷酢酸中の1mgのヨウ素を、このペプチド溶液にゆっくり滴下した。10μlの飽和アスコルビン酸溶液を添加した。溶媒を蒸発させ、ペプチドを1:1アセトニトリル:HOに再溶解し、分取HPLCにより精製した。反応の成功をLC/MSによって確認した。
【0175】
蛍光色素/化合物のカップリング
ペプチドをDMF中に溶解し、NHS-エステル活性化化合物(2当量)およびDIPEA(10当量)と反応させた。反応は、HPLCにより制御した。
【0176】
1.2 アミノプロリン-ペプチド
200mg(0.32mmol)2-クロロトリチルクロリド樹脂に、2mLジクロロメタン中41mg(0.1mmol)Fmoc-Glu(OAll)-OHおよび52mg(68μL;0.4mmol)DIPEAを充填した。メタノールでキャッピングした後に、樹脂を自動ペプチド合成(ABI 433A)に供した。109mg(0.25mmol)Fmoc-L-Pro(4-NH-Alloc)-OH(2S,4S)を、COMU活性化により所望のアミノ酸位置においてカップリングした。直鎖状アセンブリ、ならびに5mgテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)および30mgボランジメチルアミン錯体による触媒的アリル脱保護の後に、2mL NMP中110mg(86mL;0.4mmol)DPPAおよび77mg(102μL;0.6mmol)によって固相環化を達成した。95:2.5:2.5のTFA/水/TISによって環状ペプチドを切断および脱保護し、HPLCによって精製した;時折、精製に先立ち、DOTAまたは蛍光色素活性エステルにより粗製のペプチドの一部を修飾した。
【0177】
2. 68Ga標識およびPETイメージング
約1mLの[68Ga]Ga3+溶出液(約600~800MBq)を、化合物xyの1mMのDMSO中溶液20μLおよびアスコルビン酸の飽和水溶液10μLの混合物に添加した。得られた混合物のpHを、2.5M酢酸ナトリウム水溶液の慎重な添加によって3.5~4.0に調整した。一定の撹拌下、95℃超に5~10分間加熱することにより、錯体生成を達成した。エタノールによる固相抽出と、続く蒸発によって生成物を単離した。残渣を1%ウシ血清アルブミン溶液に取り、100μlを超えない容量で、個々の実験に適切な量(約20~50MBq)を使用した。マウスを1%セボフルラン(Abbott、Wiesbaden、ドイツ)で麻酔し、Inveon小動物陽電子断層撮影(PET)スキャナー(Siemens、Knoxville、TN)を使用して画像を注射の最大60分後まで記録した。
【0178】
3. H-タウロコール酸塩取り込みアッセイ
24ウェルフォーマットに播種したHepG2 NTCP細胞を、表示ペプチドと共に30分間37℃で培養培地においてプレインキュベートした。150μMタウロコール酸塩(450cpm/fmol Hタウロコール酸塩を含有)を各ウェルに添加し、細胞をさらに15分間37℃でインキュベートした。細胞培養培地の除去および氷冷PBSの添加によって、取り込みを停止させた。細胞を冷PBSで3回洗浄し、溶解した(0.2M NaOH、0.05%SDS)。細胞ライセートをUltima Gold液体シンチレーション溶液(Perkin Elmer、Rodgau、ドイツ)と混合し、液体シンチレーションカウンター(Packard Instruments、Frankfurt、ドイツ)において放射能を測定した。
【0179】
4. HBV感染阻害アッセイ
24ウェルフォーマットに播種したHepG2 NTCP細胞を、表示濃度の表示ペプチドと共に、30分間37℃で培養培地においてプレインキュベートした。細胞をその後、4%PEGを含有する細胞培養培地において、16時間37℃でペプチドの存在下、HBV(GE1.8×10)に一晩感染させ、続いて、PBSによる洗浄ステップを行った。培地を2日毎に交換し、HBeAg測定のため、感染5~7日目に上清を収集した。
【0180】
前述の明細書、特許請求の範囲および/または添付の図面に開示されている特色は、別々およびこれらのいずれかの組み合わせの両方で、その多様な形態で本発明を実現するための材料となることができる。
【0181】
参考文献
【数1-1】
【数1-2】
【数1-3】
【数1-4】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022022455000001.app
【外国語明細書】